【解決手段】単一の又は限られたポートでの手術に有用な外科用アクセスシステムの実施形態が、固定カニューレ(1810)と、開創器と、開創器に取り外し可能に結合されたゲルキャップとを含むトロカール(1800)を備える。ゲルキャップは、人工体壁として機能するゲルパッドを含み、これを通じて直接或いは1又はそれ以上のトロカールを介して器具を体腔内に挿入することができる。固定カニューレは、リテーナ(1830)及びボルスタ(1840)を含み、これらが協働してこれらの間に人工体壁を捕捉することにより、トロカールを人工体壁に固定する。ゲルパッドは、気密シールを保持しながら柔軟な器具の設置、並びに器具を並進する自由度及び角度的自由度を可能にする。
前記キャップシールは、キャップリングをさらに含み、前記キャップリングは、該キャップリング内に配置された可撓性材料を実質的に取り囲む、ことを特徴とする請求項1に記載の外科用アクセスシステム。
前記キャップシールは、前記キャップリングから延び、前記キャップリングの一部を覆うように配置された固定ポートをさらに含む、ことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の外科用アクセスシステム。
前記固定ポートは、該固定ポートを通して挿入された器具の位置を維持するようになったロック機構をさらに含む、ことを特徴とする請求項5に記載の外科用アクセスシステム。
前記トロカールは、第1のサイズの器具を収容する第1のトロカールであり、第1のサイズよりも小さい第2のサイズの器具を収容する第2のトロカールをさらに含み、前記第2のトロカールは、カニューレ本体と、挿入構成及び固定構成の両方において、該カニューレ本体の遠位端から径方向に延びたままであるリテーナと、を有する、ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の外科用アクセスシステム。
前記遠位リングの少なくとも一部は、該遠位リングの折り畳みを容易にする非円形断面を有する、ことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の外科用アクセスシステム。
前記リテーナは、前記トロカールが人工体壁から後退される後退構成において変化しないままであることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の外科用アクセスシステム。
前記リテーナは、前記カニューレから取り外し可能なクリップを含み、該クリップは、前記カニューレ本体から径方向に延び、複数の環状スロットを構成する複数の環状リングを含む拡大部分に連結可能であることを特徴とする、請求項15に記載の外科用アクセスシステム。
前記クリップは、前記複数の環状スロットの少なくとも1つに係合するように寸法形状決めされた切り取り部を含む平坦化された本体を含むことを特徴とする、請求項17に記載の外科用アクセスシステム。
前記人工体壁は、キャップリングに結合され、それによって、ゲルキャップを構成するゲルパッドを含み、前記ゲルキャップに連結可能な開創器をさらに含む、ことを特徴とする請求項21に記載の外科用アクセスシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現行の外科用アクセスポートでは、個々のポートを通じた単一の器具のアクセスが可能であり、或いは剛性のカニューレを通じた複数の器具のアクセスが可能である。経肛門的内視鏡下マイクロサージェリー(TEMS)ユニットなどのいくつかの装置では、装置上に位置する固定点を通じて器具を設置することが必要であり、また装置の重量を支えるために装置を手術台に装着するとともに、患者に対して装置の位置を定めることも必要である。これらの装置は、外科医が器具のサイズを選択する上での柔軟性を提供するものではなく、器具が剛性カニューレとともに動くことを制限する。しかも、外科医は、単一の又は限られた数のアクセスポートを通じて腹腔鏡下外科手術を行っている。これらの手術では、外科医は、単一の又は限られた数のアクセスポートを通じて複数の器具を配置する。
手術は、臍における単一の2センチメートルの切開部を通じて、或いは、特定の場合には経腟的に又は経肛門的に行うこともできる。これらの新しい手術のニーズを満たすとともに、外科医にとってより多くの選択肢を可能にするシステムが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
単一の又は限られたポートでの手術に有用な外科用アクセスシステムの実施形態が、固定カニューレと、開創器と、開創器に取り外し可能に結合されたゲルキャップとを含むトロカールを備える。ゲルキャップは、人工体壁として機能するゲルパッドを含み、これを通じて直接或いは1又はそれ以上のトロカールを介して器具を体腔内に挿入することができる。固定カニューレはリテーナ及びボルスタを含み、これらが協働してこれらの間に人工体壁を捕捉することにより、トロカールを人工体壁に固定する。ゲルパッドは、気密シールを保持しながら柔軟な器具の設置、並びに器具の並進及び角度的自由度を可能にする。
【0009】
いくつかの実施形態では、外科用アクセスシステム及びこのシステムを使用する方法を提供する。アクセスシステムの実施形態はトロカールを含み、このトロカールは、近位端と遠位端と近位端から遠位端へ延びる縦軸とを含む管状カニューレ本体、及びカニューレ内腔を定めるカニューレ壁を含む固定カニューレと、カニューレ本体の近位端に結合されたシールアセンブリと、カニューレ本体から延びるリテーナと、カニューレ本体上に配置されてリテーナから離間されたロック用部品と、ロック用部品に係合可能なボルスタとを含む。トロカールは、ボルスタがロック用部品に係合されない挿入構成と、ボルスタがロック用部品に係合される固定構成とを有し、固定構成では、リテーナ及びボルスタが、これらの間に人工体壁を捕捉することにより、カニューレを人工体壁に固定するように寸法決め及び構成される。
【0010】
いくつかの実施形態では、トロカールが5mmトロカールである。
【0011】
いくつかの実施形態では、カニューレが、ポリカーボネート及びポリエステルの少なくとも一方を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、シールアセンブリが、隔膜弁及びダックビル弁を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、リテーナがカニューレ本体の遠位端に配置され、ロック用部品がリテーナに近接する。いくつかの実施形態では、リテーナが、径方向に延びるフランジを含む。いくつかの実施形態では、リテーナフランジの直径が、カニューレ本体の外径の約1.5〜約2.5倍大きい。いくつかの実施形態では、リテーナの遠位端が先細である。
【0014】
いくつかの実施形態では、ロック用部品が拡大部分を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、ロック用部品が円周リップを含む。いくつかの実施形態では、ロック用部品がねじ山を含む。いくつかの実施形態では、ロック用部品が複数の円周スロットを含む。いくつかの実施形態では、ロック用部品がラチェットを含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、ボルスタがエラストマ材料を含む。いくつかの実施形態では、ボルスタがトーラスを含み、このトーラスの開口部を通じてカニューレ本体が延びる。
いくつかの実施形態では、ボルスタがねじ山を含む。いくつかの実施形態では、ボルスタが、ロック用部品上でラチェットと係合するように寸法決めされた少なくとも1つの歯止めを含む。いくつかの実施形態では、ボルスタが、ロック用部品と係合するように寸法決めされたクリップを含む。いくつかの実施形態では、ボルスタの直径が、フランジの直径の約0.8〜約2倍である。
【0017】
いくつかの実施形態では、固定構成において、ロック用部品がボルスタの離脱に抗する。いくつかの実施形態では、固定構成において、リテーナとボルスタの間の距離が調整可能である。
【0018】
いくつかの実施形態は、オブチュレータをさらに含む。
【0019】
いくつかの実施形態は、人工体壁をさらに含む。いくつかの実施形態では、人工体壁がゲルパッドを含む。いくつかの実施形態では、ゲルパッドがキャップリングに結合されることによりゲルキャップが定められる。いくつかの実施形態は、ゲルキャップに結合できる調整可能な開創器をさらに含む。
【0020】
方法のいくつかの実施形態は、固定カニューレを含むトロカールを人工体壁に固定する方法を含む。この方法は、トロカールを挿入構成に切り替えるステップと、人工体壁を通じてカニューレ本体の遠位端を挿入するステップと、ボルスタをロック用部品に係合させることによってトロカールを固定構成に切り替えることにより、リテーナとボルスタの間に人工体壁を捕捉するステップとを含む。
【0021】
いくつかの実施形態は、トロカールを通じてオブチュレータを挿入するステップをさらに含む。
【0022】
いくつかの実施形態は、固定構成においてボルスタとリテーナの間の距離を調整するステップをさらに含む。
【0023】
いくつかの実施形態は外科用アクセスシステムを提供し、この外科用アクセスシステムは、調整可能な開創器と、ゲルキャップと、トロカールとを備え、開創器は、近位リングと、遠位リングと、近位リングと遠位リングの間に延びる柔軟な管状開創シースとを含み、近位リングは、このリングの環状軸を中心に回転することができ、これにより開創シースの長さが近位リングと遠位リングの間で調整され、ゲルキャップは、近位リングに係合可能なキャップリングと、キャップリングに結合されたゲルパッドとを含み、トロカールは、近位端と、遠位端と、近位端から遠位端に延びる縦軸とを含む管状カニューレ本体と、カニューレ内腔を定めるカニューレ壁とを含む固定カニューレと、カニューレ本体の近位端に結合されたシールアセンブリと、カニューレ本体から延びるリテーナと、カニューレ本体上に配置されてリテーナから離間されたロック用部品と、ロック用部品に係合可能なボルスタとを含む。トロカールは、ボルスタがロック用部品に係合されない挿入構成と、ボルスタがロック用部品に係合される固定構成とを有し、固定構成では、リテーナ及びボルスタが、これらの間にゲルパッドを捕捉することにより、カニューレをゲルパッドに固定するように寸法決め及び構成される。
【0024】
従って、いくつかの実施形態は、患者の腹壁に切開部を設けて腹腔を送気ガスで加圧した腹腔鏡下外科手術を単一のアクセス部位において行うのに適した、外科手術のための腹腔へのアクセスを提供しながら腹腔内の送気圧を保持するようにされた外科用アクセスポートを提供し、この外科用アクセスポートは、調整可能な開創器及びゲルキャップを含み、開創器は、患者の腹壁の外面に近接して配置されて切開部を実質的に取り囲むように構成された近位リングと、管状壁、使用時に近位リングに結合される近位部、及び遠位部を含む、切開部を通じて配置され、切開部をライニングするように構成され、切開部を開創するように調整可能な開創シースと、開創シースの遠位部に結合され、腹壁の内面に近接して配置されて切開部を実質的に取り囲むように構成された遠位リングとを含み、ゲルキャップは、近位リングに結合されるように構成され、切開部を実質的に取り囲むように構成されたキャップリングと、キャップリング内に配置されたゲルパッドと、ゲルパッドに動作可能に取り付けられた複数のシール弁とを含み、これらの複数のシール弁は、ゲルパッドを通じて複数のアクセスチャネルを少なくとも部分的に形成し、シール弁を通じて延びる器具とともにシールを形成し、シール弁を通じて延びる器具が存在しない場合にはシールを形成するように構成される。
【0025】
いくつかの実施形態では、シール弁の少なくとも1つの少なくとも一部がオリフィスを定める。いくつかの実施形態では、シール弁の少なくとも1つの少なくとも一部が隔壁シールを含む。いくつかの実施形態では、シール弁の少なくとも1つの少なくとも一部がダックビル弁を含む。いくつかの実施形態では、シール弁の少なくとも1つが低プロファイルを有する。いくつかの実施形態では、シール弁の少なくとも1つが、第1のサイズの器具を収容するための第1のサイズを有し、シール弁の少なくとももう1つが、第2のサイズの器具を収容するための第2のサイズを有する。
【0026】
いくつかの実施形態では、シール弁の少なくとも1つが、使用時にキャップリングに対して再配置できるように構成される。いくつかの実施形態では、シール弁の少なくとも1つが、使用時にキャップリングに対して並進できるように構成される。いくつかの実施形態では、シール弁の少なくとも1つが、使用時にキャップリングに対して枢動できるように構成される。いくつかの実施形態では、シール弁の少なくとも1つが、使用時にキャップリングに対して大まかに固定されるように構成される。
【0027】
いくつかの実施形態では、ゲルキャップが、使用時に近位リングに取り外し可能に結合されるように構成される。いくつかの実施形態では、ゲルキャップが近位リングに固定される。
【0028】
いくつかの実施形態では、使用時に開創器の近位リングが回転して切開部を調整可能に開創する。いくつかの実施形態では、使用時に開創シースが伸びて切開部を調整可能に開創する。
【0029】
いくつかの実施形態は、遠位リングに結合されたテザーをさらに含む。いくつかの実施形態では、遠位リングの少なくとも一部が、遠位リングを折り畳んで切開部を通じて挿入しやすくする非円形断面を有する。いくつかの実施形態では、遠位リングが、遠位リングを折り畳んで切開部を通じて挿入しやすくする涙滴型断面を有する。いくつかの実施形態では、遠位リングが、遠位リングを折り畳んで切開部を通じて挿入しやすくする少なくとも1つのノッチを含む。
【0030】
