特開2015-7258(P2015-7258A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2015-7258チオエーテル、その調製方法、およびこのようなチオエーテルを含む組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-7258(P2015-7258A)
(43)【公開日】2015年1月15日
(54)【発明の名称】チオエーテル、その調製方法、およびこのようなチオエーテルを含む組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 75/02 20060101AFI20141212BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20141212BHJP
   C09D 181/02 20060101ALI20141212BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20141212BHJP
   B64C 1/00 20060101ALI20141212BHJP
   C08G 18/52 20060101ALN20141212BHJP
【FI】
   C08G75/02
   C08G59/40
   C09D181/02
   C09K3/10 Z
   C09K3/10 F
   B64C1/00 B
   C08G18/52
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-205483(P2014-205483)
(22)【出願日】2014年10月6日
(62)【分割の表示】特願2011-506333(P2011-506333)の分割
【原出願日】2009年3月30日
(31)【優先権主張番号】12/108,782
(32)【優先日】2008年4月24日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】502328466
【氏名又は名称】ピーアールシー−デソト インターナショナル,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ジョン アール. ギルモアー
(72)【発明者】
【氏名】チャンドラ ビー. ラオ
【テーマコード(参考)】
4H017
4J030
4J034
4J036
4J038
【Fターム(参考)】
4H017AA04
4H017AA25
4H017AA29
4H017AB14
4H017AB15
4H017AB17
4H017AC02
4H017AC03
4H017AC14
4H017AC15
4H017AC16
4H017AC18
4J030BA03
4J030BA04
4J030BA22
4J030BA41
4J030BA42
4J030BA45
4J030BB07
4J030BB12
4J030BB13
4J030BB28
4J030BB30
4J030BB67
4J030BC02
4J030BC05
4J030BC18
4J030BF01
4J030BG03
4J034CA32
4J034CB03
4J034CC03
4J034CC08
4J034CC10
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4J034DB04
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4J034DD01
4J034DD02
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4J034HA01
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4J034HA07
4J034HA08
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4J034HB03
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4J034HB11
4J034HC03
4J034HC07
4J034HC08
4J034HC12
4J034HC17
4J034HC22
4J034HC25
4J034HC32
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA42
4J034QA05
4J034QB11
4J034RA08
4J036AA01
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4J036DD02
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4J036FB15
4J036JA07
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4J038DA042
4J038DB002
4J038DB062
4J038DB072
4J038DG262
4J038DK001
4J038FA122
4J038FA222
4J038GA03
4J038GA07
4J038GA11
4J038GA12
4J038GA13
4J038GA15
4J038HA026
4J038HA216
4J038HA266
4J038JA02
4J038JA03
4J038JA17
4J038JA55
4J038JB01
4J038JC34
4J038KA03
4J038KA04
4J038KA06
4J038KA08
4J038KA10
4J038KA20
4J038MA09
4J038MA15
4J038NA08
4J038PA19
(57)【要約】
【課題】チオエーテル、その調製方法、およびこのようなチオエーテルを含む組成物の提供。
【解決手段】チオエーテル、このようなチオエーテルを調製する方法、ならびにこのようなチオエーテルを含む、コーティング組成物およびシーラント組成物などの硬化性組成物が開示されている。チオエーテルは、(a)α,ωジハロ有機化合物と、(b)金属水硫化物と、(c)金属水酸化物との反応生成物であり得る。さらに他の点において、本発明は、(a)α,ωジハロ有機化合物、(b)金属水硫化物、および(c)金属水酸化物を含む反応物質の反応生成物であるチオエーテルを対象とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載された発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チオエーテル、このようなチオエーテルを調製する方法、ならびにこのようなチオエーテルを含む、コーティング組成物およびシーラント組成物などの硬化性組成物を対象とする。
【背景技術】
【0002】
末端にチオールを有する硫黄含有化合物が、主に架橋時におけるその耐燃料性のため、航空宇宙用シーラント組成物など、様々な用途での使用によく適していることは公知である。航空宇宙用シーラント組成物の他の望ましい特性としては、とりわけ低温可撓性、短い硬化時間(所定の強度に到達するのに要する時間)、および耐高温性が挙げられる。これらの特性の少なくとも一部を示し、末端にチオールを有する硫黄含有化合物を含むシーラント組成物については、例えば特許文献1〜10に記載されている。
【0003】
特許文献11に開示されているようなポリチオエーテルなど、室温および常圧で液体であり、優れた低温可撓性および耐燃料性を有するポリチオエーテルは、例えば航空宇宙用シーラント用途で望ましい場合が多い。残念なことには、このようなポリチオエーテルは、原材料、特にこのようなポリチオエーテルを誘導するある種のポリチオールのコストにより、製造するのが比較的高価となり得る。その結果、従来技術に記載されているものに比べて耐燃料性や耐高温性など、許容することができ、ときに驚くほど優れた特性を示すが、ポリチオールを使用することなく生成することができ、したがってある種のポリチオールから誘導されたポリチオエーテルに比べて低減されたコストで生成することができる新規チオエーテルを提供することが、望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第2,466,963号明細書
【特許文献2】米国特許第4,366,307号明細書
【特許文献3】米国特許第4,609,762号明細書
【特許文献4】米国特許第5,225,472号明細書
【特許文献5】米国特許第5,912,319号明細書
【特許文献6】米国特許第5,959,071号明細書
【特許文献7】米国特許第6,172,179号明細書
【特許文献8】米国特許第6,232,401号明細書
【特許文献9】米国特許第6,372,849号明細書
【特許文献10】米国特許第6,509,418号明細書
【特許文献11】米国特許第6,172,179号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上の事項に鑑み、本発明は開発された。
【課題を解決するための手段】
【0006】
