【課題】イグサ科の植物のもつ抗菌作用や薬効などを利用するとともに、イグサ科の植物に菌糸体種菌を植え付けて栄養源を与えて前記菌糸体を培養することにより増殖し、これらを乾燥した素材を少量用いるだけで優れた抗菌性があり、食品に添加したり、農作物や土壌に散布したり、水虫治療薬としても使用できる抗菌剤とその製造方法を提供する。
【解決手段】所定の長さに裁断あるいは粉砕したイグサ科の植物(こひげ、ほそい、いぬい、えぞほそい、いとい、みやまい、たかねい、はなびぜきしょう、くさいから選択される少なくとも1つの植物)と菌糸体種菌の栄養源とを混合した後、前記菌糸体種菌を前記イグサ科の植物と前記栄養源との混合物に接種し、前記菌糸体種菌をその発育温度にて培養する。
所定の長さに裁断あるいは粉砕したイグサ科の植物とキノコの菌糸体種菌の栄養源とを混合した後、前記菌糸体種菌を前記イグサ科の植物と前記栄養源との混合物に接種し、前記菌糸体種菌をその発育温度にて培養する抗菌剤の製造方法であって、
前記イグサ科の植物が、こひげ、ほそい、いぬい、えぞほそい、いとい、みやまい、たかねい、はなびぜきしょう、くさい、から選択される少なくとも1つの植物であることを特徴とする抗菌剤の製造方法。
前記菌糸体種菌が、マンネンタケ(霊芝)、メシマコブ、ヤマブシタケ、キクラゲ、タモギタケ、シイタケおよびアガリクス(ヒメマツタケ)から選択される少なくとも1つの担子菌類の菌糸体である請求項1に記載の抗菌剤の製造方法。
前記栄養源が、おから、小麦フスマ(麦皮)、米糠、酒粕(焼酎蒸留粕を含む)および大豆煮汁(大豆蒸煮液を含む)から選択される少なくとも1つからなる請求項1または2に記載の抗菌剤の製造方法。
【背景技術】
【0002】
日本で畳の原材料として用いられているイグサはジュンカス属
(Juncus)に分類される多年草の植物で、灯心草(とうしんそう)という生薬としても知られている。イグサには毒性がなく、抗菌薬・利尿薬・消炎薬・精神安定薬・不眠薬などの薬草としての効能があると言われている。また、イグサは食中毒菌や腐敗細菌に対して抗菌性が認められている。さらに、イグサは食中毒菌であるサルモネラ菌や黄色ブドウ球菌、腸管出血性大腸菌0157,026,0111のほか、腐敗細菌である枯草菌やミクロコッカス菌に対して抗菌性を有している。そしてラボスケ−ルにおいて、1〜10%程度のイグサ濃度でこれらの抗菌性が発揮される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そのほか、植物を基質とする酵素の製造方法で、少なくとも水洗したイグサを粉末にし、このイグサ粉末を殺菌し培養基質として糸状菌を培養するイグサを用いた酵素の生産方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
特許文献1によれば、イグサをpH9以上のアルカリ溶液で加熱処理することで,カビに対する増殖抑止効果機能が得られることが明らかとなった。この処理により、カビの増殖抑止機能を付加させたイグサ素材として、例えば住宅に関する建材及び素材、紙類、衣料素材、食に関する包装素材等に用いることが可能となる。またアルカリ処理をした後に、そのまま水洗いなしでイグサをカビの増殖抑止の目的で使用することも可能であり、この場合はイグサが持っているカビの増殖防止効果に加え、pHによるカビの増殖制御機能も付加させることが可能であり、イグサのカビに対する増殖抑止効果がさらに高まることが開示されている。
【0005】
特許文献2によれば、糸状菌を培養して有用な酵素を生産する際の基質としてイグサを用いるもので、イグサの内部は多孔質のスポンジ状であるため、その内部には多くの空気を含有しており、酸素を好む微生物にとって適した環境をもっている。具体的には、刈り取って乾燥したイグサを水洗して付着物を除去し、更に乾燥させてからイグサを粉砕し粉末にする。このようなイグサ粉末に所要量の純水と、ペクチンとを加えて加熱処理することにより殺菌し、室温にまで冷ました状態で培養の基質とするものであり、この基質は水分を含んだパン状を呈する培地となり、その培地に培養しようとする微生物、例えば、カビである糸状菌(液状)を接種し所定の温度を維持して数日間培養するのである。この場合に、培養する微生物の種類によって、例えば、7日〜30日またはそれ以上の日数をかけて培養する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1には、イグサに食中毒菌や腐敗細菌に対する抗菌性があることが記載されているが、イグサを住宅や衣料の素材として使用するものである。