いくつかの実施形態は、患者の体腔を送気ガスで加圧した外科手術をアクセス部位において行うのに適した、外科手術のための体腔へのアクセスを提供しながら体腔内の送気圧を保持するようにされた外科用アクセスポートを提供し、この外科用アクセスポートは、調整可能な開創器及びシールキャップを含み、開創器は、患者の腹壁の外面に近接して配置されて切開部を実質的に取り囲むように構成された近位リングと、管状壁、使用時に近位リングに結合される近位部、及び遠位部を含む、患者の体壁内の開口部を通じて配置されるように構成され、切開部を開創するように調整可能な開創シースと、開創シースの遠位部に結合され、腹壁の内面に近接して配置され、切開部を実質的に取り囲むように構成された遠位リングとを含み、シールキャップは、近位リングに結合されるように構成され、内部に配置された可撓性材料を実質的に取り囲むキャップリングと、キャップリング内に配置され、可撓性材料により実質的に取り囲まれてこれに動作可能に取り付けられたシール弁とを含み、このシール弁は、可撓性材料を通じてアクセスチャネルを少なくとも部分的に形成し、シール弁を通じて延びる器具とともにシールを形成し、シール弁を通じて延びる器具が存在しない場合にはシールを形成するように構成される。
【0031】
いくつかの実施形態では、可撓性材料がゲルを含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、使用時にシール弁をキャップリングに対して再配置できる。
いくつかの実施形態では、使用時にシール弁をキャップリングに対して並進できる。いくつかの実施形態では、使用時にシール弁をキャップリングに対して枢動できる。
【0033】
いくつかの実施形態では、シールキャップが、キャップリング内に配置されて可撓性材料により実質的に取り囲まれた複数のシール弁を含み、これらの複数のシール弁は、可撓性材料を通じて複数のアクセスチャネルを少なくとも部分的に形成し、シール弁を通じて延びる器具とともにシールを形成し、シール弁を通じて延びる器具が存在しない場合にはシールを形成するように構成される。
【0034】
いくつかの実施形態は、遠位リングに結合されたテザーをさらに含む。いくつかの実施形態では、遠位リングの少なくとも一部が、遠位リングを折り畳んで切開部を通じて挿入しやすくする非円形断面を有する。
【0035】
いくつかの実施形態は、患者の腹壁に切開部を設けて腹腔を送気ガスで加圧した腹腔鏡下外科手術をアクセス部位において行うのに適した、外科手術のための腹腔へのアクセスを提供しながら腹腔内の送気圧を保持するようにされた外科用アクセスポートを提供し、この外科用アクセスポートは、患者の腹壁の外面に近接して配置されるように構成された近位リングと、腹壁の内面に近接して配置されるように構成された遠位リングと、近位リングと遠位リングとの間に延びる開創シースとを有する調整可能な開創器を含み、開創シースは、使用に近位リングに結合される近位部と、使用時に遠位リングに結合される遠位部とを有する管状壁を含み、切開部を通じて配置されて切開部をライニングするように構成され、切開部を開創するように調整可能であり、外科用アクセスポートはさらに、使用時に近位リングに結合されるように構成された、複数のシール弁を含むシールキャップを含み、これらの複数のシール弁は、シールキャップを通じて複数のアクセスチャネルを少なくとも部分的に形成し、シール弁を通じて延びる器具とともにシールを形成し、シール弁を通じて延びる器具が存在しない場合にはシールを形成するように構成され、使用時にシール弁の少なくとも1つをシール弁の少なくとも別のシール弁に対して再配置できる。
【0036】
いくつかの実施形態では、シールキャップがゲルを含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの再配置可能なシール弁が、シール弁の少なくとも別のシール弁に対して並進できる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの再配置可能なシール弁が、シール弁の少なくとも別のシール弁に対して枢動できる。
【0038】
いくつかの実施形態は、遠位リングに結合されたテザーをさらに含む。いくつかの実施形態では、遠位リングの少なくとも一部が、遠位リングを折り畳んで切開部を通じて挿入しやすくする非円形断面を有する。
【0039】
いくつかの実施形態は、開創器とゲルキャップとを含むアクセス装置システムを提供する。開創器は、内側リングと、外側リングと、内側リングと外側リングの間に延びる可撓性スリーブとを含む。外側リングは外側部品及び内側部品を含み、内側部品は環状軸を定め、これを中心に外側部品が回転できることにより、環状軸の周囲に可撓性スリーブが巻き付け及び巻き戻しされる。ゲルキャップは、開創器の外側リングに結合された環状キャップリングと、この環状キャップリング内に配置されてこれに結合されたゲルパッドとを含む。ゲルパッドは、ゲルパッドを通じて予め形成されたアクセスチャネルを含まない。
【0040】
いくつかの実施形態は、開創器とゲルキャップとを含むアクセス装置システムを提供する。開創器は、内側リングと、外側リングと、内側リングと外側リングの間に延びる可撓性スリーブとを含む。外側リングは外側部品及び内側部品を含み、内側部品は環状軸を定め、これを中心に外側部品が回転できることにより、環状軸の周囲に可撓性スリーブが巻き付け及び巻き戻しされる。ゲルキャップは、開創器の外側リングに結合された環状キャップリングと、この環状キャップリング内に配置されてこれに結合されたゲルパッドとを含む。ゲルパッド内には、第1のシールと第2のシールとを含む少なくとも1つのアクセスポートが少なくとも部分的に埋め込まれ、第1のシールは器具シールを含み、第2のシールはゼロシールを含む。
【0041】
アクセス装置システムのいくつかの実施形態は、アクセスチャネルを定める縦軸と、近位端と、遠位端と、管状カニューレと、カニューレの近位端に配置されたシールアセンブリと、カニューレの遠位端に配置されたリテーナとを含むトロカールをさらに含む。シールアセンブリは、器具シール及びゼロシールを含む。リテーナの近位端は、縦軸に実質的に垂直な面を含む。リテーナの直径は、リテーナの近位端から遠位端へ向けて収束的に先細になる。
【0042】
いくつかの実施形態はシングルポートアクセス装置システムを提供し、このシステムは、開創器と、この開創器に結合できる人工体壁とを含み、人工体壁は、内部を通じて器具がアクセスできるように寸法決め及び構成された複数のアクセスチャネルを含み、アクセスチャネルを通じて挿入される器具は、相対的に並進及び枢動可能である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
全体を通じて、同様の構成部品には同様の参照番号を付す。
【0045】
手術器具アクセス装置システムの実施形態は、例えば、腹部(
図1)手術、経腟的(
図2)手術、経口的(
図3)手術、経肛門的(
図4)手術などの単一切開部の、シングルポートの、及び/又は限られたポートの腹腔鏡下外科手術に有用である。
【0046】
図5は、シングルポート及び/又は限られたポートの手術において有用な、開創器5100及びキャップ5500を含むアクセス装置システム5000の実施形態の斜視図である。開創器又は外科用開創器5100は、外科切開部及び/又は身体開口部の中に、これらを横切って、及び/又はこれらを通じて配置及び/又は位置決めされて、切開部又は身体開口部を拡大、再形成及び/又は隔離する。キャップ5500は、器具が体腔などの患者の体内にアクセスするときに通過する人工体壁を提供する。アクセス装置5000の構成部品は、あらゆる好適な生物学的適合材料を含む。米国特許公開第2007/0088204A1号には、アクセス装置システムの他の実施形態が記載されており、該特許の開示内容は組み入れられる。
【0047】
図6Aの部分的側断面図に示す開創器6100の実施形態は、内側すなわち遠位リング6110と、外側すなわち近位リング6120と、内側リング6110と外側リング6120との間に延びてこれらを結合するスリーブ又は開創シース6130とを含む。図示の実施形態では、スリーブ6130は、実質的に円筒形の可撓膜を含む。他の実施形態では、スリーブ6130は、楕円形断面などの別の形状を有する。スリーブ6130の実施形態は、可撓性半透明高分子フィルムを含む。スリーブ6130のいくつかの実施形態は、抗菌コーティングなどのさらなる機能性を提供する1又はそれ以上のコーティングを含む。
【0048】
内側リング6110の実施形態は、切開部及び/又は身体開口部を通じて挿入するための圧縮及び/又は変形に対して十分に柔軟かつ適合性がある。内側リング6110は、後に関連する体腔内で解放されると、実質的に本来の形状又は設置面積に戻る。いくつかの実施形態では、内側リング6110が、体腔内で解放されると、例えば弛緩状態で実質的に円形の形状を呈する。他の実施形態では、内側リング6110が、弛緩状態で楕円形などの別の形状を有する。内側リング6110は、切開部又は身体開口部を通じて挿入できるように圧縮された場合、実質的に楕円形状、略直線形状、涙滴形状、又は別の好適な形状などの異なる形状を呈する。当業者であれば、他の実施形態では、弛緩状態にある内側リング6110が、長円形、楕円形、又はD字形などの円形以外の形状を有することを認識するであろう。他の実施形態では、内側リング6110が、使用する通常の状態で実質的に剛直、すなわち非柔軟性である。
【0049】
内側リング6110の実施形態は、
図6Aに示すように円形断面を含む。他の実施形態では、内側リング6110は、長円形又は楕円形(
図6B)、涙滴形(
図6C)、及びD字形(
図6D)の少なくとも1つなどの別の断面形状を含む。当業者であれば、他の実施形態では他の断面が使用されることを理解するであろう。内側リング6110のいくつかの実施形態は、少なくとも1つのノッチ及び/又は脆弱部を含み、これが内側リング6110を折り畳み又は変形しやすくすることにより、内側リング6110の挿入及び/又は除去を容易にする。
【0050】
内側リング6110のいくつかの実施形態は、内側リング6110を通じて延びる1又はそれ以上の内腔を含む。例えば、
図6Aに示す内側リング6110の実施形態は内腔6112を含む。内腔6112の実施形態は、向上した弾性及び向上した可撓性の少なくとも一方を有する。いくつかの実施形態では、内腔6112内にばね金属ワイヤなどのワイヤが配置されることにより、内側リング6110の弾性が向上する。いくつかの実施形態では、1又は複数の内腔6112が内側リング6110の圧縮性を向上させることにより、体腔へ挿入及び/又は体腔から除去しやすくなる。例えば、いくつかの実施形態では、(単複の)内腔6112が内側リング6110の可撓性を増加させ、例えば、より小さな半径の折り畳み、及び/又はより平坦な圧縮状態を可能にする。いくつかの実施形態では、内側リング6110の可撓化により、開創器を体腔の内壁に対してより確実にシールできるようになる。いくつかの実施形態では、1又はそれ以上の内腔6112を含む内側リング6110が、例えば、圧縮状態で(単複の)内腔6112がつぶれることにより、内腔を含まない同様の内側リング6110よりも小さなサイズ及び/又は断面に圧縮される。
【0051】
いくつかの実施形態では、内側リング6110が、モノリシック構造のリング又は環状体として製造される。他の実施形態では、内側リング6110が、第1の端部及び第2の端部を含む略線形体から製造され、これらの端部が一体化されて閉じた形を実現する。その後、第1の端部及び第2の端部は、例えば、接着、溶接、溶融、機械式などの少なくとも1つによる当業で公知のいずれかの好適な手段又は方法を使用して接合される。いくつかの実施形態では、線形体の第1の端部及び第2の端部がカプラを使用して接合される。
いくつかの実施形態では、カプラが内腔6112に係合し、このカプラは、例えば、内腔6112内に受け入れられるように寸法決めされた、カプラの共通の場所から反対方向へ延びる第1の指状部及び第2の指状部を本体の第1の端部及び第2の端部にそれぞれ含む。実施形態では、カプラが、カプラ本体の第1の端部と第2の端部の相対的回転を防ぐ。
【0052】
図6Aに戻ると、外側リング6120は、外側部品6122及び内側部品を含む。図示の実施形態では、外側部品6122が、略円形の設置面積及び略楕円形の断面を有する。
他の実施形態では、外側部品6122が、矩形、六角形、八角形又は別の好適な形状などの別の断面形状を有する。図示の実施形態では、外側部品6122の断面は、幅よりも高さのほうが大きい。いくつかの実施形態では、断面の高さと幅の比率が、外側部品6122の全体的な硬度及び/又は剛性、及び外側リング6120の直径などの因子に関連する。より詳細には、いくつかの実施形態では、より柔らかい外側部品6122が、外側部品6122の断面の高さと幅の比率の増加に相関する。同様に、外側部品6122の直径を増加させると、外側部品6122の断面の高さと幅の比率が増加する。外側部品6122の様々な実施形態は、熱可塑性ポリエステルエラストマ及び/又は熱可塑性ポリエーテルエステルエラストマ(HYTREL(登録商標))、デラウェア州ウィルミントンのDuPont社)及び/又は熱可塑性ポリウレタンエラストマ(PELLETHANE(登録商標)、ミシガン州ミッドランドのDow Chemical社)などの熱可塑性エラストマ材料を含む。外側部品6122の実施形態は、押出成形、射出成形、圧縮成形、又はオーバーモールド成形される。押出成形した外側部品6122のいくつかの実施形態は、ともにヒートシールされた端部を有する。
【0053】
図6Aに示す実施形態では、外側リングの外側部品6122が、外側部品6122を通じて円周方向を延びる、第1のすなわち中央内腔6124aと、第2のすなわち上部内腔6124bと、第3のすなわち下部内腔6124cという3つの内腔6124を含む。いくつかの実施形態では、上部内腔6124b及び下部内腔6124cの一方又は両方が任意である。中央内腔6124aは、外側部品6122の中心周りの、実質的に外側部品6122の楕円形断面の長軸及び短軸の交差点に配置される。上部内腔6124bは、実質的に短軸の第1の側すなわち中央内腔6124cの上方の長軸上に配置される。上部内腔6124cは、実質的に短軸の第2の側すなわち中央内腔6124cの下方の長軸上に配置される。中央内腔6124aは楕円形断面を有し、図示の実施形態では上部内腔6124b及び下部内腔6124cよりも大きい。上部内腔6124b及び下部内腔6124cの各々は、中央内腔6124aから離れて配置された先細部分を含む涙滴形断面を有する。他の実施形態では、内腔6124の各々が、略円形断面などの別の断面形状を独立的に有する。いくつかの実施形態では、内腔6124の断面形状により、内腔6124と、この中に配置された(以下で説明する)内側部品との間の接触が低減され、これによりこれらの間の摩擦及び/又は抗力が低減される。例えば、いくつかの実施形態では、内腔6124が、略正方形、矩形、ダイヤモンド形、六角形、星型などの多角形断面を有する。いくつかの実施形態では、内腔の壁部がテクスチャ加工されることにより、内腔内に配置される内側部品との接触及び摩擦が低減される。
