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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-7187(P2015-7187A)
(43)【公開日】2015年1月15日
(54)【発明の名称】酸素系漂白剤
(51)【国際特許分類】
   C11D 3/395 20060101AFI20141212BHJP
   C11D 3/39 20060101ALI20141212BHJP
   C11D 3/32 20060101ALI20141212BHJP
   C11D 3/26 20060101ALI20141212BHJP
【FI】
   C11D3/395
   C11D3/39
   C11D3/32
   C11D3/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-132908(P2013-132908)
(22)【出願日】2013年6月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000190736
【氏名又は名称】株式会社ニイタカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野口 博章
(72)【発明者】
【氏名】的場 貴士
【テーマコード(参考)】
4H003
【Fターム(参考)】
4H003AB19
4H003AB27
4H003AC08
4H003BA09
4H003DA01
4H003EA12
4H003EA15
4H003EA16
4H003EB08
4H003EB12
4H003EB16
4H003EB18
4H003EB30
4H003EE05
4H003FA16
4H003FA42
4H003FA48
(57)【要約】
【課題】有効酸素濃度が高いにも関わらず、可燃物と混触した状態で燃焼物が接触した場合においても燃焼が発生しにくい酸素系漂白剤を提供すること。
【解決手段】
過炭酸ナトリウムと、界面活性剤と、燃焼抑制剤とを含む酸素系漂白剤であって、上記酸素系漂白剤の有効酸素濃度は、8.0〜13.0%であり、上記燃焼抑制剤には、分子中に−NH−C(=O)−NH−、又は、−NH−C(=NH)−NH−で表される基を少なくとも一つ有する化合物が含まれることを特徴とする酸素系漂白剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
過炭酸ナトリウムと、界面活性剤と、燃焼抑制剤とを含む酸素系漂白剤であって、
前記酸素系漂白剤の有効酸素濃度は、8.0〜13.0%であり、
前記燃焼抑制剤には、分子中に−NH−C(=O)−NH−、又は、−NH−C(=NH)−NH−で表される基を少なくとも一つ有する化合物が含まれることを特徴とする酸素系漂白剤。
【請求項2】
前記燃焼抑制剤の平均粒子径は0.5〜3.0mmである請求項1に記載の酸素系漂白剤。
【請求項3】
前記過炭酸ナトリウムと前記燃焼抑制剤との重量比は、100:0.5〜100:20である請求項1又は2に記載の酸素系漂白剤。
【請求項4】
前記過炭酸ナトリウムの平均粒子径は、0.1〜2.0mmである請求項1〜3のいずれかに記載の酸素系漂白剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素系漂白剤に関する。
【背景技術】
【0002】
漂白剤は通常の洗剤では落としきれない汚れを落とすのに非常に有効である。漂白剤は、塩素系漂白剤と酸素系漂白剤とに大別することができる。塩素系漂白剤は、強い漂白力を有するが、安定性やにおいに問題があり、また、その強い漂白力のために使用には注意を払う必要がある。一方、酸素系漂白剤は、漂白力こそ塩素系漂白剤に劣るものの、比較的安定であるので扱いやすいという利点がある。また、酸素系漂白剤の漂白力(漂白洗浄力)を向上させるために、種々の成分を配合することが試みられている。例えば、特許文献1〜4には、酸素系漂白剤に界面活性剤を加えた漂白剤組成物が提案されている。
酸素系漂白剤としては、過炭酸ナトリウムや過硼酸ナトリウムなどが知られており、中でも過炭酸ナトリウムは、低温における溶解速度が大きく、有効酸素濃度が充分に高いことから、粉末状の漂白剤組成物の配合成分として需要が増大しつつある。
しかしながら、過炭酸ナトリウムは酸化性物質である。従って、可燃物と混触した場合に、可燃物の種類によっては発火燃焼しやすくなる場合がある。
