【解決手段】以下の式によって有機性廃棄物エネルギーを計算する。(燃焼手段から排出される排ガス量×排ガスの比熱×排ガスの温度)+(燃焼手段における熱損失)+(焼却灰の持ち出し熱量)−(燃焼手段で使用される燃料の量×単位質量当たりの発熱量)−(燃焼用空気流量×空気比熱×空気温度)]/汚泥の処理量
投入された有機性廃棄物を、燃焼手段により燃焼用エネルギーを用いて燃焼させて減量化する燃焼ステップと、前記燃焼手段の内部に、有機性廃棄物に内在する燃焼用エネルギー以外の燃焼用エネルギーを供給する燃焼用エネルギー供給ステップと、前記燃焼手段の内部が所定温度に維持される燃焼用エネルギーの供給量になるように、燃焼用エネルギーの供給を制御するエネルギー供給動作制御ステップと、を含む有機性廃棄物の熱操作処理方法における有機性廃棄物エネルギーの推定方法であって、以下の式
[(単位時間当たりの燃焼手段から排出される排ガス量×排ガスの比熱×排ガスの温度)+(単位時間当たりの燃焼手段における熱損失)+(単位時間当たりの焼却灰の持ち出し熱量)−(単位時間当たりの燃焼手段で使用される燃料の量×単位質量当たりの発熱量)−(単位時間当たりの燃焼用空気流量×空気比熱×空気温度)]/単位時間当たりの汚泥の処理量
によって計算することを特徴とする有機性廃棄物エネルギーの推定方法。
投入された有機性廃棄物を、燃焼用エネルギーを用いて燃焼させて減量化する燃焼手段と、前記燃焼手段の内部に、有機性廃棄物に内在する燃焼用エネルギー以外の燃焼用エネルギーを供給する燃焼用エネルギー供給手段と、燃焼用エネルギーの供給量が前記燃焼手段の内部を所定温度に維持する供給量となるように燃焼用エネルギー供給手段の動作を制御するエネルギー供給動作制御手段と、を備えた有機性廃棄物の熱操作処理装置における有機性廃棄物エネルギーの推定装置であって、
前記燃焼手段から排出される排ガス量を測定する手段、
排ガスの温度を測定する手段、
排ガス中の水分量に応じた排ガスの比熱を計算する手段、
前記燃焼手段から持ち出される焼却灰の量および温度を測定する手段、
前記燃焼手段から持ち出される焼却灰の量および温度の測定値および予め設定された焼却灰の比熱から、前記燃焼手段から持ち出される焼却灰の熱量を計算する手段、
前記燃焼手段で使用される燃料量を測定する手段、
燃焼用空気の温度及び流量を測定する手段、
前記燃焼用空気中の水分量に応じた燃焼用空気の比熱を計算する手段、
前記燃焼手段に導入される汚泥の量を測定する手段、
前記各測定値、計算値及び予め設定された燃焼装置の熱損失量に基づき、下記の式より有機性廃棄物エネルギーを計算する手段、
[(単位時間当たりの燃焼手段から排出される排ガス量×排ガスの比熱×排ガスの温度)+(単位時間当たりの燃焼手段における熱損失)+(単位時間当たりの焼却灰の持ち出し熱量)−(単位時間当たりの燃焼手段で使用される燃料の量×単位質量当たりの発熱量)−(単位時間当たりの燃焼用空気流量×空気比熱×空気温度)]/単位時間当たりの汚泥の処理量
を備えたことを特徴とする有機性廃棄物エネルギーの推定装置。
【背景技術】
【0002】
下水処理場などから発生する汚泥などは、ベルトプレス型脱水機や遠心分離型脱水機などの汚泥脱水機によって脱水され、所定含水率の脱水汚泥に調整され、この調整された脱水汚泥は、焼却炉によって焼却処分される。この所定含水率は、熱操作設備のエネルギー効率上、焼却炉において補助燃料が使用されなくてもよい含水率となるのが好ましい。
【0003】
そこで、特許文献1では、脱水汚泥の有機物含有率が変動しても、補助燃料を用いずに脱水汚泥が自己熱燃焼(自燃)するように、汚泥脱水装置の出口で、脱水汚泥の含水率および有機物含有率を測定し、自燃条件を満たす燃焼曲線と測定された有機物含有率とに基づいて自燃条件を満たす含水率を算出し、これを測定された含水率と比較して最適な汚泥脱水装置の脱水率を設定するものが記載されている。
【0004】
ところで、上述した特許文献1に記載の技術では、脱水汚泥が焼却炉で自燃状態となるように脱水汚泥の含水率を調整している。ところが、脱水汚泥の含水率が自燃状態であっても、脱水機を含めた熱操作設備全体のエネルギー使用効率が最適であるとは限らない。
【0005】
また、特許文献1に記載の技術では、脱水汚泥の含水率や有機物含有率などといった、汚泥などの有機性廃棄物のエネルギー関連値を測定するための計測器が別途必要になる。そのため、含水率および有機物含有率などの有機性廃棄物のエネルギーの関連値を計測することなく、設備全体のエネルギー使用効率を最適化できる技術も求められていた。
【0006】
設備全体のエネルギー使用効率の最適化を図るためには、有機性廃棄物に内在する燃焼用エネルギー以外の燃焼用エネルギー、有機性廃棄物の処理装置における送風機や給水ポンプを駆動するための電力エネルギー、及び脱水機などを駆動する動力エネルギーの総和から、熱回収発電エネルギーを差し引いたエネルギー量が最小となるように制御することが必要である。
【0007】
ところで、上記した各エネルギー要素は、全て有機性廃棄物エネルギーに依存する。ここで、有機性廃棄物エネルギーとは、有機性廃棄物が有する使用可能なエネルギーのことで、固形分熱量−(汚泥水分の潜熱+汚泥可燃分生成水分の蒸発潜熱)で表される。
【0008】
しかし、有機性廃棄物は、その固形分の組成及び含水率は様々で、経時的に変化することもあり、有機性廃棄物エネルギーを簡単かつ正確に測定する方法は知られていなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、焼却される有機性廃棄物のエネルギー関連値を計測することなく、処理装置における低含水化・熱操作設備全体のエネルギー使用効率を最適化することができる有機性廃棄物の処理装置および処理方法並びに制御装置を提供することにある。
