特開2015-7027(P2015-7027A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-7027(P2015-7027A)
(43)【公開日】2015年1月15日
(54)【発明の名称】固形製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/726 20060101AFI20141212BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20141212BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20141212BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20141212BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20141212BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20141212BHJP
   A61K 36/18 20060101ALI20141212BHJP
【FI】
   A61K31/726
   A61P19/02
   A61K9/20
   A61K47/18
   A61K47/46
   A61K31/198
   A61K35/78 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-102091(P2014-102091)
(22)【出願日】2014年5月16日
(31)【優先権主張番号】特願2013-113999(P2013-113999)
(32)【優先日】2013年5月30日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤原 健太
(72)【発明者】
【氏名】藤原 将平
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA37
4C076BB01
4C076CC09
4C076DD26
4C076DD29
4C076DD41
4C076DD51
4C076EE32
4C076EE33
4C076EE57
4C076EE58
4C076FF05
4C076GG14
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA35
4C086NA03
4C086ZA96
4C088AB12
4C088AC01
4C088BA07
4C088BA08
4C088MA02
4C088MA35
4C088NA03
4C088ZA96
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA53
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA06
4C206MA55
4C206NA03
4C206ZA96
(57)【要約】
【課題】グルコサミンの結晶粉末は硬度を得にくい物性を有しているため、得られる錠剤の形状安定性が低くその流通過程において破損が生じ商品価値が低下するという問題があった。また、一般に結晶粉末は、流動性が悪く、打錠機の臼への均一な充填が悪くなり、錠剤の質量がばらつく等の不具合が生じるという問題があった。本発明は、良好な形状安定性を有し、かつ錠剤質量のばらつきが小さいグルコサミン含有錠剤を得ることを課題とする。
【解決手段】本発明は、グルコサミン、デビルズクロー、バリン、ロイシン、及びイソロイシンを配合したことを特徴とする錠剤である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルコサミン、デビルズクロー、バリン、ロイシン及びイソロイシンを配合したことを特徴とする錠剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルコサミンを配合した錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
グルコサミンはグルコースの2位の水酸基がアミノ基に置換した2−アミノグルコースであり、自然界に幅広く分布する天然アミノ糖である。工業的にはカニ、エビなどの甲殻類に含まれるキチンを酸又は酵素により加水分解し、分離、精製することによって得られる。近年、グルコサミンの摂取による様々な有効性が確認され、変形性関節症の治療・予防を目的としたサプリメントとして市場に供給されている。
グルコサミン含有サプリメントの製品形態としては様々なものがあるが、その一つである錠剤は、携帯が容易であり、また摂取時に量を計測せずとも一定量を服用することが出来るので、最もよく用いられている形態の一つである。
