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特開2015-6988ガリウムベース材料及び第III族ベース材料の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-6988(P2015-6988A)
(43)【公開日】2015年1月15日
(54)【発明の名称】ガリウムベース材料及び第III族ベース材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/42 20060101AFI20141212BHJP
   C30B 11/00 20060101ALI20141212BHJP
   C30B 33/02 20060101ALI20141212BHJP
【FI】
   C30B29/42
   C30B11/00 Z
   C30B33/02
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-169309(P2014-169309)
(22)【出願日】2014年8月22日
(62)【分割の表示】特願2010-507467(P2010-507467)の分割
【原出願日】2008年5月9日
(31)【優先権主張番号】11/801,712
(32)【優先日】2007年5月9日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】200810000938.8
(32)【優先日】2008年1月8日
(33)【優先権主張国】CN
(71)【出願人】
【識別番号】500406056
【氏名又は名称】エーエックスティー,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】リュー、ウェイグオ
(72)【発明者】
【氏名】ヤング、モリス、エス.
(72)【発明者】
【氏名】バダウィ、エム.、ハーニー
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077AB01
4G077BE43
4G077BE44
4G077BE46
4G077CD04
4G077EA01
4G077EH07
4G077EH09
4G077FE11
4G077HA06
4G077HA12
4G077MB06
4G077MB33
(57)【要約】      (修正有)
【課題】エッチピット密度(EPD)が低い第III族ベースの材料を製造する方法、および、デバイス収率を高め得る第III−V族/GaAsウェハを形成する、ウェハアニーリングプロセスを提供する。
【解決手段】多結晶第III族ベース化合物を形成する段階104と、多結晶第III族ベース化合物を用いて垂直温度勾配凝固による結晶成長を実行する段階106と、第III族ベース結晶を形成する際に温度勾配を制御して、EPDを非常に低くする段階を備える。さらに、アニーリング中、約10〜約48時間、900〜約1050℃であるように加熱速度を制御する段階112を含む製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッチピット密度(EPD)が低いガリウムベースの材料を製造する方法であって、
多結晶ガリウムベースの化合物を形成する段階と、
前記多結晶ガリウムベースの化合物を用いて垂直温度勾配凝固による結晶成長を実行する段階と
を備え、
前記垂直温度勾配凝固による結晶成長を実行する段階は、
前記ガリウムベースの結晶のエッチピット密度が、1平方センチメートル当たり約900未満となるように、前記ガリウムベースの結晶の形成が行われている間、温度勾配を制御する段階
を有する
方法。
【請求項2】
前記垂直温度勾配凝固による結晶成長を実行する段階はさらに、
溶融物/結晶の界面の、形状および/または温度勾配の一方または両方を制御する段階
を有する
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記垂直温度勾配凝固による結晶成長を実行する段階はさらに、
溶融物/結晶の界面を制御する段階
を有する
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記溶融物/結晶の界面を制御する段階は、
前記溶融物/結晶の界面の温度勾配を制御する段階
を含む
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記溶融物/結晶の界面を制御する段階は、
前記溶融物/結晶の界面の形状を制御する段階
