特開2015-67460(P2015-67460A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2015-67460ガラス板の製造方法、及び、ガラス板の製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-67460(P2015-67460A)
(43)【公開日】2015年4月13日
(54)【発明の名称】ガラス板の製造方法、及び、ガラス板の製造装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 33/027 20060101AFI20150317BHJP
【FI】
   C03B33/027
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-200511(P2013-200511)
(22)【出願日】2013年9月26日
(71)【出願人】
【識別番号】598055910
【氏名又は名称】AvanStrate株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】グローバル・アイピー東京特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】下鵜瀬 修治
(72)【発明者】
【氏名】野呂 洋
【テーマコード(参考)】
4G015
【Fターム(参考)】
4G015FA03
4G015FB01
4G015FC01
4G015FC04
4G015FC11
(57)【要約】
【課題】ダウンドロー法によりシートガラスを引き下げる速度を上げて成形された薄いシートガラスにスクライブ線を形成する際に、カッター支持台にかかる不要な力を抑制し、シートガラスの切断面に切断不良が生じるのを抑えることのできるガラス板の製造方法を提供する。
【解決手段】ガラス板の製造方法であって、シートガラスに切り込みを入れるカッターを支持し、カッターをシートガラスに対して押圧するカッター支持台を、カッターをシートガラスに押圧した状態で搬送してシートガラスの表面に直線状のスクライブ線を形成するスクライブ工程を有する。スクライブ工程では、前記カッター支持台と離間して配された連結台を、カッター支持台とともに搬送によって前記短手方向に搬送され、連結台に追従して動く制御線をカッター支持台に向けて案内することを特徴とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板の製造方法であって、
成形体を用いて熔融ガラスをシートガラスに成形する成形工程と、
前記シートガラスを下方向に搬送しながら徐冷を行う徐冷工程と、
前記シートガラスに切り込みを入れるカッターを支持し、前記カッターを前記シートガラスに対して押圧するカッター支持台を、前記カッターを前記シートガラスに押圧した状態で、前記シートガラスの長手方向と直交する短手方向の一方の端から他方の端に搬送して前記シートガラスの表面に直線状のスクライブ線を形成するスクライブ工程と、
前記スクライブ線に沿って前記シートガラスを切断する切断工程と、を有し、
前記スクライブ工程では、前記カッター支持台と離間して配された連結台は、前記カッターの動作を制御する制御線を囲むよう保持する制御線キャリアの一端に連結され、前記カッター支持台とともに前記搬送によって前記短手方向に搬送され、前記連結台に追従して動く前記制御線を前記カッター支持台に向けて案内することを特徴とするガラス板の製造方法。
【請求項2】
前記スクライブ工程では、前記カッター支持台および前記連結台が弾性を有する連結部材で連結され、前記連結部材は、前記搬送によって前記短手方向に搬送される、請求項1に記載のガラス板の製造方法。
【請求項3】
前記スクライブ工程では、前記制御線キャリアは、一軸方向の周りに屈曲し、前記制御線を前記カッター支持台に導く、請求項1又は2に記載のガラス板の製造方法。
【請求項4】
前記スクライブ工程では、前記連結台が前記カッター支持台に対し搬送方向の下流側に配された状態で、前記カッター支持台および前記連結台を搬送する、請求項1から3のいずれか1項に記載のガラス板の製造方法。
【請求項5】
ガラス板の製造装置であって、
