【課題】相手材との摺動摩擦において、相手材表面を損傷させたり、粗面化させたりすることを極力防止し得、シール性の低下及び摩擦異音の発生を極力防止し得る球帯状シール体を提供すること。
【解決手段】球帯状シール体44において、外層43の外表面45は、膨張黒鉛シート21を含む耐熱材の面46と、交点群19a及び19dが軸方向Zに、交点群19b及び19cが円周方向Rに夫々配列された平織金網17からなる補強材の面47とが混在して露出した平滑な面48となっており、交点群19a及び19d並びに19b及び19cでの面47は、外層43の外表面45の全体に対して10〜65%の面積割合をもって露出している。
排気管継手に用いられる球帯状シール体であって、円筒内面、部分凸球面状面並びに部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面によって規定された球帯状基体と、この球帯状基体の部分凸球面状面に一体的に形成された外層とを備えており、球帯状基体は、金網からなる補強材と、この補強材の金網の網目を充填し、かつこの補強材と混在一体化されている耐熱材とを具備しており、外層は、方形状の網目を形成する相隣り合う縦線と相隣り合う横線との交点を結ぶ一対の対角線のうちの一方の対角線上に位置する一方の交点群が軸方向に配列されている一方、当該一対の対角線のうちの他方の対角線上に位置する他方の交点群が円周方向に配列された平織金網からなると共に圧縮された補強材を少なくとも具備している球帯状シール体。
外層は、補強材の平織金網の網目に充填されていると共に当該補強材と混在一体化された耐熱材を具備しており、外層の外表面は、耐熱材の面と、補強材の面とが混在して露出した平滑な面となっている請求項1に記載の球帯状シール体。
外層は、補強材の平織金網の網目に充填されていると共に当該補強材と混在一体化された耐熱材及び固体潤滑剤を具備しており、外層の外表面は、固体潤滑剤の面と、補強材の面とが混在して露出した平滑な面となっている請求項1に記載の球帯状シール体。
平織金網からなる補強材の面は、外層の外表面の全体に対して10〜65%の面積割合をもって外層の外表面で露出している請求項1から3のいずれか一項に記載の球帯状シール体。
外層は、補強材の平織金網の網目に充填されていると共に当該補強材と混在一体化された耐熱材と、これら耐熱材及び補強材を覆った固体潤滑剤とを具備しており、外層の外表面は、固体潤滑剤の面が露出した平滑な面となっている請求項1に記載の球帯状シール体。
固体潤滑剤は、四フッ化エチレン樹脂、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体及び六方晶窒化硼素を含む請求項3又は5に記載の球帯状シール体。
四フッ化エチレン樹脂、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体及び六方晶窒化硼素の固体潤滑剤での組成割合は、四フッ化エチレン樹脂、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体及び六方晶窒化硼素の三元系組成図において、四フッ化エチレン樹脂10質量%、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体10質量%及び六方晶窒化硼素80質量%とする組成点、四フッ化エチレン樹脂10質量%、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体45質量%及び六方晶窒化硼素45質量%とする組成点、四フッ化エチレン樹脂45質量%、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体45質量%及び六方晶窒化硼素10質量%とする組成点並びに四フッ化エチレン樹脂40質量%、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体10質量%及び六方晶窒化硼素50質量%とする組成点を頂点とする四角形で境界付けられる領域内に相当する数値範囲内にある請求項6に記載の球帯状シール体。
四フッ化エチレン樹脂、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体及び六方晶窒化硼素の固体潤滑剤での組成割合は、四フッ化エチレン樹脂、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体及び六方晶窒化硼素の三元系組成図において、四フッ化エチレン樹脂25質量%、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体15質量%及び六方晶窒化硼素60質量%とする組成点、四フッ化エチレン樹脂12質量%、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体28質量%及び六方晶窒化硼素60質量%とする組成点、四フッ化エチレン樹脂10質量%、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体40質量%及び六方晶窒化硼素50質量%とする組成点、四フッ化エチレン樹脂20質量%、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体40質量%及び六方晶窒化硼素40質量%とする組成点、四フッ化エチレン樹脂38質量%、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体22質量%及び六方晶窒化硼素40質量%とする組成点並びに四フッ化エチレン樹脂35質量%、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体15質量%及び六方晶窒化硼素50質量%とする組成点を頂点とする六角形で境界付けられる領域内に相当する数値範囲内にある請求項6又は7に記載の球帯状シール体。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、本発明及びその実施の形態を、図に示す好ましい実施例に基づいて更に詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に何等限定されないのである。
【0032】
本発明の球帯状シール体の好ましい例における構成材料及びその例の製造方法について説明する。
【0033】
<耐熱材I及びその製造方法について>
濃度98%の濃硫酸を撹拌しながら、酸化剤として過酸化水素の60%水溶液を加え、これを反応液とする。この反応液を冷却して10℃の温度に保持し、該反応液に粒度30〜80メッシュの鱗片状天然黒鉛粉末を添加して30分間反応を行う。反応後、吸引濾過して酸処理黒鉛粉末を分離し、該酸処理黒鉛粉末を水で10分間撹拌して吸引濾過するという洗浄作業を2回繰返し、酸処理黒鉛粉末から硫酸分を充分除去する。ついで、硫酸分を充分除去した酸処理黒鉛粉末を110℃の温度に保持した乾燥炉で3時間乾燥し、これを酸処理黒鉛粉末とする。
【0034】
上記酸処理黒鉛粉末を、950〜1200℃の温度で1〜10秒間加熱(膨張)処理して分解ガスを発生せしめ、そのガス圧により黒鉛層間を拡張して膨張させた膨張黒鉛粒子(膨張倍率240〜300倍)を形成する。この膨張黒鉛粒子を所望のロール隙間に調整した双ローラ装置に供給してロール成形し、所望の厚さの膨張黒鉛シートを作製し、この膨張黒鉛シートを耐熱材Iとする。
【0035】
<耐熱材II及びその製造方法について>
上記酸処理黒鉛粉末と同様の方法で得た酸処理黒鉛粉末を撹拌しながら、該酸処理黒鉛粉末に燐酸塩として濃度50%の第一燐酸アルミニウム〔Al(H
2PO
4)
3〕水溶液をメタノールで希釈した溶液を噴霧状に配合し、均一に撹拌して湿潤性を有する混合物を作製する。この湿潤性を有する混合物を、120℃の温度に保持した乾燥炉で2時間乾燥する。ついで、これを950〜1200℃の温度で1〜10秒間加熱(膨張)処理して分解ガスを発生せしめ、そのガス圧により黒鉛層間を拡張して膨張させた膨張黒鉛粒子(膨張倍率240〜300倍)を形成する。この膨張処理工程において、第一燐酸アルミニウムでは構造式中の水が脱離する。この膨張黒鉛粒子を所望のロール隙間に調整した双ローラ装置に供給してロール成形し、所望の厚さの膨張黒鉛シートを作製し、この膨張黒鉛シートを耐熱材IIとする。
【0036】
このようにして作製された耐熱材IIには、膨張黒鉛に第一燐酸アルミニウムが0.1〜16質量%の割合で含有されている。この燐酸塩を含有した膨張黒鉛は、膨張黒鉛自体の耐熱性が向上されると共に酸化抑制作用が付与されるため、例えば600℃ないし600℃を超える高温領域での使用を可能とする。燐酸塩としては、第一燐酸アルミニウムの他に、第二燐酸リチウム(Li
2HPO
4)、第一燐酸カルシウム〔Ca(H
2PO
4)
2〕、第二燐酸カルシウム(CaHPO
4)、第二燐酸アルミニウム〔Al
2(HPO
4)
3〕を使用することができる。
【0037】
<耐熱材III及びその製造方法について>
上記と同様の方法で得た酸処理黒鉛粉末を撹拌しながら、該酸処理黒鉛粉末に燐酸塩として濃度50%の第一燐酸アルミニウム水溶液と燐酸として濃度84%のオルト燐酸(H
3PO
4)水溶液をメタノールで希釈した溶液を噴霧状に配合し、均一に撹拌して湿潤性を有する混合物を作製する。この湿潤性を有する混合物を、120℃の温度に保持した乾燥炉で2時間乾燥する。ついで、これを950〜1200℃の温度で1〜10秒間加熱(膨張)処理して分解ガスを発生せしめ、そのガス圧により黒鉛層間を拡張して膨張させた膨張黒鉛粒子(膨張倍率240〜300倍)を形成する。この膨張処理工程において、第一燐酸アルミニウムでは構造式中の水が脱離し、オルト燐酸では脱水反応を生じて五酸化燐を生成する。この膨張黒鉛粒子を所望のロール隙間に調整した双ローラ装置に供給してロール成形し、所望の厚さの膨張黒鉛シートを作製し、この膨張黒鉛シートを耐熱材IIIとする。
【0038】
このようにして作製された耐熱材IIIには、膨張黒鉛に第一燐酸アルミニウムが0.1〜16質量%及び五酸化燐が0.05〜5質量%の割合で含有されている。この燐酸塩及び五酸化燐を含有した膨張黒鉛は、膨張黒鉛自体の耐熱性が向上されると共に酸化抑制作用が付与されるため、例えば600℃ないし600℃を超える高温領域での使用を可能とする。燐酸としては、上記オルト燐酸の他に、メタ燐酸(HPO
