【解決手段】複数の端子を収容する複数の端子収容室13と、各々の端子収容室13に連なり、端子が挿入される側に開口する複数の端子挿入口20と、を備え、複数の端子挿入口20は、ハウジング10の後端面19と面一な挿入口20aと、後端面19よりも後方に向けて突出する挿入口20bと、を備える。複数の挿入口20bが、規則的に配置されていることが好ましく、複数の端子挿入口20が一列に配列されている場合に、例えば、挿入口20bが1つおき、3つおき…というように配置されると、挿入口20bが目印となって、端子の挿入間違いを防ぐことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のように、ハウジング、端子など各要素に関する提案がなされることで、コネクタの狭ピッチ化が実現されている。
ところが、狭ピッチのコネクタは、端子をハウジングに組み付ける際に、本来挿入すべき挿入口とは異なる誤った挿入口に端子を挿入する挿入間違いが生じることがある。以下、
図5を参照して説明する。
ハウジング101に複数の挿入口103が狭ピッチで形成されたコネクタ100に端子(図示を省略)を組み付ける場合に、全ての挿入口103に端子を挿入するのではなく、特定の挿入口103にのみ端子を挿入することがある。例えば、
図5において、黒丸を付している挿入口103に端子を挿入することを想定すると、端子を挿入する作業者は、予め、「左から3番目、6番目、9番目…に挿入する」ことを想定しながら端子を順に挿入する。ところが、コネクタ100が狭ピッチでかつ小型の場合には、挿入すべき挿入口103を特定するのが容易でない。例えば、左から3番目はまだしも、6番目になると、5番目あるいは7番目に間違って挿入するおそれが高くなる。
そこで、挿入間違いを防ぐために、
図6に示すコネクタ200のように、所定の数の挿入口103ごとに間隔を広くした拡大ピッチ部分EPを設ける提案がなされている。この提案は、挿入間違いの防止に対しては有効であるものの、同じ数の端子を備えることを前提にすると、コネクタ200の幅寸法を大きくする必要があり、または、同じ幅寸法で捉えると設けられる端子の数が少なくなる。また、嵌合相手となるコネクタもコネクタ200にあわせて幅寸法を大きくする必要があるので、両者を合わせたコネクタ組立体が占有する領域が大きくなり、狭ピッチ化によるコネクタの小型化の効果を減少させる。
本発明は、このような課題に基づいてなされたもので、狭ピッチを妨げることなく、端子の挿入間違いを防ぐことのできる電気コネクタのハウジングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもと、本発明の電気コネクタのハウジングは、複数の端子を収容する複数の端子収容室と、各々の端子収容室に連なり、端子が挿入される側に開口する複数の端子挿入口と、を備える。本発明における複数の端子挿入口は、第1挿入口と、第1挿入口よりも挿入される側に周縁の一部又は全部が突出する第2挿入口と、を含むことを特徴とする。
本発明のハウジングは、周縁の一部又は全部が突出する第2挿入口が、端子を挿入する目印になるため、端子の挿入間違いを防ぐことができる。しかも、本発明は、端子挿入口の周縁を突出させるものであるから狭ピッチ化の妨げにならないのに加え、第2挿入口の突出寸法が数mm程度であっても、第1挿入口との識別が容易であるから、端子の挿抜方向における寸法を大きくすることもない。
【0006】
本発明において、複数の第2挿入口は、規則的に配置されていることが好ましい。
電気コネクタを組付ける作業者は、第2挿入口が配置される規則性を把握することで、端子の挿入間違いをより減らすことができる。
【0007】
本発明において、第2挿入口が規則的に配置される形態は種々存在し、適用される電気コネクタに応じて規則的な配置を選定することができる。最も典型的には、複数の端子挿入口が一列に配列されている場合に、特定の数の第1挿入口が続けて配置される度に、第2挿入口が配置される実施形態である。例えば、第1挿入口と第2挿入口が1つずつ交互に配置される形態、第2挿入口が3つの第1挿入口を間に挟んで配置される形態などである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、周縁の一部又は全部が突出する第2挿入口が、端子を挿入する目印になるため、端子の挿入間違いを防ぐことができる。しかも、本発明は、端子挿入口の周縁を突出させるものであるから狭ピッチ化の妨げにならない。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
本実施形態にかかる電気コネクタ(以下、単にコネクタ)1は、
図1及び
図2に示すように、図示を省略する複数のメス型の端子30を保持するハウジング10を備えている。
ハウジング10は、下段ハウジング部11と、この下段ハウジング部11の上側に位置する上段ハウジング部12とを備えている。ハウジング10は、下段ハウジング部11及び上段ハウジング部12を含め、絶縁性の樹脂を成形することによって一体的に形成される。
