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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-72011(P2015-72011A)
(43)【公開日】2015年4月16日
(54)【発明の名称】カムシャフトフェーザ
(51)【国際特許分類】
   F01L 1/356 20060101AFI20150320BHJP
【FI】
   F01L1/356 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-198282(P2014-198282)
(22)【出願日】2014年9月29日
(31)【優先権主張番号】14/043,025
(32)【優先日】2013年10月1日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】599023978
【氏名又は名称】デルファイ・テクノロジーズ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 修
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・エイチ・リティ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ロックピンオイル制御バルブに専用のオイル供給装置を必要としない。
【解決手段】クランクシャフトとカムシャフト14との間の位相関係を変化するためのカムシャフトフェーザ12は、ロータ20が複数のベーン46を持ち、交互のアドバンスチャンバ50及びリタードチャンバ52を形成する。ロータ20とステータ18との間の位相関係が変化しないようにするためにロックピン28、30がロータ20内に配置されている。ロックピンオイル制御バルブ34が、1)加圧オイルをアドバンスチャンバ50の一つから選択的に受け取り、加圧オイルをロックピン28、30に差し向けるため、及び2)ロックピン28,30をロックピン座82と係合した状態から外すため、加圧オイルをリタードチャンバ52の一つから選択的に受け取り、加圧オイルをロックピン28,30に差し向けるため、カムシャフトフェーザ12内に配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃エンジンのクランクシャフトとカムシャフトとの間の位相関係を制御可能に変化させるための、内燃エンジンで使用するカムシャフトフェーザであって、
複数のローブを持ち、前記ステータと前記クランクシャフトとの間に所定の回転比を提供できるように前記内燃エンジンの前記クランクシャフトに連結可能なステータと、
前記ステータ内に同軸に配置されたロータとを備え、前記ロータは複数のベーンを持ち、これらのベーンは、前記ローブと交互に配置され、アドバンスチャンバ及びリタードチャンバを交互に形成し、前記アドバンスチャンバは、前記クランクシャフトと前記カムシャフトとの間の位相関係を前進方向に変化するため、加圧オイルを受け取り、前記リタードチャンバは、前記カムシャフトと前記クランクシャフトとの間の位相関係を遅延方向に変化するため、前記加圧オイルを受け取り、
前記カムシャフトフェーザは、また、前記ステータに対する前記ロータの所定の整合位置で、前記ロータと前記ステータとの間の位相関係が変化しないようにするためにロックピン座と選択的に係合できるように、前記ロータ及び前記ステータのうちの一方内に配置されたロックピンと、
前記カムシャフトフェーザ内のロックピンオイル制御バルブとを備え、該ロックピンオイル制御バルブは、
1)前記ロックピンを前記ロックピン座と係合した状態から外すため、前記加圧オイルを前記アドバンスチャンバの一つから選択的に受け取り、前記加圧オイルを前記ロックピンに差し向けるため、
2)前記ロックピンを前記ロックピン座と係合した状態から外すため、前記加圧オイルを前記リタードチャンバの一つから選択的に受け取り、前記加圧オイルを前記ロックピンに差し向けるため、及び
3)前記ロックピンを前記ロックピン座と係合するため、前記加圧オイルを前記ロックピンから排出するためのものである、カムシャフトフェーザ。
【請求項2】
請求項1に記載のカムシャフトフェーザであって、
前記複数のベーンのうちの一つのベーンの内部には、ロックピンバルブ供給通路が設けられており、このロックピンバルブ供給通路は、
1)前記アドバンスチャンバの一つと前記ロックピンオイル制御バルブとの間を選択的に流体連通し、
2)前記リタードチャンバの一つと前記ロックピンオイル制御バルブとの間を選択的に流体連通する、カムシャフトフェーザ。
【請求項3】
請求項2に記載のカムシャフトフェーザであって、
前記複数のベーンのうちの一つのベーンの半径方向先端には、ワイパシール溝が設けられており、
前記複数のベーンのうちの一つのベーンと前記ステータとの間をシールするため、前記ワイパシール溝には、ワイパシールが配置されており、
前記ロックピンバルブ供給通路は、前記ワイパシール溝と流体連通しており、
前記アドバンスチャンバの一つ内の前記加圧オイルは、前記ワイパシールを前記ワイパシール溝内で移動し前記アドバンスチャンバの一つと前記ロックピンオイル制御バルブとの間を、前記ワイパシール溝及び前記ロックピンバルブ供給通路を通して流体連通し、
前記リタードチャンバの一つ内の前記加圧オイルは、前記ワイパシールを前記ワイパシール溝内で移動し前記リタードチャンバの一つと前記ロックピンオイル制御バルブとの間を、前記ワイパシール溝及び前記ロックピンバルブ供給通路を通して流体連通する、カムシャフトフェーザ。
【請求項4】
請求項3に記載のカムシャフトフェーザであって、
前記ワイパシール溝は、第1溝側と、前記第1溝側と向き合っており、これに面する第2溝側と、前記第1溝側と前記第2溝側とを繋ぐ溝底部とによって形成されており、
前記アドバンスチャンバの一つ内の前記加圧オイルは、前記ワイパシールを前記第2溝側から押し離し、前記アドバンスチャンバの一つと前記ロックピンオイル制御バルブとの間を流体連通し、
前記リタードチャンバの一つ内の前記加圧オイルは、前記ワイパシールを前記第1溝側から押し離し、前記リタードチャンバの一つと前記ロックピンオイル制御バルブとの間を流体連通する、カムシャフトフェーザ。
【請求項5】
請求項2に記載のカムシャフトフェーザであって、更に、
1)前記アドバンスチャンバの一つと前記ロックピンバルブ供給通路との間、及び
2)前記リタードチャンバの一つと前記ロックピンバルブ供給通路との間を選択的に流体連通するシャットルバルブを含む、カムシャフトフェーザ。
【請求項6】
請求項5に記載のカムシャフトフェーザであって、
前記シャットルバルブは、前記複数のベーンのうちの一つのベーンに形成されたシャットルバルブ穴内に摺動自在に配置されており、前記シャットルバルブ穴は、前記ロックピンバルブ供給通路と流体連通しており、
前記アドバンスチャンバの一つ内の前記加圧オイルは、前記シャットルバルブを、前記シャットルバルブ穴内で、前記リタードチャンバの一つと前記ロックピンバルブ供給通路との間の流体連通を実質的に阻止するように位置決めし、
