【解決手段】起伏操作レバー51等の操作に応じて、作業装置(起伏シリンダ22等)への作動油の供給を行う比例供給制御を行うとともに、エンジンEの回転数を無段階に変化させる無段階制御を行うことにより、作業装置を作動させる作業台移動制御部71とを備え、作業台移動制御部71は、所定条件の下で、前記比例供給制御とは相違する作動油の供給を行う自動供給制御も行って作業装置の作動を自動作動制御することが可能に構成され、前記自動作動制御においては、前記無段階制御に代えてエンジンEの回転数を多段階に変化させる多段階制御によりエンジンEの回転数を制御するように構成される。
走行体と、作動油の供給を受けて所定の作業を行う作業装置と、前記作業装置に作動油を供給する作業用ポンプと、前記作業用ポンプを駆動させるエンジンとを備える作業用車両の制御装置であって、
前記作業装置の作動操作を行う作業操作手段と、
前記作業操作手段の操作に応じて、前記作業用ポンプから前記作業装置への作動油の供給を行う比例供給制御を行うとともに、前記エンジンの回転数を無段階に変化させる無段階制御を行うことにより、前記作業装置を作動させる作業制御手段とを備え、
前記作業制御手段は、所定条件の下で、前記比例供給制御とは相違する作動油の供給を行う自動供給制御も行って前記作業装置の作動を自動作動制御することが可能に構成され、前記自動作動制御においては、前記無段階制御に代えて前記エンジンの回転数を多段階に変化させる多段階制御により前記エンジンの回転数を制御することを特徴とする作業用車両の制御装置。
前記作業制御手段は、前記自動作動制御において、前記自動作動制御の開始から所定時間の間は前記無段階制御により前記エンジンの回転数を制御し、前記所定時間が経過した後は前記無段階制御に代えて前記多段階制御により前記エンジンの回転数を制御することを特徴とする請求項1に記載の作業用車両の制御装置。
前記作業制御手段は、前記自動作動制御において、前記自動作動制御の停止直前の所定時間の間は前記多段階制御に代えて前記無段階制御により前記エンジンの回転数を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の作業用車両の制御装置。
前記作業制御手段は、前記多段階制御において前記エンジンの回転数を変化させるときの変化率を変えて前記多段階制御を行うことが可能に構成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の作業用車両の制御装置。
前記作業制御手段は、前記作業操作手段により前記作業装置の作動停止操作が行われたときに、前記エンジンの回転数を所定時間をかけて徐々にアイドリング回転数に下げる制御を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の作業用車両の制御装置。
前記作業制御手段は、前記作業操作手段により前記作業装置の作動停止操作が行われたときに、前記エンジンの回転数を、アイドリング回転数よりも大きな所定回転数に所定時間保持させ、その後に前記アイドリング回転数に下げる制御を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の作業用車両の制御装置。
前記作業制御手段は、作動油の前記比例供給制御および前記エンジンの回転数の前記無段階制御を行って前記作業装置における所定のアクチュエータを作動させている状態において、前記作業装置における他のアクチュエータを作動させるときに、前記所定のアクチュエータに供給されている作動油の流量を制限して前記他のアクチュエータへ供給する作動油の流量を確保する制御を行って前記他のアクチュエータを作動させるとともに、前記エンジンの回転数を変化させることなく前記他のアクチュエータを作動させる前の回転数に保持する制御を行うことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の作業用車両の制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような高所作業車では、ブームの起伏動および伸縮動を同時に行って作業台を水平もしくは垂直に移動させる水平・垂直移動制御や、例えばブームを起伏動させて作業台を移動させているときに作業台が移動許容範囲(高所作業車が不安定になることなく安全に作業を行うことができるように設定されている作業範囲)を超えそうになると、ブームを縮小動させて作業台が上記移動許容範囲を超えないように作業台を移動させるノンストップ制御や、例えばブームを伸長動させて作業台を移動させているときに、作業台が上記移動許容範囲の端部に近づくと作業台の移動速度(ブームの伸長速度)を減速させ、さらに作業台が上記移動許容範囲を超えそうになると作業台の移動(ブームの伸長動)を停止させる減速・停止制御を行う構成のものがある。このような水平・垂直移動制御、ノンストップ制御および減速・停止制御等は、ブーム操作装置の操作に対応することなく作動油の供給制御およびエンジン回転数の制御を行ってブームを自動作動させる制御を行うものである。このようにブーム操作装置の操作に対応せずにエンジン回転数が変化するため、作業者に違和感が生じたり、故障と誤認されるおそれがあるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、作業装置の自動作動制御において、作業者に違和感が生じたり、故障と誤認されることを防ぐことができる作業用車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、走行体と、作動油の供給を受けて所定の作業を行う作業装置(例えば、実施形態におけるブーム30および作業台40等)と、前記作業装置に作動油を供給する作業用ポンプ(例えば、実施形態における第1油圧ポンプP1)と、前記作業用ポンプを駆動させるエンジンとを備える作業用車両の制御装置であって、前記作業装置の作動操作を行う作業操作手段(例えば、実施形態における起伏操作レバー51および伸縮操作レバー52等)と、前記作業操作手段の操作に応じて、前記作業用ポンプから前記作業装置への作動油の供給を行う比例供給制御を行うとともに、前記エンジンの回転数を無段階に変化させる無段階制御を行うことにより、前記作業装置を作動させる作業制御手段(例えば、実施形態における作業台移動制御部71)とを備える。そして、前記作業制御手段は、所定条件の下で、前記比例供給制御とは相違する作動油の供給を行う自動供給制御も行って前記作業装置の作動を自動作動制御することが可能に構成され、前記自動作動制御においては、前記無段階制御に代えて前記エンジンの回転数を多段階に変化させる多段階制御により前記エンジンの回転数を制御するように構成される。
