【実施例】
【0020】
(実施例1)
【0021】
図1を参照し、本発明の実施例1について説明する。
図1は、実施例1に係る中性子検出器で使用する中性子検出素子の構造を概略的に示している。この中性子検出素子は、円筒状基板の外側にZnS蛍光体と
6LiF中性子コンバータ材とを含んだ中性子検出体が配置された構造の内側円筒状中性子シンチレータの上側に、2本の波長シフトファイバ(1a, 2a)を円筒に沿って平行に巻いたコイル状波長シフトファイバを配置し、その2本の波長シフトファイバ(1a, 2a)の両方の終端を内側円筒状中性子シンチレータ3bの円筒状基板の内側内部に導き、その終端に波長シフトファイバ内で波長シフトされた蛍光を光検出器まで導く光ファイバ(1, 2)を光学接続し、かつ2本の波長シフトファイバのもう1つの端面を鏡面とした後光反射板(1b, 2b)を接着した構造のシンチレータ蛍光検出体を配置し、さらに、そのシンチレータ蛍光検出体の上側に、円筒状の基板の内側にZnS蛍光体と
6LiF中性子コンバータ材とを含んだ中性子検出体が配置された構造の外側円筒状中性子シンチレータ3aを配置して作製した。
【0022】
最初に、中性子検出素子の製作に使用したそれぞれの構成材料について詳細に述べる。円筒状の基板の材料はアルミニウムとし市販品規格A1052の厚さ0.3mmのアルミニウム板を使用した。本実施例で使用する中性子用シンチレータとしては、ZnS蛍光体としてZnS:Ag蛍光体を用い、中性子コンバータとしては
6LiFを用い、これらを接着剤で混合して作製した英国AST(Applied scintillation technologies)社製ZnS/
6LiF半透明シンチレータを使用する。ZnS:Ag蛍光体と
6LiFの混合比が2:1のタイプのシンチレータとし、厚さは0.4mmである。ZnS:Agの蛍光波長の中心は450nmであり、360nmから540nmまで幅広い波長の蛍光を発生し、短寿命成分の蛍光寿命は約450nsである。
【0023】
波長シフトファイバ(1a, 2a)としては、350nmから440nmまでの蛍光に感度があり、中心波長が490nmの蛍光に波長変換する、米国SAINT−GOBAIN社製BCF−92MCを用いる。波長シフトファイバの形状は円形とし、直径0.75mmとする。
【0024】
光学接続する光ファイバ(1, 2)については、直径が0.75mmの(株)TORAY社製プラスチック光ファイバPGU−FB 750を使用する。アルミニウム製反射板の材料としては、厚さは0.3mmの(株)マテリアルハウス製高反射率アルミシート「MIRO」を用いる。本アルミシートの全反射率は95%以上であり拡散反射率は5%未満である。
【0025】
なお、本実施例では、光ファイバとしてプラスチック光ファイバを用いたが、プラスチック光ファイバは多くの水素原子を有することが原因で入射する中性子を散乱させることから、中性子検出素子の円筒管内部に大量に本ファイバが配線された場合、この散乱中性子が隣の中性子検出素子に入射し検出され異なった位置情報を出力したり、中性子検出器の外部に抜けて離れた中性子検出器で検出されバックグラウンドとなる。このような検出特性が重要な中性子検出システムが要求される場合には光ファイバとしてガラス光ファイバを用いることによりこれらの検出特性を改善できる。
【0026】
次に、中性子検出素子の構造について実施例を述べる。外径19.1mm、内径18.5mm、厚さ0.3mmで長さが20mmの円筒状のアルミニウム基板の外側にAST社製ZnS/
6LiF半透明シンチレータを接着して固定し内側円筒状中性子シンチレータとする。
図2に内側円筒状中性子シンチレータ3bと外側円筒状中性子シンチレータ3aの構造図を示す。2本の波長シフトファイバの間隔は波長シフトファイバの中心から中心への距離として1.5mmと2.25mmの2種類の間隔について比較のため試作を行った。2本の波長シフトファイバを平行に等間隔でコイル状に、間隔が1.5mmの場合6.7回、そして2.25mmの場合4回巻いた。
【0027】
本実施例では、
図3のシンチレータ蛍光検出体のみの構造(1)に示すように巻いた2本の波長シフトファイバ(1a, 2a)のそれぞれの対応の光ファイバ(1, 2)との接続端は、1本は巻き始めとしもう一本は巻き終わりとする。なお、
図4のシンチレータ蛍光検出体のみの構造(2)に示すように2本とも巻き終わりすることもできる。
【0028】
巻き終えた2本の波長シフトファイバの両方の終端は内側円筒状中性子シンチレータ3bの円筒状の基板の内側内部に導かれ、波長シフトファイバにより波長シフトされた蛍光を光検出器(図示せず)まで導く光ファイバに接続される。接続は、波長シフトファイバの端面を鏡面に磨いた後、アルミニウム製の内径0.8mm、外径1.2mm、長さ2mmのガイド管の中間に入れ、同様に鏡面に磨いた光ファイバの端面と接着剤を用いて接着して行う。光ファイバ(1, 2)の長さは、光検出器までの長さ以上とし、最終的に、片側あるいは両側に配置された光検出器に光学接続する際に長さを決定し、光ファイバを切断した後端面を磨き光検出器の検出面に光学接続する。
【0029】
一方、波長シフトファイバ(1a, 2a)の反対側についても円筒状の基板の内側内部に導き、その端面を鏡面に磨いた後、1.2mm×1.2mm角に切ったアルミニウム製反射板(1b, 2b)の鏡面部分を接着剤で接着する。接着剤としては透明接着剤である(株)コニシ製S・Uを用いる。この作業によりシンチレータ蛍光検出体が完成する。
【0030】