【0008】
特許文献2には、培養基質としてイグサを用い、カビを接種して有用な酵素を生産する方法が記載されているが、キノコの菌糸体を接種するものではなく、また抗菌剤を製造したり、菌糸体の栄養源を与えたりすることは一切記載されていない。
【0009】
一方、本発明はイグサ科の植物のもつ抗菌作用や薬効などを利用するとともに、イグサ科の植物にキノコの菌糸体種菌を植え付けて栄養源を与えて前記菌糸体を培養することにより増殖し、これらを乾燥した素材を少量用いるだけで優れた抗菌性があり、食品に添加したり、魚の餌に添加したり、農作物や土壌に散布したり、水虫治療薬としても使用できる高い抗菌剤とその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために請求項1に係る抗菌剤の製造方法は、所定の長さに裁断あるいは粉砕したイグサ科の植物とキノコの菌糸体種菌の栄養源とを混合した後、前記菌糸体種菌を前記イグサ科の植物と前記栄養源との混合物に接種し、前記菌糸体種菌をその発育温度にて培養する抗菌剤の製造方法であって、前記イグサ科の植物が、こひげ、ほそい、いぬい、えぞほそい、いとい、みやまい、たかねい、はなびぜきしょう、くさいから選択される少なくとも1つの植物であることを特徴とする。
【0011】
請求項1に係る抗菌剤の製造方法によれば、イグサ科の植物(こひげ、ほそい、いぬい、えぞほそい、いとい、みやまい、たかねい、はなびぜきしょう、くさいから選択される少なくとも1つの植物)およびその栄養源に植え付けられたキノコの菌糸体種菌が栄養源を摂取しながら培養されて増殖する。菌糸体は主にイグサ科の植物内に侵入し,栄養源を摂取して増殖していく。イグサ科の植物内に菌糸体が侵入し増殖しているから、本発明に係る抗菌剤は菌糸体のもつ抗菌性や殺菌性、防腐性がイグサ科の植物がもつ薬効や抗菌性などとともに相乗的に発揮される。このため、キノコの菌糸体種菌のみを培養して増殖した場合に比べて、抗菌性や防腐性あるいは殺菌性が大幅に向上するので,製造された抗菌剤は少量で抗菌・防腐効果が高い。
【0012】
請求項2に記載のように、前記菌糸体種菌が、マンネンタケ(霊芝)、メシマコブ、ヤマブシタケ、キクラゲ、タモギタケ、シイタケおよびアガリクス(ヒメマツタケ)から選択される少なくとも1つの担子菌類の菌糸体であってもよい。
【0013】
請求項3に記載のように、前記栄養源が、おから、小麦フスマ(麦皮)、米糠、酒粕(焼酎蒸留粕を含む)および大豆煮汁(大豆蒸煮液を含む)から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0014】
請求項4に係る抗菌剤は、前記請求項1〜3のいずれか1つに記載の製造方法により製造されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明に係る抗菌剤によれば、イグサ科の植物およびその栄養源に植え付けられた菌糸体種菌が栄養源を摂取しながら培養されて増殖する。菌糸体は主にイグサ科の植物内に侵入し,栄養源を摂取して増殖していく。イグサ科の植物内に菌糸体が侵入し増殖しているから、本発明に係る抗菌剤は菌糸体のもつ抗菌性や殺菌性、防腐性がイグサ科の植物がもつ薬効や抗菌性などとともに相乗的に発揮される。このため、菌糸体種菌のみを培養して増殖した場合に比べて、抗菌性や防腐性あるいは殺菌性が大幅に向上するので,製造された抗菌剤は少量で抗菌防腐効果が高い。
【0016】
