【解決手段】 端子台1は、ハウジング20と、コンタクト50と、板ばね30と、カム部材10を有する。コンタクト50は、ハウジング20に差し込まれてきた丸端子72を受け入れる。板ばね30は、カム部材10の回転操作によりコンタクト50に押し当てられる。このコンタクト50は、台部521とばね片522を有する。台部521は、板ばね30に向かって突き出ていて挿入された状態の丸端子72の穴721に入り込む突起521aを有する。また、ばね片522は、台部521よりも板ばね30側に位置し挿入されてきた丸端子72を台部521に向けて付勢する。
前記板ばねが、前記カム部材に向かって突き出た突部を有し、前記カム部材が、回転操作を受けて該板ばねを前記コンタクトに押し当てたときに該突部を乗り越えた位置で停止して、該突部が該カム部材の逆向きの不用意な回転を阻止するものであることを特徴とする請求項1又は2記載の端子台。
【背景技術】
【0002】
従来より丸端子の穴にビスを挿通してそのビスを台座のネジ穴にネジ止めするタイプの端子台が広く使われている。このタイプの端子台の場合、丸端子を固定するために台座から完全に取り外された状態のビスを丸端子の穴に挿通して、そのビスを台座にネジ込む必要があり、丸端子の取付作業の負荷が大きい。このため、少しの操作量で丸端子を確実に固定することのできるタイプの端子台が望まれている。
【0003】
特許文献1には、アース線をハウジング内に挿入し、カム面を有する操作レバーを回転操作することにより補助部材をアース線に向かって駆動して、アース線に係止金具を圧着する住宅用分電盤の中継用アース端子が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、偏心して軸支された操作カムをドライバ等により回転操作することにより貫通開口への導体の挿入を可能とし、操作カムを逆向きに回転操作することにより導体を挟持する電気端子が開示されている。
【0005】
さらに、特許文献3には、カム部を有する解除レバーを回転操作することにより鎖錠ばねの鎖錠孔内への電線の挿入を可能とし、解除レバーを逆向きに回転操作することにより電線を挟持する端子装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上掲の特許文献1の開示技術を丸端子の固定に適用した場合、丸端子に接続されたケーブルに引抜き方向の力が加わったときに丸端子が抜けてしまうおそれがある。
【0008】
また、上掲の特許文献2,3についても同様であり、剥出しの電線の接続用であって、これを丸端子に適用した場合、不用意に引き抜かれるおそれがある。また、特許文献2,3は、電線の挿入方向とカムの回転軸方向とが異なるので、低背化が困難である。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑み、少ない操作量で丸端子を確実に固定することのできる低背の端子台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明の端子台は、
穴を有する丸端子を先端に備えた丸端子付きケーブルの丸端子を受容するコンタクトと、
コンタクトに隣接する位置に配置された板ばねと、
板ばねをコンタクトとで挟む位置に配置されて丸端子の挿入方向に延びる回転軸を有し、回転操作を受けて板ばねをコンタクトに押し当てるカム部材とを備え、
上記コンタクトが、板ばねに向かって突き出て挿入された状態の丸端子の穴に入り込む突起を有する台部と、その台部よりも板ばね側に位置し挿入されてきた丸端子を台部に向けて付勢するばね片とを有することを特徴とする。
【0011】
本発明の端子台は、そのコンタクトが、丸端子の穴に入り込む突起を有する台部と丸端子をその台部に向けて付勢するばね片とを有し、さらにカム部材で板ばねをそのコンタクトに押し当てる構成を有する。このように、本発明のコネクタでは、丸端子の穴に台部の突起が入り込み、かつカム部材で板ばねがコンタクトに押し当てられるため、ケーブルに不用意に引き抜き方向の力が加わっても丸端子が抜け落ちることが防止される。また、カムを回転させるという少ない操作量で丸端子が確実に固定される。さらに、そのカムの回転軸は丸端子の挿入方向に延びているため、低背化が実現する。
【0012】
ここで、本発明の端子台において、コンタクトの台部が板ばねに向いた穴を有し、その台部に形成されている突起がその穴を取り巻いて一周する形状の突起であり、コンタクトのばね片が台部の突起を避けてその突起の脇に延びるばね片であって、
板ばねがコンタクトに向かって切り起こされ、その板ばねがカム部材によりコンタクトに押し当てられたときに、台部の、突起に取り巻かれた穴に入り込む切起し片を有することが好ましい。
