(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-67534(P2015-67534A)
(43)【公開日】2015年4月13日
(54)【発明の名称】表面改質無機フィラー、その製造方法、表面改質無機フィラーを含むエポキシ樹脂組成物および絶縁フィルム
(51)【国際特許分類】
C04B 35/628 20060101AFI20150317BHJP
C08K 9/04 20060101ALI20150317BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20150317BHJP
C08K 9/06 20060101ALI20150317BHJP
H01B 3/40 20060101ALI20150317BHJP
【FI】
C04B35/00 B
C08K9/04
C08L63/00 C
C08K9/06
H01B3/40 C
H01B3/40 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-74183(P2014-74183)
(22)【出願日】2014年3月31日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0116384
(32)【優先日】2013年9月30日
(33)【優先権主張国】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100089347
【弁理士】
【氏名又は名称】木川 幸治
(74)【代理人】
【識別番号】100154379
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】キム,キ ショック
(72)【発明者】
【氏名】リ,ファ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】シム,ジ ヘ
【テーマコード(参考)】
4G030
4J002
5G305
【Fターム(参考)】
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5G305AA06
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5G305CD01
(57)【要約】
【課題】低い誘電率特性を有するアルキル基およびエポキシ樹脂との相溶性および反応性に優れたアミン基を順次導入して表面改質された表面改質無機フィラー、その製造方法、表面改質無機フィラーを含むエポキシ樹脂組成物および絶縁フィルムを提供する。
【解決手段】本発明の表面改質無機フィラーは、無機フィラーの表面にアルキル基およびアミン基が順次導入されるにあたり、前記アルキル基:アミン基は、0.5:9.5〜4:6の重量比で前記無機フィラーの表面に導入されるものである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機フィラーの表面にアルキル基およびアミン基が順次導入されるにあたり、前記アルキル基:アミン基は、0.5:9.5〜4:6の重量比で前記無機フィラーの表面に導入される、表面改質無機フィラー。
【請求項2】
前記無機フィラーの表面に導入された前記アルキル基およびアミン基は、無機フィラーに対して0.5〜6wt%の割合で含有される、請求項1に記載の表面改質無機フィラー。
【請求項3】
前記アルキル基は、ドデシル(dodecyl)シランカップリング剤を用いて導入される、請求項1に記載の表面改質無機フィラー。
【請求項4】
前記アミン基は、アミノフェニル(aminophenyl)シランカップリング剤を用いて導入される、請求項1に記載の表面改質無機フィラー。
【請求項5】
シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、クレイ、雲母粉、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、ジルコン酸バリウム、およびジルコン酸カルシウムからなる群から選択される、請求項1に記載の表面改質無機フィラー。
【請求項6】
無機フィラーを乾燥する段階と、
アルキル基を含むシランカップリング剤を用いて前記無機フィラーの表面にアルキル基を導入する段階と、
前記アルキル基が導入された無機フィラーにアミン基を含むシランカップリング剤を用いてアミン基を導入する段階と、を含む、表面改質無機フィラーの製造方法。
【請求項7】
