【解決手段】金属製の容器本体11と、その容器本体11の内面と環状に当接して容器本体内に固定され、容器本体11内を上下の空間に区画する隔壁部材12と、その隔壁部材によって区画された2つの上収容部13aおよび下収容部13bと、それぞれの収容部とそれぞれ連通するバルブ14とを備えたエアゾール容器10。容器本体11の胴部11aには、半径方向内側に突出し、隔壁部材12と環状に係合して固定する環状リブ15が形成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、いずれの吐出容器も内容物を収容する収容部の外部に加圧剤が充填され、それぞれの収容部を収縮させることによって内容物を吐出するものである。つまり、特許文献1、2の収容部内に内容物とガスとを共存させることができないため、内容物の吐出形態が限定される。また、特許文献1の吐出容器の場合、上収容部への圧力は、2つのピストンを介しているため、圧力損失が発生し、内容物によっては2つの収容部にかかる圧力が大きく異なり、2つの内容物の吐出量の比率が変化するおそれがある。
本発明は、複数の収容部内にそれぞれ内容物とガス(噴射剤)とを共存させることができる、新しい構造の複数内容物の吐出容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の複数内容物の吐出容器は、金属製の容器本体と、その容器本体の内面と環状に当接して容器本体内に固定され、容器本体内を上下の空間に区画する隔壁部材と、その隔壁部材によって区画された空間から構成される複数の収容部と、その複数の収容部とそれぞれ連通するバルブとを備えており、前記容器本体が、胴部に半径方向内側に突出し、前記隔壁部材と環状に当接し、前記隔壁部材を固定する環状リブを有していることを特徴としている。このような吐出容器は、隔壁部材を上下に2個以上設けることにより、3個以上の収容部を構成することができる。
【0006】
本発明の吐出容器であって、隔壁部材に前記環状リブと環状に当接して弾性変形する環
状のシール材が設けられているが好ましい。
本発明の吐出容器であって、容器本体が少なくとも2つの環状リブを有しており、隔壁部材が2つの環状リブによって挟持されることによって固定されているものが好ましい。一方、隔壁部材が環状リブとの摩擦によって固定されていてもよい。
本発明の吐出容器であって、容器本体内に1つの隔壁部材が設けられており、
前記収容部が上下2つ形成されているものが好ましい。その場合、バルブがバルブ内と下の空間とを連通する連通部材を備えており、隔壁部材が連通部材を装着する中心孔を備えているのが好ましい。
本発明の吐出容器であって、容器本体の開口部の内径が前記環状リブの内径ないし隔壁部材の外径より小さいものが好ましい。
【0007】
本発明の複数内容物の吐出容器の製造方法は、金属材料から有底筒状の筒容器を成形する第1工程と、前記筒容器内で、その筒容器内を上下に区画する隔壁部材を保持する第2工程と、前記筒容器に、前記隔壁部材と嵌合させるように、半径方向内側に突出させた環状リブを形成する第3工程とを備えたことを特徴としている。
このような製造方法であって、前記第2工程が、前記筒容器に半径方向内側に突出させた第1環状リブを形成し、前記隔壁部材を、第1環状リブに載置することにより、筒容器内で保持させる工程であり、前記第3工程が、前記筒容器に、前記隔壁部材を第1環状リブと挟持するように、半径方向内側に突出させた第2環状リブを形成する工程であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の複数内容物の吐出容器は、金属製の容器本体と、その容器本体の内面と環状に当接して容器本体内に固定され、容器本体内を上下の空間に区画する隔壁部材と、その隔壁部材によって区画された空間から構成される複数の収容部と、その複数の収容部とそれぞれ連通するバルブとを備えており、前記容器本体が、胴部に半径方向内側に突出し、前記隔壁部材と環状に当接し、前記隔壁部材を固定する環状リブを有しているため、隔壁部材の固定構造が簡易であり、隔壁部材の位置の自由度が高く、各収容部の容積を容易に変えることができる。また、隔壁部材は、容器本体内に固定されているため、内容物の吐出時に移動せず、各内容物はそれぞれ独立して内容物を吐出でき、一方の内容物の圧力が他の内容物に影響することがない。また、複数の内容物の圧力が変動しても、複数の内容物を安定した比率で吐出することができる。
