【課題】高密度ヘッドに対応可能な高い吐出応答性と、良好な画像再現性及び印刷乾燥性と、優れたメンテナンス性とを備えたインクジェット記録用油性インク組成物を提供する。
【解決手段】色材、溶剤及びアクリル樹脂を含有する油性インク組成物であって、前記溶剤として、溶剤(A):特定のポリオキシエチレングリコールジアルキルエーテル、特定の二塩基酸エステル及びプロピレンカーボネートよりなる群から選択される少なくとも1種と、溶剤(B):特定のポリオキシエチレングリコールジアルキルエーテル及び特定の二塩基酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1種と、溶剤(C):ラクトン系溶剤及びアミド系溶剤よりなる群から選択される少なくとも1種とを含み、前記溶剤(A)と前記溶剤(B)の合計含有量が全溶剤中に50〜95質量%であり、且つ、前記溶剤(A)と前記溶剤(B)との質量比が5/95〜40/60であることを特徴とする、インクジェット記録用油性インク組成物である。
インクをインクジェット方法で吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録方法であって、前記インクとして、前記請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット記録用油性インク組成物を用いることを特徴とする、インクジェット記録方法。
インクジェットヘッドのクリーニングシステムを備えたインクジェット記録装置を用いて、記録媒体に記録を行うことを特徴とする、請求項5に記載のインクジェット記録方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るインクジェット記録用油性インク組成物、及びインクジェット記録方法について順に説明する。
【0018】
1.インクジェット記録用油性インク組成物
本発明に係るインクジェット記録用油性インク組成物は、色材、溶剤及びアクリル樹脂を含有する油性インク組成物であって、
前記溶剤として、
溶剤(A):下記一般式(1)で示されるポリオキシエチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレンカーボネート及び沸点が230℃以上の二塩基酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1種と、
溶剤(B):下記一般式(2)で示されるポリオキシエチレングリコールジアルキルエーテル及び沸点が230℃未満の二塩基酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1種と、
溶剤(C):ラクトン系溶剤及びアミド系溶剤よりなる群から選択される少なくとも1種と
を含み、
前記溶剤(A)と前記溶剤(B)の合計含有量が全溶剤中に50〜95質量%であり、且つ、前記溶剤(A)と前記溶剤(B)との質量比が5/95〜40/60であることを特徴とする。
一般式(1)
R
1−O−(CH
2CH
2−O)
n−R
2
(式中、R
1及びR
2はそれぞれ独立に炭素数2〜4のアルキル基であり、nは2〜4の整数である。但し、nが2の場合、R
1及びR
2の少なくとも一方が炭素数4のアルキル基である。)
一般式(2)
R
3−O−(CH
2CH
2−O)
2−R
4
(式中、R
3及びR
4はそれぞれ独立に炭素数2〜3のアルキル基である。)
【0019】
本発明に係るインクジェット記録用油性インク組成物は、溶剤として、前記特定の溶剤(A)、溶剤(B)、及び溶剤(C)を含み、且つ、前記特定の溶剤(A)及び溶剤(B)を特定の割合で用い、当該特定の混合溶剤に、バインダー樹脂としてアクリル樹脂を組み合わせることにより、高密度ヘッドに対応可能な高い吐出応答性と、良好な画像再現性及び印刷乾燥性と、優れたメンテナンス性とを備えたインクジェット記録用油性インク組成物とすることができる。
印刷面が主として塩化ビニル系重合体からなる記録媒体が多いため、従来バインダー樹脂としては、特許文献2のように塩化ビニル系樹脂が用いられてきたが、このようなバインダー樹脂を単独で用いると、後述の実施例に示したように、高速印刷時の吐出応答性に劣り、インクの飛び散りや着弾位置のずれが生じてしまい、高密度ヘッドに対応可能な高い吐出応答性を有しなかった。これは塩化ビニル系樹脂が元々高い極性を持つために高粘度であることと、本発明に使用する特定の溶剤に対する相溶性が劣り、そのため、揮発時に該溶剤を離し易く、高粘度化し易く、インクの流動性を失い易く、固化し易い性質を持つためと推定される。
本発明に係るインクジェット記録用油性インク組成物において、上記効果が得られる作用は、未解明の部分はあるが、以下のように考えられる。
本発明のインクジェット記録用油性インク組成物においては、乾燥性が比較的速い溶剤である上記一般式(2)で示されるポリオキシエチレングリコールジアルキルエーテル及び沸点が230℃未満の二塩基酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1種に対して、乾燥性の遅い溶剤を組み合わせることによって高い吐出応答性に適するようになり、さらにその際に、上記チューブへの浸透性の低い溶剤を選定することでメンテナンス性の向上が図られる。具体的には、上記一般式(1)で示されるポリオキシエチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレンカーボネート、及び沸点が230℃以上の二塩基酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1種の溶剤を特定の比率で含有することで達成される。上記一般式(1)で示されるように、ポリオキシエチレングリコールジアルキルエーテルのうち、構造末端にメチル基を有していない化合物や沸点が230℃以上の二塩基酸エステルあるいはプロピレンカーボネートがチューブ材質への浸透性が低いことを見出し、これらの溶剤を特定の比率で含有することによって、本発明のインクジェット記録用油性インク組成物は、送液チューブ内のインクの固化を防ぎ、インクの流動性を長期に渡り確保する効果をもたらす。また、上記溶剤を特定の比率で含有することにより、長期メンテナンス性を保持しながら、印刷後の乾燥性を速くすることができ、且つ、濡れ広がり性が適度となる。さらに、ラクトン系溶剤及びアミド系溶剤の少なくとも一方を特定の割合で組み合わせることにより、塩化ビニル系重合体等の記録媒体に対する浸透性を向上させて、耐擦性や印刷乾燥性や画像再現性を優れたものとすることができる。
更に、本発明においては上記特定の混合溶剤に、バインダー樹脂としてアクリル樹脂を組み合わせることにより、インクジェットヘッドから吐出時に粘度の上昇が起こり難く、インクジェットヘッドの先端で流動性を保ち易くなり、インクジェットヘッドのノズル部の詰まりが抑制される。また、当該特定の混合溶剤とアクリル樹脂とを組み合わせると、インクジェットヘッドから吐出時に粘度の上昇が起こり難く、高速印刷時の高い吐出応答性を実現でき、且つ、吐出後の液滴形状が良好になり、インクの飛び散りや着弾位置のずれが生じ難くなることから、高密度ヘッドに対応可能なインク組成物を実現できる。
本発明においては、上記特定の混合溶剤に、バインダー樹脂としてアクリル樹脂を組み合わせることにより、巻き取り後に背面への裏移りが抑制されるという効果も奏することが見出された。
また、本発明においては、上記特定の溶剤を特定の比率で含有することにより、記録媒体の変形や収縮、カールが生じにくくなって、意匠性の低下を防ぐことができるという効果も奏することが見出された。上記溶剤を上記特定の比率で含有すると、塩化ビニル系重合体等の記録媒体に対する浸透性が適度になって、記録媒体の膨潤が抑制されるためと推定される。特に、高密度ヘッドを有するプリンタで高速印字し、比較的大量のインクを吐出した場合でも、該記録媒体の変形や収縮が生じ難くなる効果をもたらす。本発明においては、上記一般式(1)及び一般式(2)で示されるポリオキシエチレングリコールジアルキルエーテルの末端がいずれも炭素数が2〜4のアルキル基であるため、ポリオキシエチレングリコールジアルキルエーテルの末端がメチル基の場合と比べて、塩化ビニル系重合体等の記録媒体に対する浸透性が強くなり過ぎないためと推定される。
また、本発明においては上記一般式(1)及び一般式(2)で示されるポリオキシエチレングリコールジアルキルエーテルの末端がいずれも炭素数が2〜4のアルキル基であるため、安全性も高い。
【0020】
本発明に係るインクジェット記録用油性インク組成物は、色材、溶剤及びアクリル樹脂を含有する油性インク組成物であって、必要に応じて他の成分を含有していても良いものである。
以下、構成成分について順に説明する。
【0021】
<溶剤>
本発明のインク組成物に用いられる溶剤は、溶剤(A):下記一般式(1)で示されるポリオキシエチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレンカーボネート及び沸点が230℃以上の二塩基酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1種と、
溶剤(B):下記一般式(2)で示されるポリオキシエチレングリコールジアルキルエーテル及び沸点が230℃未満の二塩基酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1種と、
