【解決手段】カーボンブラックの表面積を増加する方法であって、第1BET窒素表面積よりも大きい第2BET窒素表面積を有するカーボンブラック生成物を生成するのに効果的な条件下で、流動床にて該第1BET窒素表面積を有するカーボンブラック出発材料と酸化剤とを接触させることを含む、方法。
カーボンブラックの表面積を増加する方法であって、第1BET窒素表面積よりも大きい第2BET窒素表面積を有するカーボンブラック生成物を生成するのに効果的な条件下で、流動床にて該第1BET窒素表面積を有するカーボンブラック出発材料と酸化剤とを接触させることを含む、方法。
該流動床におけるカーボンブラック出発材料に対する蒸気量の比が、約0.05〜0.50kg蒸気/kgカーボンブラック出発材料/時間である、請求項2に記載の方法。
第1BET窒素表面積よりも大きい第2BET窒素表面積を有するカーボンブラック生成物を生成するのに効果的な条件下で、流動床にて該第1BET窒素表面積を有するカーボンブラック出発材料と酸化剤とを接触させる工程を含むとともに該カーボンブラック出発材料が該酸化剤を含む流動化剤を用いて該流動床にて流動化される方法、により生成されたカーボンブラック生成物。
カーボンブラック生成物及びプラスチックを含む導電性プラスチックであって、該カーボンブラック生成物が、第1BET窒素表面積よりも大きい第2BET窒素表面積を有する該カーボンブラック生成物を生成するのに効果的な条件下で、流動床にて該第1BET窒素表面積を有するカーボンブラック出発材料と酸化剤とを接触させる工程を含む方法によって生成され、該カーボンブラック出発材料が、該酸化剤を含む流動化剤を用いて該流動床にて流動化される、導電性プラスチック。
液体ビヒクル中に分散されたカーボンブラック生成物を含むインクジェットインクであって、該カーボンブラック生成物が、第1BET窒素表面積よりも大きい第2BET窒素表面積を有する該カーボンブラック生成物を生成するのに効果的な条件下で、流動床にて該第1BET窒素表面積を有するカーボンブラック出発材料と酸化剤とを接触させる工程を含む方法によって生成され、該カーボンブラック出発材料が、該酸化剤を含む流動化剤を用いて該流動床にて流動化される、インクジェットインク。
カーボンブラック生成物及びその上に配置された活性相を含む燃料電池触媒であって、該カーボンブラック生成物が、第1BET窒素表面積よりも大きい第2BET窒素表面積を有する該カーボンブラック生成物を生成するのに効果的な条件下で、流動床にて該第1BET窒素表面積を有するカーボンブラック出発材料と酸化剤とを接触させる工程を含む方法によって生成され、該カーボンブラック出発材料が、該酸化剤を含む流動化剤を用いて該流動床にて流動化される、燃料電池触媒。
カーボンブラック生成物を含むスーパーキャパシタであって、該カーボンブラック生成物が、第1BET窒素表面積よりも大きい第2BET窒素表面積を有する該カーボンブラック生成物を生成するのに効果的な条件下で、流動床にて該第1BET窒素表面積を有するカーボンブラック出発材料と酸化剤とを接触させる工程を含む方法によって生成され、該カーボンブラック出発材料が、該酸化剤を含む流動化剤を用いて該流動床にて流動化される、スーパーキャパシタ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、形態(すなわち、一次粒子及び凝集体の大きさ)を慎重に制御する能力を提供する、メソポーラスカーボンブラックの製造方法についての必要性が存在する。さらに、従来のガス化プロセスによって生成されるカーボンブラックとは異なる空孔及び形態特性を有するメソポーラスカーボンブラックについての必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施態様において、本発明はカーボンブラックの表面積を増加するための方法であって、例えば少なくとも約1.5倍、例えば約1.5倍〜約8.0倍などの、第1BET窒素表面積よりも大きい第2BET窒素表面積を有するカーボンブラック生成物を生成するのに効果的な条件下で、流動床にて第1BET窒素表面積を有するカーボンブラック出発材料と酸化剤とを接触させることを含む方法を対象とする。好ましくは、その方法は、酸化剤を含む流動化剤を用いて、流動床にてカーボンブラック出発材料を流動化させることをさらに含む。流動化剤は所望により、約0.03〜約0.15m/sの流動床における表面速度を有する。
【0007】
所望により、酸化剤は蒸気を含む。前記条件は所望により、約0.5〜約15時間の反応時間を含む。
【0008】
流動化剤は所望により、酸化剤に加えて窒素を含む。様々な他の所望による実施態様において、流動化剤は蒸気を含むか、本質的に蒸気からなるか、または蒸気からなる。
【0009】
好ましくは、カーボンブラック出発材料は、望ましい流動化特性を提供するペレット化したカーボンブラックを含む。
【0010】
前記方法において、カーボンブラック出発材料に対する、反応時間の最後における累積酸化剤の質量比は、所望により、約0.5〜約2.5である。
【0011】
前記条件は所望により、約700℃〜約1300℃、例えば、約900℃〜約1100℃の流動床の温度を採用することを含む。
【0012】
流動床におけるカーボンブラック出発材料に対する蒸気量の比は、約0.05〜0.50kg蒸気/kgカーボンブラック出発材料/時間である。
【0013】
他の実施態様において、本発明は、第1BET窒素表面積よりも大きい第2BET窒素表面積を有するカーボンブラック生成物を生成するのに効果的な条件下で、流動床にて第1BET窒素表面積を有するカーボンブラック出発材料と酸化剤とを接触させる工程を含む方法によって生成されたカーボンブラック生成物を対象とする。カーボンブラック出発材料は、好ましくは、酸化剤を含む流動化剤を用いて流動床にて流動化される。
【0014】
他の実施態様において、本発明は、カーボンブラック生成物及びプラスチックを含む導電性プラスチックであって、カーボンブラック生成物が、第1BET窒素表面積よりも大きい第2BET窒素表面積を有するカーボンブラック生成物を生成するのに効果的な条件下で、流動床にて第1BET窒素表面積を有するカーボンブラック出発材料と酸化剤とを接触させる工程を含む方法によって生成される、導電性プラスチックを対象とする。カーボンブラック出発材料は、好ましくは、酸化剤を含む流動化剤を用いて流動床にて流動化される。
【0015】
他の実施態様において、本発明は、液体ビヒクル中に分散されたカーボンブラック生成物を含むインクジェットインクであって、カーボンブラック生成物が、第1BET窒素表面積よりも大きい第2BET窒素表面積を有するカーボンブラック生成物を生成するのに効果的な条件下で、流動床にて第1BET窒素表面積を有するカーボンブラック出発材料と酸化剤とを接触させる工程を含む方法によって生成される、インクジェットインクを対象とする。カーボンブラック出発材料は、好ましくは、酸化剤を含む流動化剤を用いて流動床にて流動化される。
【0016】
他の実施態様において、本発明は、カーボンブラック生成物及びその上に配置された活性相を含む燃料電池触媒であって、カーボンブラック生成物が、第1BET窒素表面積よりも大きい第2BET窒素表面積を有するカーボンブラック生成物を生成するのに効果的な条件下で、流動床にて第1BET窒素表面積を有するカーボンブラック出発材料と酸化剤とを接触させる工程を含む方法によって生成される、燃料電池触媒を対象とする。カーボンブラック出発材料は、好ましくは、酸化剤を含む流動化剤を用いて流動床にて流動化される。
【0017】
他の実施態様において、本発明は、カーボンブラック生成物を含むスーパーキャパシタであって、カーボンブラック生成物が、第1BET窒素表面積よりも大きい第2BET窒素表面積を有するカーボンブラック生成物を生成するのに効果的な条件下で、流動床にて第1BET窒素表面積を有するカーボンブラック出発材料と酸化剤とを接触させる工程を含む方法によって生成される、スーパーキャパシタを対象とする。カーボンブラック出発材料は、好ましくは、酸化剤を含む流動化剤を用いて流動床にて流動化される。
【0018】
他の実施態様において、本発明は多孔質カーボンブラックを対象とし、例えば、(i)約600〜約1200m
2/gまたは約1500〜約1800m
2/g(例えば、約600〜約900m
2/g、約900〜約1200m
2/g、または約1500〜約1800m
2/g)のBET窒素表面積、及び(ii)約0.95〜約1.1のBET窒素表面積/STSA(統計的厚さ比表面積)比を有するメソポーラスカーボンブラックを対象とする。
【0019】
