【解決手段】プラットホーム102へ到着したことが検出された場合に、高さ調整機構20が作動されて空気ばね10に給気される。その結果、車体4の出入口6の床面Fの高さが、駅間を走行する場合の車体4の出入口6の床面Fの高さより高く設定される。その結果、走行する鉄道車両1の道床100から車体4の上面までの高さを、停車中の鉄道車両1の道床100から車体4の上面までの高さより低くできる。車体断面を小さくすることなく、空気抵抗に影響を与える車高方向における断面積を小さくできるので、居住空間を確保しつつ空気抵抗を少なくできる。
レール方向に複数配置される台車と、その台車にそれぞれ配置された空気ばねにより支持される車体と、前記空気ばねの空気を給排して前記車体の高さを調整する高さ調整機構とを備える鉄道車両において、
前記高さ調整機構を作動させて前記空気ばねの空気を排気し、走行中の前記車体の高さを設定する排気手段と、
車両がプラットホームへ到着したことを検出する到着検出手段と、
その到着検出手段によりプラットホームへの到着が検出された場合に、前記高さ調整機構を作動させて前記空気ばねに給気し、前記車体の出入口の床面の高さを、前記排気手段により設定された前記車体の出入口の床面の高さより高く設定する給気手段とを備えていることを特徴とする鉄道車両。
前記排気手段は、前記先頭車両およびその先頭車両の後方に連結される他の車両に配置される複数の台車の空気ばねの空気を排気することを特徴とする請求項3記載の鉄道車両。
前記排気手段は、各車両のレール方向に配置される複数の台車のうちの先頭の台車の空気ばねの空気を排気した後、その台車の後方に位置する他の台車に配置された空気ばねの空気を排気することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の鉄道車両。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、
図1及び
図2を参照して鉄道車両1の構成について説明する。
図1は本発明の一実施の形態における鉄道車両1の側面図であり、
図2(a)は走行中における鉄道車両1の車高方向における断面図であり、
図2(b)は駅に到着した鉄道車両1の車高方向における断面図である。
図1では、鉄道車両1のレール方向の図示を省略している。
【0017】
図1に示すように鉄道車両1は、先頭車両2と、先頭車両2の後方に連結される複数の他の車両3とを備えている。先頭車両2及び他の車両3は、乗客を収容する車体4と、車体4のレール方向の前後の2箇所に配置される台車5とをそれぞれ備え、車体4には、出入口6を開閉する扉7が設けられている。先頭車両2は、車体4が、先頭部が後方上向きに上昇傾斜する傾斜面8を備える流線形状に形成され、先頭部の下部に湾曲板状の排障器9が固定されている。
【0018】
図2を参照して鉄道車両1をさらに説明する。
図2(a)及び
図2(b)に示すように、車体4は、枕木方向に2個、レール方向に2個(合計4個)配置された空気ばね10を介して台車5により支持される。台車5は、道床100に敷設されたレール101上を転動する車輪11と、車輪11を軸支する軸箱(図示せず)と、軸箱と台車枠12とを弾性的に結合する軸ばね13とを備えて構成される。なお、空気ばね10の内部には、車体4の下向きの動きを制限するストッパ(図示せず)が内蔵されている。
【0019】
駅間を走行する鉄道車両1は、
図2(a)に示すように空気ばね10の高さが低く設定され、駅に到着した鉄道車両1は、
図2(b)に示すように空気ばね10の高さが、駅間を走行する場合と比較して高く(本実施の形態では約50mm高く)設定される。本実施の形態では、鉄道車両1が駅に到着したときに、出入口6(
図1参照)の床面Fの高さが、プラットホーム102の上面よりわずかに高くなるように設定される。また、車体4の側面に、光電センサ(非接触センサ)により構成された駅ホームセンサ42a及び高さ検出センサ43aが取り付けられている。
【0020】
駅ホームセンサ42aは、プラットホーム102の側壁を検出することで、駅のプラットホーム102へ鉄道車両1が進入したことを検出するためのセンサである。駅ホームセンサ42aは、プラットホーム102の長手方向の側壁に対峙されるように設けられており、車体4の床面Fがプラットホーム102より高い位置となるように空気ばね10の高さが設定された場合でも、プラットホーム102の側壁を検出できるような高さ位置に取り付けられている。
【0021】
