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特開2015-69626移動式の煙検知装置及びそれを用いた煙発生位置の特定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-69626(P2015-69626A)
(43)【公開日】2015年4月13日
(54)【発明の名称】移動式の煙検知装置及びそれを用いた煙発生位置の特定方法
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/10 20060101AFI20150317BHJP
   G08B 17/00 20060101ALI20150317BHJP
【FI】
   G08B17/10 D
   G08B17/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-206423(P2013-206423)
(22)【出願日】2013年10月1日
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592095332
【氏名又は名称】NTTコムソリューション&エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088052
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 文彦
(74)【代理人】
【識別番号】100189968
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 浩司
(72)【発明者】
【氏名】井上 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】島田 英則
(72)【発明者】
【氏名】大谷 基之
【テーマコード(参考)】
5C085
5G405
【Fターム(参考)】
5C085AA03
5C085CA12
5C085CA15
5C085FA06
5C085FA11
5G405AB02
5G405CA22
(57)【要約】
【課題】肉眼では確認できない段階の煙であっても、その発生位置を狭い範囲で特定できる煙検知装置を提供すること、又、そのようにできる煙発生位置の特定方法を提供する。
【解決手段】移動式の煙検知装置1であって、可撓管3が接続されたサンプリング管4と、サンプリング管4が可撓管3を介して接続され、サンプリング管4を介して吸引した空気中に含まれる煙を検知する吸引式の煙検知装置本体5と、電源部6と、煙検知装置本体5と電源部6とを収納する収納部7と、収納部7に接続されて収納部7を操作者の身体に保持するための保持部8とを備えていることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側に空気を吸引するためのサンプリング孔を有し、基端側に可撓管が接続されたサンプリング管と、
前記サンプリング管が前記可撓管を介して接続され、前記サンプリング管を介して吸引した空気中に含まれる煙を検知する吸引式の煙検知装置本体と、
前記煙検知装置本体に電気的に接続されて電源を供給する電源部と、
前記煙検知装置本体と前記電源部とを収納する収納部と、
前記収納部に接続されて前記収納部を操作者の身体に保持するための保持部と、を備えていることを特徴とする移動式の煙検知装置。
【請求項2】
前記保持部は、前記収納部の左右にそれぞれ接続され、操作者の左右の肩のそれぞれに前後方向に掛けられる一対のショルダーストラップを含み、前記収納部は、それら一対のショルダーストラップにより操作者の身体前方に保持されることを特徴とする請求項1に記載の移動式の煙検知装置。
【請求項3】
前記保持部は、前記一対のショルダーストラップを操作者の身体の前方及び/又は後方において連結する連結ストラップを更に含むことを特徴とする請求項2に記載の移動式の煙検知装置。
【請求項4】
前記サンプリング管は、操作者が煙検知時に把持する把持部であって、その形状によって操作者に前記サンプリング管の把持方向を一の方向にガイドする把持部を更に有するものであり、前記サンプリング孔が、前記把持部がガイドする前記サンプリング管の把持方向前方に面する側面に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の移動式の煙検知装置。
【請求項5】