成形体を用いて熔融ガラスをシートガラスに成形する成形装置と、
前記シートガラスを下方向に搬送しながら徐冷を行う徐冷装置と、
前記シートガラスにスクライブ線を形成するスクライブ装置と、
前記スクライブ線に沿って前記シートガラスを切断する切断装置と、を有し、
前記スクライブ装置は、
前記シートガラスに切り込みを入れるカッターを支持し、前記カッターを前記シートガラスに対して押圧するカッター支持台と、
前記カッター支持台を、前記シートガラスの長手方向と直交する短手方向の一方の端から他方の端に搬送して前記シートガラスに直線状のスクライブ線を形成する搬送機構と、
前記カッターの動作を制御する制御線を囲むよう保持する制御線キャリアと、
前記制御線キャリアの一端に連結され、前記カッター支持台と離間して配された連結台と、を備え、
前記カッター支持台と前記連結台とが前記搬送機構により前記短手方向に搬送され、前記連結台に追従して動く前記制御線を前記カッター支持台に向けて案内する、
ことを特徴とするガラス板の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板の製造方法、及び、ガラス板の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダウンドロー法により成形される長尺状のシートガラスを切断するために、予めシートガラスの表面にスクライブ線を形成する(スクライブ加工)ことが知られている。スクライブ線は、成形体から下方向に搬送されるシートガラスに対して、例えば、シートガラスに切れ込みを入れるためのカッターを、シートガラスに押し当ててシートガラスの幅方向に移動させることで形成される。
このようなスクライブ加工を行うスクライブ装置は、一般的に、カッターを支持するカッター支持台と、カッター支持台をシートガラスの幅方向に搬送するための搬送機構と、を備えている(例えば、特許文献1)。特許文献1では、カッターは、シートガラスに押圧されシートガラスに対し移動することで回転する、あるいは、シートガラスに対し擦れながら移動し、これにより、スクライブ線が形成される。
一方で、従来のスクライブ装置として、カッター支持台に、カッターの回転駆動を制御するための制御ケーブルが接続されたものがある。この種のスクライブ装置では、カッターは、自ら回転しながらシートガラスに対し移動することで、スクライブ線を形成する。この装置において、制御ケーブルは、スクライブ加工時に、カッター支持台に追従して動く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−278473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ダウンドロー法を用いたガラス板の製造方法では、下方向に搬送されるシートガラスに対して、スクライブ加工を行う。シートガラスの厚さを薄くしようとする場合、シートガラスを下方向に搬送する速度を上げる必要がある。シートガラスの搬送速度を引き上げるためには、カッター支持台を速く搬送させて、シートガラスにスクライブ線を形成する速度を上げる必要がある。
しかし、カッター支持台を速く搬送すると、制御ケーブルに沿って伝わる振動が、カッター支持台に対して大きく伝わるため、シートガラスに押圧されたカッターには、不均一な力がかかりながらシートガラスの幅方向に移動する。この結果、図6(a)に示すように、シートガラスGには、縞状に波打ったような不均一なスクライブ線が形成される。図6(a)は、従来のスクライブ加工によって形成されるスクライブ線の断面を示す図である。このような縞状の切れ込みは、カッター71がシートガラスの搬送方向(上下方向)に振動するために形成されると考えられる。このようなスクライブ線に沿ってシートガラスを切断すると、シートガラスGの切断面には、図6(b)に示すように、波打ちと呼ばれる切断不良が生じる。図6(b)は、図6(a)のスクライブ線に沿って切断したときのシートガラスGの切断面を示す図である。スクライブ線が不均一になると、シートガラスGの切断(折割)時に、この不均一となった部分からシートガラスGが割れる場合がある。