高さ検出センサ43aは、プラットホーム102の側壁を検出することで、プラットホーム102の上面と車体4の床面Fとの段差を検出するためのセンサである。高さ検出センサ43aは、駅ホームセンサ42aより高い位置であって、車体4の床面Fと略等しい高さ位置に取り付けられている。
【0022】
次に
図3を参照して、空気ばね10の高さを調整する高さ調整機構20について説明する。
図3は鉄道車両1の高さ調整機構20及び電気的構成を示すブロック図である。なお、
図3では、電気信号の流れを実線で図示し、空気の流れを破線で図示する。
【0023】
図3に示すように鉄道車両1は、空気ばね10の空気の給排を制御するための高さ調整機構20が、空気タンク21(元空気溜)と空気ばね10との間に介設されている。高さ調整機構20は、空気配管により接続された高さ調整弁22、給気弁23、遮断弁24及び排気弁25を備えている。
【0024】
遮断弁24は、空気ばね10の給排気時に高さ調整弁22(後述する)と空気ばね10との間の空気配管を開閉する弁であり、給気弁23は、空気ばね10に給気する弁である。給気弁23、遮断弁24及び排気弁25は一方が空気ばね10に連通し、遮断弁24の他方は高さ調整弁22の一方に接続される。排気弁25の他方は開放状態とされ、高さ調整弁22及び給気弁23は他方が空気タンク21に連通する。
【0025】
高さ調整弁22は、空気ばね10の伸縮に基づく車体4(
図2参照)の下降または上昇移動に伴って傾動するリンク機構(図示せず)の傾動量に応じて開閉される。遮断弁24を開弁しておけば、高さ調整弁22の開度に応じて空気ばね10に給排される空気量が調整され、車体4の高さが自動的に調整される。高さ調整弁22及びリンク機構は周知であるから、ここでの説明は省略する。
【0026】
次いで、制御装置30の詳細構成について説明する。
図3に示すように制御装置30は、CPU31、ROM32及びRAM33を備え、それらがバスライン34を介して入出力ポート35に接続されている。また、入出力ポート35には、遮断弁24、給気弁23、排気弁25等の装置が接続されている。
【0027】
CPU31は、バスライン34により接続された各部を制御する演算装置であり、ROM32は、CPU31により実行される制御プログラム(例えば、
図4から
図7に図示されるフローチャートのプログラム)や固定値データ等を記憶する書き換え不能な不揮発性のメモリである。RAM33は、制御プログラムの実行時に各種のデータを書き換え可能に記憶するためのメモリであり、駅フラグ33a、車両情報フラグ33b及び高さフラググ33cが設けられている。
【0028】
駅フラグ33aは、鉄道車両1が駅に到着したか否かを示すフラグであり、後述する駅ホーム判断処理(
図4参照)の実行時にオン又はオフに切り替えられる。車両情報フラグ33bは、鉄道車両1の走行に関する情報が所定の条件を満たすか否かを示すフラグであり、後述する車両情報判断処理(
図5参照)の実行時にオン又はオフに切り替えられる。高さフラグ33cは車体4の調整高さを示すフラグであり、後述する高さ調整処理(
図6参照)の実行時にオン又はオフに切り替えられる。CPU31は、高さフラグ33cがオンである場合に、車体4の床面Fがプラットホーム102の上面よりわずかに高くなるように調整されていると判断する。
【0029】
速度検出装置41は、鉄道車両1の速度を検出すると共にその検出結果をCPU31に出力するための装置であり、鉄道車両1の速度を検出する速度センサ41aと、その速度センサ41aの検出結果を処理してCPU31に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。なお、速度センサ41aは、車両駆動用の電動機(図示せず)からの出力信号に基づいて速度を検出するものでも良い。
【0030】
駅ホーム検出装置42は、鉄道車両1が駅に到着したことを検出すると共にその検出結果をCPU31に出力するための装置であり、駅ホームセンサ42aと、その駅ホームセンサ42aの検出結果を処理してCPU31に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
【0031】
高さ検出装置43は、プラットホーム102に対する車体4の床面Fの高さを検出すると共にその検出結果をCPU31に出力するための装置であり、高さ検出センサ43aと、高さ検出センサ43aの検出結果を処理してCPU31に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