他の実施態様において、本発明は多孔質カーボンブラックを対象とし、例えば、約35〜約80nmの平均一次粒子径、約600〜約1800m
2/gのBET窒素表面積、及び約0.95〜約1.1のBET窒素表面積/STSA比を有する、メソポーラスカーボンブラックを対象とする。
【0020】
他の実施態様において、本発明は多孔質カーボンブラックを対象とし、例えば、約600〜約1800m
2/gのBET窒素表面積、及び約1〜約7、例えば約1〜約5または約1〜約3のD
agg/D
p比を有する、メソポーラスカーボンブラックを対象とする。D
pは所望により約35〜約80nmまたは約5〜約15nmである。多孔質カーボンブラックは、所望により、約900〜約1400m
2/gのBET窒素表面積、及び約1〜約5、例えば約1〜約3のD
agg/D
p比を有する。多孔質カーボンブラックは、所望により、約0.95〜約1.1のBET窒素表面積/STSA比を有する。
【0021】
他の実施態様において、本発明は、窒素脱着によって測定される約1.2〜約2.0cm
3/gで空孔径が2〜5nmの全空孔体積を有する多孔質カーボンブラックを対象とする。
【0022】
他の実施態様において、本発明は、窒素脱着によって測定される約3.0〜約5.0cm
3/gで空孔径が2〜100nmの全空孔体積を有する多孔質カーボンブラックを対象とする。
【0023】
本発明は以下の制限するものではない図を考慮してより良く理解されるだろう。
【発明を実施するための形態】
【0025】
導入部
本発明は、一態様において、カーボンブラックの表面積を増加するため、好ましくはメソポーラスカーボンブラック生成物を生成するために、流動床反応炉にて酸化剤を用いてカーボンブラック出発材料を酸化することによってカーボンブラック表面積を増加する方法を対象とする。例えば、一実施態様において、本発明は、第1BET窒素表面積よりも大きい第2BET窒素表面積を有するカーボンブラック生成物を生成するのに効果的な条件下で、流動床にて第1BET窒素表面積を有するカーボンブラック出発材料と酸化剤、例えば蒸気とを接触させる工程を含む方法を対象とする。好ましい実施態様において、本方法は、酸化剤及び所望により窒素などの希釈剤を含む流動化剤を用いて、流動床にてカーボンブラック出発材料を流動化する工程をさらに含む。本発明はまた、この方法によって製造される様々なカーボンブラック生成物を対象とする。本明細書で用いるとき、用語「BET窒素表面積」とは、参照によって本明細書にその全体が組み込まれるASTM D6556−04によって測定される表面積を意味する。
【0026】
カーボンブラック出発材料
上で示したように、本発明は、一態様において、カーボンブラック出発材料の表面積を増加することを対象とする。カーボンブラック出発材料の物理的特性は幅広く変わり得るが、好ましくは、カーボンブラックは流動床反応炉内における流動化に好適となる態様である。カーボンブラック出発材料の形態、大きさ、物理的形状、及び質量は、例えば、採用される特定の流動化条件、例えば流動化剤の表面速度、流動化プレートの設計等に依存するだろう。
【0027】
好ましい実施態様において、カーボンブラック出発材料はペレット化したカーボンブラックを含む。ペレット化したカーボンブラックは、本発明の方法について望ましい流動化特性を示すことが分かった。非ペレット化カーボンブラック材料をペレット化し、ペレット化されたカーボンブラック出発材料を生成ために、様々な従来のカーボンブラックのペレット化技法のいずれもが使用され得る。例えば、ペレットは、湿式ペレット化によって形成され得る。微細なカーボンブラック粉末が、水とともにピンミキサーに投入され、次いで、高せん断下で混合される。高分子または低分子バインダーをまた、水に添加して、ペレットの硬度または耐久性を改良することができる。ペレット化の他の方法は、乾式ペレット化である。微細なカーボンブラック粉末が大きなロータリードラムに投入され、再利用された(または種)ペレットとともに混合される。ドラムの回転動作によって、微細粉末はペレットとともに混合されてペレットと組み合わせられる。
【0028】
いくつかの例示的な実施態様において、カーボンブラック出発材料、例えばペレット化したカーボンブラック出発材料は、約25μmよりも大きい、例えば、約50μmよりも大きい、約100μmよりも大きい、約200μmよりも大きい、約500μmよりも大きい、または約1mmよりも大きい平均ペレット径を有する。範囲に関しては、カーボンブラック出発材料、例えばペレット化したカーボンブラック出発材料は、所望により、約10μm〜約5mm、例えば、約100μm〜約5mm、または約200μm〜約2mmの平均ペレット径を有する。カーボンブラック出発材料は所望によりペレット径の分布を有し、2mmより大きいペレット径が0質量%〜3質量%、1〜2mmのペレット径が15質量%〜80質量%、500μm〜1mmのペレット径が15質量%〜80質量%、250μm〜500μmのペレット径が1質量%〜15質量%、125μm〜250μmのペレット径が0質量%〜10質量%、及び125μm未満のペレット径が0質量%〜5質量%であるペレット径の分布を有する。これに関連して、ペレット径の分布及び平均ペレット径は、参照によって本明細書にその全体が組み込まれるASTM D1511−00による、メッシュサイズを減らしながら積み重ねた一連のふるいを振動させて、そこにカーボンブラックのペレットを通過させ、次いで、それぞれにふるいで集められた質量を測定することによって決定される。
【0029】
好ましくは、カーボンブラック出発材料は、乏しい流動化特性を示しがちである#120メッシュのふるいを通過するカーボンブラック粒子、例えば、約125μm未満のペレット径を有するカーボンブラック粒子の粒径画分として本明細書で定義されるカーボンブラック微粒子を実質的に含まない。様々な所望による実施態様において、カーボンブラック出発材料は、約15質量%未満のカーボンブラック微粒子、例えば、約10質量%未満、約5質量%未満、または約2質量%未満のカーボンブラック微粒子を含む。
【0030】
カーボンブラック出発材料の第1BET窒素表面積(N
2SAとも言う)は同様に幅広く変わり得る。様々な所望による実施態様において、第1BET窒素表面積は、約1000m
2/g未満、例えば約500m
2/g未満、約300m
2/g未満、または約100m
2/g未満である。
【0031】
参照によって本明細書にその全体が組み込まれるASTM D3849−04(ASTM粒子径とも言う)によって測定されるカーボンブラック出発材料の平均一次粒子径は、所望により、約100nm未満、例えば約75nm未満、約50nm未満、約30nm未満、約20nm未満、または約10nm未満である。範囲に関しては、カーボンブラック出発材料の平均一次粒子径は、所望により、約5nm〜約100nm、例えば、約10nm〜約50nm、約10nm〜約40nm、約10nm〜約30nm、または約10nm〜約20nmである。
【0032】
カーボンブラック凝集体は、接触点にて融合され、せん断によって容易に分離され得ないカーボンブラック一次粒子の構造体として定義される。カーボンブラック出発材料の平均凝集体径(D
agg)は、参照によって本明細書にその全体が組み込まれるASTM D3849−04に記載されるイメージング技術を用いてTEM像解析から抽出することができ、具体的には次の式に基づく。
D
agg=(D
maxD
min)
0.5
式中、D
maxは、TEM解析からの粒子の算術数平均最大直径であり、D
minは、TEM解析からの粒子の算術数平均最小直径である。いくつかの例示的な具体例では、カーボンブラック出発材料は、約500nm未満、例えば約400nm未満、約300nm未満、約200nm未満、または約100nm未満である平均凝集体径を有する。範囲に関しては、カーボンブラック出発材料の平均凝集粒子径は、所望により、約30nm〜約500nm、例えば、約50nm〜約300nm、または約100nm〜約300nmである。
【0033】
カーボンブラック出発材料の構造は、平均一次粒子径に対する平均凝集体径の比(D
agg/D
p)によって特徴付けられ得る。カーボンブラック出発材料についてのD
agg/D
pの比は、所望により、約1〜約12、例えば、約2〜約10、または約4〜約10の範囲であり、より高い数字はより大きい構造(greater structure)を示す。より低い範囲の制限に関しては、カーボンブラック出発材料についてのD
agg/D
pの比は、所望により、約4よりも大きく、例えば、約7よりも大きいか、または約11よりも大きい。
【0034】