前記サンプリング管は、操作者に気流方向を視認させる手段を更に有するものであることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の移動式の煙検知装置。
【請求項6】
前記可撓管は、略L字状の継手を介して前記煙検知装置本体に接続されるものであることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の移動式の煙検知装置。
【請求項7】
検知される煙の量を音声により操作者に報知する手段を更に備えていることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の移動式の煙検知装置。
【請求項8】
所定時間の経過を音声により操作者に報知する手段を更に備えていることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の移動式の煙検知装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れかに記載の移動式の煙検知装置を使用して煙の発生位置を特定する煙発生位置の特定方法であって、
防護空間に常時固定の装置として設けられる固定式の煙検知装置が煙の発生を検知した後に、その防護空間において前記移動式の煙検知装置を使用して実行される段階として、前記移動式の煙検知装置の前記収納部を保持すると共に前記サンプリング管を把持し、その状態で煙を検知しながら前記移動式の煙検知装置の全体の位置又は前記サンプリング管自体の位置を移動させ、それに基づいて煙の発生位置を特定する段階を含むことを特徴とする煙発生位置の特定方法。
【請求項10】
前記煙の発生位置を特定する段階は、前記移動式の煙検知装置の煙検知装置本体の煙の検知感度を前記固定式の煙検知装置の煙検知装置本体の煙の検知感度よりも鈍くして実行されることを特徴とする請求項9に記載の煙発生位置の特定方法。
【請求項11】
前記煙の発生位置を特定する段階は、前記移動式の煙検知装置の全体の位置又は前記サンプリング管自体の位置を前記サンプリング孔を風上に向けながら移動させて実行されることを特徴とする請求項9又は10に記載の煙発生位置の特定方法。
【請求項12】
前記煙の発生位置を特定する段階は、前記サンプリング管を把持することにより、その把持方向前方に前記サンプリング孔を向かわせて実行されることを特徴とする請求項9乃至11の何れかに記載の煙発生位置の特定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、防護空間を移動しながら煙を検知する移動式の煙検知装置及びそれを用いた煙発生位置の特定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、火災をその予兆段階から検知をするためのものとして、防護空間の空気をサンプリング管を介して吸引し、その空気中に含まれる煙を検知する吸引式の煙検知装置が用いられている。
【0003】
吸引式の煙検知装置は、具体的には、防護空間の空気を吸引するためのサンプリング管と共に防護空間の天井、壁、床下等に固定して設けられ、サンプリング管を介して吸引した空気中に含まれる煙を光学的に検知するものである(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
尚、吸引式の煙検知装置は、サーバ室等に設置されている空調機の冷媒ガスの漏れを検知するものとしても利用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3648307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
吸引式の煙検知装置は、吸引式ではない他の煙感知器や煙検知装置に比べて煙をより高感度で検知することができることから、一般に、電算機室等の重要設備のある空間に設置されることが多いが、その場合、火災の極めて初期の予兆段階から捉えて対処できるようにするために、煙が肉眼では確認できないような段階のものであっても、それを検知することができる程の高感度の設定で設置されている。
【0007】
吸引式の煙検知装置がそのような高感度の設定で設置されている場合、火災を予兆段階で捉えることができるが、煙検知装置が作動した際に、検知した煙が肉眼では確認できない段階のものであると、その発生位置を肉眼で特定することはできない。従って、煙の発生位置として特定できるのは作動した煙検知装置の防護範囲までであり、さらに狭い範囲までの特定はできず、作動した煙検知装置の防護範囲全体を対象として必要な対処をせざるを得なかった。
