【実施例】
【0015】
図1は実施例1の編出し方法による編目配置を、
図2は従来例の編出し方法による編目配置を示す。10は捨糸、20は抜糸、30は編糸で、11は捨糸の編目、21,22は抜糸の編目、31はトメの編目である。図の下部は抜糸20を引く前の状態を、上部は抜糸20を引いているときの状態を示し、41,42は糸10,20,30の係合部である。実施例1では、抜糸の編目列を編成後に目移しすることにより、抜糸の編目とトメの編目との表裏を逆にする。
【0016】
実施例1では、抜糸20の編目21は裏目、トメの編目31は表目で、編目21,31で編目の種類が表裏逆である。なお捨糸10の編目11の表裏は重要ではない。実施例で、抜糸20を引くと、係合部41では、抜糸20が直線状になり、抜糸20を容易に抜くことができる。これに対して従来例では、抜糸20の編目22もトメの編目31も表目で、編目22,31で編目の種類が表裏同じである。この状態から抜糸20を引くと、係合部42では、抜糸20の編目22が、直線状にならず、捨糸10及び編糸30と絡まるため、抜糸20を抜くことが難しい。
【0017】
図1の編地に従って、抜糸編成から袋回しまでを行う基本的な編成方法を
図3に示す。以下の各図で、編成は図の下から上への順とし、
図3のステップ1)で、捨編部の編成に続けて、例えば前ベッドFで抜糸の編目列を1コース編成し、ステップ2)で抜糸の編目列を後ベッドBへ目移しし、ステップ3)でトメの編目列を後ベッドで編成する。ステップ2)で抜糸の編目列を目移ししたので、トメの編目は抜糸の編目と表裏が逆になる。即ち、抜糸の編目が表目であれば、トメの編目は裏目となり、抜糸の編目が裏目であれば、トメの編目は表目となる。袋回しに備え、ステップ4)で、トメの編目列を1目置きに目移しすることによりリブ状の編目配置とし、ステップ5),6)で袋状の編成から成る袋回しを行う。抜糸の編目とトメの編目は表裏が逆なので、
図1の編目配置となり、抜糸を抜きやすい。またトメの編目は、掛目を含まないので、目を詰めやすい。以上のことを整理すると、以下のようになる。
・ 抜糸の編目列とトメの編目列とを歯口を挟んで対向する側の針床で編成すると、これらの編目の表裏が逆になる。そしてこのためには、抜糸の編目列を前後の針床間で目移しした後に、抜糸の編目列に続けてトメの編目列を編成すればよい。
・ 抜糸の編目とトメの編目とを同数にすると、トメの編目列を掛目無しで編成できる。
【0018】
なお抜糸の編成前に、捨編地等の先の編地を編成し、袋回しの後に本編地を編成し、本編地の編成後に抜糸を抜いて、本編地と先の編地を分離する。
【0019】
図5は、抜糸の抜きやすさを改良した実施例2を示し、抜糸の編目列の編成後に目移しし、トメの編目と表裏を逆にし、トメの編成に掛目を用いる。
図3との相違は、抜糸の編目がトメの編目の半数なので、ステップ3)でトメの編目列を編成する際に、掛目を用いる点にある。
【0020】
図6は筒状編地の編成のための実施例3を示し、抜糸の編目とトメの編目とを表裏逆にし、抜糸を抜きやすくすること、掛目を含まないようにトメの編目列を編成すること、及び編目列を半数ずつ目移しすることにより目移しを容易にすることを示す。後下ベッドBD、後上ベッドBU、前下ベッドFD、前上ベッドFUの4枚ベッドを備える横編機を用いる。4枚のベッドを備える横編機では、前後の針床間のギャップが広くなり、掛目を詰めて編成することが難しい。そこでトメの編目が掛目を含まないようにする。目移しは、後下ベッドBDと、前下ベッドFDまたは前上ベッドFU間で可能で、また前下ベッドFDと、後下ベッドBDまたは後上ベッドBU間でも可能である。なお2枚ベッドの横編機で実施例3を実行するには、
図6の上下の後ベッドBD,BUを1枚のベッドと見なして、後ベッドBD,BUの針が、1枚の後ベッドBに1目置きに交互に配置されていると解釈すると良い。同様に、上下の前ベッドFD,FUを1枚のベッドと見なして、前ベッドFD,FUの針が、1枚の前ベッドFに1目置きに交互に配置されていると解釈すると良い。
【0021】