カーボンブラック出発材料のかさ密度は、カーボンブラック出発材料の流動化特性に著しい影響を有し得る。いくつかの例示的な実施態様において、カーボンブラック出発材料、例えばペレット化したカーボンブラック出発材料のかさ密度は、所望により、約150〜約500kg/cm
3、例えば約200〜約450kg/cm
3、または約250〜約450kg/cm
3である。
【0035】
高度にエッチングされたカーボンブラックのメソ多孔性対マイクロ多孔性の割合は、統計的厚さ比表面積(STSA)に対するBET窒素表面積の比によって特徴付けられ得る。BET窒素表面積は概してカーボンブラックの全表面積、すなわち、外部の表面積及びメソポーラス及びマイクロポーラスに起因する表面積を含む全表面積を反映するが、一方で、STSA表面積は概して、外部の表面積及びメソ空孔に起因するカーボンブラックの表面積のみを反映する(すなわち、マイクロ空孔に起因する表面積を除く)。本明細書で用いるとき、用語「STSA表面積」とは、参照によって本明細書にその全体が組み込まれるASTM D6556−04により測定される表面積を意味する。概して、BET窒素表面積及びSTSA表面積が類似するほど(すなわち、その比が1に近づくほど)、カーボンブラックのマイクロポーラスは減少する。いくつかの例示的な実施態様において、カーボンブラック出発材料は、0.9よりも大きい、例えば、1.1よりも大きい、1.3よりも大きい、または1.5よりも大きいBET窒素表面積/STSA比を有する。本発明の酸化プロセスの際に、マイクロ多孔性(すなわち、BET窒素表面積/STSA比)は、最初、増加し得るが、
図1及び
図8を参照しながら以下に記載するように、マイクロポーラス構造が酸化され、カーボンブラック粒子が「空洞化」されるにつれて、最終的には減少するだろう。マイクロポーラス構造の酸化の際、BET窒素表面積/STSA比は理想的には1に近づく。
【0036】
本発明の方法によって生成されるカーボンブラック生成物の一次粒子及び凝集体の大きさは、適切な形態を有するカーボンブラック出発材料を選択することによって制御され得る。ファーネスカーボンブラックは、幅広い範囲の一次粒子及び凝集体の大きさで入手可能である。これらのカーボンブラック出発材料は、所望により、未エッチングであることができ、または、その場で(すなわちカーボンブラック反応炉内で)ある程度エッチングされたものであることができる。他のカーボンブラック、例えばサーマルブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、チャンネルブラック、またはガスファーネスブラックが、カーボンブラック出発材料として採用され得る。
【0037】
いくつかの具体的な限定されない例において、カーボンブラック出発材料は、Vulcan XC72(バインダー有りまたは無し)、Black Pearls 700、 Black Pearls 800、 Vulcan XC605、 Regal 350、 Regal 250、 Black Pearls 570、 及びVulcan XC68からなる群から選択される1以上のカーボンブラックを含む。
【0038】
流動化剤
本方法は、好ましくは、酸化剤及び所望により窒素などの希釈剤を含む流動化剤を用いて、流動床にてカーボンブラック出発材料を流動化する工程を含む。
【0039】
酸化剤の組成は、例えば採用されるカーボンブラック出発材料の組成及び所望の反応条件に依存して、幅広く変わり得る。いくつかの制限しない実施態様において、酸化剤は、O
2、O
3、酸素含有酸、水(例えば蒸気)、NO
x、SO
3、またはCO
2のうちの1以上を含む。いくつかの特に好ましい実施態様において、酸化剤は、蒸気を含むか、蒸気からなるか、または本質的に蒸気からなる。好ましくは、流動化剤は、少なくとも50質量%の蒸気、少なくとも75質量%の蒸気、少なくとも90質量%の蒸気、または100質量%の蒸気を含む。流動化剤が別の非酸化性流動化成分を有さず本質的に酸化剤からなる場合は、カーボンブラック生成物を精製する必要がないか、または酸化工程の後にカーボンブラック生成物から流動化成分を分離する必要がないというさらなる利点がある。
【0040】
所望により、流動化剤は、希釈剤、すわなち、主にカーボンブラック出発材料を酸化すること以外の理由で流動化剤に含まれる材料をさらに含む。例えば、希釈剤は、不活性ガス、例えば窒素またはアルゴンを含むことができる。したがって、流動化剤は、所望により、不活性ガス、例えば窒素またはアルゴンをさらに含む。開始の際は、流動化剤は希釈剤を含み、酸化剤をほとんどまたは全く含まないことができる。希釈剤を含み酸化剤をほとんどまたは全く含まない流動化剤を採用することによって、流動床反応炉の温度プロファイルが調整され(すなわち、流動床が加熱され)熱力学的に有利な反応を形成する間、カーボンブラック出発材料は希釈剤で流動化され得る。一旦、所望の温度プロファイルが達成されると、流動化剤の酸化剤の含有量を増加して、所望の、酸化剤:希釈剤の比及び反応の進行を提供することができる。同様の手順が、反応炉の停止に用いられ得る。
【0041】
望ましくは、本発明の方法の酸化速度(例えばエッチングレート)は、カーボンブラック生成物を生成するのに効果的な条件下で、流動床にてカーボンブラック出発材料と酸化剤とを接触させる工程の際に、流動化剤中の希釈剤(例えば窒素)に対する酸化剤(例えば蒸気)の比を制御することによって、注意深く制御され得る。結果として、本発明の方法によって生成されたカーボンブラック生成物の第2BET窒素表面積は、流動化剤中の希釈剤(例えば窒素)に対する酸化剤(例えば蒸気)の比を制御することによって、注意深く制御され得る。
【0042】
酸化条件
このたび、カーボンブラックは、効果的に酸化され、流動床反応炉にてその表面積を増加することができることが分かった。流動床反応炉は、他の反応炉の種類と比べて、酸化剤とカーボンブラック出発材料との接触を改良し、カーボンブラック生成物の生成において、より早い反応時間及びカーボンブラック出発材料のより均質なエッチングをもたらす、という利点を提供する。好ましい実施態様において、酸化剤は蒸気エッチングプロセスを含む。本明細書で用いるとき、用語「蒸気エッチング」とは、蒸気でカーボンブラック出発材料を酸化することを意味する。
【0043】
流動床反応炉は概して、流動化剤導入ゾーンまたはプレナム、及び流動化剤導入ゾーンの上に配置された反応ゾーン(エッチングゾーン)または床を含む。動作中に、カーボンブラック出発材料はエッチングゾーンで流動化され流動床を形成する。2つのゾーンは好ましくは、底部の格子(grate)、スクリーン、プレート(plate)、または類似の分離構造によって分離される。これらは、エッチングゾーンから流動化剤導入ゾーンへのカーボンブラック出発材料の流れを実質的に排除しながら、流動化剤を流動化剤導入ゾーンからエッチングゾーン(流動床)へ流動させるための複数の開口部を含む。
【0044】
理論に束縛されるものではないが、本発明の方法は、カーボンブラック出発材料から、例えば欠陥などの活性サイト、アモルファスカーボン、単一層面(single layer planes)などを除去することによって表面積を増加すると考えられている。この方法は、
図1に示され、欠陥を除去して、高度に酸化された高表面積のカーボンブラック生成物を生成することが表されている。
図1において、一次粒子(カーボンブラック出発材料)は、粒子の表面に概して平行に配向された層状面を有する、より大きくより完全な結晶を含む「殻(shell)」によって表される同心の結晶態様(concentric crystallite mode)を有するものとして描かれている。粒子の中央領域または「中心部」は、主に小さく不完全な結晶、単一層面、及び場合によっては層状面に組み込まれていないばらばらのカーボン(disorganized carbon)を含む。さらに、例えば欠陥、官能基などの、カーボン表面にいくらかの(より高エネルギーの)活性サイトがある。本発明の方法の際に、酸化剤分子(例えば水分子)が最初にカーボン表面の活性サイトを攻撃して、その表面から炭素原子を除去し、ガス相のCOまたはCO
2及び水素(次の式1及び2を参照)を生成して、より多くの炭素原子の露出をもたらす。粒子の中心部における炭素原子は、表面上の炭素原子よりも高いエネルギーを有する傾向があり、酸化(例えばエッチング)速度は、表面上よりも粒子の中心部の方が速い傾向がある。
【0045】
より具体的には、蒸気エッチングについて、再び理論に束縛されることはないが、カーボンブラック出発材料は、水蒸気改質に似た反応メカニズムでカーボンブラック生成物に転換される。蒸気エッチングの生成物は、CO及び水素並びに/またはCO