いくつかの点において、本発明はチオエーテルを対象とする。本発明のこれらのチオエーテルは、構造(I):
【0007】
【化1】
を含み、式中、
(a)Rはそれぞれ、同じでも異なってもよく、C2〜6n−アルキレン基など、C2〜10n−アルキレン基;例えば、メチル基もしくはエチル基などのアルキル基とすることができる1つもしくは複数のペンダント基を有するC2〜6分枝状もしくはC3〜6分枝状アルキレン基など、C2〜10分枝状アルキレン基;C6〜8シクロアルキレン基;C6〜10アルキルシクロアルキレン基など、C6〜14アルキルシクロアルキレン;またはC8〜10アルキルアリーレン基を表し、
(b)Rはそれぞれ、同じでも異なってもよく、C1〜6n−アルキレン基などのC1〜10n−アルキレン基;例えば、メチル基もしくはエチル基などのアルキル基とすることができる1つもしくは複数のペンダント基を有するC2〜6もしくはC3〜6分枝状アルキレン基などのC2〜10分枝状アルキレン基;C6〜8シクロアルキレン基;C6〜10アルキルシクロアルキレン基などのC6〜14アルキルシクロアルキレン;またはC8〜10アルキルアリーレン基を表し、
(c)Rはそれぞれ、同じでも異なってもよく、C2〜6n−アルキレン基など、C2〜10n−アルキレン基;例えば、メチル基もしくはエチル基などのアルキル基とすることができる1つもしくは複数のペンダント基を有するC2〜6分枝状もしくはC3〜6分枝状アルキレン基など、C2〜10分枝状アルキレン基;C6〜8シクロアルキレン基;C6〜10アルキルシクロアルキレン基など、C6〜14アルキルシクロアルキレン;またはC8〜10アルキルアリーレン基を表し、
(d)Xはそれぞれ、同じでも異なってもよく、O、S、またはN−Rを表し、Rは上記の通りであり、
(e)pは1から5の値であり、
(f)qは0から5の値であり、
(g)nは、少なくとも2など、少なくとも1の値であり、場合によっては2から60、3から60、または25から35の値であり、
(h)RとRは少なくとも1つ、場合によってはそれぞれ、互いに異なる。
【0008】
他の点において、本発明は、チオエーテルを対象とし、チオエーテルは、構造(I):を含み、式中、
(a)Rは、Cn−アルキレン基を表し、
(b)Rは、Cn−アルキレン基を表し、
(c)Rは、Cn−アルキレン基を表し、
(d)XはOを表し、
(e)pは1の値であり、
(f)qは1の値であり、
(g)nは、少なくとも2など、少なくとも1の値であり、場合によっては2から60、3から60、または25から35の値である。
【0009】
さらに他の点において、本発明は、(a)α,ωジハロ有機化合物、(b)金属水硫化物、および(c)金属水酸化物を含む反応物質の反応生成物であるチオエーテルを対象とする。
【0010】
さらに他の点において、本発明は、このようなチオエーテルを含むコーティング組成物およびシーラント組成物など、硬化性組成物を対象とする。
【0011】
本発明は、とりわけこのようなチオエーテルを生成する方法も対象とする。
本発明はまた、以下を提供する。
(項目1)
次式(I)を有する構造を含むチオエーテル:
【化11】

[式中、
(a)Rはそれぞれ、同じでも異なってもよく、C2〜10n−アルキレン基;C2〜10分枝状アルキレン基;C6〜8シクロアルキレン基;C6〜14アルキルシクロアルキレン;またはC8〜10アルキルアリーレン基を表し、
(b)Rはそれぞれ、同じでも異なってもよく、C1〜10n−アルキレン基;C2〜10分枝状アルキレン基;C6〜8シクロアルキレン基;C6〜14アルキルシクロアルキレン;またはC8〜10アルキルアリーレン基を表し、
(c)Rはそれぞれ、同じでも異なってもよく、C2〜10n−アルキレン基;C2〜10分枝状アルキレン基;C6〜8シクロアルキレン基;C6〜14アルキルシクロアルキレン;またはC8〜10アルキルアリーレン基を表し、
(d)Xはそれぞれ、同じでも異なってもよく、O、S、またはN−Rを表し、
(e)pは1から5の値であり、
(f)qは0から5の値であり、
(g)nは少なくとも1の値であり、
(h)RとRは互いに異なる]。
(項目2)
(a)Rがそれぞれ、同じでも異なってもよく、C2〜10n−アルキレン基を表し、
(b)Rがそれぞれ、同じでも異なってもよく、C1〜10n−アルキレン基を表し、
(c)Rがそれぞれ、同じでも異なってもよく、C2〜10n−アルキレン基を表し、
(d)Xがそれぞれ、Oを表す、
項目1に記載のチオエーテル。
(項目3)
nが、少なくとも2の値である、項目1に記載のチオエーテル。
(項目4)
nが、60以下の値である、項目3に記載のチオエーテル。
(項目5)
nが、25から35の値である、項目4に記載のチオエーテル。
(項目6)
少なくとも1つのXがOを表す、項目1に記載のチオエーテル。
(項目7)
次式を有する構造を含む、項目1に記載のチオエーテル:
A−(−R
[式中、
(a)Aは、項目1に記載の式(I)を有する構造を表し、
(b)Rはそれぞれ、同じでも異なってもよく、−SH、−OH、アルキル、アルキレン、−NCO、
【化12】

または加水分解性官能基を含む]。
(項目8)
前記チオエーテルが、下記の構造:
【化13】

を含む、項目1に記載のチオエーテル。
(項目9)
(a)Rがそれぞれ、同じでも異なってもよく、C2〜10n−アルキレン基を表し、
(b)Rがそれぞれ、同じでも異なってもよく、C1〜10n−アルキレン基を表し、
(c)Rがそれぞれ、同じでも異なってもよく、C2〜10n−アルキレン基を表し、
(d)Xがそれぞれ、Oを表す、
項目8に記載のチオエーテル。
(項目10)
前記チオエーテルが、次式を有する、項目1に記載のチオエーテル:
B−(A−R
[式中、
(a)Bは、多官能化剤のz価残基を表し、
(b)Aは、項目1に記載の式(I)を有する構造を表し、
(c)Rはそれぞれ、同じでも異なってもよく、−SH;−OH、アルキル、アルキレン、−NCO、
【化14】

または加水分解性官能基を含み、
(d)zは3から6の整数である]。
(項目11)
zが3である、項目10に記載のチオエーテル。
(項目12)
下記の構造(I)を含むチオエーテル:
【化15】

[式中、
(a)Rは、Cn−アルキレン基を表し、
(b)Rは、Cn−アルキレン基を表し、
(c)Rは、Cn−アルキレン基を表し、
(d)XはOを表し、
(e)pは1の値であり、
(f)qは1の値であり、
(g)nは、少なくとも1の値である]。
(項目13)
nが、少なくとも2の値である、項目12に記載のチオエーテル。
(項目14)
nが、60以下の値である、項目13に記載のチオエーテル。
(項目15)
nが、25から35の値である、項目14に記載のチオエーテル。
(項目16)
次式を有する構造を含む、項目12に記載のチオエーテル:
A−(−R
[式中、
(a)Aは、項目12に記載の式(I)を有する構造を表し、
(b)Rはそれぞれ、同じでも異なってもよく、−SH、−OH、アルキル、アルキレン、−NCO、
【化16】

または加水分解性官能基を含む]。
(項目17)
下記の構造を含む、項目12に記載のチオエーテル:
【化17】


(項目18)
次式を有する、項目1に記載のチオエーテル:
B−(A−R
[式中、
(a)Bは、多官能化剤のz価残基を表し、
(b)Aは、項目12に記載の式(I)を有する構造を表し、
(c)Rはそれぞれ、同じでも異なってもよく、−SH;−OH、アルキル、アルキレン、−NCO、
【化18】

または加水分解性官能基を含み、
(d)zは3から6の整数である]。
(項目19)
zが3である、項目18に記載のチオエーテル。
(項目20)
反応物質の反応生成物であるチオエーテルであって、該反応物質は、
(a)α,ωジハロ有機化合物と、
(b)金属水硫化物と、
(c)金属水酸化物と
を含むチオエーテル。
(項目21)
前記反応物質が、
(d)多官能化剤
をさらに含む、項目20に記載のチオエーテル。
(項目22)
前記反応物質がポリチオールを実質的に含まない、項目20に記載のチオエーテル。
(項目23)
前記α,ωジハロ有機化合物が化学式X−R−Yを有し、式中、XおよびYはハロゲンであり、Rはアルコキシ基を含む有機基である、項目20に記載のチオエーテル。
(項目24)
前記アルコキシ基が、
−CH−CH−O−CH−O−CH−CH−、および/または−CH−CH−O−CH−CH−O−CH−CH
を含む、項目23に記載のチオエーテル。
(項目25)
項目1に記載のチオエーテルを含む組成物。
(項目26)
硬化剤および充填剤をさらに含むシーラント組成物である、項目25に記載の組成物。
(項目27)
項目12に記載のチオエーテルを含む組成物。
(項目28)
硬化剤および充填剤をさらに含むシーラント組成物である、項目27に記載の組成物。
(項目29)
項目1に記載のチオエーテルを含むコーティングで少なくとも部分被覆された表面、または項目1に記載のチオエーテルを含むシーラント組成物で少なくとも部分封止された開口部を備えた航空宇宙機。
(項目30)
項目12に記載のチオエーテルを含むコーティングで少なくとも部分被覆された表面、または項目12に記載のチオエーテルを含むシーラント組成物で少なくとも部分封止された開口部を備えた航空宇宙機。
(項目31)
チオエーテルを作製する方法であって、