また、過炭酸ナトリウムは、漂白剤組成物中の水分又は空気中の水分等により常温であっても分解されることがある。また、漂白剤組成物に含まれるゼオライト又は酵素等と接触することにより分解されることがある。過炭酸ナトリウムが分解されると、炭酸ナトリウムと過酸化水素が生じる。さらに過酸化水素は水と酸素に分解される。過炭酸ナトリウムは、可燃物ではなく単独で安定な物質であるが、可燃物が近くで発火すると、過炭酸ナトリウムから生じる酸素の支燃作用により激しく燃焼する等の危険性がある。
【0003】
過炭酸ナトリウムと可燃物とが混触した際の危険性を低減させる一つの方法として、不燃性の希釈剤を配合し、有効酸素濃度を下げることが考えられる。しかし、単に希釈剤の配合のみによる方法では、多量の希釈剤の配合が必要となるので、有効酸素濃度が漂白をするのに充分な数値以下になり、過炭酸ナトリウムの効果が大幅に低減するという欠点がある。この問題を解決する方法として、特許文献5には塩化ナトリウム又は硫酸ナトリウムを配合する方法が提案されているが、この方法では、燃焼抑制効果が弱いため、実質的に上記問題を解決できていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−35986号公報
【特許文献2】特開2004−2734号公報
【特許文献3】特開2005−187743号公報
【特許文献4】特開2011−26456号公報
【特許文献5】特開昭60−11210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、これらの問題を解決するためになされたものであり、有効酸素濃度が高いにも関わらず、可燃物と混触した状態で燃焼物が接触した場合においても燃焼が発生しにくい酸素系漂白剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、分子中に−NH−C(=O)−NH−、又は、−NH−C(=NH)−NH−で表される基を少なくとも一つ有する化合物を、過炭酸ナトリウム及び界面活性剤が含まれる酸素系漂白剤に混合することにより、有効酸素濃度が高いにも関わらず、可燃物と混触した場合においても燃焼が発生しにくい酸素系漂白剤とすることができることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明の酸素系漂白剤は、過炭酸ナトリウムと、界面活性剤と、燃焼抑制剤とを含む酸素系漂白剤であって、上記酸素系漂白剤の有効酸素濃度は、8.0〜13.0%であり、上記燃焼抑制剤には、分子中に−NH−C(=O)−NH−、又は、−NH−C(=NH)−NH−で表される基を少なくとも一つ有する化合物が含まれることを特徴とする。
【0008】
本発明において、燃焼抑制剤とは、過炭酸ナトリウムに混合されていることにより、可燃物と過炭酸ナトリウムとが混触した状態で燃焼物が接触した場合においても燃焼抑制効果を発揮するものである。
本発明の酸素系漂白剤に含まれる燃焼抑制剤は、以下の作用により燃焼抑制効果をもたらしていると考えられる。
【0009】
ある種類の可燃物と過炭酸ナトリウムが混触した状態で燃焼物が接触すると、過炭酸ナトリウムから生じる酸素の支燃効果により、可燃物は激しく燃焼することになる。上記過程において、この系に−NH−C(=O)−NH−、又は、−NH−C(=NH)−NH−で表される基を少なくとも一つ有する化合物が含まれていると、分子中の−NH−C(=O)−NH−、又は、−NH−C(=NH)−NH−で表される基が分解され、CO、HO及びNHを含む気体が発生すると考えられる。そのため、可燃物が燃焼することを抑制することができると考えられる。
【0010】
本発明の酸素系漂白剤の有効酸素濃度は、8.0〜13.0%である。そのため、本発明の酸素系漂白剤は、充分な漂白力を有する。
【0011】
また、一般に酸素系漂白剤の有効酸素濃度が高くなると過炭酸ナトリウムと可燃物とが混触した状態で燃焼物が接触した際、過炭酸ナトリウムの分解により生ずる酸素の支燃作用により激しく燃焼する危険性が増大するが、本発明の酸素系漂白剤には、燃焼抑制剤が含まれているのでこのような危険性が低下している。
【0012】
本発明の酸素系漂白剤は、界面活性剤を含んでいるので、漂白する対象物と汚れとを解離させやすくなる。そのため、本発明の酸素系漂白剤は、界面活性剤を含まない酸素系漂白剤と比較して、その漂白力及び洗浄力が向上している。
【0013】
本発明の酸素系漂白剤では、上記燃焼抑制剤の平均粒子径は0.5〜3.0mmであることが望ましい。