を含む
請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記溶融物/結晶の界面を制御する段階は、
前記溶融物/結晶の界面の温度勾配を制御する段階
を含む
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記結晶のエッチピット密度は、1平方センチメートル当たり約600である
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ガリウムベースの結晶から、ガリウムヒ素基板を形成する段階
をさらに備える、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ガリウムベースの結晶から、リン化ガリウムまたはその他のガリウム−第V族の基板を形成する段階
をさらに備える、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記垂直温度勾配凝固による結晶成長を実行する段階はさらに、
前記垂直温度勾配凝固による結晶成長が実行されている間において、前記溶融物/結晶の界面の形状が溶融物表面に対して約±2mm以内で凹または凸となるように制御する段階
を有する
請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記垂直温度勾配凝固による結晶成長を実行する段階はさらに、
前記垂直温度勾配凝固による結晶成長が実行されている間において、結晶化速度が約2mm/時間から約16mm/時間の範囲内となるように制御する段階
を有する
請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記垂直温度勾配凝固による結晶成長を実行する段階はさらに、
前記垂直温度勾配凝固による結晶成長が実行されている間において、溶融物/結晶の界面に対応付けられる温度勾配が約摂氏0.1度/cmから約摂氏2度/cmの範囲内となるように制御する段階
を有する
請求項1に記載の方法。
【請求項13】
輝点欠陥(LPD)が少ない基板を製造する方法であって、
ガリウムヒ素ベースの基板を形成する段階と、
一段階アニーリングによって前記ガリウムヒ素ベースの基板をアニーリングする段階と、
前記ガリウムベースの基板の表面の一部分を除去して、粒径が約0.3マイクロメートル以上のガリウムヒ素ベースの基板1枚当たり輝点欠陥密度が1平方センチメートル当たり約1未満であるガリウムヒ素ベースの基板を形成する段階と
を備える方法。
【請求項14】
前記ガリウムヒ素ベースの基板をアニーリングする段階はさらに、
約10時間から約48時間にわたって、約摂氏900度から約摂氏1050度であるように、前記アニーリングにおける加熱速度を制御する段階
を有する
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ガリウムヒ素ベースの基板をアニーリングする段階はさらに、
前記アニーリングにおけるプラットフォーム温度が約摂氏900度から約摂氏1050度となるように制御する段階
を有する
請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記ガリウムヒ素ベースの基板をアニーリングする段階はさらに、
約6時間から約24時間の間に室温まで冷却するように、前記アニーリングにおける冷却速度を制御する段階
を有する
請求項13に記載の方法。
【請求項17】
所定の酸素含有レベルが得られるように、前記アニーリングにおいて前記ガリウムベースの基板の表面に対して酸素を制御する段階
をさらに備える、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
垂直温度勾配凝固プロセスによって得られる、エッチピット密度が1平方センチメートル当たり900未満である基板
を備え、
前記基板の輝点欠陥は、輝点欠陥の粒径が約0.3マイクロメートルより大きいウェハ1枚当たり合計約120個未満である
ガリウムベースの基板。
【請求項19】
前記基板は、ガリウムヒ素(GaAs)である
請求項18に記載の基板。
【請求項20】
前記基板は、リン化インジウム、リン化ガリウム、またはその他の第IIIーV族化合物である
請求項18に記載の基板。
【請求項21】
エッチピット密度(EPD)が低い第III族ベースの材料を製造する方法であって、
多結晶第III族ベースの化合物を形成する段階と、
前記多結晶第III族ベースの化合物を用いて、垂直温度勾配凝固による結晶成長を実行する段階と
を備え、