(a)α,ωジハロ有機化合物と、
(b)金属水硫化物と、
(c)金属水酸化物と
を含む反応物質を相間移動触媒の存在下で反応させるステップを含む方法。
(項目32)
前記反応物質が、
(d)多官能化剤
をさらに含む、項目31に記載の方法。
(項目33)
前記反応物質が、ポリチオールを実質的に含まない、項目31に記載の方法。
(項目34)
前記α,ωジハロ有機化合物が化学式X−R−Yを有し、式中、XおよびYはハロゲンであり、Rはアルコキシ基を含む有機基である、項目31に記載の方法。
(項目35)
前記アルコキシ基が、
−CH−CH−O−CH−O−CH−CH−、および/または
−CH−CH−O−CH−CH−O−CH−CH
を含む、項目34に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の詳細な説明では、本発明は、別段の指定が明示されている場合を除いて、様々な代替の変形形態および工程順序をとり得ることを理解されたい。さらに、操作例または別段の指示のある場合を除いて、本明細書および特許請求の範囲で使用される、例えば材料の量を表す数はすべて、いかなる場合でも「約」という用語で修飾されていると理解されるべきである。したがって、別段の指示のない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲で記載の数値パラメータは、本発明によって得られる所望の特性に応じて変わり得る近似値である。少なくとも、そして特許請求の範囲への均等論の適用を限定しようとするものではなく、各数値パラメータは、報告された有効桁数を考慮に入れ、一般的な丸め技法を適用することによって少なくとも解釈されるべきである。
【0013】
本発明の広い範囲を示す数値範囲およびパラメータが近似値であるにもかかわらず、具体例に記載されている数値はできる限り正確に報告されている。しかし、いずれの数値も、それぞれの試験測定で見られる標準偏差に必ず起因する一定の誤差を本来含んでいる。
【0014】
また、本明細書に記載された数値範囲はいずれも、その中に含まれる部分的範囲をすべて含むよう意図されていると理解されたい。例えば、「1〜10」という範囲は、記載された最小値である1と記載された最大値である10との間の(およびそれらを含む)部分的範囲、すなわち最小値1以上および最大値10以下の部分的範囲をすべて含むよう意図されている。
【0015】
記載したように、本発明のいくつかの実施形態は、チオエーテルを対象とする。本明細書では、「チオエーテル」という用語は、少なくとも1つ、しばしば少なくとも2つのチオエーテル結合、すなわち「−CH−S−CH−」結合を含む化合物を指す。いくつかの実施形態において、このような化合物はポリマーである。本明細書では、「ポリマー」は、オリゴマー、およびホモポリマーとコポリマーの両方を指す。分子量は、別段の記載のない限り、本明細書で使用される場合、ポリマー材料の数平均分子量であり、「Mn」で表され、当技術分野で認識されている方式でポリスチレン標準物質を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーで得られる。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態は、前述の式(I)を有する構造を含むチオエーテルを対象とする。さらに詳細には、いくつかの実施形態において、式(I)に関して:(a)Rはそれぞれ、同じでも異なってもよく、C2〜6n−アルキレン基など、C2〜10n−アルキレン基を表し、(b)Rはそれぞれ、同じでも異なってもよく、C1〜6n−アルキレン基など、C1〜10n−アルキレン基を表し、(c)Rはそれぞれ、同じでも異なってもよく、C2〜6n−アルキレン基など、C2〜10n−アルキレン基を表し、(d)Xはそれぞれ、Oを表し、(e)pは1から5の値であり、(f)qは0から5の値であり、(g)nは、2から60、3から60など、少なくとも1、しばしば少なくとも2の値であり、または場合によっては25から35の値であり、(h)RとRは互いに異なる。さらに、いくつかの実施形態において、式(I)に関して:(a)Rは、Cn−アルキレン基を表し、(b)Rは、Cn−アルキレン基を表し、(c)Rは、Cn−アルキレン基を表し、(d)XはOを表し、(e)pは1の値であり、(f)qは1の値であり、(g)nは、2から60、3から60など、少なくとも1、しばしば少なくとも2の値であり、または場合によっては25から35の値である。
【0017】
いくつかの実施形態において、本発明のチオエーテルは、式(II)による構造:
A−(−R (II)
を有し、式中、(a)Aは、式(I)を有する構造を表し、(b)Rはそれぞれ、同じでも異なってもよく、−SH;−OH、C1〜10n−アルキル基など、アルキル、C1〜10n−アルキレン基など、アルキレン、−NCO、
【0018】
【化2】
またはシラン基、すなわち
【0019】
【化3】
(式中、RおよびRはそれぞれ独立に、有機基を表し、xは1、2、または3である)など、加水分解性官能基を含む。
【0020】
が−SHであるチオエーテルは、「未キャッピング」であり、すなわち未反応のチオール末端基を含む。本発明によるチオエーテルは、「キャッピングされた」チオエーテル、すなわち未反応チオール基以外の末端基を含むチオエーテルも含む。これらの末端基は、例えば上記の基:(i)例えば、(a)本発明の未キャッピングのチオエーテルを、塩基の存在下でエチレンオキシド、プロピレンオキシドなど、モノオキシドと反応させることによって、または(b)本発明の未キャッピングのチオエーテルを、ラジカル開始剤の存在下で例えばアリルアルコールなど、オレフィン系アルコール、もしくは例えばエチレングリコールモノビニルエーテル、プロピレングリコールモノビニルエーテルなどの、ジオールのモノビニルエーテルと反応させることによって得ることができるものなどの、−OH;(ii)本発明の未キャッピングのチオエーテルをアルキレンと反応させることによって得ることができるものなどの、アルキル;(iii)本発明の未キャッピングのチオエーテルをジオレフィンと反応させることによって得ることができるものなどの、アルキレン;(iv)本発明の未キャッピングのチオエーテルをポリイソシアネートと反応させることによって得ることができるものなどの、−NCO;(v)本発明の未キャッピングのチオエーテルをグリシジルオレフィンと反応させることによって得ることができるものなど、
【0021】
【化4】
あるいは(vi)本発明の未キャッピングのチオエーテルをオレフィン系アルコキシシランと反応させることによって得ることができるものなど、加水分解性官能基などのいずれかであり得る。
【0022】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明のチオエーテルは、下記の構造(III):
【0023】
【化5】
を含む未キャッピングのチオエーテルである。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態は、式(III)を有する構造を含むチオエーテルを対象とし、式中、(a)Rはそれぞれ、同じでも異なってもよく、C2〜6n−アルキレン基など、C2〜10n−アルキレン基を表し、(b)Rはそれぞれ、同じでも異なってもよく、C1〜6n−アルキレン基など、C1〜10n−アルキレン基を表し、(c)Rはそれぞれ、同じでも異なってもよく、C2〜6n−アルキレン基など、C2〜10n−アルキレン基を表し、(d)Xはそれぞれ、Oを表し、(e)pは1から5の値であり、(f)qは0から5の値であり、(g)nは、少なくとも1、場合によっては2から60、3から60、または25から35など、少なくとも2の値であり、(h)RとRは互いに異なる。さらに、いくつかの実施形態において、式(III)に関して:(a)Rは、Cn−アルキレン基を表し、(b)Rは、Cn−アルキレン基を表し、(c)Rは、Cn−アルキレン基を表し、(d)XはOを表し、(e)pは1の値であり、(f)qは1の値であり、(g)nは、少なくとも1、場合によっては2から60、3から60、または25から35など、少なくとも2の値である。
【0025】
いくつかの実施形態において、本発明のチオエーテルは、次式(IV):
B−(A−R (IV)
を有し、式中、(a)Bは、多官能化剤のz価残基を表し、(b)Aは、式(I)を有する構造を表し、(c)Rはそれぞれ、同じでも異なってもよく、−SH;−OH、C1〜10n−アルキル基など、アルキル、C1〜10n−アルキレン基など、アルキレン、−NCO、
【0026】
【化6】
またはシラン基、すなわち
【0027】
【化7】
(式中、RおよびRはそれぞれ独立に、有機基を表し、xは1、2、または3である)など、加水分解性官能基を含み、(d)zは3から6の整数である。
【0028】
すなわち、多官能化実施形態は、適切な多官能化剤の残基に結合している式(I)の構造を3つ以上含む。いくつかの実施形態において、zは3であり、したがって多官能化剤は三官能化剤である。他の実施形態において、チオエーテルの平均官能基数は、約2.05と約3.00の間である。
【0029】