3)、ポリ燐酸等を使用することができる。
【0039】
耐熱材I、II及びIIIの膨張黒鉛シートは、1.0〜1.15Mg/m
3程度の密度で、0.3〜0.6mm程度の厚さを有しているとよい。
【0040】
<球帯状基体用の補強材について>
球帯状基体用の補強材には、鉄系としてオーステナイト系のSUS304、SUS310S、SUS316、フェライト系のSUS430等のステンレス鋼線、鉄線(JISG3532)もしくは亜鉛メッキ鋼線(JISG3547)又は銅系として銅−ニッケル合金(白銅)線、銅−ニッケル−亜鉛合金(洋白)線、黄銅線、ベリリウム銅線からなる金属細線を一本又は二本以上使用して織ったり、編んだりして形成される織組金網又は編組金網等の金網が使用されるとよい。
【0041】
金網には、線径が0.15〜0.32mmの範囲の金属細線が、具体的には、0.15mm、0.17mm、0.20mm、0.28mm又は0.32mmの金属細線が使用されて好適であり、該線径の金属細線で形成された球帯状基体用の金網の網目の目幅は、縦幅M=4〜6mm、横幅N=3〜5mm程度の
図6に示す編組金網又は
図10に示す平織金網17からなる織組金網が使用されて好適である。
【0042】
<外層用の補強材について>
外層用の補強材は、球帯状基体用の補強材と同様、鉄系としてオーステナイト系のSUS304、SUS310S、SUS316、フェライト系のSUS430等のステンレス鋼線、鉄線(JISG3532)もしくは亜鉛メッキ鋼線(JISG3547)又は銅系として銅−ニッケル合金(白銅)線、銅−ニッケル−亜鉛合金(洋白)線、黄銅線、ベリリウム銅線からなる線径が0.05〜0.28mmの金属細線を使用して織った網目の目幅が縦幅M=2.0〜3.5mm、横幅N=2.0〜3.5mm程度の
図10に示す平織金網17が使用されて好適である。特に、外層用の補強材は、
図10及び
図26に示す平織金網17からなる補強材を使用して、
図11に示すように、同じ斜方向に向いた斜辺18を両端に有する平面視平行四辺形状に形成されていると共に複数本の縦線14と複数本の横線15とが格子状に織られ、方形状の網目16を形成する相隣り合う縦線14と相隣り合う横線15との交点を結ぶ一対の対角線のうちの一方の対角線上に位置する一方の交点群19a及び19dが幅方向Xに配列され、他方の対角線上に位置する他方の交点群19b及び19cが長手方向Yに配列された平織金網17が使用されて好適である。
【0043】
<固体潤滑剤について>
PTFE、FEP及びh−BNを含む固体潤滑剤の組成割合は、好ましくは、PTFE、FEP及びh−BNの組成割合(質量%)に関する
図25の紙面右側斜辺がPTFEの含有量(質量%)を、底辺がFEPの含有量(質量%)を、そして、紙面左側斜辺がh−BNの含有量(質量%)を夫々示す正三角形の三元系組成図において、PTFE10質量%、FEP10質量%及びh−BN80質量%とする組成点A、PTFE10質量%、FEP45質量%及びh−BN45質量%とする組成点B、PTFE45質量%、FEP45質量%及びh−BN10質量%とする組成点C並びにPTFE40質量%、FEP10質量%及びh−BN50質量%とする組成点Dを頂点とする四角形51で境界付けられる領域P内に相当する数値範囲内にあり、より好ましくは、
図25に示す三元系組成図において、PTFE25質量%、FEP15質量%及びh−BN60質量%とする組成点E、PTFE12質量%、FEP28質量%及びh−BN60質量%とする組成点F、PTFE10質量%、FEP40質量%及びh−BN50質量%とする組成点G、PTFE20質量%、FEP40質量%及びh−BN40質量%とする組成点H、PTFE38質量%、FEP22質量%及びh−BN40質量%とする組成点J並びにPTFE35質量%、FEP15質量%及びh−BN50質量%とする組成点Kを頂点とする六角形52で境界付けられる領域Q内に相当する数値範囲内にある。
【0044】
この固体潤滑剤は、製造過程においては、平均粒子径が0.01〜1μmのPTFE粉末と平均粒子径が0.01〜1μmのFEP粉末と平均粒子径が0.1〜20μmのh−BN粉末と界面活性剤と水とからなる水性ディスパージョンの形態で使用される。
【0045】
水性ディスパージョン中において、PTFE粉末、FEP粉末及び特に高温領域において優れた潤滑性を発揮するh−BN粉末の含有割合は、好ましくは、
図25に示す三元系組成図において、四角形51で境界付けられるの領域内に相当する数値範囲内にあり、より好ましくは、同三元系組成図において、六角形52で境界付けられる領域内に相当する数値範囲内にあり、更により好ましくは、PTFE粉末25質量%、FEP粉末25質量%及びh−BN粉末50質量%である。
【0046】
斯かる含有割合からなるPTFE粉末、FEP粉末及びh−BN粉末を含む固体潤滑剤粉末39質量%に対して、例えば、界面活性剤4質量%と水57質量%とが混合された水性ディスパージョンが用いられるが、水性ディスパージョン中の水の含有量は、ローラ塗り、刷毛塗り、スプレー等の手段による水性ディスパージョンの膨張黒鉛シートへの適用の態様に応じて増減してもよい。
【0047】
水性ディスパージョン中に含有される界面活性剤は、固体潤滑剤粉末を水に均一に分散させ得るものであればよく、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤のいずれも使用できる。例えば、ナトリウムアルキルサルフェート、ナトリウムアルキルエーテルサルフェート、トリエタノールアミンアルキルサルフェート、トリエタノールアミンアルキルエーテルサルフェート、アンモニウムアルキルサルフェート、アンモニウムアルキルエーテルサルフェート、アルキルエーテルリン酸ナトリウム、フルオロアルキルカルボン酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤;アルキルアンモニウム塩、アルキルベンジルアンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、プロピレングリコール−プロピレンオキシド共重合体、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、2−エチルヘキサノールエチレンオキシド付加物等の非イオン性界面活性剤;アルキルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミド酢酸ベタイン、イミダゾリウムベタイン等の両性界面活性剤等が挙げられる。特に、アニオン性、非イオン性界面活性剤が好ましい。特に好ましい界面活性剤は、熱分解残量の少ないオキシエチレン鎖を有する非イオン性界面活性剤である。
【0048】
水性ディスパージョンにおいて、界面活性剤の含有量は、例えば、固体潤滑剤粉末39質量%に対して4質量%であるが、界面活性剤の含有量が少なすぎると、固体潤滑剤粉末の分散が均一にならず、また、界面活性剤の含有量が多すぎると、焼成による界面活性剤の分解残渣が多くなり着色が生ずるほか、耐熱性、非粘着性等が低下する。
【0049】
PTFE粉末、FEP粉末、h−BN粉末、界面活性剤及び水を含有した水性ディスパージョンは、更に、固体潤滑剤粉末において、h−BN粉末の含有量の一部に代えて、アルミナ水和物粉末を20質量%以下の割合で、好ましくは0.05〜10質量%、より好ましくは0.05〜5質量%の割合で含有していてもよい。
【0050】
PTFE粉末、FEP粉末、h−BN粉末、界面活性剤及び水を含有した水性ディスパージョン又はPTFE粉末、FEP粉末、h−BN粉末、アルミナ水和物粉末、界面活性剤及び水を含有した水性ディスパージョンには、更に水溶性有機溶剤が含有されてもよい。水溶性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、グリセリン等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ等のエーテル系溶剤、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等のグリコール系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤、N−メチル−2−ピロリドン等のラクタム系溶剤が挙げられる。水溶性有機溶剤の含有量は、全水量の0.5〜50質量%、好ましくは1〜30質量%である。水溶性有機溶剤は、PTFE粉末及びFEP粉末を濡らす働きを有し、h−BN粉末との均一な混合物を形成させるもので、乾燥時には蒸発するので悪影響を及ぼすことはない。
【0051】
固体潤滑剤用粉末の水性ディスパージョンとしては、
(1)平均粒子径が0.01〜1μmのPTFE粉末、平均粒子径が0.01〜1μmのFEP粉末及び平均粒子径が0.1〜20μmのh−BN粉末からなると共に
図25に示す三元系組成図において四角形51で境界付けられる領域P内に相当する数値範囲内にある組成割合をもった固体潤滑剤用粉末39質量%と、界面活性剤4質量%と水57質量%とからなる水性ディスパージョン、
(2)上記(1)の組成割合をもった固体潤滑剤用粉末において、h−BN粉末の含有量45質量%以上を確保して当該h−BN粉末含有量の一部に代えてアルミナ水和物粉末20質量%以下を含有した上記(1)の固体潤滑剤用粉末39質量%と界面活性剤4質量%と水57質量%とからなる水性ディスパージョン、
(3)上記(1)の水性ディスパージョンに、更に水溶性有機溶剤を0.1〜22.5質量%含有した水性ディスパージョン、
(4)上記(2)の水性ディスパージョンに、更に水溶性有機溶剤を0.1〜22.5質量%含有した水性ディスパージョンのいずれかが使用される。
【0052】
水性ディスパージョンは、
図12に示す平面視平行四辺形状の膨張黒鉛シート21の一方の表面に又は
図15に示す方形状の網目16を形成する相隣り合う縦線14と相隣り合う横線との交点を結ぶ一対の対角線のうちの一方の対角線上に位置する一方の交点群19a及び19dが幅方向Xに配列され、他方の対角線上に位置する他方の交点群19b及び19cが長手方向Yに配列された平織金網17の表面24と平織金網17の網目16に充填された膨張黒鉛の表面25とが露出した平面視平行四辺形状の外層形成部材27の一方の表面にローラ塗り、刷毛塗り、スプレー等の手段で適用される。この水性ディスパージョンの乾燥後には、膨張黒鉛シート21の一方の表面に又は平織金網17の表面24と平織金網17の網目16に充填された膨張黒鉛の表面25とが露出した平面視平行四辺形状の外層形成部材27の一方の表面に固体潤滑剤の被覆層28が形成される。乾燥後において、固体潤滑剤の被覆層28は、加熱炉において、245℃の融点Tに対して、(T)〜(T+150℃)、好ましくは(T+5℃)〜(T+135℃)、更に好ましくは(T+10℃)〜(T+125℃)の範囲内の温度で10〜30分間焼成されてもよく、この固体潤滑剤の被覆層の焼成により、膨張黒鉛シート21の一方の表面又は外層形成部材27の一方の表面に固体潤滑剤の焼成被覆層が形成される。