ステップ1)で捨編の編目列を前後1コースずつ編成し、ステップ2)−5)で抜糸の編目列を2回に分けて編成する。この時、捨糸の編目列を後下ベッドBDから前上ベッドFUへ半数ずつ目移しした後に、抜糸の編目列を前上ベッドFUで編成する。ステップ6)で、抜糸の編目列を後下ベッドBDへ目移しする。同様の抜糸編成をステップ7)−11)で行い、前下ベッドFDと後下ベッドBDとに1コースずつ抜糸の編目列を編成する。抜糸の編目は、捨糸の編目の目移し後に編成され、裏目である。ステップ12),13)で、トメの編目列を後下ベッドBDと前下ベッドFDとに1コースずつ筒状に編成する。抜糸の編目とは歯口を挟んで前後に対向するベッドで編成するので、トメの編目は表目である。ステップ2)−11)で、抜糸の編目は裏目、トメの編目は表目となり、トメの編目と抜糸の編目は表裏が逆になる。袋回しでは、例えば後下ベッドBDのトメの編目の半数を前上ベッドFUへ目移しして、袋回しを行う。また同様に、前下ベッドFDのトメの編目の半数を後上ベッドBUへ目移しして、袋回しを行う。実施例3では、捨糸の編目とトメの編目は表裏が逆なので、
図1の編目の配置となり、抜糸を抜きやすく、トメの編目は掛目を含まないので、本編地の編出し部となるトメの編目列を詰めることができる。
【0022】
図6の編成を変更し、ステップ2),4)を1ステップにまとめ、後下ベッドBDの編目列を1回で前上ベッドFUへ目移しし、ステップ3),5)を1ステップにまとめて抜糸の編目列を1回で編成しても良い。また同様に、ステップ7),9)を1ステップにまとめて、前下ベッドFDの編目列を1回で後上ベッドBUへ目移しし、ステップ8),10)を1ステップにまとめて抜糸の編目列を1回で編成しても良い。しかしこのようにすると、多数の編目列を残さず一括して上ベッドFU,BUへ目移しすることになる。すると端部の抜糸に過大なテンションが加わる。このため捨糸の編目の目移しと、抜糸の編目の編成を2回に分けて行うことが好ましい。さらに抜糸の編目の編成を2回に分けて行うこと、抜糸を抜く回数は2倍になるが、抜糸と本編地との摩擦が1/2になるので、抜きやすい。
【0023】
なおステップ1)を抜糸の編成とし、ステップ2)−11)をトメの編成とし、ステップ12)を省略しても良い。すると抜糸の編目は表目、トメの編目は裏目となり、抜糸の編目とトメの編目は表裏が逆になる。抜糸の編目とトメの編目とを、歯口を挟んで対向する側の針床で編成すると、抜糸の編目とトメの編目とで表裏が逆になる。また抜糸の編目とトメの編目列を同数とすると、掛目は不要になる。これらのことは他の実施例でも共通である。
【0024】
図7は実施例4を示し、抜糸の編目を交互に表目と裏目とにすることにより、編成効率を重視しながら抜糸を抜きやすくすることを示す。
図7のステップ1)で捨編を行い、ステップ2)−6)で抜糸編成し、ステップ7)でトメの編目列を編成し、ステップ8)で袋回しに備え目移しする。
図7は、
図6の実施例3でのステップ1)−13)を、ステップ1)−7)へと単純化し、編成効率を増したものである。またステップ8)では、袋回しに備えて、後下ベッドBDの編目の半数を前上ベッドFUへ目移しする。ステップ8)に続いて、後下ベッドBDと前上ベッドFUとで袋回しの編成を行い、前下ベッドFDのトメの編目も同様の目移しをした後に、袋回しを行う。
【0025】
図7の実施例では、抜糸の編目の半数は、捨糸の編目の目移し無しで編成されて、表目となり、残る半数は、捨糸の編目の目移し後に編成されて、裏目となる。これに対してトメの編目は全数表目である。このため抜糸の編目の半数は
図1の状態となり、抜きやすい。残る半数は
図2の状態となるが、編目の数が少ないので、全数を
図2の状態とする場合よりは、抜きやすい。またトメの編目は掛目を含まないので、トメの編目を詰めることができる。
【0026】
実施例には以下の特徴がある。
1) 抜糸の編目とトメの編目との表裏を逆にすることにより、抜糸を簡単に抜くことができる。このために、抜糸の編目列を歯口を挟んで対向する側の針床へ目移しした後に、トメの編目列を編成する。
2) トメの編目と同数の抜糸の編目列を編成すると、トメの編目が掛目を含まないようにできる。このため本編地の編出し部であるトメの編目を詰めることができる。
3) 抜糸の編目列を複数回、例えば2回に分けて編成すると、抜糸を抜く回数が例えば2倍になるが、本編地と抜糸との摩擦が減少し抜きやすくなる。
【0027】
なおスムース編みは、筒状編地の編成(
図6,
図7)に限らず、平編地の編成にも適用できる。