【0008】
なお、上記自動作動制御として、例えば、ブーム式の高所作業車においては、ブームの起伏動および伸縮動を同時に行って作業台を水平もしくは垂直に移動させる水平・垂直移動制御や、例えばブームを起伏動させて作業台を移動させているときに作業台が移動許容範囲(高所作業車が不安定になることなく安全に作業を行うことができるように設定されている作業範囲)を超えそうになると、ブームを縮小動させて作業台が上記移動許容範囲を超えないように作業台を移動させるノンストップ制御や、例えばブームを伸長動させて作業台を移動させているときに、作業台が上記移動許容範囲の端部に近づくと作業台の移動速度(ブームの伸長速度)を減速させ、さらに作業台が上記移動許容範囲を超えそうになると作業台の移動(ブームの伸長動)を停止させる減速・停止制御や、ブームの起伏動、伸縮動および旋回動を同時に行って車体上の所定の格納位置にブームおよび作業台を格納させる自動格納制御等を例示することができる。
【0009】
なお、上記構成の作業用車両の制御装置において、前記作業制御手段は、前記自動作動制御において、前記自動作動制御の開始から所定時間の間は前記無段階制御により前記エンジンの回転数を制御し、前記所定時間が経過した後は前記無段階制御に代えて前記多段階制御により前記エンジンの回転数を制御するように構成されることが好ましい。さらに、前記自動作動制御の停止直前の所定時間の間は前記多段階制御に代えて前記無段階制御により前記エンジンの回転数を制御するように構成されることが好ましい。
【0010】
また、上記構成の作業用車両の制御装置において、前記作業制御手段は、前記多段階制御において前記エンジンの回転数を変化させるときの変化率を変えて前記多段階制御を行うことが可能に構成されることが好ましい。
【0011】
また、上記構成の作業用車両の制御装置において、前記作業制御手段は、前記作業操作手段により前記作業装置の作動停止操作が行われたときに、前記エンジンの回転数を所定時間をかけて徐々にアイドリング回転数に下げる制御を行うように構成されることが好ましい。または、前記エンジンの回転数を、アイドリング回転数よりも大きな所定回転数に所定時間保持させ、その後に前記アイドリング回転数に下げる制御を行うように構成されることが好ましい。
【0012】
また、上記構成の作業用車両の制御装置において、前記走行体は作動油の供給を受けて走行する走行装置(例えば、実施形態における走行モータ14等)を有し、前記走行装置に作動油を供給する走行用ポンプ(例えば、実施形態における第2油圧ポンプP2)を備え、前記エンジンは前記作業用ポンプおよび前記走行用ポンプを駆動させるように構成される。そして、前記走行装置の作動操作を行う走行操作手段(例えば、実施形態における走行操作レバー55)と、前記走行操作手段の操作に応じて、前記走行用ポンプから前記走行装置への作動油の供給を行う制御を行うとともに、前記エンジンの回転数を変化させる制御を行うことにより、前記走行装置を作動させる走行制御手段(例えば、実施形態における走行制御部72)とを備え、前記走行制御手段により前記走行装置の作動制御が行われるときには、前記作業制御手段により前記エンジンの回転数を変化させる制御が規制され、前記走行操作手段の操作に応じて前記エンジンの回転数を変化させる前記走行制御手段の制御が優先されるように構成されることが好ましい。
【0013】
また、上記構成の作業用車両の制御装置において、前記作業制御手段は、作動油の前記比例供給制御および前記エンジンの回転数の前記無段階制御を行って前記作業装置における所定のアクチュエータを作動させている状態において、前記作業装置における他のアクチュエータを作動させるときに、前記所定のアクチュエータに供給されている作動油の流量を制限して前記他のアクチュエータへ供給する作動油の流量を確保する制御を行って前記他のアクチュエータを作動させるとともに、前記エンジンの回転数を変化させることなく前記他のアクチュエータを作動させる前の回転数に保持する制御を行うように構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る作業用車両の制御装置では、作業装置の自動作動制御においては、エンジンの回転数を無段階に変化させる無段階制御に代えて、エンジンの回転数を多段階に変化させる多段階制御によりエンジンの回転数を制御するように構成される。そのため、作業装置の自動作動制御において、無段階制御によりエンジン回転数を変化させる従来の構成よりも、エンジンの回転数が変化する頻度を抑えることができる。したがって、作業者に違和感が生じたり、故障と誤認されることを防ぐことができる。
【0015】
