【課題】二輪車の車種によって異なる前後輪間隔に応じて、後輪を支持する位置と前輪を固定する位置を個別に調整する作業が不要であり、後輪を支持する位置と前輪を固定する位置の適切な相対位置関係を、作業者が特に意識することなくスムーズ且つ容易に確保することが可能な二輪車発電装置の提供。
【解決手段】発電機と、自動二輪車Mの後輪RTを回転可能に支持し且つ発電機に連結された後輪支持ローラ3と、二輪車Mの前輪FTを載せ置いた状態で固定可能な前輪載置固定部4と、前輪載置固定部4を後輪支持ローラ3に対して前後方向Aに移動可能に支持する支持部5とを備えた発電装置にした。
前記前輪載置固定部が、前記前輪の一方の側面と対向する位置に設けられ且つ略垂直な垂直ガイド面と、前記前輪の他方の側面から当該前輪に近付く方向に移動させて当該前輪を前記垂直ガイド面に向かって押し付ける押付部とを備えたものである請求項1に記載の二輪車発電装置。
前記前輪載置固定部が、前記前輪の一方の側面と対向する位置に設けられ且つ略垂直な垂直ガイド面と、前記前輪の他方の側面と対向する位置に設けられ且つ前記前輪の幅方向における前記垂直ガイド面との離間距離が下端よりも上端が大きくなるように所定角度傾斜させた傾斜ガイド面とを備えている請求項1に記載の二輪車発電装置。
前記前輪載置固定部が、前記前輪の一方の側面と対向する位置に設けられ且つ略垂直な垂直ガイド面と、前記前輪の他方の側面から当該前輪に近付く方向に移動させて当該前輪を前記垂直ガイド面に向かって押し付ける押付部と、前記前輪の他方の側面と対向する位置に設けられ且つ前記前輪の幅方向における前記垂直ガイド面との離間距離が下端よりも上端が大きくなるように所定角度傾斜させた傾斜ガイド面とを備えている請求項1に記載の二輪車発電装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前輪が単に地面に接地している状態では、ハンドルを切ることが可能であるため、ハンドルの切り加減によっては二輪車全体が倒れるおそれもあり、不安定な状態であるといえる。
【0006】
特許文献2の
図3には、前輪をスタンドで保持する構成が開示されている。このような前輪専用のスタンドによってハンドルを切れない状態、またはハンドルの切り加減が所定範囲に制約された状態を維持することが可能であると考えられる。
【0007】
しかしながら、特許文献2の
図3に開示されている構成は、前輪専用のスタンドと、後輪を回転可能に支持するローラとを共通の載置台に固定している構成であるため、前輪と後輪との距離(前後輪間隔)が、前輪専用のスタンドと後輪を支持するローラとの距離に対応する二輪車を載置台上に載置することができるものの、前後輪間隔がスタンドとローラとの距離に対応していない二輪車を載置台上に載置することはできず、載置台上に載置可能な二輪車の車種が限定され、実用性に劣る。
【0008】
さらに、設計上(仕様上)では載置台上に載置可能な二輪車であっても、載置台上におけるスタンドやローラの実際の固定位置が正規の固定位置からずれていれば、スタンド及びローラにそれぞれ前輪、後輪を載置したり、支持させることができない事態も生じ得る。
【0009】
このような事態が生じることを想定して、例えばスタンドとローラを共通の載置台上に固定せず、個別に取り扱い可能に構成し、電力供給が要求される現場において、スタンドとローラの配置を二輪車の前輪、後輪の位置に合わせて微調整する態様も考えられる。
【0010】
しかしながら、現場での作業者が一人である場合には、各車輪をそれぞれ個別にスタンドに載置したり、ローラに乗り上げさせる作業をスムーズ且つ安全に行うことは困難であり、発電処理を実施するに際して要求される二輪車の安定状態の確保に、多くの時間や労力を要することになる。特に、二輪車が原動機付自転車を含む自動二輪車である場合にはその重量に起因して、上述の不具合は顕著に現れる。
【0011】
本発明は、このような不具合に着目してなされたものであって、主たる目的は、後輪をローラに支持させるとともに前輪を固定することで二輪車の安定した状態を確保しつつ、二輪車の車種によって異なる前後輪間隔に応じて、後輪を支持する位置と前輪を固定する位置を個別に調整する作業が不要であり、実際に用いる二輪車の前後輪間隔に応じて、後輪を支持する位置と前輪を固定する位置の適切な相対位置関係を、作業者が特に意識することなくスムーズ且つ容易に確保することが可能な二輪車発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち本発明は、二輪車を用いて発電可能な二輪車発電装置に関するものであり、発電機と、二輪車の後輪を回転可能に支持し且つ発電機に連結された後輪支持ローラと、二輪車の前輪を載置した状態で固定可能な前輪載置固定部と、前輪載置固定部を後輪支持ローラに対して前後方向に移動可能に支持する支持部とを備えていることを特徴としている。
【0013】
ここで、本発明における二輪車は、自動二輪車及び自転車の両方を包含するものである。また、本発明における「前後方向」は、後輪支持ローラと前輪載置固定部とが並ぶ方向と同一方向であり、また、二輪車の前後方向と一致する方向でもある。また、本発明における後輪支持ローラは、単独で二輪車の後輪を回転可能に支持するものであってもよいし、後輪支持ローラ以外のパーツ(そのパーツがローラである場合も含む)と協働して後輪を回転可能に支持するものであってもよい。
【0014】
このような二輪車発電装置であれば、後輪支持ローラに後輪を支持させつつ、前輪載置固定部によって前輪を載置した状態で固定することで、二輪車のハンドルが自由に切れることを制限し、二輪車の安定した状態を確保することができるとともに、支持部によって前輪載置固定部を後輪支持ローラに対して前後方向に移動可能に支持しているため、載置固定部を前後方向に移動させることで前輪載置固定部と後輪支持ローラの相対位置を容易に変更・調整することができる。
【0015】