【0032】
傾動量検出装置44は、空気ばね10の高さを機械的に高さ調整弁22に伝達するリンク機構(図示せず)のレバーの傾動量を検出すると共に、その検出結果をCPU31に出力するための装置であり、レバー(図示せず)の傾動量を検出する傾動量検出センサ44aと、その傾動量検出センサ44aの検出結果を処理してCPU31に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。CPU31は、入力された傾動量検出センサ44aの検出結果に基づいて、空気ばね10の高さ(台車5に対する車体4の高さ)を算出する。
【0033】
距離検出装置45は、台車5と車体4との距離を検出すると共にその検出結果をCPU31に出力するための装置であり、台車5と車体4との間に配設された距離センサ45aと、その距離センサ45aの検出結果を処理してCPU31に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
【0034】
他の入出力装置50としては、例えば、自動列車制御装置(信号保安装置)や鉄道制御システム等を利用して、取得した鉄道車両1の現在位置や速度をCPU31に出力する装置;車体4の出入口6を開閉する扉7が閉止されたことを検出すると共に、その検出結果を処理してCPU31に出力する装置などが挙げられる。
【0035】
次に
図4を参照して駅ホーム判断処理について説明する。
図4は駅ホーム判断処理を示すフローチャートである。この処理は、制御装置30の電源が投入されている間、CPU31によって繰り返し(例えば0.2秒間隔で)実行される処理であり、鉄道車両1が駅のプラットホーム102に到着したか否かを判断する処理である。
【0036】
CPU31は駅ホーム判断処理に関し、まず、駅ホーム検出装置42の出力信号を取得し、駅のプラットホーム102が検出されたか否かを判断する(S1)。その結果、プラットホーム102が検出された場合には(S1:Yes)、CPU31は鉄道車両1の速度を取得し(S2)、鉄道車両1の速度が所定の速度Vh以下であるか否かを判断する(S3)。判断の結果、鉄道車両1の速度が所定の速度Vh以下であれば(S3:Yes)、鉄道車両1はプラットホーム102で停車準備段階にあるので、駅フラグ33aをオンして(S4)、この駅ホーム判断処理を終了する。
【0037】
一方、S1の処理の結果、プラットホーム102が検出されていない場合には(S1:No)、鉄道車両1は駅間を走行中と判断されるので、駅フラグ33aをオフして(S5)、この駅ホーム判断処理を終了する。また、S3の処理の結果、鉄道車両1の速度が所定の速度Vhを超えている場合には(S3:No)、鉄道車両1は駅を通過中(通過駅を走行中)と判断されるので、駅フラグ33aをオフして(S5)、この駅ホーム判断処理を終了する。
【0038】
次に
図5を参照して車両情報判断処理について説明する。
図5は車両情報判断処理を示すフローチャートである。この処理は、制御装置30の電源が投入されている間、CPU31によって繰り返し(例えば0.2秒間隔で)実行される処理であり、鉄道車両1が駅のプラットホーム102に到着したか否かを判断する処理である。
【0039】
CPU31は車両情報判断処理に関し、まず、鉄道車両1の速度を取得し(S11)、速度が所定の速度Vr以上であるか否かを判断する(S12)。判断の結果、鉄道車両1の速度が所定の速度Vr以上であれば(S12:Yes)、車両情報フラグ33bをオンして(S13)、この車両情報判断処理を終了する。
【0040】
一方、S12の処理の結果、鉄道車両1の速度が所定の速度Vr未満である場合には(S12:No)、鉄道車両1は停止中か徐行運転中と判断されるので、車両情報フラグ33bをオフして(S14)、この車両情報判断処理を終了する。なお、本実施の形態では、車両情報判断処理で使用される所定の速度Vrは、駅ホーム判断処理(
図4参照)で使用される所定の速度Vhより大きい値に設定されている。
【0041】
次に
図6を参照して高さ調整処理について説明する。
図6は高さ調整処理を示すフローチャートである。この処理は、制御装置30の電源が投入されている間、CPU31によって繰り返し(例えば0.2秒間隔で)実行される処理であり、鉄道車両1の車体4の高さを調整するための処理である。
【0042】