前記リタードチャンバの一つ内の前記加圧オイルは、前記シャットルバルブを、前記シャットルバルブ穴内で、前記アドバンスチャンバの一つと前記ロックピンバルブ供給通路との間の流体連通を実質的に阻止するように位置決めする、カムシャフトフェーザ。
【請求項7】
請求項6に記載のカムシャフトフェーザであって、前記シャットルバルブは、
シャットルバルブ軸線に沿って延びる、前記シャットルバルブ穴に隙間を設ける大きさのシャットルバルブ本体であって、前記シャットルバルブ本体と前記シャットルバルブ穴との間で前記加圧オイルを流すことができる、シャットルバルブ本体と、
前記シャットルバルブ本体から半径方向外方に延び、前記シャットルバルブ穴に摺動締り嵌めを提供する大きさのシャットルバルブオイル制御ランドであって、前記シャットルバルブオイル制御ランドと前記シャットルバルブ穴との間をオイルが実質的に通過しないようにし、前記シャットルバルブオイル制御ランドは、前記リタードチャンバの一つと前記ロックピンバルブ供給通路との間の流体連通を選択的に実質的に阻止し、前記アドバンスチャンバの一つと前記ロックピンバルブ供給通路との間の流体連通を選択的に実質的に阻止するシャットルバルブオイル制御ランドとを含む、カムシャフトフェーザ。
【請求項8】
請求項7に記載のカムシャフトフェーザであって、前記シャットルバルブは、更に、
前記シャットルバルブ本体から半径方向外方に延びる、前記シャットルバルブオイル制御ランドから軸線方向に間隔が隔てられたシャットルバルブガイドランドを含み、
前記シャットルバルブガイドランドは、前記シャットルバルブが前記シャットルバルブ穴内で実質的に傾かないようにすると同時に、前記シャットルバルブが前記シャットルバルブ穴内で軸線方向への移動を実質的に妨げないようにする大きさを備えており、
前記シャットルバルブガイドランドは、前記加圧オイルが、前記シャットルバルブ穴で、前記シャットルバルブガイドランドを迂回できるようにする流れ構造を含む、カムシャフトフェーザ。
【請求項9】
請求項8に記載のカムシャフトフェーザであって、
前記流れ構造は、前記シャットルバルブガイドランドの外側面に形成された平坦部である、カムシャフトフェーザ。
【請求項10】
請求項6に記載のカムシャフトフェーザであって、
前記シャットルバルブ穴は、前記複数のベーンのうちの一つのベーンを、前記ロータの軸線方向第1面から前記ロータの軸線方向第2面まで軸線方向に貫通している、カムシャフトフェーザ。
【請求項11】
請求項7に記載のカムシャフトフェーザであって、
前記シャットルバルブ穴は、前記複数のベーンのうちの一つのベーンを、前記ロータの軸線方向第1面から前記ロータの軸線方向第2面まで軸線方向に貫通している、カムシャフトフェーザ。
【請求項12】
請求項11に記載のカムシャフトフェーザであって、前記複数のベーンのうちの一つのベーンは、
前記アドバンスチャンバの一つと前記シャットルバルブ穴とを流体連通可能に連結する第1シャットルバルブ供給通路と、
前記リタードチャンバの一つと前記シャットルバルブ穴とを流体連通可能に連結する第2シャットルバルブ供給通路とを含み、
前記シャットルバルブの前記シャットルバルブオイル制御ランドは、前記第1シャットルバルブ供給通路と前記第2シャットルバルブ供給通路との間にある、カムシャフトフェーザ。
【請求項13】
請求項7に記載のカムシャフトフェーザであって、
前記シャットルバルブオイル制御ランドは、前記アドバンスチャンバの一つ内の前記加圧オイルが前記リタードチャンバの一つと連通することを、選択的に、実質的に阻止し、
前記シャットルバルブオイル制御ランドは、前記リタードチャンバの一つ内の前記加圧オイルが前記アドバンスチャンバの一つと連通することを、選択的に、実質的に阻止する、カムシャフトフェーザ。
【請求項14】
内燃エンジンのクランクシャフトとカムシャフトとの間の位相関係を制御可能に変化させることができるように内燃エンジンで使用するためのカムシャフトフェーザを作動するための方法であって、
前記カムシャフトフェーザは、
複数のローブを持ち、前記ステータと前記クランクシャフトとの間に所定の回転比を提供するために前記内燃エンジンの前記クランクシャフトに連結できるステータと、
前記ステータ内に同軸に配置されたロータであって、複数のベーンを持ち、これらのベーンは前記ローブと交互に配置され、アドバンスチャンバ及びリタードチャンバを交互に形成し、前記アドバンスチャンバは、前記クランクシャフトと前記カムシャフトとの間の位相関係を前進方向に変化するため、加圧オイルを受け取り、前記リタードチャンバは、前記カムシャフトと前記クランクシャフトとの間の位相関係を遅延方向に変化するため、前記加圧オイルを受け取る、ロータと、
前記ステータに対する前記ロータの所定の整合位置で、前記ロータと前記ステータとの間の位相関係が変化しないようにするためにロックピン座と選択的に係合するため、前記ロータ及び前記ステータのうちの一方内に配置されたロックピンと、
前記カムシャフトフェーザ内のロックピンオイル制御バルブであって、
1)前記ロックピンを前記ロックピン座と係合した状態から外すため、前記加圧オイルを前記ロックピンに選択的に差し向けるため、
2)前記ロックピンを前記ロックピン座と係合した状態から外すため、前記加圧オイルを前記ロックピンに選択的に差し向けるため、及び
3)前記ロックピンを前記ロックピン座と係合するため、前記加圧オイルを前記ロックピンから排出するためのロックピンオイル制御バルブとを含み、前記方法は、
前記加圧オイルを、前記アドバンスチャンバの一つから前記ロックピンオイル制御バルブに選択的に供給する工程と、
前記加圧オイルを、前記リタードチャンバの一つから前記ロックピンオイル制御バルブに選択的に供給する工程とを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、内燃エンジンのクランクシャフトとカムシャフトとの間の位相関係を変化するための液圧作動式カムシャフトフェーザに関し、詳細には、ベーン型カムシャフトフェーザに関し、更に詳細には、フルアドバンス位置とフルリタード位置との間の所定位置で位相関係が変化しないようにするためのロックピンを含むベーン型カムシャフトフェーザに関し、更に詳細には、ロックピンを制御するためのロックピンバルブを含むベーン型カムシャフトフェーザに関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]内燃エンジンのクランクシャフトとカムシャフトとの間の位相関係を変化するための代表的なベーン型カムシャフトフェーザは、一般的には、ロータに設けられた外方に延びる複数のベーンを含み、これらのベーンは、ステータに設けられた内方に延びる複数のローブと交互になっており、ベーンとローブとの間にアドバンスチャンバ及びリタードチャンバを交互に形成する。ロータをステータ内で回転し、これによってエンジンのカムシャフトとエンジンのクランクシャフトとの間の位相関係を変化するため、アドバンスチャンバ及びリタードチャンバの一方にエンジンオイルを選択的に供給し、アドバンスチャンバ及びリタードチャンバの他方から排出する。更に、カムシャフトフェーザは、一般的には、中間ロックピンを含む。中間ロックピンは、フルアドバンス位置とフルリタード位置との間の中間の所定の角度位置で、ロータとステータとの間の相対的な回転を選択的に阻止する。中間ロックピンの係合及び係合解除は、中間ロックピンからオイルを排出することによって、中間ロックピンに加圧オイルを供給することによって、夫々行われる。