【0008】
尚、前記の特許文献1の発明は、吸引式の煙検知装置を備えた煙検知システムにおいて、アドレスの設定可能な煙検知装置を複数分散配置して設けることにより、煙の発生位置を特定することができるようにする技術を提案している。しかしながら、そのような技術によっても、煙の発生位置として特定できるのは分散配置された各煙検知装置の防護範囲までであり、さらに狭い範囲の特定ができないことに変わりはない。
【0009】
この発明は、上記の事情に鑑み、肉眼では確認できない段階の煙であっても、その発生位置を狭い範囲で特定できる煙検知装置を提供することを目的とするものであり、又、そのようにできる煙の発生位置の特定方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、先端側に空気を吸引するためのサンプリング孔を有し、基端側に可撓管が接続されたサンプリング管と、前記サンプリング管が前記可撓管を介して接続され、前記サンプリング管を介して吸引した空気中に含まれる煙を検知する吸引式の煙検知装置本体と、前記煙検知装置本体に電気的に接続されて電源を供給する電源部と、前記煙検知装置本体と前記電源部とを収納する収納部と、前記収納部に接続されて前記収納部を操作者の身体に保持するための保持部と、を備えていることを特徴とする移動式の煙検知装置である。
【0011】
又、この発明は、前記保持部は、前記収納部の左右にそれぞれ接続され、前記収納部を吊りながら操作者の左右の肩のそれぞれに前後方向に掛けられる一対のショルダーストラップを含み、前記収納部は、それら一対のショルダーストラップにより操作者の身体前方に保持されることを特徴とする移動式の煙検知装置である。
【0012】
又、この発明は、前記保持部は、前記一対のショルダーストラップを操作者の身体の前方及び/又は後方において連結する連結ストラップを更に含むことを特徴とする移動式の煙検知装置である。
【0013】
又、この発明は、前記サンプリング管は、操作者が煙検知時に把持する把持部であって、その形状によって操作者に前記サンプリング管の把持方向を一の方向にガイドする把持部を更に有するものであり、前記サンプリング孔が、前記把持部がガイドする前記サンプリング管の把持方向前方に面する側面に設けられていることを特徴とする移動式の煙検知装置である。
【0014】
又、この発明は、前記サンプリング管は、操作者に気流方向を視認させる手段を更に有するものであることを特徴とする移動式の煙検知装置である。
【0015】
又、この発明は、前記可撓管は、略L字状の継手を介して前記煙検知装置本体に接続されるものであることを特徴とする移動式の煙検知装置である。
【0016】
又、この発明は、検知される煙の量を音声により操作者に報知する手段を更に備えていることを特徴とする移動式の煙検知装置である。
【0017】
又、この発明は、所定時間の経過を音声により操作者に報知する手段を更に備えていることを特徴とする移動式の煙検知装置である。
【0018】
又、この発明は、前記移動式の煙検知装置を使用して煙の発生位置を特定する煙発生位置の特定方法であって、防護空間に常時固定の装置として設けられる固定式の煙検知装置が煙の発生を検知した後に、その防護空間において前記移動式の煙検知装置を使用して実行される段階として、前記移動式の煙検知装置の前記収納部を保持すると共に前記サンプリング管を把持し、その状態で煙を検知しながら前記移動式の煙検知装置の全体の位置又は前記サンプリング管自体の位置を移動させ、それに基づいて煙の発生位置を特定する段階を含むことを特徴とする煙発生位置の特定方法である。
【0019】
又、この発明は、前記煙の発生位置を特定する段階は、前記移動式の煙検知装置の煙検知装置本体の煙の検知感度を前記固定式の煙検知装置の煙検知装置本体の煙の検知感度よりも鈍くして実行されることを特徴とする煙発生位置の特定方法である。
【0020】
又、この発明は、前記煙の発生位置を特定する段階は、前記移動式の煙検知装置の全体の位置又は前記サンプリング管自体の位置を前記サンプリング孔を風上に向けながら移動させて実行されることを特徴とする煙発生位置の特定方法である。
【0021】
又、この発明は、前記煙の発生位置を特定する段階は、前記サンプリング管を把持することにより、その把持方向前方に前記サンプリング孔を向かわせて実行されることを特徴とする煙発生位置の特定方法である。
【発明の効果】
【0022】