課題を解決するための手段
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る有機性廃棄物エネルギーの推定方法は、
投入された有機性廃棄物を、燃焼手段により燃焼用エネルギーを用いて燃焼させて減量化する燃焼ステップと、前記燃焼手段の内部に、有機性廃棄物に内在する燃焼用エネルギー以外の燃焼用エネルギーを供給する燃焼用エネルギー供給ステップと、前記燃焼手段の内部が所定温度に維持される燃焼用エネルギーの供給量になるように、燃焼用エネルギーの供給を制御するエネルギー供給動作制御ステップと、を含む有機性廃棄物の熱操作処理方法における有機性廃棄物エネルギーの推定方法であって、以下の式
[(単位時間当たりの燃焼手段から排出される排ガス量×排ガスの比熱×排ガスの温度)+(単位時間当たりの燃焼手段における熱損失)+(単位時間当たりの焼却灰の持ち出し熱量)−(単位時間当たりの燃焼手段で使用される燃料の量×単位質量当たりの発熱量)−(単位時間当たりの燃焼用空気流量×空気比熱×空気温度)]/単位時間当たりの汚泥の処理量
によって計算することを特徴とする。
なお、上記温度は、単位時間内に変化する場合はその平均値、「比熱」は、乾ガスの比熱と水蒸気の比熱に基づいてそれぞれの含有割合から求められる比熱である。なお、排ガス中の水分量は、汚泥中の固形分(可燃分+配分)と、燃焼用空気中の水分量は、その酸素濃度と相関関係を有することが知られており、排ガスや燃焼用空気中の水分量は、汚泥中の固形分や燃焼用空気中の酸素濃度の測定値からそれぞれ推定する。
【0012】
投入された有機性廃棄物を、燃焼用エネルギーを用いて燃焼させて減量化する燃焼手段と、前記燃焼手段の内部に、有機性廃棄物に内在する燃焼用エネルギー以外の燃焼用エネルギーを供給する燃焼用エネルギー供給手段と、燃焼用エネルギーの供給量が前記燃焼手段の内部を所定温度に維持する供給量となるように燃焼用エネルギー供給手段の動作を制御するエネルギー供給動作制御手段と、を備えた有機性廃棄物の熱操作処理装置における有機性廃棄物エネルギーの推定装置であって、
燃焼手段から排出される排ガス量を測定する手段、
排ガスの温度を測定する手段、
排ガス中の水分量に応じた排ガスの比熱を計算する手段、
前記燃焼手段から持ち出される焼却灰の量および温度を測定する手段、
前記燃焼手段から持ち出される焼却灰の量および温度の測定値および予め設定された焼却灰の比熱から、前記燃焼手段から持ち出される焼却灰の熱量を計算する手段、
前記燃焼手段で使用される燃料量を測定する手段、
燃焼用空気の温度及び流量を測定する手段、
前記燃焼用空気中の水分量に応じた燃焼用空気の比熱を計算する手段、
前記燃焼手段に導入される汚泥の量を測定する手段、
前記各測定値、計算値及び予め設定された燃焼装置の熱損失量に基づき、下記の式より有機性廃棄物エネルギーを計算する手段、
[(単位時間当たりの燃焼手段から排出される排ガス量×排ガスの比熱×排ガスの温度)+(単位時間当たりの燃焼手段における熱損失)+(単位時間当たりの焼却灰の持ち出し熱量)−(単位時間当たりの燃焼手段で使用される燃料の量×単位質量当たりの発熱量)−(単位時間当たりの燃焼用空気流量×空気比熱×空気温度)]/単位時間当たりの汚泥の処理量
を備えたことを特徴とする。
なお、上記温度は、単位時間内に変化する場合はその平均値、「比熱」は、乾ガスの比熱と水蒸気の比熱に基づいてそれぞれの含有割合から求められる比熱である。なお、排ガス中の水分量は、汚泥中の固形分(可燃分+配分)と、燃焼用空気中の水分量は、その酸素濃度と相関関係を有することが知られており、排ガスや燃焼用空気中の水分量は、汚泥中の固形分や燃焼用空気中の酸素濃度の測定値からそれぞれ推定する。
【0013】
本発明における有機廃棄物エネルギーの推定式は以下のように導かれる。
<流動焼却炉21から流出するトータル熱量>
トータル熱量out=排ガス量×排ガスの比熱×排ガスの温度…(1)
<流動焼却炉21に供給される燃焼用エネルギー(流動空気のエネルギー、有機廃棄物エネルギー、および補助燃料のエネルギー)によるトータル熱量>
トータル熱量in=汚泥の質量×有機廃棄物エネルギー(単位質量当たりの熱量)+補助燃料の質量×単位質量当たりの熱量+流動空気の量×流動空気の比熱×流動空気の温度…(2)
したがって、有機廃棄物エネルギーの推定値Eesは、(1)式と(2)式が等しくなることから、
その時点における有機廃棄物エネルギーEes=[(排ガス量×排ガスの比熱(※1)×排ガスの温度)−(補助燃料の質量×単位質量当たりの熱量+流動空気の量×流動空気の比熱(※2)×流動空気の温度)]/(汚泥の質量)
で計算できる。
※1 排ガス中の「乾ガス」の比熱、「水分(水蒸気)」の比熱、およびそれらの配合比から計算される比熱
※2 空気中の「乾空気」の比熱、「水分(水蒸気)」の比熱、およびそれらの配合比から計算される比熱
なお、これらの(1)式および(2)式において、必要に応じて、補正値として流動焼却炉21の放熱量や、酸素温度などが算入される。
【0014】
本発明において「低含水化手段」とは、汚泥などの含水率の高い有機性廃棄物の含水率を低減するための設備で、加熱乾燥機や遠心脱水機などが含まれる。
【0015】
本発明において「燃焼手段」とは、前記含水率が低減された有機性廃棄物を、燃焼用エネルギーを用いて燃焼させて減量化するための手段で、焼却炉、ガス化炉、炭化炉などが含まれる。また、燃焼手段における熱損失とは、供給される熱エネルギーに所定の割合を乗算して求められる値であり、所定の割合は燃焼手段固有の値である。
【0016】
本発明において「燃焼用エネルギー」とは、有機性廃棄物自体を燃焼、ガス化、または炭化するために必要なエネルギーであって、補助燃料の全燃焼熱−生成水分蒸発潜熱 で表されるエネルギーである。
