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特開2015-69870磁気回路式LED電源及びLED照明装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-69870(P2015-69870A)
(43)【公開日】2015年4月13日
(54)【発明の名称】磁気回路式LED電源及びLED照明装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 37/02 20060101AFI20150317BHJP
【FI】
   H05B37/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-203763(P2013-203763)
(22)【出願日】2013年9月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000126274
【氏名又は名称】株式会社アイ・ライティング・システム
(74)【代理人】
【識別番号】100160967
【弁理士】
【氏名又は名称】▲濱▼口 岳久
(72)【発明者】
【氏名】司城 賢仁
(72)【発明者】
【氏名】松本 稔
【テーマコード(参考)】
3K273
【Fターム(参考)】
3K273AA10
3K273BA03
3K273BA25
3K273BA27
3K273BA28
3K273CA02
3K273CA12
3K273CA25
3K273FA08
3K273FA14
3K273FA29
3K273GA03
3K273GA12
3K273GA15
3K273GA27
(57)【要約】
【課題】高周波ノイズの問題を解消しつつも高い力率のLED電源を提供する。
【解決手段】磁気回路式LED電源(1)は、交流電源(AC)が入力される昇圧型の磁気漏れ変圧器(11、14)を含む磁気式安定器部(10)と、磁気式安定器部(10)の出力を整流するダイオードブリッジ(20)と、LED(2a)に並列に接続され、ダイオードブリッジ(20)の整流出力を平滑する平滑コンデンサ(30)とを備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
LEDに出力電力を供給する磁気回路式LED電源であって、
交流電源が入力される昇圧型の磁気漏れ変圧器を含む磁気式安定器部と、
前記磁気式安定器部の出力を整流するダイオードブリッジと、
前記LEDに並列に接続され、前記ダイオードブリッジの整流出力を平滑する平滑コンデンサと
を備えた磁気回路式LED電源。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気回路式LED電源であって、
前記磁気漏れ変圧器が1次コイル、2次コイル及び3次コイルを有する昇圧トランスからなり、前記1次コイルの一端が前記交流電源の一端に接続され、前記1次コイルの他端が前記2次コイルの一端及び前記3次コイルの一端に接続され、前記2次コイルの他端が前記交流電源の他端及び前記ダイオードブリッジの一方の入力端子に接続され、
前記磁気式安定器部が、前記3次コイルの他端と前記ダイオードブリッジの他方の入力端子の間に挿入されたコンデンサをさらに備えた磁気回路式LED電源。
【請求項3】
請求項1に記載の磁気回路式LED電源であって、
前記磁気漏れ変圧器が1次コイル及び2次コイルを有する昇圧トランスからなり、前記1次コイルの一端及び前記2次コイルの一端が前記交流電源の一端に接続され、前記1次コイルの他端が前記交流電源の他端及び前記ダイオードブリッジの一方の入力端子に接続され、前記2次コイルの他端が前記ダイオードブリッジの他方の入力端子に接続された磁気回路式LED電源。
【請求項4】
LEDに出力電力を供給する磁気回路式LED電源であって、
交流電源からの入力経路に挿入されるチョークコイル、及び前記交流電源に並列接続されるコンデンサを有する磁気式安定器部と、
前記磁気式安定器部の出力を整流するダイオードブリッジと、
前記LEDに並列接続され、前記ダイオードブリッジの整流出力を平滑する平滑コンデンサと
を備えた磁気回路式LED電源。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の磁気回路式LED電源において、前記磁気式安定器部がHIDランプを点灯可能に構成されている、磁気回路式LED電源。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の磁気回路式LED電源と、
直列接続された複数のLEDを含み、前記磁気回路式LED電源から配線を介して給電されるLEDユニットと