さらに、このシンチレータ蛍光検出体の上側に、外径23mm、内径22.4mm、厚さ0.3mmで長さ20mmの円筒状のアルミニウム基板の内側にAST社製ZnS/
6LiF半透明シンチレータを接着して固定した外側円筒状中性子シンチレータ3a(
図1)を配置する。最終的に完成した中性子検出素子の大きさは内径18.5mm、外径は工作精度等を含めると23mmとなり、長さは20mmである。
【0031】
実施例で製作した中性子検出素子から出る2本の光ファイバを光検出器に光学接続し、光検出器により検出して得られた2つの蛍光信号の同時計測を行い入射した中性子を検出する評価試験を試作した2種類の中性子検出素子について行った。評価試験を行うための装置の構成図を
図5に示す。
【0032】
この中性子検出素子は、内径23.4mm、外径は25.4mm、厚さ1mmで長さ100mmのアルミニウム製円筒管の中間に設置した。円筒管の片側はアルミニウム板で遮光し、片側に光検出器を装着し遮光して使用した。光検出器としては、フォトン計数に使用可能で、一つのチャネルの有感サイズが2mm×2mmの64チャンネルマルチアノード光電子増倍管である浜松ホトニクス製H7546を用い、64チャネルの検出器のうち2チャンネルのみ使用して試験を行った。
【0033】
波長シフトファイバから出力される蛍光は非常に少ないため、本実施例では2つの光電子増倍管から出力される各蛍光信号はフォトン計測法を用いて信号処理した。
【0034】
光電子増倍管から出力された各フォトン信号は高速IC増幅器で構成されたフォトン信号増幅器により増幅した後、それぞれディスクリミネータ回路から構成されたフォトン信号弁別回路によりフォトンデジタルパルス信号を得る。本フォトン信号処理回路の概略の構成図を
図6に示す。
【0035】
フォトン信号増幅器としては、高速IC増幅器であるアナログデバイセス社製AD8001を2個用いて、増幅帯域幅200MHzで60倍のゲインの性能を持つ増幅器を構成する。フォトン信号弁別回路としては、高速のディスクリミネータICとしてアナログデバイセス社製AD8611を用いる。このような構成の電子回路を用いることによりフォトン1個の信号としてパルス時間幅が約5nsのフォトンデジタルパルス信号とすることができる。
【0036】
次に、各光電子増倍管から出力されたフォトンにより生成されたフォトンデジタルパルス信号は、そのパルス時間幅に合致した間隔幅のクロック信号を用いて、ゲート回路から構成される同期信号化回路を用いてクロック信号と同期を取った信号として取り出し、同期化フォトン信号とする。クロック信号の周波数は、フォトンデジタルパルス信号のパルス時間幅が5nsであることから、同じパルス時間幅の5nsを生成する100MHzとする。
【0037】
最初に来たフォトンデジタルパルス信号をスタート時間信号としてフォトンデジタル計数回路により一般の同時計数回路における同時計数時間にあたる計数時間の間計数する。本回路を2つ使用し2つの光ファイバに該当するフォトン積分値を求めあらかじめ設定しておいたフォトン弁別値以上の積分値が計数時間の間に両方の回路から得られた時中性子信号として出力した。本実施例では、各光電子増倍管に対応して設定されるフォトン弁別値として5フォトンを弁別値とする。
【0038】
なお、これらのデジタル信号処理回路はFPGA(Free Programmable Gate Array )を用いることにより行うことができる。デジタル信号処理回路の構成図を
図7に示す。
【0039】
本実施例では、計数時間としては、中性子が入射した際ZnS:Ag蛍光体から放出される蛍光を有効に利用するため、5μsの時間幅とする。
【0040】
中性子線源としてカルフォルニウム線源を用いて本中性子検出素子の中性子検出効率を測定した。中性子検出器は中性子ビームがほぼ平行になるようにカルフォルニウム線源の減速材体系から50cm離れた場所に設置した。測定場所の中性子ビームの強度を検出効率が分かっている
3Heガス中性子検出器により校正し、31.2n/s・cm
2であることを確認した。その結果、波長シフトファイバの間隔を1.5mm間隔で6.7回巻いた場合には熱中性子に対して80%の検出効率が、そして波長シフトファイバの間隔を2.25mm間隔で4回巻いた場合には熱中性子に対して69%の検出効率が得られた。
【0041】
次に、シンチレータを用いた中性子検出器の場合、バックグラウンドとして大きな問題となるガンマ線感度について評価試験を行った。本実施例の場合、中性子シンチレータとしてZnS/
6LiF半透明シンチレータを用いているため、シンチレータによって検出されたガンマ線による蛍光の量は少なく、シンチレータの厚みも0.4mmと非常に薄いため、シンチレータによるガンマ線感度は非常に低い。本中性子検出素子によるガンマ線検出の大きな原因は、もともと波長シフトファイバはガンマ線検出用のプラスチックファイバと同じ構成であることにある。ガンマ線が波長シフトファイバに入射し吸収され一次電子を放出した場合、その電子が多くの蛍光を波長シフトファイバ内で生成する。
【0042】
しかし、上記で述べたように2本の波長シフトファイバの同時計測を行うことによりガンマ線感度を大きく低下させることができる。その理由は、同時計測によるガンマ線検出の可能性は一方の波長シフトファイバでガンマ線により生成され抜け出した一次電子がもう一方の波長シフトファイバに入射した時に生ずるためである。このため、2本の波長シフトファイバの間隔をあけて配置すればガンマ線検出の可能性は大幅に低減できる。一方、中性子がシンチレータ内で発生した蛍光は拡散して2本の波長シフトファイバに入射することが可能なので同時計測を行うことにより中性子信号として確定できる。
