【課題】種々の材質からなる基材に対して良好な接着性を示すとともに、耐溶剤性、耐加水分解性、耐薬品性、耐電解液性、水蒸気バリア性、及び耐熱性等に優れた接着層やバインダー層を形成することができ、かつ、ドライラミネーション法等の方法を採用することでリチウムイオン電池用の外装体等を簡便に製造しうる接着剤やバインダーとして有用なポリウレタン系樹脂組成物を提供する。
【解決手法】ダイマーポリオールに由来する構成単位(A)を含むポリウレタン系樹脂を含有し、ダイマーポリオールが、ダイマー酸に由来する又はダイマー酸とトリマー酸を含む混合物に由来するポリオールであるポリウレタン系樹脂組成物である。
前記ポリウレタン系樹脂が、カルボキシ基を有する短鎖ジオールに由来する構成単位(C)をさらに含む請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリウレタン系樹脂組成物。
前記ポリウレタン系樹脂100質量部に対して、酸変性ポリオレフィン樹脂を1,000質量部以下さらに含有する請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリウレタン系樹脂組成物。
イソシアネート架橋剤、ブロックイソシアネート接着剤、カルボジイミド架橋剤、オキサゾリン架橋剤、エポキシ架橋剤、アジリジン架橋剤、シランカップリング剤、及びチタンカップリング剤からなる群より選択される少なくとも一種の架橋剤をさらに含有する請求項1〜9のいずれか一項に記載のポリウレタン系樹脂組成物。
前記内層と前記バリア層の間及び前記外層と前記バリア層の間に前記ポリウレタン系樹脂組成物が塗工された後、ドライラミネーションによって各層が相互に接着された請求項12に記載の外装体。
内層、バリア層、外層、及びこれらの層を相互に接着する接着層を備えた積層構造を有するとともに、前記バリア層よりも外側の任意の位置に配置される意匠層と、最外側に配置される保護層の少なくともいずれかをさらに備え、
前記意匠層及び前記保護層の少なくともいずれかが、請求項11に記載のポリウレタン系樹脂組成物と、無機フィラー、有機フィラー、及び着色剤の少なくともいずれかとを含有するバインダー組成物により形成されたリチウムイオン電池用外装体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1で開示された包装材料を製造するには複雑な装置が必要であるため、製造効率が低いといった問題がある。また、特許文献2で開示された接着剤は、ポリエステルウレタンを使用するため、リチウムイオン電池用の外装体を形成するための接着剤としては耐電解液性が未だ不十分である。また、特許文献3で開示された接着剤は、ポリブタジエンジオール等の比較的高価なポリオレフィンポリオールを用いているため、コスト面に課題を有する。なお、特許文献3においては、耐熱性やラミネート強度等の具体的な物性については触れられていない。
【0009】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、種々の材質からなる基材に対して良好な接着性を示すとともに、耐溶剤性、耐加水分解性、耐薬品性、耐電解液性、水蒸気バリア性、及び耐熱性等に優れた接着層やバインダー層を形成することができ、かつ、ドライラミネーション法等の方法を採用することでリチウムイオン電池用の外装体等を簡便に製造しうる接着剤やバインダーとして有用なポリウレタン系樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、ダイマーポリオールに由来する構成単位を含むポリウレタン系樹脂を配合することによって上記課題を達成することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明によれば以下に示すポリウレタン系樹脂組成物が提供される。
[1]ダイマーポリオールに由来する構成単位(A)を含むポリウレタン系樹脂を含有し、前記ダイマーポリオールが、ダイマー酸に由来する又はダイマー酸とトリマー酸を含む混合物に由来するポリオールであるポリウレタン系樹脂組成物。
[2]前記ダイマーポリオールが、ダイマージオール及びトリマートリオールの少なくともいずれかである前記[1]に記載のポリウレタン系樹脂組成物。
[3]前記ポリウレタン系樹脂に含まれる、前記構成単位(A)の割合が、50〜98質量%である前記[1]又は[2]に記載のポリウレタン系樹脂組成物。
[4]前記ポリウレタン系樹脂が、ポリアミンに由来する構成単位(B)をさらに含む前記[1]〜[3]のいずれかに記載のポリウレタン系樹脂組成物。
[5]前記ポリアミンが、ダイマージアミンであるとともに、前記ポリウレタン系樹脂に含まれる、前記構成単位(A)と前記ダイマージアミンに由来する構成単位(B−1)の合計の割合が、50〜98質量%である前記[4]に記載のポリウレタン系樹脂組成物。
[6]前記ポリウレタン系樹脂が、カルボキシ基を有する短鎖ジオールに由来する構成単位(C)をさらに含む前記[1]〜[5]のいずれかに記載のポリウレタン系樹脂組成物。
[7]前記ポリウレタン系樹脂が、ポリオレフィンポリオールに由来する構成単位(D)をさらに含む前記[1]〜[6]のいずれかに記載のポリウレタン系樹脂組成物。
[8]前記ポリウレタン系樹脂の重量平均分子量が、2,000〜200,000である前記[1]〜[7]のいずれかに記載のポリウレタン系樹脂組成物。
[9]前記ポリウレタン系樹脂100質量部に対して、酸変性ポリオレフィン樹脂を1,000質量部以下さらに含有する前記[1]〜[8]のいずれかに記載のポリウレタン系樹脂組成物。