前記アルキル基を含むシランカップリング剤は、ドデシル(dodecyl)シランカップリング剤である、請求項6に記載の表面改質無機フィラーの製造方法。
【請求項8】
前記アミン基を含むシランカップリング剤は、アミノフェニル(aminophenyl)シランカップリング剤である、請求項6に記載の表面改質無機フィラーの製造方法。
【請求項9】
前記アルキル基:アミン基は、0.5:9.5〜4:6の重量比で無機フィラーの表面に導入される、請求項6に記載の表面改質無機フィラーの製造方法。
【請求項10】
前記無機フィラーの表面に導入された前記アルキル基およびアミン基は、無機フィラーに対して0.5〜6wt%の割合で含有される、請求項6に記載の表面改質無機フィラーの製造方法。
【請求項11】
前記無機フィラーは、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、クレイ、雲母粉、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、ジルコン酸バリウム、およびジルコン酸カルシウムからなる群から選択される、請求項6に記載の表面改質無機フィラーの製造方法。
【請求項12】
請求項1に記載の表面改質無機フィラーと、
エポキシ樹脂と、
硬化剤と、を含む、エポキシ樹脂組成物。
【請求項13】
硬化促進剤をさらに含む、請求項12に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項14】
請求項12に記載の樹脂組成物を基材上に塗布および半硬化してなる、絶縁フィルム。
【請求項15】
含湿度が0.2〜0.5wt%であり、誘電損率が0.003〜0.01である、請求項14に記載の絶縁フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面改質無機フィラー、その製造方法、表面改質無機フィラーを含むエポキシ樹脂組成物および絶縁フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子産業の急速な発展に伴い、電子機器の小型化および高性能化とともに多層プリント配線板の高性能化が必須となっている。このような特性を満たすために、印刷回路基板(Printed Circuit Board:PCB)の製造のために用いられる層間絶縁フィルム(Build−up film)の高性能化は必須と言える。基板が薄層化するにつれて薄層基板の反り(warpage)を抑制および制御するために低熱膨張率(CTE)および高モジュラス(high modulus)が要求され、微細配線を形成するための「低粗度化」と高周波信号における信号損失率の低下によりHSIO(High Speed Input Output)を適用するための低誘電率および低誘電損失の基板の材料が要求されている。
【0003】
近年、低誘電損失の基板の材料を開発するための様々な研究が行われている。例えば、低誘電率特性を有するエポキシ樹脂および硬化剤の合成、低誘電特性を有するエポキシ樹脂および硬化剤の使用、誘電損失の低い無機フィラーを含む有無機ハイブリッド複合体に関する研究が最も一般的と言える。
【0004】
基板の材料のフィラーとして、アルミナとシリカなどの様々な無機フィラーを使用することができ、通常、ビルドアップ(build−up)フィルムの無機フィラーとしては、シリカが主に用いられてきた。ビルドアップ絶縁フィルムの誘電率と誘電損失は、誘電特性に優れたシリカの含量に大きく左右され、約30ppm以下の熱膨張係数と0.01以下の低い誘電損率(D
f)の値を得るためには約60wt%以上の高含量のシリカの添加が必須である。数ナノ〜マイクロの大きさを有するシリカを高含量で添加するためには、優れた分散力が必須であり、フィラーとしてエポキシ組成物に添加されて、エポキシ樹脂との優れた相溶性と反応性により所望の物性を得るためにはシリカの表面処理は必須と言える。そのため、エポキシ樹脂内に高含量のシリカを添加する際に、少量の分散剤を添加するか、湿/乾式法で表面処理されて表面に特定の官能基を含むシリカを主に使用している。
【0005】
上述の通り、フィルムの誘電特性は、常にシリカの含量に依存し、低い誘電特性のために高含量のシリカの添加が必須であるが、高含量のシリカの添加は、フィルム加工性と機械的物性の低下をもたらす。そのため、フィルムの組成において最大の部分を占めるシリカの高機能化により添加量を減少させる必要があり、高機能性のシリカを製造するために、既存の単一のシランカップリング剤を用いる表面処理の他に、新たな表面処理技術が必要である。