【0043】
同時計測回路における同時計数時間(コインシデンス時間)としては、中性子が入射した際ZnS:Ag蛍光体から放出される蛍光を有効に利用するため、5μsの時間幅とする。
【0044】
ガンマ線源として
60Co線源を用いて中性子検出素子のガンマ線感度を評価した。
60Co線源と中性子検出器との距離を5cmとし、ガンマ線を600秒測定し、その検出計数を検出器にガンマ線が入射した数で割ることによりガンマ線感度を求めた。その結果、波長シフトファイバの間隔を1.5mm間隔で6.7回巻いた場合には3×10
−7のガンマ線感度が、そして波長シフトファイバの間隔を2.25mm間隔で4回巻いた場合には6×10
−7のガンマ線感度が得られた。測定時間が短く統計誤差も大きい測定条件ではあるが、本測定結果より本発明の中性子検出器がガンマ線に対して十分低い感度を示すことが確認できた。
(実施例2)
【0045】
次に、中性子検出素子を32個中性子検出素子配置用円筒管の内部に密に並べて配置し、中性子検出素子の円筒状基板内側の空間を光ファイバの配線用導管として使用してそれぞれ2本の光ファイバを中性子検出素子配置用円筒管の両側に配置された2つの光検出器まで導き、各中性子検出素子から出た光ファイバをそれぞれ対としてまとめて2組の光ファイバ束とした後2つの光検出器で検出し、2つの光検出器によりパルス信号に変換された蛍光信号を同時計測回路に導き、あらかじめ設定した時間内に2個の蛍光信号が同時計測した時中性子信号として出力することにより中性子検出を行う中性子検出器について
図8を基に説明する。
【0046】
本実施例で使用する中性子検出素子の中性子検出素子の構造は、位置分解能を必要としないためできるだけ素子の長さが長い方がコスト的に有利なことから実施例1に述べた長さの2倍の40mmとする。使用する構成材料については実施例1と同じである。
【0047】
外径19.5mm、内径18.5mm、厚さ0.3mmで長さが40mmの円筒状のアルミニウム基板の外側にAST社製ZnS/
6LiF半透明シンチレータを接着して固定し内側円筒状中性子シンチレータとする。2本の波長シフトファイバの間隔はできるだけあけた方が後に述べる理由のため有利なことから、波長シフトファイバの中心から中心の距離として2.25mmの間隔で、2本の波長シフトファイバを平行に等間隔でコイル状に、8回巻いた。本実施例では、巻いた2本の波長シフトファイバの光ファイバとの接続端は
図3に示すように1本は巻き始めとしもう一本は巻き終わりとする。波長シフトファイバの1本の長さは約500mmである。
【0048】
巻き終えた2本の波長シフトファイバの両方の終端は内側円筒状中性子シンチレータの円筒状の基板の内側内部に導かれ、波長シフトファイバにより波長シフトされた蛍光を光検出器まで導く光ファイバに接続される。接続は、波長シフトファイバの端面を鏡面に磨いた後、アルミニウム製の内径0.8mm、外径1.2mm、長さ2mmのガイド管の中間に入れ、同様に鏡面に磨いた光ファイバの端面と接着剤を用いて接着して行う。光ファイバの長さは、光検出器までの長さ以上とし、最終的に、両側に配置された光検出器に光学接続する際に長さを決定し、光ファイバを切断した後端面を磨き光検出器の検出面に光学接続する。
【0049】
一方、波長シフトファイバの反対側についても円筒状の基板の内側内部に導き、その端面を鏡面に磨いた後、1.2mm×1.2mm角に切ったアルミニウム製反射板の鏡面部分を接着剤で接着する。接着剤としては透明接着剤である(株)コニシ製S・Uを用いる。この作業によりシンチレータ蛍光検出体が完成した。
【0050】
さらに、このシンチレータ蛍光検出体の上側に、外径23mm、内径22.4mm、厚さ0.3mmで長さが40mmの円筒状のアルミニウム基板の内側にAST社製ZnS/
6LiF半透明シンチレータを接着して固定した外側円筒状中性子シンチレータを配置する。
【0051】
最終的に完成した中性子検出素子の大きさは内径18.5mm、外径は工作精度等を含めると23mmとなり、長さは40mmである。なお、中性子検出素子の長さを40mm以上にすることは構造上可能であるが使用する波長シフトファイバが直線で500mm以上となり、波長シフトファイバ内で波長シフトされた蛍光が自己吸収を行い60%より以下しか端面に到達しなくなるため、全体として中性子に対する検出効率が低下し、かつ検出位置によって波長シフトファイバの感度が大きく変化するため中性子検出効率が一様でなくなり中性子検出器としての性能を確保することが困難となる。
【0052】
実施例として中性子検出素子配置用円筒管にこの中性子検出素子を32個並べるため、中性子検出素子配置用円筒管の大きさは、内径は23.4mm、外径25.4mm、厚さ1mmとする。その長さは検出部分が40mm×32=1280mmであるが光ファイバ束に束ねる必要があるため両側に30mmの余裕をとり1340mmとする。円筒管の材料は市販品規格A5052のアルミニウムとする。
【0053】
本実施例においては、中性子検出素子から出てくる2本の光ファイバは中性子検出素子配置用円筒管の両側に集めて検出処理を行うことにする。中性子検出素子から出てくる2本の光ファイバを両側に集めて2組の光ファイバ束とした場合、1組32本の光ファイバで構成するため円形にまとめると直径約6mmの光ファイバ束となる。
【0054】
一方、光電子増倍管については浜松ホトニクス製でフォトン計数に使用可能な外径25mmのR1924Aを用いる。有感直径は22mmであり直径約6mmの光ファイバ束を検出するためには十分である。印加電圧1000Vで2x10