【0017】
本発明において「使用エネルギー要素」とは、本発明の設備において使用または生成されるすべてのエネルギーを意味し、電力(発電を含む)、燃料、動力などが含まれる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る有機性廃棄物エネルギーの推定方法と装置によれば、有機性廃棄物を低含水化・熱操作処理する有機性廃棄物の処理装置の制御に有用な有機性廃棄物エネルギーを簡単かつ正確に推定することができる。本発明の有機性廃棄物エネルギーの値を利用すれば、有機性廃棄物の処理装置を効率的に制御することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明で推定した有機性廃棄物エネルギーを利用して有機性廃棄物の処理装置における全アネルギーを最適に制御する一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の一実施形態の全図においては、同一または対応する部分には同一の符号を付す。また、本発明は以下に説明する一実施形態によって限定されるものではない。
【0021】
まず、本発明の一実施形態による有機性廃棄物の処理装置である下水等の汚泥の処理装置について説明する。
図1は、この一実施形態による汚泥の処理装置の全体構成を示すブロック図である。
図1に示すように、最適運転制御システムを含む汚泥の処理装置1は、低含水化設備10および熱操作設備20と、制御装置としての最適運転制御装置30とを有する。
【0022】
低含水化設備10は、有機性廃棄物としての汚泥の含水率を増減可能に構成されている。低含水化設備10は、汚泥を脱水により低含水化する低含水化手段としての遠心分離型の脱水機11と、脱水・薬剤投入制御部14とを有する。なお、低含水化手段としては、汚泥を乾燥させて低含水化する乾燥機や、その他汚泥の低含水化が可能な種々の装置を用いることが可能である。脱水・薬剤投入制御部14は、後述する低含水化動作制御部35による制御によって脱水機11における動力源12の回転数、すなわち遠心力の増減を制御する。ここで、脱水機11は、ベルトプレス型脱水機やフィルタプレスなどの、その他の形式の脱水機であってもよく、汚泥を乾燥させて低含水化する乾燥機などでもよい。また、脱水機11は、使用エネルギー要素としての、モータなどの動力源12と、脱水助剤を投入する脱水助剤投入器13とを有する。
【0023】
低含水化設備10は、さらに使用エネルギー要素としての汚泥供給ポンプ15、ベルトコンベアなどの脱水汚泥搬送設備、及び脱水汚泥搬送設備で消費される電力を検出するする電力計Psを有する。
図1に記載される一実施例では脱水汚泥搬送設備として供給ポンプ15が使用され、汚泥供給ポンプ15は、脱水機11によって脱水された汚泥を熱操作設備20に供給する。電力計Psは、汚泥供給ポンプ15で消費される電力を検出し、脱水・薬剤投入制御部14に入力する。また、脱水助剤投入器13からの薬剤の投入量、および図示されていないベルトコンベアなどの脱水汚泥搬送設備の電力の検出値も、脱水・薬剤投入制御部14に入力される。脱水・薬剤投入制御部14は、動力源12のエネルギー使用量および電力計Psから入力された汚泥供給ポンプ15の電力使用量を、最適運転制御装置30に出力するとともに、脱水機11における動力源12の回転数の増減を制御する。また、凝集剤投入器13は、脱水対象の汚泥に、予め算出された所定量のポリ鉄を脱水助剤として投入する。なお、高分子系の凝集剤を併用使用することもできる。分子系凝集剤は比較的単価が安いので、常時、所定量を添加するようにしてもよい。
【0024】
また、熱操作設備20は、汚泥に対して熱操作する熱操作設備である。この熱操作設備20は、燃焼手段としての流動焼却炉21と、汚泥に内在する燃焼用エネルギー以外の燃焼用エネルギーを流動焼却炉21に供給するための燃焼用エネルギー供給手段と、エネルギー供給動作制御手段としての焼却設備燃焼制御装置28とを備える。
【0025】
流動焼却炉21は、燃焼用エネルギーを用いて脱水機11により低含水化された汚泥を燃焼させて減量化する。流動焼却炉21は、フリーボード部と下部の流動床21aとからなる。流動床21aには分散パイプ21bが水平に挿入されている。分散パイプ21bには均一に空気ノズルが設けられて燃焼用空気(流動空気)が送られる。有機性廃棄物としての汚泥は、汚泥供給ポンプ15により流動床21aに連続供給され、流動床21aにおいて分解、乾燥、および一部燃焼が進み、フリーボード部で完全燃焼して、燃焼ガスと灰分が上部から排出される。この流動焼却炉21において、温度センサT1によって流動床21aの温度が検出され、温度センサT2によって流動焼却炉21内の上部の温度が検出され、それぞれの温度の検出結果は焼却設備燃焼制御装置28に入力される。
【0026】
補助燃焼装置22は、流動焼却炉21の内部に燃焼用エネルギーとしての補助燃料を供給する。使用エネルギー要素としての補助燃焼装置22の補助燃料使用量は、燃料量検出器22aによって検出され、検出結果は、焼却設備燃焼制御装置28に入力される。補助燃料の供給量は、調整弁22bによって開度調整され、汚泥が自燃条件を満たす場合、補助燃料は供給されない。補助燃料の燃料使用量の検出結果は、焼却設備燃焼制御装置28に供給される。
【0027】
