特開2015-6823(P2015-6823A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本車輌製造株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2015006823-鉄道車両 図000003
  • 特開2015006823-鉄道車両 図000004
  • 特開2015006823-鉄道車両 図000005
  • 特開2015006823-鉄道車両 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-6823(P2015-6823A)
(43)【公開日】2015年1月15日
(54)【発明の名称】鉄道車両
(51)【国際特許分類】
   B61F 5/10 20060101AFI20141212BHJP
   B61F 19/00 20060101ALN20141212BHJP
   B60G 99/00 20100101ALN20141212BHJP
【FI】
   B61F5/10 D
   B61F19/00
   B60G99/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-132168(P2013-132168)
(22)【出願日】2013年6月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】特許業務法人しんめいセンチュリー
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 順一
(72)【発明者】
【氏名】新川 明宏
(72)【発明者】
【氏名】新村 浩
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 慶知
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 哲郎
【テーマコード(参考)】
3D301
【Fターム(参考)】
3D301AA49
3D301AA59
3D301AB29
3D301AB30
3D301BA09
3D301CA25
3D301DA14
3D301DA67
3D301DA79
3D301EA08
3D301EA68
3D301EA82
3D301EB04
3D301EB35
3D301EB36
3D301EC01
(57)【要約】
【課題】進路上の障害物を車体下に巻き込むことを防止できる鉄道車両を提供すること。
【解決手段】障害物情報が検出された場合に、高さ調整機構14が作動され先頭側の第1空気ばね13の空気が排気される。先頭車両2を構成する車体3の先頭に排障器4が装着されているので、第1空気ばね13の空気を排気して車体3の先頭側と台車枠11との隙間を小さくすれば、線路と排障器4との隙間を小さくできる。よって、進路上の障害物に衝突した場合に、障害物を車体3の下に巻き込むことを防止できる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レール方向に複数配置される台車と、その台車にそれぞれ配置された空気ばねにより支持される車体と、前記空気ばねの空気を給排して前記車体の高さを調整する高さ調整機構と、先頭車両を構成する前記車体の先頭に装着される排障器とを備える鉄道車両において、
進路上の障害物の存在に関する障害物情報を検出する障害物検出手段と、
その障害物検出手段により障害物情報が検出された場合に、前記高さ調整機構を作動させて、前記先頭車両のレール方向に配置される複数の台車のうちの先頭の台車の空気ばねの空気を排気する排気手段とを備えていることを特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
前記障害物検出手段により障害物情報が検出された場合に、前記高さ調整機構を作動させて、前記先頭車両のレール方向に配置される複数の台車のうち前記先頭の台車の後方に位置する台車の空気ばねに給気する給気手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の鉄道車両。
【請求項3】
前記先頭車両が停止したかを判断する停車判断手段と、
