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特開2015-70207光学半導体デバイスおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-70207(P2015-70207A)
(43)【公開日】2015年4月13日
(54)【発明の名称】光学半導体デバイスおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/12 20060101AFI20150317BHJP
【FI】
   H01S5/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-205233(P2013-205233)
(22)【出願日】2013年9月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000154325
【氏名又は名称】住友電工デバイス・イノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 太郎
(72)【発明者】
【氏名】田口 利之
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AB15
5F173AB16
5F173AB24
5F173AG20
5F173AH12
5F173AR96
(57)【要約】
【課題】 ヒータの劣化を抑制することができる光学半導体デバイスおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】 光学半導体デバイスは、半導体層上に設けられた第1絶縁膜と、前記第1絶縁膜上に設けられたヒータと、前記ヒータ上に設けられる第2絶縁膜と、前記ヒータ上に、前記ヒータと接触し、かつ前記第2絶縁膜上に延在して設けられた電極と、を備え、前記電極が延在する部分における前記第2絶縁膜の厚さは、前記第1絶縁膜の厚さよりも大きい。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体層上に設けられた第1絶縁膜と、
前記第1絶縁膜上に設けられたヒータと、
前記ヒータ上に設けられる第2絶縁膜と、
前記ヒータ上に、前記ヒータと接触し、かつ前記第2絶縁膜上に延在して設けられた電極と、を備え、
前記電極が延在する部分における前記第2絶縁膜の厚さは、前記第1絶縁膜の厚さよりも大きい光学半導体デバイス。
【請求項2】
前記ヒータ上において、前記電極が延在しない部分における前記第2絶縁膜の厚さは、前記電極が延在する部分における前記第2絶縁膜の厚さより小さい請求項1記載の光学半導体デバイス。
【請求項3】
前記ヒータ上においては、前記第2絶縁膜の厚さが、前記電極が延在する部分のみ、前記電極が延在しない部分における前記第2絶縁膜の厚さより大きい請求項1記載の光学半導体デバイス。
【請求項4】
前記第2絶縁膜は、異なる成膜工程を経て形成された、複数の絶縁膜を含むことを特徴とする請求項1〜3記載の光学半導体デバイス。
【請求項5】
前記第1絶縁膜および前記第2絶縁膜は、窒化シリコンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学半導体デバイス。
【請求項6】
前記電極が延在する部分の前記第2絶縁膜の厚さは、前記第1絶縁膜の厚さの2倍以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学半導体デバイス。
【請求項7】
半導体層上に第1絶縁膜を形成する工程と、
前記第1絶縁膜上にヒータを形成する工程と、
前記ヒータ上に、前記第1絶縁膜よりも大きい厚さを有する第2絶縁膜を形成する工程と、
前記第2絶縁膜に、前記ヒータを露出させる窓を形成する工程と、
前記窓内の前記ヒータに接触し、且つ前記第2絶縁膜上に延在する電極を形成する工程と、を含む光学半導体デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記電極が延在しない部分における前記第2絶縁膜の厚みを減じる工程をさらに含む請求項7記載の光学半導体デバイスの製造方法。
【請求項9】
前記第2絶縁膜の厚みを減じる工程は、前記電極をマスクとして用いて、前記第2絶縁膜にエッチング処理を施す工程であることを特徴とする請求項8記載の光学半導体デバイスの製造方法。
【請求項10】
