特開2015-67440(P2015-67440A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-67440(P2015-67440A)
(43)【公開日】2015年4月13日
(54)【発明の名称】繊維機械
(51)【国際特許分類】
   B65H 54/70 20060101AFI20150317BHJP
   D01H 15/00 20060101ALI20150317BHJP
   D01H 15/013 20060101ALI20150317BHJP
【FI】
   B65H54/70 Z
   D01H15/00 D
   D01H15/013
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-205422(P2013-205422)
(22)【出願日】2013年9月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】豊田 貴大
【テーマコード(参考)】
4L056
【Fターム(参考)】
4L056AA19
4L056DB02
4L056DB04
4L056DB06
4L056DB08
4L056DB12
4L056EB13
4L056EB16
4L056EB23
4L056EC36
4L056EC65
(57)【要約】
【課題】シャッターが規定の回転位置からズレた場合であっても当該シャッターを適切に回転させることが可能な繊維機械を提供する。
【解決手段】シャッター60の本体部61は、吸引ダクト85の供給孔31を塞ぐ状態と、供給孔31を開放する状態と、を回転することにより切り替え可能である。被操作部62は、本体部61に対して固定的に設けられる。操作部24は、シャッター60が規定位置から所定の回転量以上ズレた位置に位置しているときに、被操作部62に接触してシャッター60を回転させる。可動筒部26は、操作部24とは分離独立して設けられ、規定位置に位置しているシャッター60の本体部61に接触して当該シャッター60を回転させる。ブラケット29は、操作部24を、シャッター60の本体部61に接触せず、かつ操作部24が被操作部62に接触可能な位置に、当該操作部24を保持する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸を巻き取ってパッケージを形成する複数の巻取ユニットと、
前記複数の巻取ユニットが並べて配置される方向に移動可能な作業台車と、
前記作業台車に吸引空気流を供給するための供給孔が形成されたダクトと、
前記供給孔を塞ぐ状態と、前記供給孔を開放する状態と、を回転することにより切り替え可能なシャッター本体と、
前記シャッター本体に対して固定的に設けられた被操作部と、
を備え、
前記作業台車は、
前記シャッター本体が回転位置から所定の回転量以上ズレた位置に位置しているときに、前記被操作部に接触して前記シャッター本体を回転させる第1操作部と、
前記第1操作部とは分離独立して設けられ、前記回転位置に位置している前記シャッター本体に接触して当該シャッター本体を回転させる第2操作部と、
前記第1操作部が前記シャッター本体に接触せず、かつ前記第1操作部が前記被操作部に接触可能な位置に当該第1操作部を保持する第1保持部と、
を備えることを特徴とする繊維機械。
【請求項2】
請求項1に記載の繊維機械であって、
前記作業台車は、前記第2操作部が前記シャッター本体に接触可能な位置に、当該第2操作部を保持する第2保持部を備えることを特徴とする繊維機械。
【請求項3】
請求項2に記載の繊維機械であって、
前記第2保持部は、前記第2操作部が前記ダクトに接触した状態で、当該第2操作部を保持することを特徴とする繊維機械。
【請求項4】
請求項3に記載の繊維機械であって、
前記第2操作部は、前記供給孔によって供給された吸引空気流が通過する筒状部材であることを特徴とする繊維機械。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の繊維機械であって、
前記第2保持部は、前記第2操作部を前記ダクトに向けて付勢する付勢部材を備えることを特徴とする繊維機械。
【請求項6】
請求項5に記載の繊維機械であって、
前記第2操作部は、前記ダクトに向けて進出可能な余長部を有することを特徴とする繊維機械。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載の繊維機械であって、
前記第1保持部は、前記第1操作部が前記ダクトに接触しない位置で、当該第1操作部を保持することを特徴とする繊維機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、作業台車を備える繊維機械において、当該作業台車に対して負圧を供給するための構成に関する。
【背景技術】
【0002】
紡績機及び自動ワインダなどの繊維機械は、複数の糸処理ユニットを並べて備えた構成とされることがある。このような繊維機械においては、処理対象の糸処理ユニットの位置まで走行して、当該ユニットに対して所定の糸処理を行う作業台車が知られている。例えば特許文献1には、処理対象の紡績ユニットの位置まで走行して、当該紡績ユニットに対して糸継ぎ作業を施す糸継台車が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の糸継台車は、糸継ぎ作業の際に、糸を吸引補足するために第1案内装置及び第2案内装置を備えている。この糸継台車は、第1案内装置及び第2案内装置に吸引空気流を供給する第1接続部を備えている。この第1接続部は、紡績機の本体側に設けられた吸引ダクトに接するように構成されている。当該吸引ダクトには所定間隔で複数の供給部が形成されている。当該供給部を介して第1接続部に吸引空気流が供給される。
【0004】