【0009】
本発明の吐出容器であって、隔壁部材に容器本体の内面の環状リブと環状に当接して弾性変形する環状のシール材が設けられている場合、区画された収容部同士のシール性を高くすることができる。
本発明の吐出容器であって、容器本体が少なくとも2つの環状リブを有しており、隔壁部材が2つの環状リブによって挟持されることによって固定されている場合、隔壁部材をしっかり固定することができ、シール性も向上する。
本発明の吐出容器であって、隔壁部材が環状リブとの摩擦によって固定されている場合、固定構造を簡素化することができる。
【0010】
本発明の吐出容器であって、容器本体内に1つの隔壁部材が設けられており、前記収容部が上下2つ形成されている場合、2つの内容物を独立して収容、吐出させることができる。また、バルブがバルブ内と下の空間とを連通する連通部材を備えており、隔壁部材が連通部材を装着する中心孔を備えている場合、隔壁部材の外周部が環状リブによって固定され、隔壁部材の中心孔が連通部材を介してバルブに固定され、一層確実に隔壁部材を固定できる。
本発明の吐出容器であって、容器本体の開口部の内径が前記環状リブの内径ないし隔壁部材の外径より小さい場合、様々な形状の容器本体に採用することができる。
【0011】
本発明の複数内容物の吐出容器の製造方法は、金属材料から有底筒状の筒容器を成形する第1工程と、前記筒容器内で、その筒容器内を上下に区画する隔壁部材を保持する第2工程と、前記筒容器に、前記隔壁部材と嵌合させるように、半径方向内側に突出させた環状リブを形成する第3工程とを備えているため、様々な形状の容器本体内に隔壁部材を固定することができる。また、隔壁部材を固定する環状リブを形成する位置を変えるだけで収容部の容積を変えることができる。
本発明の製造方法であって、前記第2工程が前記筒容器に半径方向内側に突出させた第1環状リブを形成し、前記隔壁部材を、第1環状リブに載置することにより、筒容器内で保持させる工程であり、前記第3工程が前記筒容器に前記隔壁部材を第1環状リブと挟持するように半径方向内側に突出させた第2環状リブを形成する工程である場合、隔壁部材の固定を一層確実にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1のエアゾール容器(吐出容器)10は、金属製の容器本体11と、その容器本体11の内面と環状に当接して容器本体内に固定され、容器本体11内を上下の空間に区画する隔壁部材12と、その隔壁部材によって区画された2つの上収容部13aおよび下収容部13bと、それぞれの収容部とそれぞれ連通するバルブ14とを備えている。容器本体11の胴部11aには、半径方向内側に突出し、隔壁部材12と環状に係合して固定する環状リブ15が形成されている。
このエアゾール容器10の上収容部13aに、第1の内容物および噴射剤が充填され、下収容部13bに、第2の内容物および噴射剤が充填されて倒立噴射型のエアゾール製品(吐出製品)となる。
【0014】
金属製の容器本体11は、下端が底部によって閉じられた円筒状の胴部11aと、胴部上端から上方に向かって縮径するように設けられたテーパー状の肩部11bと、肩部上端に環状に形成されたビード部11cとを備えている。胴部11aの中央内面には、半径方向内側に突出した3本の環状リブ15(上リブ15a、中リブ15b、下リブ15c)が形成されている(
図2a参照)。この環状リブ15は、胴部11aの外周面から押圧部材を当接させ、表面に環状溝を形成するようにして形成される。環状リブ15は、連続的に1つのリブから構成されても、等間隔環状に設けられた複数のリブから構成されていてもよい。