[10]イソシアネート架橋剤、ブロックイソシアネート接着剤、カルボジイミド架橋剤、オキサゾリン架橋剤、エポキシ架橋剤、アジリジン架橋剤、シランカップリング剤、及びチタンカップリング剤からなる群より選択される少なくとも一種の架橋剤をさらに含有する前記[1]〜[9]のいずれかに記載のポリウレタン系樹脂組成物。
[11]接着剤又はバインダーとして用いられる前記[1]〜[10]のいずれかに記載のポリウレタン系樹脂組成物。
【0012】
また、本発明によれば以下に示すリチウムイオン電池用外装体が提供される。
[12]内層、バリア層、外層、及びこれらの層を相互に接着する接着層を備えた積層構造を有し、前記接着層が、前記[11]に記載のポリウレタン系樹脂組成物により形成されたリチウムイオン電池用外装体。
[13]前記内層と前記バリア層の間及び前記外層と前記バリア層の間に前記ポリウレタン系樹脂組成物が塗工された後、ドライラミネーションによって各層が相互に接着された前記[12]に記載の外装体。
[14]内層、バリア層、外層、及びこれらの層を相互に接着する接着層を備えた積層構造を有するとともに、前記バリア層よりも外側の任意の位置に配置される意匠層と、最外側に配置される保護層の少なくともいずれかをさらに備え、前記意匠層及び前記保護層の少なくともいずれかが、前記[11]に記載のポリウレタン系樹脂組成物と、無機フィラー、有機フィラー、及び着色剤の少なくともいずれかとを含有するバインダー組成物により形成されたリチウムイオン電池用外装体。
【発明の効果】
【0013】
本発明のポリウレタン系樹脂組成物は、オレフィン樹脂、金属箔、ナイロン、及びポリエステル等の種々の材質からなる基材に対して良好な接着性を示すとともに、耐溶剤性、耐加水分解性、耐薬品性、耐電解液性、水蒸気バリア性、及び耐熱性等に優れた接着層やバインダー層を形成することができる。また、本発明のポリウレタン系樹脂組成物は、塗布及び乾燥後、ドライラミネーション法によって基材同士を接着して均一な接着層やバインダー層を形成することが可能である。このため、本発明のポリウレタン系樹脂組成物は、リチウムイオン電池用の外装体を簡便に製造するための材料(接着剤及びバインダー等)として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(ポリウレタン系樹脂組成物)
本発明のポリウレタン系樹脂組成物は、ダイマーポリオールに由来する構成単位(A)を含むポリウレタン系樹脂を含有する。以下、本発明のポリウレタン系樹脂組成物の詳細について説明する。
【0016】
(ポリウレタン系樹脂)
本発明のポリウレタン系樹脂組成物は、ダイマーポリオールに由来する構成単位(A)を含むポリウレタン系樹脂を含有する。このダイマーポリオールは、ダイマー酸に由来する又はダイマー酸とトリマー酸を含む混合物に由来するポリオールである。そして、ポリウレタン系樹脂は、例えば、このダイマーポリオールを必須成分として用いて調製される。ダイマー酸は、オレイン酸やリノール酸等の炭素数18の不飽和脂肪酸を二量化して得られる炭素数36のジカルボン酸であり、植物由来の脂肪酸である。ダイマー酸の代表的な構造は下記式(1)で表される。トリマー酸は上記炭素数18の不飽和脂肪酸を三量化して得られる炭素数54のトリカルボン酸であり、ダイマー酸製造の際にも副生する。このため、市販のダイマー酸は、通常、ダイマー酸とトリマー酸を含む混合物である。
【0018】
ダイマー酸に由来するポリオールであるダイマージオールは、上記ダイマー酸のカルボキシ基を水酸基に還元して得られる炭素数36のポリオールであり、その分子中に不飽和結合を有しても有しなくてもよい。トリマートリオールも、ダイマージオールと同様にトリマー酸を還元して得られる炭素数54のポリオールであり、その分子中に不飽和結合を有しても有しなくてもよい。市販のダイマージオールは、通常、ダイマージオールとトリマートリオールを含む混合物である。
【0019】
本発明のポリウレタン系樹脂組成物に用いられるポリウレタン系樹脂は、ダイマー酸に由来する又はダイマー酸とトリマー酸を含む混合物に由来するポリオール(ダイマーポリオール)をモノマー成分として用いて得られたものであり、ダイマーポリオールに由来する構成単位(A)をその主骨格中に有する。すなわち、上記のポリウレタン系樹脂は、その分子構造中に、ダイマーポリオールに由来する柔軟性の高い炭化水素部分をソフトセグメントとして含むものである。このため、このポリウレタン系樹脂を含有する本発明のポリウレタン系樹脂組成物は、一般に接着困難とされるポリオレフィン樹脂や金属等の種々の材質からなるフィルムやシート等の基材に対して良好な接着性及び密着性を示す。また、本発明のポリウレタン系樹脂組成物は、極性の高いウレタン結合を有するポリウレタン系樹脂を主成分として含有するため、ポリエステルや金属等の種々の材質からなる基材に対して良好な接着性及び密着性を示すとともに、基材の変形や熱膨張等に追従しうる柔軟性を示す接着層やバインダー層を形成することができる。さらに、上記のポリウレタン系樹脂は、その主骨格中に分解性の結合を有しないため、このポリウレタン系樹脂を含有する本発明のポリウレタン系樹脂組成物により形成された接着層やバインダー層は、耐溶剤性、耐加水分解性、耐薬品性、耐電解液性、及び耐熱性に優れている。また、ポリウレタン系樹脂中の炭化水素部分は疎水性が高いため、このポリウレタン系樹脂を含有する本発明のポリウレタン系樹脂組成物により形成された接着層やバインダー層は、水蒸気バリア性に優れている。
【0020】