前記第2絶縁膜を形成する工程は、その一部を構成する層を成長した後、その成長温度から常温へ降温する工程の後、その残部を構成する層を成長する工程を含むことを特徴とする請求項7〜9記載の光学半導体デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学半導体デバイスおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
波長可変半導体レーザに代表される光学半導体デバイスにおいては、その屈折率制御のために、対象となる部位の温度制御が実施される場合がある。典型的には、温度制御のためにヒータが用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−48988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
温度制御によってその屈折率制御を行う場合、その温度制御の精度は、光学半導体デバイスの光学特性に影響する。したがって、温度制御のためにヒータを用いる場合には、ヒータの信頼性は重要な要件である。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、ヒータの劣化を抑制することができる光学半導体デバイスおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る光学半導体デバイスは、半導体層上に設けられた第1絶縁膜と、前記第1絶縁膜上に設けられたヒータと、前記ヒータ上に設けられる第2絶縁膜と、前記ヒータ上に、前記ヒータと接触し、かつ前記第2絶縁膜上に延在して設けられた電極と、を備え、前記電極が延在する部分における前記第2絶縁膜の厚さは、前記第1絶縁膜の厚さよりも大きいものである。この前記ヒータ上において、前記電極が延在しない部分における前記第2絶縁膜の厚さは、前記電極が延在する部分における前記第2絶縁膜の厚さより小さくすることができる。また前記ヒータ上においては、前記第2絶縁膜の厚さが、前記電極が延在する部分のみ、前記電極が延在しない部分における前記第2絶縁膜の厚さより大きくすることができる。また、前記第2絶縁膜は、異なる成膜工程を経て形成された、複数の絶縁膜を含むことができる。また、前記第1絶縁膜および前記第2絶縁膜は、窒化シリコンとすることができる。前記電極が延在する部分の前記第2絶縁膜の厚さは、前記第1絶縁膜の厚さの2倍以上とすることができる。
【0007】
本発明に係る光学半導体デバイスの製造方法は、半導体層上に第1絶縁膜を形成する工程と、前記第1絶縁膜上にヒータを形成する工程と、前記ヒータ上に、前記第1絶縁膜よりも大きい厚さを有する第2絶縁膜を形成する工程と、前記第2絶縁膜に、前記ヒータを露出させる窓を形成する工程と、前記窓内の前記ヒータに接触し、且つ前記第2絶縁膜上に延在する電極を形成する工程と、を含む。また、前記電極が延在しない部分における前記第2絶縁膜の厚みを減じる工程をさらに含むことができる。前記第2絶縁膜の厚みを減じる工程は、前記電極をマスクとして用いて、前記第2絶縁膜にエッチング処理を施す工程とすることができる。前記第2絶縁膜を形成する工程は、その一部を構成する層を成長した後、その成長温度から常温へ降温する工程の後、その残部を構成する層を成長する工程を含むことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る光学半導体デバイスおよびその製造方法によれば、ヒータの劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1に係る半導体レーザの全体構成を示す模式的断面図である。
図2】(a)はCSG−DBR領域Bの一部拡大図であり、(b)は(a)の上面図である。
図3】(a)は実施例2に係るヒータ周辺の拡大図であり、(b)は(a)の上面図である。
図4】(a)は実施例3に係るヒータ周辺の拡大図であり、(b)は(a)の上面図である。
図5】(a)は実施例4に係るヒータ周辺の拡大図であり、(b)は(a)の上面図である。
図6】(a)および(b)は製造プロセスを表す図である。
図7】(a)および(b)は製造プロセスを表す図である。
図8】(a)および(b)は製造プロセスを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、実施例について説明する。
【実施例1】
【0011】