を備えるLED照明装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気回路式LED電源及びそれを用いたLED照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LED点灯用の電源として、AC−DCコンバータ、DC−DCコンバータ等によって直流電流を生成するスイッチング電源が普及している。しかし、スイッチング電源は、そのスイッチング動作に起因して特にMHz帯よりも高い周波数帯の高周波ノイズを多く発生させる。そのため、スイッチング電源を用いたLED電源の使用に際して、無線を使用したIT機器への影響、医療機器への影響が懸念される。
【0003】
特許文献1は、スイッチング動作が行われない、いわゆる磁気式安定器(銅鉄安定器)を用いたLED点灯回路を開示する。同文献の構成によると、磁気式安定器である蛍光灯安定器(3)を介して交流電源(AC)が整流器(1)に入力され、整流器の出力が、直列接続された複数のLED(5)に印加される。そして、各LEDによる順方向降下電圧の総量が、蛍光灯安定器に適合するランプの点灯電圧に対応するように、LEDの設置数が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−238579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の構成によると、交流電圧の全波整流電圧が直接LED直列回路に印加される。従って、全波整流電圧の脈流における谷部では、その電圧がLEDの順方向降下電圧VFを下回るため、LEDは消灯する。すなわち、交流電圧の2倍の周波数でLEDは点滅することになる。そのため、この点滅がユーザに視覚的な違和感を与えるだけでなく、力率の低下をもたらすことになり、電力管理上も好ましくない。
【0006】
そこで、本発明は、高周波ノイズの問題を解消しつつも高い力率のLED電源及びそれを用いたLED照明装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による、LEDに出力電力を供給する磁気回路式LED電源は、交流電源が入力される昇圧型の磁気漏れ変圧器を含む磁気式安定器部と、磁気式安定器部の出力を整流するダイオードブリッジと、LEDに並列に接続され、ダイオードブリッジの整流出力を平滑する平滑コンデンサとを備える。
【0008】
上記構成によると、磁気式安定器部の昇圧出力を整流したダイオードブリッジの整流出力が平滑コンデンサによって平滑されるので、整流平滑出力の谷部がLEDの順方向降下電圧を下回る期間が減少又は消滅し、高い力率が得られる。また、磁気漏れ変圧器、ダイオードブリッジ、及び平滑コンデンサといった少ない部品点数の簡素な構成が採用されるので、高い力率を実現しつつも低コストで高い耐久性のLED電源の実現が可能となる。
【0009】
ここで、磁気漏れ変圧器が1次コイル、2次コイル及び3次コイルを有する昇圧トランスからなり、1次コイルの一端が交流電源の一端に接続され、1次コイルの他端が2次コイルの一端及び3次コイルの一端に接続され、2次コイルの他端が交流電源の他端及びダイオードブリッジの一方の入力端子に接続され、磁気式安定器部が、3次コイルの他端とダイオードブリッジの他方の入力端子の間に挿入されたコンデンサをさらに備える構成とすることができる。
【0010】
上記構成によると、磁気式安定器部において昇圧トランス及びコンデンサのLC共振回路が構成されるので、LC共振回路の共振周波数を適宜設定することにより更なる力率の向上が可能となる。また、力率がLEDの合計順方向降下電圧に依存し難いので、高い合計順方向電圧のLEDに対応したLED電源を構成できる。すなわち、多数のLEDを直列接続することができるので電流損失を低減して消費電力を低減できる。またさらに、磁気式安定器部が上記LC共振回路によって構成されるので、出力特性(LED電力又はLED照度)が電源高調波の影響及び電源電圧変動の影響を受け難く、電源電圧変動が比較的大きい工場内等においても安定した光出力が得られる。
【0011】
また、磁気漏れ変圧器が1次コイル及び2次コイルを有する昇圧トランスからなり、1次コイルの一端及び2次コイルの一端が交流電源の一端に接続され、1次コイルの他端が交流電源の他端及びダイオードブリッジの一方の入力端子に接続され、2次コイルの他端がダイオードブリッジの他方の入力端子に接続される構成としてもよい。
【0012】
上記構成によると、磁気式安定器部が昇圧トランスだけで構成されるので、高い力率を実現しつつも更なる低コスト化が可能となる。また、この構成においても力率がLEDの合計順方向降下電圧に依存し難いので、高い合計順方向電圧のLEDに対応したLED電源を構成できる。すなわち、複数のLEDを直列接続することができるので電流損失を低減して高効率化を実現できる。