前記垂直温度勾配凝固による結晶成長を実行する段階は、
前記第III族ベースの結晶のエッチピット密度が1平方センチメートル当たり約900未満となるように、前記第III族ベースの結晶の形成が行われている間、前記第III族ベースの結晶の温度勾配を制御する段階
を有する
方法。
【請求項22】
前記第III族ベースの結晶から、リン化インジウムまたはその他の第III−V族の基板を形成する段階
をさらに備える、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記垂直温度勾配凝固による結晶成長を実行する段階はさらに、
前記垂直温度勾配凝固による結晶成長を実行している間に前記第III族ベースの結晶に対応付けられる温度勾配を制御する段階
を有し、
結晶/溶融物の温度勾配は、約摂氏0.1度/cmから約摂氏2度/cmの範囲内で維持されるように制御される
請求項21に記載の方法。
【請求項24】
エッチピット密度(EPD)が低いガリウムベースの材料を製造する方法であって、
多結晶ガリウムベースの化合物を形成する段階と、
前記多結晶ガリウムベースの化合物を用いて、垂直温度勾配凝固による結晶成長を実行する段階と
を備え、
前記垂直温度勾配凝固による結晶成長を実行する段階は、
前記ガリウムベースの結晶のエッチピット密度が1平方センチメートル当たり約900未満となるように、前記ガリウムベースの結晶の形成が行われている間、溶融物/結晶の界面を制御する段階
を有する
方法。
【請求項25】
前記溶融物/結晶の界面を制御する段階は、
前記溶融物/結晶の界面の、形状および/または温度勾配の片方または両方を制御する段階
を含む
請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体製造に関する。特に、へテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)、および、擬似格子整合高電子移動度(pHEMT)デバイスなどのデバイスを製造するために利用され得る、エッチピット密度(EPD)が低い第III−V族ウェハを製造するシステムおよび方法、ならびに、このような方法で製造されるウェハに関する。
【背景技術】
【0002】
第III−V族/ガリウムヒ素(GaAs)産業では、基板のエッチピット密度(EPD)レベルが、少数キャリアデバイスの信頼性および当該基板から形成されるデバイスの収率について、非常に重要であることが知られている。例えば、任意のGaAs電子デバイス、例えば、へテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)および擬似格子整合高電子移動度トランジスタ(pHEMT)について、基板のEPDがデバイス収率に関する決定的な要因であることは従来知られていなかった。しかし現在では、最近になってロー(Low)他(Low,T.S.他、高複雑性InGaP/GaAs HBT ICにおける初期故障(Infant Failure)に対する基板転位の影響、2007)で示されたように、転位は少なくともいくつかのデバイス故障、例えば、HBTデバイス故障と関係があることが知られている。さらに、輝点欠陥(LPD)(局所的光散乱(LLS)としても知られている)(SEMI M54−0304を参照のこと、添付)は、基板に対して実行される、エピタキシャル成長のような後続の工程において望ましくない欠陥である。特に重要な点は、成長したインゴットにおけるヒ素沈殿物に起因して発生する結晶「非粒子」LPDを低減することにある。GaAsの場合、このようにLPDが高くなるのは通常、インゴットの結晶成長時に用いられる高いヒ素過圧のためである。
【0003】
ウェハアニーリングは公知の処理である。また、「高温アニーリングで生成されるLEC非ドーピングガリウムヒ素の均一性の改善」(ラムズビー(Rumsby)他、GaAs ICシンポジウム、pp34−37(1983)に記載されているように、インゴットアニーリングも公知の処理である。
【0004】
米国特許第6,896,729号(Liu(リュー)他)等に開示されているように、垂直温度勾配凝固(VGF)法および炭素ドーピングを用いて半導体結晶を成長させる技術が知られている。VGFおよびアニーリング技術を用いて、エッチピット密度(EPD)が低いGaAsおよびその他の第III−V族化合物のウェハを製造するシステムおよび方法、ならびに、そのようなウェハを提供することが求められており、本明細書に記載する技術革新(イノベーション)に基づく側面は、このようなシステム、方法、およびウェハを提供することに関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るシステム、方法、およびウェハは、低EPD結晶成長およびウェハアニーリング処理を用いて第III−V族半導体デバイスを製造して、第III−V族(例えば、GaAs等)ウェハのデバイス収率を高めることに関する。