2及び水素を含む。CO及びCO
2の相対量は、カーボンに対する蒸気の比と温度とに依存する。例えば、カーボンに対する蒸気のより高い比は、CO
2及び水素の生成に有利に働く。関連する蒸気エッチング反応は以下の通りである。
【化1】
【0046】
蒸気エッチングが酸化工程で使用される場合、蒸気エッチングは、好ましくは、蒸気を含む流動化剤を用いて流動床反応炉にてカーボンブラック出発材料を流動化することを含む。上で示したように、流動化剤は、1以上のさらなる成分、例えば窒素またはアルゴンなどの不活性ガスを含むことができる。流動床反応炉に投入される希釈剤に対する蒸気の比を制御することによって、カーボンブラック出発材料の蒸気エッチングの割合が望ましくは、注意深く制御され得る。カーボンブラックの蒸気エッチングの割合はまた、カーボンに対する蒸気流量の比によって制御され得る。カーボンに対する蒸気流量のより大きな比は、より大きなエッチング(greater etching)に有利に働く。
【0047】
第1BET窒素表面積よりも大きい第2BET窒素表面積を有するカーボンブラック生成物を生成するのに効果的である流動床反応炉で使用される条件は、例えばカーボンブラック出発材料の物理的特性などの要因、及び特にカーボンブラック出発材料の流動化性(fluidizability)に依存して変わり得る。流動床反応炉の望ましい条件に影響するさらなる要因には、流動化プレートの設計、並びに使用される流動床反応炉の設計が含まれる。
【0048】
流動床反応炉における酸化の速度及び割合を制御する他の重要なパラメータは、流動床の温度である。概して、流動床温度が高いほど、酸化の速度は速くなる。蒸気エッチングプロセスは好ましくは、反応の大きな吸熱特性のため(ΔH
300K=31.4kcal/mol)、約700℃よりも高い温度で行われる。いくつかの制限しない実施態様において、流動床の温度は約700℃よりも高く、例えば約900℃よりも高いか、または約1000℃よりも高い。範囲に関しては、流動床の温度は所望により約700℃〜約1400℃、例えば約700℃〜約1300℃、約900℃〜約1100℃、または約1000℃〜約1100℃である。本明細書で用いられるとき、用語「流動床温度」とは、カーボンブラック生成物を生成するのに効果的な条件下で、流動床にてカーボンブラック出発材料と酸化剤、例えば蒸気とを接触させる工程の際の流動床の平均温度を意味する。
【0049】
流動化剤が流動床に導入されるところにおける表面速度は、酸化剤とカーボンブラック出発材料との接触の割合を制御する上での他の重要な要因である。理想的には、表面速度は、流動床に含まれるカーボンブラックを流動化された態様で振る舞わせるために十分に大きいが、カーボンブラックのペレットまたは粒子を取り込むほど大きくはなく、それによって流動床反応炉からカーボンブラックのペレットまたは粒子を排出することができる。いくつかの限定しない実施態様において、流動化剤は、約0.03〜約0.15m/s、例えば、約0.05〜約0.13m/s、または約0.05〜約0.10m/sの流動床の表面速度を有する。
【0050】
カーボンブラック生成物を生成することが望まれるカーボンブラック出発材料の酸化の割合は概して、カーボンブラック出発材料に対する反応時間の最後における累積酸化剤の質量比に比例する。いくつかの例示的な限定しない実施態様において、カーボンブラック出発材料に対する反応時間の最後における累積酸化剤の質量比は、約0.5〜約3、例えば約0.5〜約2.5、約0.5〜約2、または約1〜約2である。類似のパラメータは、流動床におけるカーボンブラック出発材料に対する蒸気量の比であり、好ましくは、約0.05〜約0.50kg蒸気/kgカーボンブラック出発材料/時間、例えば約0.1〜約0.4kg蒸気/kgカーボンブラック出発材料/時間、または約0.2〜約0.3kg蒸気/kgカーボンブラック出発材料/時間である。
【0051】
カーボンブラック出発材料からカーボンブラック生成物を生成する上で採用される反応時間は、例えば、カーボンブラック出発材料とカーボンブラック生成物との間の表面積及び空孔率における所望の差、流動床反応炉の温度、流動化剤の表面ガス速度、流動化剤の酸化剤含有量、カーボンブラック出発材料の投入質量(mass loading)、及び十分に流動床反応プロセスの当業者の知識内である他のパラメータに依存して、変化し得る。いくつかの限定しない実施態様において、前記条件は、約0.5〜約24時間、例えば約0.5〜約15時間、約2〜約12時間、または約3〜約9時間の反応時間を含む。
【0052】
所望のカーボンブラック出発材料の酸化の割合、並びに反応時間は、とりわけ、カーボンブラック生成物の第2BET窒素表面積とカーボンブラック出発材料の第1BET窒素表面積との間の所望の差に依存するだろう。いくつかの限定しない実施態様において、前記条件、例えば反応時間、流動床温度、流動化剤の酸化剤含有量等のうち1以上は、第1BET窒素表面積よりも第2BET窒素表面積が、少なくとも約1.2倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2.0倍、少なくとも約4.0倍、または少なくとも約8.0倍だけ大きくなるように制御される。範囲に関しては、前記条件は所望により、第1BET窒素表面積よりも第2BET窒素表面積が、約1.5倍〜約8.0倍、例えば、約3.0倍〜約8.0倍、または約5.0倍〜約8.0倍だけ大きくなるように制御される。所望により、第1BET窒素表面積と第2BET窒素表面積との間の差は、約100m
2/gよりも大きい、例えば約200m
2/gよりも大きい、約300m
2/gよりも大きい、約400m
2/gよりも大きい、約500m
2/gよりも大きい、約800m
2/gよりも大きい、約1000m
2/gよりも大きい、または約1200m
2/gよりも大きい。
【0053】
酸化(例えば蒸気エッチング)プロセスは所望により高圧下で行われる。酸化プロセス、例えば流動床反応炉内で採用される酸化剤(例えば蒸気)の分圧は、広い範囲にわたって変化し得る。概して、前記プロセスで採用される分圧は、約0.1〜約1気圧、例えば約0.2〜約0.8気圧、または約0.3〜約0.7気圧の範囲内である。
【0054】
所望により、本発明の方法は、触媒の存在下で行われる。使用される場合は、触媒は所望により、例えば、金属酸化物(例えばNiO、CuO、Fe
2O
3等)、金属硝酸塩(例えばNi(NO
3)
2、Cu(NiO
3)
2等)、または金属水酸化物(例えばFe(OH)
3、NaOH、KOH、及びCa(OH)
2等)、または酢酸カルシウム、ギ酸カルシウム、塩化カルシウム、酢酸バリウム、ギ酸バリウム、若しくは塩化バリウムなどのアルカリ土類金属塩(有機アニオンまたは無機アニオンのいずれかを有する)を含む。触媒が使用される場合は、カーボンに対する触媒の質量比は、約0.0001〜約0.5、例えば約0.001〜約0.1、または約0.005〜約0.05である。
【0055】
蒸気エッチングプロセスの際、流動床に含まれるカーボンブラックの試料を得て、分析し、表面積の所望の増加が達成されたか測定することができる。好ましい実施態様において、(例えば導管を介して)流動床と流体連結状態にあるサイクロン等の分離装置は、そこに含まれているカーボンブラックを定期的にサンプリングする。与えられた試料のエッチングレベルは、機械ではなく手動(すなわち手)による混合方法を使用するASTM D2414−06aに記載される様式に類似した様式で、cc/100gカーボンブラックを単位としたオイル吸収(すなわち、DBPまたはジブチルフタレート吸収)係数を手動で測定することによって見積もられ得る。例えば、約400〜約700cc/100gの目標手動オイル吸収係数が望ましくあり得る(この目標数は、約800〜約1500m
2/gのVulcan XC72カーボンブラックについてのBET表面積に対応する)。表面積の所望の増加が達成された後、得られたカーボンブラック生成物は、概して流動化剤の流れを止め、流動床を純窒素または他の不活性ガスの流れ下で冷却し、次いで、例えば流動化剤導入ゾーンを介して、及び流動化剤導入ゾーンと流体連結状態にある生成物排出口を介して、カーボン含有材料を除去することによって、蒸気エッチング装置から除去される。
【0056】