【0003】
[0003]幾つかのカムシャフトフェーザは、カムシャフトフェーザのフェージング機能を制御するため、フェージングオイル制御バルブを使用し、アドバンスチャンバ及びリタードチャンバへのオイルの供給と、アドバンスチャンバ及びリタードチャンバからのオイルの排出とを選択的に行う。この際、カムシャフトフェーザのロックピン機能を制御するため、別体のロックピンオイル制御バルブを使用し、ロックピンへのオイルの供給及びロックピンからのオイルの排出を選択的に行う。これによってフェージング機能及びロックピン機能を互いに独立して制御できる。リヒティ等に賦与された米国特許出願第13/667,127号には、カムシャフトフェーザの外部に設けられたフェージングオイル制御バルブ及びカムシャフトフェーザ内に配置されたロックピンオイル制御バルブを使用するカムシャフトフェーザが教示されている。出典を明示することにより、この出願に開示された全ての内容は本明細書の開示の一部とされる。リヒティ等は、この構成により、カムシャフトベアリングを、フェージングオイル制御バルブ及びロックピンオイル制御バルブの両方がカムシャフトフェーザの外部に設けられたカムシャフトフェーザと比較して、軸線方向にコンパクトにできると教示している。リヒティ等のカムシャフトフェーザは、カムシャフトベアリングを軸線方向にコンパクトにする上で有効であったが、カムシャフトフェーザ内に配置されたロックピンオイル制御バルブにオイルを供給するために別の専用のオイル供給装置を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願第13/667,127号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[0004]上文中に説明した欠点を最小にするか或いはなくす、カムシャフトフェーザが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[0005]簡単に述べると、内燃エンジンのクランクシャフトとカムシャフトとの間の位相関係を制御下で変化するためのカムシャフトフェーザが提供される。カムシャフトフェーザは、ステータとクランクシャフトとの間に所定(一定又は固定)の回転比を提供するために内燃エンジンのクランクシャフトに連結できる、複数のローブを持つステータと、ステータ内に同軸に配置された、複数のベーンを持つロータとを備え、ベーンがローブと交互に配置され、アドバンスチャンバ及びリタードチャンバが交互に形成され、アドバンスチャンバは、クランクシャフトとカムシャフトとの間の位相関係を前進方向に変化するため、加圧オイルを受け取り、リタードチャンバは、カムシャフトとクランクシャフトとの間の位相関係を遅延方向に変化するため、加圧オイルを受け取っている。カムシャフトフェーザは、また、ステータに対するロータの所定の整合位置で、ロータとステータとの間の位相関係が変化しないようにするためにロックピン座と選択的に係合するため、ロータ及びステータのうちの一方内に配置されたロックピンと、カムシャフトフェーザ内のロックピンオイル制御バルブとを備える。ロックピンオイル制御バルブは、1)ロックピンをロックピン座と係合した状態から外すため、加圧オイルをアドバンスチャンバの一つから選択的に受け取り、加圧オイルをロックピンに差し向けることができ、2)ロックピンをロックピン座と係合した状態から外すため、加圧オイルをリタードチャンバの一つから選択的に受け取り、加圧オイルをロックピンに差し向けることができ、及び3)ロックピンをロックピン座と係合するため、加圧オイルをロックピンから排出することができる。アドバンスチャンバ及びリタードチャンバによってロックピンオイル制御バルブに加圧オイルが供給されるため、ロックピンオイル制御バルブに別体の専用のオイル供給装置が必要とされない。
【0007】
[0006]本発明のこの他の特徴及び利点は、単なる非限定的例として提供される本発明の好ましい実施例の以下の詳細な説明を添付図面を参照して読むことにより、更に明瞭になるであろう。
【0008】
[0007]本発明を添付図面を参照して以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
[0008]
図1図1は、本発明によるカムシャフトフェーザの分解斜視図である。[0009]
図2図2は、本発明によるカムシャフトフェーザの半径方向断面図である。[0010]
図3図3は、図2の3−3線に沿った、本発明によるカムシャフトフェーザの軸線方向断面図である。[0011]
図4図4は、図2の4−4線に沿った、本発明によるカムシャフトフェーザの軸線方向断面図である。[0012]
図5図5は、本発明によるカムシャフトフェーザのカムシャフトフェーザ取り付けボルトの正面図である。[0013]
図6A図6Aは、ロックピン係合位置のロックピンオイル制御バルブを示す、図5のカムシャフトフェーザ取り付けボルトの軸線方向断面図である。[0014]
図6B図6Bは、ロックピン係合解除位置のロックピンオイル制御バルブを示す、図6Aの軸線方向断面図である。[0015]
図7A図7Aは、加圧オイルをアドバンスチャンバからロックピンオイル制御バルブに差し向けるように位置決めされたシャットルバルブを示す、図2の7−7線に沿った、本発明によるカムシャフトフェーザの軸線方向断面図である。[0016]
図7B図7Bは、加圧オイルをリタードチャンバからロックピンオイル制御バルブに差し向けるように位置決めされたシャットルバルブを示す、図7Aの軸線方向断面図である。[0017]
図7C図7Cは、加圧オイルをアドバンスチャンバ及びリタードチャンバからロックピンオイル制御バルブに同時に差し向けるように位置決めされたシャットルバルブを示す、図7A及び図7Bの軸線方向断面図である。[0018]
図8図8は、本発明によるカムシャフトフェーザのシャットルバルブの拡大斜視図である。[0019]
図9図9は、図2の7−7線に沿った、ロータベーン及びシャットルバルブの断面図である。[0020]
図10図10は、本発明による変形例のカムシャフトフェーザの半径方向断面図である。[0021]
図11A図11Aは、加圧オイルをアドバンスチャンバからロックピンオイル制御バルブに差し向ける位置にあるワイパシールを示す、図10の一部の拡大図である。[0022]
図11B図11Bは、加圧オイルをリタードチャンバからロックピンオイル制御バルブに差し向ける位置にあるワイパシールを示す、図11Aの拡大図である。[0023]
