特開2015-66924(P2015-66924A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-66924(P2015-66924A)
(43)【公開日】2015年4月13日
(54)【発明の名称】包装体用フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41M 1/10 20060101AFI20150317BHJP
   B41F 33/14 20060101ALI20150317BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20150317BHJP
【FI】
   B41M1/10
   B41F33/14 K
   B65D65/40 D
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-206015(P2013-206015)
(22)【出願日】2013年10月1日
(11)【特許番号】特許第5507748号(P5507748)
(45)【特許公報発行日】2014年5月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000206473
【氏名又は名称】大倉工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高橋 俊光
【テーマコード(参考)】
2C250
2H113
3E086
【Fターム(参考)】
2C250DB17
2C250DC10
2C250EB25
2C250EB26
2H113AA04
2H113BA03
2H113BB07
2H113BB22
2H113CA25
2H113DA47
2H113FA04
2H113FA55
3E086AB02
3E086AC07
3E086AC33
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA15
3E086BA24
3E086BB51
3E086BB62
3E086CA01
3E086CA11
3E086CA28
3E086CA29
3E086CA35
3E086DA01
3E086DA08
(57)【要約】
【課題】包装体用フィルムの内側表に、製袋時熱接着がなされる領域を除いて所望の機能を付与するための処理剤を塗布するにあたり、たとえ処理剤が透明なものであっても包装体用フィルムの外面の商品表示印刷パターンと、処理剤の塗布パターンを精度よく位置合わせすることができ、以て、加工時のシーラントフィルムによる熱接着が正確に、しかも容易に行えるような包装体用フィルムの製造方法を提供すること。
【解決手段】基材フィルム層に商品表示印刷を行う際に印刷された見当マークAと、シーラントフィルム層に所望の機能を有する処理剤を塗布する際に印刷された見当マークBとによって見当制御がなされることにより位置合わせされる包装体用フィルムの製造方法であって、処理剤の塗布パターンと見当マークBを与える彫刻は同じ版胴に施されており、処理剤の塗布パターンを与える彫刻には処理剤を、見当マークBを与える彫刻には着色インクを供給する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルム層とシーラントフィルム層を有する包装体用フィルムの基材フィルム層に商品表示印刷を行う際に印刷された見当マークAと、シーラントフィルム層に所望の機能を有する処理剤を、加工時熱接着がなされる部分を除いて塗布する際に印刷された見当マークBとによって見当制御がなされることにより商品表示印刷パターンと処理剤塗布パターンが位置合わせされる包装体用フィルムの製造方法であって、
シーラントフィルム層に所望の機能を有する処理剤を、加工時熱接着がなされる部分を除いて塗布するのに用いる版胴には、処理剤塗布パターンを与える彫刻と、見当マークBを与える彫刻がなされており、処理剤塗布パターンを与える彫刻部分には処理剤が供給され、見当マークBを与える彫刻部分には着色インクが供給されることを特徴とする包装体用フィルムの製造方法。
【請求項2】
処理剤塗布パターンを与える彫刻部分への処理剤の供給、および見当マークBを与える彫刻部分への着色インクの供給がチャンバー式塗工装置でなされることを特徴とする請求項1に記載の包装体用フィルムの製造方法。
【請求項3】