この発明によると、移動式の煙検知装置の収納部を保持すると共にサンプリング管を把持し、その状態で煙を検知しながら移動式の煙検知装置の全体の位置又はサンプリング管自体の位置を移動させることができ、それにより煙の発生位置を特定することができるので、肉眼では確認できない段階の煙であっても、その発生位置を狭い範囲で特定することができる。
【0023】
従って、この発明によると、肉眼では確認できない段階の煙であっても、その発生位置を狭い範囲で特定できる煙検知装置を提供することができ、又、そのような煙の発生位置の特定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】この発明の移動式の煙検知装置の実施形態の一例を示し、サンプリング管と保持部であるショルダーストラップとが接続された状態における装置全体の平面図(上面側)である。
図2】同上を示し、サンプリング管とショルダーストラップが取り外された状態における装置全体の(a)が正面図(前面側)、(b)が背面図(後面側)である。
図3】同上を示し、サンプリング管とショルダーストラップが取り外された状態における装置全体の(a)が左側面図、(b)が右側面図である。
図4】同上を示し、サンプリング管のみを拡大して示した拡大図である。
図5】同上を示し、サンプリング管が取り外されてはいるが、装置全体が身体に保持された状態における(a)が身体の前方から撮影した写真、(b)が身体の後方から撮影した写真である。
図6】同上を示すと共に、この発明の煙発生位置の特定方法の実施形態の一例を示した防護空間の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
この発明の実施形態を図1乃至図6に基いて説明する。
【0026】
先ず、図1乃至図5に基いて、この発明の移動式の煙検知装置の実施形態の一例について説明する。
【0027】
移動式煙検知装置1は、この発明の実施形態の煙検知装置の実施形態の一例であり、先端側に空気を吸引するためのサンプリング孔4aを有し、基端側に可撓管3が接続されたサンプリング管4と、サンプリング管4が可撓管3を介して接続され、サンプリング管4を介して吸引した空気中に含まれる煙を検知する吸引式の煙検知装置本体5と、煙検知装置本体5に電源を供給する電源部6(図2参照)と、前記の煙検知装置本体5と電源部6とが収納される収納部7と、収納部7に接続されて収納部7を操作者の身体に保持するための保持部である左右一対のショルダーストラップ8とを備えている。
【0028】
即ち、移動式煙検知装置1は、操作者がショルダーストラップ8により収納部7を保持すると共にサンプリング管4を把持し、その状態で煙を検知しながら装置全体又はサンプリング管4自体を移動させることができるようになっており、それにより煙の発生位置を特定することができるようになっている。
【0029】
従って、移動式煙検知装置1によれば、発生した煙が肉眼では確認できない段階のものであっても、その発生位置を狭い範囲で特定することができる。
【0030】
これにより、移動式煙検知装置1は、例えば、電算機室等の固定式の煙検知装置が設けられている防護空間において煙の発生位置を特定するのに利用可能なものであるが、発生位置を特定する煙が肉眼では確認できない段階のものであり、固定式の煙検知装置によっては作動した煙検知装置の防護範囲内にある電算機等の全てを対象としてしか対処できないような段階のものであっても、前記のように煙の発生位置を狭い範囲で特定することができることで、狭い範囲内にある電算機等のみを対象として対処すれば足りるようにすることができ、対処に要する時間を格段に短縮することができると共に、対象外の電算機等は使用を継続することができる。
【0031】
本実施形態の移動式煙検知装置1について、各構成部分を更に詳細に説明する。
【0032】
収納部7は、下面が開放された収納部蓋体7aと、上面が開放された収納部本体7bとからなり、全体として箱状をなすものとなっている。尚、収納部蓋体7aは、図2に示したように、収納部蓋体7aの前面と収納部本体7bの前面との間に設けられている左右一対のヒンジ部材7cによって収納部本体7bに開閉可能に取り付けられており、又、収納部蓋体7aの後面と収納部本体7bの後面との間に設けられている左右一対のロック部材7dによって閉状態が保持可能なものとなっている(ヒンジ部材7cとロック部材7dを設ける面については適宜変更することができ、設ける面の前後を逆にしてもよい。)。
【0033】