CPU31は高さ調整処理に関し、まず、駅フラグ33aがオンであるか否かを判断し(S21)、駅フラグ33aがオンであると判断される場合には(S21:Yes)、高さフラグ33cがオンであるか否かを判断する(S22)。高さフラグ33cがオフであると判断される場合には(S22:No)、車体4の出入口6の床面Fがプラットホーム102の上面より低い位置にあると考えられるので、遮断弁24(
図3参照)を閉止して(S23)、給気弁23を開弁する(S24)。これにより空気タンク21から空気ばね10に圧縮空気が給気され、空気ばね10が高さ方向に伸張される。その結果、車体4が上昇される。
【0043】
次にCPU31は、車体4の出入口6の床面Fが所定の高さまで上昇されたか否かを判断する(S25)。なお、S25の処理は、高さ検出装置43によって検出された高さ検出センサ43aのプラットホーム102に対する位置に基づいて行われる。S25の処理により、車体4の出入口6の床面Fが所定の高さに上昇されるまで、S23及びS24の処理が繰返し実行される。S25の処理の結果、床面Fが所定の高さまで上昇されたと判断されると(S25:Yes)、給気弁23を閉止し(S26)、高さフラグ33cをオンして(S27)、この高さ調整処理を終了する。
【0044】
なお、S22の処理の結果、高さフラグ33cがオンであると判断される場合には(S22:Yes)、車体4の高さはプラットホーム102に応じて既に調整されているので、S23〜S27の処理をスキップして、高さ調整処理を終了する。
【0045】
これらの処理により、プラットホーム102に到着した鉄道車両1の車体4の出入口6の床面Fが、プラットホーム102の上面より少し高い位置に設定される。その結果、床面Fに対してプラットホーム102の上面が高くなることを防止できるので、鉄道車両1から降車する乗客がプラットホーム102に躓くことを防止できる。
【0046】
なお、空気ばね10の高さは空気ばね10毎に調整できるので、レール101にカントが設けられている場合には、その高低差に応じ、台車5の左右に設けられた空気ばね10の高さを異ならせることによって、車体4を枕木方向に亘って略水平にできる。
【0047】
一方、S21の処理の結果、駅フラグ33aがオフであると判断される場合には(S21:No)、車両情報フラグ33bがオンであるか否かを判断する(S28)。車両情報フラグ33bがオンであると判断される場合には(S28:Yes)、高さフラグ33cがオンであるか否かを判断する(S29)。高さフラグ33cがオンであると判断される場合には(S29:Yes)、車体4の出入口6の床面Fがプラットホーム102の上面と略同一またはプラットホーム102より高い位置にあると考えられるので、排気弁25を開弁する(S30)。これにより空気ばね10の空気が排気され、空気ばね10が高さ方向に収縮される。その結果、車体4が下降される。
【0048】
次にCPU31は、車体4が所定の高さまで下降されたか否かを判断する(S31)。なお、S31の処理は、距離検出装置45が検出する車体4と台車5との距離に基づいて行われる。S31の処理により、車体4が所定の高さに下降されるまで、S30の処理が繰返し実行される。S31の処理の結果、車体4が所定の高さまで下降されると(S31:Yes)、排気弁25を閉止し(S32)、遮断弁24を開弁し(S33)、高さフラグ33cをオフして(S34)、この高さ調整処理を終了する。
【0049】
なお、S28の処理の結果、車両情報フラグ33bがオフであると判断される場合には(S28:No)、鉄道車両1は駅に停留していないので、車体4の高さをプラットホーム102に応じて調整する必要はない。また、鉄道車両1の速度は所定の速度Vr未満なので、車体4を下降させなくても(車体4の上面の高さを低くしなくても)、走行時の空気抵抗は問題になり難い。そこで、S29〜S34の処理をスキップして、高さ調整処理を終了する。
【0050】
また、S29の処理の結果、高さフラグ33cがオフであると判断される場合には(S29:No)、車体4は既に所定の高さまで下降されているので、S30〜S34の処理をスキップして、高さ調整処理を終了する。
【0051】
これらの処理により、高さ調整弁22及びリンク機構(図示せず)によって設定される車体4の高さを、駅に停車中の鉄道車両1の車体4の高さより低くできる。鉄道車両1は、車体4の下面に床下機器(図示せず)が設けられているので、車体4の下面と道床100との間に空気(走行風)は流入し難い。従って、車体4の上面の高さを低くすることで、居住空間に影響を与える車体断面を小さくすることなく、空気抵抗に影響を与える車高方向における断面積を小さくできる。よって、居住空間を確保しつつ空気抵抗を少なくできる。さらに、車体4の高さを低くすることにより、トンネル突入時に発生する圧縮波を低減できる。