溶剤(C):ラクトン系溶剤及びアミド系溶剤よりなる群から選択される少なくとも1種とを含み、
前記溶剤(A)と前記溶剤(B)の合計含有量が全溶剤中に50〜95質量%であり、且つ、前記溶剤(A)と前記溶剤(B)との質量比が5/95〜40/60である。
この溶剤比率に調整することで、プリンタ実装時においてチューブ内でインクが固化しにくく、長期メンテナンス性を保持しながらも、ノズル詰りの発生頻度が少なく、印刷後の乾燥性が速く高解像度の品質の高い印刷が可能なインクに調整できる。
上記の溶剤比率を外れた場合には、チューブ内でインキが固化し長期でのメンテナンス性が得られなかったり、ノズル詰りの頻度が高くなって、ヘッドクリーニングが頻繁に必要になるおそれがある。また、乾燥性が悪くなったり、インクが滲んだり、バンディングが発生して画像再現性が低下する事が発生する。
【0022】
(溶剤(A))
溶剤(A)は、前記一般式(1)で示されるポリオキシエチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレンカーボネート及び沸点が230℃以上の二塩基酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1種である。
溶剤(A)は、エラストマー製等の送液チューブ材質に対する浸透性が低く、プリンタの使用頻度が少ない場合でも送液チューブ内で残存したインクの粘度上昇を抑えて、インクの流動性を保ち、メンテナンス性を向上し、また、高い吐出応答性に寄与するという、共通の性質を有するものである。
溶剤(A)は、乾燥性が比較的遅いが、塩化ビニル系重合体等の記録媒体に浸透性があるため、印刷物の乾燥性や耐擦性等の物性を損なうことがないというメリットがある。
また、溶剤(A)は、塩化ビニル系重合体等の記録媒体表面上でレべリングするため、均一に印字濃度を上げることができ、印刷物の画質の向上にも寄与するというメリットもある。また、構造末端にメチル基を有していない前記一般式(1)で示されるポリオキシエチレングリコールジアルキルエーテル、並びに、プロピレンカーボネート及び二塩基酸エステルは、塩化ビニル系重合体等の記録媒体に対する浸透性が適度になって、記録媒体を膨潤させ難くするため、記録媒体の変形や収縮、カールが生じにくくなる。
【0023】
前記一般式(1)で示されるポリオキシエチレングリコールジアルキルエーテルにおいて、R
1及びR
2はそれぞれ独立に炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。R
1及びR
2としては、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基が挙げられる。ポリオキシエチレンの繰り返し数nが2〜4の整数であるが、nが2の場合、R
1及びR
2の少なくとも一方が炭素数4のアルキル基である。
【0024】
前記一般式(1)で示されるポリオキシエチレングリコールジアルキルエーテルは、後述する一般式(2)で示されるポリオキシエチレングリコールジアルキルエーテルと比べて分子量が高く、相対的に沸点が高く乾燥性が遅いものである。前記一般式(1)で示されるポリオキシエチレングリコールジアルキルエーテルは、沸点が230℃以上310℃以下であることがインクの乾燥性の点から好ましい。一方、プロピレンカーボネートの沸点は、242℃であり、プロピレンカーボネートもまた、単独で用いると乾燥性が遅いものである。また、沸点が230℃以上の二塩基酸エステルは、乾燥性が遅いものとして同様に用いることができる。当該二塩基酸エステルとしても、インクの乾燥性の点から、沸点が310℃以下であることが好ましい。なお、二塩基酸エステルは、二塩基酸とアルコールとから脱水縮合して生成する化合物である。
【0025】
前記一般式(1)で示されるポリオキシエチレングリコールジアルキルエーテルとしては、例えば、ジエチレングリコールエチルブチルエーテル、ジエチレングリコールプロピルブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールエチルプロピルエーテル、トリエチレングリコールエチルブチルエーテル、トリエチレングリコールジプロピルエーテル、トリエチレングリコールプロピルブチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル等が例示されるが、好ましくは、ジエチレングリコールエチルブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、及びテトラエチレングリコールジエチルエーテルよりなる群から選択される1種以上である。
また、沸点が230℃以上の二塩基酸エステルとしては、脂肪族二塩基酸エステルが好ましく、シュウ酸ジブチル、ジブチルマロン酸ジエチル、マロン酸ジブチル、コハク酸ジプロピル、グルタル酸ジエチル、グルタル酸ジプロピル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジプロピル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)等がある。沸点が230℃以上の二塩基酸エステルの中でも、アルコール由来のアルキル基が、炭素数2以上のアルキル基である場合、メチル基の場合と比べて、塩化ビニル系重合体等の記録媒体の変形や収縮、カールを抑制できるという効果が高い点から好ましい。
前記溶剤(A)のなかでも、ジエチレングリコールエチルブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレンカーボネート、コハク酸ジプロピル、グルタル酸ジエチル及び、アジピン酸ジエチルよりなる群から選択される1種以上を好ましく用いることが出来る。インクに含まれるアクリル樹脂を良好に溶解して高い吐出応答性に寄与し、長期メンテナンス性を好適に付与させるからである。
【0026】
前記溶剤(A)の含有量は、全溶剤中に下限としては、2.5質量%以上であることが好ましく、更に3質量%以上であることが好ましく、特に5質量%以上であることが好ましい。同じく上限としては38質量%以下であることが好ましく、更に30質量%以下であることが好ましく、より更に20質量%以下であることが好ましく、特に15質量%以下であることが好ましい。
上記の下限質量%未満であると、吐出応答性やメンテナンス性が悪くなることがあり、上限質量%を超えると、乾燥性が悪くなったり、印刷物表面でインクが滲む恐れがある。
【0027】
(溶剤(B))
溶剤(B)は、前記一般式(2)で示されるポリオキシエチレングリコールジアルキルエーテル及び沸点が230℃未満の二塩基酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1種である。
前記一般式(2)で示されるポリオキシエチレングリコールジアルキルエーテルは、前述の一般式(1)で示されるポリオキシエチレングリコールジアルキルエーテルと比べて分子量が低く、相対的に沸点が低く、乾燥が速いものである。また、沸点が230℃未満の二塩基酸エステルは、前述の沸点が230℃以上の二塩基酸エステルに比べて沸点が低く、乾燥が速いものである。前記一般式(2)で示されるポリオキシエチレングリコールジアルキルエーテル及び沸点が230℃未満の二塩基酸エステルは、単独で用いると乾燥性が速すぎてメンテナンス性に劣るが、低臭気で、レベリング性に優れ、塩化ビニル系重合体等の記録媒体への浸透性も良好である。
【0028】
また、構造末端にメチル基を有していない、前記一般式(2)で示されるポリオキシエチレングリコールジアルキルエーテル、及び二塩基酸エステルは、塩化ビニル系重合体等の記録媒体に対する浸透性が適度になって、記録媒体を膨潤させ難くするため、記録媒体の変形や収縮、カールが生じにくくなる。
本発明においてはこのような溶剤(B)が混合溶剤中に比較的多く含まれることから、記録媒体の変形や収縮、カールが生じにくくなって、意匠性の低下を防ぐことができる。
更に、同様の効果を示す溶剤(A)、すなわち、構造末端にメチル基を有していない前記一般式(1)で示されるポリオキシエチレングリコールジアルキルエーテル、並びに、プロピレンカーボネート及び二塩基酸エステルよりなる群から選択される1種以上と組み合わせて用いられることにより、記録媒体の変形や収縮、カールの抑制効果が高くなる。
【0029】
前記一般式(2)で示されるポリオキシエチレングリコールジアルキルエーテルは、沸点が180℃以上230℃未満であることが好ましい。また、沸点が230℃未満の二塩基酸エステルも、沸点が180℃以上であることが好ましく、中でも沸点が180℃〜220℃の二塩基酸エステルであることが、吐出応答性やメンテナンス性の点から好ましい。
【0030】
前記一般式(2)で示されるポリオキシエチレングリコールジアルキルエーテルにおいて、R
3及びR
4はそれぞれ独立に炭素数2〜3の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。
R
3及びR
4としては、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基が挙げられる。
【0031】
前記一般式(2)で示されるポリオキシエチレングリコールジアルキルエーテルとしては、例えば、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルプロピルエーテル等が例示される。