分子中の−NH−C(=O)−NH−、又は、−NH−C(=NH)−NH−で表される基は、アルカリ成分や空気と接触することにより徐々に分解されNHを含む気体が生じる。NHは刺激臭を有するので、NHの発生は低減されることが望ましい。
燃焼抑制剤の平均粒子径が0.5mm未満であると、単位重量当たりの表面積が大きくなるので、アルカリ成分や空気と接触する燃焼抑制剤の部分が大きくなる。そのため、燃焼抑制剤が分解されNHが発生しやすくなる。また、燃焼抑制剤が分解されると、燃焼抑制剤としての効果が低減する。
燃焼抑制剤の平均粒子径が3.0mmを超えると、単位重量当たりの表面積が小さくなるので、アルカリ成分や空気と接触する燃焼抑制剤の部分が小さくなる。そのため、可燃物と過炭酸ナトリウムが混触した状態で燃焼物が接触した場合であっても熱を受ける部分が小さいため燃焼抑制剤の分解速度が遅くなる。その結果、CO、HO及びNHを含む気体が充分に発生しにくくなるので、燃焼抑制効果が発揮されにくくなる。
【0014】
本発明の酸素系漂白剤では、上記過炭酸ナトリウムと上記燃焼抑制剤との重量比は、100:0.5〜100:20であることが望ましい。
燃焼抑制剤の重量が、過炭酸ナトリウムと燃焼抑制剤との重量比において100:0.5未満であると、燃焼抑制剤の量が少なすぎるので、燃焼抑制効果が発揮されにくくなる。
燃焼抑制剤の重量が、過炭酸ナトリウムと燃焼抑制剤との重量比において100:20を超えると、燃焼抑制剤の量が多くなるので、酸素系漂白剤の有効酸素濃度が低くなる。そのため、充分な有効酸素濃度が得られにくくなる。
【0015】
本発明の酸素系漂白剤では、上記過炭酸ナトリウムの平均粒子径は、0.1〜2.0mmであることが望ましい。
過炭酸ナトリウムの平均粒子径が0.1mm未満であると、常温の空気中で過炭酸ナトリウムが分解されやすくなるので、保存に適していない。
過炭酸ナトリウムの平均粒子径が2.0mmを超えると、酸素系漂白剤を用いる際に過炭酸ナトリウムが水に溶けにくくなるので、酸素系漂白剤の成分として適していない。
【発明の効果】
【0016】
本発明の酸素系漂白剤は高い有効酸素濃度を有し、かつ、本発明の酸素系漂白剤と可燃物とが混触した状態で燃焼物が接触した場合であっても燃焼が抑制される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の酸素系漂白剤について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0018】
本発明の酸素系漂白剤は、過炭酸ナトリウムと、界面活性剤と、燃焼抑制剤とを含む酸素系漂白剤であって、上記酸素系漂白剤の有効酸素濃度は、8.0〜13.0%であり、上記燃焼抑制剤には、分子中に−NH−C(=O)−NH−、又は、−NH−C(=NH)−NH−で表される基を少なくとも一つ有する化合物が含まれることを特徴とする。
【0019】
本発明の酸素系漂白剤では、有効酸素濃度が8.0〜13.0%であれば、特に限定されないが、9.0〜12.5%であることがより望ましく、11.0〜12.5%であることがさらに望ましい。
【0020】
本発明の酸素系漂白剤において、上記分子中に−NH−C(=O)−NH−で表される基を少なくとも一つ有する化合物としては、特に限定されないが、尿素、セミカルバジド、塩酸セミカルバジド、硫酸セミカルバジド、リン酸セミカルバジド、ウラシル、5−アミノウラシル、5−ニトロウラシル、5−メルカプトウラシル、N−メチル尿素、1,1−ジメチル尿素、1,3−ジメチル尿素、ヒダントイン、5,5−ジメチルヒダントイン、パラバン酸、バルビツル酸、チミン、アロキサン、2−イミダゾリジノン、キサンチン、ビウレット、ウラゾール、尿酸、イソシアヌル酸、プルプル酸、ムレキシド、及び、アラントイン等が例示できる。これらの化合物の中では、尿素が望ましい。
【0021】
本発明の酸素系漂白剤において、上記分子中に−NH−C(=NH)−NH−で表される基を少なくとも一つ有する化合物としては、特に限定されないが、ジシアンジアミド、塩酸グアニジン、硝酸グアニジン、リン酸グアニジン、炭酸グアニジン、スルファミン酸グアニジン、塩酸アミノグアニジン、リン酸アミノグアニジン、重炭酸アミノグアニジン、スルファミン酸アミノグアニジン、及び、グアニルチオ尿素等が例示できる。これらの化合物の中では、塩酸グアニジンが望ましい。
【0022】
本発明の酸素系漂白剤において、上記分子中に−NH−C(=O)−NH−、及び、−NH−C(=NH)−NH−で表される基を両方有する化合物としては、特に限定されないが、リン酸グアニル尿素、硫酸グアニル尿素、硝酸グアニル尿素、アンメリド及びアンメリン等が例示できる。
