【課題】粒子の平均粒子径が小さく、溶解不良や凝集物の発生が抑制されるので、優れた付着性、耐溶剤性、耐湿性、良好な外観を有する被膜を得ることができる、変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物の製造方法の提供。
【解決手段】不飽和カルボン酸、その無水物および誘導体からなる群より選ばれる1種以上の化合物によりポリオレフィン樹脂が変性された変性ポリオレフィン樹脂と、式(1):R−O−(C
Hで表される分子量200未満の化合物と、常圧における20℃の水への溶解量が水に対して5重量%以下である有機溶剤と、前記1種以上の化合物を中和する塩基性物質を含む溶液Aに水を加え、得られる転相乳化物Bから有機溶剤を除去する、乳化作用を持つ界面活性剤(式(1)で表される分子量200未満の化合物を除く)を含まない変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物の製造方法。
不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の無水物、及び、不飽和カルボン酸の誘導体からなる群より選ばれる1種以上の化合物によりポリオレフィン樹脂が変性された変性ポリオレフィン樹脂と、
一般式(1):
R−O−(ClH2lO)mH・・・・・(1)
(式中、RはCnH2n+1であり、nは10以下の整数であり、lは5以下の整数であり、mは5以下の整数である。)
で表される分子量200未満の化合物と、
常圧における20℃の水への溶解量が水に対して5重量%以下である有機溶剤と、
前記不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の無水物、及び、不飽和カルボン酸の誘導体からなる群より選ばれる1種以上の化合物を中和する塩基性物質を含む溶液Aを得て、
溶液Aに水性媒体を加えて転相乳化物Bを得て、
転相乳化物Bから前記常圧における20℃の水への溶解量が水に対して5重量%以下である有機溶剤を、変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物の1重量%以下となるように除去する、
乳化作用を持つ界面活性剤(ただし、前記式(1)で表される分子量200未満の化合物を除く。)を含まない変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物の製造方法。
前記ポリオレフィン樹脂が、ポリプロピレン、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体及びエチレン−プロピレン−ブテン共重合体からなる群より選ばれる1種以上である、請求項1又は2に記載の製造方法。
不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の無水物、及び、不飽和カルボン酸の誘導体からなる群より選ばれる1種以上の化合物が、無水マレイン酸、無水イタコン酸、及び、マレイン酸からなる群より選ばれる1種以上を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の方法においては、まず、変性ポリオレフィン樹脂を、一般式(1)で表される分子量200未満の化合物と、有機溶剤と、塩基性物質を含む溶液Aを調製する。
【0013】
[変性ポリオレフィン樹脂]
本発明で変性ポリオレフィン樹脂の原料として用いるポリオレフィン樹脂として特に制限はないが、例えば、重合触媒としてチーグラー・ナッタ触媒又はメタロセン触媒を用いて、エチレン又はα−オレフィンを共重合して得られるポリオレフィン樹脂が挙げられる。ポリオレフィン樹脂としては、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体などが例示される。ポリオレフィン樹脂は、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。後者の場合、それぞれの樹脂の配合比は、特に限定されない。
【0014】
本発明において用いるポリオレフィン樹脂としては、前記樹脂の中でも重合触媒としてメタロセン触媒を用いて製造した、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体(以下、これらを併せてプロピレン系ランダム共重合体ということがある。)及びポリプロピレンから選ばれる少なくとも1種が好ましく、中でも、示差走査型熱量計(DSC)による融点(Tm)が50〜120℃のポリオレフィン樹脂が好ましい。なお、ここで述べたポリプロピレンとは、重合原料がプロピレンである重合体を表す。エチレン−プロピレン共重合体とは、重合原料が、エチレン及びプロピレンである共重合体を表す。プロピレン−ブテン共重合体とは、重合原料が、プロピレン及びブテンである共重合体を表す。しかし、本発明において用いる重合体および共重合体には、重合原料以外の他のオレフィン類由来の構造が、少量含有されていても良い。このような他のオレフィン成分は、例えば、変性ポリオレフィン樹脂の製造までの工程で混入することがある。本発明において用いられるポリオレフィン樹脂における他のオレフィン類由来の構造の量は、樹脂本来の性能を著しく損なわない量であればよい。
【0015】
前述のメタロセン触媒としては、公知のものが使用できる。具体的には以下に述べる成分(1)及び(2)、さらに必要に応じて(3)を組み合わせて得られる触媒が好ましい。
・成分(1);共役五員環配位子を少なくとも一個有する周期律表4〜6族の遷移金属化合物であるメタロセン錯体。
・成分(2);イオン交換性層状ケイ酸塩。
・成分(3);有機アルミニウム化合物。
【0016】
重合触媒としてメタロセン触媒を用いて得られるポリオレフィン樹脂は、分子量分布が狭い、ランダム共重合性に優れ組成分布が狭い、共重合しうるコモノマーの範囲が広いといった特徴を有する。よって、本発明におけるポリオレフィン樹脂として好ましい。
【0017】
前述の本発明におけるDSCによるTmの測定は、例えば以下の条件で行うことができる。DSC測定装置(セイコー電子工業製)を用い、約10mgの試料を200℃で5分間融解後、−60℃まで10℃/minの速度で降温して結晶化した後に、更に10℃/minで200℃まで昇温して融解した時の融解ピーク温度を測定し、該温度をTmとして評価する。尚、後述の実施例におけるTmは前述の条件で測定されたものである。
【0018】
本発明で用いるポリオレフィン樹脂の成分組成は、特に限定されるものではないが、プロピレン成分が60モル%以上のものが好ましい。60モル%以上であることにより、プロピレン樹脂などの非極性樹脂成形品に対する接着性を保持することができる。