【0052】
また、本実施の形態における鉄道車両1によれば、車体4の先頭部に湾曲板状の排障器9(
図1参照)が設けられている。排障器9と道床100との隙間は小さいので、排障器9と道床100との間に走行風はほとんど流入できない。そのため、排障器9が設けられていない鉄道車両と比較して、車体4の上面の高さを低くすることによる空気抵抗の低減効果を大きくできる。
【0053】
また、走行する鉄道車両1の速度が所定の速度Vrを超えるか否かが判断され、所定の速度Vrを超えると判断される場合に、高さ調整機構20が作動されて空気ばね10の空気が排気される。これにより、車体4の出入口6の床面Fの高さが、鉄道車両1がプラットホーム102へ到着した場合の車体4の出入口6の床面Fの高さより低く設定される。鉄道車両1が駅を発進して所定の速度Vrを超えた後、即ち、乗客が降車できない走行中に空気ばね10の空気が排気されるので、出入口6の床面Fとプラットホーム102とに段差ができるように車体4が下降された場合であっても、その段差に乗客が躓くことを防止できる。
【0054】
これに対し、駅に停車中に空気ばね10の空気が排気される場合には、プラットホーム102の上面に対して出入口6の床面Fが低くなることがある。鉄道車両1の扉7が開放されていると、出入口6からプラットホーム102へ出ようとした乗客が、床面Fとプラットホーム102との段差に躓き易くなる。本実施の形態によれば、乗客はプラットホーム102に出られないので、乗客が段差に躓いてプラットホーム102に転倒することを防止できる。
【0055】
また、停車中や速度Vr以下の低速走行中に空気ばね10の空気が排気される場合には、車体4が下方に移動する違和感を乗客が覚えるおそれがある。これに対し、本実施の形態では、鉄道車両1の速度が所定の速度Vrを超えた場合に、空気ばね10の空気が排気されて車体4の高さが低くされる。よって、停車中に空気ばね10の空気が排気される場合と比較して、空気ばね10の空気が排気されることによる違和感を乗客に覚えさせ難くできる。
【0056】
また、高さ調整処理(
図6参照)において、鉄道車両1が駅に到着するか否かの判断(S21の処理)が、鉄道車両1が所定の条件を満たすかの判断(S28の処理)に優先して行われる。従って、鉄道車両1が駅に到着する場合には、鉄道車両1が所定の条件を満たす場合であっても、空気ばね10に給気されて車体4が上昇される。よって、鉄道車両1から降車する乗客がプラットホーム102に躓くことを防止できる。
【0057】
また、車両情報判断処理(
図5参照)で使用される所定の速度Vrは、駅ホーム判断処理(
図4参照)で使用される所定の速度Vhより大きい値に設定される。従って、駅ホーム判断処理において駅フラグ33aがオンにされる速度Vhに鉄道車両1が達していても、Vr>Vhのため、車両情報判断処理において車両情報フラグ33bはオンにされない。従って、鉄道車両1が駅以外の場所を所定の速度Vrより低速で走行する場合や停止した場合には、S28の処理において(
図6参照)、S29〜S34の処理をスキップして高さ調整処理が終了される。そのため、無駄な弁の開閉や空気ばね10の給排気を行わないようにできる。
【0058】
なお、空気ばね10は、制御装置30によって各々の給排気を制御できるので、先頭車両2(
図1参照)及び他の車両3に配置された全ての台車5の空気ばね10を給排気することや、一部の台車5の空気ばね10を給排気することは適宜設定できる。但し、先頭車両2のレール方向に配置される複数の台車5のうちの少なくとも先頭の台車5の空気ばね10の空気は排気される。鉄道車両1は、先頭車両2の車体4が、先頭部が後方上向きに上昇傾斜する傾斜面8を備えているので、少なくとも先頭の台車5の空気ばね10の高さが低くされることにより、傾斜面8によって、走行する先頭車両2に生じる乱流を抑制できる。その結果、乱流摩擦抵抗を抑制することによって空気抵抗を抑制できる。
【0059】
また、制御装置30によって、先頭車両2及びその先頭車両2の後方に連結される他の車両3のそれぞれに配置される複数の台車5の空気ばね10の空気が排気されるように設定できる。このように設定されることにより、レール方向に亘って道床100から車体4の上面までの高さを小さくできる。その結果、走行中の鉄道車両1の空気抵抗を低下できるだけでなく、先頭車両2及び他の車両3の横風に対する転覆限界風速を大きくできる。
