【実施例1】
【0013】
まず、本発明の第1の実施形態を説明する。
【0014】
図1は、実施例を適用する光ピックアップ装置701を展開した斜視図であり、光ピックアップ装置701の構成部品と組立方法を示している。光ピックアップ装置701は、光ピックアップケース(筐体)702と、LD(Laser Diode)モジュール703、704と、ハーフミラー705a、705bと、反射ミラー706と、アクチュエータ707と、対物レンズ708と、レンズ709と、受光素子モジュール710と、を有する。LDモジュール703、704のいずれか一方は、例えばDVDで使用される赤色レーザ光を、残る一方は例えばCDで使用される近赤外レーザ光を発生する。
【0015】
上記構成の光ピックアップ装置701において、LDモジュール703、704からの出射されたレーザ光は、ハーフミラー705bで光路が合成された後にハーフミラー705aで反射され、さらに反射ミラー706で反射されて、アクチュエータ707に配置された対物レンズ708に導かれ、光ディスク711に光スポットとして収束される。光ディスク711からの反射光は、対物レンズ708及び反射ミラー706、ハーフミラー705a、レンズ709を介して受光素子710に収束される。
【0016】
以上の光学系を実現するために、光ピックアップケース702に対し、アクチュエータ707、反射ミラー706、ハーフミラー705a、705b、レンズ709をはじめとする構成要素は、組立方向714で示すように移動されて実装される。その後、LDモジュール703は組立方向715で、LDモジュール704は組立方向716で、受光素子モジュール710は組立方向717で示すように移動され、位置を調整される。その後、前記構成要素は光ピックアップケース702に対し、ネジをはじめとする固定部材、或いは接着剤で固定される。また、光ピックアップ装置701は、主軸712と副軸713により、回転している光ディスク711の半径方向に移動され、光信号の読み書きを行う。
【0017】
図2は、実施例を適用するRGB3原色光源モジュール装置801を示す斜視図であり、RGB3原色光源モジュール装置801の構成部品と組立方法を示している。RGB3原色光源モジュール装置801は、RGBモジュールケース(筐体)802と、緑色のLDモジュール803と、赤色のLDモジュール804と、青色のLDモジュール805と、第1の合成ミラー806と、第2の合成ミラー807と、2方向首振りミラー808と、を有する。
【0018】
上記構成のRGB3原色光源モジュール装置801において、LDモジュール803からの緑色出射光813とLDモジュール804からの赤色出射光814は、第1の合成ミラー806で合成され、その合成光とLDモジュール805からの青色出射光815とは第2の合成ミラー807で合成されて合成ビームとなり、2方向首振りミラー808で反射される。2方向首振りミラー808は、RGB3原色光源モジュール装置801の外部に設けられたスクリーン809に3色RGB合成ビーム816を2次元走査して、画像を投射する。
【0019】
以上の光学系を実現するために、RGBモジュールケース802に対し、緑色のLDモジュール803と、赤色のLDモジュール804と、青色のLDモジュール805と、第1の合成ミラー806と、第2の合成ミラー807と、2方向首振りミラー808が、位置を調整される。その後、前記構成要素はRGBモジュールケース802に対し、ネジをはじめとする固定部材、或いは接着剤で固定される。
【0020】
例えば
図1のハーフミラー705a、705b、
図2の合成ミラー806、807のいずれの光学部品においても、筐体に取付ける際にミラー面が、設計上で定められた方向から角度ずれを発生しないようにする必要がある。このため、位置ずれを防止した光学部品の固定構造、及び固定方法が重要である。これを提供するための本発明の実施例を、以下で説明する。
【0021】
図3は、第1実施例の光学部品の固定構造を示す斜視図であり、ミラー2を装置の筺体1の該当部分へ組付け、接着固定した状態を示す斜視図である。なお、
図3以後の図面においてはXYZ軸が記入されており、図面の間の関係を明確にしている。以下では、例えばZ軸上で+の方向をZ+方向と記述する。
【0022】
図3に示すように、本実施形態の光学部品の固定構造は、主に、筐体1と、ミラー2と、それらをミラー側光軸6の角度を調整して接着固定するUV硬化型接着剤5a、5b、5cを有する。突起3a、3b、3cについては、後に述べる。ここで、ミラー2は例えば、
図1のハーフミラー705a、705b、