【0019】
本発明で用いるポリオレフィン樹脂の分子量は、特に限定されない。しかし、後述する変性ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量は、30,000〜200,000が好ましく、さらに好ましくは、50,000〜150,000である。このため、ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量が200,000より大きい場合は、得られる変性ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量が上述の範囲となるように、熱やラジカルの存在下で減成して、分子量を適当な範囲、例えば200,000以下となるように調整することが好ましい。尚、実施例を含む本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(標準物質:ポリスチレン)によって測定された値である。
【0020】
本発明における変性ポリオレフィン樹脂は、上述のポリオレフィン樹脂を、少なくとも不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の無水物、及び、不飽和カルボン酸の誘導体から選ばれる1種以上の化合物により変性して得られるものである。
【0021】
本発明における不飽和カルボン酸とは、カルボキシ基を含有する不飽和化合物を意味する。不飽和カルボン酸の誘導体とは前記不飽和化合物のモノ又はジエステル、アミド、イミド等を意味する。不飽和カルボン酸の無水物とは該不飽和化合物の無水物を意味する。不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の誘導体及び不飽和カルボン酸の無水物としては例えば、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、アコニット酸、ナジック酸及びこれらの誘導体及び無水物;フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノプロピル、フマル酸モノブチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジプロピル、フマル酸ジブチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノプロピル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジプロピル、マレイン酸ジブチル、マレイミド、N−フェニルマレイミド等が挙げられる。また、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の無水物、及び、不飽和カルボン酸の誘導体からなる群より選ばれる1種の化合物を単独で、または二種以上の化合物を組み合わせて、本発明において使用することができる。後者の場合、それぞれの化合物の配合比は特に限定されない。本発明における不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の無水物、及び、不飽和カルボン酸の誘導体からなる群より選ばれる1種以上の化合物として、不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸の無水物、及び、不飽和ジカルボン酸の誘導体からなる群より選ばれる1種以上が好ましく、無水イタコン酸、無水マレイン酸、及び、マレイン酸からなる群より選ばれる1種以上がより好ましく、無水マレイン酸がさらに好ましい。
【0022】
変性ポリオレフィン樹脂中の不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の無水物及び不飽和カルボン酸の誘導体のグラフト重量は、0.5重量%以上が好ましく、より好ましくは1重量%以上である。0.5重量%以上であることにより、水分散体組成物を形成することが容易となり、極性の被着体に対する水分散体組成物の接着性を保つことができる。前記グラフト重量の上限は、20重量%以下が好ましく、より好ましくは10重量%以下である。20重量%以下であることにより未反応物の発生を防止でき、非極性の非着体に対する接着性を保つことができ、かつこれらの効果を経済的に実現できるので好ましい。
【0023】
変性ポリオレフィン樹脂中の、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の無水物及び不飽和カルボン酸の誘導体のグラフト重量%は、アルカリ滴定法又はフーリエ変換赤外分光法により求めることができ、後述の実施例において示す数値は本方法にて測定された数値である。
【0024】
変性ポリオレフィン樹脂製造の際、ポリオレフィン樹脂にグラフト重合しない不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の無水物及びその誘導体、すなわち未反応物は、例えば貧溶媒で抽出する方法などにより、変性ポリオレフィン樹脂製造の過程で除去してもよい。
【0025】
上記ポリオレフィン樹脂は、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の無水物及びその誘導体以外の化合物によりさらに変性されてもよい。不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の無水物及びその誘導体以外の化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0026】
本発明における(メタ)アクリル酸エステルとは、分子中に(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個含む化合物である。本明細書中、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基及び/又はメタアクリロイル基を意味する。本発明において用いられ得る(メタ)アクリル酸エステルは、下記一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
CH
2=CR
1COOR
2・・・・(2)
【0027】
式(2)中、R
1はH又はCH
3を表し、CH
3が好ましい。R
2はC
nH
2n+1を、nは1〜18の整数を表し、nは1〜15の整数が好ましい。
【0028】
(メタ)アクリル酸エステルでポリオレフィン樹脂をさらに変性することにより、得られる変性ポリオレフィン樹脂の溶剤溶解性や他樹脂との相溶性をより向上させることができる。