また、作業装置の自動作動制御の開始から所定時間の間は前記無段階制御によりエンジンの回転数を制御し、前記所定時間が経過した後は上記無段階制御に代えて前記多段階制御によりエンジンの回転数を制御するように構成されることが好ましく、さらに、自動作動制御の停止直前の所定時間の間は前記多段階制御に代えて前記無段階制御によりエンジンの回転数を制御するように構成されることが好ましい。作業装置の自動作動制御による作動開始および停止時には、エンジンの回転数の変化幅が大きくなる。この作動開始および停止時において、前記多段階制御によりエンジンの回転数を制御すると、エンジンの回転数が短時間で多段階変化し、耳障りなエンジンの駆動音となる場合がある。そこで、上記構成によれば、エンジンの回転数が連続的(滑らか)に変化されるため、エンジンの駆動音が耳障りな音になることを防ぐことができる。
【0016】
また、前記多段階制御においてエンジンの回転数を変化させるときの変化率を変えて前記多段階制御を行うことを可能に構成すれば、前記多段階制御におけるエンジンの回転数の変化を滑らかにすることができ、エンジンの駆動音の変化も滑らかにすることができる。
【0017】
また、作業操作手段により作業装置の作動停止操作が行われたときに、エンジンの回転数を所定時間をかけて徐々にアイドリング回転数に下げる制御を行うように構成されることが好ましく、または、エンジンの回転数を、アイドリング回転数よりも大きな所定回転数に所定時間保持させ、その後にアイドリング回転数に下げる制御を行うように構成されることが好ましい。作業装置の作動停止時のエンジン回転数の変化により同時にエンジンの許容トルクも変化する。そこで、上記構成によれば、アイドリング回転数の時に許容トルクが小さくなるエンジンの場合であっても、作業装置の作動停止時にエンジンがストールすることを防止することができる。
【0018】
また、走行制御手段により走行装置の作動制御が行われるときには、作業制御手段によりエンジンの回転数を変化させる制御が規制され、走行操作手段の操作に応じてエンジンの回転数を変化させる走行制御手段の制御が優先されるように構成されることが好ましい。このように構成すれば、例えば、走行中において作業装置を作動させようとしたときに、その作業操作によりエンジン回転数が増加し、このエンジン回転数の増加により走行速度が増加するといった事態が起こることを防止することができる。
【0019】
また、作業装置における他のアクチュエータを作動させるときには、作動中のアクチュエータへの作動油の供給量を制限して前記他のアクチュエータへ供給する作動油の流量を確保する制御を行って前記他のアクチュエータを作動させるとともに、前記エンジンの回転数を変化させることなく前記他のアクチュエータを作動させる前の回転数に保持する制御を行うように構成されることが好ましい。従来の制御では、作動中のアクチュエータへの作動油の供給量を制限することに応じてエンジン回転数を低下させる制御が行われていたため、他のアクチュエータを作動させる操作が行われて操作入力が増えているにもかかわらずエンジン回転数が下がることにより、作業者に違和感が生じていた。しかしながら、上記構成によれば、作動中のアクチュエータへの作動油の供給量を制限してもエンジン回転数が保持されるため、作業者が上記のような違和感をおぼえることを防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。まず、本発明に係る制御装置を備えた作業用車両の一例として、走行体に高所作業装置が搭載された高所作業車1の全体構成について
図1を用いて説明する。
【0022】
高所作業車1は、左右一対の前輪11および後輪12を備えた走行体10と、走行体10上に設けられた旋回体20と、旋回体20の上部にフートピン21により起伏自在に取り付けられたブーム30と、ブーム30の先端部に取り付けられた作業者搭乗用の作業台40とを有して構成されている。
【0023】
走行体10には、走行モータ14が設けられており、この走行モータ14によって左右の後輪12を回転駆動させることにより、走行体10を走行させることができるように構成されている。また、走行体10には、舵取りシリンダ15(油圧シリンダ)が設けられており、この舵取りシリンダ15により図示しないリンク機構およびロッドを介して左右の前輪11の向きを変えて走行体10の舵取りを行うことができるように構成されている。
【0024】
旋回体20は、走行体10に対して垂直軸まわり360度旋回自在に取り付けられており、走行体10内に設けられた旋回モータ13により旋回体20を水平面内において旋回可能に構成されている。ブーム30は、複数のブーム部材が入れ子式に組み合されて構成され、ブーム30内に設けられた伸縮シリンダ31により伸縮可能に構成されている。また、旋回体20とブーム30との間には起伏シリンダ22が設けられており、この起伏シリンダ22によりブーム30を上下面内において起伏可能に構成されている。
【0025】
ブーム30の先端部には、垂直ポスト32がブーム30の起伏面内において揺動可能に取り付けられている。この垂直ポスト32は、ブーム30の先端部との間に跨設されたレべリングシリンダ(図示せず)によりブーム30の起伏角度によらず常に略鉛直方向に延びて位置するように揺動制御(レべリング制御)されるようになっている。作業台40は、この垂直ポスト32に作業台支持ブラケット41を介して水平旋回自在に取り付けられており、作業台支持ブラケット41内に設けられた首振りモータ41により垂直ポスト32に対して水平旋回(首振り作動)可能に構成されている。
【0026】
作業台40には操作ボックス50が設けられている。操作ボックス50には、