しかしながら、グルコサミンの結晶粉末は硬度を得にくい物性を有しているため、得られる錠剤の形状安定性が低くその流通過程において破損が生じ商品価値が低下するという問題があった。また、一般に結晶粉末は、流動性が悪く、打錠機の臼への均一な充填が悪くなり、錠剤の質量がばらつく等の不具合が生じるという問題があった。
このような課題に対して、特許文献1では糖類を含有した溶液を噴霧しながら造粒加工することでグルコサミンの有する物理的特性の改善方法が開示されている。また、特許文献2においては水溶性セルロース誘導体を添加しながら造粒加工することでグルコサミンの有する物理的特性の改善方法が開示されている。
しかしながら、特許文献1のグルコサミン含有錠剤は、グルコサミンに多量の糖類溶液を噴霧する必要があり、特許文献2の方法は湿式造粒を必須とするため、製造時間を要するという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−36644号公報
【特許文献2】特開2010−285381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、湿式造粒を施さなくても、良好な形状安定性を有し、かつ錠剤質量のばらつきが小さいグルコサミン含有錠剤を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を達成するため鋭意検討した結果、グルコサミン、デビルズクロー、バリン、ロイシン、及びイソロイシンを配合した錠剤は、良好な形状安定性を有し、かつ質量のばらつきが小さい錠剤が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、
グルコサミン、デビルズクローエキス、バリン、ロイシン及びイソロイシンを配合したことを特徴とする錠剤、
である。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、良好な形状安定性を有し、かつ錠剤質量のばらつきが小さいグルコサミン含有錠剤を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のグルコサミンは、結晶又は非結晶の何れを用いても良い。本発明によれば、結晶グルコサミンを用いても良好な形状安定性を有し、錠剤の質量ばらつきも小さい錠剤が得られる。
【0009】
本発明のグルコサミンとは、グルコサミンそのもののほか、グルコサミンの塩又はNアセチルグルコサミンを用いることができる。これらのうち、好ましいのは熱に安定で褐変し難いグルコサミンの塩である。また、グルコサミンの塩としては、例えば塩酸グルコサミン、硫酸グルコサミン、発酵グルコサミンが挙げられるが、塩酸グルコサミンが好ましい。また、本発明の錠剤中におけるグルコサミンの含有量は、10〜85質量%が好ましい。
【0010】
本発明のデビルズクローは、ゴマ科シデシヤジ属の植物であり、そのまま植物末として、また、水、極性溶媒、それらの混合溶媒などで抽出したエキスとして使用することができる。本発明の錠剤中におけるデビルズクローの含有量は、0.1〜20質量%が好ましい。
【0011】
本発明のバリン、ロイシン及びイソロイシンは、分岐鎖を有する必須アミノ酸(BCAA)である。本発明においてバリン、ロイシン及びイソロイシンの配合比はとりわけ限定されるものではないが、バリンとロイシンとイソロシンの重量比で1:0.5〜5:1の範囲が好ましい。また、本発明におけるバリン、ロイシン、イソロイシンは必要に応じて分級、粉砕、表面処理等の工程を付与してもよい。本発明の錠剤中におけるバリンの含有量は、0.1〜20質量%が好ましく、ロイシンの含有量は、0.1〜20質量%が好ましく、及びイソロイシンの含有量は、0.1〜20質量%が好ましい。本発明のバリン、ロイシン及びイソロイシンは、任意の組み合わせで配合することができる。また、全てが1種の製剤中に含有された製剤を使用してもよく、そのような製剤として、例えば協和発酵バイオ社製のBCAA211が挙げられる。
【0012】
本発明のグルコサミン含有錠剤には、本発明の効果に支障のない限り、必要に応じて内服用の錠剤の製造に汎用される公知の添加剤を含んでも良い。
【0013】
本発明の錠剤の製造に当たっては、特に制約なく従来から行われている製造方法を使用することができる。例えば以下の方法が挙げられる。
グルコサミン、デビルズクロー、バリン、ロイシン、イソロイシン及び必要に応じて他の成分及び添加剤を混合して粉末を調製し、直接打錠法または必要によっては常法により造粒して造粒物を得た後、打錠することにより得ることができる。造粒する場合は、造粒方法は特に制限されず、湿式造粒法及び乾式造粒法のどちらで製造しても良いが、造粒過程のない直接打錠法もしくは乾式造粒法が好ましい。
【実施例】
【0014】
以下に、実施例、比較例及び試験例を挙げ、本発明を更に詳細に説明する。なお、比較例及び実施例の塩酸グルコサミンは、甲陽ケミカル社製のコーヨーグルコサミン、デビルズクローエキスはインデナジャパン社製のデビルズクローエキス、バリン、ロイシン、イソロイシンは協和発酵バイオ社製のBCAA211(バリン25%、ロイシン50%、イソロイシン25%の混合物)を使用した。