なお、容器本体の開口部内径(ビード部11cの内径)は、胴部の環状リブ15の内径より小さく構成されている。容器本体の開口部内径は、15〜30mm、特に20〜28
mmとし、容器本体の胴部の内径は、20〜70mm、特に、30〜60mmとするのが好ましい。そして、環状リブ15の内径は、胴部11aの内径より内側に0.2〜3mm、特に0.3〜2mm突出させる、あるいは、胴部11aの内径に対して0.85〜0.99倍、特に0.9〜0.98倍となるように構成するのが好ましい。ただし、
図8のように胴部にくびれ部を設け、環状リブをくびれ部に設けてもよい。この場合、前述の環状リブの内径と胴部の内径との関係は、環状リブの内径とくびれ部の内径との関係に置き換えることができる。
この容器本体11は、たとえば、アルミニウムなどの金属円盤をインパクト加工および/または絞りしごき加工により有底筒状に成形し、または金属カップを絞りしごき加工により有底筒状に形成し、内面に合成樹脂コートを設ける(筒容器)。ついで、胴部に環状リブ15を形成する。その後、その胴部上端にネッキング加工を施して肩部を形成し、首部上端にカーリング加工を施してビード11cを形成して成形される。なお、肩部11bと、ビード部11cの間に、円筒状の首部を設けてもよい。
【0015】
隔壁部材12は、
図2aに示すように、容器本体11の内面と当接する円板状のものであり、中心に上下に貫通する中心孔12aを有し、側縁の外周面に上下に並んだ2つの環状凹部12bを有し、そして、環状凹部12bを繋ぐ円筒面12cを有している。この環状凹部12bに、それぞれOリング20が装着される。
この隔壁部材12は、環状リブ15の上リブ15aと下リブ15cで挟持されて、容器本体11内に固定される。また、中リブ15bは、円筒面12cと当接、あるいは、円筒面12cを変形させるようにして係合する。そして、Oリング20が容器本体11の環状リブ15の間の内面(傾斜面)16aによって押圧され、弾性変形される。このOリング20によって、上下収容部13a、13bの間がシールされる。
図2bの構造は、1本のOリング20を備えた隔壁部材12と、2本のリブ(上リブ15a及び下リブ15c)からなる環状リブ15とからなる固定構造である。2本のリブ15a、cで、隔壁部材12を固定し、かつ、リブ15a、cの内面16aでOリング20を圧縮してシールしている。
この隔壁部材12を上下に複数個設けることにより、隔壁部材の数より1つ多い収容部が形成される。
【0016】
図1に戻って、バルブ14は、有底筒状のハウジング21と、その内部に上下移動自在に収容され、2つの独立した通路を有し、それぞれの通路と連通した2つのステム孔を有するステム22と、それぞれステム孔を閉じ、上下に配置された2つのステムラバー23a、bと、それらのステムラバーを保持する保持部材24と、ステムを上向きに付勢するバネ25と、ハウジング21と下収容部13bを連通する筒状の連結部材26と、ステム22、2つのステムラバー23、保持部材24及びバネ25をハウジング21内に固定し、バルブ14全体を容器本体11の開口部に固定するマウンティングカップ27を備えている。
【0017】
ハウジング21は、下底に下収容部13bに連通する下連通孔21bを備えている。また、ハウジング21の側面は、上から上端フランジ部28a、大径部28b、小径部28cとなっており、大径部28bの側面に上連通孔21aが形成されている。そして、ハウジング21の下底から下方に筒状のチューブ連結部29が形成されている。
【0018】
ステム22は、外筒の中にいくらか細い小径の内筒を上端が突出するように、隙間を介して同心状に挿入した形態を有し、外筒と内筒の間の第1通路と、内筒内の第2通路との2つの独立した通路を有しており、第1通路と連通した上ステム孔22aと、第2通路と連通した下ステム孔22bとを有している。
ステムラバー23a、bは、それぞれステム22を通し、上ステム孔22aおよび下ステム孔22bを塞ぐ環状のものである。上ステムラバー23aの外周縁は、ハウジングの