【0029】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−メチレン−ビス(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、n−ブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル等が挙げられる。この中でも、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0030】
(メタ)アクリル酸エステルは、1種であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。後者の場合、それぞれの化合物の配合比は特に限定されない。
【0031】
ポリオレフィン樹脂から変性ポリオレフィン樹脂を得る方法は特に限定されず、公知の方法で行うことが可能である。以下、変性の際に用いる、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の無水物及び不飽和カルボン酸の誘導体からなる群より選ばれる1種以上の化合物と、必要に応じて用いられる(メタ)アクリル酸エステル等の化合物を、「変性剤」と総称して説明する。変性ポリオレフィン樹脂を得る方法としては例えば、変性剤をトルエン等の溶剤に加熱溶解し、ラジカル発生剤を添加する溶液法;変性剤及びラジカル発生剤を、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機等の機器に添加し混練する溶融混練法等が挙げられる。2種以上の変性剤を用いる場合、これらを一括添加しても、個々の変性剤を逐次添加してもよい。また、2種以上の変性剤を用いる場合、それぞれの変性剤の配合比は特に限定されない。
【0032】
変性ポリオレフィン樹脂は、各変性剤がポリオレフィン樹脂に導入されていればよく、該変性剤がポリオレフィン樹脂にグラフト重合により導入されていることが好ましい。2種以上の変性剤を用いる場合、いずれの変性剤をポリオレフィン樹脂に先にグラフト重合させるかについては、特に限定されない。
【0033】
グラフト重合反応の際には、ラジカル発生剤を用いてもよい。ラジカル発生剤は、公知のものの中より適宜選択することができる。特に有機過酸化物系化合物が好ましい。ラジカル発生剤として、例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジラウリルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−シクロヘキサン、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クミルパーオキシオクトエート等が挙げられる。このうち、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジラウリルパーオキサイドが好ましい。
【0034】
ラジカル発生剤のポリオレフィン樹脂に対する添加量は、使用する変性剤の合計重量に対し、好ましくは1重量%以上であり、より好ましくは3重量%以上である。1重量%以上であることによりグラフト率を保つことができる。前記添加量の上限は、100重量%以下であり、より好ましくは50重量%以下である。100重量%以下とすることにより経済的である。
【0035】
変性ポリオレフィン樹脂は、1種の変性ポリオレフィン樹脂単独であってもよいし、2種以上の変性ポリオレフィン樹脂の組み合わせであってもよい。後者の場合、それぞれの樹脂の配合比は特に限定されない。
【0036】
本発明における変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物は、下記式(1)で表され且つ分子量200未満である化合物を含む。
【0037】
R−O−(C
lH
2lO)
mH ・・・式(1)
【0038】
式(1)中、RはC
nH
2n+1であり、nは10以下の整数である。nは、8以下であることが好ましく、7以下であることがより好ましく、6以下であることがさらに好ましく、5以下であることがさらにより好ましく、4以下であることがとりわけ好ましい。lは5以下の整数であり、4以下の整数であることが好ましく、3以下の整数であることがより好ましい。mは5以下の整数であり、4以下の整数であることが好ましく、3以下の整数であることがより好ましく、2以下の整数であることがさらに好ましく、1であることがさらにより好ましい。
【0039】
本発明における、式(1)で表され且つ分子量200未満である化合物は、グリコールエーテル系の化合物であることが好ましい。グリコールエーテル系の化合物は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等のグリコール類の水素原子が、アルキル基に置換された構造をしている。
【0040】
本発明における式(1)で表される化合物は、一分子中に疎水基と親水基を持つ。これにより、式(1)で表される化合物を添加することにより、変性ポリオレフィン樹脂を容易に水中に分散、乳化させることができる。そのため、本発明の製造方法で得られる変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物が良好な保存安定性を保つことができるようになる。
【0041】
式(1)で表される化合物の例として、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノデシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルなどが挙げられる。この中でも、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテルが好ましく、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテルがより好ましい。
【0042】
本発明における式(1)で表される化合物の分子量は、200未満である。これにより、変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物の沸点の上昇を抑えることができるので、該組成物、又は該水分散体組成物を含むプライマー等を塗工した後、塗膜の高温又は長時間乾燥を省略することができる。
【0043】
式(1)の化合物の分子量とは、IUPAC原子量委員会で承認された(
12C=12とする)相対原子質量から求める分子量である。
【0044】
本発明の製造方法で用いる式(1)で表される分子量が200未満の化合物は、1種の式(1)で表される化合物単独であってもよいし、又は2種以上の式(1)で表される化合物の組み合わせであってもよい。後者の場合、それぞれの化合物の配合比は特に限定されない。