【0006】
一実装例によると、エッチピット密度(EPD)が低い第III族ベースの材料を製造する方法が提供される。さらに、当該方法は、多結晶第III族ベース化合物を形成する段階と、当該多結晶第III族ベース化合物を用いて垂直温度勾配凝固による結晶成長を実行する段階とを備える。その他の実装例は、第III族ベース結晶を形成する際に温度勾配を制御して、エッチピット密度を非常に低くする段階を備えるとしてよい。
【0007】
上述した概論的な説明および以下に記載する詳細な説明は共に、例示および説明を目的としたものに過ぎず、上述したように本発明を限定するものではないと理解されたい。本明細書に記載するものに加えて、さらなる特徴および/または変更が存在するとしてよい。例えば、本発明は、上記で開示された特徴のさまざまな組み合わせおよびサブコンビネーションに関するとしてよく、および/または、以下の詳細な説明に開示されている更なる特徴の組み合わせおよびサブコンビネーションに関するとしてよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
添付図面は、本明細書の一部を成し、本発明のさまざまな実施形態および側面を図示し、以下の記載と共に本発明の原理を説明するものである。図面は以下の通りである。
【0009】
図1】本明細書に記載する技術革新(イノベーション)に関連する側面に基づく、VGF結晶成長技術を用いて第III−V族ウェハを製造する方法を示す図である。
【0010】
図2】本明細書に記載する技術革新(イノベーション)に関連する側面に基づく、ウェハの一例のEPDマップを示す図である。
【0011】
図3】アニーリングされていないウェハのLPD分布を示す図である。
【0012】
図4】本明細書に記載する技術革新(イノベーション)に関連する側面に基づく、本発明の処理に従ってアニーリングされたウェハのLPD分布を示す図である。
【0013】
図5A】本明細書に記載する技術革新(イノベーション)に関連する側面に基づく、結晶成長技術を用いる第III−V族ウェハを製造する方法を示す図である。
図5B】本明細書に記載する技術革新(イノベーション)に関連する側面に基づく、結晶成長技術を用いる第III−V族ウェハを製造する方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では本発明を詳細に説明する。本発明の例は添付図面に図示する。以下に記載されている実装例は、本発明に基づく実装例の全てを表しているわけではない。以下に記載する実装例は、本明細書に記載する技術革新(イノベーション)に関連する側面に基づく一部の例に過ぎない。可能な限り、同一または同様の構成要素について言及する場合は、複数の図面にわたって同じ参照番号を用いるものとする。
【0015】
本明細書に記載するシステムおよび方法は、GaAs基板の製造に応用が可能であり、このような前提で本発明の技術革新(イノベーション)を説明する。本発明の技術革新(イノベーション)は、例えば、他の種類の基板、例えば、リン化インジウム(InP)、リン化ガリウム(GaP)、およびその他の関連する第III−V族化合物半導体の基板を製造する上で利用可能であるので、有用性が高い。
【0016】
図1は、垂直成長炉プロセス100を用いてGaAsウェハを製造する方法を示す図である。当該プロセスにより、輝点欠陥が低く、エッチピット密度が低い、GaAs基板が製造される。このプロセスはさらに、リン化インジウム(InP)、リン化ガリウム(GaP)、またはその他の関連する第III−V族化合物半導体を製造するべく用いられるとしてよい。当該製造方法では、EPDが非常に低い結晶成長プロセス(以下で詳述する)と、ウェハアニーリングプロセス(以下で詳述する)とを組み合わせて、LPDを非常に低くする。EPDが非常に低い半絶縁性GaAs(またはその他の第III−V族)ウェハをVGFプロセスによって成長させると、高集積化GaAs(またはその他の材料から成る)回路のデバイス収率が高くなる。本明細書に記載する側面によると、本明細書に記載する技術革新(イノベーション)に基づくウェハアニーリングプロセスは、非常に低いLPDを実現することができ、および/または、さらなる側面によると、ウェハ内の酸素のレベルが制御される。ウェハについては、半導体エピタキシャル成長技術の関係者全てが、LPDが低いことを望んでいる。これは、LPDが高い基板で製造するデバイスでは故障が発生するので、基板のLPDが高いほどデバイス収率が低くなってしまうためである。