したがって、本発明の二輪車発電装置であれば、この発電装置上に実際に載置して搭載する二輪車の前後輪間隔に応じて予め後輪支持ローラと前輪載置固定部の適切な相対位置を決定して、それらの位置に後輪支持ローラや前輪載置固定部を正確に配置するという処理を行わずとも、以下の手順及び作用によって、二輪車を安定した状態で二輪車発電装置上にセットすることができる。つまり、本発明の二輪車発電装置であれば、例えば、作業者が二輪車を二輪車発電装置よりも後方から二輪車発電装置の前方に向かって移動させる処理を行う過程で、先ず後輪支持ローラを通過して前輪載置固定部に到達した前輪を前輪載置固定部で固定することによって、二輪車のハンドルを自由に切れない状態に維持する。この状態、すなわちハンドルの自由度を制限して二輪車の転倒を回避可能な安定した状態で、作業者が引き続いて二輪車全体を前方へ移動させた場合、本発明の二輪車発電装置であれば、前輪載置固定部が前輪を固定した状態で前輪と一体となって前方へ移動し、後輪支持ローラに対する前輪載置固定部の位置を変更することができる。このことを利用して、後輪が後輪支持ローラに支持される位置まで二輪車全体を前方へ移動させれば、後輪支持ローラに対する前輪載置固定部の位置を二輪車の前後輪間隔に応じた適切な位置に自ずと調節することができる。
【0016】
このような本発明に係る二輪車発電装置であれば、前後輪間隔が異なる複数種類の二輪車にも好適に対応することができ、後輪支持ローラの支持対象である後輪と前輪載置固定部の固定対象である前輪との離間距離に最適な後輪支持ローラと前輪載置固定部との相対位置を、二輪車を二輪車発電装置に実際にセットする処理を通じて容易に確保することができる。
【0017】
そして、本発明に係る二輪車発電装置は、後輪支持ローラで支持している二輪車の後輪を駆動させることによって後輪支持ローラを回転させて、この後輪支持ローラに連結している発電機を駆動させて発電することができる。また、本発明に係る二輪車発電装置は、二輪車に通常備え付けられているスタンドを使用することなく、二輪車の安定した自立状態を確保することができる点においても有利である。
【0018】
特に、本発明に係る二輪発電装置において、前輪載置固定部による前輪の良好な固定状態を実現して、二輪車の転倒防止に大きく貢献する構成としては、前輪載置固定部に、前輪の一方の側面と対向する位置に設けられ且つ略垂直な垂直ガイド面と、前輪の他方の側面から前輪に近付く方向に移動させてこの前輪を垂直ガイド面に向かって押し付ける押付部とを設けた構成を挙げることができる。
【0019】
このような前輪載置固定部であれば、押付部によって前輪の一方の側面を垂直ガイド面に圧接させた状態で垂直ガイド面と押付部との間に前輪を強固に挟み込むことができる。また、このような前輪載置固定部であれば、垂直ガイド面に近付く方向に押付部を移動させる量を適宜調整することができるため、幅が異なる異種サイズの前輪にも対応することができる。
【0020】
また、本発明における前輪載置固定部として、前輪の一方の側面と対向する位置に設けられ且つ略垂直な垂直ガイド面と、前輪の他方の側面と対向する位置に設けられ且つ前輪の幅方向における垂直ガイド面との離間距離が下端よりも上端が大きくなるように所定角度傾斜させた傾斜ガイド面とを備えたものを採用することができる。このような前輪載置固定部によれば、傾斜ガイド面の勾配によって前輪をその一方の側面が垂直ガイド面に接触または近接する位置まで自動的に幅方向に移動させる(幅寄せする)ことができ、前輪の一方の側面を垂直ガイド面に接触または近接させることで二輪車の転倒を防止・抑制することができる。
【0021】
さらにはまた、本発明における前輪載置固定部として、前輪の一方の側面と対向する位置に設けられ且つ略垂直な垂直ガイド面と、前輪の他方の側面から前輪に近付く方向に移動させてこの前輪を垂直ガイド面に向かって押し付ける押付部と、前輪の他方の側面と対向する位置に設けられ且つ前輪の幅方向における垂直ガイド面との離間距離が下端よりも上端が大きくなるように所定角度傾斜させた傾斜ガイド面とを備えたものを採用することができる。このような前輪載置固定部であれば、上述した垂直ガイド面と押付部とによって得られる作用効果、及び垂直ガイド面と傾斜ガイド面とによって得られる作用効果を奏する二輪車発電装置となり、二輪車の転倒をより一層確実に防止することが期待できる。
【0022】
加えて、本発明の二輪車発電装置において、後輪を後輪支持ローラに押し付けた状態で二輪車の車体を固定する車体固定部を備えることで、この車体固定部によって車体を固定するのみならず、後輪支持ローラに対する後輪の良好な接触状態を確保することができるとともに、駆動中の後輪が後輪支持ローラの軸方向(幅方向)に滑らない状態または極めて滑り難い状態を確保することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の二輪車発電装置によれば、作業者自身による例えば工具を用いた特別な処理や、予め後輪支持ローラ及び前輪載置固定部を二輪車の前後輪間隔に応じて適切な位置に配置する処理を一切要求することなく、二輪車両をこの発電装置に単に乗せる作業を通じて、前輪載置固定部を二輪車両の車種ごとに異なる前後輪間隔に応じた最適な位置にまで移動させることができ、後輪を支持する位置と前輪を固定する位置の適切な相対位置関係を、作業者が特に意識することなくスムーズ且つ容易に確保することができる。また、本発明の二輪車発電装置によれば、前輪載置固定部で前輪を固定することによって、二輪車の安定した状態を確保することができるため、後輪支持ローラに後輪を支持させるために二輪車全体を移動させる際にも、その時点よりも前の時点で前輪載置固定部に前輪を固定することで、二輪車全体を安定させた状態で移動させることができるとともに、後輪を駆動させて発電する場合にも、二輪車の安定状態を維持することができ、安全性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0026】
本実施形態に係る二輪車発電装置1は、原動機付自転車(以下では「自動二輪車M」と称す)を駆動源として発電機2を駆動させることによって発電可能なものである。
【0027】
二輪車発電装置1は、
図1乃至
図5(
図1は二輪車発電装置1に自動二輪車Mを搭載した状態の側面図であり、
図2及び3は二輪車発電装置1を相互に異なる方向から見た斜視図であり、