本発明に係る抗菌剤を養殖魚の半生固形餌(モイストペレット)に混合することによあり、餌が腐敗しにくく、食べ残された餌が養殖漁場周辺の海域に与える環境汚染、特に海域の富栄養化による赤潮の発生を防止する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施品であるイグサ・マンネンタケ・おから抗菌剤のフザリウム菌に対する抗カビ効果(コロニーカウント法)を示すもので,ブランク、凍結乾燥および熱風乾燥の比較を示すグラフである。
【
図2】本発明の実施品であるイグサ・マンネンタケ・おから抗菌剤のフザリウム菌に対する抗カビ効果(Standard growth score)を示すもので,ブランク、凍結乾燥および熱風乾燥の比較を示すグラフである。
【
図3】本発明の実施品であるイグサ・マンネンタケ・おから抗菌剤のクラドスポリウム菌に対する抗カビ効果(コロニーカウント法)を示すもので,ブランク、凍結乾燥および熱風乾燥の比較を示すグラフである。
【
図4】本発明の実施品であるイグサ・マンネンタケ・おから抗菌剤のクラドスポリウム菌に対する抗カビ効果(Standard growth score)を示すもので,ブランク、凍結乾燥および熱風乾燥の比較を示すグラフである。
【
図5】本発明の実施品であるイグサ・マンネンタケ・おから抗菌剤のトリコフィトン属菌に対する抗カビ効果(コロニーカウント法)を示すもので,ブランク、凍結乾燥および熱風乾燥の比較を示すグラフである。
【
図6】本発明の実施品であるイグサ・マンネンタケ・おから抗菌剤のトリコフィトン属菌に対する抗カビ効果(Standard growth score)を示すもので,ブランク、凍結乾燥および熱風乾燥の比較を示すグラフである。
【
図7】本発明の実施品であるイグサ・マンネンタケ・おから抗菌剤のミクロスポルム属菌に対する抗カビ効果(コロニーカウント法)を示すもので,ブランク、凍結乾燥および熱風乾燥の比較を示すグラフである。
【
図8】本発明の実施品であるイグサ・マンネンタケ・おから抗菌剤のミクロスポルム属菌に対する抗カビ効果(Standard growth score)を示すもので,ブランク、凍結乾燥および熱風乾燥の比較を示すグラフである。
【
図9】本発明の実施品であるイグサ・マンネンタケ・おから抗菌剤の大腸菌に対する抗菌効果を示すもので,ブランク、凍結乾燥および熱風乾燥の比較を示すグラフである。
【
図10】本発明の実施品であるイグサ・マンネンタケ・おから抗菌剤のバチルス菌に対する抗菌効果を示すもので,ブランク、凍結乾燥および熱風乾燥の比較を示すグラフである。
【
図11】本発明の実施品であるイグサ・マンネンタケ・おから抗菌剤の黄色ブドウ球菌に対する抗菌効果を示すもので,ブランク、凍結乾燥および熱風乾燥の比較を示すグラフである。
【
図12】本発明の実施品であるイグサ・マンネンタケ・おから抗菌剤のミクロコッカス菌に対する抗菌効果を示すもので,ブランク、凍結乾燥および熱風乾燥の比較を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る抗菌剤とその製造方法の実施形態について説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0019】
本実施形態では、原料の一つであるイグサ科の植物として、食用イグサ(通常、畑で無農薬栽培され、主に地下水を用いて生育される)を用いる。イグサ自体に抗菌作用があり、ブランチング処理したのち、長さ5センチメートルのサイズに裁断したものである。ブランチング処理では、イグサを100℃の熱湯に8分間(7〜9分程度でよい)湯通しする。この処理により、イグサの変色や変性を抑制することができ、長期間にわたって品質を維持することができる。また、イグサに含まれる不要成分である灰汁が除去されるので、薬効成分のみを凝縮した裁断イグサを使用することができる。
【0020】
菌糸体にはマンネンタケの菌糸体を使用するので、その栄養源となる「おから」を前記裁断イグサと混合器または手で均一に混合する。この混合作業は3分程度行う。
【0021】