いくつかの実施形態において、(i)「x」モルのα,ωジハロ有機化合物など、α,ωジハロ有機化合物、(ii)≧2xモルの金属水硫化物など、金属水硫化物、(iii)≧2xモルの金属水酸化物など、金属水酸化物、および(iv)所望量の多官能化剤を含み、または場合によってはそれらから実質的になり、またはさらに他の場合にはそれらからなる反応物質から、本発明のチオエーテルは形成される。いくつかの実施形態において、いずれのポリチオールも実質的に含まず、または場合によっては完全に含まない反応物質から、本発明のチオエーテルは形成される。本明細書では、「実質的に含まない」という用語は、議論されている物質が存在するにしても、不可避不純物として存在することを意味する。言い換えれば、その物質は、チオエーテルの特性またはチオエーテルが使用されている組成物の特性に影響を及ぼさない。本明細書では、「完全に含まない」という用語は、議論されている物質が全く存在しないことを意味する。いくつかの実施形態において、前述の反応物質を相間移動触媒の存在下で反応させることによって、本発明のチオエーテルは生成される。
【0030】
適切なα,ωジハロ有機化合物は化学式X−R−Yを有し、式中、XおよびYはハロゲンであり、Rは有機基である。XおよびYは、異なるハロゲン原子でも、同じハロゲン原子でもよい。「α,ω」は、ハロゲン原子が有機基の両端に結合していると考えられることを意味する。適切なハロゲンとしては、例えば塩素、臭素、およびヨウ素が挙げられる。適切な有機基としては、例えば3個以上の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アルコキシ基、およびアリールアルコキシ基が挙げられる。いくつかの実施形態において、有機基はアルコキシ基を含み、その具体例は化学式(V)および(VI)で示すことができる。
−CH−CH−O−CH−O−CH−CH− (V)
−CH−CH−O−CH−CH−O−CH−CH− (VI)
いくつかの実施形態において、有機基は、硫黄原子を含んでもよく、その具体例は化学式(VII)および(VIII)で示すことができる。
−CH−CH−S−CH−CH− (VII)
−CH−CH−S−CH−CH(CH)− (VIII)
本発明での使用に適したα,ωジハロ有機化合物の一具体例は、ビス(2−クロロエチル)ホルマールである。
【0031】
適切な金属水硫化物は、式M−SHを有し、式中、Mは金属である。適切な金属水硫化物の具体例としては、例えば水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化リチウム、水硫化ルビジウム、水硫化セシウム、および前述の2つ以上の混合物が挙げられる。これらの金属水硫化物は、例えば水和物、水性混合物、または無水物として使用することができる。
【0032】
適切な金属水酸化物は、式M−(OH)を有し、式中、Mは金属であり、xは1、2、または3である。適切な金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、および前述の2つ以上の混合物が挙げられる。これらの金属水酸化物は、例えば水和物、水性混合物、または無水物として使用することができる。
【0033】
適切な相間移動触媒(PTC)としては、例えば第四級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、およびクラウンエーテルが挙げられる。相間移動触媒作用のさらに詳細な説明およびPTCとして適した化合物の説明は、E. V. Dehmlow、「Catalysis, Phase Transfer」、Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology、第4版、5巻、Wiley (1996年)で見ることができる。PTCの別の例は、T.TozawaらのJP04046931で見ることができる。本発明のいくつかの実施形態において、相間移動触媒は、テトラブチルアンモニウムブロミド、18−クラウン−6、テトラフェニルホスホニウムハリド、および/またはメチルトリブチルアンモニウムクロリドを含む。いくつかの実施形態において、PTCの適量は、α,ωジハロ有機化合物(複数可)のモルに対して、0.05から2.0モル%など0.01から10モル%である。
【0034】
記載したように、望むなら、多官能化剤を使用して、本発明のいくつかのチオエーテルを調製することもできる。これらの実施形態において、適切な多官能化剤としては、例えばトリハロアルキル化合物など、トリハロ有機化合物、例えばトリハロプロパンが挙げられる。適切なハロゲンとしては、この場合も、例えば塩素、臭素、およびヨウ素が挙げられる。いくつかの実施形態において、多官能化剤は、1,2,3−トリクロロプロパン、1,1,1−トリス(クロロメチル)プロパン、1,1,1−トリス(クロロメチル)エタン、および/または1,3,5−トリス(クロロメチル)ベンゼンを含む。いくつかの実施形態において、トリハロ有機化合物(複数可)の適量は、α,ωジハロ有機化合物(複数可)100モル当たりトリハロ有機化合物(複数可)1から5モル、または場合によってはα,ωジハロ有機化合物100モル当たりトリハロ有機化合物(複数可)3モルなど、α,ωジハロ有機化合物(複数可)100モル当たりトリハロ有機化合物0から10モルである。トリハロ有機化合物(複数可)を使用する場合は、しばしばα,ωジハロ有機化合物(複数可)と混合し、その結果、混合されたハロ化合物を一緒に反応混合物に添加する。
【0035】
いくつかの実施形態において、上述するチオエーテルは室温で液体である。さらに、いくつかの実施形態において、前述のチオエーテルの粘度は、Brookfield CAP 2000粘度計を使用して、ASTM D−2849、セクション79〜90に従って決定して、固形分100%で、温度約25℃および圧力約760mmHgにおいて、40〜500ポアズなど、1500ポアズ以下である。前述の範囲内の端点はいずれも使用することができる。
【0036】
記載したように、いくつかの実施形態において、上述するチオエーテルは、1モル当たり1,000から8,000グラムなど、1モル当たり300から10,000グラムの数平均分子量を有し、分子量は、ポリスチレン標準物質を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーで決定する。前述の範囲内の端点はいずれも使用することができる。
【0037】
いくつかの実施形態において、本発明のチオエーテルのTは、−60℃以下など、−55℃以下である。
【0038】
本明細書の実施例によって、本発明のチオエーテルの実施形態を作製するのに適切な方法をさらに示す。
【0039】
記載したように、本発明のいくつかの実施形態は、前述のチオエーテルを含むシーラント組成物、コーティング組成物、および/または電気ポッティング組成物など、組成物を対象とする。本明細書では、「シーラント組成物」という用語は、水分や温度などの大気条件に耐性を有し、水、燃料、ならびに他の液体および気体などの材料の透過を少なくとも部分的に阻止する能力を有する皮膜を生成することができる組成物を指す。いくつかの実施形態において、本発明のシーラント組成物は、例えば航空宇宙用シーラントおよび燃料タンク用ライニングとして有用である。いくつかの実施形態において、組成物は、上述されたチオエーテル;硬化剤;および充填剤を含む。
【0040】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、以前に記載されたチオエーテルに加えて、1つまたは複数の追加の硫黄含有ポリマーを含む。本明細書では、「硫黄含有ポリマー」という用語は、ポリマーチオール、ポリチオール、チオエーテル、ポリチオエーテル、およびポリスルフィドに限定されるものではないが、これらを含めて、少なくとも1個の硫黄原子を有する任意のポリマーを指す。本明細書では、「チオール」は、チオール基またはメルカプタン基、すなわち「SH」基を、単独の官能基として、または例えばチオグリセロールの場合と同様にヒドロキシル基など、他の官能基と組み合わせて含む化合物を指す。「ポリチオール」は、ジチオールまたはより高次官能性チオールなど、1つを上回るSH基を有するような化合物を指す。このような基は、典型的には他の官能基と反応する活性水素を有するような末端基および/またはペンダント基である。本明細書では、「ポリスルフィド」という用語は、硫黄−硫黄結合(−S−S−)を含む任意の化合物を指す。「ポリチオール」は、末端基および/またはペンダント基の硫黄(−SH)と非反応性の硫黄原子(−S−もしくは(−S−S−))との両方を含むことができる。したがって、「ポリチオール」という用語は、一般に「ポリチオエーテル」および「ポリスルフィド」も包含する。適切な硫黄含有ポリマーとしては、例えば参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,172,179号、同第6,509,418号、および同第7,009,032号に開示されているものが挙げられる。本発明に従って使用される硫黄含有ポリマーはいずれも、ヒドロキシル官能基およびエポキシ官能基に限定されるものではないが、これらを含めて、追加の官能基をさらに含んでもよい。