【0053】
次に、上記した構成材料からなる球帯状シール体の製造方法について、図面に基づき説明する。
【0054】
(第一工程)
図4に示すように、線径0.15〜0.32mmの金属細線を円筒状に編んで形成した網目の目幅が縦幅M=4〜6mm、横幅N=3〜5mm程度(
図6参照)の円筒状の編組金網1をローラ2及び3間に通して所定の幅d1の帯状金網4を作製し、帯状金網4を所定の長さLに切断した球帯状基体用の補強材となる短冊状の金網5を準備する。
【0055】
(第二工程)
図5に示すように、金網5の幅d1に対して(1.10×d1)mmから(2.10×d1)mmの幅d2を有すると共に金網5の長さLに対して(1.30×L)mmから(2.70×L)mmの長さlを有すると共に、密度が1.0〜1.5Mg/m
3、好ましくは1.0〜1.2Mg/m
3の短冊状の球帯状基体用の膨張黒鉛シート6(耐熱材I、耐熱材II及び耐熱材IIIのうちの一つからなる)を準備する。
【0056】
(第三工程)
球帯状シール体44(
図1及び
図2参照)において、部分凸球面状面39の大径側の環状端面40に全体的に膨張黒鉛シート6の膨張黒鉛からなる耐熱材が露出するようにすべく、
図7に示すように、部分凸球面状面39の大径側の環状端面40となる金網5の幅方向の一方の端縁7から最大で(0.10〜0.80)×d1mmであって部分凸球面状面39の小径側の環状端面41(
図1参照)となる金網5の幅方向の他方の端縁8からのはみ出し量δ2よりも多いはみ出し量δ1をもって膨張黒鉛シート6が幅方向にはみ出させ、球帯状基体用の膨張黒鉛シート6を金網5の長さ方向の一方の端縁9から最大で(0.30〜1.70)×Lmmだけ長さ方向にはみ出させ、金網5の長さ方向の他方の端縁10と端縁10に対応する膨張黒鉛シート6の長さ方向の端縁11とを合致させて球帯状基体用の膨張黒鉛シート6と球帯状基体用の金網5とを互いに重ね合わせた重合体12を得る。
【0057】
(第四工程)
図8に示すように、膨張黒鉛シート6を内側にしてうず巻き状であって膨張黒鉛シート6が1回多くなるように重合体12を捲回して、内周側及び外周側の両方に膨張黒鉛シート6が露出した筒状母材13を形成する。膨張黒鉛シート6としては、筒状母材13における膨張黒鉛シート6の巻き回数が金網5の巻き回数よりも多くなるように、金網5の長さLに対して(1.30×L)mmから(2.70×L)mmの長さlを有したものを予め準備する。筒状母材13において、
図9に示すように、筒状母材13において、膨張黒鉛シート6は、幅方向の一方の端縁側において金網5の一方の端縁7から幅方向にδ1だけはみ出しており、膨張黒鉛シート6の幅方向の他方の端縁側において、金網5の他方の端縁8から幅方向にδ2だけはみ出している。
【0058】
(第五工程)
複数本の縦線14及び横線15が格子状に織られていると共に相隣り合う縦線14同士と相隣り合う横線15同士とに囲まれた方形状の網目16が形成された
図10に示す平織金網17を準備する。平織金網17を用いて、同じ方向に傾いた斜辺18からなる両端を有すると共に方形状の網目16を形成するように相隣り合う縦線14と相隣り合う横線15とが格子状に織られ、相隣り合う縦線14と相隣り合う横線15との交点群19a、19b、19c及び19dにおいて各網目16での交点を結ぶ一対の対角線のうちの一方の対角線上に位置する一方の交点群19a及び19dが幅方向Xに配列され、他方の交点群19b及び19cが長手方向Yに配列された両端間の長さ(l−L+Δ)を有する
図11に示すような平面視平行四辺形状の外層用の平織金網17を準備する。
【0059】
(第六工程)
同じ方向に傾いた斜辺20からなる両端を有すると共に平面視平行四辺形状の平織金網17と同形であって膨張黒鉛シート6と同様である
図12に示すような外層用の耐熱材となる平面視平行四辺形状の膨張黒鉛シート21を準備する。
【0060】
(第七工程)
水性ディスパージョンとして、
(1)平均粒子径が0.01〜1μmのPTFE粉末、平均粒子径が0.01〜1μmのFEP粉末及び平均粒子径が0.1〜20μmのh−BN粉末からなると共に
図25に示す三元系組成図において四角形51で境界付けられる領域P内に相当する数値範囲内にある組成割合をもった固体潤滑剤用粉末39質量%と、界面活性剤4質量%と水57質量%とからなる水性ディスパージョン、
(2)上記(1)の組成割合をもった固体潤滑剤用粉末において、h−BN粉末の含有量45質量%以上を確保して当該h−BN粉末含有量の一部に代えてアルミナ水和物粉末20質量%以下を含有した(1)の固体潤滑剤用粉末39質量%と界面活性剤4質量%と水57質量%とからなる水性ディスパージョン、
(3)上記(1)の水性ディスパージョンに、更に水溶性有機溶剤を0.1〜22.5質量%含有した水性ディスパージョン及び
(4)上記(2)の水性ディスパージョンに、更に水溶性有機溶剤を0.1〜22.5質量%含有した水性ディスパージョン、
のうちのいずれかを準備する。
【0061】
(第八工程)
<第一の方法>
図13に示すように、膨張黒鉛シート21を、二枚の平織金網17間に、斜辺18及び20を夫々合致させて挟み込んだ後、
図14に示すように、膨張黒鉛シート21及び二枚の平織金網17を一対のローラ22及び23で加圧して、
図15に示すように、平織金網17の網目16に膨張黒鉛シート21の膨張黒鉛を充填した扁平状であって、相隣り合う縦線14と相隣り合う横線15とに囲まれた方形状の網目16を有すると共に縦線14と横線15との交点群19a、19b、19c及び19dにおいて各網目16での交点群19a、19b、19c及び19dの各交点を結ぶ一対の対角線のうちの一方の対角線上に位置する一方の交点群19a及び19dが幅方向Xに配列され、他方の対角線上に位置する他方の交点群19b及び19cが長手方向Yに配列された平織金網17の表面24と平織金網17の網目16に充填された膨張黒鉛シート21の表面25とが露出すると共に両端が同じ斜方向に傾いた斜辺26及び26を有した平面視平行四辺形状の外層形成部材27を形成する。
【0062】
<第二の方法>
図16に示すように、平面視平行四辺形状に形成された四枚の外層用の膨張黒鉛シート21の夫々の一方の表面に、水性ディスパージョン(1)から(4)の夫々を刷毛塗り、ローラ塗り、スプレー等の手段で適用し、これを100℃の温度で乾燥させて固体潤滑剤の被覆層28を形成し、
図17に示すように、固体潤滑剤の被覆層28を備えた外層用の膨張黒鉛シート21の夫々を、二枚の平織金網17間に、斜辺18及び20を夫々合致させて挟み込んだ後、
図18に示すように、膨張黒鉛シート21及び二枚の平織金網17を一対のローラ22及び23で加圧して、
図19に示すように、平織金網17の網目16に膨張黒鉛シート21の膨張黒鉛及び被覆層28の固体潤滑剤を充填した扁平状であって、相隣り合う縦線14と相隣り合う横線15とに囲まれた方形状の網目16を有すると共に縦線14と横線15との交点群19a、19b、19c及び19dにおいて各網目16での交点群19a、19b、19c及び19dの各交点を結ぶ一対の対角線のうちの一方の対角線上に位置する一方の交点群19a及び19dが幅方向Xに配列され、他方の対角線上に位置する他方の交点群19b及び19cが長手方向Yに配列された平織金網17の表面24と平織金網17の網目16に充填された固体潤滑剤の表面25aとが露出すると共に同じ斜方向に傾いた斜辺26及び26からなる両端を有した平面視平行四辺形状の外層形成部材27aを形成する。
【0063】
<第三の方法>
第一の方法で得られた四枚の平面視平行四辺形状の外層形成部材27の夫々の一方の表面に、水性ディスパージョン(1)から(4)の夫々を刷毛塗り、ローラ塗り、スプレー等の手段で適用し、これを100℃の温度で乾燥させて固体潤滑剤の被覆層28を形成し、膨張黒鉛シート21の表面と平織金網17の表面とを覆って固体潤滑剤の被覆層28が露出した平面視平行四辺形状の外層形成部材(図示せず)を形成する。
【0064】
第一、第二及び第三の方法において、一対のローラ22及び23間の隙間Δ1は、0.4~0.6mm程度が適当である。
【0065】
(第九工程)
このようにして得た外層形成部材27をその一方の表面を、外層形成部材27aを固体潤滑剤の表面25aと平織金網17の表面24とが露出した一方の表面を又は図示しない外層形成部材を固体潤滑剤の被覆層28の露出面を夫々、
図20及び
図21に示すように、外側にして筒状母材13の外周面に、その両端の斜辺26及び26間に円周方向の若干の隙間をもって捲回した予備円筒成形体29を形成する。
【0066】
(第十工程)
内面に円筒壁面30と円筒壁面30に連なる部分凹球面状壁面31と部分凹球面状壁面31に連なる貫通孔32とを備え、貫通孔32に段付きコア33を嵌挿することによって内部に中空円筒部34と中空円筒部34に連なる球帯状中空部35とが形成された
図22に示す金型36を準備し、金型36の段付きコア33に予備円筒成形体29を挿入する。
【0067】
金型36の中空円筒部34及び球帯状中空部35に配された予備円筒成形体29を軸方向Zに98〜294N/mm
2(1〜3トン/cm
2)の圧力で圧縮成形し、
図1から
図3並びに
図23及び
図24に示すような、中央部に円筒内面38により規定された貫通孔37を有すると共に円筒内面38と部分凸球面状面39と部分凸球面状面39の大径側及び小径側の環状端面40及び41とにより規定された球帯状基体42と、球帯状基体42の部分凸球面状面39に一体に形成された外層43とを備えた球帯状シール体44を作製する。
【0068】
この圧縮成形により、第一の方法での球帯状シール体44においては、
図2及び