【0054】
外側リングの外側部品6122のいくつかの実施形態は、第1の端部及び第2の端部を有する略直線部材などの分割部材を含む。部材の第1及び第2の端部は、以下でより詳細に説明するように互いに近接してともに結合される。
【0055】
外側リングの内側部品のいくつかの実施形態は、略円形剛性ワイヤ6126を含む。他の実施形態では、この剛性ワイヤが、略長円形又は楕円形などの別の形状を有する。図示の実施形態では、内側部品が、外側部品6122の中央内腔6124b内に配置される。
内側部品のワイヤ6126は、外科切開部又は自然な身体開口部の人体組織に対して柔軟性又は弾力性が無い。従って、ワイヤ6126は、切開部又は身体開口部の開創中に外科切開部又は自然な身体開口部の人体組織に対して曲ったり、撓んだり、及び/又は変形したりしない。図示の実施形態では、剛性ワイヤ6126が、開創器の外側リング6120の周辺形状又は設置面積を定める。剛性ワイヤ6126は、以下でより詳細に説明するように、開創中に外側リングの外側部品6122を回転させるための回転軸、環状軸又は中心点として機能する。ワイヤ6126は、外側リングの外側部品6122よりも著しく硬い全硬ステンレス鋼などの好適な材料を含む。内側部品の剛性ワイヤのいくつかの実施形態は、第1の端部及び第2の端部を有する分割ワイヤ6126を含む。いくつかの実施形態では、剛性ワイヤ6126の第1及び第2の端部が、溶接、接着剤の使用、及び/又は機械式締結具又はカプラの使用のうちの少なくとも1つなどによるいずれかの好適な方法を使用してともに結合される。
【0056】
上述したように、外側リングの内側部品は、略円形剛性ワイヤ6126を含むことができる。剛性ワイヤ6126の直径は、約0.25mm〜約12.7mm(約0.01インチ〜約0.5インチ)である。ワイヤ6126の直径は、創傷の大きさ及び/又は開創器6100のサイズにより異なる。例えば、より大きな創傷は、ワイヤ直径の大型化に相関する。いくつかの実施形態では、ワイヤ直径がワイヤ材料にも相関する。例えば、ワイヤ材料の硬度を増加させるとワイヤ直径を減少させることができる。
【0057】
外側リングの内側部品の剛性ワイヤ6126のいくつかの実施形態は、直線ワイヤとして開始する。直線ワイヤは、外側部品の中央内腔6124aに挿入される。外側リングの外側部品6122の第1及び第2の端部が接合されると、ワイヤは、略円形形状又は楕円形形状などの所望の形状を呈して、ワイヤ6126に予め負荷が加わった状態となり、この負荷によりワイヤ6126が伸びようとする傾向になる。ワイヤ6126の完全に伸びようとする傾向により、外側リング6120が、円形又は楕円形などの所望の形状を保持しやすくなる。
【0058】
外側リング6120のいくつかの実施形態は、外側リングの外側部品6122の第1及び第2の端部をともに結合するとともに外側リングの内側部品のワイヤ6126の第1及び第2の端部をともに結合する単一のモノリシックカプラ6128を含む。この単一のモノリシックカプラの実施形態は、ポリマー、プラスチック又はその他の好適な材料を含む。いくつかの実施形態では、モノリシックカプラが、熱可塑性エラストマ(HYTREL(登録商標)、DuPont社、PELLETHANE(登録商標)、Dow社)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、ポリアミド(ナイロン(登録商標)、DuPont社)、ポリエーテルブロックアミド(PEBAX(登録商標)、Arkema社)及び高密度ポリエチレン(HDPE)のうちの少なくとも1つを含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、内側リング6110及び外側リング6120が、異なる設置面積形状及び/又は設置面積直径を独立的に有する。内側リング6110の直径が大きいほど開創力を大きくすることができるが、体腔に挿入及び体腔から除去しにくくなる。内側リング6110の直径が大きいほど開創時に転動又は回転しやすくなるが、より大きなキャップと結合しやすくなり、従って空間的制約のある手術では使用できない可能性がある。楕円形又は細長の内側リング6110及び外側リング6120では、円形のものと比較した場合、長く真っ直ぐな切開部を開創するために必要な力が減少する。
【0060】
外側リング6120のいくつかの実施形態は、上部内腔6124b及び下部内腔6124cの一方又は両方内に配置された1つ又は2つの分割輪をさらに含む。分割輪については、以下でより詳細に説明する。
【0061】
いくつかの実施形態では、内側リング6110が、外側リングの外側部品6122の材料よりも柔らかい材料を含む。他の実施形態では、内側リング6110が、外側リングの外側部品6122の材料とほとんど同じ硬度の、又は外側リングの外側部品6122の材料よりも硬い材料を含む。
【0062】
図7は、上述した実施形態6100と大まかに類似する開創器7100の別の実施形態の部分的側断面図である。開創器7100は、内側リング7110と、外側リング7120と、内側リング7110と外側リング7120の間に延びて内側リング7110と外側リング7120を結合するスリーブ7130とを含む。図示の実施形態では、開創器の外側リング7120は、第1の内腔7124a及び第2の内腔7124bを含む略楕円形断面を有する外側部品7122を含む。第1の内腔7124a及び第2の内腔7124bの各々は、第1の内腔7124aが楕円形の短軸の第1の側に位置し、第2の内腔7124bが楕円形の短軸の第2の反対側に位置する状態で、実質的に楕円形断面の長軸に沿って位置する。開創器の外側リング7120の内側部品は、外側リングの外側部品の第1の内腔7124a内に配置された第1の分割輪7126aと、外側部品の第2の内腔7124b内に配置された第2の分割輪7126bとを含む。いくつかの実施形態では、第1の分割輪7126a及び第2の分割輪7126bの各々が、分割輪の第1の端部及び分割輪の第2の端部を形成する単一の分割部を周辺部の周りに有する輪を独立的に含む。中立位置では、それぞれの分割輪の第1及び第2の端部が互いに実質的に隣接する。いくつかの実施形態では、例えば、開創下の体壁組織、外側リングの外側部品7122、及びスリーブ7120と比較した場合、開創器7100を使用する状況下では、分割輪7126が実質的に非柔軟性である。
【0063】
いくつかの実施形態では、開創器7100により印加される開創力などの開創器7100の特性、及び体壁内での開口部の開創させやすさが、外側リングの外側部品の第1の内腔7124aと第2の内腔7124bの間の間隔、及び外側リングの内側部品の第1の分割輪7126a及び第2の分割輪7126bの断面サイズ又は直径に少なくとも部分的に依存する。使用時には、開創器の外側リング7120がスリーブ7130の下方に転動し、これにより分割輪7126が張力を受けてユーザに近接し、輪7124の第1及び第2の端部間に空間を形成することにより分割輪7126が開く。一方、この転動により分割輪7126が圧縮を受けてユーザから遠くに置かれ、分割輪7126の第1及び第2の端部が一体となる。このようにして、ユーザから遠位にある剛性分割輪7124が、外側リング7120の回転の軸すなわち中心の役目を果たす。2つの分割輪7126間の距離をさらに離すこと、或いは分割輪7126の強度を高めることの一方又は両方により、開創器の外側リング7120を転動又は回転させる際に使用する力が増加する。従って、第1の内腔7124aと第2の内腔7124bの間隔又は距離、及び第1の分割輪7126a及び第2の分割輪7126bの断面サイズ又は直径は、体壁を開創したときに、開創した体壁により外側リングに印加される力を受けて外側リング7120が広がろうとする傾向に抗して、外側リング7120を回転させる力のバランスを取るように選択される。
【0064】
いくつかの実施形態では、第1の分割部7126a及び第2の分割部7126bが、例えば、硬質焼き戻しワイヤ、ステンレス鋼、ばねの焼き戻しに熱処理したピアノ線、又は実質的に非柔軟性の輪を生成するその他のいずれかの好適な金属を含む。いくつかの実施形態では、第1の分割輪7126a及び第2の分割輪7126bが、例えば、成形、機械加工、及び/又は当業で公知のその他のいずれかの好適な処理により、いずれかの好適な材料によって製造された剛性ポリマー材料を含む。実質的に非柔軟性の分割輪7126は、当業で公知のその他のいずれかの好適な剛性材料を含むこともできる。
【0065】
いくつかの実施形態では、第1の分割輪7126a及び第2の分割輪7126bの断面直径は、外側リングの外側部品7122の断面寸法、及び開創される切開部又は人体開口部のサイズ及び寸法によって異なる。いくつかの実施形態では、長さ約5cm〜約9cmの切開部を開創する際に、約2.5mm〜約3.5mmの、例えば約3mmのワイヤ直径が使用される。いくつかの実施形態では、第1の輪7126a及び第2の輪7126bの各々が、直径約0.25mm〜約6.35mm(約0.01インチ〜約0.25インチ)のワイヤを独立的に含む。
【0066】
外側リングの内側部品の第1の分割輪7126a及び第2の分割輪7126bは、弛緩状態において、各々がそれぞれ配置される第1の内腔7124a及び第2の内腔7124bよりも小さな直径を有する。従って、外側リング7120が弛緩状態にある場合、分割輪7126の各々は張力を受け、外側部品7122は圧縮される。この結果、いくつかの実施形態では、分割輪7126が、閉じた構成にある外側リングの外側部品7122を保持する。いくつかの実施形態では、第1の分割輪7126a及び第2の分割輪7126bの圧縮力も、弛緩状態にある外側部品7122の向きを制御し、すなわち分割輪7126は実質的に上下の関係にあり、外側部品7122の断面の長軸は外側部品7122の縦軸と実質的に平行である。
【0067】
いくつかの実施形態では、個々の分割輪7126が円形又はその他の所望の形状として製造され、第1及び第2の端部が互いに重なり合う。いくつかの実施形態では、第1の分割輪7126a及び第2の分割輪7126bを内腔内にそれぞれ配置したときに、第1の内腔及び第2の内腔7124bの寸法及び外側リングの外側部品7122の構成が、個々の分割輪の第1及び第2の端部が重なり合うのを抑制する。いくつかの実施形態では、内腔7124が、個々の分割輪7126の第1及び第2の端部が内腔7124内に配置されたときに実質的に互いに隣接するように寸法決めされる。他の実施形態は、内腔7124内に配置された少なくとも1つの分割輪7126の第1及び第2の端部間にわずかな間隙を含む。拡張された分割輪からの圧縮バネ力が、外側部品7122を閉じた形状のままとなるように促す。分割輪7126は、外側部品7122の断面の短軸の両側に配置されるので、第1の分割輪7126a及び第2の分割輪7126bは、外側部品7122の断面の長軸が0°及び180°の配向性で垂直のままとなるように外側リング7120を促してその構成を保持し、これにより、以下で説明するように、開創器の外側リング7120にキャップを装着しやすくなる。いくつかの実施形態では、例えば、内腔7124の相対位置、内腔7124の相対直径、分割輪7126の相対弛緩直径、分割輪7126の相対断面直径及び分割輪7126の相対組成物のうちの少なくとも1つを変更することにより、外側リング7120が垂直以外の配向付勢で設計される。
【0068】
外側リング7120が弛緩構成にある場合、第1の分割輪7126a及び第2の分割輪7126bの各々は、実質的に隣接する第1及び第2の端部を有するので、分割輪7126の各々は、開創プロセスにおいて外側部品7122が半分すなわち180°回転するときの中心となる車軸として持続的に機能する。より詳細には、外側リング7120が転動すると、最初は第2の分割輪7126bの上方にある第1の分割輪7126aが、車軸すなわち回転軸の役目を果たす第2の分割輪7126bの周囲かつ外側を転動又は回転し、第1の分割輪7126aの周辺部が拡張して第2の分割輪7126bの周囲を通過して通り越え、この結果第1の分割輪7126が第2の分割輪の下方にくる。外側リング7120が転動し続けると、第1の分割輪7126a及び第2の分割輪7126bの役割が逆転し、第2の分割輪7126bが第1の分割輪7126aの周囲かつ外側を転動し、第2の分割輪7126bの周辺部が拡張して、回転の車軸として機能する第1の分割輪7126bの周囲を通過して通り越える。これらのステップは、切開部又は人体開口部が所望の程度に開創されるまで繰り返される。
【0069】
いくつかの実施形態では、開創器の外側リング7120が、略円形又は楕円形リングなどの所望の形状の押し出し弾性チューブを含む。いくつかの実施形態では、外側部品7122の第1の内腔7124a及び第2の内腔7124b内に配置された第1の分割輪7126a及び第2の分割輪7126bが、それぞれ外側リング7120の骨格又は足場の役目を果たし、この結果外側リング7120の全体的な形状が決まる。いくつかの実施形態では、第1の分割輪7126aの第1及び第2の端部の一方が、外側部品の第1の内腔7124aに挿入され、第2の分割輪7126bの第1及び第2の端部の一方が、外側部品の第2の内腔7124bに挿入される。分割輪7126の各々がそれぞれの内腔7124内に実質的に完全に収まるまで、第1の分割輪7126a及び第2の分割輪7126bの各々がそれぞれの内腔7124内に継続的に供給される。一般に、外側部品7122は、分割輪7126が第1の内腔7124a及び第2の内腔7124b内に位置する形状を呈する。いくつかの実施形態は、外側部品7122の第1及び第2の端部間に配置されたカプラをさらに含む。
【0070】
外側リングの外側部品7122を再び参照すると、外側部品7122が内側部品の周囲を回転したときに、外側部品7122の断面高さと断面幅の比率によってロックポイントが形成される。外側リング7120を回転させると、スリーブ7230が外側リング7120の周囲を巻き上がるので、ロックポイントが外側リング7120の逆回転を低減又は防止し、このようにしてスリーブ7230が外側リング7120からほどけること又は広がることが防がれる。これらのロックポイントは、外側リング7120に増分的な回転位置も提供し、これにより創傷の増分的な開創が実現される。略対称の断面形状が、実質的に均一な回転運動及びロックポイントを提供し、これにより個々の増分的な回転ごとに実質的に均一な「カチッ」とした感覚が得られる。ロックポイントは、外科切開部又は身体開口部を開創するときに遭遇する力の結果、第2の外側リングの第1の外側部品が傾かないようにする役にも立つ。図示の実施形態は、外側部品7120の断面長軸が、外側部品7120の縦軸に対して略垂直又は平行、すなわち0°及び180°となるロックポイントを含む。