図4は
図2のX方向矢視図であり、
図5は二輪車発電装置1の平面図である)に示すように、発電機2と、自動二輪車Mの駆動輪である後輪RTを回転可能に支持する後輪支持ローラ3と、自動二輪車Mの前輪FTを固定可能な前輪載置固定部4と、前輪載置固定部4を後輪支持ローラ3に対して前後方向Aに移動可能に支持する支持部5とを備えたものである。ここで、「前後方向A」とは、
図1乃至
図5に示す二輪車発電装置1の二輪車搭載可能状態(以下では、搭載可能状態と称す)において後輪支持ローラ3と前輪載置固定部4が対向する方向であり、自動二輪車Mの前後方向と一致する。なお、
図2乃至
図5では自動二輪車Mを省略している。
【0028】
本実施形態では、発電機2(
図5参照)と後輪支持ローラ3とを図示しない駆動伝達機構を介して連結し、発電機2及び後輪支持ローラ3をユニット化している。以下では、このユニットを発電機ユニットU1と称する。駆動伝達機能の具体的な構成は特に限定されるものではない。
【0029】
発電機ユニットU1は、
図1乃至
図6(
図6は発電機ユニットU1単体の斜視図である)に示すように、発電機2を収納する発電機収納ボックスU11と、上方に開口した内部空間に後輪支持ローラ3及び後述するサブローラ6を配置可能なローラ収容部U12とを一体又は一体的に備えたものである。本実施形態では、発電機収納ボックスU11及びローラ収容部U12の前後方向Aの寸法を同一または略同一に設定し、発電機収納ボックスU11をローラ収容部U12の一側方に配置している。
【0030】
後輪支持ローラ3は、ローラ軸31と、ローラ軸31周りに一体回転可能に設けたローラ本体32とを備えたものである(
図5参照)。ローラ軸31の一端部を発電機2のシャフトに駆動伝達機構を介して接続している。したがって、後輪支持ローラ3に接触している後輪RTが回転すると、その回転力が発電機2を駆動するエネルギー(駆動力)となり、発電することができる。
【0031】
本実施形態の二輪車発電装置1は、後輪支持ローラ3の前方にサブローラ6を配置している。本実施形態では、後輪支持ローラ3と略同一サイズのサブローラ6を適用し、このサブローラ6と後輪RTの接触部分が後輪支持ローラ3と後輪RTの接触部分よりも前方となるようにサブローラ6の配置箇所を設定している。サブローラ6の軸は発電機2のシャフトに接続されていない。したがって、サブローラ6に接触している後輪RTが回転すると、サブローラ6は空転することになる。後輪支持ローラ3及びサブローラ6は、何れもローラ収容部U12の上方開口部を通じて、外周面のうち鉛直方向上端を中心として正逆方向にそれぞれ所定角度分に相当する領域をローラ収容部U12の外部に露出させて、発電機ユニットU1上を通過する自動二輪車Mの前輪FTや、搭載可能状態における後輪RTが、ローラ収容部U12の上向き面よりも後輪支持ローラ3及びサブローラ6に優先して接触するように設定している。なお、後輪支持ローラ3及びサブローラ6の軸方向長さ(幅方向Bの寸法)は、後輪RTの幅方向の寸法よりも十分に大きい長さに設定している。
【0032】
前輪載置固定部4は、
図2乃至
図5、
図7乃至
図10(
図7は、後述する前輪搭載ユニットU2の全体斜視図であり、
図8は
図7のY方向矢視図であり、
図9は前輪搭載ユニットU2の平面図であり、
図10は
図8のX方向矢視図である)に示すように、前後方向Aに延伸し且つ前輪FTを載置可能な底部41と、底部41の前端から上方に起立し且つ前輪FTの前縁が当たるストッパ42と、前輪FTの一方の側面と対向する位置に設けられ且つ略垂直なガイド面(垂直ガイド面43a)を有する垂直ガイド部43と、前輪FTの他方の側面から前輪FTを垂直ガイド面43aに向かって押し付ける方向に移動可能な押付部44と、前輪FTの他方の側面と対向する位置に設けられ且つ垂直ガイド面43aに対する離間距離が下端よりも上端を大きく設定した傾斜ガイド面45aを有する傾斜ガイド部45とを備えている。
【0033】
底部41は、平板状の底部本体411と、底部本体411の両側縁からそれぞれ上方に起立する底部側壁412とを有する断面形状上向きコ字状(桶状)のものである。
【0034】
垂直ガイド部43は、底部41のうち底部41の幅方向B中心よりも一方の側縁に寄った位置に垂直姿勢で配置される垂直ガイド本体431と、垂直ガイド本体431の下端から傾斜ガイド面45aに対して離間する方向に延伸し且つ底部41の上向き面に載置した状態で固定される固定底壁432とを備えたものである(
図9等参照)。本実施形態では垂直ガイド本体431及び固定底壁432を一体に形成している。また、垂直ガイド本体431の内向き面が垂直ガイド面43aとして機能する。垂直ガイド部43のうち垂直ガイド本体431には、後端に近付くにつれて漸次底部41の幅方向B中心から離間する方向に所定角度で突出させた第一後方突出部43bを設けている。本実施形態では、垂直ガイド部43の前端をストッパ42の側縁に連続させている。また、本実施形態の垂直ガイド部43は、前端部分の上端を他の部分の上端よりも高い位置に設定し、ストッパ42に前縁が当たった前輪FTの一方の側面に対する垂直ガイド面43aの良好な接触状態を確保できるようにしている。
【0035】
押付部44は、
図2乃至
図5、
図7乃至
図10に示すように、垂直ガイド部43との間で前輪FTを挟む位置に配置したものである。本実施形態では、垂直ガイド部43の前端部分との間で前輪FTを挟む位置に押付部44を配置している。押付部44は、垂直ガイド面43aに対して接離動作(幅方向Bに進退動作)可能な可動体441と、可動体441を垂直ガイド面43aに対して接離移動させる操作力を付与するための操作部442とを備えている。本実施形態では、可動体441を、垂直ガイド部43に対向する起立壁443に進退動作可能に支持させている。より具体的には、垂直ガイド部43のうち前端部分に対向する起立壁443の内向き面にナット体444を固定し、可動体441のうち外周面にネジを切ったネジ軸部分をナット体444に螺合進退動作可能に保持させている。可動体441の先端部(垂直ガイド部43側の端部)には前輪FTの側面に可動体441よりも優先して接触する板状の押圧板445を設けている。また、可動体441の基端部(垂直ガイド部43から遠い方の端部)に設けた操作部442は、作業者が把持可能な把持部446(図示例ではハンドルレバー)を備え、作業者が把持部446を握って操作部442全体を所定方向に回転させる操作力を付与すると、その操作力に伴って、可動体441が幅方向Bに進退移動する。