【0013】
本発明による、LEDに出力電力を供給する磁気回路式LED電源は、交流電源からの入力経路に挿入されるチョークコイル及び交流電源に並列接続されるコンデンサを有する磁気式安定器部と、磁気式安定器部の出力を整流するダイオードブリッジと、LEDに並列接続され、ダイオードブリッジの整流出力を平滑する平滑コンデンサとを備える。
【0014】
上記構成によると、磁気式安定器部の出力を整流したダイオードブリッジの整流出力が平滑コンデンサによって平滑化されるので、整流平滑出力の谷部がLEDの順方向降下電圧を下回る期間が減少又は消滅し、高い力率が得られる。また、チョークコイル、コンデンサ、ダイオードブリッジ、及び平滑コンデンサといった少ない部品点数の簡素な構成が採用され、特に磁気式安定器部がトランスを有しないので、高い力率を実現しつつも低コストで高い耐久性のLED電源の実現が可能となる。
【0015】
上記の各磁気回路式LED電源において、磁気式安定器部はHIDランプを点灯可能に構成されているものであることが好ましい。これにより、既存のHIDランプ用の磁気式安定器の構成を用いて磁気式安定器部を構成することができる。従って、LED電源の開発コストが削減されるとともに、既存製品の活用により資源の有効利用が可能となる。
【0016】
本発明のLED照明装置は、上記のいずれかの磁気回路式LED電源と、直列接続された複数のLEDを含むとともに磁気回路式LED電源から配線を介して給電されるLEDユニットとを備える。これにより、低ノイズでかつ高力率なLED照明装置を実現することができる。また、この低ノイズ性により、LED電源からLEDユニットまでの配線を長くすることができ、LEDユニットをLED電源から離れた場所に設置することが容易となる等、高い力率を実現しつつもLED電源又はLEDユニットにおける高い設置自由度が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施形態による磁気回路式LED電源を含むLED照明装置を示す回路構成図である。
図2図1の等価回路を示す図である。
図3】第1の実施形態による磁気回路式LED電源の昇圧トランスを示す模式図である。
図4】第1の実施形態による磁気回路式LED電源を説明する図である。
図5】第1の実施形態による磁気回路式LED電源を説明する図である。
図6】本発明の第2の実施形態による磁気回路式LED電源を含むLED照明装置を示す回路構成図である。
図7】本発明の第3の実施形態による磁気回路式LED電源を含むLED照明装置を示す回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態による磁気回路式LED電源(以下、「LED電源」という)及びLED照明装置を説明する。各図において、同一の符号が付された構成要素は、特に説明がない限り、実質的に同一の構成要素を示すものとし、重複する説明を省略する。なお、本明細書において、磁気式安定器又は磁気回路式電源とは、一般に銅鉄式安定器又は銅鉄安定器ともいわれる電源のことをいうものとする。
【0019】
実施形態1.
図1に本発明の第1の実施形態によるLED電源1を含むLED照明装置3を示す。LED照明装置3はLED電源1及びLEDユニット2からなる。LED電源1の入力端子T1及びT2には交流電源AC(例えば、商用電源)が接続される。LEDユニット2は、LED電源1の出力端子T3及びT4から配線W1及びW2を介して直列接続された複数のLED2aを含む。
【0020】
LED電源1は、磁気式安定器部10、ダイオードブリッジ20、平滑コンデンサ300、及び抵抗31を備え、これらは金属製の筐体に内包される。磁気式安定器部10は、昇圧型の磁気漏れ変圧器11、力率改善用のコンデンサ12、及び抵抗13を含む。なお、磁気漏れ変圧器11の入力段に電流ヒューズ、温度ヒューズ等が適宜挿入されていてもよい。
【0021】
磁気漏れ変圧器11は昇圧トランスからなり(以下、「昇圧トランス11」ともいう)、1次コイルP1、2次コイルS1及び3次コイルS2を有する。1次コイルP1の一端p1が交流電源ACの一端(入力端子T1)に接続され、1次コイルP1の他端p0が2次コイルS1及び3次コイルの共通の一端s1に接続される。2次コイルS1の他端s0は交流電源ACの他端(入力端子T2)及びダイオードブリッジ20の一方の入力端子に接続される。3次コイルS2の他端s2がコンデンサ12を介してダイオードブリッジ20の他方の入力端子の間に接続される。コンデンサ12には抵抗13が並列接続される。
【0022】
なお、本明細書において、ある回路要素が交流電源ACに接続される、とは、交流電源ACからの給電が実質的に非常に低いインピーダンスを介してその回路要素に給電されることをいうものとする。従って、ある回路要素が電流ヒューズ、低抵抗素子等を介して交流電源ACから給電を受ける場合も、当該回路要素は交流電源ACに接続される、ということができる。