特許文献1においては、吸引ダクトに形成された供給部を塞ぐためのシャッター(シャッター弁)が、それぞれの供給部に設けられている。このシャッターは回転可能であり、所定角度回転するごとに、供給部を塞いだ状態と、塞いでいない状態と、が切り替わるように構成されている。糸継台車は、供給部の位置を通過する際に、第1接続部によってシャッターを回転させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−67900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1においては、供給部の位置を糸継台車が通過することにより、シャッターが90度回転して元の状態に戻ることを前提としている。しかしながら、シャッターが回転する際の抵抗には個体差があるため、全てのシャッターが同じように回転することを保証するのは難しい。また、糸継台車の走行速度は常に一定であるとは限らないため(加速中、減速中など)、シャッターが回転する勢い(第1接続部がシャッターを押す勢い)にはバラつきがある。このため、実際の装置においては、糸継台車が通過したときのシャッターの回転量が90度にならず、当該シャッターが規定の回転位置からズレてしまうことがあった。
【0007】
シャッターのズレ具合によっては、当該シャッターを第1接続部によって適切に回転させることができない場合が有り得る。このようにシャッターを適切に回転させることができない場合、糸継台車が異常停止してしまう可能性がある。また、シャッターを適切に回転させることができない場合、当該シャッター及び/又は第1接続部に無理な力が加わり、変形及び/又は破損の原因になるおそれがある。
【0008】
本発明の目的は、シャッターが規定の回転位置からズレた場合であっても当該シャッターを適切に回転させることが可能な繊維機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0009】
本願発明の観点によれば、繊維機械は、複数の巻取ユニットと、作業台車と、ダクトと、シャッター本体と、被操作部と、を備える。前記巻取ユニットは、糸を巻き取ってパッケージを形成する。前記作業台車は、前記複数の巻取ユニットが並べて配置される方向に移動可能である。前記ダクトは、前記作業台車に吸引空気流を供給するための供給孔が形成されている。前記シャッター本体は、前記供給孔を塞ぐ状態と、前記供給孔を開放する状態と、を回転することにより切り替え可能である。前記被操作部は、前記シャッター本体に対して固定的に設けられる。また、前記作業台車は、第1操作部と、第2操作部と、第1保持部と、を備える。前記第1操作部は、前記シャッター本体が回転位置から所定の回転量以上ズレた位置に位置しているときに、前記被操作部に接触して前記シャッター本体を回転させる。前記第2操作部は、前記第1操作部とは分離独立して設けられ、前記回転位置に位置している前記シャッター本体に接触して当該シャッター本体を回転させる。前記第1保持部は、前記第1操作部が前記シャッター本体に接触せず、かつ前記第1操作部が前記被操作部に接触可能な位置に、当該第1操作部を保持する。
【0010】
上記のように第1操作部を設けたので、シャッターが規定の回転位置からズレている場合には、第1操作部によってシャッターを回転させることができる。また、第1操作部を第2接触部とは分離独立して設けるとともに、当該第1操作部を所定の位置に保持する第1保持部を備えたので、当該第1操作部を被操作部に対して確実に接触させることができる。
【0011】
上記の繊維機械において、前記作業台車は、前記第2操作部が前記シャッター本体に接触可能な位置に、当該第2操作部を保持する第2保持部を備えることが好ましい。
【0012】
これにより、シャッター本体に対して第2操作部を確実に接触させることができるので、当該シャッターを確実に回転させることができる。
【0013】
上記の繊維機械において、前記第2保持部は、前記第2操作部が前記ダクトに接触した状態で、当該第2操作部を保持することが好ましい。
【0014】
この構成の場合、第2操作部がダクトに接触した状態で作業台車が走行するので、当該第2操作部が摩耗する場合がある。しかしながら、本願発明は、当該第2操作部とは分離独立して第1操作部を設け、かつ当該第1操作部を保持する第1保持部を備えているので、第2操作部の摩耗具合にかかわらず、第1操作部を、被操作部に対して適切に接触できる位置に保持できる。これにより、第2操作部の摩耗具合にかかわらず、第1操作部によってシャッターを確実に回転させることができる。
【0015】
上記の繊維機械において、前記第2操作部は、前記供給孔によって供給された吸引空気流が通過する筒状部材であることが好ましい。
【0016】
これにより、簡単な構成によって、作業台車に吸引空気流を供給できる。
【0017】
上記の繊維機械において、前記第2保持部は、前記第2操作部を前記ダクトに向けて付勢する付勢部材を備えることが好ましい。
【0018】
これにより、第2操作部を、ダクトに接触させ続けることができる。
【0019】
上記の繊維機械において、前記第2操作部は、前記ダクトに向けて進出可能な余長部を有することが好ましい。
【0020】
これにより、第2操作部が摩耗によって短くなったとしても、余長部によって摩耗を吸収できる。従って、第2操作部の摩耗具合にかかわらず、当該第2操作部をダクトに接触させ続けることができる。
【0021】
上記の繊維機械において、前記第1保持部は、前記第1操作部が前記ダクトに接触しない位置で、当該第1操作部を保持することが好ましい。
【0022】
これにより、第1操作部が、ダクトとの摩擦によって摩耗することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る精紡機の全体的な構成を示す正面図。
図2】紡績ユニットの側面図。
図3】(a)吸引流が供給される仕組みを示す糸継台車の概略正面図、及び(b)シャッターの配置を示した概略平面図。
図4】接続部の外観斜視図。
図5】接続部の側面断面図。
図6】吸引ダクトから離間した状態の接続部の側面断面図。
図7】シャッターの斜視図。
図8】シャッター及び接続部の側面図。
図9】シャッターの回転を説明する図。
図10】規定位置にあるシャッターを回転させる様子を説明する図。
図11】シャッターを回転させることができない場合を示す図。
図12】規定位置からズレた位置にあるシャッターを回転させる様子を示す図。