混合した後、121℃で60〜90分間オートクレーブにて滅菌処理を行い、常温まで冷却する。冷却した後、種菌としてのマンネンタケの菌糸体を前記混合物に接種する。このとき、菌糸体は無菌環境下(例えばクリーンルーム内)での接種が好ましい。
【0022】
ここで、種菌としてのマンネンタケ菌糸体の培養方法について詳しく説明する。
【0023】
1) 自生又は天然のマンネンタケ子実体の一部から、組織培養法を用いポテトデキストロース寒天(PDA)培地上で菌糸体を分離し、マンネンタケ菌糸体を取得する。
【0024】
2) 菌糸体を液体培地または寒天培地にて培養する。
【0025】
2)-1 液体培地にて培養する場合は、300ml三角フラスコに、ポテトデキストロースブロス(PDB)培地を100mlほど作成し、オートクレーブ滅菌処理を行う。オートクレーブ滅菌処理後、上記1)で得られたマンネンタケ菌糸体を、白金耳を用い適当量(本例では10ml)の滅菌水に加え、撹拌する。その後、菌糸体懸濁液を1〜2ml PDB培地に添加し、30℃で48時間振とう培養を行う。
【0026】
2)-2 寒天培地にて培養する場合にも、300ml三角フラスコに、ポテトデキストロースブロス(PDB)培地を100mlほど作成し、オートクレーブ処理を行う。オートクレーブにて滅菌処理後に固化させたPDA寒天培地上に、上記1)にて得られたマンネンタケ菌糸体を添加し,温度30℃で48時間振とう培養を行う。
【0027】
3) 種菌として2)-1 にて培養したものを使用する場合、イグサ200g、おから200gに対して種菌2)-1を20ml添加して培養を行う。
【0028】
4) 種菌として2)-2 にて培養したものを使用する場合には、スパーテルにて寒天培地ごと切り取り、イグサ200g、おから200gに対して菌糸体重量で10gになるよう添加して培養を行う。
【0029】
各原料の配合比(重量比)率は適宜変更可能であるが、本実施形態では、イグサ0.5〜1.5(ここでは1.0)に対し、おから0.5〜1.5(ここでは1.0)を混合し、オートクレーブにて滅菌処理後に種菌を全体量の1〜10%(例えば10%)量接種する。具体的な数値で表記すると、上記のとおりイグサ・おからを各々200 gずつ混合した混合物に種菌を20 ml(10 g)接種するという形態である。
【0030】
このようにしてマンネンタケ菌糸体を前記混合物に接種後、菌糸体の発育温度を考慮した20〜30℃条件下で発酵(培養)処理を行った。発酵期間は約1〜3ヶ月(ここでは1ヶ月)としたが、それ以上発酵させてもよい。
【0031】
以上の製造工程を経て製造された抗菌剤を,a)熱風乾燥又はb)凍結乾燥することにより、抗菌剤の乾燥素材を製造することができた。この抗菌剤は茶色系粉粒体からなる。
【0032】
a) 熱風乾燥の条件:温度60℃の熱風で12時間乾燥させる。
【0033】
b) 凍結乾燥の条件:真空凍結乾燥器を用いて乾燥させる。上記抗菌剤を凍結器に投入後、凍結器内の温度が−30℃で真空条件下になっていることを確認し、凍結器内の温度を30℃まで上昇させる。こうして、凍結器内の温度が30℃に達してから24時間乾燥させる。
【0034】
続いて、使用目的に応じた抗菌剤の製造方法について説明する。
【0035】
使用用途としては、A. 固体食品用防腐剤、B. 植物用農薬、C. 水虫治療薬、D. 手や指の抗菌剤、E. 養殖魚用餌の抗菌剤などがある。
【0036】
A. 固体食品用防腐剤の場合、上記の乾燥素材をそのまま、あるいは乾燥素材(水抽出粕も含む)を微粉際したものを食品に噴霧又は添加して使用する。
【0037】
B. 植物用農薬の場合、上記の乾燥素材を水抽出し、フィルターで濾過後の濾液を濃縮するか、あるいは濾液をそのまま土壌や作物に噴霧する。その際、展着剤を添加することにより、その効果を増強することができる。なお、水抽出滓を乾燥後、土壌改良剤または、肥料と混和して、植物栽培根圏に施すことによって、病原菌の発生を土中、地上の両面から相乗的な防除効果が期待できる。
【0038】