その停車判断手段により前記先頭車両が停止したと判断される場合に、前記高さ調整機構を作動させて、前記排気手段により空気が排気された空気ばねに給気して伸張させる伸張手段とを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鉄道車両に関し、特に進路上の障害物を車体下に巻き込むことを防止できる鉄道車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の空気ばねを介して台車に車体が支持される鉄道車両では、レバー及び連結棒を備えるリンク機構によって機械的に各々の空気ばねの高さが高さ調整弁に伝達され、高さ調整弁の開閉によって空気ばねの高さ調整や内圧の調整が行われる(特許文献1)。特許文献1に開示される従来の鉄道車両では、車輪の摩耗や軸ばねの撓みを考慮して、走行中も、車体の床面がプラットホームより高い位置となるように高さ調整弁によって空気ばねの高さが調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−321647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記従来の技術では、鉄道車両の先頭に排障器が取り付けられていても、排障器と線路との間に隙間(通常100〜200mm程度)があるので、進路上に進入した動物等の障害物に衝突した場合には、障害物を車体下に巻き込み、床下機器やブレーキ管等を損傷させるおそれがある。
【0005】
本発明は上述した問題を解決するためになされたものであり、進路上の障害物を車体下に巻き込むことを防止できる鉄道車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0006】
この目的を達成するために請求項1記載の鉄道車両によれば、レール方向に台車が複数配置され、その台車にそれぞれ配置された空気ばねにより車体が支持され、高さ調整機構により空気ばねの空気が給排されて車体の高さが調整される。障害物検出手段により障害物情報が検出された場合に、排気手段により高さ調整機構が作動され、先頭車両のレール方向に配置される複数の台車のうちの先頭の台車の空気ばねの空気が排気される。そのため、先頭車両を構成する車体の先頭側と台車との隙間を小さくすることができる。先頭車両を構成する車体の先頭に排障器が装着されているので、車体の先頭側と台車との隙間を小さくすることにより、線路と排障器との隙間を小さくできる。よって、進路上の障害物に衝突した場合に、障害物を車体下に巻き込むことを防止できる効果がある。
【0007】
請求項2記載の鉄道車両によれば、障害物検出手段により障害物情報が検出された場合に、給気手段により高さ調整機構が作動され、先頭車両のレール方向に配置される複数の台車のうち先頭の台車の後方に位置する台車の空気ばねに給気される。その結果、先頭車両を構成する車体の後尾側と台車との隙間を大きくすることができるので、線路と排障器との隙間をさらに小さくできる。よって、請求項1の効果に加え、進路上の障害物に衝突した場合に、車体下へ障害物をより巻き込み難くできる効果がある。
【0008】
請求項3記載の鉄道車両によれば、停車判断手段により先頭車両が停止したか判断される。判断の結果、先頭車両が停止した場合に、高さ調整機構が作動され、排気手段によって空気が排気された空気ばねに、伸張手段により給気される。その結果、先頭の台車の空気ばねが伸張されるので、車体の先頭側と台車との隙間を大きくできる。車体の先頭側と線路との隙間を大きくすることができるので、請求項1又は2の効果に加え、停車後に車体下を点検し易くできる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施の形態における鉄道車両の側面図である。
図2】(a)は第1空気ばねの空気を排気した状態を示す先頭車両の模式図であり、(b)は第2空気ばねに給気した状態を示す先頭車両の模式図である。
図3】鉄道車両の高さ調整機構および電気的構成を示すブロック図である。
図4】巻き込み防止処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して鉄道車両1の構成について説明する。図1は本発明の一実施の形態における鉄道車両1の側面図である。なお、図1では鉄道車両1のうち先頭車両2の後尾側の図示および先頭車両2の後尾に連結される後続車両の図示を省略している。
【0011】
図1に示すように鉄道車両1は、先頭車両2を含む複数の客車により構成される。先頭車両2は、先頭(図1左側)に運転室が設けられると共に乗客を収容する車体3と、車体3の先頭に装着される排障器4と、レール方向(図1左右方向)に間隔をあけて配置される複数の台車(第1台車10及び第2台車20)とを備えている。第1台車10は、車体3の先頭側を支持するものであり、台車枠11と、台車枠11に回転自在に軸支される車輪12とを備えている。第2台車20は、車体3の後尾側を支持するものであり、台車枠21と、台車枠21に回転自在に軸支される車輪22とを備えている。
【0012】
次に図2を参照して、第1台車10及び第2台車20の動作と先頭車両2の姿勢との関係について説明する。図2(a)は第1台車10に配置された第1空気ばね13の空気を排気した状態を示す先頭車両2の模式図であり、図2(b)は第2台車20に配置された第2空気ばね23に給気した状態を示す先頭車両2の模式図である。