また、沸点が230℃未満の二塩基酸エステルとしては、脂肪族二塩基酸エステルが好ましく、例えば、シュウ酸ジメチル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジプロピル、マロン酸ジエチル、メチルマロン酸ジエチル、エチルマロン酸ジエチル、マロン酸ジプロピル、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル等が例示される。沸点が230℃未満の二塩基酸エステルの中でも、アルコール由来のアルキル基が、炭素数2以上のアルキル基である場合、メチル基の場合と比べて、塩化ビニル系重合体等の記録媒体の変形や収縮、カールを抑制できるという効果が高い点から好ましい。
前記溶剤(B)のなかでも、吐出応答性やメンテナンス性の点から、ジエチレングリコールジエチルエーテル、マロン酸ジエチル、コハク酸ジエチルを好ましく用いることが出来る。
【0032】
前記溶剤(B)の含有量は、全溶剤中に下限としては、30質量%以上であることが好ましく、更に40質量%以上であることが好ましく、より更に50質量%以上であることが好ましく、特に60質量%以上であることが好ましい。同じく上限としては92.5質量%以下であることが好ましく、更に90質量%以下であることが好ましく、より更に85質量%以下であることが好ましい。前記溶剤(B)の含有量が多すぎるとメンテナンス性が悪化する恐れがあり、一方、少なすぎると乾燥性や滲みが悪化する恐れがある。
【0033】
(溶剤(C))
溶剤(C)は、ラクトン系溶剤及びアミド系溶剤よりなる群から選択される少なくとも1種である。
本発明のラクトン系溶剤とは、環状エステル化合物であり、同分子内のヒドロキシル基とカルボキシル基が脱水縮合し環状構造を成したものをいう。好ましくは5〜11員環状構造を持つ化合物であり、5員環構造のγ−ラクトンや6員環構造のδ−ラクトン、7員環構造のε−ラクトン等が挙げられる。ラクトン系溶剤としては、例えば、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−ヘキサラクトン、γ−ヘプタラクトン、γ−オクタラクトン、γ−ノナラクトン、γ−デカラクトン、γ−ウンデカラクトン、δ−バレロラクトン、δ−ヘキサラクトン、δ−ヘプタラクトン、δ−オクタラクトン、δ−ノナラクトン、δ−デカラクトン、δ−ウンデカラクトン等が挙げられる。
ラクトン系溶剤は、本発明の好ましい態様においては、5員環構造のγ−ラクトンであり、さらに好ましい態様においては、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンである。
【0034】
ラクトン系溶剤は、塩化ビニル系重合体等の記録媒体への浸透性が特に高い溶剤であり、乾燥性、細線の画像再現性、及び耐擦性を向上する。また、ラクトン系溶剤は、前記一般式(2)で示されるポリオキシエチレングリコールジアルキルエーテルと比べて相対的に乾燥性が遅いことが好ましく、この場合、エラストマー製の送液チューブから揮発し難い性質を有し、メンテナンス性を向上する。
ラクトン系溶剤は、沸点が160℃以上であることが好ましく、更に180℃以上であることが好ましく、特に200℃以上であることが好ましく、また、280℃以下であることが好ましい。
【0035】
本発明のアミド系溶剤とは、分子構造中に1つのカルボン酸アミド構造を含み、直鎖アルキル構造中にエーテル結合を有する化合物である。本発明では下記一般式(3)で表されるアミド系溶剤が好適に用いられる。
【0036】
【化1】
(式中、R
5は炭素数1〜8のアルキル基であり、R
6及びR
7はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は、炭素数1〜6のアルコキシアルキル基である。)
【0037】
R
5は、炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。R
5としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、sec−ペンチル基、t−ペンチル基、n−ヘキシル基、i−ヘキシル基、sec−ヘキシル基、t−ヘキシル基、n−へプチル基、i−へプチル基、sec−へプチル基、t−へプチル基、n−オクチル基、i−オクチル基、sec−オクチル基、t−オクチル基等が挙げられるが、中でも炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基が好ましく、メチル基又は各種ブチル基が更に好ましい。R
6及びR
7のアルキル基もそれぞれ直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、R
5の例示のうち炭素数1〜6のアルキル基を用いることができる。R
6及びR
7の炭素数1〜6のアルコキシアルキル基としては、上記アルキル基のうち、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基中にエーテル結合を含む構造を有しているものが使用でき、例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基等が挙げられる。R
6及びR
7としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基が好ましく、メチル基又はエチル基が更に好ましい。
中でも前記一般式(3)で表されるアミド系溶剤において、R
5がメチル基、R
6及びR
7がメチル基である組み合わせ、R
5がn−ブチル基、R
6及びR
7がメチル基である組み合わせが好ましい。
前記一般式(3)で表されるアミド系溶剤は、例えば、国際公開第2008/102615号パンフレットに記載の方法を参考にして製造することができる。また、前記一般式(3)で表されるアミド系溶剤の市販品としては、エクアミド(商標、品番M100、B100、出光興産(株))等が挙げられる。
【0038】
アミド系溶剤も、塩化ビニル系重合体等の記録媒体への浸透性が高い溶剤であり、乾燥性、及び耐擦性を向上する。アミド系溶剤も、前記一般式(2)で示されるポリオキシエチレングリコールジアルキルエーテルと比べて相対的に乾燥性が遅いことが好ましく、この場合、エラストマー製の送液チューブに浸透し難く、揮発し難い性質を有し、メンテナンス性を向上する。
アミド系溶剤は、沸点が160℃以上であることが好ましく、更に180℃以上であることが好ましく、特に200℃以上であることが好ましく、また、280℃以下であることが好ましい。
【0039】
前記溶剤(C)としては、前記ラクトン系溶剤と前記アミド系溶剤を混合して用いることも好ましい。この場合、溶剤(C)の合計量を多くすることができるため、乾燥性、及び耐擦性が特に向上する。
前記ラクトン系溶剤と前記アミド系溶剤は共に塩化ビニル系重合体等の記録媒体への浸透性が高い溶剤であり、乾燥性、細線の画像再現性、耐擦性及びメンテナンス性を向上するものである。しかし、ラクトン系溶剤の表面張力が高めで、高い細線の画像再現性を得ることができるが、多く配合すると印刷ムラを発生する可能性があり、対して前記アミド系溶剤は表面張力が低めで多く配合すると滲みが悪くなる可能性がある。これに対して、ラクトン系溶剤とアミド系溶剤を併用すると、両者の特性のバランスを取ることができるので、高い細線の画像再現性を保ちつつ、レベリング性に優れた油性インクジェットインクを得ることができたり、塩化ビニル系重合体等の記録媒体への浸透性が特に高い溶剤(ラクトン系溶剤とアミド系溶剤)の添加量を増やすことができるので、乾燥性、及び耐擦性をより向上することができる。
前記溶剤(C)の含有量は、全溶剤中に1〜50質量%であることが好ましく、更に5〜30質量%であることが好ましく、より更に5〜20質量%であることが好ましく、特に5〜15質量%であることが好ましい。前記溶剤(C)の含有量が多すぎると印刷面に溶剤が浸透し過ぎて、印刷面を溶解してしまうためべたつく恐れがあり、一方、少なすぎると乾燥性、細線の画像再現性、耐擦性、及びメンテナンス性に劣る恐れがある。
【0040】
溶剤(C)の中でも、前記ラクトン系溶剤の含有量は、全溶剤中に1〜50質量%であることが好ましく、更に5〜30質量%であることが好ましく、より更に5〜20質量%であることが好ましく、特に5〜15質量%であることが好ましい。前記ラクトン系溶剤の含有量が多すぎると表面張力が高いため濡れ広がりにくく、粒状感のある印刷物となったり、印刷ムラが発生して印刷品質が損なわれる恐れがあり、一方、少なすぎると乾燥性、細線の画像再現性、耐擦性、及びメンテナンス性に劣る恐れがある。
また、溶剤(C)の中でも、前記アミド系溶剤の含有量は、全溶剤中に1〜30質量%であることが好ましく、更に1〜25質量%であることが好ましく、より更に1〜20質量%であることが好ましく、特に5〜15質量%であることが好ましい。前記アミド系溶剤の含有量が多すぎると印刷面に溶剤が浸透してべたついたり、画像に滲みが発生する恐れがあり、一方、少なすぎると乾燥性、画像再現性、耐擦性、及びメンテナンス性に劣る恐れがある。
【0041】
本発明の油性インク組成物に用いられる混合溶剤において、前記溶剤(A)と前記溶剤(B)の合計含有量が全溶剤中に50〜95質量%である。更に、前記溶剤(A)と前記溶剤(B)との質量比が5/95〜40/60である。