図3に示すように、金網5と金網5の網目を充填し、かつ金網5と混在一体化されている膨張黒鉛シート6とを具備した球帯状基体42は、膨張黒鉛シート6と金網5とが互いに圧縮され、互いに絡み合って構造的一体性を有するように形成されており、外層43は、方形状の網目16を形成する相隣り合う縦線14と相隣り合う横線15との交点を結ぶ一対の対角線のうちの一方の対角線上に位置する交点群19a及び19dが軸方向Zに配列されている一方、当該一対の対角線のうちの他方の対角線上に位置する交点群19b及び19cが円周方向Rに配列された平織金網17からなると共に圧縮された補強材と、この補強材の平織金網17の網目16に充填されていると共に当該補強材と共に圧縮されて当該補強材と混在一体化された膨張黒鉛を含む耐熱材とを具備しており、外層43の外表面45は、膨張黒鉛シート21を含む耐熱材の面46と、交点群19a及び19dが軸方向Zに、交点群19b及び19cが円周方向Rに夫々配列された平織金網17からなる補強材の面47とが混在して露出した平滑な面48となっており、交点群19a及び19d並びに19b及び19cでの面47は、外層43の外表面45の全体に対して、好ましくは、10〜65%、より好ましくは、15〜60%の面積割合をもって露出している。
【0069】
また、この圧縮成形により、第二の方法での球帯状シール体44においては、
図23に示すように、金網5と金網5の網目を充填し、かつ金網5と混在一体化されている膨張黒鉛シート6とを具備した球帯状基体42は、膨張黒鉛シート6と金網5とが互いに圧縮され、互いに絡み合って構造的一体性を有するように形成されており、外層43は、方形状の網目16を形成する相隣り合う縦線14と相隣り合う横線15との交点を結ぶ一対の対角線のうちの一方の対角線上に位置する交点群19a及び19dが軸方向Zに配列されている一方、当該一対の対角線のうちの他方の対角線上に位置する交点群19b及び19cが円周方向Rに配列された平織金網17からなると共に圧縮された補強材と、当該補強材の平織金網17の網目16に充填されていると共に当該補強材と共に圧縮されて当該補強材と混在一体化された膨張黒鉛及び固体潤滑剤とを具備しており、外層43の外表面45は、固体潤滑剤からなる面49と、交点群19a及び19dが軸方向Zに配列され、交点群19b及び19cが円周方向Rに配列された平織金網17からなる補強材の面47とが混在して露出した平滑な面50となっており、交点群19a及び19b並びに19b及び19cでの面47は、外層43の外表面45の全体に対して、好ましくは、10〜65%、より好ましくは、15〜60%の面積割合をもって露出している。
【0070】
更に、この圧縮成形により、第三の方法での球帯状シール体44においては、、
図24に示すように、金網5と金網5の網目を充填し、かつ金網5と混在一体化されている膨張黒鉛シート6とを具備した球帯状基体42は、膨張黒鉛シート6と金網5とが互いに圧縮され、互いに絡み合って構造的一体性を有するように形成されており、外層43は、方形状の網目16を形成する相隣り合う縦線14と相隣り合う横線15との交点を結ぶ一対の対角線のうちの一方の対角線上に位置する交点群19a及び19dが軸方向Zに配列されている一方、当該一対の対角線のうちの他方の対角線上に位置する交点群19b及び19cが円周方向Rに配列された平織金網17からなると共に圧縮された補強材と、当該補強材の平織金網17の網目16に充填されていると共に当該補強材と混在一体化された膨張黒鉛と、これら混在一体化された膨張黒鉛の面46及び平織金網17の面47を覆った固体潤滑剤とを具備しており、外層43の外表面45は、固体潤滑剤の面53が露出した平滑な面54となっいる。
【0071】
第四工程において、重合体12を、膨張黒鉛シート6を内側にしてうず巻き状に捲回する代わりに、帯状金網4からなる金網5を内側にしてうず巻き状に捲回して筒状母材13を形成すると、球帯状基体42の円筒内面38において金網5からなる補強材が露出する球帯状シール体44を作製することができる。
【0072】
球帯状シール体44が組込まれて使用された
図29に示す排気管球面継手において、エンジン側に連結された上流側排気管100の外周面には、管端部101を残してフランジ200が立設されており、管端部101には、球帯状シール体44が貫通孔37を規定する円筒内面38において嵌合されており、大径側の環状端面40において球帯状シール体44がフランジ200に当接されて着座せしめられており、上流側排気管100と対峙して配されていると共にマフラ側に連結された下流側排気管300には、凹球面部302と凹球面部302に連接されたフランジ部303とを一体に備えた径拡大部301が固着されており、凹球面部302の内面304が球帯状シール体44の外層43の外表面45における平滑な面48、50又は54に摺接されている。
【0073】
図29に示す排気管球面継手において、一端がフランジ200に固定され、他端が径拡大部301のフランジ部303を挿通して配された一対のボルト400とボルト400の膨大頭部及びフランジ部303の間に配された一対のコイルばね500とにより、下流側排気管300には、常時、上流側排気管100方向にバネ力が付勢されている。そして、排気管球面継手は、上、下流側排気管100、300に生じる相対角変位に対しては、球帯状シール体44の外層43のすべり面としての平滑な面48、50又は54と下流側排気管300の端部に形成された径拡大部301の凹球面部302の内面304との摺接でこれを許容するようになっている。
【0074】
次に、本発明を実施例に基づき詳細に説明する。なお、本発明はこれら実施例に何等限定されない。
【0075】
実施例1
金属細線として線径0.28mmのオーステナイト系ステンレス鋼線(SUS304)を一本使用して網目の目幅が縦4mm、横5mmの円筒状の編組金網を作製し、これを一対のローラ間に通して帯状金網とし、これを球帯状基体用の補強材となる金網とした。耐熱材として、密度1.12Mg/m
3、厚さ0.38mmの膨張黒鉛シート(耐熱材I)を使用した。膨張黒鉛シートをうず巻き状に一周分捲回したのち、膨張黒鉛シートの内側に球帯状基体用の金網を重ね合わせ、うず巻き状に捲回して最外周に膨張黒鉛シートを位置させた筒状母材を作製した。この筒状母材においては、膨張黒鉛シートの幅方向の両端部はそれぞれ球帯状基体用の金網の幅方向に突出(はみ出し)している。
【0076】
上記と同様の線径0.28mmの金属細線を使用して目幅が縦1.5mm、横1.5mmの方形状の網目をもって織られた平織金網を用いて、両端が同じ方向に向いた斜辺を有すると共に、相隣り合う縦線と相隣り合う横線との交点を結ぶ一対の対角線のうちの一方の対角線上に位置する一方の交点群が幅方向に配列され、他方の対角線上に位置する他方の交点群が長手方向に配列された平面視平行四辺形状の
図26に示す平織金網からなる外層用の補強材を作製した。
【0077】
前記膨張黒鉛シートと同様の膨張黒鉛シートを使用して外層用の補強材と同一の形状を有する平面視平行四辺形状の外層用の膨張黒鉛シートを作製した。
【0078】
斯かる外層用の膨張黒鉛シートを、二枚の外層用の平織金網間に、各辺を夫々合致させて挿入した後、当該外層用の膨張黒鉛シート及び二枚の平織金網を一対のローラで加圧して、平織金網の網目に膨張黒鉛を充填した扁平状であって、平織金網の表面と平織金網の網目に充填された膨張黒鉛の表面とが露出すると共に両端が同じ斜方向に向いた斜辺を有した平面視平行四辺形状の外層形成部材を形成した。
【0079】
筒状母材の外周面に外層形成部材を、表面に平織金網の面と膨張黒鉛の面とが混在して露出した面を外側にして筒状母材の外周面に、両端の斜辺間に円周方向に若干の隙間を保持して外層形成部材を捲回し、予備円筒成形体を作製した。
【0080】
予備円筒成形体を金型の段付きコアに挿入し、該予備円筒成形体を金型の中空部に配置した後、該予備円筒成形体を軸方向に294N/mm
2(3トン/cm
2)の圧力で圧縮成形し、円筒内面と部分凸球面状面と部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面とにより規定された球帯状基体と、球帯状基体の部分凸球面状面に一体に形成された外層とを備えた球帯状シール体を得た。
【0081】
得られた球帯状シール体において、球帯状基体は、膨張黒鉛を含む耐熱材と金網からなる補強材とが互いに圧縮され、互いに絡み合って構造的一体性を有するように形成されており、外層は、外層用の膨張黒鉛と平織金網からなる補強材とが圧縮されて補強材の網目に、外層用の膨張黒鉛が充填されて当該補強材と耐熱材とが混在一体化されてなり、外層の外表面は、膨張黒鉛からなる耐熱材の面と、方形状の網目を形成する相隣り合う縦線と相隣り合う横線との交点を結ぶ一対の対角線のうちの一方の対角線上に位置する一方の交点群が軸方向に配列され、他方の対角線上に位置する他方の交点群が円周方向に配列された平織金網からなる補強材の面とが混在して露出した平滑な面となっており、外層の外表面には、外層用の平織金網からなる補強材の面が当該外表面の全体に対して41%の面積割合をもって当該外表面で露出していた。
【0082】
実施例2
実施例1と同様の金属細線を使用して織られた目幅が縦2.0mm、横2.0mmの方形状の網目をもった平織金網を用いて、実施例1と同様の外層用の補強材を作製し、斯かる外層用の補強材と実施例1と同様の外層用の膨張黒鉛シートとから実施例1と同様にして平面視平行四辺形状の外層形成部材を形成し、以下、実施例1と同様の方法で実施例1と同様の球帯状シール体を得た。得られた球帯状シール体において、外層の外表面には、平織金網の面が当該外表面の全体に対して34%の面積割合をもって露出していた。
【0083】
実施例3
外層用の耐熱材として、密度0.5Mg/m
3、厚さ1.00mmの膨張黒鉛シート(耐熱材I)を使用して実施例1と同様の外層用の補強材と同一な形状を有する平面視平行四辺形状の外層用の膨張黒鉛シートを作製し、斯かる外層用の膨張黒鉛シートと実施例1と同様の外層用の補強材とから実施例1と同様にして平面視平行四辺形状の外層形成部材を形成し、以下、実施例1と同様の方法で実施例1と同様の球帯状シール体を得た。得られた球帯状シール体において、外層の外表面には、平織金網の面が当該外表面の全体に対して32%の面積割合をもって当該外表面で露出していた。
【0084】
実施例4