図2の合成ミラー806、807に該当する。また、筐体1は、光ディスクの記録、再生に用いられる光ピックアップ装置やレーザディスプレイに用いられるRGB3原色光源モジュール装置のミラー等を接着固定する筐体の一部分を図示しており、上記装置全体の構成は既に
図1及び
図2に示した。
【0023】
図4は、第1実施例の光学部品の固定構造の組立手順を示す斜視図であり、
図3のミラー2を装置の筺体1へ組付ける時の概略の組立手順を示す斜視図である。
【0024】
図5A乃至
図5Cは、第1実施例の光学部品の固定構造の組立手順を示す第1乃至第3の図である。
図4の固定構造の斜視図とは異なり、
図5Aと
図5Bは組立手順に応じてY−方向に見た上面図、
図5CはZ−方向に見た正面図である。
【0025】
図1又は
図2で示した装置に使用される
図3の光学部品の固定構造は、
図4に示すように、ミラー2は、筐体1の筐体ミラー溝8に対して挿入され、矢印101が示すようにY−方向に降下される。ミラー2のY軸方向の位置は、
図5Cに図示するミラー下面ストッパ16a、16bに接触して位置決めされる。ミラー2のX軸方向の位置は、ビームが反射し、或いは透過する筐体中心窓12のほぼ中心にある筐体側光軸7(
図4、
図5A)に対し、ミラー側光軸6(
図3)がほぼ一致するように調整される。
【0026】
なお、ミラー側光軸6は、後記するミラー基準面2eに対し、垂直な方向に定義される。筐体側光軸7は、後記する3個の突起3a、3b、3cのミラー基準面2eとの接点が成す仮想的な三角形の平面に対し、垂直な方向に定義される。このうち筐体側光軸7は、後記する筐体開放側内面14に対し、垂直な方向に定義されても良い。
【0027】
更に、
図4および
図5Aに示すように、ミラー2は矢印102が示すようにZ+方向に水平移動され、ミラー基準面2eは筐体ミラー溝8の内部の筐体開放側内面14に設けられた3個の突起3a、3b、3cに対し接触する。
【0028】
ここで、ミラー2はビームを透過或いは反射して、分岐し合成する機能を合わせ持つハーフミラーの場合が多い。前述の3点の突起に対して接触するミラー面は、ビームが入射して反射する反射面である。このため、角度ずれに対して敏感な該反射面がミラー基準面2eとされ、その裏面がミラー基準反対面2f(出射面、透過面)とされることが多い。
【0029】
そして、接着剤の挿入部として機能する筐体溝11aに対向する筐体ミラー溝8内部の筐体拘束側内面13近くに、接着剤塗布装置のニードル(図示無し)の先端を配置し、ニードルをZ+方向に引抜きながら、UV硬化型接着剤を塗布開始する。UV硬化型接着剤は粘性があり、ゲル状に近い。このため、UV硬化型接着剤5aは、筐体拘束側内面13とミラー基準反対面2fとの隙間をブリッジし、ミラー側面2dの上を経由し、更にミラー基準面2eから筐体開放側内面14をブリッジし、筐体溝11a上で筐体開放側外面15近くまで、塗布される。同様に、UV硬化型接着剤5b、5cは、筐体溝11b、11cに対向する筐体ミラー溝8内部の筐体拘束側内面13から、ミラー側面2dを経由し、更に筐体開放側内面14を経由し、筐体溝11b、11c上で筐体開放側外面15近くまで、塗布される。
【0030】
更に、UV光源201a、201b、201cを用いて、筐体溝11a、11b、11cに沿って、Z−方向に向けてUV光を照射し、UV硬化型接着剤5a、5b、5cを硬化させ、ミラー2を筐体1に対して固定する。
【0031】
筐体溝11a、11b、11cの影となって前述のUV光が照射されず、接着剤の硬化が不完全な部分が残る可能性がある。このため、
図5Cに示すように、UV光源202a、202b、202cを用いて、UV硬化型接着剤5a、5b、5cの側面にY軸方向からUV光を照射し、接着剤を完全硬化しミラー2を固定する。
【0032】
なお、筐体拘束側内面13の名称は、接着剤5a、5b、5cのZ軸方向の位置が、この面で拘束されることに由来する。筐体開放側内面14の名称は、同じく接着剤5a、5b、5cのZ軸方向の位置が、この面では拘束されないことに由来する。
【0033】
ここで、
図5Bと
図5Cで、接着剤のUV硬化時の挙動を説明する。一般にUV硬化型接着剤は液体から固体へUV硬化する際に、%オーダで体積が収縮する。筐体1に設けられた筐体溝11a、11b、11c内に塗布されたUV硬化型接着剤5a、5b、5cは、UV光源201a、201b、201cに近い側から先にUV硬化を始め、筐体溝11a、11b、11cに沿って、Z−方向に筐体貫通孔11a、11b、11c内でUV硬化する。次に、UV硬化型接着剤5a、5b、5cは、筐体開放側内面14とミラー基準面2eの隙間のブリッジ部分で硬化し、順次、Z−方向にミラー側面2d上で硬化し、最後にミラー基準反対面2fと筐体拘束側内面13の隙間のブリッジ部分で硬化する。