前記溶剤(A)と前記溶剤(B)の合計含有量を上記のような範囲とし、且つ、前記溶剤(A)と前記溶剤(B)との質量比を上記のような範囲とすることにより、印刷乾燥性は担保しながら、送液チューブに対するインクの浸透性を低くして、送液チューブ内のインクの乾燥が抑制され、インクの流動性を確保することが可能になり、また、クリーニング回復性に優れ、更に、濡れ広がり性が適度となって、画像再現性が良好になる。
前記溶剤(A)と前記溶剤(B)の合計含有量としては、更に、全溶剤中に60〜90質量%であることが好ましく、より更に全溶剤中に70〜90質量%であることが好ましい。これらの含有溶剤量が上限を超えた場合は、記録媒体への浸透が遅くなり画像が滲んだり、乾燥性が遅くなる恐れがある。また、インク中に含まれるバインダー樹脂成分の相溶性が劣るため、ノズル詰りが発生したり間欠吐出性が低下する恐れがある。また、これらの含有溶剤量が下限を超えた場合は、溶剤が記録媒体へ浸透してべたついたり、表面光沢が低下する恐れがある。また、浸透した溶剤分の揮発が遅くなり、印刷物をプリンタの巻き取り装置を用いて巻き取った後、印刷物表面が張り付いたり、裏移りを生じたりする恐れがある。
また、前記溶剤(A)と前記溶剤(B)との質量比は、更に5/95〜35/65であることが好ましく、より更に5/95〜20/80であることが好ましく、特に5/95〜15/85であることが好ましい。この溶剤比率に調整することで、インクの乾燥性を良好にすることができ、また、インク中に含まれるバインダー樹脂に対する相溶性を良好にして乾燥後の印刷物の白化を抑制することができる。また、プリンタ実装時においてチューブ内でインクが固化しにくく、長期メンテナンス性を保持しながらも、高密度ヘッドにおいてもノズル詰りの発生頻度が少なく、印刷後の乾燥性が速く、高解像度の印刷が可能なインクに調整できる。
一方、上記の溶剤比率を外れた場合には、例えば、前記溶剤(A)の比率が高くなり前記溶剤(B)の比率が低くなった場合では、乾燥性が悪くなったり、インクが滲み画像再現性が低下する恐れがある。また、前記溶剤(A)の比率が低くなり前記溶剤(B)の比率が高くなった場合では、チューブ内でインキが固化し長期でのメンテナンス性が得られなかったり、ノズル詰りの頻度が高くなりヘッドのクリーニングが頻繁に必要となる恐れがある。
【0042】
本発明の油性インク組成物において用いられる混合溶剤は、全体として、20℃での粘度が1〜8mPa・s、好ましくは1〜4.0mPa・sに調整されることが好ましい。なお本発明において粘度は、落球式粘度計(例えば、アントンパール社製「AMVn」粘度計)により測定したものである。
また、ヘッド表面からのインクの乾燥を考慮すると、それらの20℃での蒸気圧が、1hPa以下であることが好ましく、更に0.7hPa以下であることが好ましい。
このような混合溶剤を用いることにより、吐出応答性とメンテナンス性が向上し、また、局所的排気設備または排ガス処理設備を設ける負担が軽減され、作業環境の向上が可能となり、また周辺環境への環境負荷も軽減することが可能となる。
【0043】
本発明の油性インク組成物においては、本発明の効果が損なわれない範囲で、その他の溶剤を含んでいても良い。その他の溶剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールモノアルキルエーテルアセテート類、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールモノアルキルエーテル類、酢酸ブチル、酢酸ヘキシル、酢酸オクチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル等の脂肪酸エステル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ジオキサン、シクロヘキサン、β−ラクタム等が挙げられる。
中でも、インクジェット吐出性の点からは、沸点が140℃以上のものを使用するのが好ましい。沸点の上限は特に制限されないが、インキの乾燥性の点からは、310℃以下のものが好ましい。
【0044】
<色材>
色材としては、従来の油性インク組成物に通常用いられている無機顔料又は有機顔料等の顔料、染料の単独、または混合して用いることができる。顔料としてはカーボンブラック、カドミウムレッド、モリブデンレッド、クロムイエロー、カドミウムイエロー、チタンイエロー、酸化クロム、ビリジアン、チタンコバルトグリーン、ウルトラマリンブルー、プルシアンブルー、コバルトブルー、ジケトピロロピロール、アンスラキノン、ベンズイミダゾロン、アンスラピリミジン、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キノフタロン系顔料、酸化チタン又は金属錯体顔料等を用いることができる。染料としては、例えばアゾ染料、金属錯塩染料、ナフトール染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、カーボニウム染料、キノンイミン染料、キサンチン染料、シアニン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン粟料、フタロシアニン染料、又は金属フタロシアニン染料を用いることができ、特に油溶性染料が好ましい。これらの顔料又は染料を単独で用いるか、あるいはそれらの2種又はそれ以上の組み合わせで使用することもできるが、耐候性の観点からは顔料が好ましい。顔料一次粒子の体積平均粒径は、10〜500nm、好ましくは15〜300nmである。
【0045】
上記の顔料の具体例としては、例えば、有機顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーで例示すると、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、16、17、20、24、73、74、75、83、93、95、97、98、109、110、114、117、120、125、128、129、130、137、138、139、147、148、150、151、153、154、155、166、168、180、185、213、214;C.I.ピグメントレッド5、7、9、12、48、49、52、53、57、97、112、122、123、146、149、168、177、180、184、192、202、206、209、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、254;C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、64、 71;C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50;C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64;C.I.ピグメントグリーン7、36、58;C.I.ピグメントブラウン23、25、26;C.I.ピグメントホワイト6等が挙げられる。
【0046】
<アクリル樹脂>
本発明で用いられるアクリル樹脂は、アクリル酸、メタクリル酸およびこれらの誘導体から選択される少なくとも一つを少なくとも単量体として用いた重合体を包含する高分子化合物をいう。アクリル樹脂には、アクリル酸、メタクリル酸およびこれらの誘導体と重合可能なエチレン性二重結合を有する化合物由来の構成単位が、更に含まれていても良い。
本発明においては、上記混合溶剤に、バインダー樹脂としてアクリル樹脂を組み合わせることにより、上述のように、揮発時の粘度の上昇が起こり難く、インクジェットヘッドのノズル部の詰まりが抑制され、ヘッドの表面および周辺の洗浄時にインクが拭き取りやすく、且つ、高速印刷時の高い吐出応答性を実現でき、且つ、吐出後の液滴形状が良好になり、インクの飛び散りや着弾位置のずれが生じ難くなる。
また、バインダー樹脂としてアクリル樹脂を用いることにより、印刷後の粘着性が抑制され、巻き取り乾燥後の裏移りや張り付きを防止することができる。
【0047】
本発明で用いられるアクリル樹脂は、中でも、前記混合溶剤と良好な相溶性を有し、前記混合溶剤のアクリル樹脂溶液を容易に調整でき、印刷乾燥性と再溶解性を向上することができる点から、ポリオキシアルキレングリコールジアルキルエーテル類溶剤中でラジカル重合開始剤を用いて溶液重合させたアクリル樹脂を用いることが好ましい。この際に用いられるポリオキシアルキレングリコールジアルキルエーテル類溶剤としては、前記一般式(1)で示されるポリオキシエチレングリコールジアルキルエーテル又は前記一般式(2)で示されるポリオキシエチレングリコールジアルキルエーテルであることが好ましい。
ポリオキシアルキレングリコールジアルキルエーテル類溶剤中でラジカル重合開始剤を用いて溶液重合させたアクリル樹脂を用いると、該アクリル樹脂は溶剤が末端に結合した反応生成物を有するものとなるため、前記混合溶剤に易溶になり、再溶解性が向上し、また、混合溶剤に対するアクリル樹脂の相溶性が向上することで、該樹脂の添加量をより多くすることができ、結果、印刷乾燥性を良好なものとすることができる。
【0048】