【0013】
図2(a)及び図2(b)に示すように、先頭車両2は、第1台車10に配置された第1空気ばね13により台車枠11との間で車体3の先頭側が支持され、第2台車20に配置された第2空気ばね23により台車枠21との間で車体3の後尾側が支持される。第1空気ばね13及び第2空気ばね23は、通常、水平線h上に上端が位置するように、台車枠11,21に対して略同一の高さに調整される。
【0014】
これに対し、図2(a)に示すように、第1台車10に配置された第1空気ばね13の空気を排気して第1空気ばね13を収縮すると、第1空気ばね13の高さを第2空気ばね23の高さより小さくできる。これにより、車体3の先頭側を低くすることができるので、車体3の先頭に設けられた排障器4と線路(図示せず)との隙間を小さくできる。特に車体3は、第1台車10に対してオーバーハングしているので(第1空気ばね13の配置位置から前方(図2(a)左側)に張り出しているので)、第1空気ばね13の収縮量に対して、排障器4の下方への移動量を拡大できる。
【0015】
さらに、図2(b)に示すように、第2台車20に配置された第2空気ばね23に給気して第2空気ばね23を伸張すると、さらに第2空気ばね23の高さを第1空気ばね13の高さより大きくできる。これにより、さらに車体3の先頭側を低くすることができるので、車体3の先頭に設けられた排障器4と線路(図示せず)との隙間をさらに小さくできる。
【0016】
次に図3を参照して、第1空気ばね13及び第2空気ばね23の高さを調整する高さ調整機構14,24について説明する。図3は鉄道車両1の高さ調整機構14,24及び電気的構成を示すブロック図である。なお、図3では、電気信号の流れを実線で図示し、空気の流れを破線で図示する。
【0017】
図3に示すように鉄道車両1は、第1空気ばね13の空気の給排を制御するための高さ調整機構14が、空気タンク15(元空気溜)と第1空気ばね13との間に介設され、第2空気ばね23の空気の給排を制御するための高さ調整機構24が、空気タンク15と第2空気ばね23との間に介設されている。高さ調整機構14,24は、それぞれ、空気配管により接続された高さ調整弁16,26、給気弁17,27、遮断弁18,28及び排気弁19,29を備えている。
【0018】
遮断弁18,28は、第1空気ばね13及び第2空気ばね23の給排気時に高さ調整弁16,26(後述する)と第1空気ばね13及び第2空気ばね23との間の空気配管を開閉する弁である。給気弁17,27は、第1空気ばね13及び第2空気ばね23に給気する弁である。給気弁17,27、遮断弁18,28及び排気弁19,29は、一方が第1空気ばね13及び第2空気ばね23に連通し、遮断弁18,28の他方は高さ調整弁16,26の一方に接続される。排気弁19,29の他方は開放状態とされ、高さ調整弁16,26及び給気弁17,27は他方が空気タンク15に連通する。
【0019】
高さ調整弁16,26は、第1空気ばね13及び第2空気ばね23の伸縮に基づく車体3(図2参照)の下降または上昇移動に伴って傾動するリンク機構(図示せず)の傾動量に応じて開閉される。遮断弁18,28を開弁しておけば、高さ調整弁16,26の開度に応じて第1空気ばね13及び第2空気ばね23に給排される空気量が調整され、車体3の高さが自動的に調整される。高さ調整弁16,26及びリンク機構は周知であるから、ここでの説明は省略する。
【0020】
次いで、制御装置30の詳細構成について説明する。図3に示すように制御装置30は、CPU31、ROM32及びRAM33を備え、それらがバスライン34を介して入出力ポート35に接続されている。また、入出力ポート35には、高さ調整弁16,26、給気弁17,27、排気弁19,29等の装置が接続されている。なお、制御装置30は、鉄道車両1に搭載される。
【0021】
CPU31は、バスライン34により接続された各部を制御する演算装置であり、ROM32は、CPU31により実行される制御プログラム(例えば、図4に図示されるフローチャートのプログラム)や固定値データ等を記憶する書き換え不能な不揮発性のメモリである。RAM33は、制御プログラムの実行時に各種のデータを書き換え可能に記憶するためのメモリである。
【0022】
非常ブレーキ41は、鉄道車両1を緊急に停止させるための装置であり、線路上への落石や倒木、線路内へ進入した動物、踏切に立ち往生した自動車等の障害物がある場合に、ブレーキハンドル(図示せず)の操作または自動列車制御装置(信号保安装置)によって作動される。非常ブレーキ41は、非常ブレーキ41が作動したことをCPU31に出力する出力回路(図示せず)を備えている。
【0023】