【0045】
[有機溶剤]
本発明の製造方法において用いる常圧における20℃の水への溶解量が水に対して5重量%以下である有機溶剤は、常圧における20℃の水への溶解量が水に対して5重量%以下であり、好ましくは3重量%以下である。常圧における20℃の水への溶解度が水に対して5重量%以下であることにより、変性ポリオレフィン樹脂を溶解し易くなり、本発明の目的である溶解不良や凝集物の発生が抑制された変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物を得ることが容易となる。本発明において常圧(大気圧)とは約1bar(10
5Pa、1atm)を意味し、好ましくは1atmである。
【0046】
本発明における、常圧における20℃の水への溶解量が水に対して5重量%以下の有機溶剤は、変性ポリオレフィン樹脂を実施例で示すような乳化工程の初期段階で溶解可能な有機溶剤であればよい。該有機溶剤として、例えば、ヘキサン(常圧における20℃の水への溶解量が水に対して0.0013重量%)、ヘプタン(同0.0003重量%/25℃)、デカン(同0.0000009重量%)などの飽和炭化水素類、ベンゼン(同0.18重量%/15℃)、トルエン(同0.05重量%)、キシレン(同0.02重量%)などの芳香族類、酢酸プロピル(同2.3重量%)、酢酸ブチル(同0.7重量%)などのエステル類、シクロペンタン、シクロヘキサン(同0.005重量%)、メチルシクロヘキサン(同0.01重量%)などの環状炭化水素類、メチルイソブチルケトン(同1.9重量%)、シクロヘキサノン(同0.5重量%)などのケトン類、オクタノール(同1.4重量%以下)など高級アルコール類などが挙げられる。これらの中でも、汎用的で且つ変性ポリオレフィン樹脂の溶解性が良好であるので、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンが好ましく、トルエン、メチルシクロヘキサンが特に好ましい。
【0047】
[塩基性物質]
本発明における塩基性物質は、変性ポリオレフィン樹脂中のカルボキシ基を中和することができるものであればよい。本発明における塩基性物質により、変性ポリオレフィン樹脂が水中に分散して、乳化される。これにより、変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物が、良好な保存安定性を保つことができる。
【0048】
塩基性物質としては、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジプロピルアミン、イソブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、n−ブチルアミン、2−メトキシエチルアミン、3−メトキシプロピルアミン、2,2−ジメトキシエチルアミン、モノエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、ピペラジン類、ピロール、ピリジンや水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウムなどのアルカリ金属化合物などが挙げられる。中でも、乳化、分散化の容易さという観点から、モルホリン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールが好ましい。また、これら塩基性物質は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。これら塩基性物質を、2種以上組み合わせて用いる場合、各塩基性物質の配合比は特に限定されない。
【0049】
塩基性化合物の常圧時の沸点は、200℃以下であることが好ましい。沸点が200℃を超える場合には、例えば、変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物を塗膜とする場合、水の除去工程の乾燥処理によって塩基性化合物を除去することが困難となる場合があり、特に低温乾燥時の塗膜の耐水性、耐湿性や、非極性樹脂成型品等の基材との接着性などが悪化する場合がある。
【0050】
塩基性物質の添加量は、前記不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の無水物、及び、不飽和カルボン酸の誘導体からなる群より選ばれる1種以上の化合物を中和できる量であれば、特に規定されない。塩基性物質の添加量は、変性ポリオレフィン樹脂中のカルボキシ基に対して0.5倍等量以上であることが好ましい。これにより、変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物のpHが過剰に低下することを抑制できる。塩基性物質の添加量は、変性ポリオレフィン樹脂中のカルボキシ基に対して、3.0倍等量以下であることが好ましい。これにより、変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物のpHが過剰に上昇することを抑制できる。塩基性物質の添加量は、変性ポリオレフィン樹脂中のカルボキシ基に対して0.5〜3.0倍等量であることが好ましい。
【0051】
本発明の製造方法においては、変性ポリオレフィン樹脂と、一般式(1)で表される分子量200未満の化合物と、常圧における20℃の水への溶解量が水に対して5重量%以下である有機溶剤と、塩基性物質とを含む溶液を得る。以後、この溶液を溶液Aと称する。
【0052】
溶液Aにおける、変性ポリオレフィン樹脂に対する、式(1)で表される分子量が200未満の化合物の配合量に特に限定はないが、変性ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、10〜100重量部混合することが好ましい。
【0053】
溶液Aにおける、式(1)で表される分子量200未満の化合物と、常圧における20℃の水への溶解量が水に対して5重量%以下の有機溶剤との混合比率は、重量比で、95/5〜60/40であることが好ましい。これにより、変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物中の粒子の平均粒子径が小さくなり、凝集物の発生が抑制される。
【0054】