実施例1と同様の金属細線を使用して織られた目幅が縦2.5mm、横2.5mmの方形状の網目をもった平織金網を用いて、実施例1と同様の外層用の補強材を作製し、斯かる実施例1と同様の外層用の補強材と、実施例3と同様の外層用の膨張黒鉛シートとから実施例1と同様にして平面視平行四辺形状の外層形成部材を形成し、以下、実施例1と同様の方法で実施例1と同様の球帯状シール体を得た。得られた球帯状シール体において、外層の外表面には、外層用の平織金網からなる補強材の面が当該外表面の全体に対して27%の面積割合をもって当該外表面で露出していた。
【0085】
実施例5
実施例1と同様の金属細線を使用して織られた目幅が縦3.0mm、横3.0mmの方形状の網目をもった平織金網を用いて、実施例1と同様の外層用の補強材を作製し、斯かる実施例1と同様の外層用の補強材と実施例1と同様の膨張黒鉛シートとから実施例1と同様にして平面視平行四辺形状の外層形成部材を形成し、以下、実施例1と同様の方法で実施例1と同様の球帯状シール体を得た。得られた球帯状シール体において、外層の外表面には、外層用の平織金網からなる補強材の面が当該外表面の全体に対して25%の面積割合をもって当該外表面で露出していた。
【0086】
実施例6
金属細線として線径0.32mmの実施例1と同様のオーステナイト系ステンレス鋼線を使用して目幅が縦1.5mm、横1.5mmの方形状の網目をもって織られた平織金網を用いて、実施例1と同様の外層用の補強材を作製し、斯かる外層用の補強材と実施例1と同様の膨張黒鉛シートとから実施例1と同様にして平面視平行四辺形状の外層形成部材を形成し、以下、実施例1と同様の方法で実施例1と同様の球帯状シール体を得た。得られた球帯状シール体において、外層の外表面には、外層用の平織金網からなる補強材の面が当該外表面の全体に対して45%の面積割合をもって当該外表面で露出していた。
【0087】
実施例7
実施例6と同様のオーステナイト系ステンレス鋼線を使用して目幅が縦2.0mm、横2.0mmの方形状の網目をもって織られた平織金網を用いて、実施例1と同様の外層用の平面視平行四辺形状の補強材を作製し、斯かる外層用の補強材と実施例1と同様の平面視平行四辺形状の外層用の膨張黒鉛シートとから実施例1と同様にして平面視平行四辺形状の外層形成部材を形成し、以下、実施例1と同様の方法で実施例1と同様の球帯状シール体を得た。得られた球帯状シール体において、外層の外表面には、外層用の平織金網からなる補強材の面が当該外表面の全体に対して39%の面積割合をもって当該外表面で露出していた。
【0088】
実施例8
実施例6と同様のオーステナイト系ステンレス鋼線を使用して目幅が縦2.5mm、横2.5mmの方形状の網目をもって織られた平織金網を用いて、実施例1と同様の外層用の補強材を作製し、斯かる外層用の補強材と実施例1と同様の外層用の膨張黒鉛シートとから実施例1と同様にして平面視平行四辺形状の外層形成部材を形成し、以下、実施例1と同様の方法で実施例1と同様の球帯状シール体を得た。得られた球帯状シール体において、外層の外表面には、外層用の平織金網からなる補強材の面が当該外表面の全体に対して31%の面積割合をもって当該外表面で露出していた。
【0089】
実施例9
実施例6と同様のオーステナイト系ステンレス鋼線を使用して目幅が縦3.0mm、横3.0mmの方形状の網目をもって織られた平織金網を用いて、実施例1と同様の外層用の補強材を作製し、斯かる外層用の補強材と実施例1と同様の外層用の膨張黒鉛シートとから実施例1と同様にして平面視平行四辺形状の外層形成部材を形成し、以下、実施例1と同様の方法で実施例1と同様の球帯状シール体を得た。得られた球帯状シール体において、外層の外表面には、外層用の平織金網からなる補強材の面が当該外表面の全体に対して25%の面積割合をもって当該外表面で露出していた。
【0090】
実施例10
金属細線として線径0.15mmの実施例1と同様のオーステナイト系ステンレス鋼線を使用して目幅が縦1.5mm、横1.5mmの方形状の網目をもって織られた平織金網を用いて、実施例1と同様の外層用の補強材を作製し、斯かる外層用の補強材と実施例1と同様の外層用の膨張黒鉛シートとから実施例1と同様にして平面視平行四辺形状の外層形成部材を形成し、以下、実施例1と同様の方法で実施例1と同様の球帯状シール体を得た。得られた球帯状シール体において、外層の外表面には、外層用の平織金網からなる補強材の面が当該外表面の全体に対して25%の面積割合をもって当該外表面で露出していた。
【0091】
実施例11
実施例10と同様のオーステナイト系ステンレス鋼線を使用して目幅が縦2.0mm、横2.0mmの方形状の網目をもって織られた平織金網を用いて作製された実施例1と同様の外層用の補強材と実施例1と同様の外層用の膨張黒鉛シートとから実施例1と同様にして平面視平行四辺形状の外層形成部材を形成し、以下、実施例1と同様の方法で実施例1と同様の球帯状シール体を得た。得られた球帯状シール体において、外層の外表面には、外層用の平織金網からなる補強材の面が当該外表面の全体に対して21%の面積割合をもって当該外表面で露出していた。
【0092】
実施例12
実施例10と同様のオーステナイト系ステンレス鋼線を使用して目幅が縦2.5mm、横2.5mmの方形状の網目をもって織られた平織金網を用いて形成された実施例1と同様の外層用の補強材と実施例1と同様の膨張黒鉛シートとから実施例1と同様にして平面視平行四辺形状の外層形成部材を形成し、以下、実施例1と同様の方法で実施例1と同様の球帯状シール体を得た。得られた球帯状シール体において、外層の外表面には、外層用の平織金網からなる補強材の面が当該外表面の全体に対して18%の面積割合をもって当該外表面で露出していた。
【0093】
実施例13
実施例10と同様のオーステナイト系ステンレス鋼線を使用して目幅が縦3.0mm、横3.0mmの方形状の網目をもって織られた平織金網を用いて、実施例1と同様の外層用の補強材を作製し、斯かる外層用の補強材と実施例1と同様の膨張黒鉛シートとから実施例1と同様にして平面視平行四辺形状の外層形成部材を形成し、以下、実施例1と同様の方法で実施例1と同様の球帯状シール体を得た。得られた球帯状シール体において、外層の外表面には、外層用の平織金網からなる補強材の面が当該外表面の全体に対して15%の面積割合をもって当該外表面で露出していた。
【0094】
実施例14
金属細線として線径0.42mmの実施例1と同様のオーステナイト系ステンレス鋼線を使用して目幅が縦2.0mm、横2.0mmの方形状の網目をもって織られた平織金網を用いて、実施例1と同様の外層用の補強材を作製し、斯かる外層用の補強材と実施例1と同様の外層用の膨張黒鉛シートとから実施例1と同様にして平面視平行四辺形状の外層形成部材を形成し、以下、実施例1と同様の方法で実施例1と同様の球帯状シール体を得た。得られた球帯状シール体において、外層の外表面には、外層用の平織金網からなる補強材の面が当該外表面の全体に対して45%の面積割合をもって当該外表面で露出していた。
【0095】
実施例15
金属細線として線径0.50mmの実施例1と同様のオーステナイト系ステンレス鋼線を使用して目幅が縦1.5mm、横1.5mmの方形状の網目をもって織られた平織金網を用いて、実施例1と同様の外層用の補強材を作製し、斯かる外層用の補強材と実施例1と同様の外層用の膨張黒鉛シートとから実施例1と同様にして平面視平行四辺形状の外層形成部材を形成し、以下、実施例1と同様の方法で実施例1と同様の球帯状シール体を得た。得られた球帯状シール体において、外層の外表面には、外層用の平織金網からなる補強材の面が当該外表面の全体に対して60%の面積割合をもって当該外表面で露出していた。
【0096】
以上の実施例2から15では、外層は、外層用の膨張黒鉛と平織金網からなる補強材とが圧縮されて補強材の網目に外層用の膨張黒鉛が充填されて当該補強材と耐熱材とが混在一体化されてなり、外層の外表面は、膨張黒鉛からなる耐熱材の面と、方形状の網目の相隣り合う縦線と相隣り合う横線との交点を結ぶ一対の対角線のうちの一方の対角線上に位置する一方の交点群が軸方向に配列され、他方の対角線上に位置する他方の交点群が円周方向に配列された外層用の平織金網からなる補強材の面とが混在して露出した平滑な面となっている。
【0097】
実施例16
平均粒径0.20μmのPTFE粉末25質量%、平均粒径0.15μmのFEP粉末15質量%及び平均粒径8μmのh−BN粉末60質量%を含有する潤滑組成物粉末39質量%と界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル(非イオン性界面活性剤)4質量%と水57質量%とからなる水性ディスパージョン(PTFE9.75質量%、FEP5.85質量%及びh−BN23.4質量%、非イオン性界面活性剤4質量%、水57質量%)を実施例1と同様の外層用の膨張黒鉛シートの一方の表面にローラ塗りし、100℃の温度で乾燥してPTFE、FEP及びh−BNの潤滑組成物からなる固体潤滑剤(PTFE25質量%、FEP15質量%及びh−BN60質量%)の被覆層を形成し、斯かる被覆層を備えた外層用の膨張黒鉛シートと実施例2と同様の方形状の網目をもった平織金網を用いて作製された実施例1と同様の外層用の補強材とから実施例1と同様にして平面視平行四辺形状の外層形成部材を形成し、この外層形成部材を、平織金網の面と固体潤滑剤の面とが混在して露出した面を外側にして筒状母材の外周面に実施例1と同様に捲回して予備円筒成形体を作製し、以下、実施例1と同様の方法で球帯状シール体を得た。得られた球帯状シール体において、外層は、外層用の膨張黒鉛と平織金網からなる補強材とが圧縮されて平織金網の網目に、膨張黒鉛及びPTFE25質量%、FEP15質量%及びh−BN60質量%を含む固体潤滑剤が充填されて当該膨張黒鉛と固体潤滑剤とが混在一体化されてなり、外層の外表面には、外層用の平織金網からなる補強材の面が外層の外表面の全体に対して36%の面積割合をもって当該外表面で露出していた。
【0098】
実施例17