また、使用エネルギー要素である流動空気予熱器23は、バルブ23aによって流量が制御される流動ブロワB1によって大気から流入した流動空気と、燃焼ガスとの熱交換を行う。ここで、流動空気予熱器23は、上段および下段の塔で流動空気と燃焼ガスとの熱交換を行う。流動空気予熱器23から流動焼却炉21に供給される燃焼用エネルギーとしての流動空気において、温度は温度センサT3によって検出され、流量は流量センサF1,F2によって検出される。温度および流量の検出結果はそれぞれ、焼却設備燃焼制御装置28に入力される。流動空気の温度は、流動ブロワB1の後段に設けられる調整弁23d,23eの開度を変更することにより調整される。なお、流動空気の温度調整については、冷却ファンなどからなる冷却器を用いてもよい。以上のようにして熱交換された流動空気は、分散パイプ21bを通じて流動床21aに供給され、調整弁23b,23cを介して流動焼却炉21に供給される。これにより、流動焼却炉21内の空気比が調整されて流動焼却炉21内の温度が調整される。
【0028】
また、使用エネルギー要素としての流動ブロワB1は、焼却設備燃焼制御装置28により制御され、流動焼却炉21内の温度が最適ならば、ほぼ一定の最小電力を消費する一方、温度が低い場合は補助燃料の燃焼空気を要することから、電力消費が大きくなる。また、流動焼却炉21内の温度が最適状態を超えると、流動焼却炉21から排出される燃焼ガス量も増大するため、流動ブロワB1、後述する白防ファンB2、および誘引ファンB3の電力消費も大きくなる。なお、使用エネルギー要素としての流動ブロワB1、白防ファンB2、および誘引ファンB3の電力使用量はそれぞれ、電力計B1s,B2s,B3sによって検出され、それぞれ焼却設備燃焼制御装置28に入力される。
【0029】
以上の補助燃料および流動空気における熱量は、汚泥に内在する燃焼用エネルギー以外の燃焼用エネルギーとなる。また、上述した調整弁22aを備えた補助燃料装置22と、流動ブロワB1、バルブ23a、および調整弁23b〜23eに接続された流動空気予熱器23と、分散パイプ21bとによって、燃焼用エネルギー供給手段が構成されている。
【0030】
上述した流量センサF1,F2が検出した流動空気の流量、および温度センサT3が検出した流動空気の温度の計測値は、焼却設備燃焼制御装置28から最適運転制御装置30に供給される。最適運転制御装置30は、流動空気の流量および温度を含む、流動焼却炉21に供給される燃焼用エネルギー量に応じて脱水機11の動力源12を制御する。低含水化設備10は、最適運転制御装置30の低含水化動作制御部35による制御によって,動力源12の回転数を増減させるとともに、脱水助剤投入器13で脱水助剤を増減させることにより汚泥の含水率を制御して汚泥エネルギー値を増減させる。なお、最適運転制御装置30による制御の詳細については後述する。
【0031】
流動空気予熱器23で熱交換された燃焼ガスは、約500〜600℃程度の温度で白煙防止予熱器24に供給され、使用エネルギー要素としての白防ファンB2によって大気から入力される白煙防止空気と燃焼ガスとの間で熱交換される。白煙防止予熱器24において温度上昇した白煙防止空気は、使用エネルギー要素としての熱回収発電設備27を介して熱回収された後、煙突26に供給される。一方、白煙防止予熱器24から出力された燃焼ガスはスクラバー25で排煙処理され、煙突26に出力する。なお、スクラバー25には排ガス中に含まれる有害ガスを除去するため苛性ソーダなどの薬剤を含む洗浄液が調整弁25aより添加される。煙突26では、入力された燃焼ガスを熱回収発電設備27から送られた白煙防止空気によって温度上昇させ、白煙が防止された燃焼ガスを大気に放出する。ここで、熱回収動力設備を含む熱回収発電・動力設備の一例としての熱回収発電設備27は、熱回収された熱を用いてタービンなどを駆動して発電し、発電された電力は、汚泥の処理装置1やその他の設備に用いられる。なお、熱回収発電設備27によって発電された熱回収発電量は、焼却設備燃焼制御装置28に入力される。
【0032】
焼却設備燃焼制御装置28は、流動焼却炉21の内部を、微小の温度変動は生じつつも燃焼温度をほぼ一定の所定温度に維持するように補助燃焼装置22および流動空気予熱器23の動作を制御する。また、図示されないガス検出器により測定された排ガス中の有害ガス濃度に応じ、スクラバー25に添加される薬剤の投入量を制御する。さらに、焼却設備燃焼制御装置28は、燃料量検出器22aによって検出された燃料使用量、流動ブロワB1、白防ファンB2、誘引ファンB3の各電力使用量、および熱回収発電設備27による熱回収発電量、排ガス中の有害ガス脳度に応じたスクラバー25への薬剤投入量を、最適運転制御装置30に出力する。また、焼却設備燃焼制御装置28は、温度センサT1〜T3、流量センサF1,F2の検出結果に基づいて、調整弁23b〜23eを調整して汚泥の燃焼制御を行う。
【0033】
最適運転制御装置30は、汚泥の低含水化・熱操作に関する汚泥エネルギーと複数要素ごとの複数の使用エネルギー要素の使用量、およびポリ鉄などの脱水助剤の投入量、苛性ソーダなどのアルカリ剤の投入量との関係、汚泥エネルギーと各使用エネルギー要素における使用量の合算値(全エネルギー使用量)、およびポリ鉄などの脱水助剤の投入量、苛性ソーダなどのアルカリ剤の投入量との相関関係を記録する関係記録手段としての関係記録部31を有する。
【0034】
また、最適運転制御装置30は、流動焼却炉21に供給される、汚泥に内在する燃焼用エネルギーの一部である汚泥エネルギーを推定する汚泥エネルギー推定手段としての汚泥エネルギー推定部32を有する。この汚泥エネルギー推定部32は、以下の流動焼却炉21におけるトータル熱量を示す(1)式と、燃焼用エネルギーのトータル熱量を示す(2)式とから、これらのトータル熱量が同一であるという原理に基づいて汚泥エネルギー値を算出する。この推定された汚泥エネルギー値を、その時点における汚泥エネルギー値Eesとして推定する。
【0035】