【0006】
一方、特許文献1に開示されたシラン系カップリング剤を用いて表面処理された無機フィラーによれば、エポキシ樹脂との密着性が向上し、その硬化物における亀裂の発生を抑制させる効果はあるが、低熱膨張係数および低誘電損率を図るには限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国公開特許第2013−0037714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、低い誘電率特性を有するアルキル基およびエポキシ樹脂との相溶性および反応性に優れたアミン基を順次導入して表面改質された無機フィラーを用いてエポキシ樹脂組成物を製造すると、前記樹脂組成物が低い含湿度とともに低熱膨張係数および低誘電損率の特性を有することを見出し、本発明の完成に至った。
【0009】
本発明の一つの目的は、低い誘電率特性を有するアルキル基およびエポキシ樹脂との相溶性および反応性に優れたアミン基を導入して無機フィラーの表面を改質する方法を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、前記表面改質された無機フィラーを含むエポキシ樹脂組成物を提供することにある。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、前記エポキシ樹脂組成物を用いて製造された絶縁フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1目的を達成するための本発明に係る表面改質無機フィラー(以下、「第1発明」とする)は、無機フィラーの表面にアルキル基およびアミン基が順次導入されるにあたり、前記アルキル基:アミン基は、0.5:9.5〜4:6の重量比で前記無機フィラーの表面に導入される。
【0013】
第1発明において、前記無機フィラーの表面に導入された前記アルキル基およびアミン基は、無機フィラーに対して0.5〜6wt%の割合で含有される。
【0014】
第1発明において、前記アルキル基は、ドデシル(dodecyl)シランカップリング剤を用いて導入される。
【0015】
第1発明において、前記アミン基は、アミノフェニル(aminophenyl)シランカップリング剤を用いて導入される。
【0016】
第1発明において、前記無機フィラーは、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、クレイ、雲母粉、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、ジルコン酸バリウム、およびジルコン酸カルシウムからなる群から選択される。
【0017】
本発明の第2目的を達成するための表面改質無機フィラーの製造方法(以下、「第2発明」とする)は、無機フィラーを乾燥する段階と、アルキル基を含むシランカップリング剤を用いて前記無機フィラーの表面にアルキル基を導入する段階と、前記アルキル基が導入された無機フィラーにアミン基を含むシランカップリング剤を用いてアミン基を導入する段階と、を含む。
【0018】
第2発明において、前記アルキル基を含むシランカップリング剤は、ドデシル(dodecyl)シランカップリング剤である。
【0019】
第2発明において、前記アミン基を含むシランカップリング剤は、アミノフェニル(aminophenyl)シランカップリング剤である。
【0020】
第2発明において、前記アルキル基:アミン基は、0.5:9.5〜4:6の重量比で無機フィラーの表面に導入される。
【0021】
第2発明において、前記無機フィラーの表面に導入された前記アルキル基およびアミン基は、無機フィラーに対して0.5〜6wt%の割合で含有される。
【0022】
第2発明において、前記無機フィラーは、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、クレイ、雲母粉、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、ジルコン酸バリウム、およびジルコン酸カルシウムからなる群から選択される。
【0023】
本発明の第3目的を達成するためのエポキシ樹脂組成物(以下、「第3発明」とする)は、第1発明の表面改質無機フィラーと、エポキシ樹脂と、硬化剤と、を含む。
【0024】
第3発明において、前記組成物は、硬化促進剤をさらに含む。
【0025】