本発明は、ダウンドロー法によりシートガラスを引き下げる速度を上げて成形された薄いシートガラスにスクライブ線を形成する際に、カッター支持台にかかる不要な力を抑制し、シートガラスの切断面に切断不良が生じるのを抑えることのできるガラス板の製造方法、及び、ガラス板の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、ガラス板の製造方法であって、
成形体を用いて熔融ガラスをシートガラスに成形する成形工程と、
前記シートガラスを下方向に搬送しながら徐冷を行う徐冷工程と、
前記シートガラスに切り込みを入れるカッターを支持し、前記カッターを前記シートガラスに対して押圧するカッター支持台を、前記カッターを前記シートガラスに押圧した状態で、前記シートガラスの長手方向と直交する短手方向の一方の端から他方の端に搬送して前記シートガラスの表面に直線状のスクライブ線を形成するスクライブ工程と、
前記スクライブ線に沿って前記シートガラスを切断する切断工程と、を有し、
前記スクライブ工程では、前記カッター支持台と離間して配された連結台は、前記カッターの動作を制御する制御線を囲むよう保持する制御線キャリアの一端に連結され、前記カッター支持台とともに前記搬送によって前記短手方向に搬送され、前記連結台に追従して動く前記制御線を前記カッター支持台に向けて案内することを特徴とする。
【0006】
前記スクライブ工程では、前記カッター支持台および前記連結台が弾性を有する連結部材で連結され、前記連結部材は、前記搬送によって前記短手方向に搬送されてもよい。
【0007】
前記スクライブ工程では、前記連結台は、前記カッターの動作を制御する制御線を囲むよう保持する一軸方向の周りに屈曲可能な制御線キャリアの一端に接続され、前記制御線を前記カッター支持台に導いてもよい。
【0008】
前記スクライブ工程では、前記連結台が前記カッター支持台に対し搬送方向の下流側に配された状態で、前記カッター支持台および前記連結台を搬送してもよい。
【0009】
前記スクライブ工程では、厚みが0.05〜0.4mmである前記シートガラスに前記スクライブ線を形成してもよい。
【0010】
本発明の別の一態様は、ガラス板の製造装置であって、
成形体を用いて熔融ガラスをシートガラスに成形する成形装置と、
前記シートガラスを下方向に搬送しながら徐冷を行う徐冷装置と、
前記シートガラスにスクライブ線を形成するスクライブ装置と、
前記スクライブ線に沿って前記シートガラスを切断する切断装置と、を有し、
前記スクライブ装置は、
前記シートガラスに切り込みを入れるカッターを支持し、前記カッターを前記シートガラスに対して押圧するカッター支持台と、
前記カッター支持台を、前記シートガラスの長手方向と直交する短手方向の一方の端から他方の端に搬送して前記シートガラスに直線状のスクライブ線を形成する搬送機構と、
前記カッターの動作を制御する制御線を囲むよう保持する制御線キャリアと、
前記制御線キャリアの一端に連結され、前記カッター支持台と離間して配された連結台と、を備え、
前記カッター支持台と前記連結台とが前記搬送機構により前記短手方向に搬送され、前記連結台に追従して動く前記制御線を前記カッター支持台に向けて案内する、ことを特徴とする。
【0011】
前記カッター支持台と前記連結台は、弾性を有する連結部材で連結され、前記連結部材は、前記搬送機構によって前記短手方向に搬送されてもよい。
【0012】
前記制御線キャリアは、一軸方向の周りに屈曲し、前記制御線を前記カッター支持台に導いてもよい。
【0013】
前記連結台は、前記カッター支持台に対し搬送方向の下流側に配されてもよい。
【0014】
前記シートガラスの厚みは0.05〜0.4mmでもよい。
【0015】
本発明のさらに別の一態様は、成形体から搬送される長尺状のシートガラスにスクライブ加工を施すスクライブ装置であって、
前記シートガラスに切り込みを入れるカッターを支持し、前記カッターを前記シートガラスに対して押圧するカッター支持台と、
前記カッター支持台を、前記シートガラスの長手方向と直交する短手方向の一方の端から他方の端に搬送して前記シートガラスに直線状のスクライブ線を形成する搬送機構と、
前記カッターの動作を制御する制御線を囲むよう保持する制御線キャリアと、
前記制御線キャリアの一端に連結され、前記カッター支持台と離間して配された連結台と、を備え、