【0015】
(実施例1)
塩酸グルコサミン 1050.0g
デビルズクローエキス 140.0g
BCAA211 70.0g
(バリン 17.5g)
(ロイシン 35.0g)
(イソロイシン 17.5g)
サンゴカルシウム 259.0g
カルシウムHMB 250.0g
乳タンパク質 28.0g
結晶セルロース 607.5g
ヒドロキシプロピルセルロース 280.0g
微粒二酸化ケイ素 49.0g
カルメロースカルシウム 49.0g
ステアリン酸カルシウム 25.9g
上記成分を秤量、混合し、目開き500μmの篩に通した後、再度混合し、打錠用粉体を得た。得られた打錠用粉体をロータリー式打錠機で直径9.0mm、1錠当たりの重量334.4mgとなるように製錠し、錠剤を得た。
【0016】
(実施例2)
塩酸グルコサミン 1050.0g
デビルズクローエキス 140.0g
BCAA211 70.0g
(バリン 17.5g)
(ロイシン 35.0g)
(イソロイシン 17.5g)
サンゴカルシウム 259.0g
カルシウムHMB 250.0g
乳タンパク質 28.0g
結晶セルロース 746.7g
ヒドロキシプロピルセルロース 280.0g
微粒二酸化ケイ素 28.0g
カルメロースカルシウム 56.0g
ステアリン酸カルシウム 31.5g
ビタミンD3 0.7g
上記成分を秤量、混合し、目開き500μmの篩に通した後、再度混合し、打錠用粉体を得た。得られた打錠用粉体をロータリー式打錠機で直径9.0mm、1錠当たりの重量350.0mgとなるように製錠し、錠剤を得た。
【0017】
(比較例1)
塩酸グルコサミン 1050.0g
デビルズクローエキス 0.0g
BCAA211 70.0g
(バリン 17.5g)
(ロイシン 35.0g)
(イソロイシン 17.5g)
サンゴカルシウム 259.0g
カルシウムHMB 250.0g
乳タンパク質 28.0g
結晶セルロース 607.5g
ヒドロキシプロピルセルロース 280.0g
微粒二酸化ケイ素 49.0g
カルメロースカルシウム 49.0g
ステアリン酸カルシウム 25.9g
ビタミンD3 0.7g
上記成分を秤量、混合し、目開き500μmの篩に通した後、再度混合し、打錠用粉体を得た。得られた打錠用粉体をロータリー式打錠機で直径9.0mm、1錠当たりの重量317.8mgとなるように製錠し、錠剤を得た。
【0018】
(比較例2)
塩酸グルコサミン 1050.0g
デビルズクローエキス 140.0g
BCAA211 0.0g
(バリン 0.0g)
(ロイシン 0.0g)
(イソロイシン 0.0g)
サンゴカルシウム 259.0g
カルシウムHMB 250.0g
乳タンパク質 28.0g
結晶セルロース 530.5g
ヒドロキシプロピルセルロース 280.0g
微粒二酸化ケイ素 49.0g
カルメロースカルシウム 49.0g
ステアリン酸カルシウム 25.9g
ビタミンD3 0.7g
上記成分を秤量、混合し、目開き500μmの篩に通した後、再度混合し、打錠用粉体を得た。得られた打錠用粉体をロータリー式打錠機で直径9.0mm、1錠当たりの重量326.1mgとなるように製錠し、錠剤を得た。
【0019】
試験例1:錠剤の質量ばらつきの測定
実施例1、2及び比較例1、2で製造した錠剤100錠につき質量を測定し、下記の[数1]により質量のばらつきを算出した。結果を表1に示す。
【0020】
【数1】
【0021】
試験例2:錠剤の硬度の測定
実施例1、2及び比較例1、2で製造した錠剤10錠につき硬度計を用いて錠剤の硬度を測定し、その平均値を算出した。結果を表1に示す。
【0022】
試験例3:錠剤の破損度の測定
実施例1、2及び比較例1、2で製造した錠剤50錠につき錠剤摩損度試験機を用いて15分間錠剤の破損試験を実施した。試験後、目視により破損した(割れ・欠けのある)錠剤数を計測し、破損度とした。結果を表1に示す。
【0023】
上記の試験例1〜3の試験結果をもとに、質量偏差の評価及び形状安定性の評価を下記判定基準に従い実施した。結果を表1に示す。
【0024】
質量のばらつき判定基準:「2.5未満=○」、「2.5〜3.0未満=△」、「3.0〜=×」
形状安定性判定基準:「破損度0=○」、「破損度1以上=×」
【0025】
【表1】
【0026】
試験結果
表1より、比較例1の錠剤は、錠剤硬度が十分でなく、錠剤の割れや欠けが生じ、錠剤の質量ばらつきも生じた。また比較例2の錠剤は質量ばらつきが大きかった。一方、実施例1および実施例2においては、錠剤の質量ばらつきが低く、形状安定性も良好であり、商品性の高い錠剤の提供が可能であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明により、良好な形状安定性を有し、かつ錠剤質量のばらつきの小さいグルコサミン含有錠剤の提供が可能となった。