【0060】
また、制御装置30によって、先頭車両2及び他の車両3の各々について、レール方向に配置される複数の台車5のうちの先頭の台車5の空気ばね10の空気を排気した後、その台車5の後方に位置する他の台車5に配置された空気ばね10の空気を排気するように設定できる。このように設定されることにより、各々の車体4の先頭側の床面Fを低くした後、後端側の床面Fを低くする間、各々の車体4の床面Fをわずかに前傾させることができる。その結果、鉄道車両1が前方に加速度運動をするときに乗客が感じる慣性力を抑制できる。
【0061】
次に
図7を参照して異常診断処理について説明する。
図7は異常診断処理を示すフローチャートである。この処理は、制御装置30の電源が投入されている間、CPU31によって繰り返し(例えば0.2秒間隔で)実行される処理であり、鉄道車両1の検出装置等の動作が正常か否かを判断する処理である。
【0062】
CPU31は異常診断処理に関し、まず、台車5と車体4との距離Hsを取得する(S41)。なお、S41の処理は、距離検出装置45の出力に基づいて行われる。次に、CPU31は、高さ調整弁22を機械的に駆動するリンク機構(図示せず)の傾動量を取得する(S42)。なお、S42の処理は、傾動量検出装置44の出力に基づいて行われる。次いでCPU31は、取得した傾動量およびリンク機構の上下方向長さから、台車5と車体4との距離Hmを算出する(S43)。
【0063】
次にCPU31は、距離Hsと距離Hmとの差dを求め(S44)、その差dが、予め定められた所定の範囲内であるか否かを判断する(S45)。差dが所定の範囲から外れていると判断される場合には(S45:No)、給気弁23を開弁して(S46)、この異常診断処理を終了する。一方、S45の処理の結果、差dが所定の範囲内であると判断される場合には(S45:Yes)、S46の処理をスキップして、異常診断処理を終了する。
【0064】
この異常診断処理において、差dが所定の範囲から外れていると判断される場合には(S45:No)、高さ調整機構20の誤動作による障害が発生している可能性があるので、空気ばね10に給気されることで車体4の床面Fが上昇される。この状態でプラットホーム102に鉄道車両1が停車した場合には、プラットホーム102の高さに対して出入口6の床面Fの高さが下回る段差を小さく又は無くすことができる。従って、高さ調整機構20に異常が発生した場合であっても、フェイルセーフの観点から、走行抵抗の低減よりも乗客の降車時の安全性を優先して、降車する乗客がプラットホーム102の段差に躓くことを防止できる。
【0065】
なお、本実施の形態において、請求項1記載の排気手段としては、
図6に示すフローチャート(高さ調整処理)におけるS30の処理が、到着検出手段としては、S21の処理が、給気手段としてはS24の処理がそれぞれ該当する。請求項2記載の車両情報取得手段としては、
図5に示すフローチャート(車両情報判断処理)におけるS11の処理が、車両情報判断手段としては、
図6に示すフローチャート(高さ調整処理)におけるS28の処理がそれぞれ該当する。請求項6記載の異常診断手段としては、
図7に示すフローチャート(異常診断処理)におけるS45の処理が、フェイルセーフ実行手段としてはS46の処理がそれぞれ該当する。
【0066】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、車体4を支持する台車5の数は一例であり、適宜選択できる。
【0067】
上記実施の形態では、高さ調整処理において、鉄道車両1に搭載された速度検出装置41によって鉄道車両1の速度が検出される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、自動列車制御装置(信号保安装置)や鉄道制御システムによって鉄道車両1の速度を検出することは当然可能である。
【0068】
上記実施の形態では、高さ調整処理において、駅ホーム検出装置42によってプラットホーム102が検出され、且つ、所定の速度以下の場合に、鉄道車両1が駅に到着したと判断し、空気ばね10に給気する場合について説明した。しかしながら、必ずしもこれに限られるものではなく、自動列車制御装置(信号保安装置)や鉄道制御システム等を利用し、鉄道車両1の位置や停止信号の情報を取得して鉄道車両1が駅に到着したか否かを判断することは当然可能である。この場合に、鉄道車両1が駅に近づいた場合に、駅に到着したと判断するように設定することは当然可能である。鉄道車両1は、停留する場合には駅に近づくと減速するので、減速した状態で空気ばね10に給気して車体4を上昇させたとしても、走行時の空気抵抗の悪化に大きな影響はないからである。