ここで、汚泥エネルギーとは、汚泥エネルギー=(固形分燃焼熱)−(汚泥中水分潜熱+汚泥可燃分生成水分潜熱)である。そして、全エネルギー使用量は、単位体積当たりの汚泥エネルギーに対して一意に決定される依存性を有するとともに、最小値を有する。一方、単位体積当たりの汚泥エネルギーは、汚泥の性状によって変化する上に、その汚泥エネルギー値を検出して制御することが困難である反面、汚泥の含水率の増加に対して単調減少関係を有する。そこで、汚泥の含水率を増加および減少させることによって、汚泥エネルギー値をそれぞれ減少および増加させることができる。この関係を利用して、汚泥の含水率を増減させることによって、汚泥の汚泥エネルギー値を全エネルギー使用量が最小値となるように制御できる。この場合、全エネルギー使用量が最小値となるように汚泥エネルギー値まで収束するように、汚泥の含水率を増減させる方向に低含水化設備10、特に脱水機11および脱水助剤投入器13を制御する。このとき汚泥の含水率は直接計測する必要がない。そのため、汚泥の含水率の検出系および制御系や汚泥エネルギー値の検出系および制御系などを設ける必要がなく、構成が簡略化できる。
【0036】
また、最適運転制御装置30は、汚泥の低含水化・熱操作処理に関する複数の使用エネルギー要素ごとの各エネルギー使用量、各薬剤投入量の測定を行うとともに、測定された各エネルギー使用量、各薬剤投入量のそれぞれをランニングコストに変換する重み係数を乗算し、各乗算したコストの合算を行って全ランニングコストを算出する全ランニングコスト算定手段としての全ランニングコスト算定部33を有する。
【0037】
そして、関係記録部31は、最適運転制御装置30が計算により求めた例えば
図2Bに示すような汚泥エネルギーと全ランニングコストとの相関関係を記録する。また、関係記録部31はこの計算により求めた汚泥エネルギーと全ランニングコストとの相関関係に対し汚泥エネルギー推定部32が推定した汚泥エネルギーの推定値と全ランニングコスト算定部33が算定した全ランニングコストとの相関関係によって逐次修正を加えて更新された汚泥エネルギーと全ランニングコストとの相関関係を、全ランニングコストと汚泥エネルギーとの基準関係として記録する。さらに、関係記録部31は、
図2Bに示すような汚泥エネルギーと全ランニングコストとの相関関係を算出することなく、汚泥の処理装置1の稼働の開始から、汚泥エネルギー推定部32が推定した汚泥エネルギーの推定値と全ランニングコスト算定部33が算定した全ランニングコストの測定値との相関関係によって、逐次構築および修正を加えて得られる、汚泥エネルギーと全ランニングコストとの相関関係を、全ランニングコストと汚泥エネルギーとの基準関係として記録する。
【0038】
また、最適運転制御装置30は、関係記録部31に記録された汚泥エネルギーと全ランニングコストとの基準関係と、汚泥エネルギー推定部32により推定された現時点における最新の推定値である汚泥エネルギー値Eesとに基づいて、全ランニングコストCを最小にする汚泥エネルギーの最適値Eminに対する汚泥エネルギー値Eesの大小関係を把握する大小関係把握部34を有する。
【0039】
さらに、最適運転制御装置30は、低含水化設備10における脱水機11を制御するための低含水化動作制御部35を有する。低含水化動作制御部35は、脱水薬剤投入制御部14に制御信号を供給することにより、脱水機11における動力源12の回転数の増減、すなわち遠心力の増減を制御するとともに、脱水助剤投入器13を制御して脱水処理される汚泥の含水率の増減を制御する。
【0040】
最適運転制御装置30は、上述した燃料使用量、電力使用量や各薬剤の投入量などの現在の複数の使用エネルギー要素の使用量及び各薬剤の消費量を取得し、関係記録部31に記録された基準関係と、汚泥エネルギー推定部32が推定した最新の推定値である汚泥エネルギー値Eesとに基づいて、全ランニングコスト算定部33が算定した全ランニングコストが最小となる汚泥エネルギーの最適値E1minに向かうように、すなわち、大小関係把握部34が把握した汚泥エネルギーの最適値E1minと汚泥エネルギー値Eesとの大小関係が解消する方向に向かうように、低含水化動作制御部35により脱水機11の使用電力量及び脱水助剤の投入量の増減を指示する。
【0041】
具体的に、
図2Aに、最適運転制御装置30の関係記録部31は、燃料量検出器22aが検出した補助燃料の使用エネルギー要素の使用量としての燃料使用量P1の汚泥エネルギーに対する関係、流動ブロワB1、白防ファンB2、および誘引ファンB3の各電力使用量を加算した使用エネルギー要素の使用量としての電力使用量P2の汚泥エネルギーに対する関係、熱回収発電設備27の使用エネルギー要素の使用量としての熱回収発電量P3の汚泥エネルギーに対する関係、動力源12の使用エネルギー要素の使用量としての動力源エネルギー使用量P4、および脱水助剤、アルカリ剤などの薬剤の投入量の汚泥エネルギーに対する関係を記録しているとともに、燃料使用量P1、電力使用量P2、動力源エネルギー使用量P4、脱水助剤(ポリ鉄)投入量P5、アルカリ剤(苛性ソーダ)投入量P6を示す。脱水助剤やアルカリ剤はエネルギーを消費しないので、全エネルギー量には寄与しない。
図2Bには、P1〜P6のそれぞれをランニングコストに変換する重み係数K1〜K6を乗算し、各乗算した、燃料コストC1、使用電力コストC2、脱水機動力コストC4、脱水助剤消費コストC5、およびアルカリ剤消費コストC6を加算し、熱回収発電コストC3を減算した全ランニングコストC(=C1+C2+C4+C5+C6−C3)と汚泥エネルギーとの基準関係を記録している。
【0042】