6のゲインなのでフォトン計数を十分行うことができる。この光電子増倍管を中性子検出素子配置用円筒管の両側に設置し遮光する。
【0055】
波長シフトファイバから出力される蛍光は非常に少ないため、本実施例では2つの光電子増倍管から出力される各蛍光信号はフォトン計測法を用いて信号処理した。
【0056】
光電子増倍管から出力された各フォトン信号は高速IC増幅器で構成されたフォトン信号増幅器により増幅した後、それぞれディスクリミネータ回路から構成されたフォトン信号弁別回路によりフォトンデジタルパルス信号となる。
フォトン信号増幅器としては、高速ICであるアナログデバイセス社製AD8001を2個用いて、増幅帯域幅200MHzで60倍のゲインの性能を持つ増幅器を構成する。フォトン信号弁別回路としては、高速のディスクリミネータICとしてアナログデバイセス社製AD8611を用いる。このような構成の電子回路を用いることによりフォトン1個の信号としてパルス時間幅が約5nsのフォトンデジタルパルス信号とすることができる。
【0057】
次に、各光電子増倍管から出力されたフォトンにより生成されたフォトンデジタルパルス信号は、そのパルス時間幅に合致した間隔幅のクロック信号を用いて、ゲート回路から構成される同期信号化回路を用いてクロック信号と同期を取った信号として取り出し、同期化フォトン信号とする。クロック信号の周波数は、フォトンデジタルパルス信号のパルス時間幅が5nsであることから、同じパルス時間幅の5nsを生成する100MHzとする。
【0058】
最初に来たフォトンデジタルパルス信号をスタート時間信号としてフォトンデジタル計数回路により一般の同時計数回路における同時計数時間にあたる計数時間の間計数する。本回路を2つ使用し2つの光ファイバに該当するフォトン積分値を求めあらかじめ設定しておいたフォトン弁別値以上の積分値が計数時間の間に両方の回路から得られた時中性子信号として出力した。本実施例では、各光電子増倍管に対応して設定されるフォトン弁別値として5フォトンを弁別値とする。
【0059】
本実施例では、計数時間としては、中性子が入射した際ZnS:Ag蛍光体から放出される蛍光を有効に利用するため、5μsの時間幅とする。
【0060】
以上のように構成することにより中性子に対する有感面積が幅22mm長さ1280mmの大面積中性子検出器を構成することができる。
(実施例3)
【0061】
実施例3では、実施例1で構成された中性子検出素子を中性子検出素子配置用円筒管の内部に28個密に並べて配置して、それぞれの中性子検出素子を一次元位置検出体とし、中性子検出素子の円筒状基板内側の空間を光ファイバの配線用導管として使用して中性子検出素子から出た2本の光ファイバを中性子検出素子配置用円筒管の片側に配置された多チャンネル光検出器まで導き、各中性子検出素子から出た2本の光ファイバを対として2つの光検出器でそれぞれ検出し、これら2つ光検出器によりパルス信号に変換された蛍光信号を同時計測回路に導き、各中性子検出素子について、あらかじめ設定した時間内に2個の信号が同時計測した時中性子信号として出力することにより、中性子検出素子配置用円筒管に28個配置された中性子検出素子における中性子入射位置を決定し、中性子の一次元検出を行う中性子検出器について説明する。
【0062】
本実施例における中性子検出素子の構造について
図9をもとに述べる。使用する構成材料及び構造については実施例1と全く同じである。外径19.5mm、内径18.5mm、厚さ0.3mmで長さが20mmの円筒状のアルミニウム基板の外側にAST社製ZnS/
6LiF半透明シンチレータを接着して固定し内側円筒状中性子シンチレータとする。2本の波長シフトファイバの間隔を波長シフトファイバの中心から中心の距離として1.5mmとして2本の波長シフトファイバを平行に等間隔でコイル状に6.7回巻いた。
【0063】
本実施例では、巻いた2本の波長シフトファイバの光ファイバとの接続端は
図4に示すように両方とも巻き終わりとする。巻き終えた2本の波長シフトファイバの両方の終端は内側円筒状中性子シンチレータの円筒状の基板の内側内部に導かれ、波長シフトファイバにより波長シフトされた蛍光を光検出器まで導く光ファイバに接続される。接続は、波長シフトファイバの端面を鏡面に磨いた後、アルミニウム製の内径0.8mm、外径1.2mm、長さ2mmのガイド管の中間に入れ、同様に鏡面に磨いた光ファイバの端面と接着剤を用いて接着して行う。光ファイバの長さは、光検出器までの長さ以上とし、最終的に、片側に配置された光検出器に光学接続する際に長さを決定し、光ファイバを切断した後端面を磨き光検出器の検出面に光学接続する。
【0064】
一方、波長シフトファイバの反対側についても円筒状の基板の内側内部に導き、その端面を鏡面に磨いた後、1.2mm×1.2mm角に切ったアルミニウム製反射板の鏡面部分を接着剤で接着する。接着剤としては透明接着剤である(株)コニシ製S・Uを用いる。この作業によりシンチレータ蛍光検出体が完成した。
【0065】
さらに、このシンチレータ蛍光検出体の上側に、外径23mm、内径22.4mm、厚さ0.3mmで長さ20mmの円筒状のアルミニウム基板の内側にAST社製ZnS/
6LiF半透明シンチレータを接着して固定した外側円筒状中性子シンチレータを配置する。最終的に完成した中性子検出素子の大きさは内径18.5mm、外径は工作精度等を含めると23mmとなり、長さは20mmである。
【0066】