上端開口部に配置され、下ステムラバー23bの外周縁は、ハウジングの内面に形成された段部(ステムラバー保持部)に配置される。
保持部材24は、筒状のものであり、上端で上ステムラバー23aと当接し、下端で下ステムラバー23bと当接する。保持部材24の内部と、上連通孔21aとが連通するように、切欠き24aが形成されている。
【0019】
連結部材26は、ハウジング21のチューブ連結部29に装着されるチューブ31と、その下部に連結され、隔壁部材12の中心孔12aに挿入される筒状の栓体32とからなる。
栓体32は、隔壁部材12の上面(上端)と当接する上フランジ部32aと、隔壁部材12の下面(下端)と当接する下フランジ部32bを有しており、上下フランジ部32a、bで挟持するようにして、隔壁部材12と連結する。また、下フランジ部32bは、栓体32を隔壁部材12にクリップ嵌合できるように、外径が下方に向かって縮径するようになっている。さらに、上フランジ部32aと下フランジ部32bの間の側壁には、Oリング33を装着する環状凹部32cが形成されている。Oリング33は、隔壁部材12の中心孔12aと栓体32の側壁との間で弾性変形しており、これらの間をシールするものである。
【0020】
マウンティングカップ27は、ハウジング21の上端開口部を覆い、かつ、ハウジング21の上端フランジ部28aを挟む筒状のハウジング保持部27aと、そのハウジング保持部27aの下端と連結され、容器本体11のビード部11cにシール材19介して固定された筒状の容器保持部27bとを備えている。容器保持部27bは、容器本体11のビード部11cのすそ部あるいは肩部11bの上端の内面に対してカシメて固定される。
【0021】
このように構成されたエアゾール容器10は、倒立状態(バルブ14のステム22を下方に向けた状態)でバルブ14のステム22を下方に押し下げることにより、上収容部13aと大気、並びに、下収容部13bと大気が連通し、それぞれの収容部に収容された内容物が噴射剤と共に吐出される。
つまり、上収容部13aの内容物は、バルブ14の上連通孔21a、上下ステムラバー23の間の空間(保持部材24内)、上ステム孔22a、ステム22の外筒と内筒との間の通路を介してステム22の上端から吐出される(第1通路)。他方、下収容部13bの内容物は、チューブ31、下連通孔21b、下ステムラバー23bとハウジングの底部の間の空間、下ステム孔22b、ステム22の内筒の通路を介してステム22の上端から吐出される(第2通路)。
【0022】
エアゾール容器10の製造および組立工程を示す。
初めに
図3aに示すように、アルミニウムなどの金属材料から有底筒状の筒容器35を成形する(第1工程)。例えば、円盤状の金属スラグからインパクト加工、絞りしごき加工によって筒容器35を成形してもよく、金属カップを絞りしごき加工によって筒容器35を成形してもよい。また、金属板材を筒状に巻いて溶接またはハゼ継ぎし、その下端に底部を二重巻き締めによって連結させて筒容器35を成形してもよい。これらのその加工方法は特に限定されるものではない。
次に、筒容器35内に隔壁部材12を保持する(第2工程)。詳しくは、
図3bに示すように、筒容器35に下リブ15cを形成し、その上に隔壁部材12を載置させて保持することができる。また
図7に示すように脚部を備えた隔壁部材を用いて、容器本体11の底部に支持させてもよい。
【0023】
次に、筒容器35に半径方向内側に突出させた環状リブ15を形成し、隔壁部材12をその筒容器35内に固定する。詳しくは、
図3cに示すように、上リブ15aと下リブ15cによって隔壁部材12を挟持して固定する(第3工程)。このとき、第2工程で下リ
ブ15cを形成している場合は、上リブ15aが第3工程の環状リブとなる。また、第2工程で、下リブ15cを形成していない場合は、上リブ15a、下リブ15cが第3工程の環状リブとなる。また、環状リブ15と隔壁部材12との摩擦力で固定してもよい。さらに、
図3cでは、中リブ15bを隔壁部材12の円筒面12cに押圧して係合している。