実施例1においては、半導体チップの一例として半導体レーザについて説明する。図1は、実施例1に係る半導体レーザ100の全体構成を示す模式的断面図である。図1に示すように、半導体レーザ100は、SG−DFB(Sampled Grating Distributed Feedback)領域Aと、CSG−DBR(Chirped Sampled Grating Distributed Bragg Reflector)領域Bと、SOA(Semiconductor Optical Amplifier)領域Cと、光吸収領域Dと、反射防止膜ARと、反射膜HRとを備える。
【0012】
一例として、半導体レーザ100において、フロント側からリア側にかけて、反射防止膜AR、SOA領域C、SG−DFB領域A、CSG−DBR領域B、光吸収領域D、反射膜HRがこの順に配置されている。SG−DFB領域Aは、利得を有しサンプルドグレーティングを備える。CSG−DBR領域Bは、利得を有さずにサンプルドグレーティングを備える。SOA領域Cは、光増幅器として機能する。
【0013】
SG−DFB領域Aは、基板1上に、下クラッド層2、導波路3、上クラッド層4、およびコンタクト層5が積層された構造を有する。導波路3は、光伝搬方向において利得領域31と屈折率可変領域32とが交互に形成された構造を有する。コンタクト層5は、利得領域31と屈折率可変領域32との界面の上方でそれぞれ分離されている。コンタクト層5において、分離された箇所には絶縁膜が形成されている。利得領域31の上方のコンタクト層5上には、利得制御用電極7が形成されている。屈折率可変領域32の上方のコンタクト層5上には、屈折率調整用電極8が形成されている。
【0014】
CSG−DBR領域Bは、基板上1に、下クラッド層2、光導波層19、上クラッド層4、絶縁膜6、および複数のヒータ20が積層された構造を有する。ヒータ20のそれぞれには、電源電極21およびグランド電極22が設けられている。なお、ヒータ20の詳細は後述する。SOA領域Cは、基板1上に、下クラッド層2、光増幅層16、上クラッド層4、コンタクト層17、および電極18が積層された構造を有する。光吸収領域Dは、基板1上に、下クラッド層2、光吸収層13、上クラッド層4、コンタクト層14、および電極15が積層された構造を有する。端面膜11は、AR(Anti Reflection)膜からなる。反射膜12は、HR(High Reflection)膜からなる。
【0015】
SG−DFB領域A、CSG−DBR領域B、SOA領域Cおよび光吸収領域Dにおいて、基板1、下クラッド層2、および上クラッド層4は、一体的に形成されている。導波路3、光導波層19、光吸収層13および光増幅層16は、同一面上に形成されている。SG−DFB領域AとCSG−DBR領域Bとの境界は、導波路3と光導波層19との境界と対応している。
【0016】
基板1、下クラッド層2、光増幅層16および上クラッド層4のSOA領域C側の端面には、端面膜11が形成されている。本実施例では、端面膜11はAR(Anti Reflection)膜である。端面膜11は、半導体レーザ100のフロント側端面として機能する。基板1、下クラッド層2、光吸収層13、および上クラッド層4の光吸収領域D側の端面には、反射膜12が形成されている。反射膜12は、半導体レーザ100のリア側端面として機能する。
【0017】
基板1は、例えば、n型InPからなる結晶基板である。下クラッド層2はn型、上クラッド層4はp型であり、それぞれ例えばInPによって構成される。下クラッド層2および上クラッド層4は、導波路3、光導波層19、光吸収層13および光増幅層16を上下で光閉込めしている。
【0018】
導波路3の利得領域31は、例えば量子井戸構造を有しており、例えばGa0.32In0.68As0.920.08(厚さ5nm)からなる井戸層と、Ga0.22In0.78As0.470.53(厚さ10nm)からなる障壁層が交互に積層された構造を有する。導波路3の屈折率可変領域32は、例えばGa0.28In0.72As0.610.39結晶からなる導波層である。光導波層19は、例えばバルク半導体層で構成することができ、例えばGa0.22In0.78As0.470.53によって構成することができる。本実施例においては、光導波層19は、利得領域31よりも大きいエネルギギャップを有する。
【0019】