C. 水虫治療薬およびD. 手や指の外用薬(塗布薬)の場合、上記の乾燥素材を水抽出し、濾過後の濾液を濃縮するか、もしくは濾液をそのまま患部に噴霧または塗布する。あるいは、さらにクリームや他の水虫治療薬と混和し、患部に塗布しやすくできる。また、クリーム等と混和する場合、上記の乾燥素材あるいは水抽出滓を微粉砕したものを使用することもできる。
【0039】
E. 養殖魚餌の抗菌剤の場合、上記の乾燥前あるいは乾燥後のイグサ・マンネンタケ・おから抗菌剤を、養殖魚用半生固形餌(モイストペレット)に混合して使用する。乾燥前のイグサ・マンネンタケ・おから抗菌剤の場合、養殖魚用半生固形餌の5〜20重量%を混合する。この結果、餌が腐敗しにくくなり、食べ残された餌が養殖漁場周辺の海域に与える環境汚染、特に海域の富栄養化による赤潮の発生を防止する。
【0040】
乾燥素材の微粉砕は、回転ディスクに固定されたハンマーがケーシング内を高速回転して衝撃式粉砕を行う粉砕機を用いて、平均粒子径が20μm以下になるまで微粉砕する。
【0041】
乾燥素材の水抽出は、本例では、乾燥素材0.0095gを1000mlの滅菌水に加え、温度25℃・70rpmにて振とう抽出を行う。その後で濾過し、抽出液を得る。あるいは、乾燥素材0.0095gを1000mlの滅菌水に加え、温度25℃で超音波処理により均一に分散させて抽出液を得ることができる。
【0042】
以上のとおり、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。とくに、イグサ科の植物が、こひげ、ほそい、いぬい、えぞほそい、いとい、みやまい、たかねい、はなびぜきしょう、くさい、から選択される少なくとも1つの植物であってもよい。また、菌糸体が、メシマコブ、ヤマブシタケ、キクラゲ、タモギタケ、シイタケおよびアガリクス(ヒメマツタケ)から選択される少なくとも1つの担子菌類の菌糸体であってもよい。さらに菌糸体の栄養源に、小麦フスマ(麦皮)、米糠、酒粕(焼酎蒸留粕)および大豆煮汁(大豆蒸煮液)を用いることも可能である。したがって、そうしたものも本発明の範囲内に含まれる。
【0043】
イグサ単独の抗菌性や薬効の確認も重要であるが、次にマンネンタケ菌糸体との相乗効果について、「イグサ・マンネンタケ・(おから)抗菌剤」の生理的機能性(抗菌効果及び抗酸化性)に関する実験を行ったので、以下に説明する。
【0044】
試験方法
1.カビの抗菌性評価
1-1:イグサ・マンネンタケ・おから粉末
イグサ・マンネンタケ・おから抗菌剤の試料は、凍結乾燥と熱風乾燥の2サンプルあり、これらの試料を破砕機(大阪ケミカル株式会社製,型番WB‐1)に入れ、25,000 rpmで30分間粉砕させ、微粉末化した。
【0045】
1-2:試料添加培地の調製
試料0.0095 gを500 mlの滅菌水に加えた後、超音波処理によって、試料を均一に分散させた。300 ml三角フラスコにポテトデキストロースブロス培地(PDB培地)2.4 gとイオン交換水49 mlを加え、その中に上記で調製した試料溶液50 mlを添加して、オートクレーブ処理を行った。最終的には9.5μg/mlの試料入りPDB培地となる。
【0046】
1-3:抗カビ性試験
本実験では、以下のカビを検定菌として、試料の抗カビ性評価を行った。
□検定菌
・
Cladosporium cladosporioides NBRC 30314 もしくは
Cladosporium cladosporioides NBRC 30314
・
Fusarium oxysporum NBRC 31631
・
Trichophyton violaceum NBRC 31064
・
Microsporum canis NBRC 32464
【0047】
1-2で調製した試料液体培地に、初発胞子濃度が101〜102 spores/mlとなるように検定菌の懸濁液を1 ml接種した後、温度30℃,70 rpmで1週間振とう培養を行った。ここで、PDB培地に初発胞子濃度が101〜102 spores/mlとなるように菌液を接種したものをBlankとした。培養1,3,7日目にサンプリングを行い、ポテトデキストロースアガー培地(PDA培地)を増菌培地として、30℃で培養を行った。実験結果は、目視による評価方法として下記のTable.1に示した6段階による判定を行った。この目視の評価と同時に、残存胞子数を経時的に算出するために、コロニーカウント法を用いた。