次に、
図3dに示すように、筒容器35の上端にネッキング加工を施して肩部11bを形成し、首部上端にカーリング加工を施してビード部11cを形成し、容器本体11を完成させる。このように容器本体11を成形することにより、容器本体11の開口部の内径より大きい外径を有する隔壁部材12を挿入し、固定することができる。
次に、連結部材26を装着させたバルブ14を挿入し、連結部材26を隔壁部材12に装着する(
図1参照)。
最後に、バルブ14を容器本体11に固定する(
図1参照)。
【0024】
内容物の充填は、製造されたエアゾール容器10のステム22を押し下げて、ステムの上端から第1通路を介して第1内容物および噴射剤を充填し、第2通路を介して第2内容物および噴射剤を充填することによって行い、エアゾール製品が製造される。なお、バルブ14を取り付ける前に内容物を充填することもできる。例えば、
図3dに示す容器本体11に、隔壁部材の中心孔12aから下収容部13bに第2内容物を充填し、中心孔12aに連結部材の栓体32を装着する。次いで上収容部13aに第1内容物を充填し、チューブ31の先端をバルブのチューブ連結部29に嵌め、バルブのマウンティングカップをビード部11cに被せ、マウンティングカップをクリンプして容器本体に固定する。最後にステムから噴射剤を上収容部と下収容部に充填することでエアゾール製品を製造することもできる。
いずれの場合もこのエアゾール容器10は隔壁部材12が固定されているため、第1内容物と第2内容物にそれぞれ異なる噴射剤を使用することができるが、同じ噴射剤を用いてもよい。この場合、第1内容物および第2内容物を充填した後で、共通の噴射剤を同時に充填することができる。
【0025】
このように容器本体に固定された隔壁部材により区画された収容部にそれぞれ内容物および噴射剤を充填することができるため、他の収容部に充填した内容物および噴射剤に関係なく、それぞれの収容部内の圧力は維持され、安定した吐出が可能となる。また、噴射剤として液化石油ガスなどの液化ガスを使用する場合は、吐出時の液化ガスの気化を利用して、内容物を微細なスプレーにしたり、きめ細かなフォームでの吐出が可能となる。また、環状リブ15の位置によって上下収容部13a、bの容積を任意に設定することができるため、生産性が高い。
さらに、上収容部13a内の第1内容物と下収容部13b内の第2内容物は隔壁部材1
2により直接接触しないが、このエアゾール容器10は第1内容物と第2内容物の間に噴射剤のガスがあるため、第1内容物と第2内容物が2液式染毛剤のように反応型の内容物であっても、安定に保管することができる。特にこのエアゾール容器10のように倒立で使用する形態では、第2通路(チューブ31の下端)が下収納部13bの気相部に開口しているため、正立状態で保管しておくと第2通路(チューブ)内に内容物が入らず、より安定に保管することができる。また、引用文献1のように可動式ピストンの場合は内容物を吐出するとピストンと内容物が上昇して重心が上に移動するため不安定になり、静置しても転倒しやすいが、このエアゾール容器10は内容物を吐出しても重心は下方にあるため転倒しにくい。
【0026】
図4のエアゾール容器40は、正立状態(バルブ14のステム22を上方に向けた状態)で用いるものである。詳しくは、連結部材26のチューブ31が容器本体11の底部近辺まで延びており、バルブ14のハウジング21の大径部28bの外周に、ハウジング21の上連通孔21aと上収容部13aとを連通する筒状の外チューブ41が、チューブ3
1と同軸となるように嵌合されている。なお、ハウジングの大径部28bの外面には、上連通孔21aから下方に延びるスリットが形成されており、外チューブ41を大径部28aに装着したときに上連通孔21aと連通する通路を確保する。これにより、正立状態でも、それぞれの収容部の内容物をバルブのハウジング21内に誘導でき、外部に吐出させることができる。他の構成は、
図1の吐出容器10と実質的に同じものである。
【0027】
図5のエアゾール容器45は、