図13】比較例を示す側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の一実施形態に係る精紡機(紡績機、繊維機械)について、図面を参照して説明する。図1に示す精紡機1は、並設された多数の紡績ユニット(巻取ユニット)2と、糸継台車(作業台車)3と、原動機ボックス5と、ブロアボックス80と、吸引ダクト85と、機台制御装置90と、を備えている。
【0025】
機台制御装置90は、精紡機1が備える各構成を集中的に管理するためのものであって、モニタ91と入力キー92とを備える。オペレータが入力キー92を用いて適宜の操作を行うことにより、特定の紡績ユニット2又は全ての紡績ユニット2の設定や状態等をモニタ91に表示することができる。
【0026】
吸引ダクト85は、紡績ユニット2の並設方向に沿うように、機台高さ方向において、当該紡績ユニット2の下方に設けられている。吸引ダクト85は、ブロアボックス80と接続されており、当該吸引ダクト85内は負圧に保たれている。紡績ユニット2及び糸継台車3に対して吸引ダクト85から負圧を供給することで、当該紡績ユニット2及び糸継台車3において吸引空気流を発生させることができる。
【0027】
図2に示すように、各紡績ユニット2は、上流から下流へ向かって順に配置された、ドラフト装置7と、紡績装置9と、糸貯留装置12と、巻取装置13と、を備えている。本明細書において「上流」及び「下流」とは、紡績時での繊維束及び糸の走行方向における上流及び下流を意味する。各紡績ユニット2は、ドラフト装置7から送られてくる繊維束8を紡績装置9で紡績して紡績糸10を生成し、この紡績糸10を巻取装置13で巻き取ってパッケージ45を形成する。
【0028】
ドラフト装置7は精紡機1の筐体6の上端近傍に設けられている。ドラフト装置7は、上流側から順に、バックローラ16、サードローラ17、ゴム製のエプロンベルト18を装架したミドルローラ19、及びフロントローラ20の4つのドラフトローラを備える。各ドラフトローラは、所定の回転速度で回転駆動される。ドラフト装置7は、各ドラフトローラに対向するように配置された対向ローラを有している。
【0029】
ドラフト装置7は、図略のスライバケースからスライバガイドを介して供給されるスライバ15を、回転するドラフトローラと、これに対向する対向ローラとの間で挟み込んで搬送することにより、所定の幅となるまで引き伸ばして(ドラフトして)繊維束8とする。
【0030】
フロントローラ20のすぐ下流側には、紡績装置9が配置されている。ドラフト装置7でドラフトされた繊維束8は、紡績装置9に供給される。紡績装置9は、ドラフト装置7から供給された繊維束8に撚りを加えて、紡績糸10を生成する。本実施形態では、旋回気流を利用して繊維束8に撚りを与える空気式の紡績装置を採用している。
【0031】
紡績装置9の下流には、糸品質測定器21が設けられている。紡績装置9で紡出された紡績糸10は、糸貯留装置12を通過する前に、前記糸品質測定器21を通過する。
【0032】
糸品質測定器21は、走行する紡績糸10の太さを、図略の静電容量式センサによって監視する。糸品質測定器21は、紡績糸10の糸欠陥(紡績糸10の太さなどに異常がある箇所)を検出した場合に、糸欠陥検出信号を図略のユニットコントローラへ送信する。糸品質測定器21は静電容量式のセンサに限らず、例えば光透過式のセンサで糸の太さを監視しても良い。糸品質測定器21は、糸欠陥の検出に代え、或いはこれに加えて、紡績糸10に含まれる異物の有無を検出しても良い。
【0033】
糸品質測定器21の下流には、糸貯留装置12が設けられている。糸貯留装置12は、図2に示すように、糸貯留ローラ14と、当該糸貯留ローラ14を回転駆動する電動モータ25と、を備えている。
【0034】
糸貯留ローラ14は、その外周面に一定量の紡績糸10を巻き付けて一時的に貯留することができる。糸貯留ローラ14の外周面に紡績糸10を巻き付けた状態で当該糸貯留ローラ14を所定の回転速度で回転させることにより、紡績装置9から紡績糸10を所定の速度で引き出して下流側に搬送することができる。また、糸貯留ローラ14の外周面に紡績糸10を一時的に貯留することにより、紡績装置9における紡績速度と、巻取装置13における巻取速度と、が何らかの理由により一致しない不具合(例えば紡績糸10の弛みなど)を解消することができる。
【0035】
糸貯留装置12の下流には、巻取装置13が配置されている。巻取装置13は、クレードルアーム71と、巻取ドラム72と、トラバース装置75と、を備える。
【0036】
クレードルアーム71は、支軸73まわりに揺動可能に支持されている。クレードルアーム71は、紡績糸10を巻回するためのボビン48を回転可能に支持することができる。巻取ドラム72は、前記ボビン48又はパッケージ45の外周面に接触して駆動できる。トラバース装置75は、紡績糸10に係合可能なトラバースガイド76を備えている。トラバースガイド76を図略の駆動手段によって往復動させながら巻取ドラム72を図略の電動モータによって駆動することで、巻取ドラム72に接触するパッケージ45を回転させ、紡績糸10を綾振りしつつ巻き取る。
【0037】
次に、糸継台車3について説明する。糸継台車3は、図1から図3までに示すように、糸継装置43と、サクションパイプ44と、サクションマウス46と、を備えている。
【0038】
精紡機1は、紡績ユニット2の並設方向に沿って形成されたレール41を備えている。糸継台車3は、当該レール41に沿って移動するための走行輪42と、この走行輪42を駆動する図略のモータと、を備えている。糸継台車3は、このモータを駆動させることで、前記並設方向に沿って自在に移動することができる。また、前述の吸引ダクト85が、上記レール41と平行な方向に沿って配設されている。なお本実施形態において、吸引ダクト85は、糸継台車3の走行経路の下方を通過するように配設されている。
【0039】
図2及び図3に示すように、糸継台車3の下部には、接続部50が配置されている。この接続部50は、中空筒状の構成となっており、吸引ダクト85の内部に接続できるように構成されている。なお、接続部50の構成については後に詳述する。
【0040】