実施例として中性子検出素子配置用円筒管にこの中性子検出素子を28個並べるとすると中性子検出素子配置用円筒管の大きさは、内径は23.4mm、外径25.4mm、厚さ1mmとする。その長さは検出部分が20mm×28=560mmであるが光検出器にそれぞれ光学接続する必要があるため光検出器側に20mmの余裕をとり580mmとする。円筒管の材料は市販品規格A5052のアルミニウムとする。
【0067】
本実施例においては、中性子検出素子から出てくる2本の光ファイバは中性子検出素子配置用円筒管の片側に集めて検出処理を行うことにする。このため、円筒管の片側は遮光のためアルミニウム板を用いて封じ切る。内側円筒状中性子シンチレータの円筒状基板内側の空間を光ファイバの配線用導管として使用してそれぞれ2本の光ファイバを中性子検出素子配置用円筒管の片側に配置された多チャンネル光検出器まで導く。
【0068】
多チャンネル光検出器としては、フォトン計数に使用可能で、一つのチャネルの有感サイズが2mm×2mmの64チャンネルのマルチアノード光電子増倍管である浜松ホトニクス製H7546を用いることができる。印加電圧950Vで2×10
6のゲインが得られるのでフォトン計数を十分行うことができる。
【0069】
波長シフトファイバから出力される蛍光は非常に少ないため、本実施例では多チャンネル光電子増倍管から出力される各蛍光信号はフォトン計測法を用いて信号処理した。本光電子増倍管から出力された各フォトン電気信号は高速増幅器で構成されたフォトン信号増幅器により増幅した後、それぞれディスクリミネータ回路から構成されたフォトン信号弁別回路によりフォトンデジタルパルス信号となる。
【0070】
フォトン信号増幅器としては、各回路に高速IC増幅器であるアナログデバイセス社製AD8001を2個用いて、増幅帯域幅200MHzで60倍のゲインの性能を持つ増幅器を構成する。フォトン信号弁別回路としては、高速のディスクリミネータICとしてアナログデバイセス社製AD8611を用いる。このような構成の電子回路を用いることによりフォトン1個の信号としてパルス時間幅が約5nsのフォトンデジタルパルス信号とすることができる。
【0071】
次に、各光電子増倍管から出力されたフォトンにより生成されたフォトンデジタルパルス信号は、そのパルス時間幅に合致した間隔幅のクロック信号を用いて、ゲート回路から構成される同期信号化回路を用いてクロック信号と同期を取った信号として取り出し、同期化フォトン信号とする。クロック信号の周波数は、フォトンデジタルパルス信号のパルス時間幅が5nsであることから、同じパルス時間幅の5nsを生成する100MHzとする。
【0072】
最初に来たフォトンデジタルパルス信号をスタート時間信号としてフォトンデジタル計数回路により一般の同時計数回路における同時計数時間にあたる計数時間の間計数する。本回路を2つ使用し2つの光ファイバに該当するフォトン積分値を求めあらかじめ設定しておいたフォトン弁別値以上の積分値が計数時間の間に両方の回路から得られた時中性子信号として出力した。本実施例では、各光電子増倍管に対応して設定されるフォトン弁別値として5フォトンを弁別値とする。
【0073】
本実施例では、計数時間としては、中性子が入射した際ZnS:Ag蛍光体から放出される蛍光を有効に利用するため、5μsの時間幅とする。
【0074】
各中性子検出素子から出る光ファイバ2本を対として上記で述べた信号処理を行い、出力された中性子入射信号を、中性子検出素子を並べた順番に位置情報として5ビットデータとすることにより、最終的な信号出力本数を少なくして中性子イメージ処理装置に送付することにより中性子一次元イメージデータを取得する。
(実施例4)
【0075】
実施例4においては、実施例1で構成された中性子検出素子を中性子検出素子配置用円筒管の内部に120個並べて配置して、それぞれの中性子検出素子を一次元位置検出体とし、内側円筒状中性子シンチレータの円筒状基板内側の空間を光ファイバの配線用導管として使用してそれぞれ2本の光ファイバを中性子検出素子配置用円筒管の片側に配置された多チャンネル光検出器まで導き、16チャンネル光検出器の各光検出器に対してあらかじめ設定したコーディング規則に基づき中性子検出素子からの2本の光ファイバを光学接続し、中性子が中性子シンチレータに入射して捕獲された際放出される蛍光を2本の波長シフトファイバで検出し波長シフトされた蛍光をコーディング規則に基づいて多チャンネル光検出器で検出し、各光検出器によりパルス信号に変換された蛍光信号をマルチチャネル同時計測回路に導き、あらかじめ設定した時間内に2個の信号が同時計測した2つの光検出器を特定し、コーディング規則に基づいて中性子検出素子配置用円筒管に120個配置された中性子検出素子における中性子入射位置を決定し、中性子の一次元検出を行う中性子検出器について説明する。
本実施例における中性子検出素子の構造について
図10をもとに述べる。使用する構成素材については実施例1と全く同じである。
【0076】
外径19.5mm、内径18.5mm、厚さ0.3mmで長さが20mmの円筒状のアルミニウム基板の外側にAST社製ZnS/
6LiF半透明シンチレータを接着して固定し内側円筒状中性子シンチレータとする。2本の波長シフトファイバの間隔を波長シフトファイバの中心から中心の距離として1.5mmとして2本の波長シフトファイバを平行に等間隔でコイル状に6.7回巻いた。
【0077】
本実施例では、巻いた2本の波長シフトファイバの光ファイバとの接続端は
