(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-73829(P2015-73829A)
(43)【公開日】2015年4月20日
(54)【発明の名称】シャントキャップ
(51)【国際特許分類】
A61M 1/14 20060101AFI20150324BHJP
【FI】
A61M1/14 530
A61M1/14 540
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-213615(P2013-213615)
(22)【出願日】2013年10月11日
(71)【出願人】
【識別番号】507365204
【氏名又は名称】旭化成メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100133307
【弁理士】
【氏名又は名称】西本 博之
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 英夫
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077BB01
4C077CC08
4C077DD22
4C077EE01
(57)【要約】
【課題】本体部と栓体部とを連結する連結部の白化を抑制することができるシャントキャップを提供することを目的とする。
【解決手段】シャントキャップ30は、基端31bがチューブ2aの終端部2cに接続されると共に、チューブ2aに連通する管状の本体部31と、本体部31の先端31aを包囲する筒状部33hを有し、当該先端31aに取り付けられる栓体部33と、本体部31と筒状部33hとを連結する連結部35と、を備え、栓体部33が先端31aから取り外され、本体部31の管軸A1と筒状部33hの筒軸A3とが平行になるように配置された状態において、連結部35は、本体部31から先端31a側に傾斜して延出した本体部側部分41と、栓体部33から先端31a側に傾斜して延出した栓体部側部分43と、本体部側部分41と栓体部側部分43との間に位置し、基端31b側を凸にして湾曲する中間湾曲部分45と、を有することを特徴とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブの終端部に取り付けられるシャントキャップであって、
基端が前記終端部に接続されると共に、前記チューブに連通する管状の本体部と、
前記本体部の先端を包囲する筒状部を有し、当該先端に取り付けられる栓体部と、
前記本体部の外側面と前記筒状部の外側面とを連結する連結部と、を備え、
前記栓体部が前記先端から取り外され、前記本体部の管軸と前記筒状部の筒軸とが平行になるように配置された状態において、
前記連結部は、
前記本体部の外側面から前記先端側に傾斜して延出した本体部側部分と、
前記栓体部の前記筒状部の外側面から前記先端側に傾斜して延出した栓体部側部分と、
前記本体部側部分と前記栓体部側部分との間に位置し、前記基端側を凸にして湾曲する中間湾曲部分と、を有することを特徴とするシャントキャップ。
【請求項2】
前記連結部は、
前記本体部側部分と前記中間湾曲部分との間に位置し、前記基端側を凸にして前記中間湾曲部分よりも小さい曲率半径で湾曲する第1湾曲部分と、
前記栓体部側部分と前記中間湾曲部分との間に位置し、前記基端側を凸にして前記中間湾曲部分よりも小さい曲率半径で湾曲する第2湾曲部分と、を有することを特徴とする請求項1に記載のシャントキャップ。
【請求項3】
前記連結部は、
前記本体部側部分と前記第1湾曲部分との間に位置し、前記先端側を凸にして湾曲する第3湾曲部分を有することを特徴とする請求項2に記載のシャントキャップ。
【請求項4】
前記連結部は、
前記栓体部側部分と前記第2湾曲部分との間に位置し、前記先端側を凸にして湾曲する第4湾曲部分を有することを特徴とする請求項2又は3に記載のシャントキャップ。
【請求項5】
前記本体部側部分の延出方向は、前記本体部の管軸方向に対して40〜60°傾斜しており、
前記栓体部側部分の延出方向は、前記本体部の管軸方向に対して40〜60°傾斜していることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のシャントキャップ。
【請求項6】