【0011】
下段ハウジング部11及び上段ハウジング部12のそれぞれには、ハウジング10の幅方向Xに沿って、端子30を収容する端子収容室13が複数設けられており、端子収容室13は、下段ハウジング部11及び上段ハウジング部12を前後方向Yに貫通している。端子収容室13は、上下方向Zに2列に配列されている。下段ハウジング部11に設けられる端子収容室13と、上段ハウジング部12に設けられる端子収容室13は、幅方向Xの配置周期が1/2ピッチだけずれているために、全体として千鳥状に配置されている。このように、上下2列の端子収容室13を幅方向Xに沿って千鳥配置することにより、端子収容室13の幅方向Xの配列ピッチを狭くし、ひいては、端子収容室13内に収容されるメス端子の幅方向Xの配列ピッチを狭ピッチにすることができる。
ハウジング10は、幅方向Xについて、上下方向Zに沿って形成される仕切り壁14によって隣接する端子収容室13が区分されている。また、ハウジング10は、上下方向Zについて、幅方向Xに沿って形成される仕切り壁15によって隣接する端子収容室13が区分されている。
【0012】
ハウジング10は、
図2(c)に示すように、下段ハウジング部11の背面に開口し、上段ハウジング部12に達する、リテーナ装着孔16が形成されている。リテーナ装着孔16には、図示を省略するリテーナが装着されることで、下段ハウジング部11及び上段ハウジング部12の各々の端子収容室13に収容される端子30を係止する。
【0013】
また、上段ハウジング部12の上面には、嵌合相手となる電気コネクタのハウジング(以下、相手ハウジングという)に係止される片持ち梁状のロックアーム17が設けられている。ロックアーム17は、その前端に相手ハウジングに係止される係止突起18が上向きに設けられている。
【0014】
また、メス型の端子30は、相手となるオス型の端子が挿入されるソケット31を備える。このソケット31は、直方体状の外観を有しており、ソケット31の側から端子挿入口20に挿入される。端子30には、電線が接続され、メス端子が下ハウジング10の端子収容室13の所定位置に収容されると、電線は端子挿入口20から外部に引き出される。端子30が端子収容室13内に収容されると、一次係止手段、二次係止手段により、ハウジング10から抜け出るのが防止される。
【0015】
さて、ハウジング10は、各端子収容室13は後端に端子挿入口20が連なっており、コネクタ1の組み付け時に、端子30はソケット31の側から端子挿入口20に挿入される。本実施形態は、端子挿入口20が2種類に区分されている。つまり、
図1に示すように、端子挿入口20は、ハウジング10の後端面19と面一な挿入口20aと、後端面19よりも後方に向けて突出する挿入口20bと、を備える。より具体的には、下段ハウジング部11及び上段ハウジング部12がともに、挿入口20aと挿入口20bが交互に配置されており、幅方向Xの一方端(図中、左側とする。以下、同じ。)から奇数番目には面一な挿入口20aが設けられ、偶数番目には突出する挿入口20bが設けられている。
【0016】
本実施形態のように、奇数番目には挿入口20a(面一)が、また、偶数番目には挿入口20b(突出)が、というように規則的に配置されていることにより、以下の効果を奏する。
コネクタ1を組付ける作業者は、端子30を端子挿入口20からハウジング10に挿入する際に、ハウジング10の後端面19を視ると、挿入口20aと挿入口20bの2種類が存在し、しかも挿入口20aと挿入口20bが交互に配置されていることを容易に識別することができる。
【0017】
ここで、コネクタ1は、ハウジング10に設けられる全ての端子収容室13に端子30が挿入、保持されるわけではなく、特定の端子収容室13だけに端子30が挿入されることがある。例えば、以下のようなケースを想定する。
ケースα:1つおき(2番目、4番目、6番目…)に端子収容室13に端子30を挿入
ケースβ:3つおき(3番目、6番目、9番目…)に端子収容室13に端子30を挿入
ケースγ:1番目、4番目、6番目…というように任意の端子収容室13に端子30を挿入
【0018】
ケースαについては、端子挿入口20の形態が一種類でも、1つの端子挿入口20を飛ばしてメス端子を挿入すればよいので、端子30を間違って挿入するおそれは小さい。
ところが、ケースβについては、左から3番目はまだしも、6番目になると、5番目あるいは7番目の端子挿入口20(挿入口20a)に間違って挿入するおそれが高くなる。これに対して、挿入口20aと挿入口20bが交互に配置されていれば、3つおきに端子30を挿入するということに加え、挿入されるのが、面一の挿入口20aと突出する挿入口20bの順番に端子30を挿入すればよい、ということが容易に認識できるので、挿入間違いのおそれが小さくなる。