溶液Aの調製において、各成分の添加順序には特に限定はない。例えば、式(1)で表され且つ分子量が200未満である化合物と有機溶剤を予め混合(溶解)してから、変性ポリオレフィン樹脂を前二者の混合物に添加混合(溶解)して、その後に塩基性物質を添加してもよい。また、前記化合物と有機溶剤と変性ポリオレフィンとを同時に添加混合して、その後に塩基性物質を添加してもよい。さらに、変性ポリオレフィンと有機溶剤を予め混合(溶解)してから、式(1)で表され且つ分子量が200未満である化合物を添加し、その後に塩基性物質を添加してもよい。さらにまた、前記化合物と有機溶剤と変性ポリオレフィンと塩基性物質とを一括添加してもよい。
【0055】
各成分の混合(混練)の条件は特に限定されない。通常は、混合用容器等を用いることができ、必要に応じて撹拌等を行ってもよい。
【0056】
溶液Aの状態に限定はなく、例えば乳濁液の状態であってもよく、液体と固体が混在する状態であってもよい。溶液Aは、上記4成分を必須成分として含めばよく、他の成分を含んでいてもよい。
【0057】
本発明の製造方法により製造される変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物のpHは、pH6以上が好ましく、より好ましくはpH7以上である。pH6以上であると、変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物が十分に中和されるので、変性ポリオレフィン樹脂が水に十分に分散し、経時的に沈殿、分離が生じることを抑制し、変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物の貯蔵安定性を保持することができるので好ましい。変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物のpHは、pH12以下であることが好ましい。これにより、変性ポリオレフィン樹脂と他成分との相溶性、変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物を非極性樹脂成形品に塗工後これを乾燥して得られる被膜の耐水性、耐湿性を保持することができる。
【0058】
本発明においては、溶液Aに塩基性物質が含まれているので、変性ポリオレフィン樹脂における不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の無水物、及び、不飽和カルボン酸の誘導体からなる群より選ばれる1種以上の化合物が中和されており、得られる変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物のpHが上記範囲に調整される。
【0059】
本発明の方法では、以上のようにして溶液Aを得た後、溶液Aに水性媒体を加えて転相乳化物Bを得る。
【0060】
水性媒体は水及び親水性物質から選ばれる。親水性物質とは、親水性を示す物質を意味する。親水性物質は、変性ポリオレフィン樹脂が溶けない極性物質が好ましい。このような極性物質としては、例えば、アルコール系、ケトン系、エステル系の親水性物質を挙げることができ、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、、n−プロパノール、n−ブタノール、酢酸エチル、酢酸ブチルが好ましい。
【0061】
水性媒体は、1種類の水性媒体であってもよいし、2種類以上の水性媒体の組み合わせであってもよい。後者の場合、それぞれの配合比は特に限定されない。
【0062】
溶液Aに加える水性媒体の量は、溶液Aが転相乳化される量であればよい。例えば、混合物Aに加える水の量は50重量部以上であることが好ましく、100重量部以上であることがより好ましい。上限は、特に拘らないが、2000重量部以下であることが好ましく、1000重量部以下であることがより好ましい。水性媒体の量が増えても製品の物性に悪影響はないと考えられるが、製品の固形分が低下するので、輸送や塗膜化後の乾燥時などにおいて不経済であり、環境にも好ましくない。
【0063】
溶液Aに水性媒体を添加する際の系内の温度は、通常は5〜110℃(常圧)であることがより好ましい。
【0064】
溶液Aへの水性媒体の添加方法は、例えば、溶液Aを混練し、これに水性媒体を滴下する方法が挙げられる。
【0065】
本発明の製造方法においては、上記のようにして得られた転相乳化物Bから、常圧における20℃の水への溶解量が水に対して5重量%以下である有機溶剤を除去する。
【0066】
該有機溶剤を転相乳化物Bから除去する方法に限定はなく、例えば、常圧下での除去、減圧下での除去が挙げられる。
【0067】
変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物中の常圧における20℃の水への溶解量が水に対して5重量%以下の有機溶剤の含有量は、変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物に対して1重量%以下であることが好ましく、0.5重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以下であることがより好ましく、ゼロであることが更に好ましい。よって、上記含有量となるように該有機溶剤の除去を行うことが好ましい。
【0068】
本発明の製造方法においては、転相乳化物B中の、式(1)で表される分子量が200未満である化合物の一部が除去されてもよい。該化合物の除去は、常圧における20℃の水への溶解量が水に対して5重量%以下の有機溶剤の除去と同時に行えばよい。変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物中の該化合物の含有量は、1〜15wt%以下であることが好ましく、2〜10wt%以下であることがより好ましい。
【0069】
本発明の方法により製造された変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物において、水中に乳化、分散した変性ポリオレフィン樹脂の平均粒子径は、0.3μm以下であることが好ましい。0.3μm以下であると、変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物の貯蔵安定性及び他樹脂との相溶性を保持することができる、更に、基材、例えば非極性樹脂成形品等への付着性を保持し、耐溶剤性、耐水性、耐ブロッキング性等の被膜物性が低下することを抑制することができる。尚、本発明における平均粒子径は動的光散乱法を用いた粒度分布測定により測定することができ、後述の実施例中の数値はこの方法で得られたものである。
【0070】
本発明の方法においては、架橋剤を添加する工程を含んでもよい。架橋剤とは、変性ポリオレフィン樹脂、塩基性物質等に存在する水酸基、カルボキシ基、アミノ基等と反応し、架橋構造を形成する化合物を意味する。架橋剤自体が水溶性のものを用いることができ、又は何らかの方法で水に分散されているものを用いることもできる。架橋剤として、例えば、ブロックイソシアネート化合物、脂肪族又は芳香族のエポキシ化合物、アミン系化合物、アミノ樹脂等が挙げられる。