前記筒状部は、前記先端が挿入される挿入口を含み、
前記栓体部が前記先端から取り外された状態において、前記筒状部の前記挿入口は前記先端側に開口していることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のシャントキャップ。
【請求項7】
前記筒状部の内側面及び前記先端の外側面には、互いに係合し前記管軸周りの前記栓体部の回転を規制するための凹凸嵌合部が形成されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のシャントキャップ。
【請求項8】
前記本体部の外側面に設けられ、当該外側面と対向する挟持部材を更に備え、
前記挟持部材は、当該挟持部材の開閉操作時に前記本体部に向けて押される開閉操作部を有し、
前記開閉操作部は、
前記本体部の管軸方向において、前記基端よりも前記先端側に位置することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のシャントキャップ。
【請求項9】
前記開閉操作部は、開閉操作時に押す方向に対して直交する押下面を有することを特徴とする請求項8に記載のシャントキャップ。
【請求項10】
前記挟持部材は、
挟持対象物の挿入方向に対して前記先端側に向くように傾斜し当該挟持対象物をガイドする挿入ガイド面を有することを特徴とする請求項8又は9に記載のシャントキャップ。
【請求項11】
前記本体部と、前記栓体部と、前記連結部とが一体に成形されていることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載のシャントキャップ。
【請求項12】
チューブの終端部に取り付けられるシャントキャップであって、
基端が前記チューブの前記終端部に接続されると共に、前記チューブに連通する管状の本体部と、
前記本体部の先端を包囲する筒状部を有し、前記先端に取り付けられる栓体部と、
前記本体部の外側面と前記筒状部の外側面とを連結する連結部と、を備え、
前記連結部は、
前記本体部の外側面から前記先端側に傾斜して延出した本体部側部分と、
前記栓体部の前記筒状部の外側面から前記基端側に傾斜して延出した栓体部側部分と、
前記本体部側部分と前記栓体部側部分とを接続する中間接続部と、を有し、
前記中間接続部は、
前記本体部側部分に接続され前記基端側を凸にして湾曲する基端側部分と、前記栓体部側部分に接続され前記先端側を凸にして湾曲する先端側部分と、を含むことを特徴とするシャントキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャントキャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、下記特許文献1に記載のシャントキャップが知られている。このシャントキャップは、プラスチック材料からなり、筒状の本体部と、当該本体部の先端に取り付けられる栓体部と、本体部と栓体部とを連結する連結部とを備え、本体部と栓体部と連結部とは一体に成形されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−279494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のシャントキャップにおいては、栓体部を本体部の先端に取り付けたとき、強制的に曲げられた連結部の一部に過度の応力が発生する場合があり、連結部の一部にプラスチック材料の白化現象が発生する可能性がある。
【0005】
本発明は、本体部と栓体部とを連結する連結部の白化を抑制することができるシャントキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のシャントキャップは、チューブの終端部に取り付けられるシャントキャップであって、基端が終端部に接続されると共に、チューブに連通する管状の本体部と、本体部の先端を包囲する筒状部を有し、当該先端に取り付けられる栓体部と、本体部の外側面と筒状部の外側面とを連結する連結部と、を備え、栓体部が先端から取り外され、本体部の管軸と筒状部の筒軸とが平行になるように配置された状態において、連結部は、本体部の外側面から先端側に傾斜して延出した本体部側部分と、栓体部の筒状部の外側面から先端側に傾斜して延出した栓体部側部分と、本体部側部分と栓体部側部分との間に位置し、基端側を凸にして湾曲する中間湾曲部分と、を有することを特徴とする。