平均粒径0.20μmのPTFE粉末12質量%、平均粒径0.15μmのFEP粉末28質量%及び平均粒径8μmのh−BN粉末60質量%を含有する固体潤滑剤用粉末39質量%と界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル(非イオン性界面活性剤)4質量%と水57質量%とからなる水性ディスパージョン(PTFE4.68質量%、FEP10.92質量%及びh−BN23.4質量%、非イオン性界面活性剤4質量%、水57質量%)を実施例3と同様の外層用の膨張黒鉛シートの一方の表面にローラ塗りし、実施例16と同様にして、PTFE、FEP及びh−BNの潤滑組成物からなる固体潤滑剤(PTFE12質量%、FEP28質量%及びh−BN60質量%)の被覆層を形成し、斯かる被覆層を備えた外層用の膨張黒鉛シートと実施例2と同様の方形状の網目をもった平織金網を用いて作製された外層用の平面視平行四辺形状の補強材とから実施例1と同様にして平面視平行四辺形状の外層形成部材を形成し、以下、実施例16と同様にして球帯状シール体を得た。得られた球帯状シール体において、外層は、外層用の膨張黒鉛と平織金網とが圧縮されて平織金網の網目に、膨張黒鉛及びPTFE12質量%、FEP28質量%及びh−BN60質量%を含む固体潤滑剤が充填されて当該膨張黒鉛と固体潤滑剤とが混在一体化されてなり、外層の外表面には、外層用の平織金網からなる補強材の面が外層の外表面の全体に対して32%の面積割合をもって当該外層の外表面で露出していた。
【0099】
実施例18
平均粒径0.20μmのPTFE粉末10質量%、平均粒径0.15μmのFEP粉末40質量%及び平均粒径8μmのh−BN粉末50質量%を含有する固体潤滑剤用粉末39質量%と界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル(非イオン性界面活性剤)4質量%と水57質量%とからなる水性ディスパージョン(PTFE3.9質量%、FEP15.6質量%及びh−BN19.5質量%、非イオン性界面活性剤4質量%、水57質量%)を実施例4と同様の外層用の膨張黒鉛シートの一方の表面にローラ塗りし、実施例16と同様にして、PTFE、FEP及びh−BNの潤滑組成物からなる固体潤滑剤(PTFE10質量%、FEP40質量%及びh−BN50質量%)の被覆層を形成し、斯かる被覆層を備えた外層用の膨張黒鉛シートと実施例4と同様の方形状の網目をもった平織金網を用いて作製された実施例1と同様の外層用の補強材とから実施例1と同様にして平面視平行四辺形状の外層形成部材を形成し、以下、実施例16と同様にして球帯状シール体を得た。得られた球帯状シール体において、外層は、外層用の膨張黒鉛と平織金網とが圧縮されて平織金網の網目に、膨張黒鉛及びPTFE10質量%、FEP40質量%及びh−BN50質量%を含む固体潤滑剤が充填されて当該膨張黒鉛と固体潤滑剤とが混在一体化されてなり、外層の外表面には、外層用の平織金網からなる補強材の面が外層の外表面の全体に対して25%の面積割合をもって当該外層の外表面で露出していた。
【0100】
実施例19
平均粒径0.20μmのPTFE粉末20質量%、平均粒径0.15μmのFEP粉末40質量%及び平均粒径8μmのh−BN粉末40質量%を含有する固体潤滑剤用粉末39質量%と界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル(非イオン性界面活性剤)4質量%と水57質量%とからなる水性ディスパージョン(PTFE7.8質量%、FEP15.6質量%及びh−BN15.6質量%、非イオン性界面活性剤4質量%、水57質量%)を実施例1と同様の外層用の膨張黒鉛シートの一方の表面にローラ塗りし、実施例16と同様にして、PTFE、FEP及びh−BNの潤滑組成物からなる固体潤滑剤(PTFE20質量%、FEP40質量%及びh−BN40質量%)の被覆層を形成し、斯かる被覆層を備えた外層用の膨張黒鉛シートと実施例7と同様の方形状の網目をもった平織金網を用いて作製された実施例1と同様の外層用の補強材とから実施例1と同様にして平面視平行四辺形状の外層形成部材を形成し、以下、実施例16と同様にして球帯状シール体を得た。得られた球帯状シール体において、外層は、外層用の膨張黒鉛と平織金網とが圧縮されて平織金網の網目に、膨張黒鉛及びPTFE20質量%、FEP40質量%及びh−BN40質量%を含む固体潤滑剤が充填されて当該膨張黒鉛と固体潤滑剤とが混在一体化されてなり、外層の外表面には、外層用の平織金網からなる補強材の面が外層の外表面の全体に対して42%の面積割合をもって当該外層の外表面で露出していた。
【0101】
実施例20
平均粒径0.20μmのPTFE粉末38質量%、平均粒径0.15μmのFEP粉末22質量%及び平均粒径8μmのh−BN粉末40質量%を含有する固体潤滑剤用粉末39質量%と界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル(非イオン性界面活性剤)4質量%と水57質量%とからなる水性ディスパージョン(PTFE14.82質量%、FEP8.58質量%及びh−BN15.6質量%、非イオン性界面活性剤4質量%、水57質量%)を実施例1と同様の外層用の膨張黒鉛シートの一方の表面にローラ塗りし、実施例16と同様にしてPTFE、FEP及びh−BNの潤滑組成物からなる固体潤滑剤(PTFE38質量%、FEP22質量%及びh−BN40質量%)の被覆層を形成し、斯かる被覆層を備えた外層用の膨張黒鉛シートと実施例11と同様の方形状の網目をもった平織金網を用いて作製された実施例1と同様の外層用の補強材とから実施例1と同様にして平面視平行四辺形状の外層形成部材を形成し、以下、実施例16と同様にして球帯状シール体を得た。得られた球帯状シール体において、外層は、外層用の膨張黒鉛と平織金網とが圧縮されて平織金網の網目に、膨張黒鉛及びPTFE38質量%、FEP22質量%及びh−BN40質量%を含む固体潤滑剤が充填されて当該膨張黒鉛と固体潤滑剤とが混在一体化されてなり、外層の外表面には、外層用の平織金網からなる補強材の面が外層の外表面の全体に対して22%の面積割合をもって当該外層の外表面で露出していた。
【0102】
実施例21
平均粒径0.20μmのPTFE粉末35質量%、平均粒径0.15μmのFEP粉末15質量%及び平均粒径8μmのh−BN粉末50質量%を含有する固体潤滑剤用粉末39質量%と界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル(非イオン性界面活性剤)4質量%と水57質量%とからなる水性ディスパージョン(PTFE13.65質量%、FEP5.85質量%及びh−BN19.5質量%、非イオン性界面活性剤4質量%、水57質量%)を実施例1と同様の外層用の膨張黒鉛シートの一方の表面にローラ塗りし、実施例16と同様にしてPTFE、FEP及びh−BNの潤滑組成物からなる固体潤滑剤(PTFE35質量%、FEP15質量%及びh−BN50質量%)の被覆層を形成し、斯かる被覆層を備えた外層用の膨張黒鉛シートと実施例2と同様の方形状の網目をもった平織金網を用いて作製された実施例1と同様の外層用の補強材とから実施例1と同様にして平面視平行四辺形状の外層形成部材を形成し、以下、実施例16と同様にして球帯状シール体を得た。得られた球帯状シール体において、外層は、外層用の膨張黒鉛と平織金網とが圧縮されて平織金網の網目に、膨張黒鉛及びPTFE35質量%、FEP15質量%及びh−BN50質量%を含む固体潤滑剤が充填されて当該膨張黒鉛と固体潤滑剤とが混在一体化されてなり、外層の外表面には、該一方の交点群が軸方向に配列され、他方の交点群が円周方向に配列された外層用の平織金網からなる補強材の面が外層の外表面の全体に対して32%の面積割合をもって当該外層の外表面で露出していた。
【0103】
実施例22
平均粒径0.20μmのPTFE粉末23質量%、平均粒径0.15μmのFEP粉末23質量%、平均粒径8μmのh−BN粉末47質量%及びアルミナ水和物としてベーマイト(Al
2O
3・H
2O)粉末7質量%を含有する固体潤滑剤用粉末39質量%と界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル(非イオン性界面活性剤)4質量%と水57質量%とからなる水性ディスパージョン(PTFE8.97質量%、FEP8.97質量%、h−BN18.33質量%、ベーマイト2.73質量%、非イオン性界面活性剤4質量%、水57質量%)を実施例1と同様の膨張黒鉛シートを使用して実施例1と同様の外層用の膨張黒鉛シートの一方の表面にローラ塗りし、実施例16と同様にしてPTFE、FEP及びh−BNの潤滑組成物からなる固体潤滑剤(PTFE23質量%、FEP23質量%、h−BN47質量%及びベーマト7質量%)の被覆層を形成し、斯かる被覆層を備えた外層用の膨張黒鉛シートと実施例2と同様の方形状の網目をもった平織金網を用いて作製された実施例1と同様の外層用の補強材とから実施例1と同様にして平面視平行四辺形状の外層形成部材を形成し、以下、実施例16と同様にして球帯状シール体を得た。得られた球帯状シール体において、外層は、外層用の膨張黒鉛と平織金網とが圧縮されて平織金網の網目に、膨張黒鉛及びPTFE23質量%、FEP23質量%、h−BN47質量%及びベーマト7質量%を含む固体潤滑剤が充填されて当該膨張黒鉛と固体潤滑剤とが混在一体化されてなり、外層の外表面には、外層用の平織金網からなる補強材の面が外層の外表面の全体に対して35%の面積割合をもって当該外層の外表面で露出していた。
【0104】
実施例23
平均粒径0.20μmのPTFE粉末22質量%、平均粒径0.15μmのFEP粉末22質量%、平均粒径8μmのh−BN粉末53質量%及びアルミナ水和物としてベーマイト粉末3質量%を含有する固体潤滑剤用粉末39質量%と界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル(非イオン性界面活性剤)4質量%と水57質量%とからなる水性ディスパージョン(PTFE8.58質量%、FEP8.58質量%、h−BN20.67質量%、ベーマイト1.17質量%、非イオン性界面活性剤4質量%、水57質量%)を実施例1と同様の外層用の膨張黒鉛シートの一方の表面にローラ塗りし、実施例16と同様にしてPTFE、FEP及びh−BNの潤滑組成物からなる固体潤滑剤(PTFE22質量%、FEP22質量%、h−BN53質量%及びベーマイト3質量%)の被覆層を形成し、斯かる被覆層を備えた外層用の膨張黒鉛シートと実施例2と同様の方形状の網目をもった平織金網を用いて作製された実施例1と同様の外層用の補強材とから実施例1と同様にして平面視平行四辺形状の外層形成部材を形成し、以下、実施例16と同様にして球帯状シール体を得た。得られた球帯状シール体において、外層は、外層用の膨張黒鉛と平織金網とが圧縮されて平織金網の網目に、膨張黒鉛及びPTFE22質量%、FEP22質量%、h−BN53質量%及びベーマイト3質量%を含む固体潤滑剤が充填されて当該膨張黒鉛と固体潤滑剤とが混在一体化されてなり、外層の外表面には、外層用の平織金網からなる補強材の面が外層の外表面の全体に対して34%の面積割合をもって当該外層の外表面で露出していた。