処理剤が、撥水剤であることを特徴とする請求項1または2に記載の包装体用フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、飲料品、医薬品、化粧品、化学品、工業製品等を包装する包装体を製造するための包装体用フィルムの製造方法に関するものである。更に詳しくは、包装体の内面に所定の機能が付与された包装体を製造するために用いる包装体用フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から包装体用フィルムの内側表面(シーラントフィルム面)に、撥水剤、防曇剤、帯電防止剤、難燃剤、無機充填剤、滑剤、導電剤等を存在させ所望の機能が付与された合成樹脂からなる包装体が知られている。しかしながらこのような物質が包装体用フィルムの内側表面に存在すると、これらが熱接着(ヒートシール)を阻害する物質として作用し、得られる包装体は、通常の熱接着方法では実用上十分な熱接着強度が発現しないという問題があった。
【0003】
このような中、特許文献1には、実質的に表面の大部分がフッ素系樹脂層面である加工紙において、互いに対向する接着予定部分にフッ素系樹脂層を欠く部分を有することを特徴とする製袋用加工紙が提案されている。この提案は包装体に撥水性、撥油性を付与するために包装体の内面をフッ素系樹脂層面とするにあたり、接着予定部分にはフッ素系樹脂層面を設けないというものである。この提案によればフッ素系樹脂層面によって接着性が阻害されることがない包装体が得られる。しかしながら、この提案を表面にネーミングやマーク等の商品表示印刷がなされた加工紙において実施するためには、加工紙の表面側に印刷される商品表示印刷のパターンと、加工紙の裏面側に塗布されるフッ素系樹脂層の塗布パターンを正確に位置合わせしなければならない。ところが同文献にはこの具体的な方法について何ら記載がない。
【0004】
一方、多色印刷の技術分野においては、各色の図柄を位置合わせする技術が知られている。これは、各色を印刷する際に見当マークを印刷し、各見当マークの位置関係を検出し、見当制御することにより各色の図柄の位置合わせを行うというものである。この技術を特許文献1に適用し、商品表示印刷のパターンと加工紙の裏面側に塗布されるフッ素系樹脂層の塗布パターンの位置合わせを行うという方法が考えられる。しかしながら、処理剤はほとんどの場合透明であり、見当マークの検出が不可能で、見当制御ができないという問題があった。
【0005】
さらに、このような問題を解決する方法として、透明インクに蛍光増白剤や紫外線吸収剤を添加し、見当マーク検出手段による見当マークの検出を可能とした先行文献がある(特許文献2、3参照)。しかしながら、特許文献2、3のように透明インクに蛍光増白剤や紫外線吸収物質などの添加物を添加した場合、印刷物の外観に悪影響を与えるおそれがある。また見当マークを検出する際に紫外線を照射できる光源を用いる必要があるため、可視光の光源を用いた場合よりも装置のコストが上昇してしまう。さらに、印刷された製品が食品に接触するような用途に用いられる場合、これら添加物の安全性に不安が残るという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3070009号公報
【特許文献2】特開昭57−93154号公報
【特許文献3】特開平1−283147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、包装体用フィルムの内側表面(シーラントフィルム面)に、加工時熱接着がなされる領域を除いて所望の機能を付与するための処理剤を塗布するにあたり、たとえ処理剤が透明なものであっても包装体用フィルムの外面のネーミングやマーク等の商品表示印刷パターンと、処理剤の塗布パターンを精度よく位置合わせすることができ、以て、加工時のシーラントフィルムによる熱接着が正確に、しかも容易に行えるような包装体用フィルムの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討を行った。この結果、処理剤が透明であっても、包装体用フィルムの内側表面(シーラントフィルム面)に処理剤を塗布する際に用いられる版胴に、処理剤塗布パターンを与える彫刻と、見当マークを与える彫刻を施しておき、処理剤塗布パターンを与える彫刻部分には処理剤を、見当マークを与える彫刻部分には着色インクを供給することにより前記課題を解決できることを見出し本発明に至った。
【0009】
すなわち本発明は、
[1]基材フィルム層とシーラントフィルム層を有する包装体用フィルムの基材フィルム層に商品表示印刷を行う際に印刷された見当マークAと、シーラントフィルム層に所望の機能を有する処理剤を、加工時熱接着がなされる部分を除いて塗布する際に印刷された見当マークBとによって見当制御がなされることにより商品表示印刷パターンと処理剤塗布パターンが位置合わせされる包装体用フィルムの製造方法であって、