【0007】
上記シャントキャップでは、連結部が上記のような形状であるので、栓体部が本体部の先端に取り付けられるときに、曲げ変形する連結部に発生する曲げ応力が分散され易い。よって、連結部の一部位に曲げ応力が集中することが避けられ、連結部の白化を抑制することができる。
【0008】
また、連結部は、本体部側部分と中間湾曲部分との間に位置し、基端側を凸にして中間湾曲部分よりも小さい曲率半径で湾曲する第1湾曲部分と、栓体部側部分と中間湾曲部分との間に位置し、基端側を凸にして中間湾曲部分よりも小さい曲率半径で湾曲する第2湾曲部分と、を有することとしてもよい。このような構成も、連結部に発生する曲げ応力の分散に寄与する。
【0009】
また、連結部は、本体部側部分と第1湾曲部分との間に位置し、先端側を凸にして湾曲する第3湾曲部分を有することとしてもよい。このような構成も、連結部に発生する曲げ応力の分散に寄与する。
【0010】
また、連結部は、栓体部側部分と第2湾曲部分との間に位置し、先端側を凸にして湾曲する第4湾曲部分を有することとしてもよい。このような構成も、連結部に発生する曲げ応力の分散に寄与する。
【0011】
また、本体部側部分の延出方向は、本体部の管軸方向に対して40〜60°傾斜しており、栓体部側部分の延出方向は、本体部の管軸方向に対して40〜60°傾斜していることとしてもよい。この構成によれば、上記の作用効果が効果的に奏される。
【0012】
また、筒状部は、先端が挿入される挿入口を含み、栓体部が先端から取り外された状態において、筒状部の挿入口は先端側に開口していることとしてもよい。
【0013】
また、筒状部の内側面及び先端の外側面には、互いに係合し管軸周りの栓体部の回転を規制するための凹凸嵌合部が形成されていることとしてもよい。この構成によれば凹凸嵌合部により、栓体部の管軸周りの回転が規制されるので、連結部が捩れることが避けられる。その結果、連結部に捩り応力が発生することが避けられ、白化の抑制効果が向上される。
【0014】
また、本発明のシャントキャップは、本体部の外側面に設けられ、当該外側面と対向する挟持部材を更に備え、挟持部材は、当該挟持部材の開閉操作時に本体部に向けて押される開閉操作部を有し、開閉操作部は、本体部の管軸方向において、基端よりも先端側に位置することとしてもよい。この構成によれば、挟持部材の開閉操作時に、ユーザの指が基端やチューブの終端部に容易に接触しにくく、終端部の清潔性を維持することができる。また、開閉操作部は、開閉操作時に押す方向に対して直交する押下面を有することとしてもよい。
【0015】
また、挟持部材は、挟持対象物の挿入方向に対して前記先端側に向くように傾斜し当該挟持対象物をガイドする挿入ガイド面を有することとしてもよい。この構成によれば、挟持対象物が挿入ガイド面に案内されながら円滑に挟持部材に挿入される。
【0016】
また、本体部と、栓体部と、連結部とが一体に成形されていることとしてもよい。
【0017】
本発明のシャントキャップは、チューブの終端部に取り付けられるシャントキャップであって、基端がチューブの終端部に接続されると共に、チューブに連通する管状の本体部と、本体部の先端を包囲する筒状部を有し、先端に取り付けられる栓体部と、本体部の外側面と筒状部の外側面とを連結する連結部と、を備え、連結部は、本体部の外側面から先端側に傾斜して延出した本体部側部分と、栓体部の筒状部の外側面から基端側に傾斜して延出した栓体部側部分と、本体部側部分と栓体部側部分とを接続する中間接続部と、を有し、中間接続部は、本体部側部分に接続され基端側を凸にして湾曲する基端側部分と、栓体部側部分に接続され先端側を凸にして湾曲する先端側部分と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、本体部と栓体部とを連結する連結部の白化を抑制することができるシャントキャップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明のシャントキャップが適用される血液浄化装置の一例を示す斜視図である。
【
図2】本発明のシャントキャップを含む血液回路の一例を示す斜視図である。
【