図2に示すように、ブーム30の起伏操作を行うための起伏操作レバー51と、ブーム30の伸縮操作を行うための伸縮操作レバー52と、ブーム30(旋回体20)の旋回操作を行うための旋回操作レバー53と、作業台40の首振り操作を行うための首振り操作レバー54とが設けられている。起伏操作レバー51を前方もしくは後方に傾動操作すると、その操作量に応じた作動速度で起伏シリンダ22を伸長作動もしくは縮小させてブーム30を起上もしくは倒伏させる作動指令信号が出力される。伸縮操作レバー52を前方もしくは後方に傾動操作すると、その操作量に応じた作動速度で伸縮シリンダ31を縮小作動もしくは伸長作動させてブーム30を縮小もしくは伸長させる作動指令信号が出力される。旋回操作レバー53を左方もしくは右方に傾動操作すると、その操作量に応じた作動速度で旋回モータ13を順方向もしくは逆方向に回転作動させてブーム30を左方もしくは右方に旋回させる作動指令信号が出力される。首振り操作レバー54を左方もしくは右方に傾動操作すると、その操作量に応じた作動速度で首振りモータ42を順方向もしくは逆方向に回動作動させて作業台40を左方もしくは右方に首振り(旋回)させる作動指令信号が出力される。これらの各作動指令信号は、コントローラ70の作業台移動制御部71に入力されるようになっている。さらに、操作ボックス50には、ブーム30の起伏および伸縮を同時に行って作業台40を水平もしくは垂直に移動させるための水平・垂直作動スイッチ59が設けられており、このスイッチ59の操作信号も作業台移動制御部71に入力されるようになっている。
【0027】
また、操作ボックス50には、走行体10の走行操作(発進、停止および走行時の速度調整操作)を行うための走行操作レバー55と、走行体10の舵取り操作を行うための舵取り操作レバー56とが設けられている。走行操作レバー55を前方もしくは後方に傾動操作すると、その操作量に応じた走行速度で走行モータ14を順方向もしくは逆方向に回転作動させて走行体10を前進もしくは後進させる作動指令信号が出力される。舵取り操作レバー56を左方もしくは右方に傾動操作すると、その操作量に応じた作動速度で舵取りシリンダ15を伸長もしくは縮小作動させて左右の前輪11の向きを左方もしくは右方に変えて走行体10の舵取りを行う作動指令信号が出力される。これら各作動指令信号は、コントローラ70の走行制御部72に入力されるようになっている。さらに、操作ボックス50には、エンジンEを始動させるためのエンジン始動スイッチ57と、エンジンEを停止させるためのエンジン停止スイッチ58とが設けられており、これらスイッチ57,58の操作信号はコントローラ70のエンジン制御部73に入力されるようになっている。
【0028】
コントローラ70は、作業台移動制御部71、走行制御部72、エンジン制御部73、位置算出部74および記憶部75を有して構成されている。エンジン制御部73は、エンジン始動スイッチ57が押し操作されるとエンジンEを始動させ、エンジン停止スイッチ58が押し操作されるとエンジンEを停止させる制御を行う。エンジンEが始動すると、エンジンEにより第1および第2油圧ポンプP1,P2が駆動され、各油圧ポンプP1,P2から作動油が吐出される。第1油圧ポンプP1から第1ポンプ油路L1内に吐出された作動油は、起伏制御バルブ61、伸縮制御バルブ62、旋回制御バルブ63、首振り制御バルブ64を介して起伏シリンダ22、伸縮シリンダ31、旋回モータ13、首振りモータ42にそれぞれ供給される。第2油圧ポンプP2から第2ポンプ油路L11内に吐出された作動油は、走行制御バルブ65、舵取り制御バルブ66を介して走行モータ14、舵取りシリンダ15にそれぞれ供給される。
【0029】
作業台移動制御部71は、作業台40に搭乗した作業者Mにより操作レバー51〜54が操作されると、その作動指令信号に応じて制御バルブ61〜64を電磁駆動して起伏シリンダ22、伸縮シリンダ31、旋回モータ13、首振りモータ42に第1油圧ポンプP1からの作動油を供給する制御を行う。そして、操作レバー51〜54の操作方向および操作量に応じた作動方向および作動速度でそれぞれのアクチュエータを作動させて作業台40を移動させる制御を行うように構成されている。また、作業台移動制御部71は、水平・垂直作動スイッチ59がオン操作されている状態において、伸縮操作レバー52が操作されると、起伏制御バルブ61および伸縮制御バルブ62を電磁駆動して起伏シリンダ22および伸縮シリンダ31を同時に作動させ、伸縮操作レバー52の操作方向および操作量に応じた作動方向および作動速度で作業台40を水平移動させる水平移動制御を行うように構成されている。さらに、作業台移動制御部71は、水平・垂直作動スイッチ59がオン操作されている状態において、起伏操作レバー51が操作されると、起伏制御バルブ61および伸縮制御バルブ62を電磁駆動して起伏シリンダ22および伸縮シリンダ31を同時に作動させ、起伏操作レバー51の操作方向および操作量に応じた作動方向および作動速度で作業台40を垂直移動させる垂直移動制御を行うように構成されている。
【0030】
走行制御部72は、作業者Mにより操作レバー55,56が操作されると、その作動指令信号に応じて制御バルブ65,66を電磁駆動して走行モータ14、舵取りシリンダ15に第2油圧ポンプP2からの作動油を供給する制御を行い、操作レバー55〜56の操作方向および操作量に応じた作動方向および作動速度でそれぞれのモータ14,15を作動させて走行体10を走行させる制御を行うように構成されている。
【0031】
また、ブーム30内には、ブーム30の起伏角度を検出する起伏角度検出器81と、ブーム30の長さを検出する長さ検出器82とが設けられている。走行体10内には、ブーム30(旋回体20)の走行体10に対する旋回角度を検出する旋回角度検出器83が設けられている。これら検出器81〜83により検出されたブーム30の起伏角度、長さおよび旋回角度の情報はコントローラ70の位置算出部74に入力されるようになっている。
【0032】