【0071】
架橋剤を添加する時期は特に限定されるものではなく、例えば、水性化工程の途中、水性化後等が挙げられる。すなわち、溶液Aを得る際に、変性ポリオレフィン樹脂と、式(1)で表される化合物と、有機溶剤とに加えて、架橋剤とを混合する方法、溶液Aに水を加える前に架橋剤を添加する方法、溶液Aに水と共に架橋剤を加える方法、転相乳化物Bに架橋剤を添加する方法等が挙げられる。
【0072】
本発明においては、変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物の原料として、上記成分以外の成分を用いてもよい。他の成分は、変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物の用途、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、水性アクリル樹脂、水性ウレタン樹脂、低級アルコール類、低級ケトン類、低級エステル類、防腐剤、消泡剤、レベリング剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、金属塩、酸類等が挙げられる。他の成分の添加時期は、それぞれの成分に応じて適宜選択される。
【0073】
本発明の方法により得られる変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物は、乳化作用を持つ界面活性剤を、式(1)で表される分子量200未満の化合物以外実質的に含まない。これにより、変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物を非極性樹脂成形品などの基材へ塗工し乾燥した後、付着性、耐水性の著しい低下を抑制することができ、乾燥被膜における可塑効果、ブリード現象を抑制し、外観不良およびブロッキングの発生を抑制することができる。
【0074】
該式(1)で表される分子量200未満の化合物以外の、乳化作用を持つ界面活性剤としては、一例として、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤など市販の乳化剤やその類が挙げられる。
【0075】
ノニオン界面活性剤として、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシアルキレン多環フェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0076】
アニオン界面活性剤として、例えば、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、メチルタウリル酸塩、スルホコハク酸塩、エーテルスルホン酸塩、エーテルカルボン酸塩、脂肪酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド等が挙げられる。
【0077】
本発明の方法で製造される変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物は、接着性が低く塗料等の塗工が困難な基材、例えば非極性樹脂成形品に対して、中間媒体として機能することができる。例えば、接着性の乏しいポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系基材同士の接着剤としても有用であり、基材の表面のプラズマ、コロナ等による表面処理の有無を問わず用いることができる。又、ポリオレフィン系基材の表面に、本発明の方法で製造される変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物を用いて変性ポリオレフィン樹脂をホットメルト方式で積層し、更にその上に塗料等を塗工することにより、塗料の付着安定性等を向上させることができる。さらに、本発明の製造方法で製造される変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物は、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド等の極性基材に対しても適する。即ち、本発明の方法で得られる変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物は、接着剤、プライマー、塗料用バインダー、インキ用バインダー等として好適に用いることができる。
【実施例】
【0078】
次に本発明を実施例および比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0079】
[実施例1]
撹拌機、冷却管、温度計、ロートを取り付けた4つ口フラスコ中に、プロピレン−エチレン−ブテンランダム共重合体〔P−E−B〕(プロピレン成分70モル%、エチレン成分10モル%、ブテン成分20モル%)の無水マレイン酸〔MAH〕変性ポリオレフィン樹脂(重量平均分子量〔Mw〕10万、Tm=65℃)100g、シクロヘキサン20g、プロピレングリコールモノプロピルエーテル50gを添加し、フラスコ内温95℃で30分混練した。次に、モルホリン4gを添加し、フラスコ内温95℃で60分混練した。その後、90℃の脱イオン水290gを60分かけて添加した。引き続き、シクロヘキサン、プロピレングリコールモノプロピルエーテルの一部を減圧下にて除去後、室温まで撹拌しながら冷却し、脱イオン水にて固形分を30wt%となるよう調整した変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物を得た。変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物中のシクロヘキサンの含有率をガスクロマトグラフィーにより確認した結果、変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物に対して1重量%以下であった。
【0080】
[実施例2]