【0105】
実施例24
実施例2と同様の方形状の網目をもった平織金網を用いて実施例1と同様の外層用の補強材と実施例1と同様の膨張黒鉛シートを使用して実施例1と同様の平面視平行四辺形状の外層用の膨張黒鉛シートとを作製し、これら外層用の平織金網と外層用の膨張黒鉛シートとを用いて実施例1と同様にして平面視平行四辺形状の外層形成部材素材を形成した。この外層形成部材素材の表面において、平織金網からなる補強材の面が24%の面積割合で当該外層形成部材の表面で露出していた。実施例16と同様の水性ディスパージョン(PTFE9.75質量%、FEP5.85質量%及びh−BN23.4質量%、非イオン性界面活性剤4質量%、水57質量%)を作製し、平織金網からなる補強材の面が24%の面積割合で露出した外層形成部材素材の一方の表面にこの水性ディスパージョンがローラ塗りされた平面視平行四辺形状の外層形成部材素材を100℃の温度で乾燥して、PTFE、FEP及びh−BNの固体潤滑剤(PTFE25質量%、FEP15質量%及びh−BN60質量%)の被覆層を備えた平面視平行四辺形状の外層形成部材を形成し、斯かる固体潤滑剤の被覆層を備えた外層形成部材を、当該固体潤滑剤の被覆層を外側にして、筒状母材の外周面に実施例1と同様に捲回して予備円筒成形体を作製し、以下、実施例1と同様の方法で球帯状シール体を得た。得られた球帯状シール体において、外層は、方形状の網目を形成する相隣り合う縦線と相隣り合う横線との交点を結ぶ一対の対角線のうちの一方の対角線上に位置する一方の交点群が軸方向に配列され、他方の一方の対角線上に位置する他方の交点群が円周方向に配列された平織金網からなると共に圧縮された補強材と、この補強材の平織金網の網目に充填されていると共に圧縮されて補強材と混在一体化された膨張黒鉛を含む耐熱材と、これら補強材及び耐熱材を覆った固体潤滑剤とを備えており、外層の外表面は、固体潤滑剤の面が露出した平滑な面となっている。
【0106】
実施例25
実施例16と同様の水性ディスパージョン(PTFE9.75質量%、FEP5.85質量%及びh−BN23.4質量%、非イオン性界面活性剤4質量%、水57質量%)を作製し、この水性ディスパージョンを、実施例1と同様の膨張黒鉛シートを使用して作製された実施例2と同様の平面視平行四辺形状の外層用の膨張黒鉛シートからなる耐熱材の一方の表面にローラ塗りして形成した固体潤滑剤の被覆層を100℃の温度で乾燥した後、加熱炉において340℃の温度で20分間焼成し、該外層用の耐熱材の一方の表面にPTFE25質量%、FEP15質量%及びh−BN60質量%を含む固体潤滑剤の焼成被覆層を形成した外層用の膨張黒鉛シートを作製し、斯かる固体潤滑剤の焼成被覆層を備えた膨張黒鉛シートを、実施例2と同様の方形状の網目をもって織られた平織金網を用いて作製された実施例1と同様の外層用の二枚の平面視平行四辺形状の平織金網間に、各辺をそれぞれ合致させて挟み込んだ後、当該膨張黒鉛シート及び二枚の平織金網を一対のローラで加圧して、平織金網の網目に膨張黒鉛及び焼成固体潤滑剤を充填した扁平状であって、平織金網の面と平織金網の網目に充填された焼成固体潤滑剤の面とが露出した平面視平行四辺形状の外層形成部材を形成し、斯かる外層形成部材を、平織金網の面と焼成固体潤滑剤の面とが露出した面を外側にして筒状母材の外周面に実施例1と同様に捲回して予備円筒成形体を作製し、以下、実施例1と同様の方法で球帯状シール体を得た。得られた球帯状シール体において、外層は、膨張黒鉛と、平織金網とが圧縮されて平織金網の網目に、膨張黒鉛及びPTFE25質量%、FEP15質量%及びh−BN60質量%を含む焼成固体潤滑剤が充填されて当該膨張黒鉛と焼成固体潤滑剤とが混在一体化されてなり、外層の外表面には、平織金網からなる補強材の面が外層の外表面の全体に対して32%の面積割合をもって露出していた。
【0107】
実施例26
実施例23と同様の水性ディスパージョン(PTFE8.58質量%、FEP8.58質量%、h−BN20.67質量%、ベーマイト1.17質量%、非イオン性界面活性剤4質量%、水57質量%)が一方の表面にローラ塗りされていると共に実施例1と同様の膨張黒鉛シートを使用して作製された実施例1と同様の平面視平行四辺形状の外層用の膨張黒鉛シートを100℃の温度で乾燥した後、加熱炉において340℃の温度で20分間焼成し、一方の表面にPTFE22質量%、FEP22質量%、h−BN53質量%及びベーマイト3質量%を含む固体潤滑剤の焼成被覆層を備えた外層用の膨張黒鉛シートを形成し、斯かる外層用の膨張黒鉛シートを、実施例2と同様の方形状の網目をもった平織金網を用いて作製された実施例1と同様の二枚の外層用の平面視平行四辺形状の平織金網間に、各辺をそれぞれ合致させて挟み込んだ後、当該外層用の膨張黒鉛シート及び二枚の平織金網を一対のローラで加圧して、平織金網の網目に膨張黒鉛及び焼成固体潤滑剤を充填した扁平状であって、平織金網の面と平織金網の網目に充填された焼成固体潤滑剤の面とが露出した平面視平行四辺形状の外層形成部材を形成し、この外層形成部材を、平織金網からなる補強材の面と焼成固体潤滑剤からなる面とが混在して露出した面を外側にして筒状母材の外周面に、その両端の斜辺間に円周方向の若干の隙間をもって捲回した予備円筒成形体を作製し、以下、実施例1と同様の方法で球帯状シール体を得た。得られた球帯状シール体において、外層は、膨張黒鉛と、平織金網とが圧縮されて平織金網の網目に、膨張黒鉛及びPTFE22質量%、FEP22質量%、h−BN53質量%及びベーマイト3質量%を含む焼成固体潤滑剤が充填されて当該膨張黒鉛と焼成固体潤滑剤とが混在一体化されてなり、外層の外表面には、平織金網からなる補強材の面が外層の外表面の全体に対して31%の面積割合をもって露出していた。
【0108】
以上の実施例16から23の夫々では、得られた球帯状シール体において、外層の外表面は、固体潤滑剤からなる面と、方形状の網目を形成する相隣り合う縦線と相隣り合う横線との交点を結ぶ一対の対角線のうちの一方の対角線上に位置する一方の交点群が軸方向に配列され、他方の対角線上に位置する他方の交点群が円周方向に配列された外層用の平織金網からなる補強材の面とが混在して露出した平滑な面となっており、実施例25及び26の夫々では、得られた球帯状シール体において、外層の外表面は、焼成固体潤滑剤からなる面と、方形状の網目を形成する相隣り合う縦線と相隣り合う横線との交点を結ぶ一対の対角線のうちの一方の対角線上に位置する一方の交点群が軸方向に配列され、他方の対角線上に位置する他方の交点群が円周方向に配列された平織金網からなる補強材の面とが混在して露出した平滑な面となっている。
【0109】
比較例1
実施例1と同様の膨張黒鉛シートからなる耐熱材を別途準備し、該耐熱材の一方の表面にh−BN粉末85質量%とアルミナ粉末15質量%とからなる固体潤滑剤を固形分として30重量%分散含有した水性ディスパージョン(h−BN25.5質量%、アルミナ4.5質量%、水分70質量%)をローラ塗りし、100℃の温度で乾燥させるという被覆操作を3回繰返し、該耐熱材の一方の表面に固体潤滑剤の被覆層(h−BN85質量%及びアルミナ15質量%)を形成した。
【0110】
線径0.28mmのオーステナイト系ステンレス鋼線(SUS304)を使用して網目の目幅が縦3.5mm、横2.5mmの円筒状の編組金網を形成したのち、これをローラ間に通して作製した帯状金網を準備し、該帯状金網内に前記被覆層を備えた耐熱材を挿入すると共にこれらをローラ間に通して一体化し、一方の面に固体潤滑剤と金網とが混在した複合シート材を作製した。この複合シート材において、補強材の表面が複合シート材の一方の表面の耐熱材の面と共に露出する面積割合は43.4%であった。
【0111】
筒状母材の外周面に、この複合シート材を固体潤滑剤の被覆層と金網とが混在した面を外側にして捲回した予備円筒成形体を作製し、この予備円筒成形体を前記実施例1と同様の方法で圧縮成形し、円筒内面と部分凸球面状面と部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面とにより規定された球帯状基体と、球帯状基体の部分凸球面状面に一体的に形成された外層とを備えた球帯状シール体を得た。
【0112】
得られた球帯状シール体において、外層は、膨張黒鉛と、編組金網とが圧縮されて編組金網の網目に、膨張黒鉛及びPTFE60質量%、h−BN34質量%及びアルミナ6質量%を含む固体潤滑剤が充填されて当該膨張黒鉛と固体潤滑剤とが混在一体化されてなり、外層の外表面は、金網からなる補強材と被覆層の固体潤滑剤とが混在したすべり層の平滑な面からなっていると共に、外層の外表面には、金網からなる補強材が外層の外表面の全体に対して47.7%の面積割合をもって露出していた。
【0113】
比較例2
実施例1と同様の膨張黒鉛シートからなる耐熱材を別途準備し、該耐熱材の一方の表面にh−BN粉末85質量%とアルミナ粉末15質量%とからなる固体潤滑剤を100質量部とし、これにPTFE粉末を150質量部を分散含有した固体潤滑剤(h−BN34質量%、PTFE60質量%及びアルミナ6質量%)を固形分として30重量%分散含有した水性ディスパージョン(h−BN10.2質量%、PTFE18質量%、アルミナ1.8質量%、水分70質量%)をローラ塗りし、100℃の温度で乾燥させるという被覆操作を3回繰返し、該耐熱シート材の一方の表面に固体潤滑剤の被覆層(h−BN34質量%、PTFE60質量%及びアルミナ6質量%)を形成した。
【0114】
実施例1と同様の線径0.28mmのオーステナイト系ステンレス鋼線(SUS304)を使用して網目の目幅が縦3.5mm、横2.5mmの円筒状の編組金網を形成したのち、これをローラ間に通して作製した帯状金網を準備し、該帯状金網内に前記被覆層を備えた耐熱材を挿入すると共にこれらをローラ間に通して一体化し、一方の面に固体潤滑剤と金網とが混在した複合シート材を作製した。この複合シート材において、補強材の表面が複合シート材の一方の表面の耐熱材の表面と共に露出する面積割合は43.2%であった。
【0115】
筒状母材の外周面に、この複合シート材を固体潤滑剤の被覆層と金網とが混在した面を外側にして巻き付けて予備円筒成形体を作製し、この予備円筒成形体を実施例1と同様の方法で圧縮成形し、円筒内面と部分凸球面状面と部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面とにより規定された球帯状基体と、球帯状基体の部分凸球面状面に一体的に形成された外層とを備えた球帯状シール体を得た。