本発明の第4目的を達成するための絶縁フィルム(以下、「第4発明」とする)は、第2発明に係る樹脂組成物を基材上に塗布および半硬化してなる。
【0026】
第4発明において、前記絶縁フィルムの含湿度が0.2〜0.5wt%であり、誘電損率が0.003〜0.01である。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る無機フィラーの表面改質方法によれば、無機フィラーの水分との親和力を減少させてエポキシ樹脂組成物の誘電損率に影響を及ぼす含湿度を低減することができる。
【0028】
また、本発明に係る表面改質された無機フィラーを用いて製造されたエポキシ樹脂組成物は、無機フィラーの優れた分散性により組成物の機械的物性の低下を起こさず、優れた界面接着力により低い熱膨張率特性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の目的、特定の利点および新規の特徴は、添付図面に係る以下の詳細な説明および好ましい実施例によってさらに明らかになるであろう。本明細書において、各図面の構成要素に参照番号を付け加えるに際し、同一の構成要素に限っては、たとえ異なる図面に示されても、できるだけ同一の番号を付けるようにしていることに留意しなければならない。また、「一面」、「他面」、「第1」、「第2」などの用語は、一つの構成要素を他の構成要素から区別するために用いられるものであり、構成要素が前記用語によって限定されるものではない。以下、本発明を説明するにあたり、本発明の要旨を不明瞭にする可能性がある係る公知技術についての詳細な説明は省略する。
【0030】
以下、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。
【0031】
本発明に係る無機フィラーの表面改質方法は、無機フィラーを乾燥する段階と、アルキル基を含むシランカップリング剤を用いて無機フィラーの表面にアルキル基を導入する段階と、前記アルキル基が導入された無機フィラーにアミン基を含むシランカップリング剤を用いてアミン基を導入する段階と、を含む。
【0032】
本発明によれば、乾燥した無機フィラーの表面に低誘電特性を有するアルキル基を含有するシランカップリング剤を処理した後、エポキシ樹脂との反応性に優れたアミン基を含むシランカップリング剤をさらに処理して樹脂内の分散性を向上させ、含湿度、熱膨張係数、および誘電損率を大幅に減少させる無機フィラーを製造することができる。以下、無機フィラーの表面改質方法について工程別に分けて説明する。
【0033】
まず、表面を改質したい無機フィラーを、オーブンを用いて約12時間熱乾燥して、表面が乾燥した無機フィラーを製造する。この際、無機フィラーは、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、クレイ、雲母粉、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、ジルコン酸バリウム、およびジルコン酸カルシウムからなる群から選択してもよく、本発明では、シリカが特に好ましいが、表面を改質したい無機フィラーは、本発明の目的を達成するための範疇内のものであれば、必ずしもこれに限定されない。一方、無機フィラーを乾燥する時間は、無機フィラーの種類、量および粒径に応じて調節することができる。
【0034】
前記乾燥した無機フィラーをエタノール/蒸留水の混合液に分散させ、アルキル基を含むシランカップリング剤を投与する。本発明では、ドデシルシランカップリング剤を用いているが、必ずしもこれに限定されず、アルキル基の数が1〜12であるアルキル基を含むシランカップリング剤を用いてもよい。前記アルキル基が含まれたシランカップリング剤を投与し、約60〜80℃の条件下で攪拌して、無機フィラーと約5〜24時間反応させる。表面処理を施した後、未反応のシランカップリング剤を除去するためにエタノールを用いて数回洗浄してから濾過し、80℃の温度条件下で乾燥して、最終的にドデシル基で表面処理された無機フィラーを得ることができる。
【0035】
次に、前記アルキル基が導入された無機フィラーをエタノール/蒸留水の混合液に分散させ、アミン基を含むシランカップリング剤を投与する。本発明では、アミノフェニルシランカップリング剤を用いているが、必ずしもこれに限定されない。前記アミン基を含むシランカップリング剤を投与し、約60〜80℃の条件下で攪拌して約5〜24時間反応させる。表面処理を施した後、未反応のシランカップリング剤を除去するためにエタノールを用いて数回洗浄してから濾過し、80℃の温度条件下で乾燥して、最終的にアルキル基とアミン基で表面処理された無機フィラーを得ることができる。