図3】本発明のシャントキャップの一例を示す斜視図である。
【
図4】
図3のシャントキャップを示す正面図である。
【
図5】
図3のシャントキャップを示す側面図である。
【
図6】
図3のシャントキャップの連結部を拡大して示す正面図である。
【
図7】
図3のシャントキャップの第2状態を示す正面図である。
【
図8】
図7のシャントキャップの使用状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るシャントキャップの実施形態について詳細に説明する。最初に、
図1及び
図2を参照して本実施形態のシャントキャップが適用される血液浄化装置について説明する。
【0021】
血液浄化装置1では、各種の治療モードに対応可能な二面式を採用しており、正面側の回路装着部11には血液系パネル回路が装着され、右扉12を開放すると現れる右面側の回路装着部(図示省略)には液系パネル回路が装着される。例えば、病因物質を体外循環によって血中から取り除く技術であるアフェレシスモードでは、血液系のパネル回路が正面側の回路装着部11に装着され、右面側の回路装着部には血漿系のパネル回路が装着される。また、腹水モードでは、濾過系のパネル回路が正面側に装着され、濃縮系のパネル回路が右面側に装着される。
【0022】
以下、
図2を参照し、液体回路(例えば、透析用回路)の一例として持続緩徐式血液濾過療法(CRRT)に用いられる血液パネル回路2を説明する。CRRTは、急性期の腎不全治療等のための長時間かつ緩やかな体液調整療法である。CRRTでは、血液を血液ろ過器にて浄化処理し、処理後の血液に対して適宜に補液を加えた後に、循環させる循環回路を構成する必要がある。
【0023】
血液パネル回路(以下、「血液回路」という)2は、血液を血液ろ過器に送り込む上流側のライン(以下、「動脈ライン」という)21と、血液ろ過器で浄化処理された血液が流動する下流側のライン(以下、「静脈ライン」という)22とを備えている。
【0024】
動脈ライン21、及び静脈ライン22は、基本的に塩化ビニル製のチューブ2aからなり、動脈ライン21、及び静脈ライン22は、逆L字状のパネル2bによって一体化されている。また、動脈ライン21には、血液ポンプ13(
図1参照)に設置される血液ポンプチューブ24を挟んだ二か所にエアフリー圧力チャンバー(以下、「圧力チャンバー」という)3が配置されている。一方の圧力チャンバー3は、脱血側でチューブ2aに接続され、他方の圧力チャンバー3は、血液ろ過器側となる入口側でチューブ2aに接続されている。
【0025】
図1に示されるように、血液浄化装置1の正面側の回路装着部11には、血液ろ過器のホルダー14や血液ポンプ13などが取り付けられている。また、回路装着部11には、血液回路2の圧力チャンバー3が装着されるチャンバー装着部15が設けられている。チャンバー装着部15の受圧口16は、血液回路2の内圧を検出する圧力センサー(図示省略)に連通している。
【0026】
チューブ2aの終端部2cは、最終的にシャント部に接続される部位であるので、清潔性を維持する必要がある。そこで、例えば治療の準備作業中において作業者等が終端部2cに容易に接触しないように、各終端部2cにはシャントキャップ30が装着されている。具体的には、
図2に示されるように、動脈ライン21及び静脈ライン22のチューブ2aの終端部2cに設けられた雄コネクタ2eがシャントキャップ30の本体部31内に挿入され、雄コネクタ2eを囲むスピンロック2dがシャントキャップ30の基端側雄ネジ部31fと螺合することで、シャントキャップ30がそれぞれ取り付けられている。
【0027】
続いて、
図3〜
図8を参照し、シャントキャップ30の構成について更に詳細に説明する。
【0028】
シャントキャップ30は、例えば、ポリプロピレン等の樹脂材料からなり、例えば射出成型によって成形されている。シャントキャップ30は、チューブ2aに連通する中空部を有する円管状の本体部31と、本体部31の先端31aに取り付けられる栓体部33と、本体部31と栓体部33とを連結する連結部35と、を備えている。本体部31と、栓体部33と、連結部35とが、上記のとおり射出成型等により一体に成形されている。連結部35がある程度の剛性を有することで
図3〜
図6等に示すシャントキャップ30の形状が自立して維持されるが、連結部35は人の手で容易に曲げることができる。