【0069】
上記実施の形態では、高さ調整処理において、高さ検出装置43によって検出された高さ検出センサ43aのプラットホーム102に対する位置に基づき、床面Fが所定の高さまで上昇されたか否かを判断する場合(S25)について説明した。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、高さ検出センサ43aを省略して、予め設定された高さに車体4(床面F)を上昇させるように制御することは当然可能である。高さ検出センサ43aを省略することで部品点数を削減できる。
【0070】
上記実施の形態では、高さ調整処理において、速度検出装置41によって検出される速度が所定の速度以上の場合に所定の条件を満たすと判断し、空気ばね10の空気を排気する場合について説明した。しかしながら、必ずしもこれに限られるものではなく、他の条件を満たす場合に、空気ばね10の空気を排気することは当然可能である。他の条件としては、例えば、出入口6を開閉する扉7が閉止したこと、鉄道車両1がプラットホーム102を発進したこと、プラットホーム102を発進した鉄道車両1が所定の位置に到達したことが挙げられる。
【0071】
出入口6を開閉する扉7が閉止したことは、扉7の開閉を検出するセンサ(図示せず)に基づいて検出される。これによれば、出入口6を開閉する扉7が閉止した後、空気ばね10の空気を排気して車体4の高さを低くする。その結果、鉄道車両1の扉7が閉止されることで、乗客は出入口6からプラットホーム102へ出られないので、床面Fとプラットホーム102との段差に乗客が躓いて転倒することを防止できる。
【0072】
また、鉄道車両1がプラットホーム102を発進したことは、自動列車制御装置(信号保安装置)や鉄道制御システム、速度検出装置41等により検出される。鉄道車両1がプラットホーム102を発進した後、走行中に空気ばね10の空気を排気して車体4の高さを低くするので、停車中に空気ばね10の空気を排気する場合と比較して、車体4が下降するときの違和感を乗客に覚えさせ難くできる。
【0073】
また、プラットホーム102を発進した鉄道車両1が所定の位置に到達したことは、自動列車制御装置(信号保安装置)や鉄道制御システムによって検出される。なお、空気ばね10の空気を排気する速さを、鉄道車両1の速度や加速度に応じて可変にすることは可能である。例えば、発進直後など鉄道車両1が低速で走行するときや加速度が小さいときには、高速で走行する場合や加速度が大きい場合と比較して、空気ばね10の空気を排気する速さを遅くする。これにより、車体4が下降するときの違和感を乗客に覚えさせ難くできる。違和感を軽減するために、空気ばね10の空気を複数回に分けて段階的に排気することも可能である。
【0074】
上記実施の形態では、異常診断処理において、距離検出装置45の出力に基づく距離Hsと、傾動量検出装置44の出力に基づく距離Hmとの差dを求め、差dが所定の範囲から外れる場合に、高さ調整機構20が正常に動作していないと判断する場合について説明した。しかしながら、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、高さ調整機構20の空気配管の所定箇所に圧力センサを配設し、その圧力センサの検出値が所定の閾値より大きいか否かによって高さ調整機構20の動作が正常であるか否かを判断することは当然可能である。また、遮断弁24、給気弁23及び排気弁25に各弁体の動作位置を検出するセンサを設け、そのセンサの検出信号に基づいて高さ調整機構20の動作異常の有無を検出することは当然可能である。
【0075】
上記実施の形態では、先頭車両2の先頭部が傾斜面8をもつ流線形に形成される鉄道車両1について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、先頭部が道床100に対して垂直な切妻型車両(鉄道車両)とすることは当然可能である。切妻型車両の場合も、走行時に車体4を低くすることによって、本実施の形態と同様に、走行時の空気抵抗を低減することができると共に、トンネル突入時に発生する圧縮波を低減できる。