【0041】
いくつかの実施形態において、本発明のチオエーテルは、本発明の組成物中に、組成物中の非揮発性成分の全重量に対して少なくとも40重量パーセント、または場合によっては少なくとも45重量パーセントなど、少なくとも30重量パーセントの量で存在する。いくつかの実施形態において、本発明のチオエーテルは、本発明の組成物中に、組成物のすべての非揮発性成分の重量に対して80重量パーセント以下、または場合によっては75重量パーセント以下など、90重量パーセント以下の量で存在する。
【0042】
記載したように、本発明の硬化性組成物のいくつかの実施形態は、硬化剤も含む。本発明のいくつかの組成物において有用である硬化剤としては、エポキシ樹脂、例えばヒダントインジエポキシド、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノール−Fのジグリシジルエーテル、ノボラック型エポキシド、ならびにエポキシ化不飽和およびフェノール樹脂のいずれかが挙げられる。他の有用な硬化剤としては、市販ポリオールのアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル、不飽和の合成または天然樹脂化合物、トリアリルシアヌレート、ならびに本発明の化合物のオレフィン基を末端に有する誘導体など、不飽和化合物が挙げられる。
【0043】
イソシアネート官能性化合物も、本発明の組成物において有用な硬化剤であり得る。適切なイソシアネート官能性化合物としては、ポリマーポリイソシアネートが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、ポリマーポリイソシアネートは限定されるものではないが、例えばウレタン結合(−NH−C(O)−O−)、チオウレタン結合(−NH−C(O)−S−)、チオカルバメート結合(−NH−C(S)−O−)、ジチオウレタン結合(−NH−C(S)−S−)、およびそれらの組合せから選択される主鎖結合を有するポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0044】
このようなポリマーポリイソシアネートの分子量は様々であり得る。いくつかの実施形態において、それぞれの数平均分子量(Mn)は、少なくとも100グラム/モル、もしくは少なくとも150グラム/モル、または15,000グラム/モル未満、もしくは5000グラム/モル未満であり得る。本明細書に記載されている数平均分子量の値は、ポリスチレン標準物質を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で決定することができる。
【0045】
適切なポリイソシアネートは限定されるものではないが、例えば非ポリマーの脂肪族ポリイソシアネート、イソシアナト基の1つまたは複数が脂環式環に直接結合している脂環式ポリイソシアネート、イソシアナト基の1つまたは複数が脂環式環に直接結合していない脂環式ポリイソシアネート、イソシアナト基の1つまたは複数が芳香族環に直接結合している芳香族ポリイソシアネート、およびイソシアナト基の1つまたは複数が芳香族環に直接結合していない芳香族ポリイソシアネートなども挙げられる。
【0046】
いくつかの実施形態において、ポリイソシアネートとしては、脂肪族または脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、それらの環式ダイマーおよび環式トリマー、ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。適切なポリイソシアネートは限定されるものではないが、例えばBayerから市販されているDesmodur N 3300(ヘキサメチレンジイソシアネートトリマー)およびDesmodur N 3400(60%ヘキサメチレンジイソシアネートダイマーおよび40%ヘキサメチレンジイソシアネートトリマー)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
いくつかの実施形態において、ポリイソシアネートとしては、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートおよび/またはそれらの異性体混合物が挙げられる。本明細書では、「異性体混合物」という用語は、ポリイソシアネートのシス−シス、トランス−トランス、およびシス−トランス異性体の混合物を指す。本発明で使用するための異性体混合物は限定されるものではないが、例えば以下「PICM」(パライソシアナトシクロヘキシルメタン)と呼ばれる4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)のトランス−トランス異性体、PICMのシス−トランス異性体、PICMのシス−シス異性体、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0048】
本発明で使用するための4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の適切な3つの異性体を以下に示す。
【0049】
【化8】
いくつかの実施形態において、異性体混合物は、10〜100%の4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(PICM)のトランス−トランス異性体を含有することができる。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態において使用することができる追加のジイソシアネートとしては、3−イソシアナト−メチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシル−イソシアネート(「IPDI」)、およびCytec Industries Inc.から販売名TMXDI(登録商標)(メタ)脂肪族イソシアネートで市販されているメタ−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(1,3−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)−ベンゼン)が挙げられる。
【0051】
本明細書では、脂肪族および脂環式ジイソシアネートという用語は、2つのジイソシアネート反応性末端基を有する、直鎖状に結合または環化している6から100個の炭素原子を指す。いくつかの実施形態において、本発明で使用される脂肪族および脂環式ジイソシアネートとしては、TMXDIおよび式R−(NCO)の化合物(式中、Rは脂肪族基または脂環式基を表す)を挙げることができる。
【0052】
適切なポリイソシアネートは限定されるものではないが、例えばエチレン性不飽和ポリイソシアネート;脂環式ポリイソシアネート;イソシアネート基が芳香族環に直接結合していない芳香族ポリイソシアネート、例えばα,α’−キシリレンジイソシアネート;イソシアネート基が芳香族環に直接結合している芳香族ポリイソシアネート、例えばベンゼンジイソシアネート、または下記の構造を有するメチレンジベンゼンジイソシアネート
【0053】
【化9】
、スルフィド結合および/またはジスルフィド結合を含むポリイソシアネート;スルホン結合を含む芳香族ポリイソシアネート;スルホン酸エステル型ポリイソシアネート、例えば4−メチル−3−イソシアナトベンゼンスルホニル−4’−イソシアナト−フェノールエステル;芳香族スルホン酸アミド型ポリイソシアネート;硫黄含有ヘテロ環式ポリイソシアネート、例えばチオフェン−2,5−ジイソシアネート;それらのポリイソシアネートのハロゲン化、アルキル化、アルコキシル化、ニトロ化、カルボジイミド変性、尿素変性、およびビウレット変性誘導体;ならびにそれらのポリイソシアネートの二量化および三量化生成物などがさらに挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0054】
いくつかの実施形態において、以下の構造のジイソシアネート:
【0055】
【化10】
を使用することができ、式中、R10およびR11はそれぞれ独立に、C〜Cアルキルである。
【0056】
適切なエチレン性不飽和ポリイソシアネートの例としては、ブテンジイソシアネートおよび1,3−ブタジエン−1,4−ジイソシアネートが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