【0029】
ここで、
図3〜
図6は、本体部31から栓体部33が取り外されている状態のシャントキャップ30を示している。射出成型等による成形直後のシャントキャップ30も、
図3〜
図6の状態となる。これに対し、
図7及び
図8は、本体部31に栓体部33が取り付けられた状態を示している。以下、両者を区別する場合には、
図3〜
図6の状態を第1状態、
図7及び
図8の状態を第2状態と称する。
【0030】
また、以下において、「前方」、「後方」等の、前後の概念を持つ文言を説明に用いる場合には、本体部31の管軸A1の延在方向を前後方向とし、本体部31の先端31a側を「前」、基端31b側を「後」とする。また、上下の概念を持つ文言を説明に用いる場合には、
図3に示す状態のシャントキャップ30の上下に対応させるものとする。
【0031】
本体部31の基端31bには雄ネジ部31fが形成されており、当該雄ネジ部31fがスピンロック2d(
図2)に螺合することで、本体部31の基端31bがチューブ2aの終端部2cに接続される。また、本体部31の先端31aにも雄ネジ部31fが形成されており、本体部31の先端31aをスピンロック2dに螺合することも可能である。この構成によれば、例えば、動脈ライン21側又は静脈ライン22側の何れか一方のシャントキャップ30をチューブ2aの終端部2cから取り去り、その終端部2cに設けられたスピンロック2dに他方のシャントキャップ30の先端31aを螺合することで、動脈ライン21と静脈ライン22とを短絡させることができる。このような短絡は、血液回路2のプライミング処理において必要になる場合がある。
【0032】
また、上記の短絡の際に、本体部31の先端31aがチューブ2aの終端部2cに接触することになるので、本体部31の先端31aの清潔性を維持する必要がある。そこで、例えば治療の準備作業中において作業者等が本体部31の先端31aに容易に接触しないように、第2状態として、先端31aには栓体部33が装着される(
図7参照)。
【0033】
具体的には、栓体部33は、第2状態においては、
図7等に示されるように本体部31の先端31aに嵌め込まれる。栓体部33は先端31aを包囲する円筒形状の筒状部33hを有しており、筒状部33hは先端31aが挿入される挿入口33kを有している。連結部35は、本体部31の外側面31sと筒状部33hの外側面33sとを連結している。
【0034】
筒状部33hの内側面には、径方向内側に突出すると共に前後方向に延びる凸条部33jが上下2箇所に形成されている。この凸条部33jに対応する位置において、本体部31の外側面に形成された雄ネジ部31fには、上下2箇所に円周方向に切欠き31jが形成されている。この構成によって、第2状態においては、凸条部33jが切欠き31jに嵌り込み、栓体部33と本体部31との管軸A1周りの相対的な回転が規制される。このように、凸条部33jと雄ネジ部31fとが、互いに係合する凹凸嵌合部を構成する。
【0035】
図3〜
図6に示されるように、シャントキャップ30の成形直後など、第1状態においては、本体部31の管軸A1と筒状部33hの筒軸A3とが平行になる。また、第1状態においては、管軸A1と筒軸A3とを含む平面に沿って、連結部35が存在している。また、第1状態においては、栓体部33の挿入口33kは前方に開口している。
【0036】
次に、
図6を参照しながら第1状態における連結部35の形状について説明する。
【0037】
図6は、管軸A1と筒軸A3とを含む平面に直交する方向から見た連結部35を示す正面図である。第1状態における連結部35は、
図6中の一点鎖線で分けられる7つの部分を有し、上下対称の形状をなしている。連結部35は、本体部31の外側面31sから斜め前方に傾斜して直線状に延出した本体部側部分41と、栓体部33の筒状部33hの外側面33sから斜め前方に傾斜して直線状に延出した栓体部側部分43と、を有している。
【0038】
本体部側部分41の延出方向A41は、本体部31の管軸方向(図中のA1’)に対して40〜60°傾斜している。すなわち、本体部側部分41の延出方向A41と管軸方向A1’とがなす角度αが、40〜60°である。栓体部側部分43の延出方向A43は、本体部31の管軸方向A1’に対して40〜60°傾斜している。すなわち、栓体部側部分43の延出方向A43と管軸方向A1’とがなす角度βが、40〜60°である。