光吸収層13は、半導体レーザ100の発振波長に対して、吸収特性を有する材料が選択される。光吸収層13としては、その吸収端波長が例えば半導体レーザ100の発振波長に対して長波長側に位置する材料を選択することができる。なお、半導体レーザ100の発振波長のうち、もっとも長い発振波長よりも吸収端波長が長波長側に位置していることが好ましい。
【0020】
光吸収層13は、例えば、量子井戸構造で構成することが可能であり、例えばGa0.47In0.53As(厚さ5nm)の井戸層とGa0.28In0.72As0.610.39(厚さ10nm)の障壁層が交互に積層された構造を有する。また、光吸収層13はバルク半導体であってよく、例えばGa0.46In0.54As0.980.02からなる材料を選択することもできる。なお、光吸収層13は、利得領域31と同じ材料で構成してもよく、その場合は、利得領域31と光吸収層13とを同一工程で作製することができるから、製造工程が簡素化される。
【0021】
光増幅層16は、電極18からの電流注入によって利得が与えられ、それによって光増幅をなす領域である。光増幅層16は、例えば量子井戸構造で構成することができ、例えばGa0.35In0.65As0.990.01(厚さ5nm)の井戸層とGa0.15In0.85As0.320.68(厚さ10nm)の障壁層が交互に積層された構造とすることができる。また、他の構造として、例えばGa0.44In0.56As0.950.05からなるバルク半導体を採用することもできる。なお、光増幅層16と利得領域31とを同じ材料で構成することもできる。この場合、光増幅層16と利得領域31とを同一工程で作製することができるため、製造工程が簡素化される。
【0022】
コンタクト層5,14,17は、例えばp型Ga0.47In0.53As結晶によって構成することができる。絶縁膜6は、窒化シリコン(SiN),酸化シリコン(SiO)等の絶縁体からなる保護膜である。ヒータ20は、チタンタングステン(TiW)あるいはニッケルクロム(NiCr)等で構成された薄膜抵抗体である。ヒータ20のそれぞれは、CSG−DBR領域Bの複数のセグメントにまたがって形成されている。セグメントの詳細については後述する。
【0023】
利得制御用電極7、屈折率調整用電極8、電極15,18、電源電極21およびグランド電極22は、金等の導電性材料からなる。基板1の下部には、裏面電極10が形成されている。裏面電極10は、SG−DFB領域A、CSG−DBR領域B、SOA領域C,および光吸収領域Dにまたがって形成されている。
【0024】
端面膜11は、1.0%以下の反射率を有するAR膜であり、実質的にその端面が無反射となる特性を有する。AR膜は、例えばMgFおよびTiONからなる誘電体膜で構成することができる。反射膜12は、10%以上(一例として20%)の反射率を有するHR膜であり、反射膜12から外部に漏洩する光出力を抑制することができる。例えばSiOとTiONとを交互に3周期積層した多層膜で構成することができる。なお、ここで反射率とは、半導体レーザ内部に対する反射率を指す。反射膜12が10%以上の反射率を有しているので、外部からリア側端面に入射する迷光に対してもその侵入が抑制される。また、リア側端面から半導体レーザ100に侵入した迷光は、光吸収層13で光吸収される。それにより、半導体レーザ100の共振器部分、すなわち、SG−DFB領域AおよびCSG−DBR領域Bへの迷光の到達が抑制される。
【0025】
回折格子(コルゲーション)9は、SG−DFB領域AおよびCSG−DBR領域Bの下クラッド層2に所定の間隔を空けて複数箇所に形成されている。それにより、SG−DFB領域AおよびCSG−DBR領域Bにサンプルドグレーティングが形成される。SG−DFB領域Aにおいては、回折格子9は、下クラッド層2において、利得領域31下と屈折率可変領域32下とにそれぞれ形成されている。
【0026】
SG−DFB領域AおよびCSG−DBR領域Bにおいて、下クラッド層2に複数のセグメントが設けられている。ここでセグメントとは、回折格子9が設けられている回折格子部と回折格子9が設けられていないスペース部とが1つずつ連続する領域のことをいう。すなわち、セグメントとは、両端が回折格子部によって挟まれたスペース部と回折格子部とが連結された領域のことをいう。回折格子9は、下クラッド層2とは異なる屈折率の材料で構成されている。下クラッド層2がInPの場合、回折格子を構成する材料として、例えばGa0.22In0.78As0.470.53を用いることができる。
【0027】