【0071】
上述したように、外側部品7120の実施形態は、HYTREL(登録商標)(DuPont社)又はPELLETHANE(登録商標)(Dow社)などの熱可塑性エラストマ材料を含む。外側部品7122の材料の硬度を増加させると、外側リング7120を回転させるために使用する力、及び外側リング7120の回転ごとに外側リング7120を個々のロックポイントからロック解除するための抵抗性が増す。従って、外側部品7122の材料の硬度、並びに外側部品7122の断面高さ及び幅は、外側リング7120に好適な又は十分なロックポイントを提供するように選択される。例えば、外側部品7122の断面の高さと幅の比率を増加させると、材料硬度を低減させながらも同様のロックポイントの抵抗性すなわち「カチッとした感覚」を提供できるようになる。逆に、材料硬度を高めると、外側部品7122の断面の高さと幅の比率を低減できるようになる。
【0072】
外側リング7120の設置面積の様々な実施形態は対称又は非対称であり、体の形、姿勢又は大きさに適合するように、円形、長円形、楕円形又はその他のいずれかの好適な形状のようにサイズ及び形状が異なることができ、これにより作業空間が増大又は向上し、又は腹腔鏡手術中に他の器具又はポートと干渉する可能性が低減される。
【0073】
開創器の外側リング7120の断面プロファイル又は寸法を低減させると、外側リング7120を通じて挿入される器具を挿入する角度の範囲が増加する。より詳細には、外側リング7120の断面高さ及び幅の一方又は両方を低減させることができる。挿入する角度範囲が増加すると、特に直腸又は膣の開創などの身体開口部の開創に有用となる。外側リング7120の断面プロファイルを低減させると、開創中に外側リングの外側部品7122を外側リング7120の内側部品の周囲で転動又は回転させることがより困難になる。従って、いくつかの実施形態では、好適なツールを使用して、外側部品7122を内側部品の周囲で転動させやすくする。
【0074】
図6Aに示す開創器6100の実施形態を参照しながら、切開部又は身体開口部を開創する手術の実施形態について説明するが、この手術は、本明細書に開示する開創器の実施形態全てに適用可能である。使用時には、外科用開創器6100が、腹壁(
図1)内に形成された切開部などの切開部、又は膣(
図2)、口(
図3)又は肛門(
図4)などの身体開口部に挿入される。内側リング6110は、楕円形又はその他の好適な形状に折り畳まれ又は圧縮され、或いは切開部又は身体開口部を通じて関連する体腔内に促される。内側リング6110は、関連する体腔内に完全に配置されると、略円形、楕円形又はその他の元々の形状などの元々の弛緩形状を取り戻すことができるようになる。その後、外側リング6120を引き上げることなどにより、内側リング6110が体腔の内面に接するように引き上げられる。
【0075】
内側リング6110が完全に適所に収まると、外側リング6120が、その内側部品により定められる環状軸の周囲を転動又は回転される。上述したように、転動手順では、外側部品6122のユーザから遠い部分が、ユーザの方へ移動する際に環状軸の内部を通過する一方で、外側部品6122のユーザに近い部分が、ユーザから離れる際に環状軸の周囲を通過する。外側リング6120を転動させると、スリーブ6130が外側リング6120の周囲を転動し、内側リング6110と外側リング6120の間の距離が減少してこれらの間でスリーブ6130に張力がかかり、これにより切開部又は身体開口部が開創される。
【0076】
外側リング6120は、外側リング6120によって所望の状態又は程度の開創が達成され、スリーブの一部が外側リング6120に巻き付けられて体壁の外面に実質的に接するまで転動される。外側リング6120、及びこれに巻き付けられたスリーブの部分が体壁の外面と接触すると、開創器の外側リング6120が、切開部又は人体開口部の、例えば実質的に完全に開創されたような所望の状態又は程度の開創を保持するのに十分に剛性となる。いくつかの実施形態では、切開部又は人体開口部が完全に開創されず、代わりに部分的にのみ開創され、これにより開創器6100に関連するカバー5500(
図5)が切開部又は開口部に対してある程度動けるようになる。さらに、スリーブの一部が巻き付いた外側リング6120が体壁の外面に接すると、開創器の外側リング6120が非柔軟性になり、すなわち開創器6100の使用時に通常経験する力の下で撓むほどの柔軟性又は可能性が無くなる。従って、剛性外側リング6120の実施形態は、切開部又は人体開口部を360°無傷で開創させやすくする。図示の開創器6100は、手術中に切開部又は人体開口部を確実に保護する耐久装置である。
【0077】
図5に示すように、アクセス装置5000のいくつかの実施形態は、開創器5100の外側リングに結合され、例えば気腹を維持するために開創器5100をシールするキャップ、カバー、又は蓋5500を含む。いくつかの実施形態では、蓋5500が、例えば体腔内にアクセスできるようにするために着脱式である。蓋5500のいくつかの実施形態は、透明又は半透明部分を含み、これによりユーザが蓋5500を取り除かずに体腔内を見ることができるようになる。以下で説明するように、蓋5500の1つの実施形態はゲルキャップである。いくつかの実施形態では、開創器の外側リングの外側部品6112(
図6A)の断面形状が、蓋5500が開創器の外側リング6110(
図6A)に部分的に及び/又は誤って結合することを低減又は防止するように選択される。このような断面形状として、楕円形及び矩形、又は六角形、八角形などの、所望の機能性を提供する他のいずれかの好適な断面形状が挙げられる。また、用途及び外科医の好みにもよるが、いくつかの実施形態では、開創器の内側リング6110及び外側リング6120の各々が、独立的に可変の設計構成を含む。例えば、内側リング6110及び/又は外側リング6120の実施形態は剛性又は可撓性であり、円形又は楕円形の設置面積、切開部又は開口部寸法に依存する直径、又は開創力に依存する断面寸法などの、目的の用途に応じた設置面積、断面形状及び/又は寸法を有する。
【0078】
従って、開創器6100の実施形態は、外科医が外科切開部又は自然の身体開口部を素早く開創して保護的にライニングしながら患者間の体壁厚のばらつきに容易に対応できるようにする。また、装置6100の実施形態は、切開部又は開口部の内部及び外部の周囲を効果的にシールし、シールキャップ5500(
図5)を装置6100に結合できるようにし、これにより体腔を効果的にシールして外科手術を行えるようにする。
【0079】
図8Aは、内側リング8110と、外側リング8120と、可撓性スリーブ8130とを含む開創器8100の別の実施形態の部分的側断面図である。テザー8140が、内側リング8110に固定された遠位端8142を含む。テザーの近位端8144は、スリーブ8130及び外側リング8120を通じて延び、図示の実施形態では任意のハンドル8146で終端する。
図8Bに示すように、患者から開創器8100を除去する方法の実施形態では、テザーのハンドル8146を引っ張ると、内側リング8110が外側リング8120の方へ引き寄せられる。テザー8140をさらに引っ張ると、内側リング8110が外側リング8120に接触し、これにより内側リング8110が外側リング8120を通過するときに変形する。米国特許公開第2006/0149137A1号にはテザーの様々な実施形態が開示されており、該特許の開示は引用により本明細書に組み入れられる。
【0080】
いくつかの実施形態では、テザーが、繊維、織紐又は組み紐を含む。いくつかの実施形態では、テザー8140がチューブを含む。いくつかの実施形態では、テザー8140が、例えば、チューブ内に配置された、チューブの壁に一体化された、又はチューブの外壁に固定されたコード及びチューブを含む。テザー8140は、縫合材料、ポリマー樹脂、ポリアミド(ナイロン(登録商標)、ダクロン(登録商標))、ポリエステル、絹、ポリエチレン、ポリエーテルブロックアミド(PEBAX(登録商標))などの少なくとも1つのようないずれかの好適な材料を含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、テザー8140が、開創中に外側リング8120が環状軸の周囲を回転すると、スリーブ8130がスリーブ8130の内壁に解放可能に固定されて、外側リング8120に巻き付くにつれてテザー8140がスリーブ8130の外側リング8120に近い端部から解放されるようになる。
【0082】
テザー8140がチューブを含むいくつかの実施形態では、テザーが、遠位端8142に又はこの近くに配置されたチューブの壁を貫く少なくとも1つの流体開口部をさらに含む。これらの実施形態のいくつかでは、テザー8140が、例えば送気ガスのためのガス入口/出口としても有用となる。いくつかの手術では、開創器8100を使用しているときに、体壁がスリーブ8130内にくびれを形成する。このくびれは、くびれよりも下方の容積とくびれよりも上方の容積との間のガスの交換及び/又は移動を制限することができる。特に、テザーの遠位端8142にある流体開口部はくびれよりも下方に存在し、外側リング8120又はキャップ又はカバー5500(
図5)に又はこの近くに配置された流体開口部はくびれよりも上方に存在する。流体開口部をテザー8140のくびれよりも下方に配置することで、くびれよりも下方の容積へのガス注入及び/又はここからのガス排気が容易になり、例えば切断及び焼灼などの電気外科手術において発生する蒸気及び/又は煙を体腔から排出するために特に有用である。いくつかの実施形態では、管状テザーの近位端8142の流体開口部がゲルキャップを通じて延び、ガス源及び/又は真空源に流体接続される。他の実施形態では、テザーの近位端8142の流体開口部が、例えばゲルキャップの内部に配置された別のガス取付具に流体結合される。
【0083】
図9Aは、開創器9100の内側リング9110を挿入するための挿入ツール9700の実施形態の側面図である。挿入ツールは、オブチュレータ9710及びカニューレ9720を含む。オブチュレータ9710は、近位端及び遠位端を含む細長い円筒体9712と、円筒体9712の近位端にあるハンドル9714と、円筒体の遠位端にあるフック9716とを含む。カニューレ9720は、近位端及び遠位端を含む管状体9722と、近位端にあるハンドル9724とを含む。管状体9722は、近位端及び遠位端の両方で開き、内部にオブチュレータの円筒体9712を摺動自在に受け入れるように寸法決めされる。管状体9722は、開創器の内側リング9110の少なくとも一部を受け入れるようにも寸法決めされる。米国特許公開第2006/0149137A1号には、挿入及び抽出ツールの他の実施形態が記載されており、該特許の開示は引用により本明細書に組み入れられる。
【0084】
図9Aに示すように、内側リング9110をカニューレの管状体9722の遠位端内に押し込み、その後、このカニューレを体壁9750内の開口部又は切開部9752を通じて挿入する。オブチュレータ9710の遠位端を、管状体9722の近位端を通じて挿入して前進させ、これにより内側リング9110が管状体9722から出て体腔9754内に入るように促す。
【0085】
図9Bは、カニューレ9720を使用せずに開口部9752を通じて内側リング9110を体腔9754に挿入する方法の別の実施形態を示している。この実施形態では、内側リング9110の一部を、オブチュレータの遠位端に配置されたフック9716に捕捉する。オブチュレータ9710の遠位端及び捕捉された内側リング9110を、開口部9752を通じて体腔9754内に入るように促す。
【0086】
図9Cは、オブチュレータのフック9716を使用して内側リング9110を除去する方法の実施形態を示している。オブチュレータ9710の遠位端を、体壁内の開口部9752を通じてスリーブ9130と体壁9750の間に挿入する。フック9716で内側リング9110を捕捉した後に、オブチュレータ9710及び内側リング9110を開口部9752から引き抜く。
【0087】
図10Aは、開口部を体腔と体腔外の領域との間でシールしながら体腔外から体腔内へのアクセスを提供する外科用アクセス装置であるキャップ又はカバー10500の実施形態を斜視図で示している。より詳細には、図示のキャップ10500は、開創器の外側リング6120(
図6A)に解放可能に、かつこれをシールしながら結合する。キャップ10500は、開創器の外側リング6120と、キャップリング10510に結合されたパッド10530とに結合するように寸法決め及び構成されたキャップリング10510を含む。キャップ10500の様々な実施形態は、厚み、柔軟性、剛性、均一性などの、自然の体壁と比較して一貫した特性を人工体壁に提供する。
【0088】
図示のキャップ又はカバー10500は略円形である。他の実施形態では、ゲルキャップ10500が、長円形、楕円形、放物型、正方形、矩形、又は別の好適な湾曲又は多角形の形状などの別の形状又は設置面積を有する。いくつかの実施形態では、開創器の外側リング6120及びキャップのキャップリング10510が同じ一般形状又は設置面積を有する。他の実施形態では、開創器の外側リング6120及びキャップのキャップリング10501が、例えば、略円形の外側リング6120及び楕円形のキャップリング10510のように実質的に異なる形状を有する。これらの実施形態では、例えば外側リング6120の両側を圧縮することにより、外側リング6120がキャップリング10510と結合するように変形又は再形成される。例えば、空間が限られた手術には、非円形形状が有用である。上述したように、楕円形の又は細長い開創器を使用して長い真っ直ぐな切開部を開創すると、円形の開創器を使用する同様の手術よりも必要な力が少なくて済む。
【0089】