【0023】
燃焼抑制剤の平均粒子径は、特に限定されないが、0.5〜3.0mmであることが望ましく、1.0〜2.0mmであることがより望ましい。
本明細書において、「平均粒子径」は、以下のように定める。
まず、光学顕微鏡を用いて少なくとも10個以上の粒子が視野に完全に入るような倍率(例えば20〜30倍)で画像を撮影する。
次に、粒子の最長部分の長さを「粒子の粒子径」として、画像内の全ての粒子について、「粒子の粒子径」を計測する。
得られた各粒子の粒子径の相加平均を「平均粒子径」とする。
【0024】
また、燃焼抑制剤の粒子径は、特に限定されないが、0.4〜4.0mmであることが望ましく、1.0〜2.0mmであることがより望ましい。
本明細書において、粒子の「粒子径」は、以下のように定める。まず、粒子を目開きの小さい篩(例えば0.5mm)にかける。そして、篩上に残った粒子を目開きの大きい篩(例えば5.0mm)にかける。そして、篩を通過した粒子について、その粒子径を「0.5〜5.0mm」という幅を持って表記する。
【0025】
本発明の酸素系漂白剤において、上記過炭酸ナトリウムと上記燃焼抑制剤との重量比は、特に限定されないが、100:0.5〜100:20であることが望ましく、100:1〜100:10であることがより望ましい。
【0026】
本発明の酸素系漂白剤において、上記過炭酸ナトリウムの形状は、特に限定されないが、平均粒子径が0.1〜2.0mmの顆粒状であることが望ましく、平均粒子径が0.2〜1.0mmの顆粒状であることがより望ましい。
過炭酸ナトリウムが顆粒状であると、粉末状ではないので流動性に優れる。
過炭酸ナトリウムの平均粒子径が0.1mm未満であると、常温の空気中で過炭酸ナトリウムが分解されやすくなるので、保存に適していない。
過炭酸ナトリウムの平均粒子径が2.0mmを超えると、酸素系漂白剤を用いる際に過炭酸ナトリウムが水に溶けにくくなるので、酸素系漂白剤の成分として適していない。
また、過炭酸ナトリウムが、上記形状及び平均粒子径を有していると、後述する界面活性剤を吸着しやすくなる。
【0027】
また、本発明の酸素系漂白剤において、過炭酸ナトリウムの粒子径は、特に限定されないが、0.05〜4.0mmであることが望ましく、0.5〜2.0mmであることがより望ましい。
【0028】
本発明の酵素系漂白剤において、上記界面活性剤は特に限定されないが、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸及び/又はその塩、アルキルヒドロキシエーテルカルボン酸及び/又はその塩、アルキルベンゼンスルホン酸及び/又はその塩(分岐アルキルベンゼンスルホン酸及び/又はその塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及び/又はその塩(LAS))、アルカンスルホン酸及び/又はその塩、α−オレフィンスルホン酸及び/又はその塩、芳香族スルホン酸及び/その塩、ジアルキルスルホこはく酸エステル及び/又はその塩、高級アルコール硫酸エステル及び/又はその塩、高級アルコールエチレンオキシド付加物硫酸エステル及び/又はその塩、脂肪酸塩等の陰イオン界面活性剤が挙げられる。
具体的には、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム(アルキル鎖長C10−16)、キシレンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸エステルナトリウム、オクチル酸塩、ヤシ油脂肪酸塩等が挙げられる。
また、アルキルアミン及び/又はその塩、第四級アンモニウム塩等の陽イオン界面活性剤が挙げられる。
また、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、アルキルアミンオキシド、アルキルジメチルアミンオキシド、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、アルキルアルカノールアミド、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルのエチレンオキシド付加物、ソルビタン脂肪酸エステルのアルキレンオキシド付加物等の非イオン界面活性剤が挙げられる。
具体的には、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレン分岐デシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ラウリルジメチルアミンオキシド等が挙げられる。