【0034】
このため、筐体溝11a、11b、11c側からUV硬化収縮により、
図5Bに示したUV硬化収縮力111a、111b、及び図示しない111cが発生し、ミラー2においてはZ+方向にミラー押付力121が作用し、筐体1の突起3a、3b、3cに対し、ミラー基準面2eが3点において押付けられ、密着される。以上より、組立時には、UV硬化型接着剤5a、5b、5cのUV硬化収縮を利用して、ミラー2が筐体1に対して密着される。これにより組立てた当初には、3点の突起に対するZ軸方向のミクロンオーダの位置ずれの発生を防止でき、角度変化に敏感なミラー部品のX軸回り、Y軸回りの微小な角度ずれを防止できる効果がある。
【0035】
本実施形態の光学部品の固定構造は、室温よりも高温の側と低温の側に跨った温度サイクルのある使用環境においても、角度ずれを防止することができる。次に、その理由について、信頼性試験時を想定して
図6Aと
図6Bを用いて説明する。
【0036】
図6A及び
図6Bは、第1実施例の光学部品の固定構造の温度変化状態を示す第1及び第2の図である。ここでは特に、温度が変化した場合の筐体1とミラー2の関係について述べる。一般に接着剤においては、熱膨張係数が金属やガラス等を材料とする部品に比べて大きく、これにより部品の位置ずれや角度ずれが発生しやすい。このため、ここでは接着剤自身の熱膨張収縮が繰り返し発生する、温度サイクル試験での状況を想定する。
【0037】
まず、
図6Aは、
図3の固定構造の斜視図においてY−方向に見た上面図であり、
図6Bは、
図6AのB−B’においてYZ平面に投射した断面図である。例えば70℃から90℃程度の高温の状態を想定する。高温時には、UV硬化型接着剤5a、5b、5cの全体が体積膨張するが、Z軸方向には、筐体拘束側内面13で拘束されているため、筐体拘束側内面13とミラー基準反対面2fとの隙間のブリッジ部分の厚さt1の接着剤は、Z+方向に膨張しようとする。一方、ミラー基準面2eから筐体開放側内面14との隙間のブリッジ部分の厚さt2の接着剤は、筐体溝11a、11b、11cである程度拘束されているため、Z−方向に膨張しようとする。このため、3点の突起3a、3b、3cに対し、ミラー基準面2eが密着するには、(数1)で示す条件が望ましい。
t2<t1 ・・・(数1)
このようにすれば、
図5A乃至
図5Cの組立時のUV硬化時から引き続いて、Z+方向にミラー押付力121が作用し、筐体1の突起3a、3b、3cに対し、ミラー基準面2eが密着する。
【0038】
また、一般に接着剤は高温で軟化し、弾性率(ヤング率)は低下するため、接着厚t1、t2が厚くなり過ぎると、Z軸方向の膨張だけではなく、Z軸に直交するX軸やY軸方向にも膨張する。このため、Z軸方向の膨張量が小さくなり、結果的にはミラー押付力121が作用しにくくなる可能性がある。一方、対象製品で使用されるミラーの大きさは数mm以下、ないし10mm程度以下であることが多いため、接着剤を3箇所塗布する本実施例の場合、接着剤幅は1mm程度か、これ以下となることが多い。上記のように、主にZ軸方向に膨張させるためには、接着剤塗布幅(X軸やY軸方向の接着剤長さ)よりも接着厚t1、t2の厚みは薄い方が望ましい。すなわち接着厚t1とt2は1mm程度か、これ以下とすることが望ましい。
【0039】
次に、例えば−40℃から−20℃程度の低温の状態を想定する。低温時には、UV硬化型接着剤5a、5b、5cの全体が体積収縮する。前述と同様に、筐体拘束側内面13とミラー基準反対面2fとの隙間のブリッジ部分の接着剤厚さをt1、ミラー基準面2eから筐体開放側内面14との隙間のブリッジ部分の接着剤厚さをt2、筐体溝11a、11b、11c内に塗布された接着剤厚さをt3とする。
【0040】
次の(数2)が成立する場合、t1で発生する収縮力より、t2+t3で発生する収縮力が大きくなり、Z+方向にミラー押付力121が発生する。
t1<t2+t3 ・・・(数2)
この結果、
図5A乃至
図5Cの組立時から引き続いて、ミラー2は筐体1の3点の突起3a、3b、3cに対し、ミラー基準面2eが密着可能となる。
【0041】