シーラントフィルム層に所望の機能を有する処理剤を、加工時熱接着がなされる部分を除いて塗布するのに用いる版胴には、処理剤塗布パターンを与える彫刻と、見当マークBを与える彫刻がなされており、処理剤塗布パターンを与える彫刻部分には処理剤が供給され、見当マークBを与える彫刻部分には着色インクが供給されることを特徴とする包装体用フィルムの製造方法に関するものである。
[2]処理剤塗布パターンを与える彫刻部分への処理剤の供給、および見当マークBを与える彫刻部分への着色インクの供給がチャンバー式塗工装置でなされることを特徴とする[1]に記載の包装体用フィルムの製造方法に関するものである。
[3]処理剤が、撥水剤であることを特徴とする[1]または[2]に記載の包装体用フィルムの製造方法に関するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、包装体用フィルムの内側表面(シーラントフィルム面)に、加工時熱接着がなされる領域を除いて所望の機能を付与するための処理剤を塗布するにあたり、包装体用フィルムの外面のネーミングやマーク等の商品表示印刷パターンと、処理剤の印刷パターンを精度よく位置合わせすることができる。以て、加工時におけるシーラントフィルムによる熱接着を正確に、しかも容易に行うことができる包装体用フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態を示す模式斜視図である。
図2】本発明の実施形態を示す模式側面図である。
図3】本発明の実施形態において用いられる版胴の模式斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明において用いられる基材フィルムとしては、ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート等の合成樹脂からなるフィルムやこれらの延伸フィルムがあげられる。基材フィルムの厚みは特に限定されないが、5〜100μmが好ましく、さらには10〜50μmが好ましい。
【0013】
一方、本発明において用いられるシーラントフィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−不飽和カルボン酸エステル共重合体等があげられる。シーラントフィルムの厚みは特に限定されないが、10〜100μmが好ましく、さらには15〜50μmが好ましい。
【0014】
さらに、本発明において包装体用フィルムのシーラントフィルム面に塗布される処理剤としては、例えば、撥水剤、防曇剤、帯電防止剤、難燃剤、無機充填剤、滑剤、導電剤等が挙げられる。これらは必要により各種溶剤に溶解、あるいは分散媒に分散させられて用いられる。
【0015】
本発明の包装体用フィルムの製造方法で製造される包装体用フィルムは合成樹脂層として基材フィルム層とシーラントフィルム層を少なくとも備えるものである。基材フィルム層とシーラントフィルム層との積層はドライラミネート法、押し出しラミネート法等公知の積層方法によりなされるものであり、基材フィルムに商品表示印刷が行われた後、もしくは基材フィルムに商品表示印刷が行われる前になされる。
【0016】
本発明では、前記したように基材フィルムに商品表示印刷がなされる。商品表示印刷とは包装体の表面に位置し、消費者の目に留まる部分になされる印刷であり、通常、ネーミングやマーク等がそれにあたるが特に限定されるものではなく、図柄等も含む。
基材フィルムへの商品表示印刷は公知のグラビア印刷法、フレキソ印刷法等が用いられる。そして、商品表示印刷にあたっては見当マークAが印刷される。この見当マークAと後述する見当マークBとにより見当制御がなされることにより商品表示印刷パターンと処理剤塗布パターンが位置合わせされる。なお、商品表示印刷は単色、多色いずれであってもよい。商品表示印刷が多色の場合、各色の印刷において色毎に見当マークを印刷し、この見当マークにより見当制御するのが好ましい。この場合各色の見当マークの内の一色の見当マークが本発明の見当マークAに相当するようにする。
【0017】
次いで、基材フィルム層とシーラントフィルム層を有する包装体用フィルムのシーラントフィルム層に所望の機能を有する処理剤を、加工時熱接着がなされる部分を除いて塗布するとともに、見当マークBを印刷する方法を説明する。
【0018】
図3は本実施形態で用いられる版胴(1)の斜視図である。該版胴(1)には処理剤塗布パターンを与える彫刻(11)と、見当マークBを与える彫刻(12)が施されている。