撹拌機、冷却管、温度計、ロートを取り付けた4つ口フラスコ中に、プロピレン−ブテンランダム共重合体〔P−B〕(プロピレン成分70モル%、ブテン成分30モル%)のMAH変性ポリオレフィン樹脂(Mw=9万、Tm=70℃)100g、トルエン10g、ブチルセロソルブ60gを添加し、フラスコ内温95℃で30分混練した。次に、N,N−ジメチルエタノールアミン4gを添加し、フラスコ内温95℃で60分混練した。その後、90℃の脱イオン水290gを60分かけて添加した。引き続き、トルエン、ブチルセロソルブの一部を減圧下にて除去後、室温まで撹拌しながら冷却し、脱イオン水にて固形分を30wt%となるよう調整した変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物を得た。変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物中のトルエンの含有率をガスクロマトグラフィーにより確認した結果、変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物に対して1重量%以下であった。
【0081】
[実施例3]
撹拌機、冷却管、温度計、ロートを取り付けた4つ口フラスコ中に、P−Bランダム共重合体(プロピレン成分80モル%、ブテン成分20モル%)のMAH変性ポリオレフィン樹脂(Mw=12万、Tm=75℃)100g、メチルシクロヘキサン35gを添加し、フラスコ内温95℃で30分混練した後に、プロピレングリコールモノプロピルエーテル40gを添加し、フラスコ内温95℃で30分混練した。次に、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール4gを添加し、フラスコ内温95℃で60分混練した。その後、90℃の脱イオン水290gを60分かけて添加した。引き続き、メチルシクロヘキサン、プロピレングリコールモノプロピルエーテルの一部を減圧下にて除去後、室温まで撹拌しながら冷却し、脱イオン水にて固形分を30wt%となるよう調整した変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物を得た。変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物中のメチルシクロヘキサンの含有率をガスクロマトグラフィーにより確認した結果、変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物に対して1重量%以下であった。
【0082】
[実施例4]
撹拌機、冷却管、温度計、ロートを取り付けた4つ口フラスコ中に、ポリプロピレン〔P〕(プロピレン成分100モル%)のMAH変性ポリオレフィン樹脂(Mw=10万、Tm=70℃)100g、キシレン30g、ブチルセロソルブ50gを添加し、フラスコ内温95℃で30分混練した。次に、N,N−ジエチルエタノールアミン4gを添加し、フラスコ内温95℃で60分混練した。その後、90℃の脱イオン水290gを60分かけて添加した。引き続き、キシレン、ブチルセロソルブの一部を減圧下にて除去後、室温まで撹拌しながら冷却し、脱イオン水にて固形分を30wt%となるよう調整した変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物を得た。変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物中のキシレンの含有率をガスクロマトグラフィーにより確認した結果、変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物に対して1重量%以下であった。
【0083】
[実施例5]
撹拌機、冷却管、温度計、ロートを取り付けた4つ口フラスコ中に、P−Bランダム共重合体(プロピレン成分60モル%、ブテン成分40モル%)のMAHとメチルメタアクリレート〔MMA〕の変性ポリオレフィン樹脂(Mw=7万、Tm=60℃)100g、トルエン30g、ブチルセロソルブ100g、を添加し、フラスコ内温95℃で30分混練した。次に、モルホリン4g、脱イオン水100gを添加し、フラスコ内温95℃で60分混練した。その後、90℃の脱イオン水190gを60分かけて添加した。引き続き、トルエン、ブチルセロソルブの一部を減圧下にて除去後、室温まで撹拌しながら冷却し、脱イオン水にて固形分を30wt%となるよう調整した変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物を得た。変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物中のトルエンの含有率をガスクロマトグラフィーにより確認した結果、変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物に対して1重量%以下であった。
【0084】
[実施例6]
撹拌機、冷却管、温度計、ロートを取り付けた4つ口フラスコ中に、プロピレン−エチレンランダム共重合体〔P−E〕(プロピレン成分90モル%、エチレン成分10モル%)のMAHとトリデシルメタアクリレート〔TDMA〕の変性ポリオレフィン樹脂(Mw=6万、Tm=75℃)100g、メチルシクロヘキサン30g、ブチルセロソルブ50gを添加し、フラスコ内温95℃で30分混練した。次に、N,N−ジエチルエタノールアミン4gを添加し、フラスコ内温95℃で60分混練した。その後、90℃の脱イオン水290gを60分かけて添加した。引き続き、メチルシクロヘキサン、ブチルセロソルブの一部を減圧下にて除去後、室温まで撹拌しながら冷却し、脱イオン水にて固形分を30wt%となるよう調整した変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物を得た。変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物中のメチルシクロヘキサンの含有率をガスクロマトグラフィーにより確認した結果、変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物に対して1重量%以下であった。
【0085】
[実施例7]
撹拌機、冷却管、温度計、ロートを取り付けた4つ口フラスコ中に、実施例3と同様の変性ポリオレフィン樹脂(P−Bランダム共重合体)50gと、実施例6と同様の変性ポリオレフィン樹脂(P−Eランダム共重合体)50g、キシレン20g、プロピレングリコールモノプロピルエーテル60gを添加し、フラスコ内温95℃で30分混練した。次に、モルホリン4gを添加し、フラスコ内温95℃で60分混練した。その後、90℃の脱イオン水290gを60分かけて添加した。引き続き、キシレン、プロピレングリコールモノプロピルエーテルの一部を減圧下にて除去後、室温まで撹拌しながら冷却し、脱イオン水にて固形分を30wt%となるよう調整した変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物を得た。変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物中のキシレンの含有率をガスクロマトグラフィーにより確認した結果、変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物に対して1重量%以下であった。