アクリル樹脂は、好適には、メタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アラルキルエステル、メタクリル酸アルコキシアルキルエステル、メタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、メタクリル酸、及びメタクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステルよりなる群から選ばれたラジカル重合性モノマーから得ることができる。ラジカル重合可能なエチレン性二重結合を分子中に少なくとも一個有し、好ましくはラジカル重合可能なエチレン性二重結合を分子中に一個有し、後述する溶媒中においてラジカル重合開始剤の共存下で重合可能なラジカル重合性モノマーであれば更に各種のモノマーを用いることができる。例えば、ラジカル重合性モノマーとしてビニル化合物やマレイミド類を含んでいても良い。
アクリル樹脂は、1種のラジカル重合性モノマーの単独重合体であっても良いし、ラジカル重合性モノマーを2種以上選択して用いた共重合体のいずれであっても良い。
【0049】
アクリル樹脂に用いられるラジカル重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸−iso−プロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−sec−ブチル、(メタ)アクリル酸−iso−ブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸−iso−オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸−iso−ノニル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸プロパギル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸アントラセニル、(メタ)アクリル酸アントラニノニル、(メタ)アクリル酸ピペロニル、(メタ)アクリル酸サリチル、(メタ)アクリル酸フリル、(メタ)アクリル酸フルフリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸ピラニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェネチル、(メタ)アクリル酸クレジル、(メタ)アクリル酸グリシジル、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸−3,4−エポキシシクロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸−1,1,1−トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロ−n−プロピル、(メタ)アクリル酸パーフルオロ−iso−プロピル、(メタ)アクリル酸ヘプタデカフルオロデシル、(メタ)アクリル酸トリフェニルメチル、(メタ)アクリル酸クミル、(メタ)アクリル酸3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2,3−ジヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−シアノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸トリエトキシシリルプロピル、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランなどの(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステル類;
(メタ)アクリル酸アミド、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミド、(メタ)アクリル酸N,N−ジエチルアミド、(メタ)アクリル酸N,N−ジプロピルアミド、(メタ)アクリル酸N,N−ジ−iso−プロピルアミド、(メタ)アクリル酸ブチルアミド、(メタ)アクリル酸ステアリルアミド、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルアミド、(メタ)アクリル酸フェニルアミド、(メタ)アクリル酸ベンジルアミド、(メタ)アクリル酸アントラセニルアミドなどの(メタ)アクリル酸アミド類;
スチレン、スチレンのα−、o−、m−、p−アルキル、ニトロ、シアノ、アミド、エステル誘導体、(メタ)アクリル酸アニリド、(メタ)アクリロイルニトリル、アクロレイン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、N−ビニルカルバゾール、ビニルイミダゾール、酢酸ビニルなどのビニル化合物類;
N−ベンジルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ラウリンマレイミド、N−(4−ヒドキシフェニル)マレイミドなどのモノマレイミド類;N−(メタ)アクリロイルフタルイミドなどのフタルイミド類を挙げることができる。
なお、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」および「メタクリル」の両者を意味するものである。
【0050】
特に好ましいアクリル樹脂は、メタクリル酸メチル単独の重合体、或いは、メタクリル酸メチルと、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸エトキシエチル、及びメタクリル酸ベンジルよりなる群から選択される少なくとも1つ以上の化合物との共重合体である。該共重合体において、メタクリル酸メチル100質量部に対する、メタクリル酸メチルと、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸エトキシエチル、及びメタクリル酸ベンジルよりなる群から選択される少なくとも1つ以上の化合物の合計量は、好ましくは0.01〜15質量部、更に好ましくは0.1〜15質量部、より更に好ましくは0.5〜12質量部である。このようなアクリル樹脂は、特にインク中の溶剤と良好な相溶性を示し、インクの保存安定性と画像再現性を有するインクジェット記録用油性インク組成物を提供することができる。
【0051】
本発明で用いられるアクリル樹脂は、質量平均分子量が5000〜100000であるものが好ましい。なお、本発明において質量平均分子量は、ポリスチレンを標準としたゲル浸透クロマトグラフ(GPC)(例えば、の「HLC−8220GPC」東ソー(株)製)による測定値である。中でも、本発明で用いられるアクリル樹脂は、印刷物を巻き取った後にインクの裏移りが抑制され易い点から、中でも質量平均分子量が10000以上であることが好ましく、12000以上であることがより好ましく、15000以上であることがより更に好ましい。一方、本発明で用いられるアクリル樹脂は、高い吐出安定性と、クリーニング回復性の点からは、50000以下であることが好ましく、更に35000以下であることが好ましく、より更に30000以下であることが好ましい。
【0052】
また、本発明で用いられるアクリル樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が80℃以上、110℃以下であるものが好ましい。本発明においてガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱熱量計(DSC)(例えば、島津製作所(株)製の示差走査熱量計「DSC−50」)による測定値である。ガラス転移温度が複数観測される場合があるが、本発明では、より吸熱量の大きい、主転移温度を採用するものとする。また、Tgが上記範囲内であることにより、良好な印刷乾燥性が得られ、特に巻き取り乾燥性が良好になるという効果が顕著になる。
【0053】
本発明で用いられるアクリル樹脂を製造する際に用いられるラジカル重合開始剤は、有機過酸化物が好ましく、ハイドロパーオキサイド系、ジアルキルパーオキサイド系、パーオキシエステル系、ジアシルパーオキサイド系、パーオキシカーボネート系、パーオキシケタール系、ケトンパーオキサイド系有機過酸化物が挙げられ、中でも、ジアルキルパーオキサイド系、パーオキシエステル系、ジアシルパーオキサイド系有機過酸化物が好ましい。前述の通り、溶剤が末端に結合した反応生成物を有するものとすることができるため、前記混合溶剤に対するアクリル樹脂の相溶性を向上できるからである。好ましい具体例としては、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0054】
また、市販の(メタ)アクリル樹脂としては、例えばロームアンドハース社の「パラロイドB99N」(メチルメタアクリレート−ブチルメタアクリレート共重合体)Tg82℃、重量平均分子量15,000)、「パラロイドB60」(メチルメタアクリレート−ブチルメタアクリレート共重合体)Tg75℃、重量平均分子量50,000)等が例示される。
【0055】
<その他の成分>
本発明によるインクジェット記録用油性インク組成物は、上記の必須成分に加えて、必要に応じて他の成分を含むことができる。必要に応じて含むことができる他の成分としては、例えば、他のバインダー樹脂、分散剤、界面活性剤、その他各種添加剤を挙げることができる。
【0056】
(その他のバインダー樹脂)