図1は、チャンバー式塗工装置(3)により、図3で示した版胴(1)の処理剤塗布パターンを与える彫刻(11)の部分に処理剤を、見当マークBを与える彫刻(12)の部分に着色インクが供給されている状態を示している。なおここで、チャンバー式塗工装置とは、特開2010−194859号公報、特開2000−246876号公報、特開平10−71700号公報等に記載されており公知なものであるが、本実施形態ではチャンバーを二室に分割し、版胴に処理剤を供給するための領域と、版胴に着色インクを供給するための領域が形成されるようにしている。
【0019】
詳述すると、本実施形態のチャンバー式塗工装置(3)のチャンバー(4)は、その両端に付設されたシール部材(51)、(52)と、上下に付設されたドクターブレード(61)、シールプレート(62)により版胴(1)に密着した際に処理剤や着色インクが流れ出ないような構造となっている。さらにチャンバー(4)はシール部材(53)により、版胴に処理剤を供給するための領域と、版胴に着色インクを供給するための領域の二室に分割されている。そして、版胴(1)に処理剤を供給するための領域には処理剤タンク(8)が接続され、処理剤が供給口(71)から供給されるとともに排出口(72)から回収されることにより、処理剤が版胴(1)に処理剤を供給するための領域の内部を循環するようになっている。一方、版胴に着色インクを供給するための領域には着色インクタンク(9)が接続され、着色インクが供給口(73)から供給されるとともに排出口(74)から回収されることにより、着色インクが版胴(1)に着色インクを供給するための領域の内部を循環するようになっている。
【0020】
図2は、図1に示した実施形態の要部を示す側面図である(細部については記載を省略した)。包装体用フィルム(F)が版胴(1)と圧胴(2)との間を通過することにより、チャンバー式塗工装置(3)により版胴に供給された処理液および着色インクが包装体用フィルム(F)に塗布あるいは印刷されている。このようにして、包装体用フィルムのシーラントフィルム層に見当マークBが印刷される。
【0021】
なお上記実施形態では、一台のチャンバー式塗工装置のチャンバーを二室に分割した例を示したが、二台のチャンバー式塗工装置を準備し、これらにより版胴(1)に処理剤と着色インクを供給するようにしてもよい(図示せず)。
【0022】
以上述べたようにして印刷された見当マークAと、見当マークBが見当マーク検出センサ(図示せず)により検出され、見当制御される。これにより、商品表示印刷パターンと、処理剤塗布パターンの位置合わせが行なわれる。
本発明における見当制御は、当技術分野において知られている技術、例えば、特開2008−55707号公報、特開2003−80679号公報、特開平11−28805号公報等に記載の技術を適用することにより実施が可能である。
【0023】
また本発明の包装体用フィルムの製造方法においては、処理剤として撥水剤を用いることが良好な撥水性包装体を提供できることから特に推奨される。ここでいう撥水性包装体とは、液体、半固体およびゲル状物質などの付着性を有する内容物に対して、包装体の内面に前記内容物が付着、残存することを防止できる包装体を意味する。
このために用いられる撥水剤は、疎水性微粒子を含むものであり、特開2010−189059号公報、特開2011−73219号公報、特開2011−184082号公報等に詳しく開示されている。この撥水剤を用いて製造される包装体用フィルムから得られる包装体は、袋内面(シーラントフィルム面)に微小な凹凸が多数形成されており、いわゆるロータス効果より、非常に良好な撥水性を示す。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明によれば、包装体用フィルムの内側表面(シーラントフィルム面)に、加工時熱接着がなされる領域を除いて所望の機能を付与するための処理剤を塗布するにあたり、包装体用フィルムの外面のネーミングやマーク等の商品表示印刷パターンと、処理剤の印刷パターンを精度よく位置合わせすることができる。従って、加工時におけるシーラントフィルムの熱接着を正確に、しかも容易に行うことができる包装体用フィルムを提供することができる。そしてこの包装体用フィルムは、食品、飲料品、医薬品、化粧品、化学品、工業製品等を包装する包装体のみならず、深絞り成形法、真空成形法等の三次元成形法により、食品、飲料品、医薬品、化粧品、化学品、工業製品等を包装する包装容器にも応用することができる。
【符号の説明】
【0025】
1:版胴
11:処理剤塗布パターンを与える彫刻
12:見当マークBを与える彫刻
2:圧胴
3:チャンバー式塗工装置
4:チャンバー
51、52、53:シール部材
61:ドクターブレード
62:シールプレート
71、73:供給口
72、74:排出口
8:処理剤タンク
9:着色インクタンク
F:包装体用フィルム

図1
図2
図3