いくつかの実施形態では、パッド10530がゲルを含む。このような実施形態では、パッド10530が「ゲルパッド」と呼ばれ、キャップ10500が「ゲルキャップ」と呼ばれる。一般に、ゲルパッド及びゲルキャップの説明は、特に明記しない限り、パッド10530がゲルを含まない実施形態に適用される。いくつかの実施形態では、ゲルパッド10530が、例えば、器具がアクセスするために通過する予め形成されたアクセスチャネルを含まない。ゲルパッド10530に穴を開けることによってゲルパッド10530にアクセスチャネル又はアクセス部を形成し、ゲルパッド10530を通じて器具を直接挿入することができる。個々のアクセス部は、アクセス部を通じて挿入される器具が存在する場合には器具シールを、アクセス部を通じて挿入される器具が存在しない場合にはゼロシールを形成する。ゲルは、アクセス部を通じて挿入される様々な形状及びサイズの器具の周囲に気密シールを提供する。ゲルパッド10530のいくつかの実施形態は、やはり体腔内への器具のアクセスを実現する、ゲルパッド10530を直接介したトロカールのアクセスも提供する。ゲルパッド10530の実施形態は、約40mm〜約120mmの作業直径を有し、この直径は、器具及び/又はトロカールを挿入できるゲルパッド10530の一部の直径である。通常、ゲルキャップ10500の実施形態は、作業直径よりも約10mm〜50mm広い。
【0090】
従って、ゲルキャップ10500の実施形態は、複数の器具の交換中に気腹を保持し、意図せぬ気腹の損失を実質的に防ぐ。ゲルキャップ10500の実施形態は、外科手術中の実質的に持続的なアクセス及び可視性も実現する。ゲルキャップ10500の実施形態は、外科空間が限られた手術で使用するための小プロファイルを有する。
【0091】
いくつかの実施形態では、ゲルが、約1000パーセントを上回る伸び、及び約5ショアA未満のデュロメータを特徴とするウルトラゲルである。KRATON(登録商標)及び鉱油を含むウルトラゲルのいくつかの実施形態は、約1500パーセントを上回る伸び、及び他のシール材よりも広いサイズ範囲の器具をシールするような改善されたシール特性を示す。いくつかの実施形態では、器具をシールから除去したときに、ウルトラゲルを含むシールがゼロシールも形成する。従って、ウルトラゲルを含むシールのいくつかの実施形態では、1つのシールが、器具シール及びゼロシールの役目を果たす。
【0092】
キャップリング10510のいくつかの実施形態は、近位部と、遠位部と、近位部から遠位部に延びる縦軸とを含む略円筒形リングを含む。他の実施形態では、キャップリング10510が、楕円形などの別の形状又は設置面積を有する。キャップリング10510の底面図である
図10Bで最も良く分かるように、図示の実施形態では、キャップリング10510の近位部が、その周辺部周りに分散する複数のアパーチャ10512を含む。
アパーチャ10512は、キャップリングの近位部にある壁10514に広がる。他の実施形態では、アパーチャ10512が、キャップリングの壁10514から長手方向内向きに又は長手方向外向きに延びる少なくとも1つの部材に配置される。図示の実施形態では、ゲルパッド10530がキャップリング10510の近位部に配置され、ゲルパッド10530のいくつかの部分がアパーチャ10512を通じて延び、これによりキャップリング10510とゲルパッド10530との間に、キャップリング10510及びゲルパッド10530をともに機械的にロックする連結構造が形成される。
【0093】
図示の実施形態では、キャップリング10510の遠位部が略円筒形であり、開創器の外側リング6120(
図6A)を受け入れるように寸法決め及び構成される。キャップリング10510は、キャップリング10510を外側リング6120に取り外し可能に結合するラッチ機構10516を含む。当業者であれば、キャップリング10510を開創器の外側リング6120に結合するために、突出リップ、レバー、クリップ、ラッチ、舌状突起、溝、ねじ山、バヨネットマウント、ネジ、摩擦固定具、圧縮固定具、スナップキャップなどのその他の機構も有用であることを理解するであろう。図示の実施形態では、開創器の外側リング6120がキャップリング10510の遠位部内に受け入れられると、開創器の外側リング6120が、キャップリング10510の遠位部に配置されたゲルパッド10530の一部に接触してこの中にはめ込まれ、これによりゲルの一部が変位して、ゲルパッド10530と、開創器の外側リング6120及びスリーブ6130との間にシールが形成される。従って、ゲルパッド10530の遠位部は、切開部又は身体開口部と並置される。他の実施形態では、キャップリング10510が、外側リング6120に恒久的に結合又は固定される。
【0094】
いくつかの実施形態のキャップリング10510はポリマーを含む。好適なポリマーの例として、ポリエチレン(PE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリカーボネート、熱可塑性エラストマ(DYNAFLEX(登録商標)、GLS社、KRATON(登録商標)、Kraton Polymers社)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリスチレンなどの少なくとも1つが挙げられる。キャップリングのポリマー部品は、射出成形、メルトキャスティング、吹込み成形などのいずれかの好適な方法により製造される。
【0095】
ゲルパッド10530がキャップリング10510内に鋳造されるプロセスのいくつかの実施形態は、約130℃を上回る温度で約3〜約4時間などの数時間にわたって行われるステップを含む。従って、これらの実施形態のいくつかでは、これらの条件下でキャップリング10510が変形しない。
【0096】
ゲルパッド10530のいくつかの実施形態は弾性ゲルを含む。2003年3月20日に出願された米国特許出願第10/381,220号にこのようなゲルの例が記載されており、該特許出願の開示は、引用により本明細書に完全に収められているかのように本明細書に組み入れられる。ゲルの実施形態は、少なくとも1つのトリブロック共重合体を、トリブロック共重合体の真ん中のブロックを溶解する溶媒と混合することにより調製される。通常、この混合物はスラリである。通常、端部ブロックはスチレンなどの熱可塑材を含むのに対し、真ん中のブロックは、エチレン/ブチレン、イソプレン又はブタジエンなどの熱硬化性エラストマを含む。トリブロック共重合体の例としては、スチレン−エチレン/ブチレンスチレン(SEBS)、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)及びスチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)が挙げられる。いくつかの実施形態では、溶媒が鉱油などの油である。トリブロック共重合体の混合物すなわちスラリを加熱すると、真ん中のブロックが鉱油中に溶解し、これにより不溶性端部ブロックの網状構造が形成される。結果として得られる網状構造は、元の共重合体と比較して強化された弾性特性を有する。いくつかの実施形態では、使用するトリブロック共重合体が、スチレンのゴムに対する比率が33/67のKRATON(登録商標)G1651である。このゲルは、一旦形成されると実質的に恒久的なものとなり、これ以降は端部ブロックの性質により熱可塑性エラストマとして処理することができる。混合物すなわちスラリは、ゲルになる最低温度を有しており、この温度は最低ゲル化温度(MGT)と呼ばれる。通常、この温度は、熱可塑性端部ブロックのガラス転移温度+2、3度に一致する。例えば、KRATON(登録商標)G1651と鉱油の混合物のMGTは約120℃である。スラリがMGTに達してゲル状態への変質が起きると、ゲルがより透明になることにより、スラリがゲル状態に完全に変質したことを確認する視覚的終点が得られ、この時点でゲルを冷却することができる。ゲルのいくつかの実施形態は、トリブロック共重合体の代わりに又はこれに加えてジブロック共重合体を含む。ジブロック共重合体の様々な実施形態は、スチレンなどの熱可塑性の第1の端部ブロックと、エチレン/ブチレン、イソプレン又はブタジエンなどの熱硬化性エラストマの第2の端部ブロックとを含む。好適なジブロック共重合体の例は、スチレン−エチレン/ブチレン(SEB)である。
【0097】
所定の質量のスラリが完全なゲルを形成するには、端部ブロックが、相互接続された網状構造又はマトリクスを形成するための十分な時間を得られるように、スラリの質量全体をMGT以上に加熱してこの温度以上に保持する。スラリは、MGTと、スラリ/ゲルの成分が分解及び/又は酸化し始める温度との間の温度でゲルを形成し続ける。例えば、スラリ/ゲルが250℃を上回る温度で加熱されると、スラリ/ゲル内の鉱油が不安定になり酸化し始める。酸化によって、ゲルは茶色になり油性になることができる。
【0098】
所定の容積のスラリがゲルを形成する速度は、スラリの質量全体がMGTに達する速度に依存する。また、MGTよりも高い温度では、端部ブロックの網状構造がより急速に分散して形成されることにより、ゲルの形成が促進される。
【0099】
様々なベースゲル製剤を互いに混合又は合金化して、様々な中間特性のゲルを提供することもできる。例えば、KRATON(登録商標)G1701Xは、スチレンのゴムに対する全体的な比率が28/72の、70パーセント(70%)のSEBと30パーセント(30%)のSEBSとの混合物である。当業者であれば、各々が低いデュロメータ、高い伸び、及び良好な引裂強度などの1又はそれ以上の利点を示す実施形態を提供するほとんど制限の無い数の組み合わせ、合金、及びスチレン対ゴムの比率を考案できることを認識するであろう。
【0100】
ゲル材のいくつかの実施形態は、シリコン、軟質ウレタン、さらにはより硬質なプラスチックなどの、発泡剤によりゲルの密封特性を向上させるポリマーをさらに含む。好適なシリコンの例として、電子カプセル化に使用されるものが挙げられる。好適なより硬質なプラスチックの例としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、イソプレン、KRATON(登録商標)ニート、及びその他のKRATON(登録商標)/油混合物が挙げられる。KRATON(登録商標)/油混合物では、好適な油として、植物油、石油及びシリコンオイル並びに鉱油が挙げられる。
【0101】
ゲルのいくつかの実施形態は、強化された潤滑性、改善された外観及び創傷の保護のうちの少なくとも1つなどの1又はそれ以上の望ましい特性を提供する1又はそれ以上の添加剤を含む。添加剤はゲルに直接組み込まれ及び/又は表面処理として施される。いくつかの実施形態では、その他の化合物をゲルに添加して物理的特性を変更し、及び/又は結合部位及び/又は表面電荷を提供することにより、その後の表面の変更を支援する。また、いくつかの実施形態では、異なる色のゲルを形成するためにスラリに油性着色剤が添加される。
【0102】
ゲルパッド10530のいくつかの実施形態は、少なくとも1つの表面上にポリエチレン層を含む。ポリエチレンは、鉱油、及びゲルパッド10530の1又はそれ以上の面に適用される溶液中に溶解する。鉱油は蒸発することはないが、その代わり時間とともにゲルパッドに吸収され、後にはゲルパッドの表面上の層としてのポリエチレンが残る。
【0103】
いくつかの実施形態では、ゲルパッド10530を製造するために使用するトリブロック共重合体/溶媒混合物/スラリが、約90重量パーセント(90%)の鉱油と、約10重量パーセント(10%)のKRATON(登録商標)G1651とを含む。熱力学的観点からすると、この混合物は鉱油と同じように挙動する。鉱油の熱容量は比較的高いので、0.45kg(1ポンド)のスラリを約130℃で均質なゲルに変形させるには、約3〜約4時間かかることがある。形成されると、このゲルを、ゲルに明らかな悪影響を与えずにできるだけ素早く冷却させることができる。いくつかの実施形態では、ゲルが冷水浸漬により冷却される。他の実施形態では、ゲルが空冷される。当業者であれば、他の実施形態では他の冷却技術が使用されることを認識するであろう。
【0104】
KRATON(登録商標)/油ゲルのいくつかの特性は、成分の重量比によって異なる。一般に、鉱油の割合が高いとゲルが柔らかくなり、KRATON(登録商標)の割合が高いとゲルが硬くなる。ゲルが柔らかすぎると、手術中に患者の体腔に送気が行われたときにゲルキャップ10500が過度にテント化又はドーム化する。柔らかすぎるゲルのいくつかの実施形態は、適切な器具シール及び/又はゼロシールも実現する。しかしながら、ゲルは、器具が存在する場合及び器具が存在しない場合の両方において適切なシールを提供するのに十分柔らかくすべきである。
【0105】
放置する時間が長期にわたると、スラリ内のKRATON(登録商標)などの共重合体及び鉱油などの溶媒が分離することがある。高剪断ミキサでスラリを混ぜ合わせて均一性を高めることができる。しかしながら、スラリを混ぜ合わせることにより、スラリに空気が導入又は追加される可能性がある。スラリから空気を除去するために、スラリを脱気することができる。いくつかの実施形態では、スラリが、例えば真空チャンバ内で真空下で脱気される。いくつかの実施形態では、印加される真空が、約0.79水銀柱メートル(約29.9水銀柱インチ)、すなわち約1気圧である。任意に、真空下でスラリをかき回し又は混ぜ合わせることにより空気が除去されやすくなる。真空下での脱気中、通常スラリは膨張し、その後泡立って、その後容積が減少する。通常、実質的に泡立ちが止むと真空が中止される。真空チャンバ内でスラリを脱気させると、スラリの容積は約10パーセント(10%)減少する。いくつかの実施形態では、スラリを脱気させると、完成したゲルの酸化が抑えられる。
【0106】
スラリを脱気させると、ゲルは硬くなる傾向にある。約91.6重量%の鉱油及び約8.4重量%のKRATON(登録商標)G1651を11:1の比率で含む脱気スラリから形成されるゲルは、約90重量パーセント(90%)の鉱油及び約10重量パーセント(10%)のKRATON(登録商標)G1651を9:1の比率で含む脱気していないスラリから形成されるゲルと同じ硬度を有する。
【0107】
通常、鉱油はKRATON(登録商標)よりも密度が低いので、この2つの成分は混合後に分離し、密度の低い鉱油が容器の上方に上昇する。通常、静止したスラリを数時間かけてゲルに変化させると、この位相分離が発生する。このため、結果として得られるゲルは非均質であり、濃度が高い鉱油が上部に、濃度の低い方が下部にくる。分離速度は、加熱されるスラリの深さ又は最上部の高さの関数である。ゲルの相対的均一性に関連する要素として、スラリの質量、最上部の高さ、ゲルが固化する温度、及びゲルにエネルギーが伝達される速度が挙げられる。