【0013】
このように、板ばねが上記の切起し片を備えると、丸端子の不用意な抜け落ちが一層確実に防止される。
【0014】
また、本発明の端子台において、上記板ばねが、カム部材に向かって突き出た突部を有し、上記カム部材が、回転操作を受けて板ばねをコンタクトに押し当てたときにその突部を乗り越えた位置で停止して、その突部がカム部材の逆向きの不用意な回転を阻止するものであることが好ましい。
【0015】
この場合、例えば振動を受けたこと等によるカム部材の不用意な逆向きの回転が防止され、これにより丸端子の抜け落ちがさらに確実に防止される。
【発明の効果】
【0016】
以上の本発明の端子台によれば、丸端子が少ない操作量で確実に固定される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態としての端子台の斜視図である。
【0020】
この端子台1は、互いに結合された前ハウジング20と後ハウジング60を備えている。
【0021】
この
図1には、上下2段に並んで前ハウジング20に収容されている合計36個のカム部材10(後述する)の頭部11があらわれている。これらの頭部11にはドライバを受け入れる十字の溝111が形成されている。また、この前ハウジング20には、それぞれの頭部11の下に、丸端子(後述する)を受け入れる端子受入口21が設けられている。
【0022】
図2は、
図1に示す端子台1の分解斜視図である。
【0023】
ここには、カム部材10、前ハウジング20、板ばね30、Cリング40、コンタクト50、および後ハウジング60が示されている。
【0024】
図3は、丸端子付きケーブルの先端部分の斜視図である。
【0025】
この丸端子付きケーブル70は、ケーブル71の先端に丸端子72を備えたものである。この丸端子72には穴721が形成されている。
【0026】
図1,
図2に示す端子台1は、この丸端子付きケーブル70の丸端子72を受け入れて固定するものである。
【0027】
図4は、カム部材の斜視図である。ここで、
図4(A),
図4(B)は、そのカム部材を、それぞれ前方斜め上、後方斜め下から見た斜視図である。
【0028】
このカム部材10は、全体として一次元的に延びた形状を有し、その延びた方向を回転軸とする部材である。このカム部材10には、
図1を参照して説明した、十字の溝111が形成された頭部11が設けられている。この十字の溝111にはドライバ(図示せず)が差し込まれ、そのドライバの回転操作により、このカム部材10が回転する。
【0029】
また、このカム部材10には、頭部11の直ぐ後方に回転カム12が設けられている。この回転カム12は、カム部材10が回転操作されたときに板ばね30をコンタクト50に押し当てる役割を担っている。
【0030】
また、このカム部材10には、その回転カム12の後方に突起13が立設している。この突起13は、このカム部材12を回転させたときに前ハウジング20のストッパ25(後述する
図10,
図11)に突き当たってカム部材12のそれ以上の回転を阻止する役割を担っている。
【0031】
また、このカム部材10の最後尾には、一周にわたる周回溝14が形成されている。この周回溝14には、Cリング40が嵌め込まれて、このカム部材10が前ハウジング20から抜け止めされる構造となっている。
【0032】
図5は、前ハウジングの斜視図である。ここで、
図5(A),
図5(B)は、その前ハウジングを、それぞれ前方斜め上、後方斜め下から見た斜視図である。
【0033】
この前ハウジング20には、
図1を参照して説明した端子受入口21が設けられている。この端子受入口21の奥には、前ハウジング20の背面から差し込まれたコンタクト50が収容され、端子受入口21から丸端子72(
図3参照)が挿入されると、その丸端子72をコンタクト50が受け入れる構造となっている。詳細は後述する。
【0034】
また、この前ハウジング20の、各々の端子受入口21の上には、カム部材受入口22が形成されている。カム部材10は、このカム部材受入口22から前ハウジング20内に挿入され、カム部材10の頭部11を
図1に示すように露出させた状態に前ハウジング20内に収容される。
【0035】
さらに、このハウジング20には、その後端部に後ハウジング60(
図1,
図2参照)との結合用の複数の溝23が設けられており、さらにそれらの溝23内に、後ハウジング60の結合穴64(
図9参照)に入り込む結合突起24が形成されている。
【0036】
図6は、板ばねの斜視図である。ここで、
図6(A),
図6(B)は、その板ばねをそれぞれ前方斜め上、後方斜め下から見た斜視図である。