図2、
図3及び
図5では、可動体441が垂直ガイド面43aから最も離れた位置(後退位置)にある状態を示し、
図7、
図9及び
図10では、可動体441が垂直ガイド面43aに接近した位置(前進位置)にある状態を示している。
【0036】
本実施形態の前輪載置固定部4では、ストッパ42、垂直ガイド部43及び起立壁443を一体に形成している(
図3、
図7参照)。なお、これらストッパ42、垂直ガイド部43及び起立壁443をそれぞれ個別に形成した態様を採用することもできる。
【0037】
傾斜ガイド部45は、
図2乃至
図5、
図7乃至
図10に示すように、垂直ガイド部43との間で前輪FTを幅方向Bに挟む位置において鉛直方向に対して所定角度傾斜させた傾斜ガイド面45aを有するものである。傾斜ガイド面45aは、下端から上端に向かって垂直ガイド面43aから漸次離間する方向に所定角度傾斜させたフラットな面である。本実施形態では、内向き面を傾斜ガイド面45aとして機能させる傾斜ガイド本体451と、傾斜ガイド本体451の下端から垂直ガイド面43aに向かって延伸し且つ底部41の上向き面に載置した状態で固定される第一固定底壁452と、傾斜ガイド本体451の上端から鉛直方向に垂下する垂下壁453と、垂下壁453の下端から垂直ガイド面43aに対して離間する方向に延伸し且つ底部41の上向き面に載置した状態で固定される第二固定底壁454とを一体に形成している。そして幅方向Bに向かい合う傾斜ガイド面45aと垂直ガイド面43aとの間に前輪FTを通過させた場合に、傾斜ガイド面45aの勾配によって前輪FTを垂直ガイド面43aの方に寄せることができるように構成している。つまり、本実施形態の前輪載置固定部4は、幅方向Bに向かい合う傾斜ガイド面45aと垂直ガイド面43aとの間のスペースを、前輪FTを垂直ガイド面43aに向かって幅寄せする幅寄せスペース4Sとして機能させている(
図9、
図10参照)。さらに、本実施形態の傾斜ガイド本体451には、垂直ガイドの第一後方突出部43bとともに幅寄せスペース4Sへの導入口(入口)を形成する第二後方突出部45bを設け、この第二後方突出部45bを、後端に近付くにつれて垂直ガイド部43から漸次離間する方向に所定角度で突出させている。このような第一後方突出部43b及び第二後方突出部45bによって、幅寄せスペース4Sへの導入口を幅寄せスペース4Sのうち奥方部分よりも広い開口幅寸法に設定することが可能になり、垂直ガイド面43aと傾斜ガイド面45aとの間、つまり幅寄せスペース4Sに前輪FTを進入させる処理をスムーズに行うことができる。本実施形態では、傾斜ガイド部45を押付部44よりも後方に配置している。
【0038】
また、本実施形態の前輪載置固定部4は、前後方向Aに延伸する底部41のうち前端側領域に垂直ガイド部43、押付部44及び傾斜ガイド部45を設け、底部41の後端側領域に、前輪FTを垂直ガイド面43aと傾斜ガイド面45aとの間(幅寄せスペース4S)に案内ガイドするガイドレール46を設けている。また、本実施形態の前輪載置固定部4は、底部41のうち左右一対の底部側壁412に、後述するスライド孔52に係合可能なスライドピン47を設けるとともに、底部41のうち底部本体411の下向き面に底部41よりも優先して発電装置設置面fに接地した状態で発電装置設置面f上を転動可能なキャスタ48を設けている。本実施形態では、底部41の前端近傍における所定位置に幅方向B中心を挟んで複数のキャスタ48を設けている。なお、キャスタ48の取付位置や個数は適宜変更することができる。
【0039】
前輪載置固定部4を後輪支持ローラ3に対して前後方向Aに移動可能に支持する支持部5は、
図2乃至
図5、
図7乃至
図10に示すように、前後方向Aに延伸する固定レール51を主たる構成パーツとするものである。
【0040】
固定レール51は、平板状の固定レール底壁511と、固定レール底壁511の両側縁からそれぞれ上方に起立する固定レール側壁512とを一体又は一体的に有する断面形状上向きコ字状(桶状)のものである。本実施形態では、固定レール51の幅寸法を前輪載置固定部4の幅寸法よりも所定寸法大きく設定し、固定レール51の幅方向B中心を前輪載置固定部4の幅方向B中心と一致又は略一致させた状態で前輪載置固定部4を固定レール51の内側にテレスコープ状に配置可能に構成している。また、左右一対の固定レール側壁512にそれぞれスライド孔52を形成し、各スライド孔52に、前輪載置固定部4に設けたスライドピン47を係合させることによって、支持部5と前輪載置固定部4を相互に組み付けている。具体的には、前輪載置固定部4の底部側壁412を固定レール側壁512の内向き面に接触又は近接させてスライドピン47を固定レール側壁512のスライド孔52に係合させることによって、支持部5と前輪載置固定部4を相互に組み付けている。
【0041】
本実施形態の二輪車発電装置1は、組付状態にある支持部5及び前輪載置固定部4を前輪搭載ユニットU2としてユニット化している。前輪搭載ユニットU2は、前輪載置固定部4を支持部5によって前後方向Aに移動可能に支持する構成であり、いわば、前輪載置固定部4を、支持部5に対して前後方向Aに移動可能なスライダとして機能させた構成である。
【0042】
本実施形態では、固定レール底壁511の後端部(換言すれば、前輪搭載ユニットU2の後端部)に、発電機ユニットU1に設けた被挿込部U13(
図6参照)に挿込可能な挿込部53を設け(
図7等参照)、挿込部53を被挿込部U13に挿し込むことで、前輪搭載ユニットU2を発電機ユニットU1に取り付けることができるように構成している。本実施形態の二輪車発電装置1では、前輪搭載ユニットU2を発電機ユニットU1に一体的に取り付けて組み立てた搭載可能状態において、後方から前方に向かって後輪支持ローラ3、サブローラ6、支持部5及び前輪載置固定部4がこの順で並ぶように設定している(