前記カッター支持台と前記連結台とが前記搬送機構により前記短手方向に搬送され、前記連結台に追従して動く前記制御線を前記カッター支持台に向けて案内する、ことを特徴とする。
【0016】
この場合に、前記スクライブ工程では、前記連結部材として、前記カッター支持台と前記連結台が所定の間隔をあけて固定された環状のベルト部材を駆動することで、前記カッター支持台および前記連結台を搬送してもよい。
【0017】
前記ガラス板の製造方法は、前記スクライブ工程において、前記制御線を囲むよう保持し、一軸方向の周りに屈曲可能な制御線キャリアであって、一端が前記連結台に接続された制御線キャリアによって、前記制御線を前記連結台に導く場合に好適である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ダウンドロー法によりシートガラスを引き下げる速度を上げて成形された薄いシートガラスにスクライブ線を形成する際に、カッター支持台にかかる不要な力を抑制し、シートガラスの切断面に切断不良が生じるのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態であるガラス板の製造方法のフローを示す図である。
図2】本実施形態の熔解工程〜切断工程を行う装置を模式的に示す図である。
図3】本実施形態におけるガラス板の成形装置、徐冷装置の概略、および、スクライブ装置、の側面図である。
図4図3のスクライブ装置を背面側から見て示す図である。
図5図3のスクライブ装置を底面側から見て示す図である。
図6】(a)は、従来のスクライブ加工によって形成されるスクライブ線の断面を示す図である。(b)は、上記(a)のスクライブ線に沿って切断したときのシートガラスの切断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るガラス板の製造方法、製造装置及びスクライブ装置について説明する。図1は、本実施形態であるガラス板の製造方法のフローを示す図である。
【0021】
(ガラス板の製造方法の全体概要)
ガラス板の製造方法は、熔解工程(ST1)と、清澄工程(ST2)と、均質化工程(ST3)と、供給工程(ST4)と、成形工程(ST5)と、徐冷工程(ST6)と、スクライブ工程(ST7)と、切断工程(ST8)と、を主に有する。この他に、研削工程、研磨工程、洗浄工程、検査工程、梱包工程等を有し、梱包工程で積層された複数のガラス板は、納入先の業者に搬送される。
【0022】
図2は、熔解工程(ST1)〜切断工程(ST8)を行う装置を模式的に示す図である。当該装置は、図2に示すように、主に熔解装置200と、成形装置300と、徐冷装置370と、切断装置400と、を有する。熔解装置200は、熔解槽201と、清澄槽202と、攪拌槽203と、第1配管204と、第2配管205と、を有する。
【0023】
熔解工程(ST1)では、熔解槽201内に供給されたガラス原料を、図示されない火焔および/または電気ヒータで加熱して熔解することで熔融ガラスを得る。
清澄工程(ST2)は、清澄槽202において行われ、清澄槽202内の熔融ガラスを加熱することにより、熔融ガラス中に含まれる酸素やSO2の気泡が、清澄剤の酸化還元反応により成長し液面に浮上して放出される、あるいは、気泡中のガス成分が熔融ガラス中に吸収されて、気泡が消滅する。
均質化工程(ST3)では、第1配管204を通って供給された攪拌槽203内の熔融ガラスを、スターラを用いて攪拌することにより、ガラス成分の均質化を行う。
供給工程(ST4)では、第2配管205を通して熔融ガラスが成形装置300に供給される。
【0024】
成形工程(ST5)では、成形装置300において、熔融ガラスをシートガラスに成形し、シートガラスの流れを作る。本実施形態では、後述する成形体310を用いたオーバーフローダウンドロー法を用いる。なお、成形工程(ST5)では、スロットダウンドロー法を用いて成形を行ってもよい。
徐冷工程(ST6)では、徐冷装置370において、成形装置300から供給されるシートガラスが所望の厚さになり、平面歪が生じないように、さらに、熱収縮率が大きくならないように、冷却される。
スクライブ工程(ST7)では、後述するスクライブ装置500において、上方から流れるシートガラスにスクライブ加工を施すことで、シートガラスの表面にスクライブ線を形成する。