位置算出部74は、検出器81〜84から入力されたブーム30の起伏角度、長さおよび旋回角度の情報に基づいて、走行体10に対する作業台40の位置を算出し、その算出結果である作業台40の位置情報を作業台移動制御部71に出力するように構成されている。記憶部75には、作業台40の移動許容範囲(高所作業車1が不安定になることなく安全に作業を行うことができるように設定されている作業範囲)の情報が予め記憶されている。作業台移動制御部71は、位置算出部74において算出された作業台40の位置情報と記憶部75に記憶された移動許容範囲の情報とを比較して、例えばブーム30を伸長させて作業台40を移動させているときに、作業台40が上記移動許容範囲の端部に近づくと作業台40の移動速度(ブーム30の伸長速度)を減速させ、さらに作業台40が上記移動許容範囲を超えそうになると作業台40の移動(ブーム30の伸長)を停止させる減速・停止制御を行うように構成されている。さらに、作業台移動制御部71は、位置算出部74において算出された作業台40の位置情報と記憶部75に記憶された移動許容範囲の情報とを比較して、例えばブーム30を起伏させて作業台40を移動させているときに、作業台40が上記移動許容範囲を超えそうになると、ブーム30を縮小させて作業台40が上記移動許容範囲を超えないように作業台40を移動させるノンストップ制御を行うように構成されている。
【0033】
作業台移動制御部71および走行制御部72は、上記のように作業台40の移動制御および走行体10の走行制御を行うとともに、操作レバー51〜56の操作量に対応して、起伏シリンダ22、伸縮シリンダ31、旋回モータ13、首振りモータ42、走行モータ14および舵取りシリンダ15(以下、これらを纏めて「アクチュエータAC」と称する)のそれぞれを駆動させるために必要な作動油の供給量を確保できるように、第1および第2油圧ポンプP1,P2を駆動するエンジンEの回転数を制御するように構成されている。以下、このエンジンEの回転数の制御について説明する。
【0034】
まず、記憶部75には、操作レバー51〜56の操作量に対応して、アクチュエータACのそれぞれを駆動させるために必要な作動油の供給量の情報が予め記憶されている。さらに、記憶部75には、アクチュエータACをそれぞれ駆動させるために必要な作動油の供給量の合計供給量を確保できるように、作動油の合計供給量に対するエンジンEの回転数(スロットル開度)の情報が予め記憶されている。なお、実際にアクチュエータに供給される作動油量(合計供給量)は、操作レバーの操作に応じた制御バルブの作動により決定される。このとき、制御バルブに供給される作動油量(ポンプ吐出量)が不足していてはアクチュエータが所望の作動を行えないため、ポンプ吐出量は、制御バルブによりアクチュエータに供給される作動油量(合計供給量)よりも大きな吐出量が求められる。そのため、エンジン回転数は、必要な合計供給量が確保できるように、当該合計供給量よりある程度大きなポンプ吐出量が得られるように余裕を持たせた回転数が設定されている。ただし、過度に大きなポンプ吐出量となるのではエネルギーロスが生じるため、必要な合計供給量に対して若干の余裕を持ったポンプ吐出量が得られるようにエンジン回転数が設定されている。
【0035】
記憶部75には、この作動油の合計供給量に対するエンジンEの回転数の情報として、通常作動制御マップM1と自動作動制御マップM2の二つの制御マップが記憶されている。通常作動制御マップM1は、
図3に示すように、作動油の合計供給量がゼロのときにエンジン回転数がアイドリング回転数となり、合計供給量が大きくなるに従ってエンジン回転数が無段階に(リニアに)大きくなる比例関係に設定されている。一方、自動作動制御マップM2は、
図4に示すように、作動油の合計供給量がゼロのときにエンジン回転数がアイドリング回転数となり、合計供給量が大きくなるに従ってエンジン回転数が5段階に大きくなるように設定されている。すなわち、合計供給量がゼロからS
1未満のときはエンジン回転数がアイドリング回転数に設定され、合計供給量がS
1以上でS
2未満のときはエンジン回転数が一定回転数のR
1(R
1>アイドリング回転数)に設定され、合計供給量がS
2以上でS
3未満のときはエンジン回転数が一定回転数のR
2(R
2>R
1)に設定され、合計供給量がS
3以上でS
4未満のときはエンジン回転数が一定回転数のR
3(R
3>R
2)に設定され、合計供給量がS
4以上のときはエンジン回転数が最大回転数(最大回転数>R
3)に設定されている。このように、自動作動制御マップM2は、合計供給量をグループ化していずれかのグループに属する合計供給量に対応したエンジン回転数が5段階に設定されている。
【0036】
作業台移動制御部71および走行制御部72は、操作レバー51〜56の操作量に応じたアクチュエータACのそれぞれに供給される作動油の供給量を記憶部75からそれぞれ読み出し、読み出したそれらの供給量の合計値(合計供給量)を算出するように構成されている。例えば、操作レバー51〜53の操作量に対応して起伏シリンダ22、伸縮シリンダ31および旋回モータ13をそれぞれ駆動するのに必要な作動油の各供給量をx
1、x
2、x
3とすると、これらの合計供給量XはX=x
1+x
2+x
3と算出される。そして、作業台移動制御部71および走行制御部72は、算出した作動油の合計供給量Xに応じたエンジン回転数を、記憶部75に記憶されている通常作動制御マップM1もしくは自動作動制御マップM2から読み出し、読み出したエンジン回転数となるようにエンジン制御部73を介してエンジンEの回転数を制御するように構成されている。
【0037】
作業台移動制御部71および走行制御部72において、通常作動制御マップM1および自動作動制御マップM2のどちらの制御マップによってエンジンEの回転数を制御するかは、作業台移動制御部71において行われる作業台40の移動制御が自動作動制御によるものか否かにより決定される。この自動作動制御とは、上述の水平・垂直移動制御、減速・停止制御およびノンストップ制御等のように、操作レバーの操作に対応することなく作動油の供給制御を行ってブーム30等を自動作動させる制御である。
【0038】