収納部7において、収納部蓋体7a内には煙検知装置本体5が収納されており、収納部本体7b内には電源部6が収納されているが、本実施形態において、収納部蓋体7aは、前記の通り下面が開放されたものとなっているので、内部に煙検知装置本体5を固定するための固定部材として、本実施形態においては、図2及び図3に示したように、左右一対のL字状の固定部材11であって、収納部蓋体7aの左右の側面にネジ11aによって固定される側面部と、煙検知装置本体5の底部が固定される底面部とを有する左右一対のL字状の固定部材11が設けられており、それにより下面が開放されたものとなっていても、煙検知装置本体5を収納することができるようになっており、又、その位置を固定することができるようになっている。尚、収納部本体7bは、底面に電源部7を固定するためのベルト状の固定部材12が設けられており、それにより電源部6の位置を固定することができるようになっている(図2参照)。
【0034】
又、収納部蓋体7aは、煙検知装置本体5を収納し、その上面側を天板部7eによって覆うものとなっているが、天板部7eには煙検知装置本体5の上面に設けられている表示部5aに対応する位置に表示窓7fが設けられており、その表示窓7fを通して煙検知装置本体5の表示部5aに表示される測定結果等を視認することができるようになっている。
【0035】
収納部蓋体7aにおいて、その前面には可撓管3が挿通される挿通口7gが設けられており、その挿通口7gに可撓管3の基端側が挿通されて煙検知装置本体5の吸気口5cに接続されることにより、前記サンプリング管4は可撓管3を介して煙検知装置本体5に接続されたものとなっている。尚、可撓管3の基端側は、L字形の継手を用いて煙検知装置本体5の吸気口5cに接続してもよく、そうすることで可撓管3が前方に突出する量を少なくすることができ、よりコンパクトにすることができる。
【0036】
又、収納部本体7bにおいて、左右の側面には複数の穴が形成されてなる放熱板部7hが設けられており(図3参照)、それにより内部に収納される電源部6の熱を外部に放出したり、吸引した空気を排出したりすることができるようになっている。尚、電源部6としては、本実施形態にいては充電池を用いている。収納部蓋体7aの後面には、この蓄電池である電源部6へ充電をするために電源ケーブの挿通口7kが設けられている。
【0037】
尚、収納部7には、左右一対のショルダーストラップ8を接続するための環状の接続部材が設けられており、本実施形態においては、その接続部材として、収納部蓋体7aの左右の側面の前面側の位置する上部接続部材7iと、収納部本体7bの左右の側面の後面側に位置する下部接続部材7jとの4つが設けられている。
【0038】
サンプリング管4は、図4の拡大図によって詳細が理解されるように、直筒状をなす樹脂製の硬質パイプによって形成されており、サンプリング孔4aが軸方向に沿って直列に等間隔で配置されて複数個(本実施形態においては5個であるが、その数は適宜変更してもよい。)形成されたものとなっている。このサンプリング管4において、可撓管3が接続される基端側には操作者がサンプリング管4を把持するための把持部4bが設けられている。把持部4bは、操作者によるサンプリング管4の把持方向を一の方向にガイドする形状を有しており、サンプリング孔4aは、把持部4bがガイドするサンプリング管4の把持方向の前方(矢印4A方向)に向かう側面に設けられている。これにより、操作者が把持部4bによりサンプリング管4を把持すれば、全てのサンプリング孔4aを自動的に把持方向の前方に向かわせることができるようになっている。尚、このサンプリング管4には、後記で図6に基づいて詳細に説明するが、防護空間の気流方向を操作者に視認させる手段を設けてもよい。
【0039】
可撓管3は、サンプリング管4を自在に移動させることができるように柔軟な材料によって形成されている。この可撓管3については、螺旋状のものとしてもよく、螺旋状のものにすれば、伸縮させることもでき、サンプリング管4をより自在に移動させることができる。
【0040】
左右一対のショルダーストラップ8は、それぞれ開閉機構付きの先端接続部材8aと基端接続部材8bとを有しており、先端接続部材8aが収納部7の左右側面の上部接続部材7iにそれぞれ接続されると共に、基端接続部材8bが収納部7の左右側面の下部接続部材7jにそれぞれ接続されるものとなっており、収納部7の左右側面にそれぞれループ状をなすように接続されるものとなっている。これにより、図5(a)の写真に示したように、収納部7を吊りながら、操作者の左右の肩のそれぞれに前後方向に掛けられるようになっており、収納部7を操作者が抱き込むように前方に保持することができるようになっている。尚、左右一対のショルダーストラップ8には、図5(a)、(b)の写真に示したような肩パッドをそれぞれ設けてもよい。