なお、進路上の障害物と鉄道車両1とに距離がある場合など、障害物を運転士が目視により発見できないことがあるので、運転士の目視以外の手段によって進路上の障害物が検出され、その検出結果が運転士に報知される。運転士が障害物を発見するより先に運転士に障害物の存在を知らせて、非常ブレーキ41を早期に作動させ、衝突を回避するためである。
【0024】
障害物を検出する手段としては、例えば、落石検知装置、踏切障害物検知装置、踏切支障報知装置が挙げられる。落石検知装置は、落石が発生する可能性のある防護壁に電線を配設し、落石によって断線されることで落石の発生を検出するものが例示される。踏切障害物検知装置は、踏切警報発令中に自動車等の障害物が踏切道に存在することを検出する装置であり、光センサ式、超音波センサ式、ループコイル式、レーザレーダ式等の各種方式が例示される。踏切支障報知装置は、押ボタンスイッチ、信号炎管および軌道短絡器を備えるものが例示される。踏切支障報知装置の押ボタンスイッチを通報者が操作することによって信号炎管が発火し、さらに軌道短絡器により軌道回路が短絡されることで障害物が検出される。
【0025】
落石検知装置、踏切障害物検知装置、踏切支障報知装置等によって障害物が検出されると、その検出結果は、信号機や特殊信号発光機、信号炎管の発火等の信号表示によって、走行中の鉄道車両1の運転士に報知される。その信号表示を視認した運転士によってブレーキハンドル(図示せず)が操作され、非常ブレーキ41が作動される。
【0026】
警笛42は、線路内へ進入した動物や鉄道車両1の乗客に警戒や注意を促すために鳴動される装置であり、運転室に配設されたペダル(図示せず)を運転士が操作することにより作動される。警笛42は、警笛42が作動(鳴動)したことをCPU31に出力する出力回路(図示せず)を備えている。
【0027】
信号受信器43は、上述した落石検知装置、踏切障害物検知装置、踏切支障報知装置等が発信した障害物の検出結果(信号)を受信するための装置であり、受信装置(図示せず)と、その受信装置の受信結果を処理してCPU31に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。なお、信号受信器43は、落石検知装置、踏切障害物検知装置、踏切支障報知装置等による検出結果を、自動列車制御装置(信号保安装置)を介して受信し、その受信結果を処理してCPU31に出力するものであっても良い。
【0028】
速度検出装置44は、鉄道車両1の速度を検出すると共にその検出結果をCPU31に出力するための装置であり、鉄道車両1の速度を検出する速度センサ44aと、その速度センサ44aの検出結果を処理してCPU31に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。なお、速度センサ44aは、車両駆動用の電動機(図示せず)からの出力信号に基づいて速度を検出するものでも良い。
【0029】
他の入出力装置50のうち、入力装置としては、例えば、進路上の障害物を運転士が発見したときに操作される通報装置(図示せず)が挙げられる。通報装置は、運転士に操作される押ボタンスイッチ等の操作部と、操作部が操作されたことをCPU31に出力する出力回路とを主に備えている。また、出力装置としては、非常ブレーキ41や警笛42が作動したときや通報装置が操作されたときに、乗客に衝突告知や注意を促すためのアナウンスを行う表示装置やスピーカ(いずれも図示せず)が挙げられる。表示装置やスピーカは、乗客が収容される客室に配設される。
【0030】
次に図4を参照して巻き込み防止処理について説明する。図4は巻き込み防止処理を示すフローチャートである。この処理は、進路上の障害物の存在に関する障害物情報が検出されたことをトリガとしてCPU31によって実行される処理であり、線路と排障器4との隙間の大きさを調整するための処理である。
【0031】
制御装置30は(図3参照)、非常ブレーキ41、警笛42、信号受信器43及び他の入出力装置50(通報装置)からの出力信号を、入出力ポート35を介してRAM33の記憶領域(バッファメモリ)に一時的に保存する。非常ブレーキ41、警笛42、信号受信器43、他の入出力装置50(通報装置)の内の1つ以上の出力信号がCPU31によって検出されたことをトリガとして、CPU31によって巻き込み防止処理が開始される。
【0032】
図4に示すように、CPU31は巻き込み防止処理に関し、まず、第1空気ばね13の空気を排気する(S1)。なお、S1の処理は遮断弁18を閉止し排気弁19を開弁することにより行われる。これにより第1空気ばね13が収縮され、先頭車両2の車体3の先頭側を後尾側に対して下降させることができる(図2(a)参照)。その結果、排障器4と線路との隙間を小さくできる。
【0033】