図1のエアゾール容器10に比べて上収容部13aの容積を小さくしたものである。詳しくは、隔壁部材46を容器本体11の胴部11aの上部に固定したものであり、環状リブ15も容器本体11の胴部11aの上部に形成されている。また、隔壁部材46の下面46aが中心孔12aから下方に向かって拡径するように形成されている。これにより、効率よく下収容部13bの内容物をバルブ14に送ることができる。また、
図1では別々の部品としていた栓体と下収納部内の内容物を導入するチューブを一体化(隔壁部材46)することで部品数を減らし、製造しやすくしている。他の構成は、
図1の吐出容器10と実質的に同じものであり、倒立状態で使用するものである。
【0028】
図6のエアゾール容器50は、容器本体51の上端開口部と、バルブ52の固定構造が異なるものである。詳しくは、容器本体51は、肩部11bの上端に首部51cが形成され、その上端に拡径した円筒状の口部51dが形成されており、口部51dの上端は真っ直ぐ上方に向いている。この容器本体51はビード部を備えてなく、
図1の容器本体11よりも細くすることができる。たとえば、口部51dの内径は7〜25mm、胴部の内径は10〜35mm、環状リブの内径は、胴部の内径より内側に0.2〜3mm、特に0.3〜2mm突出させる、あるいは、胴部の内径に対して0.8〜0.97倍、特に0.85〜0.95倍となるように構成するのが好ましい。
一方、バルブ52は、ハウジング21を保持し、容器本体51の開口部に配置される栓部材53と、その栓部材53を容器本体51の開口部に固定するカバーキャップ54とを備えている。栓部材53は、ハウジング21を保持し、上底を有するカップ状のハウジング保持部53aと、容器本体の口部51dに挿入される筒状の外周部53bと、それらの下端を連結する連結部53cとからなり、ハウジング保持部53aと外周部53bとの間の空間(環状の溝部)を備えている。外周部53bは、環状のシール材55を介して容器本体51の上端に配置されるフランジ56を備えている。カバーキャップ54は、栓部材53のハウジング保持部53a、連結部53c、外周部53bの上部に沿って設けられ、下端が容器本体51の首部51cにカシメつけられて固定されている。他の構成は、
図1のエアゾール容器10と実質的に同じものである。
この容器本体51の製造方法は、有底筒状の筒容器を成形し(第1工程)、筒容器内に隔壁部材を保持し(第2工程)、筒容器の胴部に半径方向内側に突出させた環状リブを形成して隔壁部材をその筒容器内に固定し(第3工程)、筒容器の上端にネッキング加工を施して肩部11b、首部51c、口部51dを形成し、完成させる。
また、この容器本体51は、隔壁部材の中心孔から下収容部に第2内容物を充填し、中心孔に連結部材の栓体を装着し、上収容部に第1内容物を充填し、チューブの先端をチューブ連結部に嵌め、バルブの栓部材53のフランジ56をシール材55を介して口部51dの上端に載置し、カバーキャップ54の下端を容器本体51の首部51cにカシメつけて固定し、ステムから噴射剤を上収容部と下収容部に充填することでエアゾール製品を製造することができる。
【0029】
図7のエアゾール容器60は、隔壁部材61が下部に脚部62を備えており、容器本体11と隔壁部材61とを固定する環状リブ15が1本のものである。
隔壁部材61の脚部62は、下面から下方に向かって延びる板状の脚62aが環状に複
数本形成されており、脚62aの下端が容器本体の底部と当接し、隔壁部材61を所定の位置に保持している。隔壁部材61の他の構成は、
図1の隔壁部材12と実質的に同じで
あり、中心孔12a、Oリング20を装着する環状凹部12b、環状凹部12bを繋ぐ円筒面12cを有している。
また1本の環状リブ15は、Oリング20を弾性変形させるように、隔壁部材61の円筒面12cと当接、あるいは、円筒面12cを変形させるように係合している。つまり、隔壁部材61は、環状リブ15と摩擦によって固定されている。