図3に示すように、サクションパイプ44は、第1ダクト連結管47を介して接続部50と接続されている。これにより、吸引ダクト85内の負圧をサクションパイプ44に供給できるので、紡績糸10を吸引するための吸引空気流をサクションパイプ44に発生させることができる。この構成により、サクションパイプ44は、軸を中心に上下方向に回動しながら、紡績装置9から送出される紡績糸10の糸端を、吸引空気流によって吸い込みつつ捕捉して糸継装置43へ案内することができる。
【0041】
サクションマウス46も同様に、第2ダクト連結管49を介して接続部50と接続されている。これにより、吸引ダクト85内の負圧をサクションマウス46に供給できるので、紡績糸10を吸引するための吸引空気流(図3の矢印)をサクションマウス46に発生させることができる。サクションマウス46は、軸を中心に上下方向に回動しながら、パッケージ45側の紡績糸10の糸端を、吸引空気流によって吸い込みつつ捕捉して糸継装置43へ案内することができる。
【0042】
糸継装置43は、案内された糸端同士の糸継ぎを行う。糸継装置43の詳しい構成については説明しないが、例えば圧縮空気流などの流体によって糸端同士を撚り合わせる方法により糸継ぎを行う。
【0043】
続いて、接続部50の構成について説明する。図4に示すのは、接続部50を斜め下方から見た斜視図である。また、図5は、接続部50の側面断面図である。
【0044】
前述のように、接続部50は、中空筒状(パイプ状)に構成されている。これにより、筒状の接続部50の内部を、前記吸引空気流が通過できる。より具体的には、接続部50は、中空筒状に形成された可動筒部26と、同じく中空筒状に形成された固定筒部27と、を備えている。
【0045】
固定筒部27は、糸継台車3の本体に対して固定的に設けられている。また、固定筒部27は、その軸線方向の先端が、吸引ダクト85を向くように配置されている。なお前述のように本実施形態では、吸引ダクト85は糸継台車3の下方に位置しているので、固定筒部27は、糸継台車3の下面(底面)に固定され、かつその先端が下方を向くように配置されている(図5参照)。
【0046】
可動筒部26と固定筒部27は、軸線を一致させて配置されている。可動筒部26は、当該可動筒部26に固定筒部27の先端(下端)の一部を挿入できるように構成されている(図5の状態)。これにより、固定筒部27に対して、可動筒部26を軸方向でスライドさせることができる。従って、接続部50(可動筒部26及び固定筒部27)は、全体として軸方向に伸縮可能である。
【0047】
図4及び図5に示すように、可動筒部26と固定筒部27の間には、付勢部材28が配置されている。本実施形態の付勢部材28は、圧縮コイルバネとして構成されており、可動筒部26と固定筒部27の間に圧縮された状態で配置されている。この付勢部材28により、可動筒部26は、糸継台車3の本体から離れる方向、即ち吸引ダクト85側に向けて付勢されている。これにより、図5に示すように、可動筒部26の先端(下端)の端面を、吸引ダクト85の表面(本実施形態の場合は吸引ダクト85の上面)に接触させた状態を保つことができる。
【0048】
図5に示すように、吸引ダクト85の糸継台車3側の面(本実施形態の場合は吸引ダクト85の上面)には、当該吸引ダクト85の内外を連通する供給孔31が適宜の位置に形成されている。糸継台車3は、糸継作業を行う際には、図5に示すように、接続部50を供給孔31に一致させて停止する。これにより、接続部50を供給孔31に接続できるので、糸継台車3の各構成(具体的には、サクションパイプ44及びサクションマウス46)に対して、吸引ダクト85内の負圧を供給できる。このとき、付勢部材28の付勢力により、可動筒部26の先端が吸引ダクト85の表面に押し付けられているので、接続部50と吸引ダクト85の間に隙間が生じにくい。これにより、糸継台車3の各構成に対して、負圧を効率良く供給できる。
【0049】
なお、糸継台車3は、メンテナンス時などに、精紡機1の機台本体から取り外す場合がある。このように糸継台車3を取り外した場合などにおいては、可動筒部26が付勢されている方向の先に吸引ダクト85が存在しない状態となる(図6)。このような状態において、仮に、可動筒部26が、付勢部材28の付勢力によって制限無く移動してしまうと、当該可動筒部26が固定筒部27から外れてしまうので、接続部50がバラバラになってしまう。そこで本実施形態では、可動筒部26が固定筒部27から外れないように、ストッパ機構を設けている。
【0050】
具体的には、本実施形態の接続部50は、図4から図6に示すように、糸継台車3の本体に対して固定されたブラケット29を備えている。図5に示すように、可動筒部26には、付勢されている方向から前記ブラケット29に対して接触可能な係合部30が形成されている。即ち、付勢部材28の付勢力によって可動筒部26が移動していくと、やがて図6に示すように、可動筒部26の係合部30がブラケット29に接触するので、当該可動筒部26はそれ以上移動できなくなる。これにより、可動筒部26が固定筒部27から外れてしまうことを防止できる。従って、メンテナンス時など、精紡機1の機台本体から糸継台車3を取り外した場合であっても、接続部50がバラバラになってしまうことがない。このように、ブラケット29及び係合部30は、可動筒部26が固定筒部27から外れることを防止するストッパ機構として機能する。
【0051】
なお、図5に示すように、可動筒部26が吸引ダクト85に接触した状態(糸継台車3が精紡機1の機台本体に取り付けられた状態)においては、ブラケット29に係合部30が接触しないように構成されている。これにより、可動筒部26を吸引ダクト85の表面に対して接触させた状態を保つことができる。
【0052】
続いて、吸引ダクト85に設けられたシャッター60について説明する。
【0053】
図3に示すように、シャッター60は、吸引ダクト85の外向きの面であって、供給孔31が形成された面(糸継台車3側の面)に配置されている。
【0054】