次にCPU31は、第2空気ばね23に給気する(S2)。なお、S2の処理は給気弁27を開弁することにより行われる。これにより第2空気ばね23が伸張され、先頭車両2の車体3の後尾側を先頭側に対して上昇させることができる(図2(b)参照)。その結果、排障器4と線路との隙間をさらに小さくできる。
【0034】
ここで、非常ブレーキ41、警笛42、信号受信器43、他の入出力装置50(通報装置)の内の1つ以上の出力信号が検出される場合には、進路上に障害物が存在する可能性がある。従って、S1及びS2の処理によって排障器4と線路との隙間を小さくすることによって、鉄道車両1が障害物と衝突した場合には、障害物を排障器4で押し退けることができる。その結果、障害物が車体3の下に巻き込まれることを防止できる。よって、車体3下に設けられた床下機器やブレーキ管等の損傷を防止できる。
【0035】
次いでCPU31は、速度検出装置44の検出結果に基づいて、鉄道車両1の速度を取得する(S3)。S3の処理は、鉄道車両1が停車したと判断されるまで(S4)、繰り返し実行される。S4の処理の結果、鉄道車両1が停車したと判断される場合には(S4:Yes)、CPU31は遮断弁18を開弁し第1空気ばね13に給気する(S5)。なお、S5の処理のうち、第1空気ばね13の給気は給気弁17を開弁することにより行われる。これにより第1空気ばね13が伸張され、車体3の先頭側を上昇させることができる。その結果、車体3の先頭側と線路との隙間を大きくすることができるので、鉄道車両1の停車後、車体3下を点検し易くできる。点検の結果、異常がなければ運転を再開できるので、障害物に鉄道車両1が衝突した場合も、運転再開までの期間を短縮できる。
【0036】
なお、本実施の形態において、請求項1記載の障害物情報としては、非常ブレーキ41を作動させたこと、警笛42を鳴動させたこと、落石検知装置、踏切障害物検知装置、踏切支障報知装置等の出力信号を信号受信器43が受信したこと、運転士が目視により障害物を発見したときに通報装置(図示せず)の操作部を操作したこと等が例示される。
【0037】
また、請求項1記載の障害物検出手段としては、RAM33の記憶領域(バッファメモリ)に一時的に保存された出力信号(非常ブレーキ41、警笛42、信号受信器43及び通報装置からの出力信号)をCPU31により検出する手段が該当する。排気手段としては、図4に示すフローチャート(巻き込み防止処理)におけるS1の処理が該当する。請求項2記載の給気手段としては、図4に示すフローチャート(巻き込み防止処理)におけるS2の処理が、請求項3記載の伸張手段としてはS5の処理がそれぞれ該当する。
【0038】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、車体3を支持する複数の台車の数(本実施の形態では第1台車10及び第2台車20の2台)は一例であり、適宜選択できる。
【0039】
上記実施の形態では、巻き込み防止処理において、鉄道車両1に搭載された速度検出装置44によって鉄道車両1が停止したことを検出する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、鉄道車両1に搭載された加速度センサや車軸等の回転数を検出する回転計等を用いて、停車したことを検出することは当然可能である。
【0040】
上記実施の形態では、巻き込み防止処理において、第1空気ばね13の空気を排気した後(S1)、第2空気ばね23に給気する場合(S2)について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、第2空気ばね23に給気するS2の処理を省略することは当然可能である。S2の処理を省略しても、第1空気ばね13の空気を排気するS1の処理によって、排障器4と線路との隙間を小さくできるからである。
【0041】
上記実施の形態では、巻き込み防止処理において、排障器4と線路との隙間の大きさを検出することなく、第1空気ばね13の空気を排気し(S1)、第2空気ばね23に給気する場合(S2)について説明した。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、線路との距離を非接触で検出できる距離センサ(図示せず)を排障器4に設けることは当然可能である。この場合には、距離センサによって排障器4と線路との隙間の大きさを検出して、排障器4と線路との隙間の大きさが一定値となるように第1空気ばね13や第2空気ばね23に給排気することができる。
【0042】
ここで、S1の処理における第1空気ばね13の収縮量を一定値とすれば、鉄道車両1が上り勾配路を走行するときには、鉄道車両1が平坦路を走行する場合と比較して排障器4と線路との隙間が小さくなる。そのため、勾配の大きさによっては排障器4が線路に接触することがある。また、鉄道車両1が下り勾配路を走行するときには、鉄道車両1が平坦路を走行する場合と比較して排障器4と線路との隙間が大きくなる。そのため、下り勾配路において進路上の障害物と衝突した場合には、勾配の大きさによっては排障器4で障害物を押し退けることができずに車体3下に障害物が巻き込まれるおそれがある。