シートガラス切断工程(ST8)では、切断装置400において、スクライブ装置500によって形成されたスクライブ線に沿って所定の長さに切断することで、板状のガラス板を得る。
さらに、図示されないが、ガラス板の幅方向両端に形成された耳部が切断される。ここで、耳部は、徐冷工程(ST6)においてシートガラスの幅方向(短手方向)両端近傍に形成される領域であり、後述する冷却ローラ330及び複数の搬送ローラ350と接触する部分である。また、耳部の厚さは、シートガラスの幅方向中央部の厚さよりも厚く形成されている。
さらに、耳部の切断後のガラス板が所定のサイズに切断されることにより、目標のサイズのガラス板が作製される。この後、ガラス端面の研削・研磨が行われた後、洗浄が行われ、さらに、気泡や脈理等の異常欠陥の有無が検査された後、検査合格品のガラス板が最終製品として梱包される。
【0025】
図3は、ガラス板の成形装置300、徐冷装置370及びスクライブ装置500の構成を示す図であり、成形装置300、徐冷装置370及びスクライブ装置500の概略の側面図を示す。なお、図3では、スクライブ装置500を、分かりやすく示すため、成形装置300および徐冷装置370に対して大きめに表している。
成形装置300で成形されるガラス板は、例えば、液晶ディスプレイ用ガラス基板、有機ELディスプレイ用ガラス基板、カバーガラスに好適に用いられる。成形装置300で成形されるガラス板は、その他、携帯端末機器などのディスプレイや筐体用のカバーガラス、タッチパネル板、太陽電池のガラス基板やカバーガラスとしても用いることができる。特に、ポリシリコンTFTを用いた液晶ディスプレイ用ガラス基板に好適である。
【0026】
成形工程(ST5)を行う成形炉40および徐冷工程(ST6)を行う徐冷炉50は、耐火レンガ、耐火断熱レンガ、あるいはファイバー系断熱材等の耐火物で構成された炉壁に囲まれて構成されている。成形炉40は、徐冷炉50に対して鉛直上方に設けられている。なお、成形炉40および徐冷炉50をあわせて炉30という。炉30の図示されない炉壁で囲まれた成形炉40の炉内部空間には、成形体310と、冷却ローラ330とが設けられ、徐冷炉50の炉内部空間には、搬送ローラ350が設けられている。成形炉40の炉内部空間と徐冷炉50の炉内部空間との間には仕切り板45が設けられ、仕切り板45に設けられた細長いスリット孔を通してシートガラスGが徐冷炉40の炉内部空間に導入される。徐冷炉50の炉内部空間と切断装置400の空間との間には仕切り板55が設けられ、仕切り板55に設けられた細長いスリット孔を通してシートガラスGがスクライブ装置500(切断装置400)の空間に導入される。スクライブ装置500は、切断装置400の1ユニットとして装備され、切断装置400の空間内に配されている。このほかに、冷却ローラ330と成形体310との間に空間を間仕切り熱の移動を遮断する仕切り板が設けられてもよく、さらに冷却ローラ330の下方にシートガラスを冷却する冷却ユニットが設けられてもよい。
【0027】
成形体310は、図2に示すように、第2配管205を通して熔解装置200から流れてくる熔融ガラスを、シートガラスに成形する。これにより、成形装置300内で、鉛直下方(長手方向)のシートガラスの流れが作られる。成形体310は、耐火レンガ等によって構成された細長い構造体であり、図3に示すように断面が楔形状を成している。成形体310の頂部には、熔融ガラスを導く流路となる溝312が設けられている。溝312は、成形装置300に設けられた図示されない供給口において第2配管205と接続され、第2配管205を通して流れてくる熔融ガラスは、溝312を伝って流れる。溝312の深さは、熔融ガラスの流れの下流ほど浅くなっており、溝312から熔融ガラスが鉛直下方に向かって溢れ出るようになっている。
溝312から溢れ出た熔融ガラスは、成形体310の両側の側壁を伝わって鉛直下方に流下する。側壁を流れた熔融ガラスは、図3に示す成形体310の下方端部で合流し、1つのシートガラスGが成形される。これによって、シートガラスGは、徐冷炉50に向かって流下する。
【0028】