図2は、本発明の一実施態様による例示的な蒸気エッチングシステム200の工程系統図を提供する。蒸気エッチングシステム200は、ゾーンが底部のスクリーンまたは格子225によって互いに分離されている、流動化剤導入ゾーンまたはプレナム210及びエッチングゾーン211を含む流動床反応炉208を含む。通常の動作の際、エッチングゾーン211は、カーボンブラック及び所望により触媒を含む流動床212を含む。エッチングゾーン211は好ましくは、1以上のヒーターによって加熱され、所望の温度プロファイルを提供する。
【0057】
示したように、流動化剤は、蒸気及び/または実質的に不活性の流動化剤(例えばN
2)を含む。蒸気は、蒸気発生器201(ポンプ202によって促進される)によって提供され、実質的に不活性の流動化剤は、実質的に不活性の流動化剤源203によって提供される。実施的に不活性の流動化剤及び蒸気(所望の比を提供するようにバルブによって制御される)は、導管204及び205のそれぞれを通り、ガス予熱器206に導入する前に混合される。ガス予熱器206は好ましくは、蒸気エッチングプロセスを促進するために、流動床反応炉208に導入する前に流動化剤の温度を増加する。
【0058】
ガス予熱器206における予熱後に、流動化剤は、導管207を介して、流動化剤導入ゾーンまたはプレナム210に送られる。流動化剤導入ゾーンまたはプレナム210内に導入される流動化剤が正圧であるため、流動化剤が、スクリーンまたは格子225の開口部を通過し、エッチングゾーン211に入る。流動化剤がエッチングゾーン211に入るにつれて、それが流動床212におけるカーボンブラック及び所望による触媒を流動化させる。加えて、流動化剤がエッチングゾーン211に入るにつれて、過剰の蒸気、ガス状副生成物、及びいくらかの量の引き込まれた微粒子が、蒸気エッチング装置208の上部から導管215を介して除かれ、ガス状副生成物からカーボンブラックの微粒子を分離するために、1以上の分離装置、例えばサイクロン、バグハウス、フィルター等を含む分離システム216に送られる。
【0059】
示すように、サンプリング装置214は、導管213を介して流動床212と流体連結状態にあり、その中に含まれるカーボンブラックを定期的にサンプリングして、所望の度合いの蒸気エッチングが達成されているかどうかを測定する。表面積の所望の増加が達成された後、得られた蒸気エッチングされたカーボンブラック、すなわち、カーボンブラック生成物は、流動化剤の流れを止め、流動床を純窒素または他の不活性ガスの流れ下で冷却させ、次いで、流動化剤導入ゾーン210を介して、及び流動化剤導入ゾーン210と流体連結状態にある生成物排出口224を介して、カーボンブラック生成物を除去することによって、蒸気エッチング装置から除かれる。
【0060】
図3A〜3Cは、エッチング時間の関数としての蒸気エッチングされたカーボンのXRDパターンを示す。示すように、カーボンの種類に関係なく、(002)におけるXRDピークは概して蒸気エッチングに敏感であった。その敏感さは、蒸気エッチングが進むにつれてピーク(002)のピーク強度が顕著に減少することによって反映される。対照的に、(10)のピーク強度は、蒸気エッチングプロセスによって最小限に影響された。(002)のピークは、カーボンの三次元秩序を反映し、一方で、(10)のピークは、層状面により関連する。理論に束縛はされないが、これらの結果は、
図4に示すように、長距離の格子配向秩序がエッチングの際に破壊されるか、または層状面がエッチングの進行につれてより無配向になることを示唆している。
【0061】
図5A及び5Bは、下記の例4による360分間、950℃における蒸気エッチングの前(
図5A)及び後(
図5B)のカーボンブラック(Vulcan XC72)についての空孔径分布を示す。示すように、親(蒸気エッチングされていない)カーボンブラックの最大空孔径は、約10〜約100nm程度であった。一次粒子が14nm程度であったため、これらの空孔は、主として、集合粒子間の空孔(例えば凝集体の間に形成された空孔)である。蒸気エッチングの際に、マイクロ−及びメソ−空孔は、粒子から炭素原子を除去することによって作り出された。50nmよりも大きい空孔画分もみられるが、蒸気エッチングによって作り出された空孔のほとんどは、約3〜約5nm程度の平均ポア径を有していた。この結果は、水銀ポロシメーターによって確認された。
【0062】
カーボンブラック生成物
様々なさらなる実施態様において、本発明は、カーボンブラック生成物を対象とし、好ましくは上述の方法のいずれかによって生成されるカーボンブラック生成物を対象とする。カーボンブラック生成物の様々な特性は、例えば、所望の用途、酸化条件、及び採用されるカーボンブラック出発材料の物理的特性に依存して変わるだろう。
【0063】
カーボンブラック生成物の平均ペレット径は、主にカーボンブラック出発材料のペレット径に依存するだろう。例えば、様々な例示的実施態様において、カーボンブラック生成物、例えばペレット化したカーボンブラック生成物は、約10μmより大きい、例えば、約50μmより大きい、約100μmより大きい、約200μmより大きい、約500μmより大きい、または約1mmより大きい平均ペレット径を有する。範囲に関しては、カーボンブラック生成物、例えばペレット化したカーボンブラック生成物は、約10μm〜約5mm、例えば、約100μm〜約5mm、または約200μm〜約2mmの平均ペレット径を有する。
【0064】
カーボンブラック出発材料は好ましくはカーボンブラック微粒子を実質的に含まないので、カーボンブラック生成物は同様に、好ましくはカーボンブラック微粒子を実質的に含まない。また、カーボンブラック微粒子は、流動床反応炉によって容易に保持されない。結果として、カーボンブラック生成物は概して、カーボンブラック出発材料よりもカーボンブラック微粒子の画分は小さいだろう。様々な所望による実施態様において、カーボンブラック生成物は、約5質量%未満のカーボンブラック微粒子、例えば約3質量%未満、または約1質量%未満のカーボンブラック微粒子を含む。
【0065】
カーボンブラック生成物の第2BET窒素表面積(N
2SA)は、主に採用する酸化条件及びカーボンブラック生成物の所望の用途に基づいて変わるだろう。様々な所望による実施態様において、第2BET窒素表面積は約600m
2/gより大きい、例えば、約900m
2/gより大きい、約1000m
2/gより大きい、約1200m
2/gより大きい、または約1500m
2/gより大きい。範囲に関して、第2BET窒素表面積は所望により約600m
2/g〜約1800m
2/g、例えば、約600m
2/g〜約900m
2/g、約900m
2/g〜約1200m
2/g、約1200m
2/g〜約1500m
2/g、または約1500m
2/g〜約1800m
2/gである。
【0066】
カーボンブラック生成物及びカーボンブラック出発材料の平均一次粒子径は概して互いに一致するはずだが、カーボンブラック生成物の平均一次粒子径(D
p)は、カーボンブラック出発材料の平均一次粒子径よりも若干大きくてもよい。いくつかの例示的な実施態様において、カーボンブラック生成物の平均一次粒子径は、カーボンブラック出発材料の平均一次粒子径よりも少なくとも約0.5nm大きい、例えば、少なくとも約1nm大きい、少なくとも約2nm大きい、少なくとも約3nm大きい、または少なくとも約4nm大きい。所望により、カーボンブラック生成物は、約100nm未満、例えば約75nm未満、約50nm未満、約30nm未満、約20nm未満、または約10nm未満の平均一次粒子径を有する。範囲に関しては、カーボンブラック生成物の平均一次粒子径は所望により約7nm〜約100nm、例えば、約5nm〜約15nm、約35nm〜約80nm、約10nm〜約50nm、約10nm〜約40nm、約10nm〜約30nm、または約10nm〜約20nmである。
【0067】
同様に、カーボンブラック生成物及びカーボンブラック出発材料の平均凝集体径は概して互いに一致するはずだが、カーボンブラック生成物の平均凝集体径(D
agg)は、カーボンブラック出発材料の平均凝集体径よりも若干大きくてもよい。いくつかの例示的な実施態様において、カーボンブラック生成物の平均凝集体径は、カーボンブラック出発材料の平均凝集体径よりも少なくとも約10nm大きい、例えば、少なくとも約20nm大きい、少なくとも約30nm大きい、少なくとも約40nm大きい、または少なくとも約50nm大きい。所望により、カーボンブラック生成物は、約500nm未満、例えば約400nm未満、約300nm未満、約200nm未満、または約100nm未満の平均凝集体径を有する。範囲に関しては、カーボンブラック生成物の平均凝集体径は所望により約30nm〜約500nm、例えば、約50nm〜約300nm、または約100nm〜約300nmである。