図5等参照)。
【0043】
また、本実施形態では、支持部5のうち固定レール51の前端部に下方突出部54を設け、搭載可能状態において、下方突出部54が固定レール51よりも優先して発電装置設置面fに接地するように構成している。さらに、搭載可能状態では、下方突出部54と共に前輪載置固定部4のキャスタ48も発電装置設置面fに接地し、前輪載置固定部4を支持部5に対して前後方向Aに移動させる場合にキャスタ48が発電装置設置面f上を転動することで、前輪載置固定部4のスムーズなスライド移動を実現している。固定レール底壁511の下向き面には、固定レール51の支持強度を向上する補強部55を設けている
図4、
図7等参照)。
【0044】
本実施形態の二輪車発電装置1は、支持部5に対する前輪載置固定部4の移動範囲をスライド孔52の長さによって規定している。つまり、スライドピン47がスライド孔52の前縁に到達した時点で、支持部5に対する前輪載置固定部4の前方への移動距離は最大となる。
図1乃至
図5では、スライドピン47がスライド孔52の前縁近傍に到達した時点における前輪搭載ユニットU2の状態(伸長状態(L))を示している。一方、スライドピン47がスライド孔52の後縁に到達した時点において、支持部5に対する前輪載置固定部4の前方への移動距離は最小となる(
図7乃至
図9参照)。この時点における前輪搭載ユニットU2の状態を基準状態(S)とすると、基準状態(S)において支持部5の下方突出部54と、前輪載置固定部4のキャスタ48が相互に干渉しないように、下方突出部54及びキャスタ48の取付位置を設定している。また、基準状態(S)では、前輪載置固定部4の後端が、支持部5の後端よりも所定寸法だけ前方に位置するように設定している。そして、本実施形態の二輪車発電装置1では、発電機ユニットU1に組み付けた前輪搭載ユニットU2が基準状態(S)にある場合、発電機ユニットU1から前輪搭載ユニットU2に到達した前輪FTが、支持部5上を所定領域分だけ通過した後に、前輪載置固定部4上に載置されるように構成している。
【0045】
また、本実施形態の二輪車発電装置1は、前輪搭載ユニットU2を基準状態(S)にロック可能なロック部(図示省略)を備えることもできる。二輪車発電装置1の使用時には、ロック部をロック状態からロック解除状態に切り替えることで、前輪載置固定部4のスライド移動を許容し、前輪搭載ユニットU2が基準状態(S)と最大伸長状態(L)との間で変化できるようにする一方で、二輪車発電装置1の不使用時(収納箱収納時)には、ロック部をロック状態にすることで、前輪載置固定部4のスライド移動を規制し、前輪搭載ユニットU2を基準状態(S)に維持することができる。
【0046】
また、本実施形態の二輪車発電装置1は、
図1に示すように、後輪RTを後輪支持ローラ3に押し付けた状態で車体MBを固定する車体固定部7を備えている。本実施形態では、車体固定部7としてベルトを適用し、このベルトの一端を発電機ユニットU1の所定箇所に設けた第一フックU14(
図6参照)に引っ掛けた状態で、ベルトの長手方向中央部分を車体MBのシート後方部分に上方から当てながらベルトの他端を発電機ユニットU1の所定箇所に設けた第二フックU15に引っ掛けることで、ベルトの引っ張り力により後輪RTを後輪支持ローラ3に押し付けた状態で自動二輪車Mの車体MBを固定することができるように構成している。なお、
図1以外の図では車体固定部7を省略している。
【0047】
次に、このような構成を有する二輪車発電装置1の使用手順及び作用について説明する。
【0048】
本実施形態の二輪車発電装置1は、発電機ユニットU1及び前輪搭載ユニットU2を相互に分離した状態で共通の収納箱(図示省略)に収納した状態で例えば非常時の発電対象となる信号機の近くに備え付けておくことができる。なお、車体固定部7は、各ユニット(発電機ユニットU1、前輪搭載ユニットU2)から分離した状態、又は第一フックU14及び第二フックU15を設けた発電機ユニットU1に付帯させた状態で収納箱に収納することができる。収納箱に各ユニット(発電機ユニットU1、前輪搭載ユニットU2)を収納する際は、前輪搭載ユニットU2を基準状態(S)にすることで収納時のコンパクト化を実現することができる。この場合、上述のロック部をロック状態にしておくことで、前輪搭載ユニットU2を基準状態(S)に維持することができる。
【0049】
そして、災害等によって停電になった場合、収納箱から取り出した発電機ユニットU1と前輪搭載ユニットU2を相互に組み付ける。具体的には、前輪搭載ユニットU2に設けた挿込部53を、発電機ユニットU1に設けた形成した被挿込部U13に挿し込むことで、発電機ユニットU1と前輪搭載ユニットU2を組み付けることができる。発電機ユニットU1と前輪搭載ユニットU2を組み付けた時点で、本実施形態に係る二輪車発電装置1は搭載可能状態になる。
【0050】
なお、発電機ユニットU1と前輪搭載ユニットU2を相互に組み付ける前段階として、発電機ユニットU1及び前輪搭載ユニットU2を収納箱から所定位置まで移動させる必要がある。ここで、比較的軽量な前輪搭載ユニットU2は作業者自身が持って移動させることができる一方で、重量物である発電機2を備えた発電機ユニットU1には、
図6等に示すように、適宜の箇所に取っ手U16とキャスタU17を設け(図示例ではローラ収容部U12に取っ手U16を設け、発電機収納箱U11にキャスタU17を設けている)、キャリーケースと同じ要領で、取っ手U16を持ってキャスタU17を転動させることにより発電機ユニットU1を作業者自身によって容易に移動させることができるように構成している。
【0051】
また、ロック部を備えた二輪車発電装置1であれば、発電機ユニットU1と前輪搭載ユニットU2を組み付ける前、又は組み付けた後に、前輪搭載ユニットU2に設けたロック部をロック状態からロック解除状態に切り替える必要がある。
【0052】
発電機ユニットU1と前輪搭載ユニットU2を組み付けた時点では、前輪搭載ユニットU2が基準状態(S)または基準状態(S)に近い状態にある。また、前輪搭載ユニットU2の押付部44は、可動体441を垂直ガイド面43aから最も離間させた後退位置(