【0017】
図1に戻って、原材料(102)は、認定ベンダーから入手されるグレード7N(99.9999999%)のヒ素(As)およびガリウム(Ga)である。原材料を直接用いて、公知の複統合(polysynthesis)プロセス(104)を行い、多結晶GaAsを生成する。多結晶GaAsが生成されると、垂直温度勾配凝固(VGF)結晶成長が発生する(106)。当該結晶成長は、参照により本願に組み込まれる米国特許第6,896,729号(Liu(リュー)他)に詳述されている。VGF法によって成長した結晶は、ホール効果およびエッチピット密度を測定することによって、試験される(107)としてよい。VGF半絶縁性GaAs結晶成長プロセスを実行すると、GaAs結晶は、エッチピット密度が900/cm未満となり、直径が3インチのGaAsについて約600/cmとEPDが最も低くなる。従来のプロセスでも900/cmまでEPDを低くして半絶縁性GaAs基板を生成することができるものがあるが、EPDが900/cm未満のGaAsウェハまたはその他の同様のウェハを製造できる従来のプロセスはない。このように、通常のプロセスでは900/cmというEPDは達成し得るが、上述したようなVGFプロセスで実現されるようにEPDをこれより低くすることはできない。
【0018】
EPDを低減するべく、いくつかのVGFパラメータを慎重に制御する。そのようなパラメータには、溶融物表面に対して±2mmで凹または凸となるように制御される、溶融物/結晶の界面の形状、2mm−16mm/時間の範囲内である結晶化速度、摂氏0.1度/cm−摂氏2度/cmの範囲内である溶融物/結晶の界面における温度勾配が含まれるとしてよい。VGF結晶が成長すると(そして、任意で、試験されると)、公知のインゴット成形プロセス(108)が実行され、成形後のインゴットはさらに試験されるとしてよい(109)。インゴットの成形が完了すると、インゴットをスライスしてウェハを得て(110)、ホール効果およびエッチピット密度を測定することによってウェハを任意で試験するとしてよい(111)。上述したプロセスは、InPおよびその他の第III−V族化合物ウェハを製造するのにも用いられるとしてよい。このプロセスによって、EPDが低いGaAsウェハが製造される。
【0019】
EPDが低いウェハがインゴットをスライスすることで得られると、ウェハアニーリングプロセス(112)が実行され、アニーリングされたウェハを試験するとしてよい(113)。通常の3段階アニーリングプロセスに代えて、一段階アニーリングプロセスを用いる。このプロセスにおいて、ウェハは水平石英ボートに垂直方向に装着されて、必要なヒ素ランプと共に、水平石英アンプルに挿入される。これらのヒ素ランプは、基板からヒ素解離が発生しないように、アニーリング温度において必要な蒸気圧を実現するべく、慎重に計量する。アンプルは続いて、高真空レベル(5E−3Torr未満)までポンプで減圧され、封止される。アンプルおよびその内容物は、水平方向に3区間ある炉に挿入されて、アンプルおよびその内容物を所望の設定(プラットフォーム)温度まで加熱し始める。プラットフォーム温度(摂氏900度から摂氏1050度)に到達すると、数時間(10時間から48時間)にわたって一定に保たれる。その後、加熱を低減して、アンプルを室温まで設定時間(6時間から24時間)内で冷却する。一段階アニーリングプロセスにおいて、GaAsウェハ内の酸素レベルは、アンプル内の真空レベルを調整することによって制御される。アニーリングプロセスの条件は、LPDレベルを非常に低くする(1/cm未満)べく、加熱速度、プラットフォーム温度、冷却速度について最適化された。アニーリングプロセスの結果、ウェハの輝点欠陥(LPD)は1cm−2未満まで低くなり、粒径が0.3μmより大きくなる。また、6インチのウェハについて、粒径が0.3μmより大きくなり、ウェハ1枚当たりの粒子数が50個未満まで低くなり得る。
【0020】
EPDが低いウェハがアニーリングされて、任意でLPDおよび不純物レベルについて試験されると、公知のウェハ研磨プロセス(114)を実行して、EPDが低いウェハを研磨して、研磨されたウェハは任意で試験されるとしてよい(115)。ウェハの研磨が完了すると、ウェハを洗浄して(116)、任意で試験して(117)、顧客への出荷用にパッケージングする(118)。