【0037】
この板ばね30は、前ハウジング20に圧入される基部31から片持ち梁状に前方に延び、折れ曲がって後方の基部31に向かって途中まで延びた形状を有する。
【0038】
この板ばね30は、前ハウジング20内においてコンタクト50に隣接し、そのコンタクト50とカム部材10とに挟まれた位置に配置されている。
【0039】
この板ばね30には、前方に延びる部分に、コンタクト50に向かって切り起こされた切起し片32を有する。この切起し片32の作用については後述する。またこの板ばね30には、折れ曲がって後方の基部31に向かって延びる部分に、カム部材10に向かって突き出た突部としてのビード33が形成されている。このビード33の作用についても後述する。
【0041】
このCリング40は、前ハウジング20のカム部材受入口22から差し込まれたカム部材10の最後尾の周回溝14に嵌め込まれて、カム部材10が前ハウジング20から抜け出るのを防止する役割を担っている。
【0042】
図8はコンタクトの斜視図である。ここで
図8(A),
図8(B)は、そのコンタクトを、それぞれ前方斜め上、後方斜め下から見た斜視図である。
【0043】
このコンタクト50は、前ハウジング20に圧入される基部51の前方に第1接点部52を備え、基部51の後方に第2接点部53を備えている。
【0044】
第1接点部52は、前ハウジング20に収容されて、
図3に示す丸端子付きケーブル70の丸端子72との接触を担う部分である。また、第2接点部53は、前ハウジング20と後ハウジング60とに跨って収容されて、この端子台1(
図1参照)によって丸端子付きケーブル70との間の電気的な導通が仲介される他の機器等の接点との接触を担う部分である。
【0045】
ここで、第1接点部52は、台部521とばね片522を有する。
【0046】
台部521には、前ハウジング20に組み込まれたときの板ばね30に向かって突き出た円環状の突起521aが形成されている。この突起521aは挿入された状態の丸端子72の穴721(
図3参照)に入り込む突起である。
【0047】
また、この台部521には、その突起521aに取り囲まれた穴521bを有する。すなわち、突起521aは、その穴521bを取り巻いて一周する形状の突起である。この穴521bは、後述するようにして板ばね30に形成されている切起し片32(
図6参照)が入り込む。
【0048】
また、この台部521の突起521aの後方には、切起し片からなるストッパ521cが設けられている。このストッパ521cには、差し込まれてきた丸端子72の先端が突き当たり、丸端子72がそれ以上挿入されないように丸端子72の挿入方向の位置を規制するものである。
【0049】
また、この第1接点部52を構成しているばね片522は、台部521よりも板ばね30側に位置し(
図13参照)、挿入されてきた丸端子72を台部521に向けて付勢する役割を担っている。
【0050】
丸端子72は台部521とばね片522とに挟まれながら挿入され、ばね片522により台部521に押し当てられながら突起521aを乗り越えて、その先端がストッパ521cに突き当てられる。このとき、突起521aが丸端子72の穴721に入り込む。この構造により丸端子72を差し込んでいる作業者にクリック感を与え、丸端子72が規定の位置まで挿し込まれたことを認識させることができる。
【0051】
ここで、このばね片522は、二股のフォーク状に形成されていて、台部521の突起521aを避けてその突起521aの両脇に延びている。これにより、丸端子72の穴721の両側が確実に台部521に押し当てられる。また、ばね片522の、このフォーク形状により、突起521aに取り囲まれた穴521bを板ばね30に向けて開放している。この台部521の穴521bには、板ばね30に形成された切起し片32が入り込む。
【0052】
図9は、後ハウジングの斜視図である。ここで
図9(A),
図9(B)は、後ハウジングを、それぞれ前方斜め上、後方斜め下から見た斜視図である。
【0053】
この後ハウジング60には、上下2段に並ぶ開口61と、この後ハウジング60の背面に形成され、開口61に1対1に繋がる相手コンタクト差込口62が形成されている。開口61内には、コンタクト50の第2接点部53の一部が収容される。相手コンタクト差込口62には、この端子台1に仲介された丸端子付きケーブル70に電気的に接続される機器等(図示せず)の相手コンタクトが差し込まれる。この差し込まれた相手コンタクトは、この端子台1のコンタクト50の第2接点部53に電気的に接続される。
【0054】