図2、
図3及び
図5参照)に位置付けた状態にある。
【0053】
作業者は、以上の手順によって発電機ユニットU1及び前輪搭載ユニットU2を相互に組み付けて使用可能な状態(搭載可能状態)にセットした後に、
図11に示すように、自動二輪車Mを発電機ユニットU1の後方から発電装置1に載せる。なお、二輪車発電装置1は、発電ユニットU1の下向き面に設けた接地部U10と、支持部5の下方突出部54と、前輪載置固定部4のキャスタ48とを設置面fに接地させることで安定した搭載可能状態を維持することができる(
図11参照)。
【0054】
そして、作業者が自動二輪車Mをさらに前方(
図11中に示す矢印の方向)へ移動させると、自動二輪車Mの前輪FTは、後輪支持ローラ3及びサブローラ6をこの順で通過し、引き続いて前輪搭載ユニットU2に到達し、やがて前輪搭載ユニットU2のストッパ42に当たる(
図12参照)。この際、本実施形態の二輪車発電装置1は、前輪搭載ユニットU2に到達した前輪FTを前輪載置固定部4のガイドレール46に沿って垂直ガイド部43の垂直ガイド面43aと傾斜ガイド部45の傾斜ガイド面45aとの間(幅寄せスペース4S)に案内し、垂直ガイド面43aと傾斜ガイド面45aの間を通過させることができる。また、本実施形態の二輪車発電装置1は、垂直ガイド部43に設けた第一後方突出部43b及び傾斜ガイド部45に設けた第二後方突出部45bの両方を後方に向かって相互に幅方向Bに漸次離間する形状に設定しているため、ガイドレール46の前端近くに到達した前輪FTを垂直ガイド面43aと傾斜ガイド面45aの間にスムーズに進入させることができる(
図9及び
図10参照)。
【0055】
そして、本実施形態に係る二輪車発電装置1は、
図13及び
図14に示すように、垂直ガイド面43aと傾斜ガイド面45aの間を通過する前輪FTを傾斜ガイド面45aによって垂直ガイド面43aに近付く方向に寄せる(幅寄せする)ことができる。これにより、前輪FTの一方の側面を垂直ガイド面43aに接触または近接させて、自動二輪車MのハンドルMHが切れない状態またはハンドルMHが切れ難い状態を維持することができる。なお、
図13及び
図14では前輪FTを破線で示している。
【0056】
傾斜ガイド面45aを通過した前輪FTは、垂直ガイド面43aに一方の側面を接触又は近接させた状態でストッパ42に当たる。前輪FTは、ストッパ42に当たる直前で押付部44の配置領域を通過する。この際、本実施形態の二輪車発電装置1は、可動体441を後退位置に位置付けておくことで、可動体441や可動体441の先端部に設けた押圧板445に前輪FTが干渉することを回避することができる。
【0057】
前輪FTがストッパ42に当たった直後は、
図12に示すように、後輪RTが後輪支持ローラ3に到達していない。したがって、作業者は、引き続き、後輪RTが後輪支持ローラ3及びサブローラ6に同時に乗る位置まで自動二輪車Mを前方(
図12中に示す矢印の方向)へスライド移動させる。この際、本実施形態の二輪車発電装置1は、前輪載置固定部4のキャスタ48を発電装置設置面f上において転動させながら、スライド孔52の後縁又は後縁近傍に係合していたスライドピン47をスライド孔52に沿って移動させることで、前輪載置固定部4を支持部5に対して前方へ移動させることができる。また、自動二輪車MのハンドルMHが切れない状態またはハンドルMHが切れ難い状態にあるため、作業者は自動二輪車Mを前方へ移動させる処理を安定した状態でスムーズに行うことができる。
【0058】
後輪RTが後輪支持ローラ3に完全に乗り上がり、やがてサブローラ6に到達すると、後輪RTは後輪支持ローラ3とサブローラ6との間に一旦沈み込み、これら後輪支持ローラ3及びサブローラ6によって安定した状態で支持される(
図1参照)。そして、自動二輪車Mをそれ以上前方へ移動させるには、サブローラ6を乗り越える必要があり、その時点までに要する力よりも大きな力で自動二輪車Mを前進させなければならない。すなわち、本実施形態の二輪車発電装置1は、サブローラ6を後輪支持ローラ3の前方に配置していることによって、後輪RTの安定した支持状態を維持することができるとともに、後輪RTが後輪支持ローラ3を通過して前輪載置固定部4に到達することを防止・抑制している。
【0059】
ここで、後輪RTが後輪支持ローラ3及びサブローラ6に同時に乗る位置までに自動二輪車Mが前方へ移動する距離は、自動二輪車Mの前輪FTと後輪RTとの距離(前後輪間隔)に依存する。前後輪間隔は車種によって異なることが多いが、本実施形態の二輪車発電装置1では、前輪載置固定部4を支持部5に対して前後方向Aに移動可能に構成しているため、自動二輪車Mの前後輪間隔に応じて必要な分だけ前輪載置固定部4を支持部5に対して移動させることができ、異なる前後輪間隔を有する二輪車両Mにも対応することができる。
【0060】
後輪RTが後輪支持ローラ3及びサブローラ6に同時に乗る位置まで自動二輪車Mを前方へ移動させた後に、作業者は、前輪載置固定部4の押付部44によって前輪FTを垂直ガイド面43aに接触する方向へ押し付ける処理を行う。具体的には、作業者が操作部442に対して所定の操作力(本実施形態ではレバー446を把持し、可動体441を中心軸として回転させる操作力)を付与することにより、
図15及び
図16に示すように、後退位置に位置付けられている可動体441を垂直ガイド面43aに近付く方向に移動させて、可動体441の先端に設けた押圧板445を前輪FTの他方の側面に押し当てた状態で前輪FTを垂直ガイド面43aに押し付ける。これにより、前輪FTを垂直ガイド面43aと押付部44との間に挟み込み、自動二輪車MのハンドルMHを切ることができない状態を確保することができる。
【0061】