【0039】
更に、連結部35は、本体部側部分41と栓体部側部分43との間に位置し、後方側を凸にして湾曲する中間湾曲部分45を備えている。中間湾曲部分45は、外側面31sと外側面33sとの中間の位置に配置されている。
【0040】
更に、連結部35は、本体部側部分41と中間湾曲部分45との間に位置し、後方側を凸にして湾曲する第1湾曲部分51を有している。また、栓体部側部分43と中間湾曲部分45との間に位置し、後方側を凸にして湾曲する第2湾曲部分52を有している。第1湾曲部分51及び第2湾曲部分52の湾曲の曲率半径は、中間湾曲部分45の曲率半径よりも小さい。
【0041】
更に連結部35は、本体部側部分41と第1湾曲部分51との間に位置し、前方側を凸にして湾曲する第3湾曲部分53を有している。また、連結部35は、栓体部側部分43と第2湾曲部分52との間に位置し、前方側を凸にして湾曲する第4湾曲部分54を有する。以上のように連結部35は、5つの湾曲部分45,51,52,53,54を含んで構成されている。
【0042】
次に、
図7を参照しながら、第2状態における連結部35の形状について説明する。
【0043】
第1状態から第2状態に移行するためには、管軸A1と筒軸A3とを含む平面内で栓体部33を180°回転させ、栓体部33を本体部31の先端31aに嵌め込む。このとき連結部35は上記平面内で曲げ変形し、連結部35の各部には残留応力が存在する状態となる。第2状態においても、管軸A1と筒軸A3とを含む平面に沿って、連結部35が存在している。
【0044】
第2状態における変形後の連結部35は、本体部31の外側面31sから前方側に傾斜して延出した本体部側部分41と、栓体部33の筒状部33hの外側面33sから後方側に傾斜して延出した栓体部側部分43とを有している。また、連結部35は、本体部側部分41と栓体部側部分43とを接続する中間接続部60を有している。中間接続部60は、本体部側部分41に接続され後方側を凸にして湾曲する基端側部分61と、栓体部側部分43から延び前記先端側を凸にして湾曲する先端側部分62と、を含んでいる。以上のように、第2状態における連結部35は、
図7中の一点鎖線で分けられる上記の4つの部分を有し、前後対称の形状をなしている。
【0045】
続いて、シャントキャップ30を固定するためのクリップ構造について説明する。
【0046】
図3、
図7及び
図8に示すように、シャントキャップ30は、本体部31の外側面31sの上面側に設けられ、当該外側面31sと対向する挟持部材71を備えている。また、本体部31の外側面31s上には、挟持部材71に対向して筒軸方向に延びる固定挟持部72が上面側に形成されている。挟持部材71と固定挟持部72との間に所定の挟持対象物を挟み込むことができるようになっている。換言すれば、挟持部材71及び固定挟持部72は、固定された所定の対象物を挟持することでシャントキャップ30を上記対象物に固定するためのクリップ構造を構成する。
【0047】
挟持部材71は、本体部31側に向けて押下げられる開閉操作部71aを有しており、ユーザは、この開閉操作部71aを本体部31に向けて押下げることで、挟持部材71を弾性変形させ挟持部材71の前端と固定挟持部72との間を開閉することができる。そして、挟持部材71の前部と固定挟持部72との間に挟持対象物を挟み込むことができる。このような開閉操作部71aの押下げ動作を容易にするため、開閉操作部71aは、その押下げ方向に直交する押下面71bを有している。また、この押下面71bの下方において、本体部31の外側面31sの下面側に、支持面73が設けられている。ユーザは、押下面71bと支持面73とを指で挟む動作により、挟持部材71の開閉操作を行うことができる。
【0048】
そして、上記のような押下面71b及び支持面73は、基端31bよりも前方側に位置している。この構成により、シャントキャップ30がチューブ2aに装着された際に、押下面71b及び支持面73は、チューブ2aの終端部2c(