作業台移動制御部71および走行制御部72は、操作レバー51〜56のそれぞれが操作され、それぞれの操作方向および操作量に応じた作動方向および作動速度でアクチュエータACをそれぞれ作動させて作業台40を移動させる、もしくは走行体10を走行させる通常作動制御を行う場合には、操作された操作レバーの操作量に応じて、上述のように必要な作動油の合計供給量を算出し、算出した作動油の合計供給量に応じたエンジン回転数を通常作動制御マップM1を用いて求め、エンジン制御部73を介してエンジンEの回転数を無段階(リニア)に変化させる制御を行うように構成されている。すなわち、操作レバー51〜56のそれぞれの操作に応じてアクチュエータACのいずれかを単独で作動させて作業台40を移動させる、もしくは走行体10を走行させる場合には、通常作動制御マップM1を用いてエンジンEの回転数を無段階(リニア)に変化させる制御を行うように構成されている。
【0039】
一方、作業台移動制御部71は、水平・垂直作動スイッチ59がオン操作されている状態において、伸縮操作レバー52もしくは起伏操作レバー51が操作され、その操作方向および操作量に応じた作動方向および作動速度で起伏シリンダ22および伸縮シリンダ31を同時に作動させて作業台40を水平移動もしくは垂直移動させる水平・垂直移動制御を行う場合には、伸縮操作レバー52もしくは起伏操作レバー51の操作量に応じて、水平・垂直移動制御において起伏シリンダ22および伸縮シリンダ31を作動させるために必要な作動油の合計供給量を算出する。そして、算出した作動油の合計供給量に応じたエンジン回転数を自動作動制御マップM2を用いて求め、エンジン制御部73を介してエンジンEの回転数を多段階に変化させる制御を行うように構成されている。
【0040】
また、作業台移動制御部71は、上述の減速・停止制御およびノンストップ制御を行う場合にも、減速・停止制御もしくはノンストップ制御において必要な作動油の合計供給量を算出し、算出した作動油の合計供給量に応じたエンジン回転数を自動作動制御マップM2を用いて求め、エンジン制御部73を介してエンジンEの回転数を多段階に変化させる制御を行うように構成されている。すなわち、作業台移動制御部71は、上述の水平・垂直作動制御、減速・停止制御およびノンストップ制御のように、操作レバーの操作に対応することなく作動油の供給制御を行って複数のアクチュエータを同時に作動させる、もしくはアクチュエータの作動速度を変化させて作業台40を移動させる自動作動制御を行う場合には、自動作動制御マップM2を用いてエンジンEの回転数を多段階に変化させる制御を行うように構成されている。
【0041】
さらに、作業台移動制御部71は、上述の水平・垂直作動制御、減速・停止制御およびノンストップ制御のような自動作動制御において、自動作動制御の開始から所定時間の間は通常作動制御マップM1を用いてエンジンEの回転数を無段階に変化させる制御を行い、当該所定時間が経過した後は通常作動制御マップM1に代えて自動作動制御マップM2を用いてエンジンEの回転数を多段階に変化させる制御を行うように構成されている。また、作業台移動制御部71は、自動作動制御の停止直前の所定時間は自動作動制御マップM2に代えて通常作動制御マップM1を用いてエンジンEの回転数を無段階に変化させる制御を行うように構成されている。
【0042】
また、作業台移動制御部71は、自動作動制御マップM2を用いてエンジンの回転数を多段階に変化させる制御において、エンジンEの回転数を変化させるときの変化率を、例えば
図4に一点鎖線Aで示すように変えて制御を行うことが可能に構成されている。また、作業台移動制御部71および走行制御部72は、操作レバー51〜56が中立位置に戻されて作業台40の移動停止操作もしくは走行体10の走行停止操作が行われたときに、エンジンEの回転数をすぐにアイドリング回転数に下げるのではなく、エンジン回転数を所定時間をかけて徐々にアイドリング回転数に下げる制御を行うように構成されている。
【0043】
さらに、コントローラ70は、走行制御部72により走行体10を走行させる走行作動制御が行われるときには、作業台移動制御部71によりエンジン制御部73を介してエンジンEの回転数を変化させる制御が規制され、走行操作レバー55および舵取り操作レバー56の操作に応じて走行操作制御部72によりエンジン制御部73を介してエンジンEの回転数を変化させる制御が優先されるように構成されている。
【0044】
以上のように構成される高所作業車1では、例えば、
図5に示すように、水平・垂直作動スイッチ59をオン操作し、時間t
1において伸縮操作レバー52を最大限まで傾動させる操作を行い(操作入力を100%とし)、作業台40を水平移動させる水平移動制御を開始させると、作業台移動制御部71は、時間t
1からt
2までの間、例えば起伏シリンダ22および伸縮シリンダ31の作動速度が操作入力100%に対応した目標速度になるまでの間は、
図3に示す通常作動制御マップM1を用いてエンジンEの回転数を無段階(リニア)に変化させる制御を行う。そうすると、起伏シリンダ22および伸縮シリンダ31に供給される作動油の合計供給量(必要流量)およびエンジンEの回転数は
図5に示すように上昇し、起伏シリンダ22および伸縮シリンダ31の作動速度が操作入力100%に対応した目標速度となり、起伏シリンダ22および伸縮シリンダ31が作動する。そして、作業台移動制御部71は、時間t
2となり起伏シリンダ22および伸縮シリンダ31の作動速度が目標速度になると、それまで用いていた通常作動制御マップM1に代えて
図4に示す自動作動制御マップM2によりエンジンEの回転数を多段階に変化させる制御を行う。そうすると、作動油の合計供給量およびエンジンEの回転数は
図5に示すように上昇し、エンジンEの回転数は操作入力100%に対応した最大回転数になる。
【0045】
そして、時間t
3において伸縮操作レバー52の操作量を半分戻す操作を行って操作入力を50%とすると、作業台移動制御部71は、時間t
3からt