適切な脂環式ポリイソシアネートの例としては、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン、ビス(イソシアナトシクロヘキシル)−2,2−プロパン、ビス(イソシアナトシクロヘキシル)−1,2−エタン、2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−5−イソシアナトメチル−ビシクロ[2.2.1]−ヘプタン、2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−6−イソシアナトメチル−ビシクロ[2.2.1]−ヘプタン、2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−5−イソシアナトメチル−ビシクロ[2.2.1]−ヘプタン、2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−6−イソシアナトメチル−ビシクロ[2.2.1]−ヘプタン、2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−6−(2−イソシアナトエチル)−ビシクロ[2.2.1]−ヘプタン、2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−5−(2−イソシアナトエチル)−ビシクロ[2.2.1]−ヘプタン、および2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−6−(2−イソシアナトエチル)−ビシクロ[2.2.1]−ヘプタンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
イソシアネート基が芳香族環に直接結合していない適切な芳香族ポリイソシアネートの例としては、ビス(イソシアナトエチル)ベンゼン、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン、ビス(イソシアナトブチル)ベンゼン、ビス(イソシアナトメチル)ナフタレン、ビス(イソシアナトメチル)ジフェニルエーテル、ビス(イソシアナトエチル)フタレート、メシチレントリイソシアネート、および2,5−ジ(イソシアナトエチル)フラン、およびメタ−キシリレンジイソシアネートも挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
芳香族環に直接結合しているイソシアネート基を有する適切な芳香族ポリイソシアネートの例としては、フェニレンジイソシアネート、エチルフェニレンジイソシアネート、イソプロピルフェニレンジイソシアネート、ジメチルフェニレンジイソシアネート、ジエチルフェニレンジイソシアネート、ジイソプロピルフェニレンジイソシアネート、トリメチルベンゼントリイソシアネート、ベンゼントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、メチルナフタレンジイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、オルト−トルイジンジイソシアネート、オルト−トリリイジンジイソシアネート、オルト−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ビス(3−メチル−4−イソシアナトフェニル)メタン、ビス(イソシアナトフェニル)エチレン、3,3’−ジメトキシ−ビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリマー4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレントリイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4,4’−トリイソシアネート、4−メチルジフェニルメタン−3,5,2’,4’,6’−ペンタイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、ビス(イソシアナトフェニルエーテル)エチレングリコール、ビス(イソシアナトフェニルエーテル)−1,3−プロピレングリコール、ベンゾフェノンジイソシアネート、カルバゾールジイソシアネート、エチルカルバゾールジイソシアネート、およびジクロロカルバゾールジイソシアネートも挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
スルフィド結合またはジスルフィド結合を含む適切な芳香族ポリイソシアネートの例としては、ジフェニルスルフィド−2,4’−ジイソシアネート、ジフェニルスルフィド−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジイソシアナトジベンジルチオエーテル、ビス(4−イソシアナトメチルベンゼン)−スルフィド、ジフェニルジスルフィド−4,4’−ジイソシアネート、2,2’−ジメチルジフェニルジスルフィド−5,5’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルジスルフィド−5,5’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルジスルフィド−6,6’−ジイソシアネート、4,4’−ジメチルジフェニルジスルフィド−5,5’−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシジフェニルジスルフィド−4,4’−ジイソシアネート、および4,4’−ジメトキシジフェニルジスルフィド−3,3’−ジイソシアネートが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0061】
スルホン結合を含む適切な芳香族ポリイソシアネートの例としては、ジフェニルスルホン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルスルホン−3,3’−ジイソシアネート、ベンジジンスルホン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタンスルホン−4,4’−ジイソシアネート、4−メチルジフェニルメタンスルホン−2,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジメトキシジフェニルスルホン−3,3’−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジイソシアナトジベンジルスルホン、4,4’−ジメチルジフェニルスルホン−3,3’−ジイソシアネート、4,4’−ジ−tert−ブチル−ジフェニルスルホン−3,3’−ジイソシアネート、および4,4’−ジクロロジフェニルスルホン−3,3’−ジイソシアネートも挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
適切なポリイソシアネートの例としては、4−メチル−3−イソシアナト−ベンゼン−スルホニルアニリド−3’−メチル−4’−イソシアネート、ジベンゼンスルホニル−エチレンジアミン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−メトキシベンゼンスルホニル−エチレンジアミン−3,3’−ジイソシアネート、および4−メチル−3−イソシアナト−ベンゼン−スルホニルアニリド−4−エチル−3’−イソシアネートなど、芳香族スルホン酸アミド型ポリイソシアネートが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
さらに、当業者に公知である有機および無機過酸化物(例えば、MnO)を用いたチオール基の酸化カップリングによって、有用な硬化物を得ることができる。特定の硬化剤の選択が、硬化された組成物のTに影響を及ぼす可能性がある。例えば、チオエーテル(複数可)のTより大幅に低いTを有する硬化剤が、硬化された組成物のTを低減する可能性がある。
【0064】
組成物で使用されるチオエーテル(複数可)の性質に応じて、組成物は、化学量論量の95から125%など、90%から150%の選択された硬化剤(複数可)を含有することが多い。
【0065】
本発明の組成物のいくつかの実施形態で有用な充填剤としては、カーボンブラックや炭酸カルシウム(CaCO)など、通常の無機充填剤、および軽量充填剤を含めて、当技術分野でよく使用されるものが挙げられる。適切な軽量充填剤としては、例えば米国特許第6,525,168号、第4欄、23〜55行に記載されているものが挙げられ、その引用部分は、参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態において、組成物は、組成物の全重量に対して10から50重量パーセントなど、5から60重量パーセントの充填剤または充填剤の組合せを含む。
【0066】
理解されるように、本発明のいくつかの組成物で使用されるチオエーテル、硬化剤、および充填剤、ならびに以下に記載する追加の添加剤は、相互に相溶性があるように選択されるべきである。本発明の組成物のための相溶性材料の選択は、過度の実験を行うことなく、当業者が容易に行うことができる。
【0067】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、−10℃、または場合によっては−20℃など、最低温度0℃(すなわち、0℃以上の温度)において硬化可能であり、硬化すると−60℃以下、または場合によっては−65℃以下など、−55℃以下のTを有する。
【0068】
前述の材料に加えて、本発明のいくつかの組成物は、以下の1つまたは複数を場合によって含むことができる:様々な成分の中でもとりわけ着色剤;チキソトロープ剤;促進剤;遅延剤;接着促進剤;溶媒;およびマスキング剤。
【0069】