回折格子9は、2光束干渉露光法を使用したパターニングにより形成することができる。回折格子9の間に位置するスペース部は、回折格子9のパターンをレジストに露光した後、スペース部に相当する位置に再度露光を施すことで実現できる。SG−DFB領域Aにおける回折格子9のピッチと、CSG−DBR領域Bにおける回折格子9のピッチとは、同一でもよく、異なっていてもよい。本実施例においては、一例として、両ピッチは同一に設定してある。また、各セグメントにおいて、回折格子9は同じ長さを有していてもよく、異なる長さを有していてもよい。また、SG−DFB領域Aの各回折格子9が同じ長さを有し、CSG−DBR領域Bの各回折格子9が同じ長さを有し、SG−DFB領域AとCSG−DBR領域Bとで回折格子9の長さが異なっていてもよい。
【0028】
続いて、半導体レーザ100の動作について説明する。まず、図示しない温度制御装置により、半導体レーザ100の温度を所定値に設定する。次に、利得制御用電極7に所定の駆動電流を注入するとともに、屈折率調整用電極8に所定の電気信号を入力する。それにより、屈折率可変領域32の等価屈折率が所定の値に調整される。その結果、SG−DFB領域Aにおいては、ピーク強度が所定の波長間隔を有する離散的な利得スペクトルが生成される。一方、電源電極21には、所定の駆動電流が供給される。それにより、各ヒータ20がCSG−DBR領域Bの光導波層19の等価屈折率が所定の値に調整される。その結果、CSG−DBR領域Bにおいては、ピーク強度が所定の波長間隔を有する離散的な反射スペクトルが生成される。利得スペクトルおよび反射スペクトルの組み合わせにより、バーニア効果を利用して、所望の波長で安定してレーザ発振させることができる。
【0029】
図2(a)は、本実施例におけるCSG−DBR領域Bの一部拡大図である。図2(a)に示すように、ヒータは回折格子が設けられた光導波路に対応して設けられることが典型的である。別の典型例では回折格子が設けられた利得部(一般にはレーザ活性層に対応する領域)に対応して設けられる場合もある。図2(b)は、図2(a)の上面図である。図1では図示が省略されていたが、図2(a)に示すように、ヒータ20の表面には、ヒータ20を構成する薄膜抵抗体の表面を保護する絶縁膜40が設けられている。
【0030】
ヒータ20は、絶縁膜6と絶縁膜40とによって挟まれている。ヒータ20が形成されていない領域では、絶縁膜40は、絶縁膜6上に形成されている。ヒータ20と接続される電源電極21およびグランド電極22は、絶縁膜40上にも延在している。典型的には、電源電極21とグランド電極22は断面略T字の形状を有している。ところで、ヒータ20を構成する薄膜抵抗体のうち、電源電極21あるいはグランド電極22との接触部分の近傍には電流の集中する部位ができやすい。しかも、この部位に対応する絶縁膜40の上には電源電極21あるいはグランド電極21が延在していることから、電源電極21あるいはグランド電極22によって生じる応力が印加されている。このように電流集中と応力印加により、薄膜抵抗体のうち、電源電極21あるいはグランド電極22との接触部分の近傍は、他の部分に比べてヒータ20の信頼性が低下する要因が大きい。
【0031】
そこで、本実施例においては、電源電極21およびグランド電極22の近傍における応力緩和の構成を設ける。具体的には、絶縁膜6の厚さをd1とし、電源電極21下およびグランド電極22下の絶縁膜40の厚さをd2とした場合に、厚さd2を厚さd1よりも大きくする。これにより、絶縁膜40上に延在した、電源電極21あるいはグランド電極22からヒータ20に印加される応力が緩和される。その結果、ヒータ20の信頼性の低下が抑制される。なお、一例として、厚さd1は、2000Åであり、厚さd2は、4000Å〜6000Å程度である。厚さd2は、厚さd1の2倍以上、さらには3倍以上であることが好ましい。
【0032】
なお、絶縁膜6,40の材料は、窒化シリコンを用いることが好ましい。絶縁膜6,40に酸素が含まれず、ヒータ20の劣化が抑制されるからである。
【実施例2】
【0033】