4までの間、例えば起伏シリンダ22および伸縮シリンダ31の作動速度が操作入力50%に対応した目標速度になるまでの間は、それまで用いていた自動作動制御マップM2に代えて通常作動制御マップM1を用いてエンジンEの回転数を無段階に変化させる制御を行う。そうすると、起伏シリンダ22および伸縮シリンダ31に供給される作動油の合計供給量およびエンジンEの回転数は
図5に示すように減少し、起伏シリンダ22および伸縮シリンダ31の作動速度が操作入力50%に対応した目標速度となり、起伏シリンダ22および伸縮シリンダ31が作動する。そして、作業台移動制御部71は、時間t
4となり起伏シリンダ22および伸縮シリンダ31の作動速度が目標速度になると、それまで用いていた通常作動制御マップM1に代えて自動作動制御マップM2によりエンジンEの回転数を多段階に変化させる制御を行う。そうすると、作動油の合計供給量およびエンジンEの回転数は
図5に示すように減少し、エンジンEの回転数は操作入力50%に対応した回転数になる。
【0046】
さらに、時間t
5において伸縮操作レバー52を中立位置に戻す操作を行って操作入力を0%とし、作業台40の水平移動制御を停止させると、作業台移動制御部71は、時間t
5からt
6までの間、例えば起伏シリンダ22および伸縮シリンダ31の作動速度がゼロになるまでの間は、それまで用いていた自動作動制御マップM2に代えて通常作動制御マップM1を用いてエンジンEの回転数を無段階に変化させる制御を行う。そうすると、作動油の合計供給量およびエンジンEの回転数は
図5に示すように減少し、エンジンEの回転数は操作入力0%に対応したアイドリング回転数になる。このように作業台40の水平移動制御を停止させる操作が行われたときに、エンジンEの回転数をすぐにアイドリング回転数に下げるのではなく、エンジン回転数を所定時間(時間t
5からt
6までの間)をかけて徐々にアイドリング回転数に下げるようになっている。
【0047】
また、作業台移動制御部71は、操作レバー51〜54のいずれかの操作に応じて、通常作動制御マップM1を用いてエンジン回転数を無段階に変化させる制御を行い、対応するいずれかのアクチュエータACを作動させる制御を行っている状態において、操作レバー51〜54における他の操作レバーを操作して他のアクチュエータACを作動させる(二つ以上のアクチュエータを連動させる)ときに、作動中のアクチュエータACに供給されている作動油の流量を制限して、他のアクチュエータAC(作動させようとしているアクチュエータAC)へ供給する作動油の流量を確保する制御を行って、他のアクチュエータACを作動させる制御を行う。そして、エンジンEの回転数は変化させることなく他のアクチュエータACを作動させる前のエンジン回転数に保持する制御を行うように構成されている。
【0048】
例えば、
図6に示すように、時間t
1′において伸縮操作レバー52を最大限まで傾動させる操作を行い(操作入力を100%とし)、伸縮シリンダ31を伸縮作動させて作業台40を移動させる制御を開始させると、作業台移動制御部71は、伸縮操作レバー52の操作入力100%に応じて、
図3に示す通常作動制御マップM1を用いてエンジンEの回転数を無段階に変化させる制御を行う。そうすると、伸縮シリンダ31に供給される作動油の供給量(必要流量)およびエンジンEの回転数は
図6に示すように上昇し、伸縮シリンダ31の作動速度が操作入力100%に対応した目標速度となり、伸縮シリンダ31が作動する。
【0049】
そして、時間t
2′において起伏操作レバー51を最大限まで徐々に(時間t
3′までの所定時間をかけて)傾動させる操作を行い、起伏シリンダ22も起伏作動させて作業台40を移動させる制御を開始させると、作業台移動制御部71は、伸縮シリンダ31に供給されている作動油の供給量を制限して起伏シリンダ22に供給する作動油の供給量を確保する制御を行う。また、作業台移動制御部71は、伸縮シリンダ31への作動油の供給量を制限することに応じてエンジンEの回転数を低下させる制御(
図6に一点鎖線で示すような制御)を行うのではなく、起伏シリンダ22を作動させる前のエンジン回転数に保持する制御を行う。そうすると、伸縮シリンダ31および起伏シリンダ22に供給される作動油の合計供給量は、
図6に示すように、起伏操作レバー51の操作開始時に低下するものの、起伏操作レバー51の操作入力の増大に応じて上昇する。そして、伸縮シリンダ31の作動速度が制限された作動油の供給量に対応した目標速度となり、伸縮シリンダ31が作動する。また、起伏シリンダ22の作動速度が操作入力100%に対応した目標速度となり、起伏シリンダ22が作動する。
【0050】
なお、
図6の例では、起伏操作レバー51を徐々に傾動させる操作を行った場合について示したが、起伏操作レバー51を一気に傾動させる操作を行った場合であっても、上記と同様に、起伏シリンダ22を作動させる前のエンジン回転数に保持する制御を行うようになっている。また、
図6では、伸縮シリンダ31の作動速度が約50%となるように作動油の供給量を制限しているが、これは一例であり、どの程度制限するかはアクチュエータの連動性等を考慮して適宜設定変更することができる。また、伸縮シリンダ31の作動速度(伸縮出力)を制限する量を、起伏操作レバー51の操作入力量に応じて変化する可変量とし、伸縮シリンダ31の作動速度が制限される分、起伏シリンダ22の作動速度(起伏出力)が増えるように制御を行う構成としてもよい。このように構成してもエンジン回転数を保持することができる。
【0051】
このように高所作業車1では、作業台移動制御部71が、上述の水平・垂直作動制御、減速・停止制御およびノンストップ制御のような自動作動制御においては、
図3に示す通常作動制御マップM1を用いてエンジンEの回転数を無段階に変化させる制御に代えて、