【0036】
無機フィラーにシランカップリング剤で表面処理を施す際、無機フィラー対比表面処理のためのシランカップリング剤の含量は0.5〜6wt%に限定し、2wt%に表面処理を施すことが最も好ましい。無機フィラーの表面に結合されたシランカップリング剤の含量が0.5wt%未満である場合には、エポキシ樹脂内における表面改質無機フィラーの分散性が低下し、6wt%を超える場合には、樹脂組成物の誘電損率が増加する問題が発生する。
【0037】
また、前記アルキル基とアミン基は、導入割合が0.5:9.5〜4:6の重量比になるように無機フィラーの表面に結合させることが好ましい。仮にアルキル基の導入割合が0.5未満である場合には、疎水性が減少して樹脂組成物の含湿度が増加して誘電損率が増加し、4を超える場合には、エポキシ樹脂との界面結合力が減少して樹脂組成物の熱膨張係数の増加する問題が発生する。
【0038】
このように本発明に係る表面改質無機フィラーは、表面張力が低くいため水分との親和力が減少してエポキシ樹脂組成物の含湿度が低下し、これによりエポキシ組成物の誘電損率を低減することができる。
【0039】
本発明に係るエポキシ樹脂組成物は、本発明に係る表面改質無機フィラーと、エポキシ樹脂と、硬化剤と、を含む。
【0040】
前記エポキシ樹脂は、ナフタレン系エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、およびリン(phosphorous)系エポキシ樹脂から選択される一つ以上のものであってもよく、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0041】
前記硬化剤は、活性エステル硬化剤、アミノトリアジンノボラック硬化剤、アミド系硬化剤、ポリアミン系硬化剤、酸無水物硬化剤、フェノールノボラック型硬化剤、ポリメルカプタン硬化剤、第三級アミン硬化剤またはイミダゾール硬化剤から選択される一つ以上のものであってもよく、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0042】
本発明に係るエポキシ樹脂組成物は、硬化時間および硬化温度を調整するために硬化促進剤をさらに含んでもよい。前記硬化促進剤としては、イミダゾール系硬化促進剤が挙げられ、これに限定されるず、2−エチル−4メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−アルキルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールおよびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一つを用いてもよい。
【0043】
本発明に係るエポキシ樹脂組成物を用いて絶縁フィルムまたはプリプレグ(prepreg)を作製することができる。前記絶縁フィルムは、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephthalate、PET)のような所定の基材(substrate)上に本発明に係る樹脂組成物を塗布および硬化して作製する。
【0044】
このように作製された絶縁フィルムは多様に応用することができ、通常、多層印刷回路基板のビルドアップ(build−up)絶縁層を形成するために用いられる。すなわち、前記絶縁フィルムを所定の配線パターンが形成された基板上に積層した後、真空などにより絶縁フィルムを前記基板上にラミネーション(lamination)させる。
【0045】
一方、前記プリプレグは、本発明に係る樹脂組成物をワニス(varnish)状に製造した後、このようなワニスにガラス繊維(glass fabric)などを含浸(impregnation)し、これを乾燥して製造する。このように製造されたプリプレグは、内部にガラス繊維を含んでおり、熱安定性および機械的安定性に非常に優れるという利点があるが、ガラス繊維が占める重量および体積などによって多層印刷回路基板にはコア層以外のものは使用が難しいという問題がある。
【0046】
一方、本発明に係る樹脂組成物により前記のように製造された絶縁フィルムまたはプリプレグを用いて印刷回路基板を作製することができる。すなわち、前記絶縁フィルムまたはプリプレグを所定の回路パターンが形成された基板上に積層および加圧して印刷回路基板を作製する。このような絶縁フィルムまたはプリプレグは、印刷回路基板の絶縁層(insulating Layer)の役割を果たす。