なお、燃料使用量P1と汚泥エネルギーとの関係において、汚泥エネルギーが大きい方は燃料使用量P1が0の自燃状態である。また、熱回収発電量P3は、汚泥エネルギーが大きく(含水率Rが小さく)なると、燃焼温度が高くなり、燃焼ガス温度が高くなるので熱回収量が大きくなって発電量が大きくなる。また、動力源エネルギー使用量P4は、汚泥エネルギーが小さく(含水率Rが大きく)なるほど、脱水機11の動力源12の回転数が小さくなるため小さくなる。なお、電力使用量P2は、加算前に予め熱回収発電量P3を減算した使用エネルギー要素の使用量としての実電力使用量としてもよい。なお、汚泥供給ポンプ15は、熱操作設備20側に設けてもよく、この場合、電力使用量P2のうちの汚泥供給ポンプ15の電力量は、焼却設備燃焼制御装置28に入力される。
【0043】
また、燃料使用コストC1や電力使用コストC2と汚泥エネルギーとの関係や全ランニングコストCと汚泥エネルギーとの関係は、流動焼却炉21に投入する汚泥投入量によって変化する。
図2B中の曲線Lの汚泥投入量は、190t/日である。したがって、汚泥投入量が変化した場合には、この汚泥投入量に対応した関係に基づいて低含水化設備10を制御する。
【0044】
すなわち、全ランニングコストCと汚泥エネルギーとの関係は投入量の変化に応じて種々変化する。そこで、最適運転制御装置30は、あらかじめ算出された全ランニングコストCと汚泥エネルギーとの関係に対して、全ランニングコスト算定部33が算定した全ランニングコストCと、その時点において汚泥エネルギー推定部32が推定した汚泥エネルギー値Eesとの相関に基づいて適宜修正を加えて更新し、常に全ランニングコストCと汚泥エネルギーとの基準関係を更新する。具体的には、汚泥投入量をさらに細分化して、最適運転制御装置30の関係記録部31に、種々の全ランニングコストCと汚泥エネルギーとの関係を格納させることによって、全エネルギー使用量Pと汚泥エネルギーとの関係をより一層細かく適用できる。さらに、汚泥の処理装置1の稼働中においても、燃料使用量P1、電力使用量P2、熱回収発電量P3、動力源エネルギー使用量P4、脱水助剤投入量P5及びアルカリ剤投入量P6が逐次変化するため、これらの値から算定される全ランニングコストCと汚泥エネルギーとの関係も逐次変化する。そこで、最適運転制御装置30の全ランニングコスト算定部33は、燃料使用量P1、電力使用量P2、熱回収発電量P3、動力源エネルギー使用量P4、脱水助剤投入量P5およびアルカリ剤投入量P6から各ランニングコストを逐次算定し、全ランニングコストCを逐次算出する。そして、全エネルギー使用量測定部33は、関係記録部31に当初格納されている、例えば
図2Aにおける全エネルギー使用量Pと汚泥エネルギーとの関係を示す曲線Lに対して、全エネルギー使用量Pと汚泥エネルギーとのグラフを逐次更新し、全ランニングコストCが最小になる汚泥エネルギーE1minを算出する。関係記録部31は、全ランニングコストCと汚泥エネルギーとの基準関係を更新して記録する。
【0045】
次に、低含水化動作制御部35から供給される信号によって低含水化設備10の電力使用量と脱水された汚泥の汚泥エネルギーとの関係について説明する。
図3は、電力使用量と汚泥エネルギーとの関係を示すグラフである。
図3においては、汚泥の性状が変わることによって、汚泥特性がIdからIeに変化した場合を考える。この場合、低含水化設備10における電力使用量が同じ、すなわち汚泥に対する脱水処理が変わらず含水率がα%の場合でも、汚泥に含まれる可燃分が多くなると汚泥エネルギーEはE1からE2に増加する。そして、所望する汚泥エネルギーEがE1である場合には、汚泥エネルギーEをE2からE1に減少させる必要がある。この場合、脱水機11の電力使用量を矢印Bに沿って減少させて遠心力を下げて脱水効率を下げ、含水率を結果的にα%より高いβ%(α<β)とすることによって、矢印Aに沿って汚泥エネルギーEをE2からE1に戻すことができる。このように、脱水機11の電力使用量を制御して回転数を制御することにより、汚泥の含水率の増減を制御して、汚泥エネルギーEを、所望の汚泥エネルギーE1に向けて制御できる。逆に、汚泥特性がIeからIdに変化した場合においては、上述したプロセスとは逆のプロセスによって、脱水機11の回転数を増加させて脱水効率を上げる制御を行うことによって、汚泥エネルギーEをE3からE1に向けて制御できる。
【0046】
以上のように、低含水化設備10においては、低含水化動作制御部35が汚泥エネルギーの最新の推定値に基づいて脱水薬剤投入制御部14を通じて脱水機11における動力源12の回転数の増減、即ち、遠心力の増減を制御するとともに脱水助剤投入器13を制御して脱水処理される汚泥の含水率の増減を制御できるので、汚泥特性に応じて汚泥エネルギーEを増減させることが可能となる。
【0047】
(最適運転制御処理方法)
次に、本発明の一実施形態による最適運転制御装置30による最適運転制御処理方法について説明する。
図4は、この最適運転制御処理方法を示すフローチャートである。
【0048】
図4に示すように、この一実施形態において、まず、最適運転制御装置30は、関係記録部31に記録されている全ランニングコストCと汚泥エネルギーとの基準関係に基づいて、入力される汚泥が標準汚泥(汚泥エネルギー値E1minで全ランニングコストCが最小値をとる)であるとして、全ランニングコストCが最小値となる汚泥エネルギー値E1minを求める(ステップS101)。
【0049】
次に、低含水化動作制御部35は、標準汚泥の場合による脱水機11の回転数、および脱水助剤の投入量を制御して汚泥に対して脱水処理を行う(ステップS102)。
【0050】
次に、ステップS103に移行して、最適運転制御装置30は、流動焼却炉21内に供給される使用エネルギー要素としての、補助燃料の流量(補助燃料使用量)と流動焼却炉21内に供給される流動空気の流量および温度とを含む燃焼用エネルギーのエネルギー量(燃焼用エネルギー量)が変動しているか否かを判断する(ステップS103)。なお、熱操作設備20に流動空気を冷却するための冷却器が設けられている場合においては、冷却用空気の供給量制御を行うため、供給量制御による冷却用空気の供給量や冷却器の電力量なども、燃焼用エネルギーとして算入してもよい。