以上より、本発明のポリウレタン系樹脂組成物は、オレフィン樹脂、金属、ナイロン、及びポリエステル等の種々の材料からなる基材に対し良好な接着性及び密着性を示すことから、リチウムイオン電池用外装体を製造するための接着剤及びバインダーとして好適に用いることができる。さらに、本発明のポリウレタン系樹脂組成物は、例えば、車両等の内装材を接着するために用いられる耐熱性接着剤;電子基板用の耐熱性接着剤;太陽電池等の構成材料として用いられる各種バリアフィルム用の接着剤;TPO(Thermo Plastic Olefin)素材用及び塩化ビニルシート用のプライマー;ポリオレフィン製の加飾シート又は成型シートを接着するために用いられる接着剤等として好適である。
【0021】
本発明のポリウレタン系樹脂組成物に含有されるポリウレタン系樹脂の割合は特に限定されないが、接着剤やバインダーとしての機能を有効に発揮させる等の観点からは、10〜95質量%であることが好ましい。
【0022】
ポリウレタン系樹脂は、例えば、ダイマーポリオールとポリイソシアネートとを重合反応させることによって製造することができる。ポリウレタン系樹脂に含まれる、構成単位(A)の割合は、50〜98質量%であることが好ましく、60〜98質量%であることがさらに好ましい。構成単位(A)の割合が50質量%未満であると、オレフィン類に対する接着性が低下したり、耐加水分解性が低下したりする場合がある。一方、構成単位(A)の割合が98質量%超であると、分子量が小さくなりすぎ、初期の接着性や耐久性が低下する場合がある。また、ポリウレタン系樹脂の分子量は、ポリオールのヒドロキシ基と、ポリイソシアネートのイソシアネート基との量比を変えることで適宜調整することができる。接着剤やバインダーの材料として好ましいポリウレタン系樹脂の重量平均分子量は2,000〜200,000であり、さらに好ましくは4,000〜100,000である。なお、ポリウレタン系樹脂の重量平均分子量は、GPCを用いて測定したポリスチレン換算の値である。
【0023】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、ダイマーポリオール以外の「その他のポリオール」をさらに反応させてもよい。「その他のポリオール」の具体例としては、ポリマー主鎖にカーボネート結合を有する両末端ポリオール(ポリカーボネートポリオール)、ポリオレフィンポリオール、芳香族ポリエステルポリオール、脂肪族ポリエステルポリオール、脂環族ポリエステルポリオール、シリコーンポリオール、アクリルポリオール、及びエポキシポリオール等を挙げることができる。なかでも、ポリオレフィンポリオールを用いることが好ましい。すなわち、ポリウレタン系樹脂は、ポリオレフィンポリオールに由来する構成単位(D)をさらに含むことが好ましい。構成単位(D)を含むポリウレタン系樹脂を用いることで、オレフィン類に対する接着性や耐加水分解性を損なわないポリウレタン系樹脂を得ることができる。なお、ポリウレタン系樹脂に含まれる、構成単位(D)の割合は、0〜30質量%であることが好ましい。
【0024】
さらに、粘度や形成される接着層の強度を調整するため、必要に応じて、炭素数2〜10の短鎖ジオールをさらに反応させてもよい。短鎖ジオールの具体例としては、エチレングリコール、1,3−ピロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,2−オクタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等を挙げることができる。なお、ポリウレタン系樹脂中の短鎖ジオールに由来する構成単位の導入量については限定されないが、導入量が多すぎるとダイマーポリオールを用いた効果が小さくなるため、適宜調整することが好ましい。
【0025】
また、密着性を向上させるとともに架橋点を付与するため、必要に応じて、カルボキシ基を有する短鎖ジオールをさらに反応させてもよい。すなわち、ポリウレタン系樹脂は、カルボキシ基を有する短鎖ジオールに由来する構成単位(C)をさらに含むことが好ましい。カルボキシ基を有する短鎖ジオールの具体例としては、ジメチロールプロパン酸及びジメチロールブタン酸等を挙げることができる。なお、ポリウレタン系樹脂中の構成単位(C)の割合が多すぎると、ダイマーポリオールを用いた効果が小さくなるため、適宜調整することが好ましい。具体的には、ポリウレタン系樹脂に含まれる、構成単位(C)の割合は、0〜10質量%であることが好ましい。また、ポリウレタン系樹脂の酸価は、0〜40mgKOH/gであることが好ましい。
【0026】
さらに、形成される接着層の強度や耐熱性を調整するため、必要に応じて、ポリアミンをさらに反応させてもよい。すなわち、ポリウレタン系樹脂は、ポリアミンに由来する構成単位(B)をさらに有する、その分子構造中にウレア結合を有するポリウレタンウレア樹脂であることが好ましい。なお、本発明における「ポリウレタン系樹脂」の概念には、「ポリウレタン樹脂」だけでなく「ポリウレタンウレア樹脂」も含まれる。
【0027】
ポリアミンの具体例としては、メチレンジアミン、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジアミノプロパン、N−(2−ヒドロキシエチル)−エチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン化合物;フェニレンジアミン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−メチレンビス(フェニルアミン)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、キシリレンジアミンなどの芳香族ジアミン化合物;シクロペンチルジアミン、シクロヘキシルジアミン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、ダイマージアミンなどの脂環式ジアミン化合物;ヒドラジン、アジピン酸ジヒドラジド(ADH)、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン酸ジヒドラジド(DDH)、イソフタル酸ジヒドラジド(IDH)等のヒドラジン及びその誘導体等を挙げることができる。なお、ポリウレタン系樹脂中の構成単位(B)の割合が多すぎると、ダイマーポリオールを用いた効果が小さくなるため、適宜調整することが好ましい。具体的には、ポリウレタン系樹脂に含まれる、構成単位(B)の割合は、0〜20質量%であることが好ましい。