【0049】
2.細菌の抗菌性評価
2-1:イグサ・マンネンタケ・おから粉末
イグサ・マンネンタケ・おから抗菌剤の試料は、凍結乾燥と熱風乾燥の2サンプルあり、これらの試料を破砕機(大阪ケミカル株式会社製,型番WB‐1)に入れ、25,000 rpmで30分間粉砕させ、微粉末化した。
【0050】
2-2:試料添加培地の調製
試料0.0095 gを500 mlの滅菌水に加えた後、超音波処理によって、試料を均一に分散させた。300 ml三角フラスコにニュートリエントブロス培地(NB培地)0.8 gとイオン交換水49 mlを加え、その中に上記で調製した試料溶液50 mlを添加して、オートクレーブ処理を行った。最終的には9.5μg/mlの試料入りNB培地となる。
【0051】
2-3:抗菌性試験
本実験では、以下の細菌を検定菌として、試料の抗菌性評価を行った。
□検定菌
・
Bacillus subtilis IFO 3335 もしくは
Bacillus subtilisIFO 3335
・
Micrococcus luteus IFO 3333
・
Escherichia coli IFO 3972
・
Staphylococcus aureus IFO 12732
【0052】
2-2で調製した試料液体培地に、初発菌数濃度が101〜102 CFU/mlとなるように検定菌の懸濁液を1 ml接種した後、30℃,70 rpmで3日間振とう培養を行った。ここで、NB培地に初発菌数濃度が101〜102 CFU/mlとなるように菌液を接種したものをBlankとした。培養1,2,3日目にサンプリングを行い、ニュートリエントアガー培地(NA培地)を増菌培地として、30℃で培養を行った。残存生菌数は、コロニーカウント法で経時的に算出した。
【0053】
3.抗酸化性の測定
抗酸化性の測定は、βカロチン(100 mg/ 100mlクロロホルム)、リノール酸(4 g/ 100mlクロロホルム)、Tween80溶液(4 g/ 100mlクロロホルム)を作成し、それぞれ0.55 ml、0.55 ml、1.1 mlずつを200 mlの三角フラスコに取り、110 mlの蒸留水を加えて溶解し、リノール酸βカロチン溶液を作成した。この溶液90 mlに8 mlの0.2Mリン酸緩衝液(pH 6.8)を加え、静かに撹拌後、4.9 mlを試験管に分注し、0.1 mlの試料(イグサ・マンネンタケ・おから試料抽出液)を添加・混合し、すばやく50℃の反応槽に移し、15分後から45分後までの吸光度(470 nm)の減少量を求めた。さらに求めた減少量を基準溶液のBHA溶液(1 mg/100 mlの0.1M酢酸緩衝液(pH 4.5)とメタノールの2:8(v/v)混合液)を添加し作成した反応液についての吸光度の減少量で割り、抗酸化活性値とした。
【0054】
試験結果
1.抗カビ性試験結果
1−1 植物病原性カビ(フザリウム菌)
フザリウム菌は不完全菌に属する。土壌に生息しており、植物の病原菌として、植物(主に根の部分)を枯らすため、しばしば問題となる。また、低湿、冷涼条件でも発育可能なため、非常に制御が困難である。低温毒素(マイコトキシン)を生産し、これが体内に入ると中毒症状(悪心、嘔吐、腹痛、下痢、造血機能障害、免疫不全など)を起こすことでも知られている。三日月型の分生子を作り、胞子の色ははじめ白色をしているが、日数経過に伴い、徐々に色がついて、最終的に濃紅色の集落に変化する。そこで本研究では「イグサ・マンネンタケ・おから抗菌剤」のフザリウム菌に対する抗カビ効果について試験を行った。
【0055】
結果を添付図面のFig.1(コロニーカウント法)、Fig.2(Standard growth score)に示す。コロニーカウント法の結果、本抗菌剤はフザリウム菌に対して1〜2オーダーの抗カビ効果が認められた。熱風乾燥と凍結乾燥サンプルでは、凍結乾燥サンプルにおいて若干の高い抗カビ効果が得られたが、大きな差は認められなかった。しかしながら、Standard growth scoreではブランクとの間に明確な差が認められなかった。