【0047】
本発明に係る表面改質された無機フィラーを含むエポキシ樹脂組成物を用いて製造された絶縁フィルムは、0.2〜0.5wt%の低い含湿度を有し、これによって0.003〜0.01の低誘電損率の特性が得られる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例などを参照して本発明をより具体的に説明するが、下記例に本発明の範疇が限定されない。
【0049】
(比較例1)
本発明に用いられたシリカは、使用前に100℃で約12時間乾燥してから実験に使用した。エポキシ基を導入するために(3−glycidoxypropyl)methyldiethoxysilane(GPTMS)を使用した。シリカをエタノール/蒸留水の混合液に分散させてGPTMSを投与し、約60〜80℃の条件下で攪拌して約5〜24時間シリカと反応させる。表面処理を施した後、未反応のシランカップリング剤を除去するためにエタノールを用いて数回洗浄してから濾過し、80℃の温度条件下で乾燥して、最終的にエポキシ基で表面処理されたシリカ(GPTMS−SiO
2)を得ることができる。
【0050】
表面処理されたシリカは、MEK(Methyl Ethyl Ketone)溶媒を用いてスラリー化し、製造されたスラリーはエポキシ樹脂に添加して攪拌するとともに混合し、硬化剤としてアミノトリアジンノボラックと活性エステルを用いて高分子複合体のサンプルを製造した。エポキシ組成物を製造する際にシリカの含量は75wt%に固定した。
【0051】
(比較例2)
本発明に用いられたシリカは、使用前に100℃で約12時間乾燥してから実験に使用した。アルキル基を導入するためにドデシル(dodecyl)シランカップリング剤を使用した。シリカをエタノール/蒸留水の混合液に分散させてドデシルシランカップリング剤を投与し、約60〜80℃の条件下で攪拌して約5〜24時間シリカと反応させる。表面処理を施した後、未反応のシランカップリング剤を除去するためにエタノールを用いて数回洗浄してから濾過し、80℃の温度条件下で乾燥して、最終的にドデシル基で表面処理されたシリカ(C−SiO
2)を得ることができる。
【0052】
表面処理されたシリカは、MEK(Methyl Ethyl Ketone)溶媒を用いてスラリー化し、製造されたスラリーはエポキシ樹脂に添加して攪拌するとともに混合し、硬化剤としてアミノトリアジンノボラックと活性エステルを用いて高分子複合体のサンプルを製造した。エポキシ組成物を製造する際にシリカの含量は75wt%に固定した。
【0053】
(比較例3)
本発明に用いられたシリカは、使用前に100℃で約12時間乾燥してから実験に使用した。アミン基を導入するためにアミノフェニル(aminophenyl)シランカップリング剤(APS)を使用した。シリカをエタノール/蒸留水の混合液に分散させてドデシルシランカップリング剤を投与し、約60〜80℃の条件下で攪拌して約5〜24時間シリカと反応させる。表面処理を施した後、未反応のシランカップリング剤を除去するためにエタノールを用いて数回洗浄してから濾過し、80℃の温度条件下で乾燥して、最終的にアミン基で表面処理されたシリカ(APS−SiO
2)を得ることができる。
【0054】
表面処理されたシリカは、MEK(Methyl Ethyl Ketone)溶媒を用いてスラリー化し、製造されたスラリーはエポキシ樹脂に添加して攪拌するとともに混合し、硬化剤としてアミノトリアジンノボラックと活性エステルを用いて高分子複合体のサンプルを製造した。エポキシ組成物を製造する際にシリカの含量は75wt%に固定した。
【0055】
(実施例1)
本発明に用いられたシリカは、使用前に100℃で約12時間乾燥してから実験に使用した。アルキル基とアミン基を導入するためにドデシル(dodecyl)シランカップリング剤とアミノフェニル(aminophenyl)シランカップリング剤を使用した。シリカをエタノール/蒸留水の混合液に分散させてドデシルシランカップリング剤を投与し、約60〜80℃の条件下で攪拌して約5〜24時間シリカと反応させる。表面処理を施した後、未反応のシランカップリング剤を除去するためにエタノールを用いて数回洗浄してから濾過し、80℃の温度条件下で乾燥して、最終的にドデシル基で表面処理されたシリカ(C−SiO
2)を得ることができる。
【0056】