さらに、アミノ酸型両性界面活性剤、ベタイン型界面活性剤等の両性界面活性剤が挙げられる。
具体的には、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸ジメチルベタイン等が挙げられる。
これらの中では、非イオン界面活性剤が望ましく、ポリオキシアルキレン基を有する非イオン界面活性剤であることがより望ましい。
【0029】
本発明の酸素系漂白剤において、界面活性剤は、上記顆粒状の過炭酸ナトリウムに吸着されていることが望ましい。この場合、界面活性剤と過炭酸ナトリウムとを一体として扱うことができるので、取扱いに便利である。
【0030】
本発明の酸素系漂白剤では、過炭酸ナトリウムと界面活性剤との重量比は、特に限定されないが、100:0.5〜100:10であることが望ましい。
界面活性剤の重量が、過炭酸ナトリウムと界面活性剤との重量比において100:0.5未満であると、界面活性剤の量が少なすぎて洗浄力が低くなる。
界面活性剤の重量が、過炭酸ナトリウムと界面活性剤との重量比において100:10を超えると、界面活性剤が液体状である場合、顆粒状の過炭酸ナトリウムからしみ出して顆粒状の過炭酸ナトリウム同士を接着してしまい、酸素系漂白剤の流動性が低減することがある。
【0031】
本発明の酸素系漂白剤には、アルカリ剤、キレート剤、酵素、pH調整剤、香料、色素、ケーキング防止剤、消泡剤、増量剤、又は、漂白活性化剤等(以下、「その他の成分」という)の通常の酸素系漂白剤に含まれる成分が含まれていても良い。
【0032】
アルカリ剤としては、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属のケイ酸塩、アルカリ土類金属のケイ酸塩、アルカリ金属のリン酸塩、アルカリ土類金属のリン酸塩、アルカリ金属の水酸化物、及び、アルカリ土類金属の水酸化物からなる群から選択される少なくとも一種であることが望ましい。
【0033】
炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、及び、炭酸カルシウム等が挙げられる。ケイ酸塩としては、オルトケイ酸ナトリウム、オルトケイ酸カリウム、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム、及び、ケイ酸カルシウム等が挙げられる。リン酸塩としては、トリポリリン酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ポリリン酸カリウム、及び、リン酸カルシウム等が挙げられる。水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び、水酸化カルシウム等が挙げられる。
【0034】
本発明の酸素系漂白剤に含まれるキレート剤としては、特に限定されないが、アミノカルボン酸系、ヒドロキシカルボン酸系、リン酸系、ポリアクリル酸及びその塩、アクリル酸・マレイン酸共重合体類、エーテルカルボン酸塩、並びに、低分子量の有機酸塩等のものから選択される1又は2以上のものを使用することができる。
アミノカルボン酸系としては、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、ジカルボキシメチルグルタミックアシッド(GLDA)、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIDA)、ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)、1,3−プロパンジアミン四酢酸(PDTA)、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン六酢酸(DPTA−OH)あるいはこれらの塩等が挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸系としては、リンゴ酸、コハク酸、クエン酸、乳酸、酒石酸あるいはこれらの塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等)が挙げられる。
リン酸系としては、ヒドリキシエチリデンジホスホン酸(HEDP)、ニトリロトリメチレンホスホン酸(NTMP)、ホスホノブタントリカルボン酸(PBTC)、ヘキサメタリン酸塩等が挙げられる。