徐冷炉50の炉内部空間には、複数の搬送ローラ350が所定の間隔で設けられ、シートガラスGを下方向に牽引する。搬送ローラ350のそれぞれは、ローラ対を有し、シートガラスGの厚さ方向の両側を挟むようにシートガラスGの幅方向の両側端部に設けられている。シートガラスGが下方向に移動する速度は、例えば、50〜80mm/秒である。
【0029】
(スクライブ装置)
図3図5に、スクライブ装置500を示す。図4は、図3のスクライブ装置500を背面側から見て示す図である。スクライブ装置500のうち、シートガラスと向い合う側がスクライブ装置500の正面であり、その反対側がスクライブ装置500の背面である。図5は、図3のスクライブ装置500を底面側から見て示す図である。
スクライブ装置500は、カッター支持台61と、搬送機構63と、連結台65と、制御ケーブル66と、制御線キャリア67と、を備える。
【0030】
カッター支持台61は、シートガラスGに切り込みを入れてスクライブ線S(図3参照)を形成するカッター71を支持する。カッター71は、市販のものを採用でき、例えば三星ダイヤモンド社製APIOを用いることができる。スクライブ線Sのシートガラス表面からの深さは、特に制限されないが、厚み0.05〜0.4mmのシートガラスに対して、例えば1割〜4割である。カッター71には、制御ケーブル66が接続されている。制御ケーブル66は、連結台65側から延びて、カッター支持台61に案内されている。制御ケーブル66は、外部の電源および制御装置に接続された、カッター71の回転駆動、位置を制御するためのものである。
また、カッター支持台61には、スクライブ加工中にカッター71のシートガラスGに対する押圧力を一定に保つための図示されないシリンダが設けられている。シリンダには、図示されないエア供給管が接続され、スクライブ加工中、エアの供給を受ける。カッター71は、シリンダからの空気圧を受けて、シートガラスGに対する押圧力が一定に制御される。押圧力の大きさは、特に制限されないが、例えば、0.05〜0.2MPaの範囲で設定される。また、カッター71の回転速度は、ベルト部材73の移動速度、シートガラスSの厚さによって任意に設定変更できる。
【0031】
搬送機構(搬送装置)63は、スクライブ加工を行う際に、カッター支持台61を、シートガラスGの幅方向の一方の端から他方の端に搬送して、シートガラスGに直線状のスクライブ線Sを形成する。搬送機構63は、ベルト部材73と、ベルト部材73が掛け渡されたローラ75,77(図4参照)と、ローラ75を駆動するための図示されないモータと、を有する。ベルト部材73は、環状の連結部材である。ベルト部材73には、カッター支持台61および連結台65が互いに間隔をあけて固定されている。ベルト部材73は、ゴム等の弾性を有する材質からなることが好ましい。これにより、制御ケーブル66に沿って連結台65に伝わる振動が吸収され、カッター支持台61に伝わるのを抑えることができる。ここでいう振動は、主に、シートガラス幅方向に搬送される連結台65に追従して制御線66を保持する制御線キャリア67が動くことにより生じる振動を指す。なお、ベルト部材73の張り具合が強すぎると、上記振動がカッター支持台61に伝わりやすくなるため、この点を考慮して適宜調整される。
【0032】
カッター支持台61および連結台65は、図4および図5示されるように、ベルト部材73のうち、ローラ75,77の回転中心より下方の部分に固定されている。ベルト部材73の当該下方の部分は、スクライブ加工が行われるときは一方の回転方向(図4の右向きの矢印側の方向)に駆動され、スクライブ加工後、カッター支持台61を元の位置に搬送する場合に、逆側の回転方向(図4の左向きの矢印側の方向)に駆動される。スクライブ加工時のベルト部材73の移動速度は、特に制限されないが、例えば600〜1200mm/秒である。
【0033】
連結台65は、制御線キャリア67に保持された制御ケーブル66を受け入れ、さらにそれをカッター支持台61に向けて案内する。制御ケーブル66は、スクライブ加工中、制御線キャリア67に保持されながら、連結台65に追従してシートガラス幅方向に動く。連結台65は、ベルト部材73を下方から上方に跨ぐように延びるブラケットを有し、ブラケットの上部には制御線キャリア67が接続されている。