【0021】
EPDの測定は、SEMI M36−0699およびASTM試験方法F1404−92に従って実行される。37ポイント(1ポイントは面積が0.024cm)測定されるEPDレベルの一例を図2に示す。本例では、平均EPDが695/cmである。EPDはウェハ全体にわたって均等に分布しているわけではなく、本例では、最高EPDは1167/cmである。図2に示す数字はすべて、EPDの実測数である。EPD値を求めるには、これらの数字を単位面積(つまり、0.024cm)で除算して、1cm当たりの数を求める。
【0022】
LPDの測定は、KLA−Tencor Surfscan6220システムを用いて行う。図3は、アニーリングされていないウェハの測定結果を示す図である。ウェハに対してアニーリングが行われない場合、平均LPD密度は164cm−2よりも大きく(直径6インチのウェハ表面全体では30,000個を超える)。図4は、アニーリングされたウェハの一例の測定結果を示す図である。平均LPD密度は、1cm−2未満で(直径6インチのウェハ表面全体では50個未満である)。
【0023】
図5Aおよび図5Bは、本明細書に記載する技術革新(イノベーション)に関連する側面に基づく、結晶成長技術を用いる第III−V族ウェハを製造する方法を示す図である。例えば、図5Aは、エッチピット密度が低い第III族ベースの材料を製造する方法に関する図である。当該方法は、多結晶第III族ベース化合物を形成する段階510と、多結晶第III族ベース化合物を用いて、垂直温度勾配凝固による結晶成長を実行する段階520とを備える。さらに、結晶成長プロセスは、温度勾配を制御する段階530を有するとしてよい。一例を挙げると、この制御には、第III族ベース結晶が形成されている間に第III族ベース結晶の温度勾配を、第III族ベース結晶のエッチピット密度が1平方センチメートル当たり約900未満となるように、制御することが含まれるとしてよい。別の実装例によると、結晶成長プロセスは、垂直温度勾配凝固による結晶成長が行われている間において第III族ベース結晶に対応付けられる温度勾配を制御することを含むとしてよく、結晶/溶融物温度勾配が約摂氏0.1/cmから約摂氏2度/cmの範囲内に維持される。また、成長プロセスはさらに任意で、溶融物/結晶の界面を制御する段階540を有するとしてよく、例えば、溶融物/結晶の界面の形状および/または温度勾配の片方または両方を制御する段階を有するとしてよい。
【0024】
図5Bは、輝点欠陥の少ない基板を製造する方法の一例を示す図である。当該方法は、第III−V族ベースの基板を形成する段階550と、第III−V族ベースの基板を、例えば一段階アニーリングプロセスを用いて、アニーリングする段階560と、第III−V族ベースの基板の表面の一部分を除去する段階570とを備える。本明細書に記載する技術革新(イノベーション)に基づいて実行されると、粒径が約0.3マイクロメートル以上のガリウムヒ素ベースの基板1枚当たり輝点欠陥密度が1平方センチメートル当たり約1未満である基板が形成されるとしてよい。
【0025】
具体的な実施形態を参照しつつ本発明を説明したが、本発明の原理および精神を逸脱することなく、本実施形態を変更し得ることは当業者には明らかであり、本発明の範囲は本願特許請求の範囲によって定義される。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
【手続補正書】
【提出日】2014年8月22日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッチピット密度(EPD)が低いガリウムベース材料の製造方法であって、
多結晶ガリウムベースの化合物を形成する段階と、
前記多結晶ガリウムベースの化合物を用いて垂直温度勾配凝固による結晶成長を実行する段階と、
前記多結晶ガリウムベースの化合物を用いて成長された多結晶ガリウムベースの結晶からガリウムベースの基板を形成する段階と、
前記ガリウムベースの基板をアニーリングする段階と
を備え、
前記垂直温度勾配凝固による結晶成長を実行する段階は、
前記垂直温度勾配凝固による結晶成長が実行されている間において、結晶化速度が約2mm/時間から約16mm/時間の範囲内となるように、前記結晶化速度を制御する段階と、
前記多結晶ガリウムベースの化合物を用いて成長された前記ガリウムベースの結晶のエッチピット密度が、1平方センチメートル当たり900未満となるように、前記ガリウムベースの結晶の形成が行われている間、温度勾配を制御する段階
を有し、