次に、作業者は、車体固定部7で自動二輪車Mの車体MBを固定する。具体的には、車体固定部7であるベルトで自動二輪車Mのシート後方部分を巻き押さえるようにしてベルトの両端をそれぞれフック(第一フックU14、第二フックU15)に個別に引っ掛ける。なお、ベルトの両端のうち一方の端を何れかのフック(例えば第一フックU14)に引っ掛けた状態で、自動二輪車Mのシート後方部分を押さえるようにベルトを巻き回した後に、ベルトの他端を他方のフック(例えば第二フックU15)に引っ掛けるようにしても構わない。本実施形態の二輪車発電装置1は、車体固定部7で自動二輪車Mを固定することにより、自動二輪車Mの車両全体が倒れない状態を維持することができるとともに、後輪RTを後輪支持ローラ3に押し付けることができる。
【0062】
なお、必要があれば、支持部5に対する前輪載置固定部4の移動を規制する処理を行ってよい。このような処理の具体例としては、スライドピン47としてボルトを適用し、ネボルトに螺合しておいたナットを締め付ける処理や、或いはキャスタ48としてロック機能付きのものを適用し、ロック解除の状態からロックオンの状態に切り替える処理を挙げることができる。
【0063】
以上の手順によって、作業者は自動二輪車Mを発電機ユニットU1及び前輪搭載ユニットU2に安定した自立状態で載置することができる。
【0064】
引き続いて、作業者は、自動二輪車Mのエンジンを掛け、アクセルを徐々に開ける。その結果、後輪支持ローラ3及びサブローラ6が後輪RTに従動して回転する。本実施形態の二輪車発電装置1は、サブローラ6を空転ローラに設定する一方、後輪支持ローラ3を発電機2に接続しているため、後輪支持ローラ3の回転数に応じて発電機2も回転し、発電する。このとき、空転しているサブローラ6の存在により、後輪RTの前方への飛び出しが規制される。そして、発電機2で発生した電力を発電機ユニットU1に設けた配線接続部U18(
図6参照)を介して信号機に供給することにより、信号機を通常通りに作動させることができる。なお、本実施形態の二輪車発電装置1は、アクセルの開き加減(アクセル開度)を所定レベルに維持するために、例えばアクセルを固定するアクセル固定部(図示省略)を適宜の箇所(例えばハンドルグリップでアクセル開度を調整する車両であればハンドルグリップ)に装着することも可能である。
【0065】
また、本実施形態の二輪車発電装置1は、発電機2の運転状態を示す表示部(本実施形態では発電機ユニットU1に設けた表示灯U19(
図6参照))を備えているため、作業者は表示部を確認することで発電機2の運転状態を容易に把握することができる。さらに、発電機2には物理的な許容回転数があり、許容回転数を超えた状態が継続した場合には発電機2が破損するため、本実施形態の二輪車発電装置1は、発電機2の回転数が許容回転数を超えた場合にそのことを知らせる警報手段(本実施形態は発電機ユニットU1に設けた表示灯U19)を設けている。作業者は警報手段によって発電機2の回転状態が過剰であるか否かを容易に知ることができ、発電機2の破損を回避することができる。
【0066】
このように、本実施形態に係る二輪車発電装置1は、二輪車両Mの駆動輪である後輪RTを回転可能に支持し且つ発電機2に連結された後輪支持ローラ3と、二輪車両Mの前輪FTを載置した状態で固定可能な前輪載置固定部4と、前輪載置固定部4を後輪支持ローラ3に対して前後方向Aに移動可能に支持する支持部5とを備えているため、二輪車両Mの前後輪間隔に応じて予め後輪支持ローラ3に対する前輪載置固定部4の位置を決定し、その位置に前輪載置固定部4を正確に配置しておくという従来であれば必要な処理が不要になり、後輪支持ローラ3を通過させて前輪載置固定部4に到達した前輪FTを前輪載置固定部4と一体に後輪支持ローラ3に対して前後方向Aに移動させることができ、二輪車両Mの前後輪間隔に応じた後輪支持ローラ3と前輪載置固定部4の適切な相対位置を作業者自身が特に意識することなく容易に確保することができる。
【0067】
このような構成を有する本実施形態の二輪車発電装置1によれば、前後輪間隔が異なる複数種類の二輪車両Mに応じて、事前に後輪支持ローラ3に対する前輪載置固定部4の正確な位置を決定してその位置に前輪載置固定部4を配置する必要がなく、実際に後輪支持ローラ3で支持する後輪RTと前輪載置固定部4に固定する前輪FTとの離間距離に最適な後輪支持ローラ3と前輪載置固定部4との相対位置を、二輪車両Mを二輪車発電装置1にセットする処理を通じて自ずと確保することができる。
【0068】
そして、本実施形態に係る二輪車発電装置1は、後輪支持ローラ3で支持している後輪RTを駆動させることによって後輪支持ローラ3を回転させて、この後輪支持ローラ3に連結している発電機2を駆動させて発電することができる。
【0069】
このように、本実施形態に係る二輪車発電装置1は、作業者自身による例えば工具を用いた特別な処理や、予め後輪支持ローラ3及び前輪載置固定部4をそれぞれ前後輪間隔に応じて適切な位置に配置する処理を一切要求することなく、二輪車両Mをこの発電装置に単に乗せる作業を通じて、前輪載置固定部4を二輪車両Mの車種ごとに異なる前後輪間隔に応じた最適な位置にまでスライド移動させることができ、二輪車両Mの後輪RTを駆動源とする発電機能を発揮することができる。また、本実施形態に係る二輪車発電装置1は、自動二輪車Mに通常備え付けられているスタンドを使用することなく、自動二輪車Mの安定した自立状態を確保することができ、発電機に関する専門知識があるか否かを問わず誰にでも簡単に、ユニットU1,U2同士の組付処理から、発電装置1に自動二輪車Mを搭載する処理、発電処理までを一人で実行することができる点においても極めて実用性に富むものである。
【0070】
特に、本実施形態に係る二輪車発電装置1は、前輪載置固定部4として、前輪FTの一方の側面と対向する位置に設けた垂直ガイド面43aと、前輪FTの他方の側面から前輪FTに近付く方向に移動させてこの前輪FTを垂直ガイド面43aに向かって押し付ける押付部44とを備えたものを適用しているため、垂直ガイド面43aと押付部44との間に挟み込んだ前輪FTを固定することで、ハンドルMHが切れる事態を阻止することができ、二輪車両Mの転倒防止に大きく貢献する。
【0071】