また、ケースγについても基本的にはケースβと同様であり、端子挿入口20の形態が一種類では4番目、6番目…という任意の位置の端子挿入口20を特定するのは容易でない。しかし、視覚的に容易に区別できる挿入口20aと挿入口20bを規則的に配置しておけば、その規則性を参照することによって、4番目、6番目…という任意の位置の端子挿入口20を誤って認識するおそれは小さく、端子30の挿入間違いを防ぐことができる。
【0019】
本実施形態のコネクタ1は、端子挿入口20の突出量の違いにより挿入口20aと挿入口20bを区別するが、挿入口20bの突出寸法を大きくしたとしても、狭ピッチ化によるコネクタの小型化の効果を減少させるおそれがない。例えば、挿入口20bが後端面19から突出する寸法は1mm程度あれば足りるので、本実施形態によると、前後方向Yの寸法をほとんど大きくすることなく、端子30の挿入間違いを防ぐことができる。
ちなみに、前述した
図6に示すように、拡大ピッチ部分EPを設けると、ハウジングの幅寸法が大きくなるために、電気コネクタの小型化に反することになる。また、端子挿入口20の周囲を区画する仕切り壁14,15の肉厚を厚くすることにより、隣接する端子挿入口20と区別することもなし得る。しかし、狭ピッチ化されたコネクタ1は、通常、端子30は端子挿入口20に隙間なく挿入されるので、狭ピッチを前提とする限り、肉厚を調整することは現実的でない。
【0020】
本発明において、端子挿入口20の突出量を規則的に変えるのは、上述した挿入口20aと挿入口20bとを交互に配置する例に限らない。このことを
図3に基づいて説明する。なお、
図3は、後方から視た端子挿入口20を模式的に示しており、かつ、後端面19からの突出寸法を幅にして示している。後述する
図4も同様である。また、
図3(a)は、
図1及び
図2に示した例を表しており、後端面19と面一の挿入口20aの周縁は線で示されており、後端面19から突出する挿入口20bの周縁の幅が広く示している。
【0021】
例えば、
図3(b)に示すように、下段ハウジング部11に属する端子挿入口20は挿入口20bが3つの挿入口20aごとに配置され、上段ハウジング部12に属する端子挿入口20は挿入口20bが2つの挿入口20aごとに配置されることで、端子挿入口20の突出量を規則的に変えることができる。このように本発明は、端子挿入口20が、上下方向Zに2列に配列される場合には、突出量を変える規則が列ごとに異なっていてもよい。
【0022】
また、
図3(c)に示す例は、下段ハウジング部11に属する端子挿入口20は、両端から3番目に位置するものが挿入口20bをなし、他は挿入口20aであり、上段ハウジング部12に属する端子挿入口20は、中央に位置するものだけが挿入口20bをなし、他は挿入口20aであり、一見すると、各々の段には規則性がないように捉えられる。しかし、下段ハウジング部11に属する端子挿入口20に端子30を挿入する際に、上段ハウジング部12に属する端子挿入口20の挿入口20bを参照すれば、下段ハウジング部11に属する端子挿入口20の順番を認識することができる。つまり、上段ハウジング部12における3番目及び4番目の挿入口20aの下には、下段ハウジング部11における挿入口20bが位置する。したがって、作業者は、下段ハウジング部11における挿入口20bを目印にすることで、上段ハウジング部12における3番目及び4番目の挿入口20aを識別することができる。このように、本発明における端子挿入口20の突出量の規則性は、上下方向に複数列の端子挿入口20(端子収容室13)が設けられている場合には、単一の列における規則性だけでなく、隣接する他の列における規則性を考慮することができる。
【0023】
次に、後端面19から突出するのは、矩形の挿入口20bの周縁の全域に限るものでなく、挿入口20bの周縁を部分的に後端面19から突出させることを許容する。例えば、
図4(a)に示すように、挿入口20bの周縁の1/2程度の範囲を突出させてもよいし、
図4(b)に示すように、挿入口20bの周縁の所定間隔ごとに突出させてもよい。このように、本発明は、周縁が突出している端子挿入口20を作業者が識別できる限り、突出の形態を問わない。
【0024】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
特に、コネクタ1、ハウジング10の具体的な構成はあくまで一例を示したに過ぎず、狭ピッチ化に対応する限り、他の構成を備えるコネクタ、ハウジングにも本発明を適用できる。
また、以上の説明では、挿入口20aは後端面19と面一である例を示したが、面一は必須の要素ではなく、挿入口20bと突出寸法の区別がつくのであれば、挿入口20aが後端面19から突出してもよい。要は、挿入口20aと挿入口20bに段差が生ずることで、作業者が挿入口20aと挿入口20bを識別できればよい。
さらに、以上の説明では、挿入口20bを規則的に設けたが、挿入口20bが規則的に設けられていなくても、挿入口20bを目印にすることで、端子30の挿入間違いを軽減できる。