【0028】
ポリアミンのなかでも、ダイマージアミンを用いることが好ましい。ダイマージアミンを用いることで、その分子構造中に、ダイマージアミンに由来する柔軟性の高い炭化水素部分(構成単位(B−1))をソフトセグメントとして含むポリウレタンウレア樹脂とすることができる。そして、構成単位(B−1)を含むポリウレタンウレア樹脂を用いることで、種々の材質からなる基材に対する良好な接着性及び密着性を発揮させるとともに、形成される接着層の強度や耐熱性をさらに向上させることができる。なお、ダイマージアミンをポリアミンとして用いた場合においては、ポリウレタン系樹脂に含まれる、構成単位(A)とダイマージアミンに由来する構成単位(B−1)の合計の割合は、50〜98質量%であることが好ましく、60〜98質量%であることが好ましい。
【0029】
ポリイソシアネートの種類は特に限定されず、公知のポリイソシアネートを用いることができる。ポリイソシアネートの具体例としては、4,4’−メチレンビス(フェニレンイソシアネート)(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート類;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート類;イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、ダイマージイソシアネート(DDI)等の脂環式ポリイソシアネート類を挙げることができる。これらのなかでも、耐電解液性を向上させる観点からは芳香族ポリイソシアネート類が好ましい。
【0030】
重合反応(ウレタン化反応)の条件は特に限定されず、公知のウレタン化反応の条件を適用させることができる。例えば、活性水素を含まない溶剤の存在下又は非存在下、ダイマーポリオール及び必要に応じて用いられる短鎖ジオールと、ポリアミンと、ポリイソシアネートとを反応させることでポリウレタン系樹脂を得ることができる。また、ワンショット法と多段法のいずれの方式で反応させてもよい。
【0031】
重合反応後に得られたポリマーの末端にイソシアネート基が残った場合、イソシアネート末端の停止反応を行ってもよい。具体的には、モノアルコールやモノアミン等の単官能性の化合物;イソシアネートに対して異なる反応性を有する二種の官能基を有する化合物を使用すればよい。このような化合物の具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等のモノアルコール;モノエチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン等のモノアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン等を挙げることができる。なかでも、反応制御しやすい点でアルカノールアミンが好ましい。また、重合反応の温度は、通常20〜150℃、好ましくは50〜110℃である。
【0032】
ポリウレタン系樹脂は、無溶剤で合成しても、有機溶剤の存在下で合成してもよい。好適な有機溶剤としては、イソシアネート基に対して不活性であるか、又は反応成分よりも低活性なもの等を挙げることができる。このような有機溶剤の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素溶剤;n−ヘキサン等の脂肪族系炭化水素溶剤;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル系溶剤;エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート等のグリコールエーテルエステル系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤;N−メチル−2−ピロリドン等のラクタム系溶剤等を挙げることができる。これらの有機溶剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
ポリウレタン系樹脂の合成に際しては、必要に応じて触媒を用いることができる。触媒の具体例としては、ジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレート、スタナスオクトエート、オクチル酸亜鉛、テトラn−ブチルチタネート等の金属と有機又は無機酸との塩;有機金属誘導体;トリエチルアミンなどの有機アミン;ジアザビシクロウンデセン系触媒等を挙げることができる。
【0034】
(酸変性ポリオレフィン樹脂)
本発明のポリウレタン系樹脂組成物は、酸変性ポリオレフィン樹脂をさらに含有することが好ましい。酸変性ポリオレフィン樹脂を含有させることで、ポリオレフィンフィルムとの接着性をさらに向上させることができる。酸変性ポリオレフィン樹脂の具体例としては、無水マレイン酸変性ポリプロピレン等を挙げることができる。なお、酸変性ポリオレフィン樹脂は、溶剤に可溶であるものが好ましい。また、酸変性オレフィン樹脂の融点は、耐熱性及びラミネーション加工の容易さ等を考慮すると、60〜160℃が適当である。このような酸変性ポリオレフィン樹脂の市販品としては、商品名「アウローレン」(日本製紙社製)、商品名「ハードレン」(東洋紡社製)等を挙げることができる。ポリウレタン系樹脂100質量部に対する酸変性ポリオレフィン樹脂の量は、1,000質量部以下であることが好ましい。酸変性ポリオレフィン樹脂の量が、ポリウレタン系樹脂100質量部に対して1,000質量部を超えると、ラミネーション温度が高くなる、或いは形成される接着層やバインダー層の柔軟性が低下する傾向にある。