図11C図11Cは、加圧オイルをアドバンスチャンバ及びリタードチャンバの両方からロックピンオイル制御バルブに差し向ける位置にあるワイパシールを示す、図11A及び図11Bの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[0024]本発明の好ましい実施例によれば、図1図2図3、及び図4を参照すると、これらの図には、カムシャフトフェーザ12を含む内燃エンジン10が示してある。内燃エンジン10は、更に、複数の往復動ピストン(図示せず)によって駆動されるクランクシャフト及びチェーン(図示せず)からの回転入力に基づいてカムシャフト軸線16を中心として回転できるカムシャフト14を含む。カムシャフト14は、内燃エンジンの技術分野で周知のように、その回転時に、吸気バルブ及び/又は排気バルブ(図示せず)にバルブ昇降運動及びバルブ開閉運動を加える。カムシャフトフェーザ12により、クランクシャフトとカムシャフト14との間のタイミングを変化させることができる。このようにして、所望のエンジン性能を達成するため、吸気バルブ及び/又は排気バルブの開閉を進ませたり遅らせたりすることができる。
【0011】
[0025]カムシャフトフェーザ12は、全体として、ステータ18と、ステータ18内に同軸に配置されたロータ20と、ステータ18の一端を閉鎖する後カバー22と、ステータ18の他端を閉鎖する前カバー24と、ロータ20をステータ18に対して一方の方向に押圧するための押圧ばね26と、一次ロックピン28と、二次ロックピン30と、カムシャフトフェーザ12をカムシャフト14に取り付けるためのカムシャフトフェーザ取り付けボルト32と、一次ロックピン28及び二次ロックピン30に供給され、これらのロックピンから排出される加圧オイルを制御するためのロックピンオイル制御バルブ34と、加圧オイルをロックピンオイル制御バルブ34に差し向けるためのシャットルバルブ36とを含む。カムシャフトフェーザ12の様々なエレメントを以下に更に詳細に説明する。
【0012】
[0026]ステータ18は全体に円筒形であり、半径方向内方に延びる複数のローブ40が形成する複数の半径方向チャンバ38を含む。図示の実施例では、三つのローブ40が設けられており、三つの半径方向チャンバ38を形成する。しかしながら、設けられたローブ40の数が異なっていてもよく、これらのローブ40と同数の半径方向チャンバ38が形成されるということは理解されるべきである。ステータ18には、更に、スプロケット42が一体に形成されていてもよく、又は何らかの方法でステータにスプロケットが固定されていてもよい。スプロケット42は、内燃エンジン10のクランクシャフトが駆動するチェーン又はギヤによって駆動されるように形成されている。別の態様では、スプロケット42は、ベルトによって駆動されるプーリであってもよい。
【0013】
[0027]ロータ20は中央ハブ44を有し、このハブから複数のベーン46a、46b、46cが半径方向外方に延びている。ロータ20は、これを軸線方向に貫通した中央通穴48を有する。以降、ベーン46a、46b、46cの各々を、特定のベーン46を参照しない限り、単にベーン46と記載する。ベーン46は、ステータ18に設けられた半径方向チャンバ38と同数である。ロータ20は、ステータ18内に同軸に配置されており、各ベーン46が、各半径方向チャンバ38を、アドバンスチャンバ50a、50b、50c及びリタードチャンバ52a、52b、52cに分割する。以降、各アドバンスチャンバ50a、50b、50cを、特定のアドバンスチャンバ50を参照しない限り、単にアドバンスチャンバ50と呼ぶ。同様に、各リタードチャンバ52a、52b、52cを、特定のリタードチャンバ52を参照しない限り、単にリタードチャンバ52と呼ぶ。半径方向チャンバ38を互いから分離するため、ローブ40の半径方向先端は中央ハブ44と噛み合うことができる。ローブ40の半径方向先端及びベーン46の先端の各々には、隣接したアドバンスチャンバ50とリタードチャンバ52とを互いから実質的にシールするため、複数のワイパシール54のうちの一つが設けられていてもよい。
【0014】
[0028]後カバー22は、カバーボルト56を使用して、カムシャフト14に近いステータ18の軸線方向端部に密封をなして固定される。カバーボルト56を締めることにより、後カバー22がステータ18に関して相対的に回転しないようにする。後カバー2には、後カバーを同軸に貫通した中央穴58が設けられている。カムシャフト14の端部は、カムシャフト14を後カバー22に対して回転できるように、後カバー中央穴58内に同軸に受け入れられる。変形例では、スプロケット42は、上文中に説明したようにステータ18にではなく、後カバー22と一体に形成されていてもよく、又は、何らかの方法で後カバー22に取り付けられていてもよい。
【0015】
[0029]同様に、前カバー24は、カバーボルト56を使用して、後カバー22とは反対側のステータ18の軸線方向端部に密封をなして固定される。カバーボルト56は、ステータ18を通過し、前カバー24と螺合することにより、ステータ18を後カバー22と前カバー24との間にクランプし、ステータ16、後カバー22、及び前カバー24が相対的に回転しないようにする。このようにして、後カバー22と前カバー24との間に、アドバンスチャンバ50及びリタードチャンバ52を軸線方向に形成する。
【0016】
[0030]カムシャフトフェーザ12は、カムシャフトフェーザ取り付けボルト32でカムシャフト14に取り付けられる。カムシャフトフェーザ取り付けボルト32は、ロータ20の中央通穴48を同軸に通過し、カムシャフト14と螺合し、これによってロータ20をカムシャフト14に固定的にクランプする。このようにして、ステータ18とロータ20との間の相対的回転により、内燃エンジン10のクランクシャフトとカムシャフト14との間の位相関係即ちタイミングを変化する。カムシャフトフェーザ取り付けボルト32を以下に更に詳細に論じる。
【0017】
[0031]ステータ18とロータ20との間の相対的回転により、カムシャフト14のタイミングを内燃エンジン10のクランクシャフトに対して前進するため、加圧オイルをアドバンスチャンバ50に選択的に供給し、リタードチャンバ52から選択的に排出する。逆に、ステータ18とロータ20との間の相対的回転により、カムシャフト14のタイミングを内燃エンジン10のクランクシャフトに対して遅延するため、オイルをリタードチャンバ52に選択的に供給し、アドバンスチャンバ50から選択的に排出する。オイルをアドバンスチャンバ50に供給し、及びここから排出するため、アドバンスオイル通路60がロータ20に設けられていてもよく、オイルをリタードチャンバ52に供給し、及びここから排出するため、リタードオイル通路62がロータ20に設けられていてもよい。アドバンスチャンバ50及びリタードチャンバ52へのオイルの供給及びこれらのチャンバからのオイルの排出は、カムシャフトフェーザ12の外部に、例えば内燃エンジン10内に配置されたフェージングオイル制御バルブ64によって制御されてもよい。フェージングオイル制御バルブ64を図3に概略に示す。フェージングオイル制御バルブ64は、オイル源66、例えば内燃エンジン10の様々な部品を潤滑するのに使用されるオイルポンプから加圧オイルを受け取る。