【0051】
補助燃料や流動空気に基づく燃焼エネルギー量が変動した場合(ステップS103,Yes)、ステップS104に移行する。ステップS104において、最適運転制御装置30の汚泥エネルギー推定部32は、流動焼却炉21に流入する燃焼用エネルギーのトータル熱量と、流動焼却炉21から排出されるガスのトータル熱量とから、その時点に流動焼却炉21内に供給されている汚泥の汚泥エネルギー値Eesを算出して推定する。(ステップS104)。推定された汚泥エネルギー値Eesは所定の記録領域に格納される。
【0052】
次に、最適運転制御装置30の全ランニングコスト算定部33は、汚泥の処理装置における各部から供給されるデータに基づいて、使用エネルギー要素ごとにエネルギー使用量の測定を行うとともに、それぞれをランニングコストに変換する重み係数K1〜K6を乗算し、各乗算した、燃料コストC1、使用電力コストC2、脱水機動力コストC4、脱水助剤消費コストC5およびアルカリ剤消費コストC6を加算し、熱回収発電コストC3を減算した全ランニングコストCを算定する。そして、ステップS104において推定した最新の汚泥エネルギー値Eesと、その時点における全ランニングコストCとに基づいて、過去のデータなどから補間を行う。これによって、
図2Bに示すあらかじめ算出された相関関係である全ランニングコストCと汚泥エネルギーとの関係に対し、全ランニングコストCと汚泥エネルギーとの基準関係を逐次修正して更新する。このとき、全ランニングコストCが最小となる汚泥エネルギーの最適値(汚泥エネルギー値E1min)も導出される。更新された全ランニングコストCと汚泥エネルギーとの基準関係は、関係記録部31に読み出し可能に格納される。なお、
図2Bに示すような汚泥エネルギーと全ランニングコストCとの相関関係をあらかじめ算出しない場合には、汚泥の処理装置1の稼働の開始から、汚泥エネルギー推定部32が推定した汚泥エネルギーの推定値と全ランニングコスト算定部33が算定した全ランニングコストの算定値との相関関係によって、全ランニングコストCと汚泥エネルギーとの関係を逐次構築し、これにさらに修正が加えられることによって、
図2Bに示すような全ランニングコストCと汚泥エネルギーとの基準関係が導出される。
【0053】
その後、最適運転制御装置30は、上述した関係記録部31に格納された全ランニングコストCと汚泥エネルギーとの基準関係に基づいて、現在の全ランニングコストCが最小値であるか否かを判断する(ステップS106)。
【0054】
現在の全ランニングコストCが最小値でない場合(ステップS106,No)、最適運転制御装置30の大小関係把握部34は、ステップS104において推定された汚泥エネルギーの推定値Eesと、ステップS105において導出された汚泥エネルギーの最適値E1minとの大小関係を算出して把握する(ステップS107)。
【0055】
そして、最適運転制御装置30の低含水化動作制御部35は、脱水薬剤投入制御部14を制御して脱水機11及び脱水助剤投入量を制御することにより、推定された汚泥エネルギーが、全ランニングコストCが最小になる汚泥エネルギーになる方向、すなわち大小関係が解消する方向に、脱水機11に対して遠心力の増減制御を行う(ステップS108)。
【0056】
その後、ステップS103に移行して上述したステップS103〜S108の処理を繰り返す。なお、以上のステップS103〜S108では、特にステップS103が所定の時間間隔で実行されるようにするのが望ましい。この時間間隔としては、脱水機11と流動焼却炉21との間における汚泥の搬送時間などを採用することが可能であり、汚泥の処理装置1の設計に応じて適切な時間間隔を設定可能である。
【0057】
なお、ステップS103において、補助燃料や流動空気に基づく燃焼エネルギー量が変動していない場合(ステップS102,No)、燃焼用エネルギー量の変動が生じるまでステップS103を繰り返す。また、ステップS106において、現在の全ランニングコストCが最小値である場合(ステップS106,Yes)、最適運転制御装置30は脱水薬剤投入制御部14に電力使用量の増減を指示することなく、そのままステップS103に復帰する。
【0058】
以上説明した本発明の一実施形態によれば、焼却される汚泥の含水率や可燃分などを計測することなく、汚泥の処理装置1全体の全ランニングコストCが最小値となる汚泥エネルギー値になるように低含水化設備10の運転制御を行っているので、汚泥の性状が変化して汚泥特性が変わった場合であっても、常に汚泥の処理装置1全体のランニングコストを最小にすることができる。
【0059】
また、本発明の一実施形態によれば、常に全ランニングコストCが最小に向かうように低含水化設備10の脱水機11の動力源12の回転数の増減、及び脱水助剤投入器13での脱水助剤の投入量の増減によって全ランニングコストを最小まで制御させることができる。すなわち、汚泥エネルギー値E1minは、自燃状態と補燃状態とが切り替わる汚泥エネルギー値に近い値であるが、この前後で自燃状態と補燃状態とは明確に切り替わるものではない。そのため、作業者等が自燃状態と補燃状態とを見極め、この状態の区別に応じて手作業によって低含水化設備10における消費電力量の増減を制御したとしても、全ランニングコストを最小にすることは極めて困難である。これに対し、この一実施形態によれば、汚泥エネルギーを推定して、現在の全ランニングコストCが減少する方向に向けて汚泥エネルギーが変化するように脱水機11の動力源12の回転数、及び脱水助剤投入器13での脱水助剤の投入量を制御していることにより、常に全ランニングコストが最小に向かうようにさせることができる。