図4に示すように両方とも巻き終わりとする。巻き終えた2本の波長シフトファイバの両方の終端は内側円筒状中性子シンチレータの円筒状の基板の内側内部に導かれ、波長シフトファイバにより波長シフトされた蛍光を光検出器まで導く光ファイバに接続される。接続は、波長シフトファイバの端面を鏡面に磨いた後、アルミニウム製の内径0.8mm、外径1.2mm、長さ2mmのガイド管の中間に入れ、同様に鏡面に磨いた光ファイバの端面と接着剤を用いて接着して行う。光ファイバの長さは、光検出器までの長さ以上とし、片側に配置された光検出器に光学接続する際に長さを決定し、光ファイバを切断した後端面を磨き光検出器の検出面に光学接続する。
【0078】
一方、波長シフトファイバの反対側についても円筒状の基板の内側内部に導き、その端面を鏡面に磨いた後、1.2mm×1.2mm角に切ったアルミニウム製反射板の鏡面部分を接着剤で接着する。接着剤としては透明接着剤である(株)コニシ製S・Uを用いる。この作業によりシンチレータ蛍光検出体が完成した。
【0079】
さらに、このシンチレータ蛍光検出体の上側に、外径23mm、内径22.4mm、厚さ0.3mmで長さ20mmの円筒状のアルミニウム基板の内側にAST社製ZnS/
6LiF半透明シンチレータを接着して固定した外側円筒状中性子シンチレータを配置する。最終的に完成した中性子検出素子の大きさは内径18.5mm、外径は工作精度等を含めると23mmとなり、長さは20mmである。
【0080】
実施例として中性子検出素子配置用円筒管にこの中性子検出素子を120個並べるとすると中性子検出素子配置用円筒管の大きさは、内径は23.4mm、外径25.4mm、厚さ1mmとする。その長さは検出部分が20mm×120=2400mmであるが光検出器にそれぞれ光ファイバを光ファイバ束にして光学接続する必要があるため光検出器側に50mmの余裕をとり2450mmとする。円筒管の材料は市販品規格A5052のアルミニウムとする。
【0081】
本実施例においては、中性子検出素子から出てくる2本の光ファイバは中性子検出素子配置用円筒管の片側に集めて検出処理を行うことにする。このため、円筒管の片側は遮光のためアルミニウム板を用いて封じ切る。内側円筒状中性子シンチレータの円筒状基板内側の空間を光ファイバの配線用導管として使用してそれぞれ2本の光ファイバを中性子検出素子配置用円筒管の片側に配置された多チャンネル光検出器まで導く。
【0082】
本実施例でおいては、各中性子検出素子から出てくる2つの光ファイバについて
図16の表1に示す
2Cnコーディングを行い、多チャンネル光検出器に光学接続する。
2CnのCは組み合わせを示す数学記号であり、
2Cnにおける組み合わせの数はn×(n−1)/2の式で計算でき、表1に示す120通りを実現するために必要なnは16となる。つまり、120個の中性子検出素子の場合に
2Cnコーディングに必要な光電子増倍管のチャネル数は16チャネルとなる。また、各光電子増倍管に光学接続される光ファイバは15本であり、直径0.75mmの光ファイバを四角形にバンドルした場合約3mm×3mmの大きさとなる。
【0083】
多チャンネル光検出器としては、フォトン計数に使用可能で、一つのチャネルの有感サイズが4.2mm×4.2mmの16チャンネルのマルチアノード光電子増倍管である浜松ホトニクス製H8711を用いることができる。有感サイズはバンドルした光ファイバ束が3mm×3mmであることから十分検出可能なサイズである。また、印加電圧900Vで10
7のゲインを得ることができるのでフォトン計数を十分行うことができる。
【0084】
波長シフトファイバから出力される蛍光は非常に少ないため、本実施例では多チャンネル光電子増倍管から出力される各蛍光信号はフォトン計測法を用いて信号処理した。光電子増倍管から出力された各フォトン信号は高速IC増幅器で構成されたフォトン信号増幅器により増幅した後、それぞれディスクリミネータ回路から構成されたフォトン信号弁別回路によりフォトンデジタルパルス信号となる。
【0085】
フォトン信号増幅器としては、高速IC増幅器であるアナログデバイセス社製AD8001を2個用いて、増幅帯域幅200MHzで60倍のゲインの性能を持つ増幅器を構成する。フォトン信号弁別回路としては、高速のディスクリミネータICとしてアナログデバイセス社製AD8611を用いる。このような構成の電子回路を用いることによりフォトン1個の信号としてパルス時間幅が約5nsのフォトンデジタルパルス信号とすることができる。
【0086】
次に、各光電子増倍管から出力されたフォトンにより生成されたフォトンデジタルパルス信号は、そのパルス時間幅に合致した間隔幅のクロック信号を用いて、ゲート回路から構成される同期信号化回路を用いてクロック信号と同期を取った信号として取り出し、同期化フォトン信号とする。クロック信号の周波数は、フォトンデジタルパルス信号のパルス時間幅が5nsであることから、同じパルス時間幅の5nsを生成する100MHzとする。
【0087】
16チャンネルのマルチアノード光電子増倍管から出力されたフォトンデジタルパルス信号は、FPGA素子により構成された
図11の概略構成図に示すマルチチャネル同時計測回路内の16個のフォトンデジタル計数回路により計数される。いずれかのチャネルからの最初のフォトンデジタルパルス信号をスタート時間信号として16個のフォトンデジタル計数回路おいて一般の同時計数回路における同時計数時間にあたる計数時間の間計数する。各フォトンデジタル計数回路の計数終了後、あらかじめ設定しておいたフォトン弁別値以上の積分値を示す2つフォトンデジタル計数回路を特定し、コーディング規則に従って120チャネルの中性子入射位置を決定する。この120チャネルの位置情報を7ビットデータとすることにより、最終的な信号出力本数を少なくして中性子イメージ処理装置に送付することにより中性子一次元イメージデータを取得する。本実施例では、各光電子増倍管に対応して設定されるフォトン弁別値として5フォトンを弁別値とする。