【0043】
これに対し、距離センサによって排障器4と線路との隙間の大きさを検出しながら第1空気ばね13の空気を排気する場合には、上り勾配または下り勾配の大きさに関わらず、排障器4と線路との隙間の大きさを、予め定めた一定値(障害物が巻き込まれない程度の隙間の大きさ)にすることができる。これにより、排障器4が線路に接触したり、排障器4を線路に近づけているにも関わらず車体3下に障害物が巻き込まれたりすることを防止できる。
【0044】
また、制御装置30により、距離センサによって排障器4と線路との隙間の大きさを検出しながら第1空気ばね13の空気を排気し、排障器4と線路との隙間の大きさが一定値に到達しないときに、第2空気ばね23に給気するように制御することは当然可能である。第1空気ばね13は、第2空気ばね23と比較して排障器4の近くに位置するので、第2空気ばね23を伸張させるより第1空気ばね13を収縮させる方が、排障器4を下降させるのに効果的だからである。なお、第1空気ばね13及び第2空気ばね23の両方に給排気して、排障器4と線路との隙間の大きさを一定値にすることも当然可能である。
【0045】
なお、距離センサ(図示せず)を排障器4に設ける代わりに、車体3及び台車(台車枠11,21)に、レール方向の傾斜を検出する傾斜センサ(図示せず)を設けることは当然可能である。この場合には、台車枠11,21に設けた傾斜センサによって線路のレール方向の勾配gを検出し、その勾配gに応じて第1空気ばね13(必要に応じて第2空気ばね23も)の空気を排気して、車体3のレール方向の傾斜角iを調整する。線路の勾配g及び車体3の傾斜角iと、排障器4と線路との隙間tとの関係を予め調べ、その関係(関係式やマップ)をROM32に保存しておけば、勾配g及び傾斜角iを検出しながら、隙間tが一定値となるように第1空気ばね13(及び第2空気ばね23)の伸縮量を調整できる。
【0046】
なお、この場合、台車枠11,21に設けた傾斜センサによって線路の勾配gを検出する代わりに、自動列車制御装置(信号保安装置)や鉄道制御システム等による地点情報を利用して、線路のレール方向の勾配を検出することは当然可能である。
【0047】
上記実施の形態では、非常ブレーキ41を作動させたこと、警笛42を鳴動させたこと、落石検知装置、踏切障害物検知装置、踏切支障報知装置等の出力信号を信号受信器43が受信したこと、運転士が目視により障害物を発見したときに通報装置(図示せず)の操作部を操作したこと等(障害物情報)のいずれかが検出された場合に、高さ調整機構14を作動させて第1空気ばね13の空気を排気する場合について説明した。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、警笛42を鳴動させたことを必須の条件とすることは当然可能である。進路上に進入した動物(障害物の一種)を運転士が発見した場合には、運転士は反射的に警笛42を鳴動させるからである。
【0048】
警笛42の鳴動を巻き込み防止処理が実行される必須の条件とする場合には、例えば、障害物情報が入力されるRAM33のバッファメモリとCPU31との間にAND回路(図示せず)を設け、そのAND回路の入力端子の一つに警笛42からの受信信号を入力する。AND回路の他の入力端子に非常ブレーキ41からの受信信号を入力すれば、警笛42が鳴動されて非常ブレーキ41が作動されたときに、AND回路から信号が出力される。これにより、障害物を発見した以外の原因で非常ブレーキ41を作動させた場合等(警笛42が鳴動されないとき)に巻き込み防止処理が実行されることを防止できる。
【0049】
上記実施の形態では複数の客車が連結される鉄道車両1の場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、先頭車両2だけで編成された1両編成(単行)の鉄道車両とすることは当然可能である。
【0050】
上記実施の形態では、先頭車両2の先頭部が線路に対して略垂直な切妻型車両(鉄道車両1)の場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、先頭部が流線形に形成される鉄道車両(新幹線(登録商標)車両など)とすることは当然可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 鉄道車両
2 先頭車両
3 車体
4 排障器
10 第1台車(先頭の台車)
13 第1空気ばね(空気ばね)
14 高さ調整機構
20 第2台車(後方に位置する台車)
23 第2空気ばね(空気ばね)
24 高さ調整機構
図1
図2
図3
図4