【0041】
更に、本実施形態においては、左右一対のショルダーストラップ8を操作者の前方で連結するための左右一対の連結ストラップ9と操作者の後方で連結する左右一対の連結ストラップ10とが左右一対のショルダーストラップ8のそれぞれに接続されて設けられている。これら左右一対の連結ストラップ9と連結ストラップ10は、それぞれ互いを離接可能にするバックル部9a、9bとバックル部10a、10bとをそれぞれ有しており、それらを互いに接続することで、図5(a)及び(b)の写真に示したように、操作者の前方と後方とで左右一対のショルダーストラップ8を連結することができるようになっており、ショルダーストラップ8を身体によりフィットさせ、より確実に収納部7を保持することができるようになっている。尚、左右一対の連結ストラップ9も、左右一対の連結ストラップ10も、一方のバックル部9b、10bまでの長さを調整するための調整部材をそれぞれ有しており、他方のバックル部9a、10aとの接続時の長さを調整することができるようになっている。
【0042】
ここで、煙検知装置本体5の機器構成及び煙検知のメカニズムについて簡単に説明する。煙検知装置本体5は、前記の通り吸引式のものであり、図示は省略するが、煙を光学的に検知するための煙検出ユニットと、空気をサンプリング管4を介して吸引して煙検出ユニット内の検煙部を通過させるためのファンとを内部に備え、吸引した空気が煙検出ユニット内の検煙部を通過する際に、空気中に煙が含まれていると、それを光学的に検知(散乱光の検知)することができるようになっている。尚、煙検知装置本体5において、煙検出ユニットは煙を光学的に検知するために発光素子と受光素子とを有するが、その発光素子の光源としてレーザを用いることにより、極めて高い感度で煙を検知することが可能である。
【0043】
更に、煙検知装置本体5の表示部5aは、前記の通り収納部7の表示窓7fを通して目視により確認することができるようになっているが、表示部5aには検知される煙の量を段階的に表示するバーグラフ5bが設けられており、そのバーグラフ5bにより検知される煙の量を確認することができるようになっている。即ち、バーグラフ5bにより検知される煙の量を確認することにより、煙の発生位置を特定することができるようになっている。尚、煙検知装置本体5は、図示は省略するが、煙検知の感度を変更する感度調節手段も備えており、適宜、煙検知の感度を変更することができるようになっており、例えば、煙の発生位置に近づくのに従って煙の検知量が増大するのに対応して、煙検知の感度を低く(鈍く)変更し、表示部5aによる表示スケールの倍率を変更したりすることができるようになっており、それにより煙の発生位置をより狭い範囲で特定することができるようになっている。
【0044】
次に、図6に基いて、この発明の煙発生位置の特定方法の実施形態の一例について説明する。
【0045】
この発明の煙発生位置の特定方法は、図6に示したように、例えば、固定式の装置である固定式煙検知装置100が設けられている電算機室R等において、前記の移動式煙検知装置1を利用して実行することができる。
【0046】
ここで、固定式煙検知装置100について簡単に説明する。固定式煙検知装置100は、空調機103によって矢印で示したように循環される電算機室R内の空気を吸引するためのサンプリング孔を有するサンプリング管102と、サンプリング管102を介して吸引した空気中の煙を検知する吸引式の煙検知装置本体101とを備え、それらが電算機室R内の床下空間内に循環される気流の流路中に配置され、防護空間である電算機室Rに常時固定の装置として設けられている。尚、固定式煙検知装置100における煙検知装置本体101の機器構成等は、前記の移動式煙検知装置1における煙検知装置本体5と同様のものとすることができる。
【0047】
電算機室Rにおいて、何れかのラック104の電算機から煙が発生すると、先ず、固定式煙検知装置100がその煙を検知する。固定式煙検知装置100により検知された煙が肉眼では確認できない段階のものであると、固定式煙検知装置100によって特定することができる煙の発生位置はその防護範囲までであるが、前記の移動式煙検知装置1を利用することにより煙の発生位置を狭い範囲で特定することができる。
【0048】