本明細書では、「着色剤」という用語は、色および/または他の不透明性および/または他の視覚効果を組成物に付与する任意の物質を意味する。着色剤は、離散粒子、分散液、溶液、および/またはフレークなど、任意の適切な形でコーティングに添加することができる。単一の着色剤または2つ以上の着色剤の混合物を本発明のコーティングで使用することができる。
【0070】
着色剤としては、例えば塗料産業で使用されるものおよび/またはDry Color
Manufacturers Association(DCMA)で列挙されるものなど、顔料、染料、およびチント、ならびに特殊効果組成物が挙げられる。着色剤としては、例えば使用条件下で不溶であるが湿潤可能である微細化固体粉末を挙げることができる。着色剤は、有機でも、無機でもよく、凝集していても、凝集していなくてもよい。アクリル系グラインドビヒクルなど、グラインドビヒクルの使用によって、着色剤をコーティングに組み込むことができるが、その使用は当業者によく知られていることである。
【0071】
顔料および/または顔料組成物としては、例えばカルバゾールジオキサジン粗顔料、アゾ、モノアゾ、ジスアゾ、ナフトールAS、塩型(レーキ)、ベンゾイミダゾロン、凝縮物(condensation)、金属錯体、イソインドリノン、イソインドリン、および多環式のフタロシアニン、キナクリドン、ペリレン、ペリノン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、アントラキノン、インダントロン、アントラピリミジン、フラバントロン、ピラントロン、アンタントロン、ジオキサジン、トリアリールカルボニウム、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロールレッド(「DPPBOレッド」)、二酸化チタン、カーボンブラック、ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。「顔料」および「着色充填剤」という用語は、同義で使用することができる。
【0072】
染料としては、例えばフタログリーンもしくはブルー(pthalo green or blue)、酸化鉄、バナジン酸ビスマス、アントラキノン、ペリレン、アルミニウム、およびキナクリドンなどの溶媒系および/または水性系であるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
チントとしては、例えばDegussa,Inc.から市販されているAQUA−CHEM 896、Eastman Chemical,Inc.のAccurate Dispersions部門から市販されているCHARISMA COLORANTSおよびMAXITONER INDUSTRIAL COLORANTSなどの水系または水混和性担体に分散させた顔料が挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
上記に指摘したように、着色剤は、ナノ粒子分散液を含めて分散液の形であり得るが、これに限定されない。ナノ粒子分散液は、所望の可視色および/または不透明性および/または視覚効果をもたらす、1つもしくは複数の高分散ナノ粒子着色剤および/または着色剤粒子を含むことができる。ナノ粒子分散液は、70nm未満または30nm未満など、150nm未満の粒径を有する顔料または染料などの着色剤を含むことができる。ナノ粒子は、有機または無機顔料原液を粒径が0.5mm未満の粉砕媒体と共に粉砕することによって生成することができる。ナノ粒子分散液およびその作製方法は、例えば参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,875,800号(B2)で確認される。ナノ粒子分散液は、結晶化、沈殿、気相縮合、および化学摩耗(すなわち、部分溶解)によって生成することもできる。コーティング内でナノ粒子の再凝集を最小限に抑制するために、樹脂被覆ナノ粒子の分散液を使用することができる。本明細書では、「樹脂被覆ナノ粒子の分散液」は、ナノ粒子とナノ粒子の上の樹脂コーティングとを含む離散的「複合体微粒子」が分散している連続相を指す。樹脂被覆ナノ粒子の分散液およびその作製方法は、例えば2004年6月24日出願の米国特許出願公開第2005−0287348号(A1)、2003年6月24日出願の米国特許仮出願第60/482,167号、および2006年1月20日出願の米国特許出願第11/337,062号(これも参照により本明細書に組み込まれる)で確認される。
【0075】
使用することができる特殊効果組成物としては、例えば反射率、真珠光沢、金属光沢、リン光、蛍光、フォトクロミズム、感光性、サーモクロミズム、ゴニオクロミズム、および/または変色などの1つまたは複数の外観効果をもたらす顔料ならびに/または組成物が挙げられる。追加の特殊効果組成物は、不透明性または質感など、他の知覚可能な特性をもたらすことができる。限定されない実施形態において、特殊効果組成物は、コーティングを異なる角度から見たときコーティングの色が変化する色ずれをもたらすことができる。色効果組成物は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,894,086号で確認される。追加の色効果組成物としては、透明被覆雲母および/もしくは合成雲母、被覆シリカ、被覆アルミナ、透明液晶顔料、液晶コーティング、ならびに/または干渉が材料内の屈折率差に起因するものであって、材料の表面と空気との屈折率差によるものではない任意の組成物を挙げることができる。
【0076】
一般に、着色剤は、所望の視覚効果および/または色効果を付与するのに十分な任意の量で存在することができる。着色剤は、本組成物の3から40重量パーセントまたは5から35重量パーセントなど、1から65重量パーセントを占めることができ、重量パーセントは、組成物の全重量を基準にする。
【0077】
チキソトロープ剤、例えばシリカは、組成物の全重量に対して0.1から5重量パーセントの量で使用されることが多い。
【0078】
アミンなど、当技術分野で公知の硬化触媒は、組成物の全重量に対して0.1から5重量パーセントの量で存在することが多い。有用な促進剤の具体例は、限定されるものではないが1,4−ジアザ−ビシクロ[2.2.2]オクタン(Air Products、Chemical Additives Division、Allentown,Pa.から市販されているDABCO(登録商標))、およびDMP−30(登録商標)(Rohm and Haas、Philadelphia,Pa.から市販されている2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールを含む促進剤組成物)である。しかし、驚くべきことに、本発明のいくつかの実施形態は、このような硬化促進剤が何ら存在しない場合でさえ、周囲条件で硬化することが発見された。
【0079】
ステアリン酸など、遅延剤もまた、組成物の全重量に対して0.1から5重量パーセントの量で使用されることが多い。接着促進剤は、使用される場合には、組成物の全重量に対して0.1から15重量パーセントの量で存在することが多い。適切な接着促進剤としては、Occidental Chemicalsから入手可能なMETHYLONフェノール樹脂など、フェノール系物質、およびOSi Specialtiesから入手可能なA−187やA−1100など、エポキシ、メルカプト、またはアミノ官能性シランなどのオルガノシランが挙げられる。組成物の何らかの低レベル臭気をカバーするのに有用であるマツ芳香剤または他の香りなどのマスキング剤は、組成物の全重量に対して0.1から1重量パーセントの量で存在することが多い。
【0080】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、航空宇宙用シーラントで普通なら有用であるはずのTより高いTを有するチオエーテル(複数可)を組成物に含めることを、少なくともいくつかの場合において、可能にすることができる可塑剤を含む。すなわち、可塑剤の使用によって、組成物のTを効果的に低減し、したがって硬化された重合性組成物の低温可撓性を、チオエーテル単独のTを基準として予想されるはずの低温可撓性を超えて増大させることができる。本発明の組成物のいくつかの実施形態において有用な可塑剤としては、例えばフタル酸エステル、塩素化パラフィン、および水素添加テルフェニルが挙げられる。可塑剤または可塑剤の組合せは、組成物の1から10重量パーセントなど、1から40重量パーセントを構成することが多い。いくつかの実施形態において、組成物で使用される可塑剤(複数可)の性質および量に応じて、−55℃までなど、−50℃までのT値を有する本発明のチオエーテルを使用することができる。
【0081】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、イソプロピルアルコールなど、1つまたは複数の有機溶媒を、組成物の全重量に対して例えば0から15重量パーセントの範囲の量、例えば15重量パーセント未満、および場合によっては10重量パーセント未満の量でさらに含むことができる。
【0082】