【0035】
(架橋剤)
本発明のポリウレタン系樹脂組成物は、架橋剤をさらに含有することが好ましい。架橋剤を含有させることで、耐電解液性、耐溶剤性、耐薬品性及び耐熱性をさらに向上させることが可能であるとともに、初期密着性及び高温下での接着力を向上させることができる。架橋剤としては、公知のものを用いることができる。架橋剤としては、例えば、イソシアネート架橋剤、ブロックイソシアネート接着剤、カルボジイミド架橋剤、オキサゾリン架橋剤、エポキシ架橋剤、アジリジン架橋剤、シランカップリング剤、及びチタンカップリング剤を挙げることができる。これらの架橋剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
イソシアネート架橋剤の具体例としては、MDI、TDI、HDI、IPDI、並びにこれらのトリメチロールプロパンアダクト体、ビウレット変性体、及びヌレート変性体;ポリメリックMDI、末端イソシアネートプレポリマー等を挙げることができる。ブロックイソシアネート接着剤の具体例としては、イソシアネート架橋剤のオキシム又はラクタム等によるブロック体を挙げることができる。カルボジイミド架橋剤の市販品としては、商品名「カルボジライト」(日清紡ケミカル社製)等を挙げることができる。オキサゾリン架橋剤の市販品としては、商品名「エポクロス」(日本触媒社製)等を挙げることができる。エポキシ架橋剤の市販品としては、商品名「jER」(三菱化学社製)等を挙げることができる。アジリジン架橋剤の市販品としては、商品名「ケミタイト」(日本触媒社製)等を挙げることができる。シランカップリング剤の具体例としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。また、チタンカップリング剤の具体例としては、チタニウム ジ2−エチルヘキソキシビス(2−エチル−3−ヒドロキシヘキソキシド)等を挙げることができる。
【0037】
ポリウレタン系樹脂100質量部に対する架橋剤の量は、0.1〜50質量部であることが好ましい。ポリウレタン系樹脂100質量部に対する架橋剤の量が50質量部を超えると、形成される接着層やバインダー層が脆くなる、或いは架橋剤の官能基が残留しやすくなる傾向にある。
【0038】
(その他の成分)
本発明のポリウレタン系樹脂組成物には、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂等の粘着付与剤を添加することができる。
【0039】
(リチウムイオン電池用外装体)
次に、本発明のリチウムイオン電池用外装体について説明する。
図1は、本発明のリチウムイオン電池用外装体の一実施形態を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態のリチウムイオン電池用外装体1は、内層2、バリア層4、外層6、並びにこれらの層を相互に接着する接着層である内層側接着層3及び外層側接着層5を備えた積層構造を有する。そして、接着層(内層側接着層3及び外層側接着層5)が、接着剤として用いた前述のポリウレタン系樹脂組成物により形成されている。
【0040】
内層2は、耐電解液性を有するとともに、包装材として有用な熱融着性をも有する層である。内層2としては、ポリオレフィンフィルムが好ましい。ポリオレフィンフィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン系共重合体、これらの酸変性物、及びこれらの混合物からなる無延伸の熱可塑性樹脂フィルムが好ましい。なお、密着性を向上させるため、内層2にはコロナ処理等の表面処理が施されていることが好ましい。
【0041】
バリア層4は、酸素や水分等のリチウムイオン電池内部への侵入を阻止するバリア性を有する層である。バリア層4としては、純アルミニウム、アルミニウム−鉄合金、銅、ニッケル、ステンレス等の金属箔;アルミニウム、ニッケル、シリカ、アルミナ等の蒸着フィルムが好ましい。なお、耐腐食性及び密着性を向上させるため、バリア層4にはクロメート処理等の表面処理が施されていることが好ましい。
【0042】
外層6は、リチウムイオン電池用外装体に包装材としての成型性を付与するとともに、電池製造時(熱融着工程)及び使用時に要求される耐熱性を有する層である。外層6としては、単層又は複層の耐熱性樹脂フィルムが好ましい。このような耐熱性樹脂フィルムを構成する耐熱性樹脂としては、ポリエステル、ナイロン、ポリイミド等を挙げることができる。
【0043】
内層側接着層3及び外層側接着層5は、内層2及び外層6をそれぞれ構成する樹脂フィルム、又はバリア層4を構成する金属箔等に、前述のポリウレタン系樹脂組成物を接着剤として塗布した後、乾燥することで形成することができる。乾燥後の接着層の厚さは、1〜20μmであることが好ましく、1.5〜10μmであることがさらに好ましい。接着層の厚さが1μm未満であると、接着力が不足するとともに、ピンホールが生じやすくなる傾向にある。一方、接着層の厚さが20μmを超えると成型性が低下する傾向にある。
【0044】
接着層を形成した金属箔等と樹脂フィルム、又は接着層を形成した樹脂フィルムと金属箔等を積層し、ドライラミネーションすることで、
図1に示すような積層体であるリチウムイオン電池用外装体1を得ることができる。ドライラミネーションの温度は、内層及び外層のそれぞれを構成するフィルムの材質等により適宜決定される。また、架橋反応を完結させるため、ドライラミネーション後にエージングすることが好ましい。