シャッター60は、ある程度の弾性を備えた素材(例えばポリアミド樹脂などのプラスチック)で構成されている。図7に示すように、シャッター60は、全体的に平板状に形成された本体部61を主に備える。シャッター60が吸引ダクト85に取り付けられている状態の側面図を、図8に示す。図8に示すように、シャッター60の平板状の本体部61は、吸引ダクト85の表面(糸継台車3側の面)と平行になるように配置されている。また、シャッター60の本体部61は、その一側の面が、吸引ダクト85の表面にほぼ密着するように配置されている。また、このシャッター60は、中央部63を中心にして回転できるように、吸引ダクト85に取り付けられている。
【0055】
図7に示すように、本体部61は、その中央部63から放射状に延びる複数の蓋部64を備えている。各蓋部64は、供給孔31を塞ぐことができるように構成されている(図9(a)の状態)。また、シャッター60の本体部61において蓋部64同士の間には、中央部63に向けて凹むように形成された切欠部65が形成されている。この切欠部65は、供給孔31を完全に露出させることができるように構成されている(図9(b)の状態)。従って、シャッター60を回転させることにより、供給孔31を塞いだ状態(図9(a))と、当該供給孔31を露出させた状態(図9(b))と、を切り換えることができる。
【0056】
以上のように構成されたシャッター60の蓋部64により、吸引ダクト85に形成された供給孔31を塞いでおくことができる。これにより、吸引ダクト85の内部への外気の流入を最小限に抑え、吸引ダクト85による吸引の効率を向上させることができる。また、シャッター60を回転させ、供給孔31を開放した状態(塞いでいない状態)とすることにより、当該供給孔31を介して糸継台車3に負圧を供給できる状態とすることができる。
【0057】
続いて、シャッター60の回転について説明する。
【0058】
前述のように、シャッター60の本体部61は、吸引ダクト85に密着するようにして配置されている。一方、糸継台車3が備える接続部50の可動筒部26は、付勢部材28によって付勢されることにより、その先端を吸引ダクト85に対して接触した状態を保つように構成されている。従って、可動筒部26は、その周面をシャッター60の本体部61に接触させることが可能な位置に配置されていると言える。
【0059】
このように、可動筒部26は、付勢部材28によって付勢されることにより、シャッター60の本体部61に接触可能な位置に保持されている。従って、付勢部材28は、可動筒部26をシャッター60の本体部61に接触可能な位置に保持する保持部(第2保持部)としての機能を有していると言うことができる。
【0060】
以上の構成により、糸継台車3を走行させることにより、糸継台車3の可動筒部26をシャッター60の本体部61に接触させることができる。そして、その状態から糸継台車3を更に走行させることにより、可動筒部26によってシャッター60の本体部61を押すことができるので、当該シャッター60を回転させることができる。このように、可動筒部26は、シャッター60の本体部61に接触することにより、当該シャッター60を回転させる操作を行うことができる(この意味で、可動筒部26を操作部(第2操作部)と呼ぶこともできる)。
【0061】
より具体的に説明する。供給孔31から糸継台車3に対して負圧を供給する必要が無い場合、図10(a)に示すように、当該供給孔31は、シャッター60の蓋部64によって塞がれた状態となっている。このときのシャッター60の回転位置を、当該シャッター60の標準的な回転位置という意味で「規定位置」と呼ぶ。シャッター60が規定位置にある状態で、供給孔31に向けて糸継台車3が走行している状況を考える。この場合、図10(a)に示すように、接続部50の可動筒部26が、供給孔31を塞いでいる蓋部64に向けて移動してくる。
【0062】
このように糸継台車3が走行していくと、やがて、当該糸継台車3の可動筒部26が、供給孔31を塞いでいるシャッター60の本体部61(の蓋部64)に接触する。この状態から更に糸継台車3が移動することにより、可動筒部26がシャッター60の本体部61を押す(図10(b))。これにより、シャッター60を、中央部63まわりで回転させることができる。
【0063】
シャッター60を回転させることで、図10(c)に示すように、供給孔31がシャッター60によって塞がれていない状態(供給孔31が、シャッター60の切欠部65から露出している状態)とすることができる。このとき、接続部50の可動筒部26は、供給孔31の位置と一致する(図10(c)参照)。従って、この状態で、糸継台車3は、前記供給孔31を介して吸引ダクト85の負圧の供給を受けることができる。
【0064】
図10(c)の状態から糸継台車3が更に移動すれば、可動筒部26によってシャッター60の本体部61が更に押されるので、当該シャッター60が更に回転する。この結果、シャッター60の蓋部64が供給孔31を塞いだ状態(規定位置)になる(図10(d))。このように、糸継台車3が供給孔31の位置を通り過ぎれば、当該供給孔31はシャッター60によって塞がれた状態に戻る。
【0065】
なお、図10においては、糸継台車3の接続部50が、左から右に移動する様子を示しているが、右から左に移動した場合でも同様に、シャッター60を回転させることができる。このように糸継台車3が何れの方向に移動してもシャッター60を回転できるようにするため、当該シャッター60は、中央部63を回転中心とした回転対称形に形成されている。なお、本実施形態のシャッター60は4回対称形であり、4つの蓋部64を備えている。
【0066】
続いて、本実施形態の特徴的な構成について説明する。
【0067】
上記の説明では、糸継台車3が通り過ぎた後に、シャッター60が規定位置(蓋部64によって供給孔31を塞いている状態)に戻るものとして説明した。しかしながら、各シャッター60の回転抵抗などには個体差などがある。このため、実際には、糸継台車3が通り過ぎた後に、シャッター60が常に規定位置に戻るとは限らない。即ち、シャッター60は、規定位置からズレた位置に位置していることが有り得る。
【0068】
従来の繊維機械においては、シャッター60が規定位置からズレた位置に位置していると、糸継台車3が走行する際にシャッター60を適切に回転させることができないことがあった。このため、シャッター60が破損したり、糸継台車3が停止したりする原因等になっていた。