しかし、いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、有機溶媒または水性溶媒、すなわち水など、いずれの溶媒も実質的に含まず、または場合によっては完全に含まない。別の言い方をすれば、いくつかの実施形態において、本発明の組成物は実質的に100%活性である。
【0083】
いくつかの実施形態において、前述のシーラント組成物など、組成物は、一方のパッケージに前述のチオエーテルポリマーが含まれ、他方のパックに硬化剤が含まれている2パック組成物など、マルチパック組成物として実施される。前述の添加剤および他の材料を、所望または必要に応じてどちらのパッケージにでも添加することができる。使用時またはその近くに、2つのパッケージは一緒に、単に混合される。
【0084】
本発明の組成物は、種々の基材のいずれにでも塗布することができる。本発明の組成物を塗布する一般的な基材としては、チタン、ステンレス鋼、アルミニウム、それらの陽極処理、下塗り、有機被覆およびクロメート被覆を行った形、エポキシ、ウレタン、グラファイト、ガラス繊維複合体、KEVLAR(登録商標)、アクリル系物質、ならびにポリカーボネートを挙げることができる。
【0085】
本発明の組成物は、当業者に公知である適切な任意の塗布プロセス、例えば押出、ディップコーティング、ダイレクトロールコーティング、リバースロールコーティング、カーテンコーティング、スプレーコーティング、ブラシコーティング、真空コーティング、およびそれらの組合せによって、基材の表面に直接塗布し、または下層の上に塗布することができる。組成物を基材に塗布する方法および装置は、少なくとも一部分を基材材料の形状およびタイプによって決定してもよい。
【0086】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は耐燃料性である。本明細書では、「耐燃料性」という用語は、本発明の組成物を基材に塗布し、硬化すると、シーラントなど、硬化された生成物を得ることができ、この生成物は、参照により本明細書に組み込まれるASTM D792またはAMS 3269に記載されているものと同様の方法に従って、140°F(60℃)および周囲圧力でジェット参照流体(jet reference fluid)(JRF)タイプ1に1週間浸漬された後に、40%以下、場合によっては25%以下、場合によっては20%以下、さらに他の場合には10%以下の体積膨潤率(%)を有することを意味する。本明細書で耐燃料性の決定に使用されるジェット参照流体JRFタイプ1は、以下の組成を有する(AMS 2629を参照のこと、1989年7月1日発行)、セクション3.1.1以降参照、SAE(Society of Automotive Engineers、Warrendale, Pa.)から入手可能(参照により本明細書に組み込まれる):
トルエン 28±1体積%
シクロヘキサン(工業用) 34±1体積%
イソオクタン 38±1体積%
ジ−tert−ブチルジスルフィド 1±0.005体積%
(ドクタースイート(doctor sweet))。
【0087】
実際に、本発明のいくつかの実施形態が、優れた耐燃料性(上述されたように10%以下の体積膨潤率(%)、ポリスルフィドに伴うことが多い)、および優れた耐高温性(360°Fで8時間曝露した後に良好な引張強さおよび伸び特性、ポリチオエーテルに伴うことが多い)を示すことは、驚くべき発見であった。
【0088】
いくつかの実施形態において、本発明のシーラントなど、硬化された生成物は、公知の方法、例えば参照により本明細書に組み込まれるAMS(Aerospace Material Specification)3267、セクション4.5.4.7、MIL−S(Military Specification)−8802E、セクション3.3.12、およびMIL−S−29574に記載されている方法、ならびにASTM(American Society for Testing and Materials)D522−88に記載されているものと同様の方法で決定して良好な低温可撓性を有
する。良好な低温可撓性を有する硬化された調合物が、航空宇宙用途において望ましい。というのは、調合物は、温度や圧力など、環境条件、ならびに接合部の収縮と膨張および振動などの物理的条件の大幅な変化を受けるからである。
【0089】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物はまた、周囲条件下で比較的急速に硬化もする。例えば、いくつかの実施形態において、組成物は、周囲条件で塗布および硬化を行って、1時間以下、場合によっては1/2時間以下で、不粘着性皮膜を形成する。本発明では、不粘着時間は、AMS 3265B、セクション3.6.8、試験手順AS5127/1、セクション5.8に記載されている手順に従って測定される。
【0090】
いくつかの実施形態において、本発明のシーラント組成物は、AMS 3279、セクション3.3.17.1、試験手順AS5127/1、セクション7.7に記載の手順に従って測定すると、少なくとも100%の伸びおよび少なくとも500psiの引張強さを有するシーラントなど、硬化された生成物をもたらす。
【0091】
いくつかの実施形態において、本発明のシーラント組成物は、BSS 7272に記載の手順に従って測定すると、200psiを超え、場合によっては少なくとも400psiの重ねせん断強さを有するシーラントなど、硬化された生成物をもたらす。
【0092】
前述の説明から明らかとなるはずであるが、本発明は、本発明の組成物を利用して、開口部を封止する複数の方法も対象とする。これらの方法は、(a)本発明の組成物を表面に塗布して、開口部を封止するステップと、(b)組成物が例えば周囲条件下で硬化されることを可能にするステップとを含む。やはり理解されるであろうが、本発明は、本発明のコーティング組成物で被覆された少なくとも1つの表面を備えた航空宇宙機、および本発明のシーラント組成物で封止された少なくとも1つの開口部を備えた航空宇宙機も対象とする。
【0093】
次の実施例は、本発明を例示するものであるが、本発明をそれらの詳細に限定するものと見なされるべきでない。別段の示唆のない限り、次の実施例、および本明細書全体にわたって、部および百分率はすべて、重量によるものである。
【実施例】
【0094】
(実施例1)
メルカプタンでキャップされたポリチオエーテルの合成
5リットルの四ツ口フラスコに、固体フレークの水硫化ナトリウム水和物(834.04g;純度:70%;10.42モル)と、その後に続いて水(1.696Kg)を加えた。フラスコに窒素を流し、撹拌を始めた。水硫化ナトリウムの溶液に、新たに調製した水酸化ナトリウム水溶液(306.18g、濃度:50%;3.83モル)と、その後に続いて相間移動触媒A−175(14.06g、0.06モル)を添加した。反応混合物を160°Fに加熱した。2−クロロエチルホルマール(748.89g、4.33モル)と1,2,3−トリクロロプロパン(19.86g、0.13モル)の混合物を、160〜165°Fで6.5時間かけて添加し、撹拌をさらに2時間継続した。加熱を175〜180°Fで8時間および185〜190°Fで8時間継続した。反応混合物を周囲温度に冷却した。部分乳化ポリマー層を分離し、400mlずつの水で5回洗浄した。酢酸鉛紙試験によって、最後の洗液は水硫化ナトリウムを含んでいないことが示唆された。次いで、ポリマー層を酸性化水(95%ギ酸2mlを含有する水400ml;ph:2〜3)で洗浄し、1.2リットルのクロロホルムに溶解した。有機部分を分離し、無水硫酸ナトリウム帯に通して濾過し、濃縮して、灰色がかった白色ポリマー583gを得た。メルカプタン当量重量:1816(ヨウ素滴定法);粘度:122P(スピンドル6番、回転速度100RPM;Brookfield Cap 2000粘度計)。
【0095】
(実施例2)
シーラント調合物の調製
実施例1のポリチオエーテル59.9重量部、炭酸カルシウム39.0重量部、二酸化チタン0.6重量部、および1,4−ジアザ−ビシクロ[2.2.2]オクタン(Air
Products、Chemical Additives Division、Allentown,Pa.から市販されているDABCO(登録商標))0.5重量部を混合することによって、シーラント調合物のパートAを調製した。
【0096】
エポキシシラン接着促進剤0.9重量部、HB−40変性ポリフェニル(Solutia,Inc.から市販されている)11.1重量部、炭酸カルシウム41.6重量部;Epon 828エポキシ樹脂46.2重量部、およびカーボンブラック0.2重量部を混合することによって、シーラント調合物のパートBを調製した。
【0097】
100部のパートAと14部のパートBを混合することによって、試験用のシーラントを作製した。上記の組成物から調製されたシーラントは、表1に記載する特性を示した。
【0098】
【表1】

本発明の特定の実施形態を例示の目的で説明してきたが、本発明の詳細について多数の変形を、添付の特許請求の範囲で定められる本発明から逸脱することなく行うことができることは当業者に明らかであろう。

【外国語明細書】
2015007258000001.pdf