【0023】
なお、図2図1の等価回路を示すように、昇圧トランス11はコイルL及びトランスTからなる回路とみることができる。すなわち、コイルLの一端p1が交流電源ACの一端(入力端子T1)に接続され、コイルLの他端p0がトランスTの2つの巻線の共通入力端s1に接続される。トランスTの一方の出力端s0は交流電源ACの他端(入力端子T2)及びダイオードブリッジ20の一方の入力端子に接続され、他方の出力端s2がコンデンサ12を介してダイオードブリッジ20の他方の入力端子の間に接続される。
【0024】
図3図1の昇圧トランス11の模式図を示す。なお、図において、昇圧トランス11は上下対称であるものとする。昇圧トランス11は鉄心111、1次コイルP1、2次コイルS1、3次コイルS2、及び鉄ケース112を備える。鉄心111はケイ素鋼板を積層して形成され、各コイルは、例えば、ホルマール線(絶縁銅線)からなる。鉄心111と鉄ケース112の間には巻線用空間113及び114が設けられる。巻線用空間113において、鉄心111に1次コイルP1が巻回され、巻線用空間114において、鉄心111に2次コイルS1及び3次コイルS2が巻回される。そして、巻線用空間113と巻線用空間114の間の部分において、鉄心111と鉄ケース112の間にはギャップGが設けられる。
【0025】
コンデンサ12は、例えば、絶縁性ポリプロピレンフィルム又はメタライズドポリエステルフィルムのコンデンサからなる。コンデンサ12に並列接続された抵抗13は、交流電源ACがオフされた後のコンデンサ12の残電圧を放電する。
【0026】
昇圧トランス11とコンデンサ12によってLC共振回路が形成される。このLC共振回路において、昇圧トランス11のインダクタ成分によって遅れる電流位相をコンデンサ12によって進ませることができる。すなわち、昇圧トランス11のインダクタンスとコンデンサ12の容量によって決まる共振周波数を、交流電源ACの周波数に対して調整することによって、入力電流を進相にして高い力率を得ることができる。
【0027】
ダイオードブリッジ20は磁気式安定器部10の昇圧出力を整流し、平滑コンデンサ30は整流出力を平滑する。すなわち、整流平滑された出力電圧及び出力電流がLED2aに供給される。抵抗31は、交流電源ACがオフされた後の平滑コンデンサ30の残電圧を放電するために設けられる。
【0028】
本実施形態の一設計例は以下の通りである。交流電源ACは200Vac、50Hzであり、LED2aの合計順方向降下電圧VFは102Vであり、LED電力は87.5Wである。昇圧トランス11の1次コイルP1、2次コイルS1、及び3次コイルS2はそれぞれ574ターン、318ターン、及び955ターンであり、ギャップGは0.95mmである。コンデンサ12は絶縁性ポリプロピレンフィルムのコンデンサからなり、その容量は13μF(耐圧280V)である。平滑コンデンサ30の容量は800μF(耐圧200V)である。この構成において、力率は約98.5%となる。抵抗13及び抵抗31の抵抗値はそれぞれ数10k〜数100kΩ程度であればよい。なお、本発明はこれらの数値に限定されるものではない。
【0029】
図4に、LED電源1の出力電圧(LED電圧)と出力電流(LED電流)の関係を示す。出力電圧が比較的低い領域R1においては、図3における矢印Aで示すように、昇圧トランス11内の磁束は巻線用空間12及び13を囲むように発生する。出力電圧が中間的な領域R2においては、出力電圧の増加に対して、図3における矢印Bで示すようなギャップGを通る磁束の比率が増加していく。出力電圧が比較的高い領域R3においては、上記の矢印Bで示す磁束が支配的となる。これにより、領域R1〜領域R2では出力電圧の増加に対して出力電流の減少が緩やかなのに対し、領域R3では出力電圧の増加に対して出力電流の減少が急峻となる。
【0030】
図5に、LED電源1の出力電圧と出力電力の関係を示す。この出力電力は図4に示す出力電圧と出力電流を乗算したものである。図5に示すように、領域R1〜領域R2に対応する電圧領域では出力電圧の増加に対して出力電力も増加するが、領域R3に対応する電圧領域では、上述したギャップGを通る磁束(矢印B)が支配的となり、さらに出力電圧が増加すると出力電力は増加から減少に転じる。これにより、出力電圧の増加に対して出力電力が比較的平坦になる、いわゆる定電力区間が生ずる。本実施形態では、この定電力区間においてLED電源1が動作するように設計されているものとする。これにより、LED電源1は、比較的広い範囲のLED2aの合計順方向降下電圧VFについて定電力出力を行うことができる。