【0056】
本抽出液の濃度は9.5μg/mL(0.0095 mg/mL)であり、0.95%という低濃度で抗カビ効果が発揮された計算となる。このような低濃度でフザリウム菌が1〜2オーダー制御できることは、本抽出液が農薬としての利用可能性に言及することができる。フザリウム菌はトマト、バナナ、サツマイモ、マメ科、ウリ科、アブラナ科植物など広い植物に対する病原菌として知られている。「イグサ・マンネンタケ・おから抗菌剤」がフザリウム菌に対して抗カビ効果を有していたのは大きな成果であり、今後、本抽出物の農薬としての利用可能性が広がった。
【0057】
1−2 室内汚染カビ(クラドスポリウム菌)
クラドスポリウム菌は不完全菌群に属する。空中に浮遊するカビの中でもっとも多いカビでもある。畳だけではなく、風呂場や布団、トイレ、洗面所、台所などの住居内のいたるところで発見される。住居内でなく、まんじゅう、ケーキ、野菜など様々な食品にも生える。色は暗緑色から黒色のコロニーをつくる。クラドスポリウム自体が毒性物質を作るということはないが、喘息などのアレルゲンとして問題にされている。そこで「イグサ・マンネンタケ・おから抗菌剤」のクラドスポリウム菌に対する抗カビ効果について試験を行った。
【0058】
結果を添付図面のFig.3(コロニーカウント法)、Fig.4(Standard growth score)に示す。いずれの場合も、本抽出液はクラドスポリウム属菌に対する抗カビ効果を有していなかった。
【0059】
1−3 水虫病原カビ(白癬菌)
水虫とは白癬症の一つである。白癬症は白癬菌と言われるカビの一種が皮膚に感染することにより引き起こされる皮膚真菌症である。この白癬菌にはトリコフィトン属菌やミクロスポルム属菌がおり、高温多湿な環境を好む性質がある。白癬菌は人体の様々な部位に感染し、日本人の四人に一人が白癬症であると言われている。その感染経路は家庭内感染が大半であるとされており、白癬症に対する日常的な予防が非常に重要である。そこで「イグサ・マンネンタケ・おから抗菌剤」のトリコフィトン属菌及びミクロスポルム属菌に対する抗カビ効果について試験を行った。
【0060】
トリコフィトン属菌の結果を添付図面のFig.5(コロニーカウント法)、Fig.6(Standard growth score)に、ミクロスポルム属菌の結果を添付図面のFig.7(コロニーカウント法)、Fig.8(Standard growth score)に示す。その結果、トリコフィトン菌は3日培養まで大きな抗カビ効果が認められなかったが、7日培養したサンプルで明確な抗カビ効果が得られた。特に凍結乾燥サンプルではほとんどのトリコフィトン菌が死滅をしているという結果になった。
【0061】
トリコフィトン菌のStandard growth scoreは、ブランクと比較して明確な差が認めら れなかったことから、生育したものは7日培養で死滅したという形になった。つまりイグサ・マンネンタケ・おから抗菌剤が遅効的にトリコフィトン菌に対して効果が出たという大変興味深い内容であった。一方でミクロスポルム菌に対して、抗カビ効果は認められなかった。
【0062】
トリコフィトン属菌は白癬症の大半を占める病原菌であり、また、ミクロスポルム属菌は犬や猫に好んで寄生するため、ペットを経由して人に感染する。このことからトリコフィトン菌に対して抗カビ効果が得られたことは、水虫治療剤としての可能性が大きく広がる結果となった。
【0063】
ちなみにイグサ単独の場合でもトリコフィトン菌に対して抗カビ効果が得られている。イグサ単独の場合は5%以上の濃度でなければ、効果は発揮されない。本抽出液の濃度は9.5μg/mL(0.0095 mg/mL)であり、0.95%という低濃度で抗カビ効果が発揮された計算となる。この結果は、イグサ・マンネンタケ・おから抗菌剤の相乗効果により、イグサ単独の効果よりも抗カビ活性が増強したということを示している有用なデータといえる。
【0064】
2.抗菌性試験結果
2−1 衛生指標細菌(大腸菌)