【0069】
シャッター60を回転させることができない場合について簡単に説明する。シャッター60に対して可動筒部26が接触したとき、当該シャッター60に加わる力の向きは、当該シャッター60と可動筒部26との接触面の法線方向となる。従って、前記法線方向が適切でない場合は、シャッター60を回転させることができない。例えば図11のようにシャッター60が規定位置からズレている状況において、当該シャッター60に対して可動筒部26が接触した場合を考える。図11の場合、シャッター60と可動筒部26の接触面の法線方向(太線の矢印で示す)が、シャッター60の中央部63を向いている。このため、シャッター60には、中央部63側を向いた力が加わる。この場合、シャッター60を中央部63まわりに回転させるトルクが小さくなり、当該シャッター60を適切に回転させることができない可能性がある。
【0070】
以上の問題を解決するためには、例えば、シャッター60と可動筒部26との接触面の法線方向(シャッター60に力が加わる方向)が常に適切になるように、当該シャッター60の形状を工夫することが考えられる。しかしながら、シャッター60の本体部61は、供給孔31を塞ぐという役割があるので、その形状には制限がある。従って、シャッター60の本体部61の形状を工夫するには限界がある。
【0071】
そこで本実施形態では、シャッター60に、被操作部62を設けた。図7に示すように、被操作部62は、シャッター60の本体部61に固定的に設けられている。本実施形態の被操作部62は、リブ状に形成されており、本体部61の上面から突出するように設けられている。なお、本実施形態のシャッター60においては、本体部61と被操作部62は一体形成されている。
【0072】
図8に示すように、被操作部62は、シャッター60の本体部61を挟んで吸引ダクト85とは反対側に位置するように構成されている。即ち、シャッター60の被操作部62は、糸継台車3側に向けて突出するように配置されている。
【0073】
図7に示すように、本実施形態の被操作部62は、第1被操作部66と、第2被操作部67と、を備えている。図12に示すように、シャッター60の回転軸方向で見たときに、第1被操作部66と第2被操作部67はそれぞれ直線状に形成されている。
【0074】
以上のようにシャッター60に形成された被操作部62は、当該シャッター60の本体部61とは異なり、供給孔31を塞がなければならないという制限がない。従って、被操作部62は、比較的自由な形状に構成することが可能である。そして前述のように、この被操作部62は、シャッター60の本体部61と一体的に形成されている。従って、糸継台車3側の部材によって被操作部62を押すことにより、シャッター60の全体を回転させることが可能である。
【0075】
続いて、上記被操作部62を押すための糸継台車3側の構成について説明する。
【0076】
前述のように、シャッター60の本体部61は、糸継台車3の可動筒部26によって押すことができる。しかしながら、図8に示すように、被操作部62は、本体部61よりも一段高い位置(吸引ダクト85から離れた位置)に配置されている。このため、当該被操作部62を可動筒部26によって押すことはできない。そこで本実施形態の糸継台車3は、上記可動筒部26とは別に、被操作部62を押すことができる操作部24を備えている。
【0077】
操作部24は、可動筒部26とは独立した別部材であり、糸継台車3の本体に対して固定的に設けられている。具体的には、図4等に示すように、本実施形態の操作部24は、前述のブラケット29に固定されている。従って、ブラケット29は、操作部24を保持する保持部(第1保持部)であると言うことができる。
【0078】
ブラケット29は、操作部24を、シャッター60の本体部61に接触せず、被操作部62に接触可能な位置に保持するように構成されている。具体的には、以下のとおりである。図8に示すように、ブラケット29は、操作部24を、吸引ダクト85から離した位置(つまり、吸引ダクト85に接触しない位置)で保持する。操作部24と吸引ダクト85の表面(シャッター60が取り付けられている面)との間の距離をH1とする。シャッター60の本体部61の厚みをT1とする。シャッター60の、被操作部62を含んだ厚みをT2とする。ブラケット29は、H1が、T1より大きく、T2以下になるように、操作部24を保持する。
【0079】
即ち、仮に、H1がT1以下になっていると、操作部24がシャッター60の本体部61に接触する可能性がある。このため、当該操作部24によってシャッター60の本体部61が押されることにより、当該シャッター60が不適切に回転してしまう可能性がある。そこで上記のように、ブラケット29は、H1がT1より大きくなるように操作部24を保持することで、当該操作部24がシャッター60の本体部61に接触することを防止する。また、仮に、H1がT2より大きくなっていると、操作部24を被操作部62に接触させることができないので、当該操作部24によって被操作部62を押すことができない。そこで上記のように、ブラケット29は、H1がT2以下になるように操作部24を保持することで、当該操作部24を被操作部62に対して確実に接触させることができる。
【0080】
続いて、操作部24によって被操作部62を押すことにより、シャッター60を回転させる様子について説明する。
【0081】
シャッター60が規定位置から所定の回転量以上ズレた位置に位置している場合には、図12に示すように、糸継台車3の操作部24が、シャッター60の被操作部62(第1被操作部66又は第2被操作部67の何れか一方)に接触する。従って、図12の状態から更に糸継台車3が移動することにより、操作部24が被操作部62を押してシャッター60を回転させることができる。
【0082】