本発明の油性インク組成物においては、本発明の効果が損なわれない範囲で、その他のバインダー樹脂を含んでいても良い。その他のバインダー樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ロジン変性樹脂、フエノール樹脂、テルペン系樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル系重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、エチレン−酢酸ビニル系共重合体、セルロースアセテートブチレート、ビニルトルエン−α−メチルスチレン共重合体等の単独、またはそれらの混合物を用いることができる。
【0057】
本発明の油性インク組成物においては、印刷乾燥性と、印刷面の光沢や耐擦性や耐アルコール性が向上する点から、アクリル樹脂に組み合わせて、更に、塩化ビニル及び酢酸ビニルを含む共重合体を含有することが好ましい。塩化ビニル及び酢酸ビニルを含む共重合体は、塩化ビニル単位及び酢酸ビニル単位と共に、必要に応じてその他の構成単位を備えていても良く、例えばカルボン酸単位、ビニルアルコール単位、ヒドロキシアルキルアクリレート単位等を備えていても良い。
塩化ビニル及び酢酸ビニルを含む共重合体としては、吐出安定性、並びに、耐擦性及び耐アルコール性の点から、数平均分子量が10000〜50000であることが好ましく、更に15000〜35000であることが好ましく、より更に20000〜30000であることが好ましい。ここで数平均分子量は、GPCを用いて測定し、ポリスチレン換算した値である。
塩化ビニル及び酢酸ビニルを含む共重合体としては、塩化ビニル単位を共重合体の70〜94質量%含有するものが、印刷面の光沢や耐擦性の点から、好適に用いられる。塩化ビニル単位を共重合体の70%未満になると耐擦性が低下する恐れがある。また94質量%を超えると印刷面の光沢が低下する恐れがある。
なお、本発明の油性インク組成物におけるバインダー樹脂中に、塩化ビニル及び酢酸ビニルを含む共重合体の含有量が多すぎると、揮発時の粘度の上昇が起こり易くなり、高速印刷時の吐出応答性が悪化する恐れがある点から、塩化ビニル及び酢酸ビニルを含む共重合体の含有量は、アクリル樹脂1質量部に対して4質量部以下であることが好ましく、1.0質量部以下であることがより好ましく、0.3質量部以下であることがより更に好ましい。
【0058】
前記の塩化ビニル酢酸ビニル系共重合樹脂としては、例えば、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−ヒドロキシアルキルアクリレート共重合体など、およびそれらの混合物が挙げられる。上記の塩化ビニル酢酸ビニル系共重合樹脂としては、日信化学工業(株)社からソルバインC(数平均分子量(Mn)、31000)、CL(Mn、25000)、CNL(Mn、12000)、C5R(Mn、27000)、TA2(Mn、33000)、TA3(Mn、24000)、A(Mn、30000)、AL(Mn、22000)、TA5R(Mn、28000)、M5(Mn、32000)等の商品名で入手して本発明で使用することができる。
【0059】
(分散剤)
分散剤としては、インクジェット記録用油性インク組成物において用いられている任意の分散剤を用いることができる。分散剤としては、高分子分散剤を用いると良い。こうした分散剤としては、主鎖がポリエステル系、ポリアクリル系、ポリウレタン系、ポリアミン系、ポリカプロラクトン系などからなり、側鎖としてアミノ基、カルボキシル基、スルホン基、ヒドロキシル基などの極性基を有するものである。ポリアクリル系分散剤では、例えば、Disperbyk−2000、2001、2008、2009、2010、2020、2020N、2022、2025、2050、2070、2095、2150、2151、2155、2163、2164、BYKJET−9130、9131,9132,9133,9151(ビック・ケミー社製)が用いられる。ポリカプロラクトン系分散剤では、例えば、アジスパーPB821、PB822、PB881(味の素ファインテクノ(株)製)が用いられる。好ましい分散剤としては、ポリエステル系分散剤であり、例えばヒノアクトKF−1000、T−6000、T−7000、T−8000、T−8000E、T−9050(川研ファインケミカル(株)製)、Solsperse20000、24000、32000、32500、32550、32600、33000、33500、34000、35200、36000、37500、39000、71000(ルブリゾール社製)、フローレンDOPA−15BHFS、17HF、22、G−700、900、NC−500、GW−1500(共栄社化学(株)製)、Efka4310、4320、4330、4401、4402、4403N、4570、7411、7477、7700(BASF社製)の単独、またはそれらの混合物を用いることができる。
【0060】
(界面活性剤)
また、本発明のインクジェット記録用油性インク組成物においては、ノズル部やチューブ内等の機器内での油性インク組成物の揮発抑制、固化防止、また、固化した際の再溶解性を目的として、混合溶剤に加えて、室温、大気圧下で液状の非イオン性ポリオキシエチレン誘導体を添加してもよい。例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類であるノニオンP−208、P−210、P−213、E−202S、E−205S、E−215、K−204、K−220、S−207、S−215、A−10R、A−13P、NC−203、NC−207(日本油脂(株)製)、エマルゲン106、108、707、709、A−90、A−60(花王(株)製)、フローレンG−70、D−90(共栄社化学(株)製)、ポエムJ−0081HV(理研ビタミン(株)製)、アデカトールNP−620、NP−650、NP−660、NP−675、NP−683、NP−686、アデカコールCS−141E、TS−230E((株)アデカ製)等、ソルゲン30V、40、TW−20、TW−80、ノイゲンCX−100(第一工業製薬(株)製)等が例示される。
また、下記式で表されるアセチレングリコール系界面活性剤が挙げられる。
【0061】
【化2】
(式中、0≦p+q≦50、R
11、R
12、R
13、R
14はそれぞれ独立にアルキル基、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基である。)
【0062】
具体的には、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール等が例示され、市販品としてはサーフィノール104、82、465、485、またはTG(いずれもAir Products and Chemicals.Inc.より入手可能) 、オルフィンE1004、E1010(日信化学工業(株)製)等が例示される。
界面活性剤としては、上記に限られずアニオン系、カチオン系、両性又は非イオン系のいずれの界面活性剤も用いることができ、添加目的に合わせて適宜選択されればよい。
これらの界面活性剤は単独、または混合して添加してよい。
【0063】
(その他の添加剤)
酸化防止剤や紫外線吸収剤等の安定剤等を添加してもよい。酸化防止剤としてはBHA(2,3−ブチル−4−オキシアニソール)、BHT(2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール)、多価カルボン酸、エポキシ化大豆油等が例示される。また、紫外線吸収剤としてはベンゾフェノン系化合物、又はベンゾトリアゾール系化合物を用いることができる。
更に、その他の添加剤としては、表面調整剤、レベリング剤(アクリル系やシリコン系等)、消泡剤、pH調整剤、殺菌剤、防腐剤、防臭剤、電荷調整剤、湿潤剤等の公知の添加剤を任意成分として添加しても良い。
【0064】
<油性インク組成物の含有割合>
溶剤の含有量は、油性インク組成物中、通常50〜95質量%、好ましくは70〜95質量%、より好ましくは80〜95質量%である。
色材の含有量は、油性インク組成物中、通常0.5〜25質量%、好ましくは0.5〜15質量%、より好ましくは1〜10質量%である。
アクリル樹脂を含むバインダー樹脂の含有量は、油性インク組成物中、通常0.1〜10.0質量%、好ましくは1.0〜10.0質量%、より好ましくは3.0〜8.0質量%である。
上記アクリル樹脂を含むバインダー樹脂含有量の上限を超えた場合には、吐出応答性が低下したり、メンテナンス性が悪くなる恐れがある。また、上記バインダー樹脂の含有量の下限を超えた場合には、乾燥性が遅くなり、印刷面の耐擦過性、耐アルコール性が低下する恐れがある。
その他任意成分として分散剤を含む場合、色材100質量部に対して、通常5〜200質量部であり、好ましくは30〜120質量部であり、分散すべき色材によって適宜選択されれば良い。
その他任意成分として各種添加剤を含む場合、酸化防止剤は、通常、油性インク組成物中0.001〜3.0質量%である。また、紫外線吸収剤は、通常、油性インク組成物中0.01〜0.5質量%である。また、界面活性剤は、通常、油性インク組成物中0.5〜4.0質量%である。
【0065】
<油性インク組成物の調製方法>
本発明のインクジェット記録用油性インク組成物の調製方法において、各成分の配合順序および配合の仕方は任意であって、例えば製造工程の各段階における配合物の性状や製造上の容易さ等を考慮して定めることができる。例えば、各成分は、一種類ずつ独立して配合することもできるし、各成分の供給ならびに配合をまとめて行って各成分の配合物を一度に得ることも可能である。また、2種または3種以上の成分を予め配合した後に、残りの他の成分と配合することもできる。この際、2種または3種以上の成分を予め配合しておく場合には、予め配合する成分の量は各成分の全量であっても、各成分の所要量の一部分であってもよい。