図4に示す自動作動制御マップM2を用いてエンジンEの回転数を多段階に変化させる制御を行うように構成されている。そのため、作業装置の自動作動制御において、無段階制御によりエンジン回転数を変化させる従来の構成よりも、エンジン回転数が変化する頻度を抑えることができる。したがって、作業者に違和感が生じたり、故障と誤認されることを防ぐことができる。
【0052】
また、作業台移動制御部71が、上述の水平・垂直作動制御、減速・停止制御およびノンストップ制御のような自動作動制御において、自動作動制御の開始から所定時間の間は通常作動制御マップM1を用いてエンジンEの回転数を無段階に変化させる制御を行い、当該所定時間が経過した後は通常作動制御マップM1に代えて自動作動制御マップM2を用いてエンジンEの回転数を多段階に変化させる制御を行うように構成されている。さらに、作業台移動制御部71は、自動作動制御の停止直前の所定時間は自動作動制御マップM2に代えて通常作動制御マップM1を用いてエンジンEの回転数を無段階に変化させる制御を行うように構成されている。自動作動制御による作動開始および停止時には、エンジンの回転数の変化幅が大きくなる。この作動開始および停止時において、自動作動制御マップM2を用いてエンジンの回転数を多段階に変化させる制御を行うと、エンジンの回転数が短時間で多段階変化し、耳障りなエンジンの駆動音となる場合がある。そこで、上記構成によれば、自動作動制御の作動開始および停止時のようなエンジンの回転数の変化幅が大きくなるときには、通常作動制御マップM1を用いてエンジンEの回転数を無段階に変化させる制御を行うことにより、エンジンの回転数が連続的(滑らか)に変化されるため、エンジンの駆動音が耳障りな音になることを防ぐことができる。
【0053】
また、作業台移動制御部71が、自動作動制御マップM2を用いてエンジンの回転数を多段階に変化させる制御において、エンジンEの回転数を変化させるときの変化率を
図4に一点鎖線Aで示すように変えて制御を行うことが可能に構成されている。そのため、当該多段階制御におけるエンジンの回転数の変化を滑らかにすることができ、エンジンの駆動音の変化も滑らかにすることができる。
【0054】
また、作業台移動制御部71が、操作レバー51〜54が中立位置に戻されて作業台40の移動停止操作が行われたときに、エンジンEの回転数をすぐにアイドリング回転数に下げるのではなく、エンジン回転数を所定時間をかけて徐々にアイドリング回転数に下げる制御を行うように構成されている。作業装置の作動停止時のエンジン回転数の変化により同時にエンジンの許容トルクも変化する。そこで、上記構成によれば、アイドリング回転数の時に許容トルクが小さくなるエンジンの場合であっても、作業装置の作動停止時にエンジンがストールすることを防止することができる。
【0055】
また、コントローラ70が、走行制御部72により走行体10を走行させる走行作動制御が行われるときには、作業台移動制御部71によりエンジン制御部73を介してエンジンEの回転数を変化させる制御が規制され、走行操作レバー55および舵取り操作レバー56の操作に応じて走行操作制御部72によりエンジン制御部73を介してエンジンEの回転数を変化させる制御が優先されるように構成されている。そのため、例えば、走行中において作業装置を作動させようとしたときに、その作業操作によりエンジン回転数が増加し、このエンジン回転数の増加により走行速度が増加するといった事態が起こることを防止することができる。
【0056】
また、作業台移動制御部71が、他のアクチュエータACを作動させるときに、作動中のアクチュエータACに供給されている作動油の流量を制限して、他のアクチュエータAC(作動させようとしているアクチュエータAC)へ供給する作動油の流量を確保する制御を行って、他のアクチュエータACを作動させるとともに、エンジンEの回転数は変化させることなく他のアクチュエータACを作動させる前のエンジン回転数に保持する制御を行うように構成されている。従来の制御では、作動中のアクチュエータへの作動油の供給量を制限することに応じてエンジン回転数を低下させる制御が行われていたため、他のアクチュエータを作動させる操作が行われて操作入力が増えているにもかかわらずエンジン回転数が下がることにより、作業者に違和感が生じていた。しかしながら、上記構成によれば、作動中のアクチュエータへの作動油の供給量を制限してもエンジン回転数が保持されるため、作業者が上記のような違和感をおぼえることを防ぐことができる。
【0057】
これまで本発明に係る実施形態について説明してきたが、本発明の範囲は上述の実施形態に示したものに限定されない。例えば、上述の実施形態では、作業台40の移動停止操作が行われたときに、エンジンEの回転数を所定時間をかけて徐々にアイドリング回転数に下げる制御を行うように構成されている。しかしながら、作業台40の移動停止操作が行われたときに、アイドリング回転数よりも大きな所定回転数に下げて、その所定回転数において所定時間保持させ、その後にアイドリング回転数に下げる制御を行うように構成してもよい。このように構成しても、上記構成と同様に、作業装置の作動停止時にエンジンがストールすることを防止することができる。
【0058】
また、上述の実施形態では、
図4に示すように自動作動制御マップM2として、作動油の合計供給量に対するエンジン回転数が5段階に設定されている例を示したが、これに限るものではなく、2段階、3段階、4段階および6段階以上のいずれかに設定してもよい。また、上述の実施形態において、アクチュエータに作動油を供給する油圧駆動機構として、静油圧式変速機(HST)を備えるHST油圧閉回路により構成し、エンジンにより駆動される可変容量油圧ポンプもしくは可変容量油圧モータの斜板角度を変化させて容量を制御するようにしてもよい。また、上述の実施形態では、本発明に係る制御装置を備える作業用車両の一例として自走式の高所作業車1について説明したが、本発明に係る制御装置は、例えばトラック車両を走行体のベースとした高所作業車など、種々の作業用車両に適用することもできる。