前述のように、被操作部62(第1被操作部66及び第2被操作部67)は、シャッター60の回転軸方向で見て直線状に形成されている。一方、図12等に示すように、操作部24は、シャッター60の回転軸方向で見たときに、被操作部62に対して接触する部分が丸みを帯びた形状(曲線状)となっている。このため、操作部24と被操作部62は、シャッター60の回転軸方向で見てたときに点で接触する。従って、被操作部62に対して操作部24がどのように接触したとしても、被操作部62と操作部24の接触面の法線方向は、直線状の被操作部62に直交する方向となる。このように、被操作部62を直線状としたので、当該被操作部62と操作部24の接触面の法線方向が安定する。これにより、操作部24によって被操作部62が押される方向(シャッター60に加わる力の方向)が安定するので、シャッター60を回転できない方向に力が加わることがない。
【0083】
具体的には、図12(a)に示すように、直線状の第1被操作部66は、操作部24によって押される方向が、シャッター60を反時計まわりに回転させる方向となるように構成されている。従って、第1被操作部66に対して操作部24が接触した場合には、シャッター60を反時計まわりに回転させる方向の力が当該シャッター60に加わる。また、図12(b)に示すように、直線状の第2被操作部67は、操作部24によって押される方向が、シャッター60を時計まわりに回転させる方向となるように構成されている。従って、第2被操作部67に対して操作部24が接触した場合には、シャッター60を時計まわりに回転させる方向の力が当該シャッター60に加わる。
【0084】
シャッター60が規定位置から所定の回転量以上ズレた位置に位置している場合、操作部24は、第1被操作部66又は第2被操作部67の何れかに接触する。従って、被操作部62に対して操作部24がどのように接触したとしても、シャッター60を時計まわり又は反時計まわりに回転させることができる。このように、シャッター60が規定位置からズレた位置に位置している場合であっても、当該シャッター60を確実に回転させることができる。
【0085】
なお、前述のように、シャッター60が規定位置にある場合には、可動筒部26によってシャッター60の本体部61を押すことにより、当該シャッター60を問題なく回転させることができる。そこで本実施形態では図10に示すように、シャッター60が規定位置にあるとき(より正確に言うと、規定位置からのシャッター60のズレが所定の回転量未満の場合)には、操作部24が被操作部62に接触しないように構成している。従って、シャッター60が規定位置にあるときには、既に説明したように、糸継台車3の可動筒部26がシャッター60の本体部61を押すことにより、シャッター60が回転する。
【0086】
以上のように、本実施形態の構成によれば、シャッター60の位置にかかわらず、当該シャッター60を確実に回転させることができる。これにより、シャッター60が規定位置からズレた位置に位置していたとしても、当該シャッター60が破損したり、糸継台車3の走行が停止したりすることを防止できる。
【0087】
続いて、可動筒部26の摩耗について説明する。
【0088】
前述のように、可動筒部26は、付勢部材28により、吸引ダクト85に対して接触した状態で保持されている。従って、糸継台車3が走行する際には、可動筒部26の先端は、吸引ダクト85の表面を摺動する。これにより、当該可動筒部26の先端が徐々に摩耗する。
【0089】
図8に示しているのは、摩耗していない状態の(新品状態の)可動筒部26である。図8に示すように、可動筒部26が摩耗していない状態においては、当該可動筒部26の係合部30と、ブラケット29との間に、隙間D1が形成されるように構成されている。従って、新品状態の可動筒部26は、隙間D1の分だけ、吸引ダクト85側に向けて進出することができる。
【0090】
上記の構成によれば、可動筒部26が摩耗により軸方向(高さ方向)において短くなったとしても、短くなった分を、可動筒部26が吸引ダクト85側に進出することによって吸収できる。従って、可動筒部26が摩耗したとしても、当該可動筒部26を吸引ダクト85に接触した状態を維持できる。このように、本実施形態の構成によれば、可動筒部26の摩耗をある程度許容できる。なお、上記のように、新品状態の可動筒部26とブラケット29の間には、隙間D1が形成されているので、新品状態の可動筒部26は、隙間D1の長さだけ摩耗を許容できる。従って、可動筒部26の隙間D1の部分は、当該可動筒部26の摩耗を吸収する余長部であると言うことができる。
【0091】
上記実施形態では、可動筒部26と、操作部24を別部材として構成しているが、例えば図13に示すように、可動筒部26と操作部24を一体化した構成も考えられる。しかしながら、この構成では、可動筒部26の先端が摩耗するに伴って、操作部24と吸引ダクト85の表面との間の距離H1が徐々に短くなってしまう。前述のように、H1がT1(シャッター60の本体部61の厚み)以下になってしまうと、シャッター60を適切に回転させることができなくなる。従って、図13の構成では、可動筒部26の摩耗をほとんど許容できない。即ち、図13の構成では、可動筒部26(及びこれに一体化されている操作部24)の寿命(使用可能な期間)が極めて短くなってしまう。
【0092】
本実施形態では、上記のように、可動筒部26と操作部24を別部材とし、更に操作部24を保持するブラケット29を設けているので、可動筒部26がどれだけ摩耗したとしても、操作部24と吸引ダクト85の表面との間の距離H1を確保できる。従って、本実施形態の構成によれば、可動筒部26の摩耗にかかわらず、操作部24を確実に被操作部62に接触させることができる。そして本実施形態では、可動筒部26の摩耗を許容する余長部D1を設けているので、当該可動筒部26の寿命を長くすることができ、可動筒部26を長期間にわたって使用することが可能である。
【0093】
なお、可動筒部26とは異なり、操作部24は、他の部材(吸引ダクト85など)に押し付けておく必要がない。そこで本実施形態の操作部24は、付勢部材によって付勢されておらず、ブラケット29によって固定的に支持されており、他の部材に押し付けられることがない構成となっている。このため、本実施形態の操作部24が摩耗する心配はない。
【0094】