【0031】
以上に説明した本実施形態によると、以下の有利な効果が得られる。
(1a)高力率
昇圧トランス11による昇圧出力がダイオードブリッジ20によって整流され、整流出力が平滑コンデンサ30によって平滑化されるので、整流平滑出力の谷部がLED2aの順方向降下電圧を下回る期間が減少又は消滅し、高い力率が得られる。また、磁気式安定器部10において昇圧トランス11及びコンデンサ12のLC共振回路が構成されるので、LC共振回路の共振周波数を適宜設定することにより更なる力率の向上が可能となる。
【0032】
(2a)低コスト
昇圧トランス11、コンデンサ12、ダイオードブリッジ20、平滑コンデンサ30等の比較的少ない部品点数でかつ簡素な構成でLED電源1が構成される。従って、高い力率を実現しつつも低コストなLED電源が実現される。
【0033】
(3)低損失
磁気式安定器部10の昇圧構成によって、整流平滑出力がLED2aの合計順方向降下電圧を超える期間を長くすることができるため、力率がLED2aの合計順方向降下電圧に依存し難い。言い換えると、高い合計順方向降下電圧のLEDユニット2にも対応したLED電源を提供することができ、高い力率を実現しつつもLEDユニット2における高い設計自由度が得られる。従って、多数のLED2aを並列ではなく直列に接続することができるので、LED2aの接続数が多い場合であっても電流損失を低減してLED電源の高効率化を実現できる。
【0034】
(4)高い設置自由度
スイッチング電源ではなく磁気漏れ変圧器を用いてLED電源1が構成されるので、高周波ノイズが発生しない。従って、配線W1及びW2からの輻射ノイズが発生することがないため、配線W1及びW2をより長くすることができる。これにより、LEDユニット2をLED電源1から離れた場所に設置することが容易となる等、高い力率を実現しつつもLED電源1又はLEDユニット2における高い設置自由度が得られる。
【0035】
(5)高い耐久性
LED電源1を構成する半導体がダイオードブリッジ20だけであるので、雷サージ等の外来ノイズに対する故障、誤動作等が極めて少ないLED電源を提供することができる。このように、高い力率を実現しつつも高い耐久性のLED電源が実現される。
【0036】
(6)電源からの影響の軽減
磁気式安定器部10が昇圧トランス11及びコンデンサ12のLC共振回路によって構成されるので、出力特性(LED電力又はLED照度)が電源高調波の影響及び電源電圧変動の影響を受け難い。従って、電源電圧変動が比較的大きい工場内等においても安定した光出力が得られる。
【0037】
実施形態2.
上記実施形態1においては、磁気漏れ変圧器が昇圧トランス及びコンデンサを含む構成を示したが、本実施形態では、磁気漏れ変圧器が昇圧トランスのみによって形成される構成を示す。
【0038】
図6に本の実施形態によるLED電源1を含むLED照明装置3を示す。LED電源1は、磁気式安定器部10、ダイオードブリッジ20、平滑コンデンサ30、及び抵抗31を備え、これらは金属製の筐体に内包される。磁気式安定器部10は昇圧型の磁気漏れ変圧器14からなる。なお、磁気漏れ変圧器14の入力段に電流ヒューズ、温度ヒューズ等が適宜挿入されていてもよい。
【0039】
磁気漏れ変圧器14は昇圧トランスであり(以下、「昇圧トランス14」ともいう)、1次コイルS0及び2次コイルS1を有する。1次コイルS0及び2次コイルS1の共通の一端s1が交流電源ACの一端(入力端子T1)に接続される。1次コイルS0の他端s0が交流電源ACの他端(入力端子T2)及びダイオードブリッジ20の一方の入力端子に接続され、2次コイルS1の他端s2がダイオードブリッジ20の他方の入力端子に接続される。
【0040】
昇圧トランス14は、実施形態1の昇圧トランス11に比べて小さいインダクタ成分で構成される。従って、昇圧トランス14のインダクタ成分による電流位相の遅れは小さく、実施形態1で示した力率改善用のコンデンサを省くことができる。
【0041】
本実施形態によると、上記実施形態1における(3)低損失、(4)高い設置自由度、及び(5)高い耐久性の有利な効果とともに、さらに以下の有利な効果を得ることができる。
【0042】
(1b)高力率
昇圧トランス14による昇圧出力がダイオードブリッジ20によって整流され、整流出力が平滑コンデンサ30によって平滑化されるので、整流平滑出力の谷部がLED2aの順方向降下電圧を下回る期間が減少又は消滅し、高い力率が得られる。
【0043】
(2b)低コスト
昇圧トランス14、ダイオードブリッジ20、平滑コンデンサ30等の比較的少ない部品点数でかつ簡素な構成でLED電源1が構成される。さらに、力率改善用のコンデンサが不要であるため、高い力率を実現しつつも更なる低コスト化が可能となる。
【0044】
実施形態3.