即ち、t1とt2のみならず、筐体溝11a、11b、11c内に塗布された接着剤の厚さt3にも着目することにより、高温及び低温時に、UV硬化型接着剤5a、5b、5cの熱膨張収縮を利用して、筐体1の3点突起3a、3b、3cとミラー基準面2eの密着を維持することができ、前述の組立初期に加えて、温度サイクル試験でも、ミクロンオーダの位置ずれや微小な角度ずれを防止できる効果がある。また、60℃90%等の高温高湿試験では、一般に接着剤は吸湿して膨潤するので、上記高温時の挙動と同等の効果が期待できる。
【0042】
更にまた、上記(数1)、(数2)の関係が満足できない場合や塗布ばらつきが発生した場合でも、この関係に近づけることにより、高温と低温時のZ軸方向のずれ量の絶対値を小さくでき、結果としては温度サイクル経過後の位置や角度ずれを低減できる。即ち、位置ずれを防止した光学部品の固定構造、及び光学部品の固定方法を得ることができるという効果がある。
【実施例4】
【0051】
次に、本発明の第4の実施形態を
図9Aと
図9Bを用いて説明する。
【0052】
図9Aは、第4実施例の光学部品の固定構造を示す上面図であり、実施例1の
図6Aと同様に、光学部品の固定構造をY−方向に見た上面図である。
【0053】
図9Bは、第4実施例の光学部品の固定構造を示す断面図であり、
図9AのE−E’においてYZ平面に投射した断面図である。
【0054】
本実施例4では、実施例2と同様にZ軸方向に接着剤を2分割し、UV硬化型接着剤53aと53a’、UV硬化型接着剤53bと53b’、UV硬化型接着剤53cと53c’に、それぞれ分離して塗布した。即ち、接着剤の使用量を減らすことができる構造である。また実施例3と同様に、接着剤ポケット22a、22b、22cを設けた構造である。本実施例4により、接着剤の使用量を減らした上で塗布作業性を向上することができる。
[実施例1乃至実施例4に係る記載]
以上の実施例1〜4に共通して、UV硬化型接着剤の塗布位置に対する、3点の突起の配置について、
図10A乃至
図11Bを用いて説明する。
【0055】
図10Aは、実施例の光学部品の固定構造を示す上面図であり、特に第1実施例の光学部品の固定構造を例にした上面図である。
【0056】
図10Bは、実施例の光学部品の固定構造を示す正面図であり、
図10Aに係るXY平面での正面図である。
【0057】
図10Bに点線で示すように、UV硬化型接着剤5a、5b、5cの塗布位置に対して、3点の突起3a、3b、3cをそれぞれの接着剤の近傍に配置している。ここで、接着剤塗布ばらつき等により、接着剤5a付近でミラー2が突起3aから1μm離れた場合を想定する。この場合、接着剤5bと突起3b、および接着剤5cと突起3cが密接していると、これらが支点となる回転軸301を中心として、角度ずれ302が発生する。ここで、回転半径La(μm)は、突起3aから回転軸301に下した垂線の長さとなり、角度ずれ302は、
(数3)θya=Arc Tan(1/La)
となり、ミラー2は片側方向に回転して位置する。
【0058】
図11Aと
図11Bは、実施例の光学部品の固定構造を示す上面図と正面図であり、
図10A及び
図10Bとは異なり、UV硬化型接着剤5a、5b、5cの塗布位置に対して、3点の突起4a、4b、4cがそれぞれの接着剤から最も遠くに配置された場合を示す。ここで、接着剤の塗布ばらつき等により、接着剤5a付近でミラー2が、設計上の所定位置よりも1μm離れた場合を想定する。この場合、ミラー2が突起4aと4cから離れることを考慮すると、突起4b付近が支点となる回転軸311を中心として、角度ずれ312が発生する。
図11Bでは、回転軸311がUV硬化型接着剤5aの付近を通過する場合を一例として示している。ここで、回転半径Lbは、突起4aから回転軸311に下した垂線の長さLb1(μm)と、突起4cから回転軸311におろした垂線の長さLb2(μm)のどちらかになり、最大の角度ずれ312は、
(数4)θyb=Arc Tan(1/Lb2)
となり、ミラー2は両側方向に回転して位置する可能性がある。先の
図10Bにおける回転半径Laより、
図11Bの回転半径Lb2が短いため、前述の角度ずれ302と角度ずれ312は、
(数5)θya<θyb
となる。以上より、接着剤塗布ばらつき等により接着剤付近が突起より離れた場合を考慮すると、接着の塗布位置付近に3点の突起を配置する方が、角度ずれを小さくできることが分かる。
【0059】
以上、説明した本発明の実施形態1〜4において、光学部品はミラーの例で説明したが、同様の構成にて、平板構造を有する他の光学部品にも適用が可能である。
また、筐体、ホルダの材質としては、Zn,Mg,Alなどの金属のダイキャスト品や樹脂製とすることも考えられる。
また、UV硬化型接着剤は、アクリル系接着剤でも、エポキシ系接着剤でも同様に効果を得ることができる。