【0086】
[実施例8]
撹拌機、冷却管、温度計、ロートを取り付けた4つ口フラスコ中に、P−Bランダム共重合体(プロピレン成分70モル%、ブテン成分30モル%)のMAH変性ポリオレフィン樹脂(Mw=10万、Tm=85℃)100g、メチルシクロヘキサン30g、ブチルセロソルブ20gを添加し、フラスコ内温95℃で30分混練した。次に、N,N−ジメチルエタノールアミン4gを添加し、フラスコ内温95℃で60分混練した。その後、90℃の脱イオン水290gを60分かけて添加した。引き続き、メチルシクロヘキサン、ブチルセロソルブの一部を減圧下にて除去後、室温まで撹拌しながら冷却し、脱イオン水にて固形分を30wt%となるよう調整した変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物を得た。変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物中のメチルシクロヘキサンの含有率をガスクロマトグラフィーにより確認した結果、変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物に対して1重量%以下であった。
【0087】
[実施例9]
撹拌機、冷却管、温度計、ロートを取り付けた4つ口フラスコ中に、実施例2と同様のP−Bランダム共重合体のMAH変性ポリオレフィン樹脂(Mw=9万、Tm=70℃)100g、メチルシクロヘキサン30g、プロピレングリコールモノプロピルエーテル30gを添加し、フラスコ内温95℃で30分混練した。次に、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール4g、水酸化マグネシウム1gを添加し、フラスコ内温95℃で60分混練した。その後、90℃の脱イオン水290gを60分かけて添加した。引き続き、メチルシクロヘキサン、プロピレングリコールモノプロピルエーテルの一部を減圧下にて除去後、室温まで撹拌しながら冷却し、脱イオン水にて固形分を30wt%となるよう調整した変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物を得た。変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物中のメチルシクロヘキサンの含有率をガスクロマトグラフィーにより確認した結果、変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物に対して1重量%以下であった。
【0088】
[実施例10]
撹拌機、冷却管、温度計、ロートを取り付けた4つ口フラスコ中に、プロピレン−エチレン−ブテンランダム共重合体〔P−E−B〕(プロピレン成分70モル%、エチレン成分10モル%、ブテン成分20モル%)の無水マレイン酸〔MAH〕変性ポリオレフィン樹脂(重量平均分子量〔Mw〕10万、Tm=65℃)100g、シクロヘキサン20g、プロピレングリコールモノプロピルエーテル50g、モルホリン4gを添加し、フラスコ内温95℃で60分混練した。その後、90℃の脱イオン水290gを60分かけて添加した。引き続き、シクロヘキサン、プロピレングリコールモノプロピルエーテルの一部を減圧下にて除去後、室温まで撹拌しながら冷却し、脱イオン水にて固形分を30wt%となるよう調整した変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物を得た。変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物中のシクロヘキサンの含有率をガスクロマトグラフィーにより確認した結果、変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物に対して1重量%以下であった。
【0089】
[比較例1]
撹拌機、冷却管、温度計、ロートを取り付けた4つ口フラスコ中に、実施例3と同様の変性ポリオレフィン樹脂100g、トルエン50gを添加しフラスコ内温95℃で30分混練した後に、モルホリン4gを添加し、フラスコ内温95℃で60分混練した。その後、90℃の脱イオン水290gを60分かけて添加した。引き続き、トルエンを減圧下にて除去後、室温まで撹拌しながら冷却したが、変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物を得られなかった。
【0090】
[比較例2]
撹拌機、冷却管、温度計、ロートを取り付けた4つ口フラスコ中に、実施例2と同様の変性ポリオレフィン樹脂100g、トルエン10g、ブチルセロソルブ60g、N,N−ジメチルエタノールアミン4g、脱イオン水290gを添加し、フラスコ内温95℃で60分混練した。引き続き、トルエン、ブチルセロソルブの一部を減圧下にて除去後、室温まで撹拌しながら冷却したが、変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物を得られなかった。
【0091】
実施例1〜10で得られた変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物について、以下の試験を行った。比較例1、2については、得られた組成物について、残渣量の確認試験のみを行った。
【0092】
<残渣量の確認>
4つ口フラスコ中の冷却した変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物をステンレス製400メッシュ(目開き=34μm)でろ過し、400メッシュを通過しない残分(残渣)を減圧乾燥機で40℃乾燥し、重量(a)を測定した。以下の式により、残渣量(%)を求めた。
[式]
残渣量(%)=(a)/仕込み変性ポリオレフィン樹脂重量(100g)×100
【0093】
試験結果を表1に示す。なお、表1中の粒子径は、平均粒子径を意味する。
【0094】
【表1】
【0095】
表1の結果から、実施例では比較例と比較して残渣量が少ないことが分かる。また、比較例では粒子が水に分散した状態の組成物が得られさえしなかったのに対し、実施例では粒子径が小さい水分散体組成物が得られたことが分かる。これらの結果は、本発明の製造方法により、組成物中における粒子の平均粒子径が小さく、溶解不良や凝集物の発生が抑制された変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物が得られることを示している。