上述したように隔壁部材61の脚部62は、エアゾール容器の製造工程の第2工程における筒容器35内に隔壁部材61を保持する手段となる(
図3b参照)。つまり、筒容器35内に隔壁部材61の脚部62を介して容器本体11の底部に支持させている。
他の構成は、
図1のエアゾール容器10と実質的に同じであり、倒立状態で使用するものである。ただし、
図4に示すようにチューブを容器本体の下端近辺まで延ばし、外チューブを設けることにより、正立状態で使用するものにできる。
【0030】
図8のエアゾール容器65は、胴部にくびれ部66を設け、くびれ部66に環状リブ67を形成しており、環状リブ67の内径が容器本体11の開口部の内径と実質的に同じとなるように形成されている。このように環状リブ67の内径を開口部の内径と実質的に同じ、または、それより小さくすることにより、容器本体11を成形してから隔壁部材12を挿入することができる。他の構成は、
図1のエアゾール容器10と実質的に同じである、倒立状態で使用するものである。このものも、
図4に示すように正立状態で使用するものにできる。
【0031】
図9のエアゾール容器70は、開口部に2つのステムを備えたバルブアッセンブリを備えたものであり、正立状態で使用するものである。詳しくは、耐圧性を有する容器本体71と、その容器本体71の内面と環状に当接して容器本体内に固定され、容器本体71内を上下の空間に区画する隔壁部材72と、その隔壁部材によって区画された上収容部73aおよび下収容部73bと、それぞれの収容部とそれぞれ連通する2つのエアゾールバルブ74a、bを備えたバルブアッセンブリ75とを備えている。
【0032】
容器本体71は、肩部11bとビード部11cとの間に円筒状の首部71aを備えたものである。そして、容器本体71の開口部のシール部位が首部71aとなっている。他の構成は、
図1の容器本体11と実質的に同じものであり、胴部11aの中央内面に、半径方向内側に突出した3本の環状リブ15が形成されている。この実施形態では、容器本体71の環状リブ15の間の環状突起71bを平面加工している。これにより、環状リブ15の間の内面(円筒面)16aと、Oリング20との間のシール性を一層高くしている。
【0033】
隔壁部材72は、エアゾールバルブ74bと下収容部73bとを連通するチューブを挿入する連通孔72aが中心に設けられており、連通孔72aに栓体31が装着されている。詳しくは、栓体31の下部に下収容部73bに延びる下部チューブ72bを備えており、上フランジ部32aから上方に延びる筒部にチューブを装着してエアゾールバルブ74aと連通している。他の構成は、
図1の隔壁部材12と実質的に同じものであり、容器本体71の内面と当接する円板状のものであり、側縁の環状凹部12bにOリング20が装着されている。
【0034】
バルブアッセンブリ75は、バルブホルダー76と、そのバルブホルダー76に保持される2つのエアゾールバルブ74a、bと、2つのエアゾールバルブ74a、bをバルブホルダー76に固定し、バルブホルダー76を容器本体71に固定するカバーキャップ77からなる。バルブホルダー76は、円柱状のものであり、上下に貫通する孔から構成され、エアゾールバルブ74a、bを保持するための保持部76aと、外周面から半径方向外側に突出し、容器本体11の上端に配置される環状フランジ76bと、その環状フランジ76bより下方に形成され、容器本体の首部71aと嵌合するOリング78が挿入される環状凹部を有する下部筒部76cとを備えている。エアゾールバルブ74a、bは、ハ
ウジングと、ステムと、ステムラバーと、バネと、カバーキャップとからなり、これらを組み立てることにより一体化し、独立して取り扱えるものである。2つの保持部76aは、バルブアッセンブリ75あるいは容器本体71の中心軸を中心に対向するようにして設けられる。
このようなバルブアッセンブリ75は、例えば、国際公開番号WO2012086818号などに挙げられる。
このエアゾール容器80は、エアゾールバルブ74a、bが独立しているため、別々に操作してもよく、同時に操作しても良い。
【0035】