【0116】
得られた球帯状シール体において、圧縮された金網からなる球帯状用の補強材と、この補強材の網目を充填し、かつこの補強材と混在一体化されて圧縮された膨張黒鉛からなる球帯状基体用の耐熱材とを有しており、外層の表面は、補強材と固体潤滑剤とが混在したすべり層の平滑な面からなっていると共に外層の外表面には、金網からなる補強材が外層の表面の全体に対して51.8%の面積割合をもって露出していた。
【0117】
比較例1及び比較例2における複合シート材の補強材には、
図27に示すようにして編組金網が使用された。
【0118】
比較例3
実施例1と同様の膨張黒鉛シートからなる耐熱材を別途準備し、該耐熱材の一方の表面に比較例2と同様の固体潤滑剤の被覆層(h−BN34質量%、PTFE60質量%及びアルミナ6質量%)を形成した。
【0119】
実施例1と同様の金属細線を使用して織られた目幅が縦2.0mm、横2.0mmの方形状の網目を形成する平織金網を、
図28に示すように、縦線が幅方向に、横線が長手方向にそれぞれ平行になるように用いて、長方形状の外層用の補強材を作製した。
【0120】
実施例1と同様の膨張黒鉛シートからなる耐熱材を使用して長方形状の外層用の耐熱材を作製した。
【0121】
斯かる膨張黒鉛シートの一方の表面に、比較例2と同様の固体潤滑剤からなる水性ディスパージョンを被覆し、h−BN34質量%、PTFE60質量%及びアルミナ6質量%を含む固体潤滑剤の被覆層を備えた膨張黒鉛シートを作成した。この固体潤滑剤の被覆層を備えた膨張黒鉛シートを、二枚の平織金網からなる補強材間に各辺を合致させて挿入した後、該膨張黒鉛シート及び二枚の平織金網からなる補強材を一対のローラで加圧して、平織金網の網目に膨張黒鉛及び固体潤滑剤を充填した扁平状であって、方形状の網目が幅方向及び長手方向に平行に配置された長方形状の外層形成部材を作製した。外層形成部材中において平織金網からなる補強材の表面が露出する面積割合は25%であった。
【0122】
前記外層形成部材を、平織金網からなる補強材の面と固体潤滑剤からなる面とが混在して露出した面を外側にして前記筒状部材の外周面に捲回して予備円筒成形体を作製した。
【0123】
以下、実施例1と同様の方法で、円筒内面と部分凸球面状面と部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面とにより規定された球帯状基体と、球帯状基体の部分凸球面状面に一体的に形成された外層とを備えた球帯状シール体を得た。
【0124】
得られた球帯状シール体において、外層は、膨張黒鉛と、平織金網とが圧縮されて平織金網の網目に、膨張黒鉛及びPTFE60質量%、h−BN34質量%及びアルミナ6質量%を含む固体潤滑剤が充填されて当該膨張黒鉛と固体潤滑剤とが混在一体化されてなり、外層の外表面は、固体潤滑剤からなる表面と、網目を形成する縦線群が幅方向に、同じく網目を形成する横線群が円周方向に夫々配列された平織金網からなる補強材の表面とが混在して露出した平滑な面となっており、外層の外表面には、縦線群が幅方向に、横線群が円周方向に夫々配列された平織金網からなる補強材の表面が35%の面積割合をもって露出していた。
【0125】
以上の実施例2から実施例26及び比較例1から比較例3においては、筒状母材には、実施例1と同様にして作製された実施例1と同様の筒状母材が用いられており、得られた各球帯状シール体において、球帯状基体は、実施例1と同様に、膨張黒鉛と金網とが互いに圧縮され、互いに絡み合って構造的一体性を有するように形成されていた。
【0126】
次に、上記した実施例1から実施例26及び比較例1から比較例3で得た球帯状シール体を
図29に示す排気管継手に組込み、揺動試験により相手材の表面の表面粗さの変化、摩擦異音発生の有無及びガス漏れ量(l/min)について試験した。
【0127】
<揺動試験の試験条件>
温度(
図29に示す径拡大部301の表面の温度) 300℃
振幅(揺動角) ±2°
加振周波数 25Hz
加振時間 42Hr
コイルバネによるセット荷重 650N
加振回数 374万回
相手材材質(
図29に示す径拡大部301の材質) SUS304
【0128】
<摩擦異音の有無の試験条件>
温度(
図29に示す径拡大部301の表面の温度) 室温(RT=25℃)〜500℃
加振周波数 25Hz
摺動距離(振幅) ±0.05〜±2.05mm
加振時間 40分間(1サイクル)
コイルバネによるセット荷重 650N
【0129】
<試験方法>
図29に示す排気管継手の上流側排気管100を固定すると共に上流側排気管100に高温ガスを流通して相手材(
図29に示す径拡大部301)の表面温度を300℃まで昇温し、相手材の表面温度が300℃に到達した時点で、下流側排気管300を25Hzの加振周波数で±2°の振幅で揺動運動を42時間(加振回数374回)行った後、一旦温度を室温まで降下させる(揺動試験)。引き続き、10分間で相手材の表面温度を500℃に昇温し、相手材の表面温度が500℃に到達した時点で、周波数25Hz、振幅±0.05mmの条件で10分間加振する。次いで、相手材の表面温度を500℃から室温まで降下させながら振幅を±0.05mmから±2.05mmの範囲で変化させ、当該振幅での摩擦異音の有無の測定を行った(摩擦異音の有無の試験)。
【0130】
<ガス漏れ量の試験条件>
コイルバネによる押圧力(スプリングセットフォース):650N
揺動角度:±2°
加振周波数(揺動速度):5Hz
温度(
図29に示す径拡大部301):室温(RT=25℃)〜500℃
揺動回数:100万回
相手材(
図29に示す径拡大部301の材質):SUS304
【0131】
<試験方法>
前記揺動試験の試験条件により揺動試験を行った後、室温において5Hzの加振周波数で±2°の揺動運動を継続しながら相手材表面の温度を500℃まで昇温し、その温度を保持した状態で揺動運動を継続し、(1)試験開始前、(2)揺動回数25万回後、(3)揺動回数50万回後及び(4)揺動回数100万回に到達した時点でのガス漏れ量について測定した。
【0132】
<ガス漏れ量の測定方法>
図29に示す排気管継手の上流側排気管100の開口部を閉塞し、下流側排気管200側から、49kPa(0.5kgf/cm2)の圧力で乾燥空気を流入し、継手部分(球帯状シール体44の外層の外表面45と凹球面部302の内面304との摺接部、球帯状シール体44の円筒内面38と上流側排気管100の管端部101との嵌合部及び環状端面40と上流側排気管100に立設されたフランジ部200との当接部)からのガス漏れ量を流量計にて、(1)試験開始前、(2)揺動回数25万回到達時、(3)揺動回数50万回到達時及び(4)揺動回数100万回到達時のガス漏れ量を測定した。
【0133】
表1から表6は上記試験結果を示し、表7から表12は、実施例7、実施例4、実施例7、実施例8、実施例16、実施例23及び比較例3についての摩擦異音の試験経過及び試験結果を示す。なお、摩擦異音の判定レベルは、次の基準で行った。
【0134】
<摩擦異音の判定レベル>
記号:0 摩擦異音の発生なし。
記号:0.5 集音パイプで摩擦異音の発生を確認できる。
記号:1 排気管球面継手の摺動部位から約0.2m離れた位置で摩擦異音の発生を確認できる。
記号:1.5 排気管球面継手の摺動部位から約0.5m離れた位置で摩擦異音の発生を確認できる。
記号:2 排気管球面継手の摺動部位から約1m離れた位置で摩擦異音の発生を確認できる。
記号:2.5 排気管球面継手の摺動部位から約2m離れた位置で摩擦異音の発生を確認できる。
記号:3 排気管球面継手の摺動部位から約3m離れた位置で摩擦異音の発生を確認できる。
記号:3.5 排気管球面継手の摺動部位から約5m離れた位置で摩擦異音の発生を確認できる。
記号:4 排気管球面継手の摺動部位から約10m離れた位置で摩擦異音の発生を確認できる。
記号:4.5 排気管球面継手の摺動部位から約15m離れた位置で摩擦異音の発生を確認できる。
記号:5 排気管球面継手の摺動部位から約20m離れた位置で摩擦異音の発生を確認できる。
【0135】
以上の判定レベルの総合判定において、記号:0から記号:2.5までを摩擦異音の発生なし(合格)と判定し、記号:3から記号:5までを摩擦異音の発生あり(不合格)とした。
【0148】
表1ないし表12に示す試験結果から、実施例1ないし実施例26からなる球帯状シール体は、相手材表面の粗面化、摩擦異音の発生の評価及びガス漏れ量において、比較例1ないし比較例3からなる球帯状シール体よりも優れていることが分かる。そして、比較例3からなる球帯状シール体の外層の外表面には、実施例1ないし実施例26からなる球帯状シール体と同様の平織金網が露出しているにも係わらず、相手材表面の粗面化が増大したのは、平織金網の方形状の網目を形成する相隣り合う縦線群が軸方向に沿って配置され、相隣り合う横線群が円周方向に沿って配置されており、相手材表面とはこれら平織金網の縦線群及び横線群と摺動方向に常時直接的に接触して摺動することによるものと推察される。
【0149】
以上説明したように、本発明の球帯状シール体によれば、交点群での大きな瘤のような塊をなくし得て、相手材との摺動摩擦において、当該網目の交点群と相手材表面との間のアブレッシブ摩耗の誘発を極力減少させることができ、相手材表面の損傷に起因する粗面化を減少させてシール性の低下を極力防止することができる。
【0150】
また、外層の外表面に露出した平織金網からなる補強材が摩耗した場合においても、その下層に位置する平織金網からなる補強材との摩擦摺動に移行し、相手材とは常時、膨張黒鉛を含む耐熱材の表面と平織金網からなる補強材の表面とが混在して露出した面で摺動して、相手材と膨張黒鉛を含む耐熱材のみとの摺動は回避されるので、摩擦異音の発生を極力防止することができる。
【0151】
本発明の球帯状シール体の製造方法の例においては、筒状母材の外周面に長手方向の端面の斜辺間に隙間をもって外層形成部材を捲回して予備円筒成形体を作成し、圧縮成形時に外層形成部材を円周方向に伸長させつつ圧縮するので、外層形成部材の両端部間の隙間を消失させることができる上に当該外層形成部材の端部を球帯状基体の少なくとも部分凸球面状面に圧着することができ、而して、外層形成部材が該端部を起点として球帯状基体から剥離されることを防ぎ得る。