【0088】
本実施例では、計数時間としては、中性子が入射した際ZnS:Ag蛍光体から放出される蛍光を有効に利用するため、5μsの時間幅とする。
(実施例5)
【0089】
次に、
図12を参照して、実施例5について説明する。実施例5に係る中性子検出器では、実施例1で構成された中性子検出素子を中性子検出素子配置用円筒管の内部に28個の中性子検出素子を中性子検出素子配置用円筒管の内部に密に並べて配置する際に、各中性子検出素子の間に、中性子検出素子の円筒状基板内側の空間内において光ファイバの配線が可能な大きさの穴を開けた構造で外径が中性子検出素子の外径と同じ円形中性子遮蔽板を配置して設置し、それぞれの中性子検出素子を一次元位置検出体とし、中性子検出素子の円筒状基板内側の空間を光ファイバの配線用導管として使用して中性子検出素子から出た2本の光ファイバを中性子検出素子配置用円筒管の片側に配置された多チャンネル光検出器まで導き、各中性子検出素子から出た2本の光ファイバを対として2つの光検出器でそれぞれ検出し、これら2つ光検出器によりパルス信号に変換された蛍光信号を同時計測回路に導き、各中性子検出素子について、あらかじめ設定した時間内に2個の信号が同時計測した時中性子信号として出力することにより、中性子検出素子配置用円筒管に28個配置された中性子検出素子における中性子入射位置を決定し、隣り合った中性子検出素子間の中性子の漏れ検出を防ぎ、位置分解能を上げて中性子の一次元検出を行う。
【0090】
本実施例における中性子検出素子の基本的構造及び使用する構成材料については実施例1と同じである。外径19.5mm、内径18.5mm、厚さ0.3mmで長さが20mmの円筒状のアルミニウム基板の外側にAST社製ZnS/
6LiF半透明シンチレータを接着して固定し内側円筒状中性子シンチレータとする。2本の波長シフトファイバの間隔を波長シフトファイバの中心から中心の距離として1.5mmとして2本の波長シフトファイバを平行に等間隔でコイル状に6.7回巻いた。
【0091】
本実施例では、巻いた2本の波長シフトファイバの光ファイバとの接続端は
図4に示すように両方とも巻き終わりとする。巻き終えた2本の波長シフトファイバの両方の終端は内側円筒状中性子シンチレータの円筒状の基板の内側内部に導かれ、波長シフトファイバにより波長シフトされた蛍光を光検出器まで導く光ファイバに接続される。接続は、波長シフトファイバの端面を鏡面に磨いた後、アルミニウム製の内径0.8mm、外径1.2mm、長さ2mmのガイド管の中間に入れ、同様に鏡面に磨いた光ファイバの端面と接着剤を用いて接着して行う。光ファイバの長さは、光検出器までの長さ以上とし、最終的に、片側に配置された光検出器に光学接続する際に長さを決定し、光ファイバを切断した後端面を磨き光検出器の検出面に光学接続する。
【0092】
一方、波長シフトファイバの反対側についても円筒状の基板の内側内部に導き、その端面を鏡面に磨いた後、1.2mm×1.2mm角に切ったアルミニウム製反射板の鏡面部分を接着剤で接着する。接着剤としては透明接着剤である(株)コニシ製S・Uを用いる。この作業によりシンチレータ蛍光検出体が完成した。
【0093】
さらに、このシンチレータ蛍光検出体の上側に、外径23mm、内径22.4mm、厚さ0.3mmで長さ20mmの円筒状のアルミニウム基板の内側にAST社製ZnS/
6LiF半透明シンチレータを接着して固定した外側円筒状中性子シンチレータを配置する。最終的に完成した中性子検出素子の大きさは内径18.5mm、外径は工作精度等を含めると23mmとなり、長さは20mmである。
【0094】
実施例として中性子検出素子配置用円筒管にこの中性子検出素子を28個並べるとすると中性子検出素子配置用円筒管の大きさは、内径は23.4mm、外径25.4mm、厚さ1mmとする。その長さは検出部分が後に説明する中性子遮蔽板の厚さ1mmを考慮して設計すると、(20+1)mm×27+20=587mmとなるが光検出器にそれぞれ光学接続する必要があるため両側に20mmの余裕をとり607mmとする。円筒管の材料は市販品規格A5052のアルミニウムとする。
【0095】
本実施例の場合、中性子検出素子を並べて円筒管に配置してゆく際隣り合った中性子検出素子の間に円形中性子遮蔽板を配置する。この配置は隣り合った中性子検出素子間の中性子の漏えい検出を防ぎ、位置分解能を上げて一次元検出を行うために行う。中性子遮蔽材料としてはB
4C粉末を用いることとしこのB
4C粉末をエポキシ樹脂で固化して遮蔽板を製作する。B
4C粉末とエポキシ樹脂との混合比は重量比で6:4とする。サイズを直径が23mm、厚さ1mmとし中心に光ファイバの配線に必要な空間として直径6mmの穴を開けた円形中性子遮蔽板とする。B
4C粉末の量から熱中性子に対する遮蔽能力を計算した結果10%の透過率まで減少すること確認した。
【0096】
本実施例においては、中性子検出素子から出てくる2本の光ファイバは中性子検出素子配置用円筒管の片側に集めて検出処理を行うことにする。このため、円筒管の片側は遮光のためアルミニウム板を用いて封じ切る。内側円筒状中性子シンチレータの円筒状基板内側の空間を光ファイバの配線用導管として使用してそれぞれ2本の光ファイバを中性子検出素子配置用円筒管の片側に配置された多チャンネル光検出器まで導く。最終的に本実施例の一次元中性子検出器の中性子検出素子配置用円筒管の大きさは直径25mm、長さ607mmとなった。有効な検出面積は22mm×607mmのサイズである。