【0045】
なお、必要に応じて、バリア層よりも外側の任意の位置に意匠層を配置する、或いは最外側に保護層を配置することもできる。意匠層は、着色や艶消し等の意匠性をリチウムイオン電池用外装体に付与する層である。前述の本発明のポリウレタン系樹脂組成物と、シリカ等の無機フィラー、有機フィラー、及びカーボン等の顔料をはじめとする着色剤の少なくともいずれかとを含有するバインダー組成物を用いることによって、意匠層や保護層を形成することができる。
【0046】
保護層は、電池外部からの衝撃や電池内部からの液漏れを防止するための層である。従来の保護層は、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂等のフィルムを外層のさらに外側に配置することで形成されていた。これに対して、前述の本発明のポリウレタン系樹脂組成物を最外側に塗布して乾燥すれば、耐電解液性等に優れた保護層を容易に形成することができる。なお、保護層を形成するためのポリウレタン系樹脂組成物には、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、難燃剤、スリップ剤、フィラー、有機ビーズ、フッ素パウダー等の各種添加剤を配合することもできる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0048】
<ポリウレタン系樹脂の合成>
(合成例1:PU1の合成)
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素ガスで置換しながら、ダイマージオール(商品名「Pripol2033」、クローダジャパン社製、OHv=207mgKOH/g)100g、メチルエチルケトン(MEK)31.3g、及びトルエン31.3gを仕込んだ。加熱撹拌を開始して系内が均一となった後、50℃で4,4’−メチレンビス(フェニレンイソシアネート)(MDI)46.1gを添加し、次いで、80℃に昇温して反応させた。赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基による2,270cm
-1の吸収が消失するまで反応を進行させた。その後、MEK 41.8g及びトルエン41.8gを添加して、構成単位(A)の含有率68%及び重量平均分子量50,000のポリウレタン樹脂PU1の溶液(固形分50%)を得た。
【0049】
(合成例2:PU2の合成)
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素ガスで置換しながら、ダイマージオール(商品名「Pripol2033」、クローダジャパン社製、OHv=207mgKOH/g)100g、ジメチロールプロパン酸(DMPA)8.1g、及びMEK 72.6gを仕込んだ。加熱撹拌を開始した後、50℃でMDI 61.2gを添加し、次いで、80℃に昇温して反応させた。赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基による2,270cm
-1の吸収が消失するまで反応を進行させた。その後、MEK 12.1g及びトルエン84.7gを添加して、構成単位(A)の含有率59%、重量平均分子量55,000、及び酸価(Av)=20mgKOH/gのポリウレタン樹脂PU2の溶液(固形分50%)を得た。
【0050】
(合成例3:PU3の合成)
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素ガスで置換しながら、ダイマージオール(商品名「Pripol2033」、クローダジャパン社製、OHv=207mgKOH/g)100g、1,3−ブタンジオール(1,3−BD)5.0g、及びMEK 70.7gを仕込んだ。加熱撹拌を開始した後、50℃でMDI 60.0gを添加し、次いで、80℃に昇温して反応させた。赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基による2,270cm
-1の吸収が消失するまで反応を進行させた。その後、MEK 11.8g及びトルエン82.5gを添加して、構成単位(A)の含有率61%、重量平均分子量55,000のポリウレタン樹脂PU3の溶液(固形分50%)を得た。
【0051】
(合成例4:PU4の合成)
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素ガスで置換しながら、ダイマージオール(商品名「Pripol2033」、クローダジャパン社製、OHv=207mgKOH/g)80g、水素化ポリブタジエンポリオール(商品名「GI−1000」、日本曹達社製、OHv=66mgKOH/g)20g、MEK 30.0g、及びトルエン30.0gを仕込んだ。加熱撹拌を開始した後、50℃でMDI 39.8gを添加し、次いで、80℃に昇温して反応させた。赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基による2,270cm
-1の吸収が消失するまで反応を進行させた。その後、MEK 39.9g及びトルエン39.9gを添加して、構成単位(A)の含有率57%及び重量平均分子量60,000のポリウレタン樹脂PU4の溶液(固形分50%)を得た。
【0052】
(合成例5:PU5の合成)