さらに、本実施形態では、前輪載置固定部4として、前輪FTを挟んで垂直ガイド面43aと対向する位置に配置され且つ幅方向Bにおける垂直ガイド面43aとの離間距離が下端よりも上端が大きくなるように所定角度傾斜させた傾斜ガイド面45aを備えたものを適用することで、傾斜ガイド面45aの勾配によって前輪FTをその一方の側面が垂直ガイド面43aに接触または近接する位置まで自動的に幅方向に移動させることができ、一方の側面が垂直ガイド面43aに接触した時点で前輪FTが垂直ガイド面43aに対向する方向への転倒を防止することができる。
【0072】
加えて、本実施形態に係る二輪車発電装置1は、垂直ガイド面43aと押付部44との組み合わせ、または垂直ガイド面43aと傾斜ガイド面45aとの組み合わせ、或いは垂直ガイド面43a、押付部44及び傾斜ガイド面45aの組み合わせによって、幅方向Bのサイズが異なる前輪FTに対してもその一方の側面を垂直ガイド面43aに接触又は近接させることができ、ハンドルMHが自由に切れた場合に生じ得る二輪車両Mの転倒を防止・抑制することができる。
【0073】
さらにまた、本実施形態に係る二輪車発電装置1は、後輪RTを後輪支持ローラ3に押し付けた状態で二輪車の車体MBを固定する車体固定部7を備えているため、この車体固定部7によって単に車体MBを固定することに留まらず、後輪支持ローラ3に対する後輪RTの良好な接触状態を確保することができるため、後輪RTを後輪支持ローラ3に強く接触させて発電効率を向上することが可能であるとともに、駆動中の後輪RTが後輪支持ローラ3やサブローラ6の軸方向(幅方向B)に滑るいわゆる横滑りを防止・低減することができる。
【0074】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態では、二輪車発電装置を、発電機ユニットと前輪搭載ユニットの2つのユニットに大別し、収納時にはユニット同士を分離させ、使用時にはユニット同士を相互に組み付けるように構成した態様を例示したが、ユニット同士を折り畳むことによってコンパクトに収納することができ、ユニット同士を展開することで二輪車搭載可能状態となるように構成することも可能である。
【0075】
また、各ユニットを構成する部品やパーツをユニット化せずに個別に取り扱いできるように構成してもよい。
【0076】
また、スライドレールやリニアガイドを用いて支持部に対する前輪載置固定部の前後方向へのスライド移動を実現することもできる。
【0077】
また、前輪載置固定部として、傾斜ガイド面を備えず、垂直ガイド面と押付部によって前輪を幅方向に押圧して固定可能な構成にしたり、或いは押付部を備えず、垂直ガイド面と傾斜ガイド面によって前輪の一方の側面を垂直ガイド面に接触または近接させることで前輪の動きを規制して固定する構成にすることが可能である。さらにはまた、前輪載置固定部として、垂直ガイド面、押付部、傾斜ガイド面に代えて、または加えて、前輪を上方から押さえ込む押込部や、前輪を両側面から挟む一対の挟持部を備えたものを適用しても構わない。
【0078】
前輪載置固定部に、傾斜ガイド面と押付部を設ける場合、押付部を傾斜ガイド面よりも後方の位置に配置することもできる。
【0079】
垂直ガイド面や傾斜ガイド面には、二輪車の前輪から受ける荷重に耐える強度が要求されるため、これら各面は金属製の板材(板金)を用いて構成することが好ましいが、十分な耐荷重性を確保できるのであれば、垂直ガイド面及び傾斜ガイド面の両方または何れか一方を、板金以外の素材から構成することも可能である。例えば、垂直ガイド面や傾斜ガイド面を合成樹脂からなる成型品の一部で構成してもよい。
【0080】
また、垂直ガイド面と傾斜ガイド面とを一体又は一体的に有する前輪載置固定部を適用することもできる。
【0081】
また、傾斜ガイド面の勾配や、前輪の幅方向における傾斜ガイド面と垂直ガイド面との離間距離を適宜変更・調整したり、これら勾配や離間距離を変更・調整可能な機構を備えた構成にすることも可能である。特に、傾斜ガイド面の勾配をきつく設定したり、前輪の幅方向における傾斜ガイド面と垂直ガイド面との離間距離を比較的短く設定した場合には、このような傾斜ガイド面と垂直ガイド面との間を通過する前輪の一方の側面を垂直ガイド面に確実に接触させることが可能な構成となり、前輪の幅方向へのあそびが無い状態にすることで、二輪車の転倒防止を図ることができる。
【0082】
押付部の具体的な構成も上述の構成に限定されず、例えば、前輪が前輪載置固定部のうち垂直ガイド面を配置した位置に到達したことを条件に、機械的な機構によって自動で垂直ガイド面に向かって前輪を押し付けるように構成すれば、作業者による所定の操作(上述の実施形態であれば、ハンドルレバーを回転させる操作)が不要になり、便利である。また、作業者による所定操作を必須とする押付部である場合、その所定操作は、ハンドルレバーを回転させる操作に限定されず、例えばスイッチ操作や手押し操作、或いは足を使った操作であってもよい。
【0083】
上述の実施形態では、後輪支持ローラの前方にサブローラを配置し、後輪が後輪支持ローラとサブローラの間に嵌まるようにして各ローラに同時に接触させる態様において、サブローラを空転ローラ(アイドルローラ)とする構成を例示したが、サブローラをバックアップとして機能させてもよい。この場合、後輪支持ローラに連結する発電機とは別の発電機(バックアップ用発電機)にサブローラを連結すれば、サブローラの回転が駆動源となってバックアップ用発電機を駆動させることができる。
【0084】
また、部品点数の削減という観点によれば、二輪車の安定状態に支障を来さない条件下でサブローラを備えていない発電装置とすることも可能である。
【0085】
支持部に対する前輪載置固定部の前方への移動量(突出量)が最小となる方向へ前輪載置固定部を付勢する付勢手段を備えた発電装置であってもよい。
【0086】
また、車体固定部をベルト以外のもの、例えばロープや紐、或いはフレーム状のものを用いて構成することもできる。
【0087】
本発明の二輪車発電装置は、自動二輪車に限らず、自転車を用いて発電することもできる。
【0088】
また、本発明の二輪車発電装置による電力供給先は信号機に限定されず、供給可能な電力量と需要先が必要とする電力量とのバランス等を考慮して電力供給先を選択することができる。
【0089】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。