【0060】
また、従来に比して、有機性廃棄物の処理装置における全体の設備を省スペース化できる。すなわち、従来の流動焼却炉21などの焼却炉においては、汚泥の含水率を広い範囲で対応できるとともに、焼却炉での発熱量についても広い範囲で対応する必要があった。そのため、汚泥の含水率と焼却炉での発熱量との関係について、広範囲を満足するような仕様にする必要があり、焼却炉は必然的にオーバースペックになっていた。これに対し、この一実施形態によれば、流動焼却炉21などの焼却炉において、汚泥の含水率の対応範囲を狭くできるとともに、焼却炉での発熱量の対応範囲についても狭くできるので、汚泥の含水率と発熱量との関係において満足すべき範囲を小さくした仕様にでき、有機性廃棄物の処理装置における全体の設備を省スペース化できる。
【0061】
以上、本発明の一実施形態について具体的に説明したが、本発明は、上述の一実施形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えば、上述の一実施形態において挙げた数値はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる数値を用いてもよい。
【0062】
具体的に例えば、上述した一実施形態においては、最適運転制御装置30は、低含水化設備10側の動力源エネルギー使用量P4および電力使用量P2の一部である汚泥供給ポンプの電力量を加味して脱水機11の電力使用量の増減を制御するようにしているが、これらの低含水化設備10側の使用エネルギー要素を加味せず、熱操作設備20側の使用エネルギー要素のみに基づいて脱水機11を制御するようにしてもよい。
【0063】
また、上述した一実施形態において、汚泥の処理装置1に、上述した燃料使用量P1、電力使用量P2、熱回収発電量P3、および動力源エネルギー使用量P4以外の他のエネルギー要素の使用がある場合には、その使用エネルギー要素の使用量と汚泥エネルギーとの関係を含めて脱水機11の制御を行うようにすればよい。この使用エネルギー要素の使用量とは、例えば、他種の燃料使用量や他設備の電力使用量などである。
【0064】
(変形例)
本変形例では、上述した重み係数K1〜K6に替えて、
図5に示すように、各使用エネルギー要素の使用量である、燃料使用量P1、電力使用量P2、熱回収発電量P3、動力源エネルギー使用量P4、および脱水助剤(ポリ鉄)投入量P5、アルカリ剤(苛性ソーダ)投入量P6のそれぞれを二酸化炭素排出量に変換する重み係数K11〜K16を乗算し、各乗算した、都市ガス由来二酸化炭素排出量G1、使用電力由来二酸化炭素排出量G2、脱水機動力由来二酸化炭素排出量G4、および脱水助剤(ポリ鉄)由来二酸化炭素排出量G5、アルカリ剤(苛性ソーダ)由来二酸化炭素排出量G6を加算し、熱回収発電由来二酸化炭素排出量G3を減算した全二酸化炭素排出量Gが最小値となる汚泥エネルギー値E2minとなるように脱水機11の遠心力の増減制御を行うようにしている。これによって、汚泥の処理装置1全体の二酸化炭素排出量を最小とする最適制御を行うことができる。
【0065】
なお、変形例で示した以外のエネルギー関連カテゴリに変換する重み係数を用いてもよい。例えば、売価値に変換する重み係数であってもよい。さらには、この売価値は、ランニングコストと合わせて合算することができるため、例えば、熱回収発電コストに変換せずに、売電価格に変換するようにしてもよい。消費電力コストと売電価格とは変換係数が異なる場合が多いからである。
【0066】
また、上述した一実施形態、変形例では、最適状態を最小状態としているが、これに限らず、最適状態を最大状態としてもよい。
【0067】
なお、全ランニングコストC,C´、全二酸化炭素排出量Gが最小値となる状態は、自燃状態であるとは限らず、また、各最小値に対応する汚泥エネルギー値も同一であるとは限らない。
【0068】
さらに、上述した一実施形態、変形例では、最適運転制御装置30を低含水化設備10および熱操作設備20に対して独立した構成としたが、これに限らず、最適運転制御装置30の機能を、低含水化設備10または熱操作設備20側に設けてもよい。
【0069】
なお、上述した各使用エネルギー要素の2以上の組み合わせは任意に設定することができる。
【0070】
また、上述の一実施形態においては、脱水機の遠心力を制御することにより、汚泥の含水率を変更して汚泥エネルギーを制御しているが、必ずしもこれに限定されるものではなく、汚泥エネルギーを増減変更可能であれば種々の制御を実行可能である。具体的には、脱水機の使用電力量や差速などを直接制御することによって汚泥エネルギーを増減させる方法や、汚泥の含水率を制御するための含水率制御手段を有する脱水機に対して、含水率の増減のみを指示して間接制御する方法を採用することも可能である。
【0071】
また、上述の一実施形態において、燃焼手段として、循環焼却炉などの流動焼却炉以外のタイプの焼却炉を用いてもよく、ガス化炉や炭化炉等、熱操作の目的に応じて適宜選択することも可能である。なお、熱操作設備20としては、焼却処理を行う焼却炉を含む焼却設備に限らず、汚泥ガス化炉や汚泥燃料化(炭化)炉を含む設備でもよい。
【0072】
また、上述の一実施形態において、熱回収発電設備27は、熱回収したエネルギーによって回転されるタービンの回転力を動力として直接出力するようにしてもよい。さらに、熱回収発電設備27は、流動空気予熱器23で熱交換される流動空気であって、流動空気予熱器23の前段の流動空気を熱源として使用してもよく、流動空気予熱器23の前段の流動空気に並列して取得した流動空気を熱源として使用してもよい。