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素ガスで置換しながら、ダイマージオール(商品名「Pripol2033」、クローダジャパン社製、OHv=207mgKOH/g)100g、MEK 30.2g、及びトルエン30.2gを仕込んだ。加熱撹拌を開始して系内が均一となった後、50℃でイソホロンジイソシアネート(IPDI)41.0gを添加し、次いで、80℃に昇温して反応させた。赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基による2,270cm
-1の吸収が消失するまで反応を進行させた。その後、MEK 40.3g及びトルエン40.3gを添加して、構成単位(A)の含有率71%及び重量平均分子量50,000のポリウレタン樹脂PU5の溶液(固形分50%)を得た。
【0053】
(合成例6:PU6の合成)
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素ガスで置換しながら、ダイマージオール(商品名「Pripol2033」、クローダジャパン社製、OHv=207mgKOH/g)100g、及びトルエン62.6gを仕込んだ。加熱撹拌を開始して系内が均一となった後、50℃でヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)62g(OH基に対してNCO基が2倍当量)を添加した。80℃に昇温して3時間反応させてウレタンプレポリマー溶液を得た。得られたウレタンプレポリマー溶液にDMF 130.8gを添加して40℃に冷却した後、イソホロンジアミン(IPDA)31.4gを滴下して、ウレタンプレポリマーのNCO基と反応させた。赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基による2,270cm
-1の吸収が消失するまで反応させて、構成単位(A)の含有率52%及び重量平均分子量50,000のポリウレタンウレア樹脂PU6の溶液(固形分50%)を得た。
【0054】
(合成例7:PU7の合成)
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素ガスで置換しながら、ダイマージオール(商品名「Pripol2033」、クローダジャパン社製、OHv=207mgKOH/g)100g、及びトルエン62.6gを仕込んだ。加熱撹拌を開始して系内が均一となった後、50℃でHDI 62g(OH基に対してNCO基が2倍当量)を添加した。80℃に昇温して3時間反応させてウレタンプレポリマー溶液を得た。得られたウレタンプレポリマー溶液にDMF 199.8gを添加して40℃に冷却した後、ダイマージアミン(商品名「Priamine1074」、クローダジャパン社製、AHEW=136g/eq)100.3gを滴下して、ウレタンプレポリマーのNCO基と反応させた。赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基による2,270cm
-1の吸収が消失するまで反応させて、構成単位(A)と構成単位(B−1)の合計の含有率76%、及び重量平均分子量45,000のポリウレタンウレア樹脂PU7の溶液(固形分50%)を得た。
【0055】
(合成例8:PU8の合成)
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素ガスで置換しながら、ダイマージオール(商品名「Pripol2033」、クローダジャパン社製、OHv=207mgKOH/g)60g、ポリカーボネートポリオール(商品名「プラクセル CD220」、ダイセル社製、OHv=56.1mgKOH/g)40g、MEK 28.4g、及びトルエン28.4gを仕込んだ。加熱撹拌を開始した後、50℃でMDI 32.7gを添加し、次いで、80℃に昇温して反応させた。赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基による2,270cm
-1の吸収が消失するまで反応を進行させた。その後、MEK 38.0g及びトルエン38.0gを添加して、構成単位(A)の含有率45%及び重量平均分子量64,000のポリウレタン樹脂PU8の溶液(固形分50%)を得た。
【0056】
(比較合成例1:PU9の合成)
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素ガスで置換しながら、ポリエステルポリオール(アジピン酸と1,4−ブタンジオールの縮合物、OHv=112mgKOH/g、Av=0.1mgKOH/g)100g、MEK 26.8g、及びトルエン26.8gを仕込んだ。加熱撹拌を開始して系内が均一となった後、50℃でMDI 25.0gを添加し、次いで、80℃に昇温して反応させた。赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基による2,270cm
-1の吸収が消失するまで反応を進行させた。その後、MEK 35.7g及びトルエン35.7gを添加して、構成単位(A)を含まない、重量平均分子量65,000のポリウレタン樹脂PU9の溶液(固形分50%)を得た。
【0057】
上記の合成例1〜8及び比較合成例1をまとめたものを表1に示す。
【0058】
【0059】
<内層側接着剤1〜23(実施例1〜22、比較例1)の調製>
表2に示す処方にしたがって各成分を配合して内層側接着剤を調製した。なお、表2中の配合量(単位:部)は固形分である。
【0060】
【0061】
<電池外装体用の積層体>
(実施例23)
以下に示す配合処方の外層側接着剤を、両面クロメート処理した厚さ40μmのアルミニウム箔の一方の面に塗布した後、乾燥して、厚さ4μmの外層側接着層を形成した。形成した外層側接着層の表面に厚さ25μmの延伸ナイロンフィルムを配置し、ドライラミネートによって貼合した。次いで、内層側接着剤1をアルミニウム箔の他方の面(延伸ナイロンフィルムを貼合した面の反対側の面)に塗布した後、乾燥して、厚さ3μmの内層側接着層を形成した。形成した内層側接着層の表面に厚さ40μmのコロナ処理した無延伸ポリプロピレンフィルムを配置し、ドライラミネートによって貼合して電池外装体用の積層体を製造した。