【0108】
いくつかの実施形態では、ゲルパッド10530又はゲルキャップ10500がガンマ滅菌され、これは、酸化エチレンなどの他の滅菌処理と比較して、容認されるのが相対的及び/又は比較的に容易である。しかしながら、ガンマ滅菌によってゲルパッド内に大きな泡が形成されることがあり、これが滅菌済み装置における美容上及び/又は美観状の問題となる。通常、泡には、99パーセント(99%)を超える室内空気が含まれるので、溶解した空気は、スラリをゲルに変化させる前にスラリから有利に除去される。例えば、上述したようにスラリを真空下で脱気させ、その後加熱によりゲル化することができる。
ガンマ滅菌中に、ゲル内にいくつかの泡が形成され得るが、通常は約24〜約70時間かけて消失する。通常、室温の鉱油は、約10パーセント(10%)溶解ガスを有する。上述したように、ゲルから空気を除去するとゲルは固化する。しかしながら、この効果は、ガンマ滅菌中にγ放射線によってゲルが軟化することにより相殺される。
【0109】
ゲルパッド10530がガンマ滅菌されるいくつかの実施形態では、ゲルが、約90重量パーセント(90%)の鉱油及び約10重量パーセント(10%)のKRATON(登録商標)を含む。上述したように、スラリを脱気させるとゲルが固化する。しかしながら、γ放射線による軟化によって相殺されることにより、約90重量パーセント(90%)の鉱油と約10重量パーセント(10%)のKRATON(登録商標)とを含む、脱気されずにガンマ滅菌されたゲルと同じ硬度のゲルが得られるようになる。
【0110】
いくつかの実施形態では、ゲルパッド10530がキャップリング10510に結合され、取り付けられ、ともに形成され、又は一体化されて、キャップリング10510とスリーブ6130(FlG.6A)との間に気密シールを提供する。ゲルパッド10530は、キャップリング10510の開口部全体を覆ってシールするとともに、創傷又は人体開口部全体を実質的に覆う。上述したように、ゲルパッド10530は、これを通じて挿入される様々な形状及びサイズの器具の周囲に気密シールを提供する。
【0111】
キャップリング10510のゲルパッド支持構造がDYNAFLEX(登録商標)又はKRATON(登録商標)などの熱可塑性エラストマを含み、ゲルパッド10530がKRATON(登録商標)などの同様の熱可塑性エラストマを含む実施形態では、ゲルパッド10530とキャップリング10510の間の接着性の向上が示される。ゲルパッド10530内のKRATON(登録商標)のポリスチレン成分が、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリスチレン及びその他の同様のポリマーとの接着性を向上させる。
【0112】
キャップリング10510がポリカーボネートを含むいくつかの実施形態では、キャップリング10510のポリカーボネート成分が、KRATON(登録商標)を含むゲルパッド10530の典型的な製造温度である130℃においてゲルパッド10530と結合しない。しかしながら、鋳造中に数分間にわたって温度を約150℃に上げると、ゲルパッド10530がキャップリング10510に結合する。ゲルパッド10530及びキャップリング10510を、ゲルのポリスチレン成分及びポリカーボネートの両方が同時に融点を超える温度にまで加熱することにより、これらの間に結合を形成できるようになると考えられる。他の実施形態では、未硬化ゲル及びキャップリング10510を、キャップリング10510内のポリカーボネートのガラス転移温度近くに又はこの温度に加熱することにより、ゲルパッド10530がキャップリング10510に結合する。
【0113】
いくつかの実施形態では、ゲルが鉱油を含み、キャップリング10510が、ポリエチレン(PE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)及び超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)などの、製造条件下で鉱油中に溶解するポリマーを含む。ポリエチレン(PE)を一例として用いると、PEは鉱油よりも分子量が高く、ゲルパッド10530を鋳造するために使用する温度において鉱油中に溶解する。従って、キャップリング10510内のPEの一部が、例えば約130℃を上回る処理温度でゲルパッド10530内の鉱油中に溶解するので、キャップリング10510内のPEとゲルパッド10530との間で結合が生じる。
【0114】
ゲルキャップを製造する方法の実施形態では、キャップリング10510と一体になってゲルパッドの所望の形状に負の空間を含むようになる金型内にキャップリング10510を配置して、金型に未硬化ゲルを加える。その後、アパーチャ10512を覆って満たすのに十分な未硬化ゲルが金型に加えられる。未硬化ゲルはアパーチャ内を流れ、これを満たしてアパーチャ内に残る。また、いくつかの実施形態では、キャップリング10510の遠位部内に延びるのに十分な未硬化ゲルを金型に充填する。ゲルが硬化した後、アパーチャ内のゲルが、個々のアパーチャ10512の第1の面上のゲルをアパーチャの第2の面上のゲルに接続して結合することにより、ゲルパッド10530がキャップリング10510に機械的にロックされる。
【0115】
上述の機械的連結に加え、又はこれの代わりに、いくつかの実施形態は、ゲルパッド10530をキャップリング10510に結合する別の方法を含む。このような方法は、例えば、別個に形成されたゲルパッド又はゲルスラグ10530とキャップリング10510とを結合するのに有用である。いくつかの実施形態は、シアノアクリレート(SUPERGLUE(登録商標)又はKRAZY GLUE(登録商標))などの固着剤又は接着剤を使用して、ゲルパッド10530をキャップリング10510に結合させる。この固着剤は、ゴム又はトリブロック共重合体のスチレン成分のいずれかに結合し、この結合はしばしばゲル材自体に結合するよりも強いと考えられる。いくつかの実施形態は、溶媒がキャップリング10510内のプラスチック及びゲルパッド10530内のポリスチレンを溶解する溶媒接着を使用する。溶媒は、噴霧法及び/又は浸漬法などのいずれかの好適な方法によりゲルパッド10530及びキャップリング10510に塗布される。実際には、溶媒がキャップリング10510のプラスチック及びゲルパッド10530内のポリスチレンを溶かすことにより両者の間に結合が生じ、この結合は溶媒が蒸発した後にも残る。
【0116】
ゲルキャップ10500を製造する実施形態では、ゲルパッド10530をキャップリング10510内に鋳造してゲルキャップ10500を形成する。キャップリング10510は、鋳型の型穴内に位置決め又は配置される。型穴の実施形態は、キャップリング10510の環状壁の支持部を含む。金型の実施形態は、アルミニウム、銅、及び真鍮の少なくとも1つなどの十分な放熱特性を有する材料を含む。当業者であれば、いくつかの実施形態では、放熱特性の低い他の金型材料でも容認可能な部品が製造されることを認識するであろう。さらに、金型のいくつかの実施形態は、冷却材を送り込む溝などの能動冷却要素を含む。
【0117】
その後、型穴及びキャップリング10510アセンブリに所望量のトリブロック共重合体/鉱油スラリを充填して、スラリがキャップリング10510に接触するようにする。
いくつかの実施形態では、スラリが、例えば約52℃(125°F)に予熱され、これにより型穴をスラリによって完全に充填しやすくなることにより、ゲル内に空隙が生じる確率が減少する。スラリをMGT未満の温度に予熱すると、スラリの粘度が低減されて、スラリがより容易に流動できるようになる。上述したように、スラリのいくつかの実施形態は、鋳造前に真空で脱気される。いくつかの実施形態では、型穴の充填中に導入された可能性のある空気を除去するために、及びスラリを金型の空隙内へ流動させやすくするために、スラリが型穴内に充填された後も脱気される。金型、キャップリング及びスラリは、スラリが約150℃の温度に達するまで、例えば炉内で加熱される。上述したように、スラリは約120℃でゲルに変わるが、このゲルは、約150℃になるとポリカーボネートキャップリング10510に結合する。キャップリング10510に使用される材料によっては、約150℃以外の温度で結合が生じることがある。キャップリング10510が、120℃などのMGTよりも低い融点を有する材料を含む実施形態では、ゲルパッド10530がゲルスラグとして別個に成形され、その後、このゲルスラグが上述したようにキャップリング10510に結合される。
【0118】
例えばスラリが完全にゲルに変化した場合、ゲルパッドの温度が約150℃に達すると、ゲルキャップ10500は、例えば、空気冷却、冷水浸漬、又は別の好適な方法により冷却される。150℃では、ゲルパッド10530は柔らかく容易に歪む。冷却中に現れるゲルパッド10530の歪みは、冷却後に設定される。従って、いくつかの実施形態では、ゲルキャップ10500を金型内で冷却することにより、ゲルパッド10530が歪む可能性が低減する。冷却時間に影響を与える要素としては、金型のサイズ及び構成、ゲルの量、冷却媒体の温度及び量、冷却媒体の特性、及び型材が挙げられる。一例として、特定のゲルキャップ10500の冷却時間を、空冷で約2時間、及び水冷で約15分とすることができる。空冷又は水冷に関わらず、ゲルの最終特性は実質的に同じである。通常は、ゲルキャップ10500をほぼ周囲室温に冷却するが、所望であればより低い温度に冷却することもできる。ゲルは約0℃で硬化し、このことは、例えば、別個に製造したゲルパッド10530とキャップリング10510を結合する場合などの二次作業において有用である。ゲルが硬化した後は、いつでもゲルキャップ10500を金型から取り外すことができる。
【0119】
金型から除去されると、通常、ゲルパッド10530は粘着性のある表面を有する。ゲルパッド10530をコーンスターチなどの粉末でコーティングすると、硬化したゲルパッド10530の粘着性が実質的に低減又は除去される。
【0120】
上述したように、いくつかの実施形態では、ゲルパッド10530がキャップリング10510と別に成形され、ボンディングなどの二次作業においてキャップリング10510に結合される。いくつかの実施形態では、ゲルパッド10530が、外周がキャップリング10510の内部円筒壁の周囲よりも小さく、高さがキャップリング10510の高さよりも高いゲルスラグとして成形される。ゲルパッド10530がキャップリング10510と別個に成形されるので、ゲルを完全にスラリに変化させるためには、ゲルが実質的に透明になる約120℃などのMGTにスラリを加熱すればよい。上述したように、ゲルスラグを約0℃などに冷却し、その後キャップリング10510の内部円筒壁内に配置することができる。
【0121】
いくつかの実施形態では、ゲルスラグを長手方向に圧縮することにより、ゲルスラグの外周が拡張して、ゲルスラグをキャップリング10510の内部円筒壁に押し付ける圧縮成形を通じてゲルスラグがキャップリング10510に結合される。その後、圧縮されたゲルスラグ及びキャップリング10510は、ゲル内のポリスチレンとキャップリング10510のポリマーがこれらの間に結合を形成するのに十分な温度まで加熱される。ゲルスラグをキャップリング10510と別個に成形し、その後キャップリングにゲルスラグを熱結合させることは、特にキャップリング10510がゲルのMGTよりも融点の低い材料を含む実施形態において有用である。このような状況では、ゲルスラグを別個に成形して、キャップリング10510を溶かさずにキャップリング10510に熱結合させることができる。
【0122】
パッドのいくつかの実施形態は、ゲルの代わりに、又はこれに加えて、ゴム、合成ゴム、シリコン、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)、エチレンプロピレンコポリマー(EPゴム)、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリウレタン、ブタジエンスチレン、エチレン酢酸ビニル(Eva)、ポリクロロプレン(Neoprene(登録商標))、パーフルオロエラストマ(Kalrez(登録商標))などのうちの少なくとも1つのような別の可撓エラストマ材料を含む。いくつかの実施形態は、多層構造体及び/又は1又はそれ以上のポリマー材料から成る複数のシートなどの複合物を含む。例えば、いくつかの実施形態は、機械的強度、耐摩耗性、抗菌性などの望ましい機能を提供する外面及び/又はシートを含む。パッド又は人工体壁の様々な実施形態は、これらを通じて延びる器具又はトロカールを並進及び/又は枢動できるようにする。
【0123】
開創器6100を使用して切開部又は身体開口部を開創する方法の実施形態については既に詳細に説明した。この方法では、スリーブ6130の一部が巻き付いた開創器の外側リング6120が体壁の外面と実質的に接する。その後、ゲルキャップ10510が開創器の外側リング6120に結合されることにより、体腔と体腔外の領域との間の開口部がシールされ、外科医が体腔に送気できるようになる。
【0124】
上述したように、ゲルキャップ10500の実施形態は、ゲルパッド10530内に予め形成されたアクセスチャネルを含まない。使用時には、ゲルパッド10530を通じて器具を直接挿入することができ、これによりゲルパッド10530を通じたアクセスチャネルが形成される。ゲルが様々な形状及びサイズの器具の周囲に気密シールを提供するので、アクセスチャネルを通過する器具が存在する場合には、ゲルキャップ内に形成される個々のアクセスチャネルが器具シールを形成する。器具をゲルパッド10530から除去すると、器具によってゲルパッド内に形成されたチャネルが閉じてゼロシールを形成する。
【0125】