【0068】
カーボンブラック生成物は好ましくは、D
agg/D
p比によって特徴付けられるカーボンブラック出発材料に類似した構造を有する。いくつかの例示的な実施態様において、カーボンブラック生成物は、約10未満、例えば約7未満、約4未満、または約2未満であるD
agg/D
p比を有する。範囲に関して、D
agg/D
p比は所望により約1〜約7、例えば約1〜約5、約1〜約3、または約1〜約2である。
【0069】
上で示したように、本発明の酸化プロセスの際、マイクロ多孔性(すなわち、BET窒素表面積/STSA比)は最初に増加し得るが、最終的に減少するだろう。したがって、本発明のプロセスが進行するにつれて、BET窒素表面積/STSA比は、最終的に減少して1に近づくだろう。いくつかの好ましい実施態様において、カーボンブラック生成物は、約1.5未満、約1.4未満、約1.3未満、約1.2未満、約1.1未満、または約1.05未満であるBET窒素表面積/STSA比を有する。範囲に関しては、カーボンブラック生成物は所望により、約0.95〜約1.5、例えば、約0.95〜約1.4、約0.95〜約1.3、約0.95〜約1.2、約0.95〜約1.1、または約0.95〜約1.05のBET窒素表面積/STSA比を有する。
【0070】
マイクロ多孔性は好ましくは本発明の方法にしたがって減少するが、理想的には、本発明のカーボンブラック生成物は、かなりの割合のメソ多孔性を有する。いくつかの例示的な実施態様において、カーボンブラック生成物は、BJH窒素脱着によって測定される約0.3〜約2cm
3/g、例えば約0.5〜約1.5cm
3/g、約1.2〜約2.0cm
3/g、または約1〜約1.5cm
3/gで空孔径が約2〜約5nmの全空孔体積を有する。他の実施態様において、カーボンブラック生成物は、BJH窒素脱着によって測定される約1.0〜約5.0cm
3/g、例えば約2.0〜約4.0cm
3/g、約3.0〜約5.0cm
3/g、または約2.5〜約4.0cm
3/gで空孔径が約2〜約100nmの全空孔体積を有する。空孔径分布及び空孔体積を測定するBJH窒素脱着法は、参照によって本明細書にその全体が組み込まれるASTM4222−03及びASTM及びASTM4641−94に記載されており、本明細書に記載する空孔径の測定に使用した。
【0071】
いくつかの特に好適な実施態様において、本発明は、従来のガス化カーボンブラック製造方法によっては達成できない所定の組み合わせの物理的特性を含む(好ましくは本発明の方法によって形成される)カーボンブラックを対象とする。
【0072】
例えば、一実施態様において、本発明は、約600〜約900m
2/g(例えば約600〜約800m
2/g、または約700〜約800m
2/g)のBET窒素表面積、及び約0.95〜約1.1(例えば約0.95〜約1.05)のBET窒素表面積/STSA比を有する多孔質カーボンブラックを対象とする。
【0073】
他の実施態様において、本発明は、約900〜約1200m
2/g(例えば約900〜約1100m
2/g、または約1000〜約1100m
2/g)のBET窒素表面積、及び約0.95〜約1.1(例えば約0.95〜約1.05)のBET窒素表面積/STSA比を有する多孔質カーボンブラックを対象とする。
【0074】
他の実施態様において、本発明は、約1500〜約1800m
2/g(例えば約1500〜約1700m
2/g、または約1600〜約1700m
2/g)のBET窒素表面積、及び約0.95〜約1.1(例えば約0.95〜約1.05)のBET窒素表面積/STSA比を有する多孔質カーボンブラックを対象とする。
【0075】
他の実施態様において、本発明は、約35〜約80nmの平均一次粒子径、約600〜約1800m
2/g(例えば約800〜約1500m
2/g、または約800〜約1300m
2/g)のBET窒素表面積、及び約0.95〜約1.1(例えば約0.95〜約1.05)のBET窒素表面積/STSA比を有する多孔質カーボンブラックを対象とする。
【0076】
他の実施態様において、本発明は、約600〜約1800m
2/g(例えば約800〜約1500m
2/g、または約800〜約1300m
2/g)のBET窒素表面積、及び約1〜約7、例えば、約1〜約5、約1〜約3、または約1〜約2のD
agg/D
p比を有する多孔質カーボンブラックを対象とする。
【0077】
他の実施態様において、本発明は、約900〜約1400m
2/g(例えば約900〜約1200m
2/g、または約1000〜約1200m
2/g)のBET窒素表面積、及び約1〜約5(例えば、約1〜約3、または約1〜約2)のD
agg/D
p比を有する多孔質カーボンブラックを対象とする。
【0078】
カーボンブラック生成物の用途
本発明のカーボンブラック生成物は、多くの用途に用いられ得る。例えば、カーボンブラック生成物は、導電性プラスチック、インクジェットインク、触媒担体(例えば燃料電池触媒用)、燃料電池電極、及びスーパーキャパシタの形成に用いられ得る。したがって、本発明はまた、カーボンブラック生成物から形成される導電性プラスチック、インクジェットインク、触媒担体(例えば燃料電池触媒用)、及びスーパーキャパシタを対象とする。もちろん、これらの用途は非限定例であり、他の用途も可能である。
【0079】
第1用途において、カーボンブラック生成物は、導電性プラスチックの形成に用いられる。カーボンブラックは高い電気的導電性があり、それゆえにカーボンブラックのパーコレーションネットワーク(percolating network)を達成するのに十分な水準で、(通常は非導電性の)プラスチックに添加され、それによって電気的に導電性となったプラスチック部分またはフィルムが得られる。概して、カーボンブラックのより小さい投入質量(mass loading)にて電気的パーコレーションを達成することは、プラスチックに、粘度、破壊靱性、粘着性、密度、または他の特性などの他の利点を与えることができるという点において有利であり得る。空孔の大きさに特に重点を置かずに高OANカーボンの空孔率を増加することが目的である場合、高空孔率のカーボンが(小さい投入質量にてパーコレーションを達成する目的で)導電性用途に使用されている。例えば、参照によって本明細書にその全体が組み込まれるEP0175327B1には、導電性カーボンブラックの(多孔質)表面積を増加するためにファーネス反応炉内へ試料片(species)を注入することが記載されている。参照によって本明細書にその全体が組み込まれるEP1453898B1には、導電性ポリオレフィンに高度にエッチングされた(高表面積)カーボンブラックを使用すること及びその利点が記載されている。参照によって本明細書にその全体が組み込まれるUS特許第5,171,774号には、正の温度係数を有する抵抗を改良するために、結晶性ポリマー組成物に高度にエッチングされたカーボンブラックを使用することについて記載されている。
【0080】
他の実施態様において、カーボンブラック生成物は、インクジェットインクに組み込まれる。この態様において、インクは好ましくは液体ビヒクル(例えば分散剤)及びカーボンブラック生成物を含み、インクジェット印刷に好適となる表面張力及び粘度特性を有する。それらの高表面積及び比較的低密度に起因して、本発明のカーボンブラック生成物は、驚くべき予想外の高度の安定性を有するインクジェットインクの形成に特に良好に適している。より低い密度は、小さい沈降力をもたらすが、一方で、保存された全体の形態は、類似の流体抵抗(drag force)、及び同じ(または場合により改良された)光学濃度を保持する。したがって、本発明による酸化された、例えば蒸気エッチングされたカーボンブラックによって、光学濃度及び分散安定性の間のバランスの改良が可能となる。
【0081】
他の実施態様おいて、本発明は、本発明の上述のいずれかの方法によって生成されたカーボンブラック生成物を含み、且つ活性相のための支持相として機能するカーボンブラック生成物上に配置された活性相をさらに含む触媒粒子を対象とする。
【0082】
カーボンブラック支持相及びその上に配置された活性相を含む触媒粒子を形成するための多くの方法が知られている。好ましい実施態様において、触媒粒子は、スプレーコンバージョン反応炉(spray conversion reactor)にて形成される。この実施態様において、液体混合物は、カーボン担体粒子、すなわち上述のメソポーラスカーボンブラック生成物のいずれかと、活性層前駆体と、液体ビヒクルとを含んで形成される。液体混合物は、液体ビヒクルを蒸発させて、活性相前駆体をカーボン担体粒子上に配置された活性相に転換するのに効果的な条件下で高温にてスプレーされる。所望により、活性相は、白金、ルテニウム、白金及びルテニウム、または白金合金を含む。そのような方法は、例えば、参照によって本明細書にその全体が組み込まれる2006年1月10日に出願された米国特許出願第11/328,147号に記載されている。