クランクシャフトに対するカムシャフト14のタイミングを前進するのが望ましい場合には、加圧オイルをアドバンスチャンバ50に供給すると同時にオイルをリタードチャンバ52から排出するようにフェージングオイル制御バルブ64を作動する。加圧オイルは、フェージングオイル制御バルブ64から、カムシャフト14の環状カムシャフトアドバンスオイル通路68、カムシャフト14の軸線方向カムシャフトアドバンスオイル通路70、及びロータ20のアドバンスオイル通路60を通して、アドバンスチャンバ50に供給される。これと同時に、オイルは、カムシャフト14の環状カムシャフトリタードオイル通路72、カムシャフト14の軸線方向カムシャフトリタードオイル通路74、及びロータ20のリタードオイル通路62を通して、リタードチャンバ52から排出される。逆に、クランクシャフトに対するカムシャフト14のタイミングを遅延するのが望ましい場合には、加圧オイルをリタードチャンバ52に供給すると同時にオイルをアドバンスチャンバ50から排出するようにフェージングオイル制御バルブ64を作動する。加圧オイルは、フェージングオイル制御バルブ64から、カムシャフト14の環状カムシャフトリタードオイル通路72、カムシャフト14の軸線方向カムシャフトリタードオイル通路74、及びロータ20のリタードオイル通路62を通して、リタードチャンバ52に供給される。これと同時に、オイルは、カムシャフト14の環状カムシャフトアドバンスオイル通路68、カムシャフト14の軸線方向カムシャフトアドバンスオイル通路70、及びロータ20のアドバンスオイル通路60を通して、アドバンスチャンバ50から排出される。カムシャフト14とクランクシャフトとの間のタイミングの変更が望まれていない場合には、フェージングオイル制御バルブ64は、アドバンスチャンバ50とリタードチャンバ52との間の圧力を実質的に等しくするように作動する。これは、フェージングオイル制御バルブ64からアドバンスチャンバ50及びリタードチャンバ52までの流体連通を同時に最小にすることによって行われてもよい。このようにして、ロータ20は、ステータ18内で、ベーン46が半径方向チャンバ38内で移動する上で利用できる空間で決まる最大前進位置と最大遅延位置との間で回転する。
【0018】
[0032]押圧ばね26は、ロータ20に形成された環状ポケット76内、及び前カバー24の中央穴78内に配置される。押圧ばね26は、その一端が前カバー24に取り付けられており、他端がロータ20に取り付けられている。このようにして、押圧ばね26は、バルブ列の全摩擦によって発生する自然の遅延トルクを部分的に又は完全に相殺し、実行時間を均衡し、又はフェーザがロータ20をステータ18内でフルアドバンス位置とフルリタード位置との間の所定の整合位置に戻すのを補助する。内燃エンジン10を停止した場合、又はフェージングオイル制御バルブ64が故障した場合、以下に更に詳細に説明するように、押圧ばね26が、ロータ20を、ステータ18内で、一次ロックピン28及び二次ロックピン30が形成する所定の整合位置に押圧する。
【0019】
[0033]一次ロックピン28及び二次ロックピン30は、ステータ18及びロータ20がフルリタード位置とフルアドバンス位置との間の所定の角度位置で、選択的に、相対的に回転しないようにする段階的デュアルロータピンシステムを形成する。一次ロックピン28は、ロータ20のベーン46aに形成された一次ロックピン穴80内に摺動自在に配置される。一次ロックピン28を選択的に受け入れるため、前カバー24には、一次ロックピン座82が形成されている。一次ロックピン座82は、一次ロックピン28が一次ロックピン座82内に着座したとき、ロータ20をステータ18に対して所定の角度位置の各側に約5°回転できるように、一次ロックピン28よりも大きい。一次ロックピン座82が大きいため、一次ロックピン28をこの座内に容易に受け入れることができる。一次ロックピン28を一次ロックピン座82内に着座するのが望ましくない場合には、一次ロックピン28に加圧オイルを供給し、これによって一次ロックピン28を一次ロックピン座82から押し出し、一次ロックピンばね84を圧縮する。逆に、一次ロックピン28を一次ロックピン座82内に着座するのが望ましい場合には、加圧オイルを一次ロックピン28から排出し、これによって一次ロックピンばね84で一次ロックピン28を前カバー24に向かって押圧する。このようにして、ロータ20がステータ18内に位置決めされている場合、一次ロックピン28を一次ロックピンばね84によって一次ロックピン座82内に着座し、これにより、一次ロックピン28を一次ロックピン座82と整合できる。一次ロックピン28への加圧オイルの供給及びここからの排出を以下に更に詳細に説明する。
【0020】
[0034]二次ロックピン30は、ロータ20のベーン46bに形成された二次ロックピン穴86内に摺動自在に配置される。二次ロックピン30を選択的に受け入れるため、前カバー24には、二次ロックピン座88が形成されている。二次ロックピン30は、二次ロックピン座88内に摺動自在に嵌着しており、これによって、二次ロックピン30が二次ロックピン座88内に受け入れられている場合、ロータ20とステータ18との間の相対的な回転を実質的に阻止する。二次ロックピン30を二次ロックピン座88内に着座するのが望ましくない場合には、二次ロックピン30に加圧オイルを供給し、これによって二次ロックピン30を二次ロックピン座88から押し出し、二次ロックピンばね90を圧縮する。逆に、二次ロックピン30を二次ロックピン座88内に着座するのが望ましい場合には、加圧オイルを二次ロックピン30から排出し、これによって二次ロックピンばね90で二次ロックピン30を前カバー24に向かって押圧する。このようにして、ロータ20がステータ18内に位置決めされている場合、二次ロックピン30を二次ロックピンばね90によって二次ロックピン座88内に着座し、これにより二次ロックピン30を二次ロックピン座88と整合できる。二次ロックピン30への加圧オイルの供給及びここからの排出を以下に更に詳細に説明する。
【0021】
[0035]一次ロックピン28及び二次ロックピン30の作動のこれ以上の特徴及び詳細は、フィッシャー等に賦与された米国特許第7,421,989号及びカット等に賦与された米国特許第8,056,519号に記載されている。出典を明示することにより、これらの特許に開示された全ての内容は本明細書の開示の一部とされる。
【0022】
[0036]図1乃至図4の参照を続行し、図5図6A、及び図6Bを更に参照すると、ロックピン制御バルブ34は、カムシャフトフェーザ取り付けボルト32及びロックピン制御バルブスプール92を含む。カムシャフトフェーザ取り付けボルト32は、カムシャフト14から遠方のカムシャフトフェーザ取り付けボルト32の端部のボルトヘッド94と、カムシャフト14に近いボルトねじ山端96と、ボルトヘッド94とボルトねじ山端96とを連結するボルトシャンク98とを含む。ボルトシャンク98のシャンクシール部分100は円筒形であり、ボルトヘッド94に近く、ロータ20の中央ハブ44を締り嵌め関係で同軸に貫通する。ボルトシャンク98のシャンク供給部分102は、シャンクシール部分100から遠ざかる方向に延び、シャンクシール部分100をボルトねじ山部分96に連結する。