【0097】
多チャンネル光検出器としては、フォトン計数に使用可能で、一つのチャネルの有感サイズが2mm×2mmの64チャンネルのマルチアノード光電子増倍管である浜松ホトニクス製H7546を用いることができる。印加電圧950Vで2×10
6のゲインが得られるのでフォトン計数を十分行うことができる。波長シフトファイバから出力される蛍光は非常に少ないため、本実施例では2つの光電子増倍管から出力される各蛍光信号は、フォトン計測法を用いて信号処理した。
【0098】
本光電子増倍管から出力された各フォトン電気信号は高速増幅器で構成されたフォトン信号増幅器により増幅した後、それぞれディスクリミネータ回路から構成されたフォトン信号弁別回路によりフォトンデジタルパルス信号となる。
【0099】
フォトン信号増幅器としては、各回路に高速IC増幅器であるアナログデバイセス社製AD8001を2個用いて、増幅帯域幅200MHzで60倍のゲインの性能を持つ増幅器を構成する。フォトン信号弁別回路としては、高速のディスクリミネータICとしてアナログデバイセス社製AD8611を用いる。このような構成の電子回路を用いることによりフォトン1個の信号としてパルス時間幅が約5nsのフォトンデジタルパルス信号とすることができる。
【0100】
次に、各光電子増倍管から出力されたフォトンにより生成されたフォトンデジタルパルス信号は、そのパルス時間幅に合致した間隔幅のクロック信号を用いて、ゲート回路から構成される同期信号化回路を用いてクロック信号と同期を取った信号として取り出し、同期化フォトン信号とする。クロック信号の周波数は、フォトンデジタルパルス信号のパルス時間幅が5nsであることから、同じパルス時間幅の5nsを生成する100MHzとする。
【0101】
最初に来たフォトンデジタルパルス信号をスタート時間信号としてフォトンデジタル計数回路により一般の同時計数回路における同時計数時間にあたる計数時間の間計数する。本回路を2つ使用し2つの光ファイバに該当するフォトン積分値を求めあらかじめ設定しておいたフォトン弁別値以上の積分値が計数時間の間に両方の回路から得られた時中性子信号として出力した。本実施例では、各光電子増倍管に対応して設定されるフォトン弁別値として5フォトンを弁別値とする。
【0102】
本実施例では、計数時間としては、中性子が入射した際ZnS:Ag蛍光体から放出される蛍光を有効に利用するため、5μsの時間幅とする。
【0103】
各中性子検出素子から出る光ファイバ2本を対として上記で述べた信号処理を行い、出力される中性子入射信号について中性子検出素子を並べた順番に位置情報として5ビットデータとし、信号出力本数を少なくして中性子イメージ処理装置に送付することにより中性子一次元イメージデータを取得する。
【0104】
中性子線源としてカルフォルニウム線源を用いて本一次元中性子検出器の検出性能を評価した。評価試験のための装置の構成図を
図13に示す。最初に、カドミウム中性子遮蔽体を取り除いた後、カルフォルニウム中性子線源を用いて熱中性子に対する本一次元中性子検出器の熱中性子に対する計数分布を測定した。一次元中性子検出器は一様な中性子平行ビームにするため、カルフォルニウム線源の減速材体系から50cm離れた場所に設置した。その計数分布測定結果を
図14に示す。最初の試作のため中性子検出素子の製作の良し悪しに依存して計数が変動しているが、本検出器により中性子の分布が測定可能であることから本一次元中性子検出器が製作可能であることを確認した。
【0105】
次に、本一次元中性子検出器の中心部の周囲を厚さ0.7mmで長さ225mmのカドミウム板を使って遮蔽した後、位置検出特性を測定した。各中性子検出素子に対応した計数測定結果をカドミウム中性子遮蔽体で遮蔽しない場合の計数測定結果で規格化して得た規格計数分布結果を
図15に示す。本測定の計数時間はカドミウム中性子遮蔽体を取り除いた場合の測定時間の1/5の時間のため、遮蔽しない部分の規格計数値は約0.2となっている。位置分解能は半値幅として220mmが得られており、カドミウム中性子遮蔽体の長さとほぼ一致していることから位置検出ができることが確認された。
【0106】
以上の結果より、本発明の検出器は一次元中性子検出器として十分使用可能であることを確認できた。
【0107】
本発明の基本となる中性子検出素子は、内側円筒状中性子シンチレータの上側に、2本の波長シフトファイバを円筒に沿って等間隔で平行に巻いたコイル状波長シフトファイバを配置し、その2本の波長シフトファイバの両方の終端を内側円筒状中性子シンチレータの円筒状基板の内側内部に導き、一方に光ファイバを接続し、一方に光反射板を接着した構造のシンチレータ蛍光検出体を配置し、さらにその上側に外側円筒状中性子シンチレータを配置して構成される。本構造とすることにより中性子検出素子に入射した中性子は4枚の中性子シンチレータにより検出されることとなり、熱中性子に対する検出効率が40%の中性子シンチレータを使用した場合、理想的には87%の高検出効率を得ることが可能となって、6気圧1インチ位置敏感型
3Heガス比例計数管の検出効率に近い値を得ることができる。
【0108】
また、この中性子検出素子を2個以上円筒管の内部に密に並べて配置し、光ファイバを内側円筒状中性子シンチレータの円筒状内部を使って配線し光検出器に導くことにより、中性子の一次元検出を行う管状の中性子検出器を実現している。この結果、位置敏感型
3Heガス比例計数管とほほ同等の中性子検出効率を持ち全く同じ管状でありかつ一次元の中性子検出を実現していることから、真の意味で
3He代替え中性子検出器となり得る。