【0083】
特に好適な実施態様において、本発明は、触媒粒子を形成する方法を対象とする。その方法は、(a)第1金属前駆体、液体ビヒクル、及び上述のカーボンブラック生成物のいずれか(例えばメソポーラスカーボンブラック)を含む支持体前駆体、を含む前駆体媒体を提供する工程、(b)前駆体媒体をスプレーコンバージョン、例えば乾燥して、液体ビヒクルの少なくとも一部を蒸発させて、中間体粒子を形成する工程、並びに所望により(c)カーボンブラック生成物上に配置された活性相を含む(好ましくは活性相ナノ粒子、例えば、約25nm未満、例えば約10nm未満、約8nm未満、約5nm未満、または約3nm未満の平均粒径を有する粒子を含む)触媒粒子を形成するのに効果的な温度(例えば約250〜約750℃)に中間体粒子を加熱する工程を含む。いくつかの金属前駆体、例えばいくつかの白金前駆体については、活性相は、スプレーコンバージョン工程で完全に形成されてもよく、その後の加熱工程(上述の工程(c))は不要である。例えば、多孔質カーボン、例えばメソポーラスカーボン上に合金活性相を形成することが望まれる場合、前駆体媒体は1以上のさらなる金属前駆体を含んでもよい。もちろん、他の実施態様において、カーボンブラック生成物上に触媒粒子を形成するために、周知の湿式沈降法を使用してもよい。参照によって本明細書にその全体が組み込まれる米国特許第5,068,161号を参照されたい。
【0084】
活性相は幅広く変わり得る。好ましい実施態様において、活性相は白金または任意の他の貴金属を含む。というのは、これらの材料が最も活性であり、燃料電池の腐食環境に最も良く耐えられるためである。他の実施態様において、活性相は1以上の合金、例えば貴金属合金を含む。いくつかの例示的な触媒合金が、例えば、参照によって本明細書にその全体が組み込まれる米国特許第4,186,110号(Pt−Ti、Pt−Al、Pt−Al−Si、Pl−Sr−Ti、Pt−Ce)、同第4,316,944号(Pt−Cr)、及び同第4,202,934号(Pt−V)に記載されている。
【0085】
さらに、いくつかの実施態様において、本発明は、上述の触媒粒子を含む電極、特に、直接メタノール型燃料電池(DMFC)または水素型燃料電池などの燃料電池用の電極、並びにそのような電極を形成する方法を対象とする。メソポーラスカーボンブラック粒子は、粒子の全体の表面積にわたって物質移動を可能とし、それによって白金または白金合金の触媒粒子の堆積、及び燃料電池の十分な動作のためのイオン及び試料片(species)の移動の両方を可能にするという点で、燃料電池用途に非常に望ましい。(例えば、参照によって本明細書にその全体が組み込まれる2007年6月1日に出願された、カーボン支持粒子上に配置されたPt/Ru合金触媒粒子について開示する米国特許出願第11/756,997号を参照されたい。)好ましい実施態様において、上述の触媒粒子は、炭素布、若しくはカーボン紙に堆積されるか、または膜(Nafion膜などのポリマー電解質膜(PEM))に直接堆積されるインクに構成される。堆積工程は、スプレー堆積によって達成され得る。別法では、本発明による触媒粒子の堆積は、例えば、ペン/シリンジ、連続的なインクジェットまたは要求に応じて液滴を落とすインクジェット、液滴堆積、スプレー、フレキソ印刷、リソグラフ印刷、グラビア印刷、他の凹版印刷等によって、行われ得る。例えば、参照によって本明細書にその全体が組み込まれる2003年4月16日に出願された、インクジェット印刷などの直接描画方法を用いてPEM’s上に触媒含有インクを印刷する方法を開示する米国特許出願公開第2004/0038808号を参照されたい。
【0086】
触媒粒子を含むインクからスプレー堆積法にて電極及び膜電極組立体を形成する方法は、参照によって本明細書にその全体が組み込まれる同時係属の2006年9月22日に出願された米国特許出願第11/534,561号(代理人整理番号第2006A019)、及び2007年2月27日に出願された同第11/679,758号(代理人整理番号第2007A001)に完全に開示されている。
【0087】
他の実施態様において、カーボンブラック生成物は、スーパーキャパシタとしても知られている電気二重層コンデンサ用の電極を形成するのに用いられる。スーパーキャパシタは、特定の空孔径を有する高表面積カーボン(例えばBlack Pearls(BP)2000)を利用する。本発明のこの態様において、カーボンブラック生成物は高表面積及び非定型の形態(例えば小さい出発OANまたはD
agg/D
p、例えばRegal250、Regal350等)を有し、それはスーパーキャパシタの性能を強化する。電極中のカーボンブラックの最終の充填かさ密度(bulk packed density)が従来のカーボンブラックよりも大きいことによってその新材料がより大きい体積容量を提供するため、その形態的相違点はスーパーキャパシタの性能を強化する。産業においては、現在、カーボンブラックに代えてまたは加えてエアロゲルまたは活性炭が使用される。というのは、主に、これらの材料を充填したときに達成され得る単位体積あたりのより大きな表面積のためである。例えば、参照によって本明細書にその全体が組み込まれる米国特許第7,160,615号には、活性炭と導電性強化剤としてカーボンブラックとを含む電気二重層コンデンサ用の電極を形成するための製造方法が記載されている。参照によって本明細書にその全体が組み込まれる米国特許第5,260,855号には、より高い特定の容量を有する電気二重層コンデンサの電極を形成するために、カーボン発泡体またはエアロゲルを使用することが記載されている。本発明によって、カーボンブラック単独の使用が、同程度のまたはより良い性能を達成することを可能にするだろう。
【0088】
これらの新しい炭素質材料の表面改質は、容量を向上するためのさらなる方法を提供し得る。これは、例えばジアゾニウム、酸化、熱処理、または他の技法を用いて、多孔質カーボンブラック粒子に官能基を付加することで達成され得る。表面改質法には、参照によって本明細書にその全体が組み込まれる米国特許第5,554,739号、同第5,707,432号、同第5,837,045号、同第5,851,280号、同第5,885,335号、同第5,895,522号、同第5,900,029号、同第5,922,118号、及び同第6,042,643号、並びにPCT国際公開WO99/23174に記載された方法が含まれる。そのような方法は、例えばポリマー及び/または界面活性剤を使用する分散剤型の方法に比べて、顔料または炭素質材料上に基のより安定な付加を提供する。酸化に関しては、炭素質材料はまた、表面上にイオン基及び/またはイオン化可能基を導入するために酸化剤によって酸化され得る。このようにして調製された炭素質材料は、表面により高い割合の酸素含有基を有することが分かった。酸化剤には、制限されるものではないが、酸素ガス、オゾン、NO
2(NO
2及び空気の混合物を含む)、過酸化水素などの過酸化物、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、または過硫酸アンモニウムを含む過硫酸塩、次亜塩素酸ナトリウムなどの次亜ハロゲン酸塩(hypohalite)、亜ハロゲン酸塩(halite)、ハロゲン酸塩(halate)、または過ハロゲン酸塩(perhalate)(亜塩素酸ナトリウム、塩素酸ナトリウム、または過塩素酸ナトリウムなど)、硝酸などの酸化剤、及び過マンガン酸塩、四酸化オスミウム、酸化クロム、または硝酸セリウムアンモニウムなどの遷移金属含有酸化剤が含まれる。オキシダントの混合物も用いることができ、特に酸素及びオゾンのようなガス状酸化剤の混合物を用いることができる。さらに、塩素化及びスルホニル化などの、炭素質材料の表面にイオン基またはイオン化可能基を導入するための他の表面改質方法を用いて調製された炭素質材料も用いることができる。
【0089】
理論に束縛されるつもりはないが、表面改質方法の1つによって親水性官能基が付加される場合、空孔内の固体粒子と液体電解質との間の二重層界面における電荷分離が増加し、そえゆえにエネルギー貯蔵容量を増加することができる。さらに、親水基の付加が、空孔の濡れを改良し、電解質が完全に多孔質構造を濡らして多孔質カーボンブラックの全体にわたって伝導路を形成することに役立つことができる。熱処理は、経時にわたって容量の低下を発生し得る特定の官能基の除去に用いられ得る。