腸菌は、グラム陰性の桿菌で通性嫌気性菌に属し、環境中に存在するバクテリアの中で主要な種の一つである。この菌は腸内細菌でもあり温血動物(鳥類、哺乳類)の消化管内、特に大腸に生息する。バクテリアの代表としてモデル生物の一つとなっており、各種の研究で材料とされるほか、遺伝子を組み込んで有用な化学物質の生産にも利用される。非病原性と病原性の大腸菌が存在し、非病原性大腸菌は人体に無害であるが、病原性大腸菌において、いくつかのケースでは疾患の原因となることがある。人体には、血液中や尿路系に侵入した場合に病原体となる。内毒素を産生するため、大腸菌による敗血症は重篤なエンドトキシンショックを引き起こす。敗血症の原因(明らかになる場合)として最も多いのは尿路感染症であるが、大腸菌は尿路感染症の原因菌として最も多いものである。そこで本研究では「イグサ・マンネンタケ・おから抗菌剤」の大腸菌に対する抗菌効果について試験を行った。結果をFig.9に示す。
【0065】
その結果、2日培養までは凍結乾燥サンプルも熱風乾燥サンプルもブランクに比べて約7オーダーあまりの大きな抗菌効果が認められた。しかし3日培養ではブランクとの有意な差が認められなかったことから、本作用は静菌的な効果であることが明らかとなった。
【0066】
2−2 腐敗菌(バチルス菌)
バチルス菌は自然界に普遍的に存在する真正細菌の一種である。有機物の分解能力が高いことから、腐敗細菌として知られている。そこで本研究では「イグサ・マンネンタケ・おから抗菌剤」のバチルス菌に対する抗菌効果について試験を行った。結果を添付図面のFig.10に示す。
【0067】
その結果、2日培養では凍結乾燥サンプルも熱風乾燥サンプルもブランクに比べて6オーダーあまりの大きな抗菌効果が認められた。3日培養のサンプルでは熱風乾燥のサンプルについて菌が不検出(約7オーダーの抗菌効果)であり、凍結乾燥サンプルについてはブランクと比べて大きな抗菌効果(約3オーダーの抗菌効果)が認められたものの、熱風乾燥と比べると4オーダー程度の菌の検出が認められた。ここでも本作用は静菌的な効果であることが明らかとなった。
【0068】
2−3 ヒト常在菌(黄色ブドウ球菌、ミクロコッカス菌)
黄色ブドウ球菌(
Staphylococcus aureus)とは、ヒトや動物の皮膚、消化管(腸)常在菌(腸内細菌)であるブドウ球菌の一つである。ヒトの膿瘍等の様々な表皮感染症や食中毒、また肺炎、髄膜炎、敗血症等致死的となるような感染症の起因菌でもある。ミクロコッカス菌はグラム陽性細菌に分類される真正細菌の一属である。ヒトに常在している菌であり、食品腐敗の菌種が多い。菌糸形成能力はなく、土壌や多様な水系に広く分布する。
【0069】
そこで本研究では「イグサ・マンネンタケ・おから抗菌剤」の黄色ブドウ球菌、ミクロコッカス菌に対する抗菌効果について試験を行った。結果を添付図面のFig.11(黄色ブドウ球菌)、Fig.12(ミクロコッカス菌)に示す。
【0070】
その結果、いずれの場合も抗菌効果が認められなかった。
【0071】
2−4 イグサ単独の抗菌効果
イグサの水抽出液の抗菌スペクトルを下記のTable.2に示す。イグサは
Salmonella属菌、
Staphylococcus属菌、EHEC O157、O26、O111をはじめとする食中毒細菌や
Bacillus属菌,
Micrococcus属菌などの腐敗細菌、さらにはレジオネラ症の原因菌である
Legionella pneumophilaに対しても、MIC値で0.78〜100 mg/mLの範囲で抗菌活性が認められた。最も強い抗菌活性を示したのは
Escherichia coliであり、MIC値は0.78 mg/mLであった。本抽出液の濃度は9.5μg/mL(0.0095 mg/mL)であったことから、イグサ・マンネンタケ・おから抗菌剤は大腸菌やバチルス菌に対してはかなり低濃度で抗菌効果を発揮したという計算となる。
【0073】
3.抗酸化性試験
今回、イグサ・マンネンタケ・おから抗菌剤の抗酸化試験について評価を行ったが、残念ながら抗幸酸化活性の検出には至らなかった。