図3(a)は、実施例2に係るヒータ20周辺の拡大図である。図3(b)は、図3(a)の上面図である。図3(a)に示すように、絶縁膜40は、電源電極21とグランド電極22との間の領域、すなわち電源電極21あるいはグランド電極22が延在しない領域において、その厚みを小さくしてもよい。実施例1では電源電極21あるいはグランド電極22によるヒータ20への応力の印加を緩和するために、絶縁膜40の厚みを大きくした。しかし、この応力の緩和を前提に絶縁膜40の厚みを定めた場合、電源電極21およびグランド電極22が延在しない領域での絶縁膜40の厚みも大きくなってしまう。絶縁膜40は、一方でヒータ20の表面を保護する機能を提供するが、他方、その熱伝導性により、ヒータ20から発生する熱の伝達経路を提供している。本実施例では、電源電極21およびグランド電極22が延在しない領域において絶縁膜40の厚みが減じられていることから、ヒータ20から発生する熱の伝達経路を縮小できる。これにより、ヒータ20の発熱効率の向上が期待できる。
【実施例3】
【0034】
図4(a)は、実施例3に係るヒータ20周辺の拡大図である。図4(b)は、図4(a)の上面図である。図4(a)に示すように、ヒータ20に対応した領域において、絶縁膜40は、電源電極21下およびグランド電極22下においてのみ、大きい厚さを有していてもよい。本発明において絶縁膜40の厚みを大きくする理由は、電源電極21あるいはグランド電極22から、絶縁膜40を介してヒータ20に対して印加される応力を低減するためである。本実施例では、電源電極21あるいはグランド電極22が延在しない領域の絶縁膜40については、ヒータ20に対応した領域のすべてにおいて、電源電極21あるいはグランド電極22が延在する領域に比べて、その厚みその厚みを小さくしている。これにより、絶縁膜40を厚くする弊害、典型的には実施例2で説明した如きヒータ20の熱効率の低下を抑制することができる。
【実施例4】
【0035】
図5(a)は、実施例4に係るヒータ20周辺の拡大図である。図5(b)は、図5(a)の上面図である。図5(a)に示すように、実施例3と異なる点は、絶縁膜40が、2層の絶縁膜41,42によって構成されている点である。これら絶縁膜41,42は、異なる成膜工程を経て形成されている。すなわち一旦成膜温度まで昇温した後、常温にまで降温する工程が介在する。これにより、絶縁膜40を一度に全部の厚さだけ成長するよりも、熱履歴が介在する分、ヒータ20に対する応力の抑制が期待できる。これは、電源電極21およびグランド電極22が延在する部分の絶縁膜40の厚みを本発明により大きくしたことによる、ヒータ20上のとりわけ電源電極21およびグランド電極22が延在しない部分における応力対策として有効である。
【0036】
図6(a)〜図8(b)は、図5(a)の構成の製造プロセスを表す図である。まず、図6(a)に示すように、基板1上に、下クラッド層2、光導波層19、上クラッド層4、絶縁膜6を形成する。その後、絶縁膜6上にヒータ20を形成し、パターニングによってヒータ20を所望の形状にする。次に、図6(b)に示すように、ヒータ20および絶縁膜6の露出部分が覆われるように、絶縁膜41を形成する。絶縁膜41の形成後、徐冷して常温に戻す。必要があれば、チャンバから半導体チップを取り出す。チャンバから取り出す場合には、半導体チップを洗浄してもよい。なお、絶縁膜41の厚さは、2000Å程度である。
【0037】
次に、図7(a)に示すように、絶縁膜41上に絶縁膜42を形成する。絶縁膜42の厚さは、絶縁膜41の厚さよりも大きいことが好ましい。例えば、絶縁膜42の厚さは、6000Å程度である。次に、図7(b)に示すように、電源電極21およびグランド電極22を設ける箇所において、エッチングにより絶縁膜41および絶縁膜42に窓を形成する。
【0038】
次に、図8(a)に示すように、図7(b)で形成された窓に、メッキにより電源電極21およびグランド電極22を形成する。メッキにより電源電極21およびグランド電極22を形成することから、電源電極21およびグランド電極22は、絶縁膜41,42の窓よりも広がって形成される。それにより、電源電極21およびグランド電極22は、断面略T字状となる。次に、図8(b)に示すように、電源電極21およびグランド電極22をエッチングマスクとして用いて、ドライエッチングを行う。それにより、電源電極21とグランド電極22との間における絶縁膜42の厚さが低減される。以上の工程により、製造プロセスが完結する。
【0039】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 基板
2 下クラッド層
4 上クラッド層
6 絶縁膜
20 ヒータ
21 電源電極
22 グランド電極
40 絶縁膜
100 半導体レーザ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8