しかしながら、ゲルパッド10530のいくつかの実施形態は、アクセスチャネルを通じて器具の挿入及び除去を繰り返すことにより損傷し、例えば破砕、剥落などを示すようになる。この損傷は、影響を受けたアクセスチャネルの器具シール又はゼロシールを劣化させる可能性がある。損傷したゲルの断片又は粒子が体腔内に入り込む可能性もある。従って、特にアクセスチャネルが、挿入、除去、前進、開創、回転及び/又はその他の操作などの器具操作の繰り返しに直面するいくつかの実施形態は、ゲルパッド10530を通じて挿入されたトロカールなどのアクセス装置を器具のアクセスに使用する。個々のトロカールをゲルパッド10530を通じて挿入することにより、ゲルに損傷を与えることなくトロカールを介して器具の導入、除去及び/又は操作を繰り返すことができるようになる。通常、手術中には、トロカール自体は幅広く操作されないので、トロカールが通過するアクセスチャネルは損傷を受けず、これによりゲルパッド10530の完全性が保たれる。トロカールの実施形態は、通常の条件下で不具合を生じず幅広い器具操作に耐えるように設計される。
【0126】
ゲルキャップ10500は、最初からアクセスチャネルを含まないので、外科医は、ゲルキャップ10500を通じた器具の配置を自由に決定することができる。さらに、外科医は、ゲルキャップ10500の領域内にポートを制限無く柔軟に配置及び再配置できるとともに、異なる臨床診断のために異なるトロカールのサイズを選択することができる。
ゲルキャップ10500は取り外し可能であるため、大きな検体を除去することができる。ゲルキャップ10500は、除去すると開創器の外側リング6120に再結合することができ、これによりシールが復元されるとともに、外科医が体腔に再送気できるようになる。
【0127】
さらに、ゲルの実施形態は、物理的な完全性を失うことなく変形可能でありながら、ゲルを通じて延びるあらゆる器具との実質的に気密な器具シール、及びゲルを通じて延びる器具が存在しないあらゆるアクセスチャネルのための気密ゼロシールを保持する。従って、ゲルキャップ10500の実施形態は、ゲルパッド10530を通過する器具が、並進的に又は位置的に、及び角度的に又は枢動的に「浮くこと」すなわち自由度を得ることを可能にする。この浮くことにより、器具がキャップリング10510及びその他の器具に対して動くことができるようになる。これとは対照的に、他の単一の又は限られたポートシステムでは、器具が一方又は両方に並進的に又は角度的に浮くことはできない。
【0128】
図11Aは、ゲルパッド内に配置された複数のアクセスポート、シール又はシール弁を含むゲルキャップ11500の実施形態の平面図である。
図11Bは、開創器上に取り付けられたゲルキャップ11500の斜視平面図である。
図11Cは、開創器上に取り付けられたゲルキャップ11500の斜視底面図である。ゲルキャップ11500は、上述した実施形態のキャップリング及びゲルパッドと大まかに類似するキャップリング11510及びゲルパッド11530を含む。
【0129】
ゲルキャップ11500は、複数のアクセスポート11540をさらに含み、その少なくとも一部がゲルパッド11530内に配置又は埋設される。図示の実施形態では、アクセスポート11540が低プロファイルを有し、すなわちゲルパッド11530の近位面よりも上方に、及び/又はゲルパッド11530の遠位面よりも下方に突出せず、又は最小限にしか突出しない。従って、アクセスポート11540の長さはゲルパッド11530の厚みと類似し、ゲルパッド10530よりも上方に位置するシールアセンブリと、ゲルパッド11530を通じて延びるカニューレとを含む、ゲルパッド11530に挿入される典型的なトロカールの長さよりも短い。アクセスポート11540の長さが削減されることにより、アクセスポート11540を通じて延びる器具の角度的な又は枢動的な動きが増すとともに、湾曲した及び/又は角形の器具も使用できるようになる。図示の実施形態では、アクセスポート11540が、ゲルキャップ11500を使用する状態では実質的に恒久的なものであり、すなわち取り外しできない。追加のポートが望ましい場合には、ゲルパッド11530を通じてトロカールを挿入することもできる。
【0130】
個々のポート11540は、ゲルパッド11530の近位側から遠位側へ延びる縦軸と、ゲルパッド11530の近位側に配置された第1のシール11542と、第1のシール11542の遠位に配置された第2のシール11544とを含む。ポート又はシール11540の各々の姿は、ゲルパッド11530を貫通するアパーチャを有し、縦軸と一致する。図示の実施形態では、第1のシール11542が、第1のシールを通じて延びる器具とともに器具シールを形成し、第2のシールを通じて延びる器具が存在しない場合、第2のシール11544がゼロシールを形成する。
【0131】
図示の実施形態では、第1のシール11542が隔壁シールを含む。個々の隔壁シールは、隔壁シールに通される最も小さな器具の断面よりも若干小さな、隔壁シールを貫通するアパーチャ11546を含む。隔壁シールのアパーチャ11546は、ゲルパッドを貫通するアパーチャとポート11540の縦軸と実質的に位置合わせされる。隔壁シールのアパーチャ11546を通じて器具が挿入されると、アパーチャ11546が拡張して器具の外面に係合し、これにより外面とのシールを形成する。隔壁シールは、挿入される器具に抗してアパーチャを付勢するエラストマ材料を含む。当業者であれば、他の実施形態では他の種類の器具シールが使用されることを理解するであろう。
【0132】
図示の実施形態では、第2のシール11544が二重ダックビル弁を含み、この弁は、挿入される器具が存在しない場合にゼロシールを提供するゼロ閉鎖シールとして機能する。当業者であれば、第2のシールが、ダックビル弁、フラップ弁などの別の種類のシールを含むことを理解するであろう。二重ダックビル弁は、エラストマ材料として成る。いくつかの実施形態では、第1のシール11542及び第2のシール11544の各々が、ゴム、合成ゴム、シリコン、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)、エチレンプロピレンコポリマー(EPゴム)、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリウレタン、ブタジエンスチレン、エチレン酢酸ビニル(Eva)、ポリクロロプレン(Neoprene(登録商標))、パーフルオロエラストマ(Kalrez(登録商標))などのうちの少なくとも1つのようなエラストマ材料を独立的に含む。
【0133】
従って、使用時には、シールを通じて挿入された器具が存在する場合には隔壁シールが器具シールを提供し、シールを通じて挿入された器具が存在しない場合にはダックビル弁がゼロシールを提供する。図示の実施形態は、ゲルパッド内に異なるサイズのポート又はシール11540を含む。ポート11540をシールする個々のサイズは、このポートを通じて挿入される異なる範囲の器具サイズに対応する。通常、ポートのサイズは、5mm、11mm、又は12mmなどのように、ポートが対応する最も大きな器具の直径として与えられる。
図11D、
図11E及び
図11Fは、
図11A〜
図11Cに示すゲルキャップ11500の実施形態の小さい方のポート11540a及び大きい方のポート11540bを通じて挿入された肉薄の器具11550a及び肉厚の器具11550bのそれぞれ斜視平面図、斜視底面図及び側面図である。
【0134】
図11Gは、例えば、カメラ又は腹腔鏡のための固定ポート位置をさらに含むゲルキャップ11500の実施形態の上面斜視図である。固定ポート11560は、固定ポート11560を通じて挿入されたカメラ又は腹腔鏡の位置を保持するロック機構11562を含む。いくつかの実施形態では、ポート11540の1つが、体腔にガスを送気し、減圧し及び/又は排出するためのガス入口及び/又は出口ポートとして使用されるストップコック及び/又はガスフィッティングをさらに含む。いくつかの実施形態では、ガス入口/出口ポートがキャップリング11510上に配置される。
【0135】
図12は、上述した開創器及びゲルキャップの実施形態と類似の、開創器12100及びキャップ又はカバー12500を含むアクセス装置システム12000の実施形態の切り取り斜視図である。開創器12100は、内側リング12110と、外側リング12120と、内側リング12110と外側リング12120の間に延びるスリーブ12130とを含む。図示の実施形態では、キャップ12500は、近位側と、遠位側と、キャップリング12510と、ゲルパッド12530とを含むゲルキャップである。図示の実施形態では、キャップリング12510は、開創器の外側リング12120を内部に受け入れるように寸法決めされた管状リングを含む。キャップリング12510の遠位側は、外側リング12120が可逆的に通過するのに十分に径方向に変形可能な環状スロット12520を含む。従って、図示のキャップリング12510の実施形態は、キャップ12500をスナップ嵌合又は摩擦嵌合で外側リング12120に固定する。
【0136】
図13は、アクセス装置システムのいくつかの実施形態の構成部品であるトロカール13800及び任意のオブチュレータ13900の実施形態の分解図である。図示の実施形態では、オブチュレータ13900が、尖った穿刺先端13910を含む。トロカール13800及びオブチュレータ13900が体壁ではなくゲルパッド10530を通じて挿入される実施形態では、上述したように、ゲルパッド10530が、下にある組織から離間された人工体壁の役目を果たすので、内在する組織が先端13910との接触によって損傷する可能性が低減される。他の実施形態では、オブチュレータの先端13910が、尖っていない及び/又は刃を持たないなどの別の形状を有し、これにより開創器の開創シースなどのアクセスシステムのその他の部品が損傷する可能性が低減される。
【0137】
トロカール13800は、近位端、遠位端及び縦軸を含む。トロカール13800は、縦軸に沿って延びるカニューレ13810を含む。カニューレ13810の近位端には、トロカールシール13820が配置される。カニューレ13810の遠位端又は先端には、リテーナ13830が配置される。図示の実施形態では、カニューレ13810の遠位端又は先端に角度が付けられていない。他の実施形態は、角度を付けたカニューレ13810の遠位端又は先端を含む。図示のトロカール13800の実施形態は、送気ガスの入口を含まない。従って、通常、トロカール13800は、体腔に送気を行わない又は別の装置を介して送気を行う手術で使用される。2007年2月22日に出願された米国特許出願第11/677,994号には、トロカールの他の実施形態が開示されており、該特許の開示は引用により本明細書に組み入れられる。
【0138】
カニューレ13810は、長形管状カニューレ本体13812を介して受け取られる器具又は器具類を収容するように寸法決めされた長形管状カニューレ本体13812を含む。図示の実施形態では、カニューレ本体13812が略円筒形のチューブであり、使用時にはゲルパッド10530を通じて延びる。図示の実施形態では、カニューレ本体13812が、トロカールシール13820が結合されて、カニューレ本体13812よりも大きな外径を有するカニューレ13810の近位端から延びる。
【0139】
いくつかの実施形態では、カニューレ本体13812が、体壁ではなく既知の一貫した厚みのゲルパッド10530(
図10A)のみを横切ればよいので、カニューレ13810が比較的短い。従って、カニューレ本体13812のいくつかの実施形態では、長さがゲルパッドの厚みよりもせいぜい約2倍、約1.5倍、約1.2倍、又は約1.1倍である。いくつかの実施形態では、カニューレ本体13812が、ゲルパッドの厚みよりも約20mm、約10mm又は約5mm未満しか長くない。いくつかの実施形態では、ゲルパッドがカニューレ本体13812の厚みとほぼ同じ長さである。他の実施形態では、カニューレ本体13812が、体壁を横切るために使用するカニューレにとって一般的な長さなどの異なる長さを有する。カニューレ本体の長さが短いことにより、カニューレ本体を通過する器具類の角度自由度が増える。より短いカニューレ本体の実施形態は湾曲した器具にも対応する。カニューレ13810は、いずれかの好適な生体適合性材料を含む。いくつかの実施形態では、カニューレ13810が可撓性材料を含む。
【0140】
図示のトロカールシール13820は、器具又は隔壁シール13822及びゼロシール13824を含む。器具シール13822は通過する器具をシールし、これにより気腹が保持される。ゼロシール13824は、トロカールシール13820を通過する器具が存在しないときにシールを提供する。器具シール13822及びゼロシール13824は、カニューレ13810の近位端に配置されたハウジング13826内に受け入れられ、シールカバー13828によってハウジング内に固定される。
【0141】
カニューレ13810の遠位端又はその近くには、リテーナ13830が配置される。
図示の実施形態では、カニューレ13810の遠位端が、カニューレの縦軸に対して大まかに垂直であり、すなわち角度を成さない。他の実施形態は、角度を成す遠位端又は先端を含む。リテーナ13830とカニューレ13810が一体化される実施形態もあれば、リテーナ13830とカニューレ13810が一体化されない実施形態もある。図示の実施形態では、リテーナ13830の近位端が、平坦かつ縦軸に垂直なフランジ13832を含むのに対し、遠位端は先細になっており、カニューレ13810の遠位端へ向けて狭くなる。フランジ13832は、トロカール13800がゲルパッドから誤って又は意図せずに除去される可能性を低減する。フランジ13832の近位面のいくつかの実施形態は、ゲルパッド10530の遠位面に貫入又は噛み合うように構成された、棘、スパイク、隆起部、テクスチャリングなどの少なくとも1つのようなさらなる固定特長部を含む。
いくつかの実施形態では、フランジ13832の直径が、カニューレ本体13812の外径よりも約1.5〜約2.5倍、又は約2〜約2.2倍の広さである。トロカール13800のいくつかの実施形態は5mmトロカールであり、この場合、カニューレ本体13812の外径は約7mm〜約8mmである。
【0142】
リテーナ13830の先細の端部は、トロカール13800を、それ自体で又はトロカール13800を通じて延びるオブチュレータ13900と組み立てられているときにゲルパッドを通じて挿入しやすくする。例えば、いくつかの実施形態では、リテーナ13830が、ゲルパッド10530内の予め形成された開口部を通じて挿入される。上述したように、ゲルパッド10530のゲル材の実施形態は高い伸長値を有するので、リテーナ13830は、ゲルパッド10530内の比較的小さな開口部を通じて挿入可能でありながら、さらに上述したような意図しない除去に抗する。