2次表面処理のためにドデシル表面処理されたシリカをエタノール/蒸留水の混合液に分散させてアミノフェニルシランカップリング剤を投与し、約60〜80℃の条件下で攪拌して約5〜24時間シリカと反応させる。表面処理を施した後、未反応のシランカップリング剤を除去するためにエタノールを用いて数回洗浄してから濾過し、80℃の温度条件下で乾燥して、最終的にドデシル基とアミン基で表面処理されたシリカ(C/APS−SiO
2)を得ることができる。シリカ表面処理を施す際にシリカに対比表面処理のためのシランカップリン剤含量は0.5〜6wt%に限定し、2wt%で表面処理を施すことが最も好ましい。
【0057】
0.5:9.5の割合のドデシル基とアミン基で表面処理されたシリカは、溶媒としてMEK(Methyl Ethyl Ketone)を用いてスラリー化し、製造されたスラリーはエポキシ樹脂に添加して攪拌するとともに混合し、硬化剤としてアミノトリアジンノボラックを用いて高分子複合体のサンプルを製造した。エポキシ組成物を製造する際にシリカの含量は75wt%に固定した。
【0058】
(実施例2)
シリカの表面処理方法は実施例1と同様であり、ドデシル基とアミン基の割合は1:9に調節して表面処理を施した。
【0059】
表面処理されたシリカは、溶媒としてMEK(Methyl Ethyl Ketone)を用いてスラリー化し、製造されたスラリーはエポキシ樹脂に添加して攪拌するとともに混合し、硬化剤としてアミノトリアジンノボラックを用いて高分子複合体のサンプルを製造した。エポキシ組成物を製造する際にシリカの含量は75wt%に固定した。
【0060】
(実施例3)
シリカの表面処理方法は実施例1と同様であり、ドデシル基とアミン基の割合は2:8に調節して表面処理を施した。
【0061】
表面処理されたシリカは溶媒としてMEK(Methyl Ethyl Ketone)を用いてスラリー化し、製造されたスラリーはエポキシ樹脂に添加して攪拌するとともに混合し、硬化剤としてアミノトリアジンノボラックを用いて高分子複合体のサンプルを製造した。エポキシ組成物を製造する際にシリカの含量は75wt%に固定した。
【0062】
(実施例4)
シリカの表面処理方法は実施例1と同様であり、ドデシル基とアミン基の割合は3:7に調節して表面処理を施した。
【0063】
表面処理されたシリカは溶媒としてMEK(Methyl Ethyl Ketone)を用いてスラリー化し、製造されたスラリーはエポキシ樹脂に添加して攪拌するとともに混合し、硬化剤としてアミノトリアジンノボラックを用いて高分子複合体のサンプルを製造した。エポキシ組成物を製造する際にシリカの含量は75wt%に固定した。
【0064】
(実施例5)
シリカの表面処理方法は実施例1と同様であり、ドデシル基とアミン基の割合は4:6に調節して表面処理を施した。
【0065】
表面処理されたシリカは溶媒としてMEK(Methyl Ethyl Ketone)を用いてスラリー化し、製造されたスラリーはエポキシ樹脂に添加して攪拌するとともに混合し、硬化剤としてアミノトリアジンノボラックを用いて高分子複合体のサンプルを製造した。エポキシ組成物を製造する際にシリカの含量は75wt%に固定した。
【0066】
前記比較例および実施例により製造された樹脂組成物は、基材上に塗布および半硬化して絶縁フィルムを形成した後、所定規格に加工して含湿度、熱膨張係数、および誘電率を測定した。
【0067】
【表1】
【0068】
前記表1を参照すると、比較例1〜3において単一のシランカップリング剤処理されたシリカを用いて製造された絶縁フィルムは、熱膨張係数および誘電損率が比較的高いことが分かる。しかし、実施例1〜5では、アルキル基およびアミン基をシリカに順次導入することで低熱膨張係数および低誘電損率の特性を図ることを確認することができる。
【0069】
以上、本発明を具体的な実施例に基づいて詳細に説明したが、これは本発明を具体的に説明するためのものであり、本発明はこれに限定されず、該当分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想内にての変形や改良が可能であることは明白であろう。
【0070】
本発明の単純な変形乃至変更はいずれも本発明の領域に属するものであり、本発明の具体的な保護範囲は添付の特許請求の範囲により明確になるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、表面改質無機フィラー、その製造方法、表面改質無機フィラーを含むエポキシ樹脂組成物および絶縁フィルムに適用可能である。