【0023】
[0037]カムシャフトフェーザ取り付けボルト32内に、バルブ穴104が同軸に延びている。バルブ穴104は、ボルトヘッド94が形成するカムシャフトフェーザ取り付けボルト32の端部で始端する。カムシャフトフェーザ取り付けボルト32には、ロックピン制御バルブスプール供給通路106が設けられている。ロックピン制御バルブスプール供給通路106は、カムシャフトフェーザ取り付けボルト32をバルブ穴104からシャンク供給部分102の外側面まで半径方向に貫通し、これによってシャンク供給部分102の外側面とバルブ穴104との間を流体連通する。カムシャフトフェーザ取り付けボルト32には、更に、ロックピンバルブ作動通路108が設けられている。ロックピンバルブ作動通路108は、カムシャフトフェーザ取り付けボルト32をバルブ穴104からシャンクシール部分100の外側面まで半径方向に貫通し、これによってシャンクシール部分100の外側面とバルブ穴104との間を流体連通する。ロックピンバルブ作動通路108は、ロータ20の中央通穴48の内側面に形成された環状ロックピン溝110と整合する。ロックピン溝110は、一次ロックピンオイル通路112及び二次ロックピンオイル通路114と流体連通している。一次ロックピンオイル通路112及び二次ロックピンオイル通路114は、夫々、一次ロックピン28及び二次ロックピン30と流体連通している。カムシャフトフェーザ取り付けボルト32は、更に、バルブ穴104からシャンクシール部分100の外側面までカムシャフトフェーザ取り付けボルト32を半径方向に貫通した、ロックピン排出通路116を含む。しかしながら、下文で更に明瞭にわかるように、ロックピンバルブ排出通路116の機能は、バルブ穴104とシャンクシール部分100の外側面との間が流体連通していることを必要としない。従って、ロックピンバルブ排出通路116の代わりに、バルブ穴104から半径方向外方に延びる環状溝(図示せず)を設けてもよい。
【0024】
[0038]ロックピン制御バルブスプール92は、ロックピン制御バルブスプール92が、図6Bに示すように、非係止位置まで摺動したとき、加圧オイルを、ロックピンバルブスプール供給通路106から一次ロックピン28及び二次ロックピン30まで選択的に連通できるようにするため、カムシャフトフェーザ取り付けボルト32のバルブ穴104内に摺動自在に配置されている。ロックピン制御バルブスプール92は、更に、ロックピン制御バルブスプール92が、図6Aに示すように、係止位置まで摺動したとき、ロックピンバルブスプール供給通路106から一次ロックピン28及び二次ロックピン30への加圧オイルの連通を選択的に阻止し、オイルを一次ロックピン28及び二次ロックピン30から排出する。
【0025】
[0039]ロックピン制御バルブスプール92は、バルブスプール本体118を有している。バルブスプール本体118は、バルブ穴104に関して半径方向隙間を提供する大きさを備えている。環状供給ランド120が、ロックピンバルブスプール供給通路106の近くのバルブスプール本体118の端部のところで、バルブスプール本体118から半径方向外方に延びている。供給ランド120は、ロックピン制御バルブスプール92が係止位置にあるとき、バルブ穴104をぴったりと塞ぎ、ロックピンバルブスプール供給通路106とロックピンバルブ作動通路108との間の流体連通を実質的に阻止する大きさを備えている。
【0026】
[0040]ロックピン制御バルブスプール92は、更に、バルブスプール本体118から半径方向外方に延びる、供給ランド120からボルトヘッド94に向かって軸線方向に遠ざかる方向に位置決めされた環状排出ランド122を含む。排出ランド122は、ロックピン制御バルブスプール92が非係止位置にあるとき、バルブ穴104をぴったりと塞ぎ、ロックピンバルブ作動通路108とロックピンバルブ排出通路116との間の流体連通を実質的に阻止する大きさを備えている。逆に、ロックピン制御バルブスプール92が係止位置にあるとき、排出ランド122は、ロックピンバルブ排出通路116と軸線方向に整合し、オイルを一次ロックピン28及び二次ロックピン30からロックピンバルブ作動通路108を通してバルブ穴104に、ロックピンバルブ排出通路116に、バルブ穴104に、及び次いでカムシャフトフェーザ取り付けボルト32の端部の外に排出する。
【0027】
[0041]ロックピン制御バルブスプール92は、更に、バルブ穴104の底部に近いロックピン制御バルブスプール92の端部内に軸線方向に延びる穴によって形成されたスプールばね座124を含む。スプールばね座124は、スプールばね126の一端を受け入れる。この際、スプールばね126の他端は、バルブ穴104の底部に当たる。スプールばね126は、ロックピン制御バルブスプール92に、バルブ穴104の底部から遠ざかる方向に押圧力を加える。
【0028】
[0042]ロックピン制御バルブスプール92は、更に、スプールばね座124からロックピン制御バルブスプール92内に同軸に延び、排出ランド122を軸線方向に通過するスプール排出穴128を含む。スプール排出連結通路130が、ロックピン制御バルブスプール92を通って半径方向に延びており、スプール排出穴128とバルブ穴104との間を流体連通する。このようにして、供給ランド120を通ってバルブ穴104の底部に漏れるオイルを、スプール排出穴128及びスプール排出連結通路130を通して排出する。
【0029】
[0043]ロックピン制御バルブスプール92は、更に、バルブスプール本体118から半径方向外方に延びる保持ウィング132を含む。しかしながら、保持ウィング132は、バルブスプール本体118の全周に亘って延びているのではなく、バルブ穴104をぴったりと塞ぐ大きさを備えていなくてもよい。ロックピン制御バルブスプール92が係止位置にあるとき、保持ウィング132は、カムシャフトフェーザ取り付けボルト32のバルブ穴104に形成された保持クリップ溝136内に固定された保持クリップ134に当接し、これによってロックピン制御バルブスプール92の移動を制限し、ロックピン制御バルブスプール92をバルブ穴104内に保持する。
【0030】
[0044]ロックピン制御バルブスプール92を係止位置から非係止位置まで変位するため、アクチュエータ138が設けられている。アクチュエータ138は、例えば、アクチュエータシャフト140を持つソレノイドアクチュエータであってもよい。アクチュエータ138に電流を加えると、アクチュエータシャフト140がロックピン制御バルブスプール92をバルブ穴104の底部に向かって非係止位置まで移動し、これによってスプールばね126を圧縮する。アクチュエータ138への電流の負荷を停止すると、スプールばね126がロックピン制御バルブスプール92を押圧し、係止位置に戻す。ソレノイドアクチュエータは周知であり、ここではこれ以上詳細に説明しない。アクチュエータ138をソレノイドアクチュエータとして説明したが、ロックピン制御バルブスプール92に必要な軸線方向移動を提供する任意の種類のアクチュエータを使用してもよいということは理解されるべきである。