即ち、電算機室Rにおいて、煙が発生した際、常時固定の装置として設けられる固定式煙検知装置100が煙の発生を検知した後に、図6に示したように、前記移動式煙検知装置1の収納部7をショルダーストラップ8により身体に保持すると共にサンプリング管4の把持部4bを把持し、その状態で煙を検知しながら電算機室R内において移動式の煙検知装置1の全体の位置又はサンプリング管4自体の位置を移動させることにより、煙の発生地位置を特定する。具体的には、煙を検知しながら各ラック104に向けて煙検知装置1の全体をの位置を移動させたり、各ラック104内においてサンプリング管4自体の位置を移動させ、煙検知装置本体5の表示部5aに表示される検知される煙の量等に基づいて煙の発生位置を特定する。これにより、発生した煙が肉眼では確認できない段階のものであっても、煙の発生位置を狭い範囲で特定することができる。尚、予め固定式煙検知装置100の煙検知装置本体101よりも移動式煙検知装置1の煙検知装置本体5の感度を鈍く(例えば、固定式のものが作動する煙濃度の2.5倍で作動するようにする。)設定して、前記の移動式煙感知装置1による煙の発生位置を特定する段階を実行することができる。
【0049】
尚、図6に示した例において、移動式煙検知装置1のサンプリング管4の先端には、拡大図によって詳細が理解されるように、防護空間の気流によって風下になびく吹き流し部4cが設けられたものとなっている。吹き流し部4cが設けられていることにより、防護空間の気流の向き(各ラック104内の気流の向きを含む)を確認することができ、サンプリング孔4aを風上に向けた状態で煙を検知しながら移動式煙検知装置1の全体又はサンプリング管4自体を移動させることができるものとなっている。又、煙の発生位置を特定する場合にも調査対象物が風上になるように容易に確認することができる。
【0050】
以上、この発明の実施形態について詳細に説明したが、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨の範囲内で種々の変更等が可能である。
【0051】
例えば、電算機室Rにおいて、固定式煙検知装置100はアドレス設定可能なものにして、それを複数設けるようにしてもよく、移動式煙検知装置1を移動させる範囲を作動した固定式煙検知装置100の防護範囲に絞った上で、移動式煙検知装置1による煙の発生位置を特定する段階を実行するようにしてもよい。
【0052】
又、移動式煙検知装置1によって煙の発生位置を特定する段階を実行する際、煙の検知感度を変更しながら実行してもよく、例えば、前記したように、感度調節手段によって、煙の発生位置に近づくのに従って煙の検知量が増大するのに対応し、煙検知の感度を低く変更して、表示部5aによる表示スケールの倍率を変更し、それにより煙の発生位置をよりスムーズにより狭く特定することができるようにしてもよい。
【0053】
又、移動式煙検知装置1によって煙の発生位置を特定する段階を実行する際、前記サンプリング管4の位置を移動させ、その位置で所定時間停止した後に火災の発生位置か否かを判断するようにしてもよい。その場合、例えば、サンプリング管4の把持部4bにタイマと音響部とを設け、サンプリング管4の移動を停止させた時にタイマを起動させ、所定時間の経過を音声等により操作者に報知するようにしてもよい。
【0054】
又、移動式煙検知装置1によって煙の発生位置を特定する段階を実行する際、検知される煙の量を音声によって操作者に報知するようにしてもよい(例えば、煙検知装置本体5に煙の検知量に応じて信号音の音量を大小に変化させて出力する音声出力部を設け、それにより操作者に報知するようにしてもよい。)。
【符号の説明】
【0055】
1:移動式煙検知装置 3:可撓管 4:サンプリング管
4a:サンプリング孔 4b:把持部 4c:吹き流し部
4A:把持方向前方 5:煙検知装置本体 5a:表示部
5b:バーグラフ 5c:吸気口部 6:電源部
7:収納部 7a:収納部蓋体 7b:収納部本体
7c:ヒンジ部 7d:ロック部 7e:天板部 7f:表示窓
7g:挿通口(可撓管用) 7h:放熱板部
7i:上部接続部材 7j:下部接続部材 7k:挿通口(電源ケーブル用)
8:ショルダーストラップ 8a:先端接続部材 8b:基端接続部材
9:連結ストラップ(前方) 9a:バックル部 9b:バックル部
10:連結ストラップ(後方) 10a:バックル部 10b:バックル部
11:固定部材 11a:ネジ 12:固定部材
100:固定式煙検知装置 101:煙検知装置本体
102:サンプリング管 103:空調機 104:ラック
R:電算機室
図1
図2
図3
図4
図6
図5