低分子量の有機酸塩とは、分子量が1000以下のものをいう。このような分子量を有する有機酸塩としては、リンゴ酸、コハク酸、クエン酸、乳酸、酒石酸あるいはこれらの塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等)が挙げられ、具体的には、クエン酸ナトリウム、クエン酸カルシウム等のクエン酸塩、リンゴ酸ナトリウム、リンゴ酸カルシウム等のリンゴ酸塩、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カルシウム等のグルコン酸塩等が挙げられる。
これらの中では、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等のアミノカルボン酸系が望ましい。
【0035】
本発明の酸素系漂白剤には、酵素が含まれていてもよい。
酵素としては、酵素の反応性から分類すると、ハイドロラーゼ類、オキシドレダクターゼ類、リアーゼ類、トランスフェラーゼ類及びイソメラーゼ類が挙げられ、具体的には、プロテアーゼ、エステラーゼ、リパーゼ、ヌクレアーゼ、セルラーゼ、アミラーゼ及びペクチナーゼ等が例示できる。これらの酵素は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
これらの酵素が含まれていると、酵素の機能により洗浄力が向上する。
【0036】
本発明の酸素系漂白剤は、従来の酸素系漂白剤を用いる方法と同様の方法で用いることができる。
【実施例】
【0037】
以下に本発明をより具体的に説明する実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0038】
(実施例1)
過炭酸ナトリウム(粒子径:0.5〜2.0mm)を80.0重量部はかりとり、混合機(ナウタミキサ、ホソカワミクロン株式会社製)に投入した。
界面活性剤として、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.0重量部はかりとり、混合機に投入した。
約3分間混合することにより、過炭酸ナトリウムの表面に直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムを吸着させた。
次に、燃焼抑制剤として尿素(粒子径:1.0〜2.0mm)を4.0重量部と、キレート剤としてエチレンジアミン四酢酸ナトリウムを2.0重量部と、その他の成分として硫酸ナトリウムを12.0重量部とをはかりとり、混合機に投入した。
約13分間混合し、酸素系漂白剤を作製した。
【0039】
(燃焼試験)
危険物の試験及び性状に関する省令(平成元年二月十七日自治省令第一号)の平成一三年一〇月一一日総務省令第一三六号による改定省令における別表第一(第一条関係)の「第一 過塩素酸カリウムを標準物質とする燃焼試験」及び「第二 臭素酸カリウムを標準物質とする燃焼試験」の手順に従い、燃焼試験を行い、実施例1に係る酸素系漂白剤の燃焼の危険性を評価した。
燃焼試験では、酸素系漂白剤と木粉を重量で1:1及び4:1の比率で混合した2種類の混合物を作成し、この混合物を上記手順に従い燃焼時間を測定した。結果を下記表1に示す。なお、燃焼試験において、点火源を混合物に接触させて10秒以内に着火発炎しない場合には、燃焼時間の判定において「不燃」とした。このように判定された場合には、下記表1において「不燃」と記載した。
また、標準物質として過塩素酸カリウム(標準物質1)(和光純薬工業社製試薬特級)、又は、臭素酸カリウム(標準物質2)(和光純薬工業社製試薬1級)を木粉と重量で1:1の比率で混合した混合物を上記手順に従い燃焼時間を測定した。結果を下記表1に示す。
なお、このようにして測定した重量比が1:1又は4:1である酸素系漂白剤と木粉との混合物の燃焼時間のうちいずれか短い方(以下、特に断りがない限り「酸素系漂白剤と木粉との混合物の燃焼時間」という)が、過塩素酸カリウムと木粉との混合物の燃焼時間より長いもの(燃焼時間の判定において、「不燃」としたものを含む)を、燃焼の危険性が低いと評価した。
【0040】
(漂白力の評価)
以下の方法により、実施例1に係る酸素系漂白剤の漂白力を評価した。
(1)色素汚れの沈着したメラミン食器の準備
水6Lに紅茶パック(日東紅茶 DAY&DAY TEA BAG)を40個入れ沸騰するまで加熱し、沸騰後は加熱をやめ紅茶溶液を調製した。
次に、長期間使用して表面が荒れているメラミン食器(三信化工社製:MS−543 LNA 角仕切皿)を紅茶溶液に入れ、24時間浸漬して紅茶色素汚れを沈着させた。
(2)色素汚れの漂白