【0066】
例えば、まず、前記混合溶剤に用いられる各溶剤の一部または全部を混合して油性インク組成物における溶媒とする。例えば分散剤を用いる場合、その溶媒に、色材と分散剤を添加し、ボールミル、ビーズミル、超音波、又はジェットミル等で混合・分散させて色材分散液を調製する。得られた色材分散液に、上記で得た溶媒の残部とバインダー樹脂、その他の添加剤を攪拌下に添加することにより得られる。例えばポリオキシアルキレングリコールジアルキルエーテル類溶剤中でラジカル重合開始剤を用いて溶液重合させたアクリル樹脂を用いる場合、溶液重合させたアクリル樹脂溶液をそのまま用いることもできる。
【0067】
得られるインクジェット記録用油性インク組成物は、20℃での粘度が2〜15mPa・s、好ましくは3〜5mPa・sに調整されることが好ましい。
また、本発明の油性インク組成物における表面張力は、インクの濡れ広がり性と、インク滴の吐出性の点から、通常20〜50mN/m、好ましくは、20〜35mN/mである。表面張力は表面張力計(例えば、協和界面科学(株)製、「DY−300」)により測定したものである。
これらの物性は、上記に限定されることなく、インクジェットヘッドの特性に合わせて任意に調整できる。
【0068】
本発明のインクジェット記録用油性インク組成物が適用される記録媒体としては、印刷面が主として樹脂からなるものが好適に用いられ、当該樹脂としては、ポリ塩化ビニル系重合体やアクリル、PET、ポリカーボネート、PE、PP等が用いられる。特に、印刷面が硬質または軟質ポリ塩化ビニル系重合体からなる記録媒体への記録に適している。印刷面がポリ塩化ビニル系重合体からなる記録媒体としては、ポリ塩化ビニル基材(フィルム又はシート)等が例示される。
本発明のインクジェット記録用油性インク組成物は、ポリ塩化ビニル基材における無処理表面への印刷を可能とするものであるが、インク受容性樹脂により表面処理された印刷面を有するポリ塩化ビニル基材、PETフィルムや紙等であっても良い。
【0069】
本発明のインクジェット記録用油性インク組成物は、色材、溶剤及びアクリル樹脂を含有する油性インク組成物であって、前記溶剤(A)と、溶剤(B)と、溶剤(C)とを含み、
前記溶剤(A)と前記溶剤(B)の合計含有量が全溶剤中に50〜95質量%であり、且つ、前記溶剤(A)と前記溶剤(B)との質量比が5/95〜40/60であることを特徴とするものである。
そのため、本発明のインクジェット記録用油性インク組成物は、印刷乾燥性は担保しながら、送液チューブに対するインクの浸透性が低く、送液チューブ内のインクの乾燥が抑制され、インクの流動性を確保することが可能になり、クリーニング回復性に優れるので、例えば、インクジェットヘッドのクリーニングシステムを備えたインクジェット記録装置を用いて、インクをインクジェット方法で吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録方法に有利に用いることができる。
また、本発明のインクジェット記録用油性インク組成物は、高速印刷時においても高い吐出応答性を有するので、例えば、インクジェットヘッドとして高密度ヘッドのクリーニングシステムを備えたインクジェット記録装置を用いて、インクをインクジェット方法で吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録方法に有利に用いることができる。
【0070】
2.インクジェット記録方法
本発明に係るインクジェット記録方法は、インクをインクジェット方法で吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録方法であって、前記インクとして、前記本発明に係るインクジェット記録用油性インク組成物を用いることを特徴とする。好ましくは、インクジェットヘッドのクリーニングシステムを備えたインクジェット記録装置を用いて記録媒体に記録を行う、インクジェット記録方法である。
本発明に係るインクジェット記録方法は、従来公知のインクジェットヘッドのクリーニングシステムを備えたインクジェット記録装置のいずれにも適用可能である。中でもインクジェットヘッドのノズル内に残留あるいは目詰まり等しているインクを吸引する構成を少なくとも有するクリーニングシステムを備えたインクジェット記録装置に好ましく適用することができる。また、送液ポンプ接続等にエラストマー製等可撓性送液チューブが用いられているクリーニングシステムを備えたインクジェット記録装置に好ましく用いられる。ここで送液チューブに用いられるエラストマーとしては、例えばEPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)、ブチルゴム、シリコンゴム、タイゴン(登録商標)などが挙げられる。
前記本発明に係るインクジェット記録方法は、前記本発明に係るインクジェット記録用油性インク組成物を用いる。該インクジェット記録用油性インク組成物を用いるため、インクジェットヘッドのクリーニングシステムを備えたインクジェット記録装置を用いて記録媒体に記録を行う場合であっても、長期に渡って送液チューブの目詰まり等の不具合が生じにくく、好適である。
インクジェット記録装置のその他の構成は従来公知のものと同様であってよい。
また、本発明に係るインクジェット記録方法に用いられる記録媒体は、上述の記録媒体と同様であってよい。
【実施例】
【0071】
以下、本発明について実施例を示して具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。
なお、重量平均分子量は、東ソー(株)製の「HLC−8220GPC」(カラム:Shodex LF−404(昭和電工(株))製、カラム温度、40℃、移動相:THF(テトラヒドロフラン)、移動相流量:0.35mL/min.、試料濃度0.2質量%溶液、試料注入量10μL、検出器:示差屈折計)にて、ポリスチレンを標準としたゲル浸透クロマトグラフ(GPC)により測定を行った。
平均粒径(D50)とは、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での体積平均粒径を意味する。本発明においては日機装(株)製の粒度分析計マイクロトラックUPA150を使用して測定した。
また、粘度は、アントンパール社製「AMVn」粘度計を使用して測定した。
【0072】
(合成例1:アクリル樹脂1の合成)
100℃に保たれたジエチレングリコールジエチルエーテル300g中に、メタクリル酸メチル200gとt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート6.3gとの混合物を1.5時間かけて滴下した。滴下終了後、100℃で2時間反応させた後冷却して、無色透明のメタクリル酸メチルの重合体溶液(固形分39.5%)を得た。得られた重合体(アクリル樹脂1)のTgは105℃、重量平均分子量は18000であった。
【0073】
(合成例2:アクリル樹脂2の合成)
メタクリル酸メチル200gとt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート12.6gとの混合物を使用し、アクリル樹脂1と同様の合成方法により、無色透明のメタクリル酸メチルの重合体溶液(固形分39.5%)を得た。得られた重合体(アクリル樹脂2)のTgは105℃、重量平均分子量は11000であった。
【0074】
(合成例3:アクリル樹脂3の合成)
メタクリル酸メチル200gとt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート2.0gとの混合物を使用し、アクリル樹脂1と同様の合成方法により、無色透明のメタクリル酸メチルの重合体溶液(固形分39.4%)を得た。得られた重合体(アクリル樹脂3)のTgは105℃、重量平均分子量は48000であった。
【0075】
(合成例4:アクリル樹脂4の合成)
メタクリル酸メチル180gとメタクリル酸n−ブチル20gとt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート3.6gとの混合物を使用し、アクリル樹脂1と同様の合成方法により、無色透明のメタクリル酸メチルとメタクリル酸n−ブチルとの共重合体溶液(固形分39.8%)を得た。得られた重合体(アクリル樹脂4)のTgは94℃、重量平均分子量は30000であった。
【0076】
[実施例1]
溶媒として下記の組成の混合溶剤を準備した。
溶剤(A):トリエチレングリコールジエチルエーテル 10.5質量部
溶剤(B):ジエチレングリコールジエチルエーテル 65.8質量部
溶剤(C):γ−ブチロラクトン 13.0質量部
上記組成の溶媒の一部に、カーボンブラック(MA−8、三菱化学(株)製)4.0質量部と分散剤(ポリエステル系高分子化合物、ソルスパース32000、ルブリゾール社製)2.0質量部とを添加し、ディゾルバーで3,000rpmにて1時間攪拌した後、ジルコニアビーズ(2mm)を充填したビーズミルで予備分散した。更に、ジルコニアビーズ(0.3mm)を充填したナノミルで本分散を行ない、色材分散液を得た。平均粒径は65.0nmであった。
得られた色材分散液を4,000rpmで攪拌しながら、上記合成例1の重合体溶液を11.4質量部(アクリル樹脂1 固形分4.5質量部)と塩化ビニル及び酢酸ビニルを含む共重合体(商品名ソルバインCL 日信化学工業(株)製)を0.5質量部と、上記で作製した混合溶剤の残部とを添加して本発明のインクジェット記録用油性インク組成物を調製した。粘度は4.7mPa・s(20℃)であった。