また、この後ハウジング60には、その上下に複数ずつ、前方に突き出てそれぞれに結合穴64が形成された結合部63が形成されている。これらの結合部63は、前ハウジング20に設けられている溝23に入り込む。そして、その溝23内に設けられた結合突起24(
図5参照)が結合部63に設けられた結合穴64に入り込んで、前ハウジング20と後ハウジング60が互いに結合する。
【0055】
図10は前ハウジングの一部を示した拡大正面図である。
【0056】
また、
図11は、前ハウジングの、
図10に示す矢印A−Aに沿う断面図である。
【0057】
この前ハウジング20には、端子受入口21が上下2段に配列され、各々の端子受入口21の上部にカム部材受入口22が配列されている。このカム部材受入口22の奥には、内向きに突出した形状のストッパ25が設けられている。このストッパ25は、カム部材10を回転させたときにカム部材10をそれ以上回転させないようにそのカム部材10の回転を規制する役割りを担っている。各ストッパ25は、第1突当面251と第2突当面252を有する。
【0058】
第1突当面251には、板ばね30をコンタクト50への押当てから解除する向きにカム部材10を回したときにカム部材10の突起13が突き当たり、これによりカム部材10が回り止めされる。なお、
図12に示された状態のカム部材10の姿勢を「解除姿勢」と称する。
【0059】
また、第2突当面252には、板ばね30をコンタクト50に押し当てる向きにカム部材10を回したときにカム部材10の突起13が突き当たり、これによりカム部材10が回り止めされる。ここでは、この状態のカム部材10の姿勢を「押当姿勢」と称する。
【0060】
図12は、組立後の端子台の一部を示した拡大正面図である。
【0061】
また、
図13は、端子台の、
図12に示す矢印B−Bに沿う断面図である。
【0062】
図12に示すように、端子受入口21を覗くと、その中に、
図8に示すコンタクト50の台部521に設けられた突起521aおよびストッパ521cと、ばね片522が見えている。カム部材10は、この段階では解除姿勢にある。
【0063】
図13に示すように、この段階では、板ばね30はコンタクト50から離れた位置にあり、コンタクト50は、丸端子72の受入れが可能な状態にある。
【0064】
図14は、丸端子付きケーブル先端の丸端子が途中まで差し込まれたときの、
図12に示す矢印B−Bに沿う断面図である。
【0065】
この段階では、丸端子72は途中まで差し込まれていて、その丸端子72によってコンタクト50のばね片522が持ち上げられている。
【0066】
図15は、丸端子が規定位置まで差し込まれたときの、
図12に示す矢印B−Bに沿う断面図である。
【0067】
ここでは、丸端子72の先端がコンタクト50の台部521のストッパ521cに突き当てられ、丸端子72の穴721にコンタクト50の台部521の突起521aが入り込んでいる。このように、コンタクト50の台部521の突起521aを丸端子72の穴721に入り込ませることにより、丸端子72の不用意な抜けを防止している。
【0068】
図16は、
図12と同様、端子台の一部を示した拡大正面図である。
【0069】
また、
図17は、端子台の、
図16に示す矢印C−Cに沿う断面図である。
【0070】
ここでは、カム部材10は、
図12に示す解除姿勢から回転操作されて押当姿勢にある。この押当姿勢では、カム部材10の突起13が前ハウジング20のストッパ25の第2突当面252に突き当てられている。また、カム部材10がこの押当姿勢にまで回転操作されると、そのカム部材10の回転カム12が板ばね30に形成されているビード33(
図6(A)を合わせて参照)を乗り越える。カム部材10は、このビード33の存在により、この
図16に示す押当姿勢から
図12に示す解除姿勢に向けての回転の初期に強い抵抗を受けることになる。したがって、このビード33の存在により、押当姿勢にあるカム部材10の、不用意な回転が防止される。
【0071】
また、板ばね30は、この押当姿勢にあるカム部材10の回転カム12によりコンタクト50に押し当てられて、その板ばね30の切起し片32がコンタクト50の台部521の穴521bに入り込む。この点も、丸端子72の不用意な抜け防止に役立っている。
【0072】
この端子台1から丸端子72を抜き取るときは、カム部材10を、
図16,
図17に示す押当姿勢から
図12に示す解除姿勢へと回転操作する。すると、コンタクト50は板ばね30の押圧から解除され、また、板ばね30の切起し片32がコンタクト50の台部521の穴521bから抜け出る。このように、カム部材10を解除姿勢にまで回転操作することによって、あとは、ケーブル70を引いて丸端子72を端子台1から抜き取ることができる。