【0031】
[0045]ロックピンオイル制御バルブ34の作動のこれ以上の特徴及び詳細は、リヒティ等に賦与された米国特許出願第13/667,127号に記載されている。出典を明示することにより、この特許に開示された全ての内容は本明細書の開示の一部とされる。
【0032】
[0046]ロックピン制御バルブスプール92がアクチュエータ138によって非係止位置に配置されている場合に、ロックピン制御バルブスプール92で加圧オイルを一次ロックピン28及び二次ロックピン30に差し向けるため、加圧オイルをロックピンバルブスプール供給オイル通路106に供給しなければならない。加圧オイルは、以下に説明するように、アドバンスチャンバ50c及びリタードチャンバ52cによってロックピンバルブスプール供給通路106に選択的に供給される。
【0033】
[0047]図1乃至図4の参照を続行し、図7A図7B図7C図8、及び図9を更に参照すると、アドバンスチャンバ50c及びリタードチャンバ52cから加圧オイルをロックピンバルブスプール供給通路106に供給するため、ロックピンバルブ供給通路142がロータ20のベーン46cに設けられている。ロックピンバルブ供給通路142は、ロータ20の中央通穴48から実質的に半径方向外方に延びており、ワイパシール溝144まで延びていてもよい。ワイパシール溝144内には、ベーン46cのワイパシール54が配置される。シャットルバルブ36を摺動自在に受け入れるため、ベーン46cにシャットルバルブ穴146が設けられている。シャットルバルブ穴146は、ロックピンバルブ供給通路142と流体連通している。シャットルバルブ穴146は、後カバー22と隣接したロータ20の軸線方向第1面148から、前カバー24と隣接したロータ20の軸線方向第2面150まで、カムシャフト軸線16とほぼ同じ方向でベーン46cを軸線方向に貫通している。図9に最もよく示すように、アドバンスチャンバ50cとシャットルバルブ穴146との間を流体連通するため、第1シャットルバルブ供給通路152がベーン46cに設けられており、リタードチャンバ52cとシャットルバルブ穴146との間を流体連通するため、第2シャットルバルブ供給通路154がベーン46cに設けられている。
【0034】
[0048]シャットルバルブ36は、シャットルバルブ軸線158に沿って延びるシャットルバルブ本体156を含む。シャットルバルブ本体156は、シャットルバルブ穴146に関して半径方向隙間を提供する大きさを備えている。シャットルバルブオイル制御ランド160が、シャットルバルブ本体156から半径方向外方に延びている。シャットルバルブオイル制御ランド160は、シャットルバルブ穴146内にぴったりと嵌まり、オイルがシャットルバルブオイル制御ランド160とシャットルバルブ穴146との間を実質的に通過しないようにする。シャットルバルブオイル制御ランド160は、第1シャットルバルブ供給通路152と第2シャットルバルブ供給通路154との間に配置され、以下に更に詳細に説明するように、バルブ軸線158に沿ったシャットルバルブ36のシャットルバルブ穴146内での位置を変化するピストンとして作用する。シャットルバルブ36は、更に、シャットルバルブ本体156から半径方向外方に延びるシャットルバルブガイドランド162を含む。シャットルバルブガイドランド162は、シャットルバルブ穴146にぴったりと嵌まり、シャットルバルブ穴146内でのシャットルバルブ36の軸線方向移動が実質的に阻止されていない場合にシャットルバルブ穴146内でシャットルバルブ36が実質的に傾かないようにする。シャットルバルブガイドランド162は、平坦部164として示す一つ又はそれ以上のオイル流れ構造を含む。これにより、オイルを、シャットルバルブ穴146内で、シャットルバルブガイドランド162のそばを通すことができる又はシャットルバルブガイドランド162を迂回できる。シャットルバルブガイドランド162の流れ構造を平坦部164として示したが、例えば溝、段部、及び穴等の他の形状を使用してもよいということは理解されるべきである。
【0035】
[0049]次に、シャットルバルブ36の作動を説明する。フェージングオイル制御バルブ64を作動し、加圧オイルをアドバンスチャンバ50に供給すると、加圧オイルは、シャットルバルブ穴146に供給され、シャットルバルブオイル制御ランド160に反作用を及ぼし、図7Bに示すように、シャットルバルブ36を前カバー24に向かって押圧する。これが生じたとき、シャットルバルブオイル制御ランド160は、リタードチャンバ52cとロックピンバルブ供給通路142との間の流体連通を実質的に遮断し、加圧オイルをアドバンスチャンバ50cから第1シャットルバルブ供給通路152を介してロックピンバルブ供給通路142に連通できる。加圧オイルは、ロックピンバルブ供給通路142から、ロータ20の中央通穴48を通過し、ここで、中央通穴48のアンダーカット166により、加圧オイルをロックピンバルブスプール供給通路106に通すことができる。シャットルバルブオイル制御ランド160は、更に、アドバンスチャンバ50cからリタードチャンバ52cへの加圧オイルの連通を実質的に阻止する。次いで、上文中に説明したように、アクチュエータ138を作動し、ロックピン制御バルブスプール92を、一次ロックピン28及び二次ロックピン30への加圧オイルの連通を許容するか或いは阻止するかのいずれかを行うように位置決めするということに着目されるべきである。
【0036】
[0050]逆に、フェージングオイル制御バルブ64を作動し、加圧オイルをリタードチャンバ52に供給すると、加圧オイルは、シャットルバルブ穴146に供給され、シャットルバルブオイル制御ランド160に反作用を及ぼし、図7Aに示すように、シャットルバルブ36を後カバー22に向かって押圧する。これが起こったとき、シャットルバルブオイル制御ランド160は、アドバンスチャンバ50cとロックピンバルブ供給通路142との間の流体連通を実質的に遮断し、加圧オイルをリタードチャンバ52cから第2シャットルバルブ供給通路154を介してロックピンバルブ供給通路142に連通できる。加圧オイルは、ロックピンバルブ供給通路142から、ロータ20の中央通穴48に通過し、ここで、中央通穴48のアンダーカット166により、加圧オイルをロックピンバルブスプール供給通路106に通すことができる。シャットルバルブオイル制御ランド160は、更に、リタードチャンバ52cからアドバンスチャンバ50への加圧オイルの連通を実質的に阻止する。次いで、上文中に説明したように、アクチュエータ138を作動し、ロックピン制御バルブスプール92を、一次ロックピン28及び二次ロックピン30への加圧オイルの連通を許容するか或いは阻止するかのいずれかを行うように位置決めするということに着目されるべきである。
【0037】