前記アニーリングする段階は、アニーリング中、約10時間から約48時間にわたって、摂氏約900度から摂氏約1050度であるように加熱速度を制御する段階を含む製造方法。
【請求項2】
前記垂直温度勾配凝固による結晶成長を実行する段階はさらに、
溶融物/結晶の界面の、形状および/または温度勾配の一方または両方を制御する段階
を有する請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記垂直温度勾配凝固による結晶成長を実行する段階はさらに、
溶融物/結晶の界面を制御する段階
を有する請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記溶融物/結晶の界面を制御する段階は、
前記溶融物/結晶の界面の温度勾配を制御する段階
を含む請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記溶融物/結晶の界面を制御する段階は、
前記溶融物/結晶の界面の形状を制御する段階
を含む請求項3に記載の製造方法。
【請求項6】
前記溶融物/結晶の界面を制御する段階は、
前記溶融物/結晶の界面の温度勾配を制御する段階
を含む請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記多結晶ガリウムベースの化合物を用いて成長された前記ガリウムベースの結晶から、ガリウムヒ素基板を形成する段階
をさらに有する請求項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記ガリウムベースの基板を形成する段階はさらに、
前記多結晶ガリウムベースの化合物を用いて成長された前記ガリウムベースの結晶から、リン化ガリウムまたはその他のガリウム−第V族の基板を形成する段階
有する請求項1から7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記垂直温度勾配凝固による結晶成長を実行する段階はさらに、
前記垂直温度勾配凝固による結晶成長が実行されている間において、溶融物/結晶の界面の形状が溶融物表面に対して約±2mm以内で凹または凸となるように制御する段階
を有する請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
前記垂直温度勾配凝固による結晶成長を実行する段階はさらに、
前記垂直温度勾配凝固による結晶成長が実行されている間において、溶融物/結晶の界面に対応付けられ温度勾配が約摂氏0.1度/cmから約摂氏2度/cmの範囲内となるように制御する段階
を有する請求項1に記載の製造方法。
【請求項11】
エッチピット密度(EPD)が低い第III族ベース材料の製造方法であって、
多結晶第III族ベースの化合物を形成する段階と、
前記多結晶第III族ベースの化合物を用いて、垂直温度勾配凝固による結晶成長を実行する段階と、
前記多結晶第III族ベースの化合物を用いて成長されたIII族ベースの結晶からIII族ベースの基板を形成する段階と、
前記III族ベースの基板をアニーリングする段階と
を備え、
前記垂直温度勾配凝固による結晶成長を実行する段階は、
前記垂直温度勾配凝固による結晶成長が実行されている間において、結晶化速度が2mm/時間から16mm/時間の範囲内となるように、前記結晶化速度を制御する段階と、
前記第III族ベースの結晶のエッチピット密度が1平方センチメートル当たり900未満となるように、前記第III族ベースの結晶の形成が行われている間、前記多結晶第III族ベースの化合物を用いて成長された前記第III族ベースの結晶の温度勾配を制御する段階
を有し、
前記アニーリングする段階は、アニーリング中、10時間から48時間にわたって、摂氏900度から摂氏1050度であるように加熱速度を制御する段階を含む製造方法。
【請求項12】
前記III族ベースの基板を形成する段階はさらに、
前記第III族ベースの結晶から、リン化インジウムまたはその他の第III−V族の基板を形成する段階
を有する請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記垂直温度勾配凝固による結晶成長を実行する段階はさらに、
前記垂直温度勾配凝固による結晶成長を実行している間に前記第III族ベースの結晶に対応付けられる温度勾配を制御する段階
を有し、
結晶/溶融物の温度勾配は、約摂氏0.1度/cmから約摂氏2度/cmの範囲内で維持される請求項11または12に記載の製造方法。
【外国語明細書】
2015006988000001.pdf