【実施例】
【0090】
本発明は、次の限定しない例を考慮してより良く理解されるだろう。
【0091】
6種のカーボンブラック出発材料(4種の異なる市販のカーボンブラックから選択した)を、
図2について上述したものと実質的に類似のパイロット規模の流動床反応システムで蒸気エッチングした。それぞれのカーボンブラック出発材料の理想流動化速度(ideal fluidization velocity)を、ベンチ規模の流動化装置で室温にて空気を用いて評価した。それぞれのカーボンブラック出発材料の最初の投入(charge)を、底部プレート(bottom plate)の上に配置するように流動床に入れた。次いで、流動床は密閉され、窒素流をカーボンブラックに通した。窒素流は、底部プレナムに入り、底部プレートを通過し、次いでカーボンブラックを通過し、次いで最後に流動床反応炉の上部から排出された。電気ヒーターを作動させて、流動床の温度を以下の表1に示す設定温度に高めた。次いで、窒素流を止め、理想流動化速度におおよそ等しい表面速度を有する酸化剤流(6つの例の全てにおいて純粋蒸気)を流して、連続運転を開始した。試料を、封管を用いて流動床から定期的に引き抜いて、カーボンブラックエッチングの進捗を監視するために測定した。表1に示す運転時間の最後にて、電気ヒーターとともに酸化剤流を止めて、流動床が室温まで低下する間、窒素を再び、流動床に通過させた。次いで、最終の流動床生成物を流動床反応炉の底部から集めた。全ての運転において、いくらかのカーボンブラックが微粒子収集システムに失われたが、これは、反応炉の上部から排出される流動化ガスに取り込まれた。
【0092】
【表1】
※例6は、乏しい流動化を提供した底部プレートを用いて実施され、より遅い反応時間をもたらした。
【0093】
表1に記載する動作パラメータを用いて、表2に示した材料特性を有する蒸気エッチングされたカーボンブラック生成物を生成した。平均一次粒子直径及び平均凝集体直径(TEMによって測定)は、エッチングプロセスの際にほぼ同じ値を保持したか、あるいは若干増加した。
【0094】
【表2】
【0095】
表3は、流動床におけるガス状酸化エッチング以外の方法によって生成された比較例のカーボンブラックを示す。
【0096】
【表3】
【0097】
表1で示したように、蒸気:カーボン比(kg蒸気/(kgカーボン/hr)の単位を有する)を調節して、エッチングレートを制御することができる。流動化速度が、カーボンブラックの材料特性によって大体決まることを考慮すると、カーボンに対する蒸気の比は、酸化剤ガス中の不活性ガス(概して窒素)に対する蒸気の比を変えることによって、または流動床への最初のカーボンブラックの投入量を変えることによって、実際に調整され得る。概算であるが、一定のカーボンに対する蒸気の比において、表面積の相対的増加によって測定されるエッチング反応は、異なるカーボンブラックについておおよそ類似するレートにて進むことが分かった。これは、
図6のプロットによって示される。実際に、流動床反応炉は、所望のエッチング反応レートを達成するように流動床温度及び蒸気:カーボン比を選択すること、及び次いで表面積または他の試験によって測定される所望のエッチングレベルを達成するように一定時間の間、反応炉を運転することによって制御される。(例えば、臨界流動化速度未満で運転することによって、またはガスをうまく分配しない不良な流動化プレートを用いることによって)例6のように流動床における流動化が乏しい場合、エッチング速度が顕著に低下することがみられた(
図6を参照)。これは、効率的なガス−固体接触を伴って流動床にて酸化エッチングを行うことの重要性のさらなる証明となる。
【0098】
例は、流動床反応炉にて蒸気及び蒸気/窒素混合物でカーボンブラック出発材料をエッチングすることが、顕著な割合のメソ多孔性を有するカーボンブラック生成物を生成することができることをさらに示す。
図7は、本方法によって作られたカーボンブラック生成物(例1〜5)についての窒素脱着等温線によって測定される空孔径分布を示す。
図7に示す全てのカーボンブラック生成物は、800〜1700m
2/gの窒素表面積を有する。エッチング時間及び流動床条件は上記の例によって変えた。全ての蒸気でエッチングした例について、直径が3〜5nmの空孔径分布の特性ピークがあるように見えるが、これは、例C1として
図7に示したガス化プロセスによって作られた材料(例えばKetjen EC600)に類似する。蒸気エッチングされたカーボンブラックBP700及びBP800(例2及び3)は、それぞれ、凝集体間の空孔率に起因する可能性がある10nm及び30nm付近で顕著な第2ピークを示す。例は、D
agg/D
pによって特徴付けられるより小さい凝集体径及びより低構造(lower structure)を有する高度のメソポーラスなこれまで未知のカーボンブラックを生成する新規な方法を示す。また、いくつかの例(例えば例2、3、及び4)で達成された(2〜5nmの空孔体積によって特徴付けられる)メソ多孔性のレベルは、Ketjen EC600(例C1)のものよりも高い。
【0099】
図7に含まれる蒸気エッチングされたカーボンブラックとは違って、Black Pearls 2000(例C3)などの高度にエッチング(エッチングはファーネスリアクター内でその場で行われる)されたカーボンブラックは、2〜5nmの範囲で大きなピークを示さない。というのは、空孔率は、主にマイクロ空孔(1.5〜2.5のBET窒素表面積/STSA比を有する)であるからである。対照的に、本発明によって作られた高度のメソポーラスカーボンブラック生成物は、2〜5nmの範囲でピークを有し、概して、約1のBET窒素表面積/STSA比を有した。流動床における蒸気エッチングの際に発生するBET窒素表面積/STSA比の変化を監視することによって、反応時間を制御してメソポーラスカーボンブラックが生成することを確実にすることができる。これは
図8に示され、本発明の酸化プロセスの際にどのようにVulcan XC72の空孔構造が変化するかを示したものである。最初は、BET窒素表面積/STSA比が約1.5でありBET窒素表面積が約225m
2/gであるので、Vulcan XC72はマイクロ空孔を含む。材料が流動床反応炉でエッチングされるにつれて、BET窒素表面積は連続的に増加する。しかしながら、さらなるマイクロ多孔性が作られるのでBET窒素表面積/STSA比は最初に増加するが、次いで、空孔が大きくなり、マイクロポーラス構造が破壊されるにつれて、BET窒素表面積/STSA比は減少し始め、1に近づく。これは、
図8の例1、4、及び6が、粒子内のメソ多孔性と関連する空孔径分布において3〜5nmのピークを示すのに対して、
図8の試料A及びBが3〜5nmの空孔径範囲のピークを有さないという事実によって証拠立てられる。それゆえに、適切な全表面積、空孔体積、及び空孔径を、温度、蒸気:カーボン比、及び流動床における時間を制御することによって制御することができる。
【0100】
前述の例は、単に説明の目的のために提供したものであり、本発明を限定するものとしては全く解釈するべきではない。本発明を、様々な例示的実施態様を参照しながら記載したが、用いた記載は、例証及び説明のための記載であり、限定するための記載ではない。変化は、その態様において本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、現在示している、及び補正した、添付の請求項の範囲で可能である。本発明を、特定の手段、材料、及び実施態様を参照して本明細書に記載したが、本発明は、本明細書に開示した特定のものに限定する意図はない。代わりに、本発明は、添付の特許請求の範囲内にあるような、全ての機能的に等しい構造、方法、及び使用に拡張される。
前述の例は、単に説明の目的のために提供したものであり、本発明を限定するものとしては全く解釈するべきではない。本発明を、様々な例示的実施態様を参照しながら記載したが、用いた記載は、例証及び説明のための記載であり、限定するための記載ではない。変化は、その態様において本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、現在示している、及び補正した、添付の請求項の範囲で可能である。本発明を、特定の手段、材料、及び実施態様を参照して本明細書に記載したが、本発明は、本明細書に開示した特定のものに限定する意図はない。代わりに、本発明は、添付の特許請求の範囲内にあるような、全ての機能的に等しい構造、方法、及び使用に拡張される。