[0051]加圧オイルは、図7Cに示すように、アドバンスチャンバ50c及びリタードチャンバ52cの両方から、ロックピンバルブ供給通路142を通してロックピンバルブスプール供給通路106に供給されてもよい。これは、フェージングオイル制御バルブ64の作動に関して上文中に説明したように、フェージングオイル制御バルブ64を作動し、加圧オイルをアドバンスチャンバ50及びリタードチャンバ52の両方に供給する場合に生じる。加圧オイルがアドバンスチャンバ50及びリタードチャンバ52の両方に供給された場合には、シャットルバルブ36は、シャットルバルブオイル制御ランド160がロックピンバルブ供給通路142のほぼ中央にくるように、アドバンスチャンバ50c及びリタードチャンバ52cからの加圧オイルによって位置決めされる。シャットルバルブオイル制御ランド160は、ロックピンバルブ供給通路142よりも小径であり、従って、アドバンスチャンバ50cとロックピンバルブ供給通路142との間の流体連通及びリタードチャンバ52cとロックピンバルブ供給通路142との間の流体連通が同時に形成される。加圧オイルは、ロックピンバルブ供給通路142から、ロータ20の中央通穴48に通過し、ここで、中央通穴48のアンダーカット166により、加圧オイルをロックピンバルブスプール供給通路106に通すことができる。次いで、アクチュエータ138を作動し、ロックピン制御バルブスプール92を、上文中に説明したように、一次ロックピン28及び二次ロックピン30への加圧オイルの連通を許容するか或いは阻止するかのいずれかを行うように位置決めする。
【0038】
[0052]次に、変形例のカムシャフトフェーザ12’を示す図10図11A図11B、及び図11Cを参照する。このカムシャフトフェーザは、以下に説明することを除き、カムシャフトフェーザ12とほぼ同じである。カムシャフトフェーザ12’は、シャットルバルブ36を含まず、従って、シャットルバルブ穴146も含まないという点で、カムシャフトフェーザ12と異なる。カムシャフトフェーザ12’は、その代わり、以下に説明するように、加圧オイルをアドバンスチャンバ50c及び/又はリタードチャンバ52cからロックピンオイル制御バルブ34に選択的に供給するため、ロータ20’のベーン46’でワイパシール54を使用する。
【0039】
[0053]ワイパシール54は、第1溝側168、第1溝側168と向き合った第2溝側170、及び第1溝側168と第2溝側170とを結ぶ溝底部172が形成するワイパシール溝144内に受け入れられる。加圧オイルの通過経路を更に明瞭に示すため、ワイパシール54とワイパシール溝144との間の隙間及びベーン46’cとステータ18との間の隙間は、添付図面では誇張してあるということに着目されるべきである。ロックピンバルブ供給通路142’は、溝底部172を通してワイパシール溝144と流体連通している。第1溝側168から第2溝側170までの距離は、ワイパシール54の幅よりも大きく、これによって、ワイパシール54は、以下に説明するように、アドバンスチャンバ50c及びリタードチャンバ52c内の圧力によって決定されるように、第1溝側168と第2溝側170との間で移動できる。
【0040】
[0054]フェージングオイル制御バルブ64を作動し、加圧オイルをアドバンスチャンバ50に供給すると、アドバンスチャンバ50c内の加圧オイルが、ベーン46c’のワイパシール54を、ワイパシール溝144の第2溝側170から遠ざかる方向に押圧し、第1溝側168に押し付け、これによって、図11Aに示すように、加圧オイルを、ワイパシール54と第2溝側170との間、及びワイパシール54と溝底部172との間で、アドバンスチャンバ50cから連通できる。従って、加圧オイルがワイパシール54を押圧し、ステータ18と接触させ、ステータとシールを形成する。更に、加圧オイルは、従って、ロックピンバルブ供給通路142’に供給される。加圧オイルは、カムシャフトフェーザ12に関して上文中に説明したのと同様に、ロックピンバルブ供給通路142’からロックピンオイル制御バルブ34に供給される。ワイパシール54が第1溝側168及びステータ18と接触しているため、アドバンスチャンバ50cからリタードチャンバ52cへの加圧オイルの連通は実質的に阻止される。
【0041】
[0055]逆に、フェージングオイル制御バルブ64を作動し、加圧オイルをリタードチャンバ52に供給すると、リタードチャンバ52c内の加圧オイルが、ベーン46c’のワイパシール54を、ワイパシール溝144の第1溝側168から遠ざかる方向に押圧し、第2溝側170に押し付け、これによって、図11Bに示すように、加圧オイルを、ワイパシール54と第1溝側168との間、及び、ワイパシール54と溝底部172との間で、リタードチャンバ52cから連通できる。従って、加圧オイルがワイパシール54を押圧し、ステータ18と接触させ、ステータとシールを形成する。更に、加圧オイルは、従って、ロックピンバルブ供給通路142’に供給される。加圧オイルは、カムシャフトフェーザ12に関して上文中に説明したのと同様に、ロックピンバルブ供給通路142’からロックピンオイル制御バルブ34に供給される。ワイパシール54が第2溝側170及びステータ18と接触しているため、リタードチャンバ52cからアドバンスチャンバ50cへの加圧オイルの連通は実質的に阻止される。
【0042】
[0056]加圧オイルは、アドバンスチャンバ50c及びリタードチャンバ52cの両方から同時に、ロックピンバルブ供給通路142’を通して、ロックピンオイル制御バルブ34に供給されてもよい。これは、フェージングオイル制御バルブ64の作動に関して上文中に説明したように、フェージングオイル制御バルブ64を作動し、加圧オイルをアドバンスチャンバ50c及びリタードチャンバ52cの両方に供給する場合に生じる。加圧オイルをアドバンスチャンバ50c及びリタードチャンバ52cの両方に供給すると、ワイパシール54は、図11Cに示すように、ワイパシール溝144のほぼ中央にくることができる。従って、加圧オイルは、アドバンスチャンバ50c及びリタードチャンバ52cの両方から、ワイパシール54と第1溝側168との間、ワイパシール54と第2溝側170との間、及びワイパシール54と溝底部172との間を連通することができる。その結果、ロックピンバルブ供給通路142’に加圧オイルが供給される。ロックピンバルブ供給通路142’から、加圧オイルが、カムシャフトフェーザ12に関して上文中に説明したのと同様に、ロックピンオイル制御バルブ34に供給される。
【0043】
[0057]本発明をその好ましい実施例に関して説明したが、これは、本発明をこれに限定しようとするものではなく、本発明は、以下の特許請求の範囲に記載された範囲に限定される。
【符号の説明】
【0044】
10 内燃エンジン
12 カムシャフトフェーザ
16 カムシャフト軸線
14 カムシャフト
18 ステータ
20 ロータ
22 後カバー
24 前カバー
26 押圧ばね
28 一次ロックピン
30 二次ロックピン
32 カムシャフトフェーザ取り付けボルト
34 ロックピンオイル制御バルブ
36 シャットルバルブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
【外国語明細書】
2015072011000001.pdf