図10のエアゾール容器80は、容器本体51内に、容器本体51の内面に沿って設けられる合成樹脂製の内袋81を備えており、この内袋81が容器本体51の保護部材としてだけでなく、隔壁部材82のシール材として作用するものである。
詳しくは、容器本体51と、その内部に収容される内袋81と、その容器本体51の内面と内袋81を介して環状に当接して容器本体内に固定され、容器本体51内を上下の空間に区画する隔壁部材82と、その隔壁部材によって区画された上収容部13aおよび下収容部13bと、それぞれの収容部とそれぞれ連通するバルブ52とを備えている。容器本体51及びバルブ52は、
図6の容器本体51とバルブ52と実質的に同じものである。
【0036】
内袋81は、底部、胴部、肩部、首部、口部を有しており、容器本体51の内面に沿うように構成されている。そのため、内容物が2液式染毛剤のように酸性またはアルカリ性であっても、容器本体の内面と接触させずに、金属製の容器本体の腐食を防止する。そして、栓部材53は、内袋81の首部及び口部を介して容器本体51の開口部に配置される。また、内袋81の胴部には、容器本体51の環状リブ15の内面に、内環状リブ85が設けられている。つまり、この内環状リブ85が、容器本体51の環状リブ15と隔壁部材82の外周面との間に介在され、シール効果を発揮する。このような内環状リブ85は、容器本体51の環状リブ15を形成するとき、内袋81の胴部を同時に変形させて形成する。
【0037】
隔壁部材82は、容器本体51の内面と内袋82を介して当接する円板状のものであり、中心に上下に貫通する中心孔12aを有する。また、側縁の外周面には、環状リブ15(3つのリブ)と係合するように3つの環状の溝部82aが形成されている。この溝部82aは、容器本体51の環状リブ15の形成するときに、隔壁部材82の外周縁を同時に変形させて形成する。これにより、Oリング20が不要となり、構造が簡単になる。
【0038】
図11のエアゾール容器90は、容器本体91の胴部91aが上方に向かって拡径する段部92を備えており、この段部92とその上方に設けられた環状リブ15とで隔壁部材12を挟持するものである。エアゾール容器90は、容器本体91と、隔壁部材12と、上収容部13a及び下収容部13bと、バルブ14とを備えている。容器本体91以外は、
図1のエアゾール容器10と実質的に同じものである。
容器本体91は、円筒状の胴部91aと、肩部11bと、ビード部11cとを備えている。胴部91aは、下端が底部によって閉じられた小径部92aと、その上に設けられた大径部92bと、それらを繋ぐ段部92と、大径部92bに設けられた2本の環状リブ15(上リブ15a、中リブ15b)とを備えている。そのため、環状リブ15の内径は、胴部91aの大径部92bの内径より内側に0.2〜3mm、特に0.3〜2mm突出させる、あるいは、胴部91aの大径部92bの内径に対して0.85〜0.99倍、特に0.9〜0.98倍となるように構成される。肩部11b、ビード部11cは、
図1の容器本体と実質的に同じものである。
【0039】
このように容器本体91に段部92を設けることにより、エアゾール容器の製造工程に
おける筒容器内での隔壁部材12の保持ができる。
詳しくは、アルミニウムなどの金属材料から小径部92aからなる有底筒状の筒容器95を成形し(第1工程)、次いで、
図11bに示すように、その上端に大径部92bを形成し、段部92に隔壁部材12を載置させて保持することができる(第2工程)。次いで、隔壁部材12を段部92と挟むように環状リブ(上リブ15a)を形成し、隔壁部材12を筒容器95内に固定する(第3工程)。なお、この実施形態では、中リブ15bも形成している。その後、筒容器95の上端に肩部11b、ビード部11cを形成し、連結部材26を装着させたバルブ14を挿入し、連結部材26を隔壁部材12に装着し、バルブ14を容器本体11に固定する。なお、アルミニウムなどの金属材料から有底筒状の筒容器95を成形し、胴部の下部を縮径させて段部を形成してもよい。