連結台65は、カッター支持部61に対して、スクライブ加工時の搬送方向の下流側に位置するよう、ベルト部材73に固定されている。スクライブ加工中に、連結台65に制御線キャリア67からの振動が伝わると、ベルト部材73に図4の上下方向の揺れが生じる可能性がある。このような状況で、連結台65がカッター支持台61に対し搬送方向の上流側に位置していると、カッター支持台61が上記揺れを受けやすくなる。このような揺れを大きく受けないよう、連結台65は、カッター支持台61の搬送方向下流側に位置するよう、ベルト部材73に固定されている。
【0034】
制御線キャリア67は、連結台65に追従して動く制御ケーブル66を保持するためのものである。制御線キャリア67は、一端が連結台65に固定され、他端が図示されない基台に固定された線状の部材である。制御線キャリア67は、具体的には、制御ケーブル66およびエア供給管を囲むよう保持する構造を有する多数のキャリア要素67a(図4および図5参照)が鎖状に連結された部材である。これにより、制御線キャリア67は、一軸方向(図4の紙面奥行方向)の周りに屈曲可能である。言い換えると、制御線キャリア67は、一平面(図4と平行な平面)内で屈曲可能である。制御線キャリア67には、例えば、ケーブルベア(登録商標)が用いられる。制御線キャリア67は、スクライブ加工中、一端側の部分が連結台65に追従して動く。このとき、制御線キャリア67が屈曲する部分では、互いに連結された2つのキャリア要素67aの間で回動が起き、これに伴って連続的に振動が発生することによって、連結台65に不要な力がかかるため、スクライブ線Sが不均一になる原因となっている。特に、薄いシートガラスGにスクライブ線Sを形成する場合、シートガラスGと接触するカッター71に不均一な力がかかると、カッター71が押圧する方向に対してシートガラスGが揺れるため、スクライブ線Sが不均一になる。
【0035】
本実施形態では、スクライブ加工中、カッター支持台61は、ベルト部材73に搬送されて連結台65とともに、シートガラスGの幅方向に移動する。このとき、連結台65には制御ケーブル66に沿って制御線キャリア67からの振動が伝わるが、カッター支持台61は、連結台65から離間して配されているため、この振動は直接伝達されることがなく、制御線キャリア67からカッター支持台61にかかる不要な力は抑制される。このため、スクライブ加工時のカッター71のシートガラスGに対する上下方向位置が安定し、カッター71には均一な力がかかりスクライブ線Sの切れ込みが縞状に波打つことがなく、切断端面においてシートガラスGの切断不良が生じることが抑制される。また、カッター支持台61の振動が抑制され、カッター71の位置が安定することで、スクライブ加工時に発生する粉塵状のガラス屑の量を少なくすることができる。
【0036】
(ガラス板)
本実施形態のガラス板に用いるガラスは、例えば、ボロシリケートガラス、アルミノシリケートガラス、アルミノボロシリケートガラス、ソーダライムガラス、アルカリシリケートガラス、アルカリアルミノシリケートガラス、アルカリアルミノゲルマネイトガラスなどを適用することができる。なお、本発明に適用できるガラスは上記に限定されるものではない。
【0037】
本実施形態で用いるガラス板のガラス組成は例えば以下のものを挙げることができる。しかし、下記ガラス組成には限定されない。以下示す組成の含有率表示は、質量%である。
SiO:50〜70%、
:5〜18%、
Al:0〜25%、
MgO:0〜10%、
CaO:0〜20%、
SrO:0〜20%、
BaO:0〜10%、
RO:5〜20%(ただし、RはMg、Ca、Sr及びBaから選ばれる少なくとも1種であり、ガラス板が含有するものである)、
を含有する無アルカリガラスであることが好ましい。
【0038】
なお、本実施形態では無アルカリガラスとしたが、ガラス板はアルカリ金属を微量含んでいてもよい。アルカリ金属を含有させる場合、R’Oの合計が0.20%を超え2.0%以下(ただし、R’はLi、Na及びKから選ばれる少なくとも1種であり、ガラス板が含有するものである)含むことが好ましい。また、ガラスの熔解を容易にするために、比抵抗を低下させるという観点から、ガラス中の酸化鉄の含有量が0.01〜0.2%であることがさらに好ましい。
【0039】