【0143】
リテーナ13830とカニューレ13810が一体化されず、すなわち別個の部品であるいくつかの実施形態では、カニューレ13810がゲルパッドを通じて挿入された後に、リテーナ13830がカニューレ13810に固定される。いくつかの実施形態では、カニューレ13810とリテーナ13830が、例えば、ラッチ、ねじ山、クリップ、ロックリング、ラチェットなどを使用して機械的に固定される。いくつかの実施形態では、カニューレ13810とリテーナ13830が接着剤で固定される。いくつかの実施形態では、リテーナ13830の位置を、例えば異なる厚みのゲルパッドに対応するように調整することができる。いくつかの実施形態では、カニューレ13810及び/又はリテーナ13830が、例えば接着剤でゲルパッドに固定される。
【0144】
図14Aは、例えば、ゲルパッド10530及び開創器を含む、上述したシングルポート外科用アクセスシステムの部品として適したトロカール14800の別の実施形態の側面図である。アクセスシステムのいくつかの実施形態は、複数のトロカール14800を含む。トロカール14800は、上述したトロカール13800と大まかに類似し、上述した対応する特長部と大まかに類似するカニューレ14810と、トロカールシールアセンブリ14820と、リテーナ14830とを含む。図示のトロカール14800の実施形態は、ボルスタ14840及びロック用部品14850をさらに含む。以下の説明から明らかになるように、図示のカニューレ14810の実施形態は「固定カニューレ」とも呼ばれる。
【0145】
図示の実施形態では、ボルスタ14840がトーラス又は環体を含む。カニューレ本体14812は、ボルスタ14840内の開口部を通じて延びる。ボルスタ14840の開口部の直径は、カニューレ本体14812に沿った自由な動きを可能にするためにカニューレ本体14812の外径よりも十分に大きい。以下でさらに詳細に説明するように、図示のボルスタ14840の実施形態は、ポリマー樹脂及び/又はエラストマなどの変形可能材料を含む。好適な材料の例として、ゴム、天然ゴム、合成ゴム、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエンゴム、シリコンゴム、エチレンプロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエンモノマーゴム、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリウレタンなどが挙げられる。ボルスタ14840のいくつかの実施形態は、カニューレ14810に接触する範囲又は領域内に潤滑層又はコーティングを含み、これがカニューレ14810に沿った動きを容易にする。
【0146】
ボルスタ14840のいくつかの実施形態の外径は、リテーナ14830のフランジ14832の直径の約0.8〜2倍、又は約1〜約1.5倍である。ボルスタの厚みは、約3mm(0.12インチ)〜約10mm(0.4インチ)、又は約4mm(0.16インチ)〜約6mm(0.24インチ)である。いくつかの実施形態では、ボルスタの遠位面14844が凹状であることにより、ゲルパッド10530に対するさらなる締め付け力又は固定力を与えるとともに、異なる及び/又は非均一な厚みゲルパッド10530に適合する。ボルスタ14830の特定の寸法は、ボルスタ材料及びゲル材の特性、及びカニューレ本体14812、ロック用部品14850及びゲルパッド10530の寸法に基づいて選択される。
【0147】
ロック用部品14850は、カニューレ本体14812上のリテーナ14830に近接して配置され、拡大部分14854に近接するリップ14852を含む。リップ14852は、カニューレ本体14812から径方向に延び、その直径は、ボルスタ14840の開口部の直径を上回る。ボルスタ14840のエラストマ材料が、ボルスタ14840をリップ14852上に、及びリップ14852を越えて促すことができる。図示の実施形態では、リップ14852が、ボルスタ14840を容易に遠位に摺動できるようにするとともに、ボルスタ14840が近位に摺動しないようにするように寸法決めされたラチェットを含む。また、図示の実施形態では、リップ14852が、カニューレ本体14812を取り囲む連続構造である。他の実施形態では、リップ14852が、カニューレ本体14812の周囲に配置された複数の構造体を含む。
【0148】
拡大部分14854は略円筒形であり、その直径は、ボルスタ14840の開口部の直径とほぼ同じ又は若干大きく、これによりボルスタ14840が拡大部分14854と摩擦係合する。図示の実施形態では、拡大部分14854が、ボルスタ14840の厚みよりも長い。図示の実施形態では、拡大部分14854が、リテーナ14830のフランジ14832まで延びず又は接触せず、これにより拡大部分14854の近位面の表面積が減少しないので、拡大部分14854の取り外し抵抗が向上する。他の実施形態では、拡大部分14854がリテーナ14830まで延びる。他の実施形態は拡大部分を含まない。
【0149】
リップ14852の遠位端とフランジ14832の近位面との間の距離は、ボルスタ14840とゲルパッド10530の厚みの合計に等しいか又は若干下回る。いくつかの実施形態では、ゲルパッドの厚みが、約5mm(約0.4インチ)〜約30mm(約1.2インチ)、又は約13mm(約0.5インチ)〜約25mm(約1インチ)ある。
【0150】
トロカール14800は、
図14Aに示す第1のすなわち挿入構成、及び
図14Bに示す第2のすなわち固定構成という少なくとも2つの構成を有する。
【0151】
トロカール14800を使用する方法の実施形態では、トロカール14800が挿入構成で配置され、最初にボルスタ14840がカニューレ本体14812上に位置する。トロカール14800は、人工体壁が患者の体に連結される前に及び/又は連結後に人工体壁内に配置される。
【0152】
図14Aに示す実施形態では、ボルスタ14840がカニューレ本体14812の近位端に位置し、この場合、ボルスタ14840は、シールアセンブリ14820が結合するカニューレ14810の近位端の拡大部分であるカニューレのベル状部14814の遠位部に摩擦係合する。
【0153】
トロカール14800の遠位端は、ゲルパッド10530などの人工体壁上に配置され、その後リテーナ14830が人工体壁を通じて挿入される。いくつかの実施形態では、トロカールの近位端において、最初にオブチュレータ13900(
図13)が、事前に先端13910をオブチュレータの遠位端から延ばした状態でシールアセンブリ14820を通じて挿入される。他の実施形態では、最初に別の器具を使用して人工体壁に開口部を形成する。他の実施形態では、トロカール14800の遠位端を人工体壁に強制的に通して、このプロセスにおける開口部を形成する。
【0154】
その後、ボルスタ14840をカニューレ本体14812の下方に、及びリップ14852を覆って拡大部分14852上に摺動することにより、トロカール14800を
図14Bに示す固定構成に変化させる。図示の構成では、人工体壁がリテーナのフランジ14830とボルスタ14840との間に捕捉されて圧縮される。リップ14852がボルスタ14840を適所にロックして、ボルスタ14840が近位に移動しないようにすることにより、トロカール14800を人工体壁に固定又はロックする。
【0155】
固定構成では、トロカール14800が、係合先の人工体壁の局所部分に対して固定される。しかしながら、上述したように、人工体壁の実施形態は高い伸長を示す。従って、トロカール14800は、人工体壁を変形させることにより、元々の位置及び方位に対して並進及び/又は枢動することができる。
【0156】
オブチュレータ13910を使用する実施形態では、オブチュレータが後退する。トロカール14800は、外科手術中に1又はそれ以上の器具のアクセスポートの役目を果たす。
【0157】
所望であれば、例えば、まずロック用部品14850からボルスタ14840取り外し、その後リテーナ14830を人工体壁から引き離すことによりトロカール14800を人工体壁から除去する。いくつかの実施形態では、トロカール14800及び人工体壁が外されず、ユニットとして配置される。いくつかの実施形態では、ボルスタ14840をロック用部品14850から取り外すことは不可能である。
【0158】
図15は、
図14A及び
図14Bに示して上述した実施形態と大まかに類似する保持用トロカール15000の別の実施形態の側面図である。トロカール15000は、近位端と遠位端とカニューレ本体15812とを含む長形管状カニューレ15810と、カニューレ15810の近位端に結合されたシールアセンブリ15820と、カニューレ15810の遠位端に配置されたリテーナ15830と、カニューレ本体15812が貫通して延びるボルスタ14840と、カニューレ本体上のリテーナ15830に近接して配置されたロック用部品15850とを含む。
【0159】
図示の実施形態では、ロック用部品15850が拡大部分15854を含み、この上にねじ山15852が配置される。ボルスタ15840は、適合するねじ山を含む。この結果、ボルスタ15840が、ロック用部品15850に螺合自在に係合することができる。このねじ結合はまた、トロカール15800の固定構成においてボルスタ15840及びリテーナのフランジ15832の相対位置の調整も可能にし、これにより不均一な及び/又は異なる厚みの人工体壁への固定が可能になる。
【0160】
図16Aは、トロカール16800の別の実施形態の側面図である。
図16Bは、トロカール16800とともに使用できるボルスタ16840の実施形態の斜視図である。トロカール16800及びボルスタ16840の組み合わせは、
図14A、
図14B及び
図15に示すトロカールの実施形態と大まかに類似する。トロカール16800は、近位端と遠位端とカニューレ本体16812とを含む細長い管状の固定カニューレ16810と、カニューレ16810の近位端に結合されたシールアセンブリ16820と、カニューレ16810の遠位端に配置されたリテーナ16830と、カニューレ本体上のリテーナ16830に近接して配置されたロック用部品16850とを含む。
【0161】
図示の実施形態では、ロック用部品16850が拡大部分16854を含み、ここにカニューレ本体16812から径方向に延びる複数の環状リング16852が設けられて複数の環状スロット16856を定める。図示の実施形態では、個々のリング16856の近位端が傾斜しているが、いくつかの実施形態は傾斜した端部を含まない。
【0162】
図16Bは、半円形部分を含む切り取り部16844を設けた扁平体16842を含むクリップ形のボルスタ16840の実施形態を示している。切り取り部16844は、スロット16856と係合するように寸法決めされる。切り取り部16844における扁平体16842の厚みも、スロット16856と係合するように寸法決めされる。ボルスタ16840は、扁平体16842から垂直に延びるグリップ16846を含み、これがボルスタ16840を設置及び/又は調整するためのユーザグリップを成す。他の実施形態では、切り取り部16844が、多角形、矩形、六角形の一部などの別の形状を有する。
【0163】
使用時には、上述したようにトロカールのリテーナ16830を人工体壁を通じて挿入し、所望の固定力を提供するスロット16856内でボルスタ16840を係合させることにより内部に固定させる。固定の度合いは、異なるスロットを選択することにより調整することができる。
【0164】
いくつかの実施形態では、ボルスタ切り取り部16844が複数のスロットと係合することにより、固定構成におけるさらなる安定性を提供する。他の実施形態は、上述の実施形態と類似した、カニューレ本体16812が貫通して延びるボルスタを含む。これらの実施形態のいくつかでは、ロック用部品16850がラチェットの役目を果たす。ボルスタは、任意に解放可能な1又はそれ以上の歯止めを含むことにより調整力を高める。
【0165】
図17Aは、固定カニューレを含むトロカール17800の実施形態の側面図を示しており、
図17Bは、ボルスタの実施形態の斜視図である。
図17A及び
図17Bに示す実施形態は、
図14A〜
図16Bに示し上述したトロカールの実施形態と大まかに類似する。
【0166】
トロカール17800は、近位端と遠位端とカニューレ本体17812とを含む細長い管状の固定カニューレ17810と、カニューレ17810の近位端に結合されたシールアセンブリ17820と、カニューレ本体17812上に配置されたリテーナ17830と、カニューレ17810の遠位端に配置されたロック用部品17850とを含む。図示のトロカール17800の実施形態は、
図16Aに示す実施形態と類似するが、リテーナ17830とロック用部品17850の位置が逆になっている。図示の実施形態では、リテーナのフランジ17832が遠位の方を向く。
【0167】
ロック用部品17850は、カニューレ本体17812から径方向へ延びる複数の環状リング17852を含む拡大部分17854を含み、ここに複数の環状スロット17856が定められる。
【0168】
図17Bは、半円形部分を含む切り取り部17844を設けた扁平体17842を含むクリップ形のボルスタ17840の実施形態を示している。切り取り部17844は、ロック用部品内のスロット17856と係合するように寸法決めされる。切り取り部17844の扁平体17842の厚さも、スロット17856と係合するように寸法決めされる。図示のボルスタの実施形態はグリップを含まないが、他の実施形態はグリップを含む。
【0169】
トロカール17800の実施形態を使用するいくつかの実施形態では、カニューレ17810を人工体壁に固定した後で人工体壁を患者の体に連結する。例えば、いくつかの実施形態では、1又はそれ以上のトロカール17800をゲルキャップ10500のゲルパッド10530(
図10A)上に固定した後でゲルキャップ10500を開創器7100(
図7)に結合する。
【0170】
例示的な実施形態を参照しながらいくつかの実施形態を詳細に示し説明したが、当業者であれば、以下の特許請求の範囲により定義される思想及び範囲から逸脱することなく形状及び詳細の様々な変更を行うことができることを理解するであろう。