以上で説明したように、本実施形態の精紡機1は、複数の紡績ユニット2と、糸継台車3と、吸引ダクト85と、シャッター60と、被操作部62と、を備えている。紡績ユニット2は、糸を巻き取ってパッケージを形成する。糸継台車3は、複数の紡績ユニット2が並べて配置される方向に移動可能である。吸引ダクト85は、糸継台車3に吸引空気流を供給するための供給孔31が形成されている。シャッター60の本体部61は、供給孔31を塞ぐ状態と、供給孔31を開放する状態と、を回転することにより切り替え可能である。被操作部62は、本体部61に対して固定的に設けられる。また、糸継台車3は、可動筒部26と、操作部24と、ブラケット29と、を備えている。操作部24は、シャッター60が規定位置から所定の回転量以上ズレた回転位置に位置しているときに、被操作部62に接触してシャッター60を回転させる。可動筒部26は、操作部24とは分離独立して設けられ、規定位置に位置しているシャッター60の本体部61に接触して当該シャッター60を回転させる。ブラケット29は、操作部24がシャッター60の本体部61に接触せず、かつ操作部24が被操作部62に接触可能な位置に、当該操作部24を保持する。
【0095】
上記のように操作部24を設けたので、シャッター60が規定の回転位置からズレている場合には、操作部24によってシャッター60を回転させることができる。また、操作部24を可動筒部26とは分離独立して設けるとともに、当該操作部24を所定の位置に保持するブラケット29を備えたので、当該操作部24を被操作部62に対して確実に接触させることができる。
【0096】
また、上記実施形態の精紡機1において、糸継台車3は、可動筒部26がシャッター60の本体部61に接触可能な位置に、当該可動筒部26を保持する付勢部材28を備えている。
【0097】
これにより、シャッター60の本体部61に対して可動筒部26を確実に接触させることができるので、当該シャッター60を確実に回転させることができる。
【0098】
また、上記実施形態の精紡機1において、付勢部材28は、可動筒部26が吸引ダクト85に接触した状態で、当該可動筒部26を保持する。
【0099】
この構成の場合、可動筒部26が吸引ダクト85に接触した状態で糸継台車3が走行するので、当該可動筒部26が摩耗する場合がある。しかしながら、本実施形態では、当該可動筒部26とは分離独立して操作部24を設け、かつ当該操作部24を保持するブラケット29を備えているので、可動筒部26の摩耗具合にかかわらず、操作部24を、被操作部62に対して適切に接触できる位置に保持できる。これにより、可動筒部26の摩耗具合にかかわらず、操作部24によってシャッター60を確実に回転させることができる。
【0100】
また、上記実施形態の精紡機1において、可動筒部26は、前記供給孔31によって供給された吸引空気流が通過する筒状部材である。
【0101】
これにより、簡単な構成によって、糸継台車3に吸引空気流を供給できる。
【0102】
また、上記実施形態の精紡機1において、付勢部材28は、可動筒部26を吸引ダクト85に向けて付勢している。
【0103】
これにより、可動筒部26を、吸引ダクト85に接触させ続けることができる。
【0104】
また、上記実施形態の精紡機1において、可動筒部26は、吸引ダクト85に向けて進出可能な余長部D1を有している。
【0105】
これにより、可動筒部26が摩耗によって短くなったとしても、余長部D1によって摩耗を吸収できる。従って、可動筒部26の摩耗具合にかかわらず、当該可動筒部26を吸引ダクト85に接触させ続けることができる。
【0106】
また、上記実施形態の精紡機1において、ブラケット29は、操作部24が吸引ダクト85に接触しない位置で、当該操作部24を保持している。
【0107】
これにより、操作部24が、吸引ダクト85との摩擦によって摩耗することを防止できる。
【0108】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0109】
シャッター60の本体部61及び被操作部62の形状等は、適宜変更できる。例えば、本願の図面において、被操作部62は、直線状の部分と曲線状の部分からなるひと続きのリブとして示されている。しかしながら、リブ状に形成されている部分のうち、操作部24に接触し得るのは直線状の部分(第1被操作部66及び第2被操作部67)のみである。従って、図面に示したリブのうち、曲線状の部分は省略することもできる。
【0110】
もっとも、被操作部62の形状は、必ずしも直線状でなくても良い。また、被操作部62は、リブ状に限らず、その形状を適宜変更可能である。
【0111】
被操作部62は、必ずしもシャッター60の本体部61と一体的に形成される必要はなく、別部材として構成されていても良い。
【0112】
上記実施形態において、シャッター60は4回対称形とした。即ち、蓋部64を4枚備える構成としたが、これに限らず、蓋部64は3枚でも良いし、5枚以上でも良い。
【0113】
糸継台車3は、接続部50の可動筒部26を吸引ダクト85に常に摺動させる構成に代えて、必要なときだけ吸引ダクト85に接触させる構成とすることもできる。
【0114】
上記実施形態では、接続部50の可動筒部26が、シャッター60の本体部61に接触して当該シャッター60を回転させる第2操作部となっている。しかしながらこれに限らず、接続部50とは別に、シャッター60の本体部61に接触可能な第2操作部を設けることもできる。
【0115】
作業台車は、糸継台車に限らず、負圧による吸引空気流を供給する必要がある他の種類の作業台車であっても良い。例えば、パッケージを玉揚げする自動玉揚台車にも、本願発明の構成を適用できる。
【0116】
繊維機械は、巻取ユニットの数に応じて複数の作業台車を備えることができる。
【0117】
繊維機械は、精紡機に限らず、例えば自動ワインダなど、作業台車を備えた他の種類の繊維機械にも本願発明の構成を適用できる。
【符号の説明】
【0118】
1 精紡機(繊維機械)
3 糸継台車(作業台車)
24 操作部(第1操作部)
26 可動筒部(第2操作部)
28 付勢部材(第2保持部)
29 ブラケット(第1保持部)
31 供給孔
60 シャッター
61 本体部(シャッター本体)
62 被操作部
85 吸引ダクト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13