ここで、LiO,NaO,K2Oは、ガラスから溶出してTFTの特性を劣化させ、また、ガラスの熱膨張係数を大きくして熱処理時に基板を破損するおそれがある成分であることから、液晶ディスプレイ用ガラス基板や有機ELディスプレイ用ガラス基板として適用する場合には、実質的に含まないことが好ましい。しかし、ガラス中に上記成分を敢えて特定量含有させることによって、TFTの特性の劣化やガラスの熱膨張を一定範囲内に抑制しつつ、ガラスの塩基性度を高め、価数変動する金属の酸化を容易にして、清澄性を発揮させることが可能である。そこで、LiO,NaO,KOの合量は0〜2.0%であり、0.1〜1.0%がより好ましく、0.2〜0.5%がさらに好ましい。なお、LiO,NaOは含有させずに、上記成分中でも、最もガラスから溶出してTFTの特性を劣化させ難いKOを含有させることが好ましい。KOの含有量は、0〜2.0%であり、0.1〜1.0%がより好ましく、0.2〜0.5%がさらに好ましい。
【0040】
ガラス板のガラスにおいて、ガラス中の気泡を脱泡させる成分として清澄剤を添加することができる。清澄剤としては、環境負荷が小さく、ガラスの清澄性に優れたものであれば特に制限されないが、例えば、酸化スズ、酸化鉄、酸化セリウム、酸化テルビウム、酸化モリブデン及び酸化タングステンといった金属酸化物から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。
【0041】
なお、As、Sb及びPbOは、熔融ガラス中で価数変動を伴う反応を生じ、ガラスを清澄する効果を有する物質であるが、As、Sb及びPbOは環境負荷が大きい物質であることから、実質的に含まないことが好ましい。なお、本明細書において、As、Sb及びPbOを実質的に含まないとは、0.01%質量未満であって不純物を除き意図的に含有させないことを意味する。
【0042】
本実施形態の用いるシートガラスの厚さは、例えば0.05mm〜0.4mmであることが好ましい。このような薄いシートガラスを製造するためには、成形体から供給されるシートガラスを、搬送ローラの回転速度を速くして、下方向に速く引っ張る必要がある。下方向に速く搬送されるシートガラスに対してスクライブ線を形成するためには、カッター支持台もシートガラスの幅方向に速く搬送する必要がある。本実施形態では、カッター支持台が、連結台から離間して配されているため、上記したように制御線キャリアからの振動の伝達が抑制され、カッター支持台に不要な力がかからないようになっている。これにより、薄いシートガラスを製造するためにカッター支持台が速く搬送されても、直線的なスクライブ線を形成することができる。また、薄いシートガラスであってもスクライブ時にシートガラスに均一に力がかかるため、シートガラスに対して押圧する方向に対してシートガラスが揺れることを防ぐことができる。さらに、シートガラスの揺れを防ぐことができるため、スクライブ工程より前の徐冷工程中のシートガラスの平面歪みを軽減することもできる。
【0043】
本実施形態のガラス板の幅方向の長さは、例えば500mm〜3500mmであり、1000mm〜3500mmであることが好ましく、2000mm〜3500mmであることがより好ましい。一方、ガラス板の縦方向の長さも、例えば500mm〜3500mmであり、1000mm〜3500mmであることが好ましく、2000mm〜3500mmであることがより好ましい。
【0044】
以上、本発明に係るガラス板の製造方法、ガラス板の製造装置及びスクライブ装置について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
上記実施形態において、カッター支持台と連結台の両方が、ベルト部材に固定されていなくてもよい。例えば、連結台がベルト部材に固定されるとともに、カッター支持台は他の連結部材を介して連結台に連結されてもよい。
【符号の説明】
【0045】
61 カッター支持台
63 搬送機構
65 連結台
66 制御線
67 制御線キャリア(ケーブルベア(登録商標))
71 カッター
73 連結部材(ベルト部材)
75、77 ローラ
300 成形装置
370 徐冷装置
400 切断装置
500 スクライブ装置
G シートガラス
S スクライブ線
図1
図2
図3
図4
図5
図6