図2)よりも前方に位置することになる。従って、この状態から挟持部材71の開閉操作を行う際に、ユーザの指が基端31bやチューブ2aの終端部2cに容易に接触しにくく、終端部2cの清潔性を維持することができる。また、ユーザの指は押下面71bと支持面73に触れるのみで、シャントキャップ30の基端31bに螺合されるスピンロック2dに触れることがない。よって、誤ってスピンロック2dを弛めてしまい、シャントキャップ30がチューブ2aから外れてしまうことを抑制できる。
【0049】
図8に示されるように、シャントキャップ30は、挟持部材71によってバケツ75の縁部75aに引掛けられ固定される。このようなシャントキャップ30の固定は、例えば、血液回路2(
図2)のプライミング処理時に必要になる場合がある。すなわち、プライミング処理時には、
図8のようにバケツ75にシャントキャップ30を固定し、シャントキャップ30から排出される生理食塩水等をバケツ75に直接廃棄する。なお、栓体部33の前端面には貫通孔33p(
図2参照)が設けられており、この貫通孔33pを通じて血液回路2中の生理食塩水等が排出される。
【0050】
このようにシャントキャップ30をバケツ75に固定する際には、挟持部材71と固定挟持部72との間に、前方からバケツ75の縁部75aが挿入される。挟持部材71の前端には、縁部75aの挿入方向に対し斜め下前方に向けて傾斜する傾斜面(挿入ガイド面)71eが形成されている。従って、バケツ75にシャントキャップ30を固定する際には、バケツ75の縁部75aが、傾斜面71eに案内されながら円滑に挟持部材71と固定挟持部72との間に挿入される。なお、同様の目的で、固定挟持部72の前端にも傾斜面72eが形成されている。よって、プライミング処理時にシャントキャップ30をバケツ75に固定する作業を容易にすることができる。
【0051】
続いて、上記シャントキャップ30による作用効果について説明する。
【0052】
上述したシャントキャップ30の連結部35は、第1状態において、本体部31から斜め前方に延出した本体部側部分41と、栓体部33のから斜め前方に傾斜して延出した栓体部側部分43と、本体部側部分41と栓体部側部分43との間に位置し、後方側を凸にして湾曲する中間湾曲部分45と、を有している。このような形状によれば、第2状態に移行する場合に、曲げ変形する連結部35に発生する曲げ応力が分散され易い。よって、連結部35の一部位に曲げ応力が集中することが避けられ、連結部35の白化を抑制することができる。また、角度α(
図6)が40〜60°であり、角度β(
図6)が40〜60°であれば、上記の作用効果が効果的に奏される。
【0053】
また、連結部35が、前述のような中間湾曲部分45よりも小さい曲率半径の第1湾曲部分51及び第2湾曲部分52と、を有する構成も、連結部35に発生する応力の分散に寄与する。また、連結部35が、前述のような本体部側部分41と第1湾曲部分51との間の第3湾曲部分53を有する構成も、連結部35に発生する曲げ応力の分散に寄与する。また、連結部35が、前述のような栓体部側部分43と第2湾曲部分52との間の第4湾曲部分54を有する構成も、連結部35に発生する曲げ応力の分散に寄与する。
【0054】
また、第1状態から第2状態に移行するときに、管軸A1と筒軸A3とを含む平面内で栓体部33を180°回転させ、栓体部33を本体部31の先端31aに嵌め込む。このとき、凸条部33jと雄ネジ部31fとが凹凸嵌合し、栓体部33の管軸A1周りの回転が規制されるので、連結部35が捩れることが避けられる。その結果、連結部35に捩り応力が発生することが避けられ、白化の抑制効果が向上される。
【0055】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形したものであってもよい。
【符号の説明】
【0056】
2a…チューブ、2c…終端部、30…シャントキャップ、31…本体部、31a…先端、31b…基端、31f…雄ネジ部(凹凸嵌合部)、31s…外側面、33…栓体部、33h…筒状部、33k…挿入口、33s…外側面、33j…凸条部(凹凸嵌合部)、35…連結部、41…本体部側部分、43…栓体部側部分、45…中間湾曲部分、51…第1湾曲部分、52…第2湾曲部分、53…第3湾曲部分、54…第4湾曲部分、60…中間接続部、61…基端側部分、62…先端側部分、71…挟持部材、71a…開閉操作部、71b…押下面、71e…傾斜面(挿入ガイド面)、75…バケツ(挟持対象物)、75a…バケツの縁部、A1…管軸、A3…筒軸。