【0077】
[実施例2〜27]
用いる混合溶剤、バインダー樹脂、及び色材、及びこれらの含有量を以下の表1及び表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜27のインクジェット記録用油性インク組成物を調製した。各色材の分散液の平均粒径は、シアンは110nm、マゼンタは155nm、イエローは135nmであった。インクジェット記録用油性インク組成物の粘度も表1及び表2に併せて示す。また、表1及び表2において、バインダー樹脂の配合量は固形分量で示している。
なお実施例1で使用したもの以外の溶剤、バインダー樹脂、分散剤、色材、界面活性剤の略号は以下の通りである。
・エクアミドM100(商品名、前記一般式(3)で表されるアミド系溶剤において、R
5がメチル基、R
6及びR
7がメチル基である、出光興産(株)製)
・塩酢ビ共重合体1(塩化ビニル及び酢酸ビニルを含む共重合体、商品名ソルバインCL、日信化学工業(株)製)
・塩酢ビ共重合体2(塩化ビニル及び酢酸ビニルを含む共重合体、商品名ソルバインC、日信化学工業(株)製)
・分散剤1(ポリエステル系高分子化合物、ソルスパース32000、ルーブリゾール社製)
・分散剤2(ポリエステル系高分子化合物、ソルスパース33000、ルーブリゾール社製)
・界面活性剤1 (ノニオンE−202S、日本油脂(株)製)
・界面活性剤2 (ソルゲン30V、第一工業製薬(株)製)
・界面活性剤3 (フローレンD−90、共栄社化学(株)製)
・シアン(P.B.15:4)(シアニンブルーCP−1、大日精化工業(株)製)
・マゼンタ(P.R.122)(FASTGEN SUPER MAGENTA RG、DIC(株)製)
・イエロー(P.Y.155)(INK JET YELLOW 4GC VP 3854、クラリアント社製)
【0078】
[比較例1〜21]
用いる混合溶剤、バインダー樹脂、及び色材、及びこれらの含有量を以下の表3及び表4に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例1〜21のインクジェット記録用油性インク組成物を調製した。各インクジェット記録用油性インク組成物の粘度も表3及び表4に併せて示す。
【0079】
<評価>
評価基準において、評価AA、A、及びBは、従来のものより優れているか実用上問題のない範囲であり、評価Cは従来のものと比べて優位性が見られないか実用上問題があるものである。
なお、印刷を用いた評価は、ポリ塩化ビニルフィルム(IMAGin JT5829R:MACtac社製)に印刷して行った。
(1)チューブ乾燥性
メンテナンス性の1つの評価として、送液チューブに用いられるエラストマー製チューブ内における乾燥性を評価した。具体的には、外径4mm×内径2mmのEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)製チューブ11cm内に、各インクジェット記録用油性インク組成物を3mL入れて密栓し、40℃で1週間放置し、チューブ内のインク組成物の状態を評価した。
評価A:インクに流動性がありチューブ内で固化していない。
評価C:インクが固化しており、チューブに詰まりが発生している。
【0080】
(2)クリーニング回復性
メンテナンス性の1つの評価として、ヘッドでのノズル詰まりが発生した際に、プリンタのクリーニング動作によりノズル詰まりの解消が行えるかを評価した。
具体的には、クリーニングシステムを備えたプリンタ(商品名 SOLJET PRO4 XR−640、ローランドDG(株)製)を用いて、各インクジェット記録用油性インク組成物を充填して2.70m
2印刷後、室温25℃にて1週間放置し、その後評価を行った。
評価AA:ノズル詰まりがない。
評価A :ノーマルクリーニング1回でノズル詰まりを解消する。
評価B :ノーマルクリーニング3回でノズル詰まりを解消する。
評価C :ノーマルクリーニング3回でもノズル詰まりを解消しない。
ここでのノーマルクリーニングとは、起動時や印刷工程中にドット抜けなどが生じたときに使用されるクリーニング方法で、時間が短く、使用するインク消費量が比較的少ない。
【0081】
(3)画像再現性
プリンタ(商品名 SOLJET PRO4 XR−640、ローランドDG(株)製)により、各インクジェット記録用油性インク組成物を用いて、高品質印刷モード(1440x720dpi)にてベタ部および細線の印刷を行い、目視により評価した。
評価A :滲み及びバンディングのいずれも発生しない。
評価B :滲み及びバンディングのいずれかが少し発生するが、意匠性は損なわない。
評価C :滲み及びバンディングの少なくとも一方がひどく、意匠性を損なっている。
【0082】
(4)印刷乾燥性
プリンタ(商品名 SOLJET PRO4 XR−640、ローランドDG(株)社製)により、各インクジェット記録用油性インク組成物を用いて、高品質印刷モード(1440x720dpi)でベタ部の印刷を行い、40℃で乾燥するまでの時間を計測した。
評価AA:3分未満で乾燥する。
評価A :3分以上5分未満で乾燥する。
評価B :5分以上7分未満で乾燥する。
評価C :7分以上で乾燥する。
【0083】
(5)高速印刷適性
高密度ヘッドを採用しているプリンタ(商品名 SOLJET PRO4 XR−640、ローランドDG(株)社製)により、各インクジェット記録用油性インク組成物を用いて、双方向の高速印刷モード(360x360dpi)にて細線を印刷し、目視で確認して評価した。
評価A :細線が正しく再現できている。
評価B :やや着弾位置がずれ、曲がりがみられる。
評価C :着弾位置のずれが大きい。
【0084】
(6)巻き取り後の裏移り性
プリンタ(商品名 SOLJET PRO4 XR−640、ローランドDG(株)社製)により、各インクジェット記録用油性インク組成物を用いて、ベタ部の印刷を行い、印刷物を巻き取り後24時間放置し、その後広げて、フィルムの印刷物表面と重なっていた背面への裏移り及び印刷物表面を評価した。
評価A :巻き取り後に背面への裏移りは見られない。
評価B :巻き取り後に背面への裏移りは生じるが、印刷物表面への影響は少なく遜色ない。
評価C :巻き取り後に背面への裏移りがみられ、印刷物表面が荒れている。
【0085】
(7)記録媒体収縮率
プリンタ(商品名 SOLJET PRO4 XR−640、ローランドDG(株)社製)により、各インクジェット記録用油性インク組成物を用いて、高品質印刷モード(1440x720dpi)にてベタ部を30cm×30cm印刷し、乾燥後、記録媒体であるポリ塩化ビニルフィルムの収縮率を評価した。なお、高品質印刷モードとは精細な液滴を大量に吐出する印刷方法で、液滴が多いため、記録媒体の変形を引き起こし易くなる。
評価A:面積収縮率が0.5%未満である。
評価B:面積収縮率が0.5%以上1.5%未満である。
評価C:面積収縮率が1.5%以上である。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
【表3】
【0089】
【表4】
【0090】
(結果のまとめ)
表1及び表2から、本発明のインクジェット記録用油性インク組成物は、チューブ乾燥性、クリーニング回復性、画像再現性、印刷乾燥性、高速印刷適性のいずれの項目にも満足できるものであり、高密度ヘッドに対応可能な高い吐出応答性と、優れたメンテナンス性と、良好な画像再現性と印刷乾燥性とを備えたインクジェット記録用油性インク組成物であることが明らかにされた。また、本発明のインクジェット記録用油性インク組成物は、巻き取り後の背面への裏移り性、及び記録媒体の収縮を抑制する効果にも優れることが明らかにされた。
一方、溶剤(A)を組み合わせて用いなかった比較例1は、チューブ乾燥性及び高速印刷適性に劣っていた。溶剤(B)を組み合わせて用いなかった比較例2〜5は、画像再現性、印刷乾燥性、及び巻き取り後の背面への裏移り性に劣っていた。溶剤(A)の代わりに、末端にメチル基を含むポリエチレングリコールジアルキルエーテルを用いた比較例6〜10は、チューブ乾燥性やクリーニング回復性に劣るか、高速印刷適性に劣っており、更に記録媒体が収縮し易い傾向があった。溶剤(A)と溶剤(B)を本願の規定の範囲外の割合で用いた比較例11〜12は、画像再現性及び巻き取り後の背面への裏移り性に劣るか、或いは、チューブ乾燥性及び高速印刷適性に劣っていた。バインダー樹脂として、アクリル樹脂を用いずに、塩化ビニル及び酢酸ビニルを含む共重合体のみを用いた比較例13は、高速印刷適性に劣っていた。溶剤(C)を組み合わせて用いなかった比較例14は、チューブ乾燥性、クリーニング回復性、及び画像再現性に劣っていた。特許文献3の実施例と同様の溶剤及びバインダー樹脂を用いた比較例15は、画像再現性、及び巻き取り後の背面への裏移り性に劣っており、更に記録媒体が収縮し易かった。特許文献3の実施例と同様の溶剤に、本願と同様のアクリル樹脂を組み合わせて用いた比較例16は、巻き取り後の背面への裏移り性は改善がみられたものの、画像再現性に劣り、更に記録媒体が収縮し易かった。末端にメチル基を含むその他のポリエチレングリコールジアルキルエーテルとラクトン系溶剤を組み合わせて用いた比較例17〜21は、チューブ乾燥性やクリーニング回復性に劣るか、高速印刷適性に劣るか、画像再現性に劣っており、更に記録媒体が収縮し易い傾向があった。