500mLビーカーに水400gを入れ、ウォーターバスで70℃に加温し、濃度が0.4重量%となるように実施例1に係る酸素系漂白剤を入れ溶解させ、酸素系漂白剤水溶液を調製した。
その後、上記酸素系漂白剤水溶液中に、上記の紅茶色素汚れの沈着したメラミン食器を20分間浸漬させ紅茶色素汚れを漂白した。
(3)漂白力の評価
漂白後のメラミン食器の色を目視し、下記の評価基準により評価した。結果を以下の表1に示す。
◎:紅茶色素が80%程度落ちている。
○:紅茶色素が60%程度落ちている。
×:紅茶色素がほとんど落ちていない。
【0041】
(洗浄力の評価)
以下の方法により、実施例1に係る酸素系漂白剤の洗浄力を評価した。
(1)油汚れの沈着した綿布の準備
200mLビーカーにS&Bラー油(エスビー食品社製)を入れ、5cm×5cmの綿布を5秒間浸漬した。汚れの付いた綿布を取り出し、室温で24時間乾燥させ、油汚れを付着させた。
(2)油汚れの洗浄
500mLビーカーに水400gを入れ、ウォーターバスで40℃に加温し、濃度が1.0重量%となるように実施例1に係る酸素系漂白剤を入れ溶解させ、酸素系漂白剤水溶液を調製した。
その後、上記酸素系漂白剤水溶液中に、上記油汚れを付着させた綿布を1分間浸漬させた。
(3)洗浄力の評価
その後、綿布をビーカーの側面から目視し、下記の評価方法により綿布の油汚れの落ちを評価した。結果を以下の表1に示す。
○:ラー油汚れが80%程度落ちている。
△:ラー油汚れが50%程度落ちている。
×:ラー油汚れがほとんど落ちていない。
【0042】
(実施例2)〜(実施例5)
酸素系漂白剤の組成をそれぞれ表1に示すように変更した他は実施例1と同様にして、酸素系漂白剤を作製し各評価を行った。各実施例の酸素系漂白剤の組成及び得られた各評価の結果を表1に示す。
なお、燃焼抑制剤として用いた塩酸グアニジン及び炭酸グアニジンの粒子径は、それぞれ1.0〜2.0mmであった。
【0043】
(比較例1)〜(比較例4)
酸素系漂白剤の組成をそれぞれ表1に示すように変更した他は実施例1と同様にして、酸素系漂白剤を作製し各評価を行った。各比較例の酸素系漂白剤の組成及び得られた各評価の結果を表1に示す。
なお、燃焼抑制剤として用いた塩酸グアニジン及び炭酸グアニジンの粒子径は、それぞれ1.0〜2.0mmであった。
【0044】
【表1】
【0045】
各実施例の結果が示すように、実施例1〜5に係る酸素系漂白剤の有効酸素濃度は、9.0%以上であり充分に高い濃度であった。
【0046】
実施例1〜5では、酸素系漂白剤の有効酸素濃度は、9.0%以上であり高い濃度であるにもかかわらず、燃焼試験において、点火源を混合物に接触させても10秒以内に着火発炎せず、燃焼時間の判定において「不燃」と判定された。これは「酸素系漂白剤と木粉との混合物の燃焼時間」が「過塩素酸カリウムと木粉との混合物の燃焼時間」よりも長い場合なので、実施例1〜5に係る酸素系漂白剤は、燃焼の危険性が低いという評価となった。
【0047】
一方、比較例1及び4では、燃焼試験において「試料と木粉との混合物の燃焼時間」が「過塩素酸カリウムと木粉との混合物の燃焼時間」よりも短かった。そのため、燃焼の危険性があるという評価となった。この理由について、比較例1に関しては、酸素系漂白剤に燃焼抑制剤が含まれていないためと考えられる。また、比較例4に関しては、酸素系漂白剤に燃焼抑制剤が含まれているものの、有効酸素濃度が13.0%を超えるため、燃焼抑制剤が充分に燃焼を抑制できなかったためと考えられる。
【0048】
実施例1〜5では、漂白力及び洗浄力の評価において共に良好であった。特に、有効酸素濃度が11.0%以上と高い濃度である実施例2及び3においては、漂白力がきわめて優れていた。
【0049】
一方、比較例2では、漂白力の評価は良好であったものの、洗浄力の評価において、綿布に付着させたラー油汚れがほとんど落ちていなかった。これは、比較例2に係る酸素系漂白剤には界面活性剤が含まれていないため、界面活性作用が生じず、綿布に付着したラー油が酸素系漂白剤水溶液中に溶け出なかったためと考えられる。
【0050】
また、比較例3では、洗浄力の評価は良好であったものの、漂白力の評価において、メラミン食器に付着した紅茶色素がほとんど落ちていなかった。これは、比較例3の有効酸素濃度が8.0%未満と低いため、充分な漂白力が得られなかったためと考えられる。
【0051】
このように、各実施例に示すような組成の酸素系漂白剤は、有効酸素濃度が高いにも関わらず、可燃物と混触した状態で燃焼物が接触した場合においても燃焼が発生しにくく、充分な漂白力及び洗浄力を有する。