上記実施形態1及び2においては、磁気式安定器部10に磁気漏れ変圧器を用いる構成を示したが、本実施形態では、磁気式安定器部10に電流制限用のチョークコイル及び力率改善用のコンデンサを含む構成を示す。
【0045】
図7に本実施形態によるLED電源1を含むLED照明装置3を示す。LED電源1は、磁気式安定器部10、ダイオードブリッジ20、平滑コンデンサ30、及び抵抗31を備え、これらは金属製の筐体に内包される。磁気式安定器部10は、電流制限用のチョークコイル15、力率改善用のコンデンサ16、及び抵抗17を含む。なお、チョークコイル15の前段(コンデンサ16及び抵抗17の前段又は後段)に電流ヒューズ、温度ヒューズ等が適宜挿入されていてもよい。
【0046】
電流制限用のチョークコイル15は交流電源ACの一端(入力端子T1)とダイオードブリッジ20の一方の入力端子の間、すなわち交流電流ACからの入力経路に挿入される。コンデンサ16は入力端子T1−T2に並列に、すなわち交流電源ACに並列に接続される。本実施形態においてもコンデンサ16は、例えば、絶縁性ポリプロピレンフィルム又はメタライズドポリエステルフィルムのコンデンサからなる。交流電源ACからの入力電流の位相は、誘導性負荷となるチョークコイル15によって遅れる一方で、容量性負荷となるコンデンサ16によって進む。従って、コンデンサ16の容量を適宜調整することによって入力電流を進相にすることができ、所望の力率を確保することができる。なお、コンデンサ16に並列接続された抵抗17は、交流電源ACがオフされた後のコンデンサ16の残電圧を放電する。
【0047】
本実施形態によると、上記実施形態1における(4)高い設置自由度及び(5)高い耐久性の有利な効果とともに、さらに以下の有利な効果を得ることができる。
【0048】
(1c)高力率
磁気式安定器部10が、入力端子T1−T2に並列接続された力率改善用のコンデンサ16を有するので、コンデンサ16の容量を適宜設定することにより更なる力率の向上が可能となる。
【0049】
(2c)低コスト
チョークコイル15、コンデンサ16、ダイオードブリッジ20、平滑コンデンサ30等の比較的少ない部品点数でかつ簡素な構成でLED電源1が構成される。そして、磁気式安定器部10においてトランスが不要であるので、さらに低コストなLED電源が実現される。
【0050】
なお、上記各実施例における磁気式安定器部10は、水銀ランプ、メタルハライドランプ、高圧ナトリウムランプ等のHIDランプ(高圧放電灯)の点灯用に構成されたものであってもよい。このように、既存のHIDランプ用の磁気式安定器の構成を用いて磁気式安定器部10を構成することによって、LED電源1の開発コストが削減されるとともに、既存製品の活用により資源の有効利用が可能となる。
【符号の説明】
【0051】
1 磁気回路式LED電源
2 LEDユニット
2a LED
3 LED照明装置
10 磁気式安定器部
11、14 磁気漏れ変圧器(昇圧トランス)
12、16 コンデンサ
15 チョークコイル
20 ダイオードブリッジ
30 平滑コンデンサ
P1、S0 1次コイル
S1 2次コイル
S2 3次コイル
W1、W2 配線



図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7