[外層側接着剤]
・PU1(NV=50%) 10.0部
・ポリイソシアネート架橋剤 0.5部
(商品名「コロネートHX」、日本ポリウレタン社製、
NV=100%、NCO=11%)
・MEK 44.5部
【0062】
(実施例24〜44、比較例2)
内層側接着剤1に代えて、表3に示す種類の内層側接着剤をそれぞれ用いたこと以外は、前述の実施例23と同様にして電池外装体用の積層体を製造した。
【0063】
<評価>
(接着強度)
製造した電池外装体用の積層体から接着強度測定用の試料片を採取した。引張試験装置(型名「オートグラフ AGS−100A」、島津製作所社製)を使用し、25℃の温度条件下、引張速度100mm/minで試料片のアルミニウム箔と無延伸ポリプロピレンフィルムをT剥離して、内層側接着層の接着強度を測定した。結果を表3に示す。
【0064】
(接着強度保持率)
製造した電池外装体用の積層体から接着強度保持率測定用の試料片を採取した。採取した試料片をヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)のエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート(1/1)溶液(LiPF
6濃度=1mol/L)に浸漬し、85℃で4週間放置した。上記「接着強度」の測定方法と同様の手順で、浸漬前後の試料片のアルミニウム箔と無延伸ポリプロピレンフィルムをT剥離して、内層側接着層の接着強度を測定した。そして、下記式(A)より接着強度保持率を算出し、耐電解液性の指標とした。結果を表3に示す。
接着強度保持率(%)
=(浸漬後の接着強度/浸漬前の接着強度)×100 ・・・(A)
【0065】
【0066】
(水蒸気バリア性)
実施例1及び13並びに比較例1で調製した内層側接着剤1、13及び23を、離型紙上にそれぞれ塗布した後、乾燥して、厚さ15μmのフィルムを作製した。離型紙から剥離したフィルムを用いて、以下に示す条件で透湿度試験を行って水蒸気バリア性を評価した。結果を表4に示す。
測定法:JIS Z 0208 防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)
測定条件:温度40℃、相対湿度90%
【0067】
【0068】
<意匠層の配置>
(実施例45)
PU5 100部、意匠用フィラー(商品名「サイリシア 420」、富士シリシア化学社製、湿式法シリカ、平均粒子径3.1μm)10部、及びMEK 90部を混合した後、ガラスビーズを添加し、ペイントシェーカーを使用して分散させて分散液を得た。得られた分散液100部、MEK 60部、及びポリイソシアネート架橋剤(商品名「コロネートHX」、日本ポリウレタン社製)2.5部を混合し、均一になるまで撹拌して艶消しの意匠層用配合液を調製した。得られた意匠層用配合液を実施例23で製造した積層体の延伸ナイロンフィルムの表面に塗布した後、乾燥して厚さ10μmの意匠層を形成し、意匠層つき積層体を製造した。製造した積層体をヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)のエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート(1/1)溶液(LiPF
6濃度=1mol/L)に浸漬し、85℃で4週間放置した。浸漬後の積層体を観察したところ、意匠層の状態に変化は認められなかった。
【0069】
(実施例46)
PU5 100部、カーボンブラック16部、及びMEK 214部を混合した後、ガラスビーズを添加し、ペイントシェーカーを使用して分散させて分散液を得た。得られた分散液100部、PU4 360部、MEK 400部、及びポリイソシアネート架橋剤(商品名「コロネートHX」、日本ポリウレタン社製)20部を混合し、均一になるまで撹拌して黒色の意匠層用配合液を調製した。得られた意匠層用配合液を実施例23で製造した積層体の延伸ナイロンフィルムの表面に塗布した後、乾燥して厚さ10μmの意匠層を形成し、意匠層つき積層体を製造した。製造した積層体をヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)のエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート(1/1)溶液(LiPF
6濃度=1mol/L)に浸漬し、85℃で4週間放置した。浸漬後の積層体を観察したところ、意匠層の状態に変化は認められなかった。
【0070】
<保護層の配置>
(実施例47)
以下に示す配合処方の保護層用配合液を、実施例23で製造した積層体の延伸ナイロンフィルムの表面に塗布した後、乾燥して厚さ10μmの保護層を形成し、保護層つき積層体を製造した。製造した積層体をヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)のエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート(1/1)溶液(LiPF
6濃度=1mol/L)に浸漬し、85℃で4週間放置した。浸漬後の積層体を観察したところ、保護層の状態に変化は認められなかった。
[保護層用配合液]
・PU4(NV=50%) 10.0部
・ポリイソシアネート架橋剤 0.5部
(商品名「コロネートHX」、日本ポリウレタン社製、
NV=100%、NCO=11%)
・MEK 17.0部