特開2015-73930(P2015-73930A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-73930(P2015-73930A)
(43)【公開日】2015年4月20日
(54)【発明の名称】洗浄ターゲット
(51)【国際特許分類】
   B08B 3/02 20060101AFI20150324BHJP
【FI】
   B08B3/02 Z
   B08B3/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-210984(P2013-210984)
(22)【出願日】2013年10月8日
(71)【出願人】
【識別番号】000132161
【氏名又は名称】株式会社スギノマシン
(74)【代理人】
【識別番号】100101432
【弁理士】
【氏名又は名称】花村 太
(72)【発明者】
【氏名】岩田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】川森 巧曜
【テーマコード(参考)】
3B201
【Fターム(参考)】
3B201AA46
3B201AB01
3B201BB22
3B201BB90
3B201BB92
3B201CB01
3B201CC21
(57)【要約】
【課題】高圧洗浄機の洗浄液を汚すことなく、噴流が被洗浄物の重点洗浄箇所に精度良く入射することを確認できる手段の提供。
【解決手段】洗浄液が被洗浄物の重点洗浄箇所に到達することを検証するために被洗浄物に対応する対象物に装着される洗浄ターゲットとして、1つ以上の部材からなり、前記対象物の前記重点洗浄箇所と対応する箇所に装着され、予め定められた方向からの洗浄液噴流の衝突によって前記対象物から一部又は全体が外れるものを提供する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄液が被洗浄物の重点洗浄箇所に到達することを検証するために被洗浄物に対応する対象物に装着される洗浄ターゲットであって、
1つ以上の部材から成り、前記対象物の前記重点洗浄箇所と対応する箇所に装着され、予め定められた方向からの洗浄液噴流の衝突によって前記対象物から一部又は全体が外れることを特徴とする洗浄ターゲット。
【請求項2】
前記対象物の前記重点洗浄箇所と対応する箇所に装着可能な装着手段を有する本体と、本体の先端部に取り付けられる蓋体との二部材を有し、
前記本体と蓋体とを互いに係止する係止手段と、
前記蓋体に予め定められた方向からの洗浄液の噴流が到達した際に前記係止手段による係止を解除すると共に蓋体を本体から離脱させる係止解除手段と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の洗浄ターゲット。
【請求項3】
前記係止手段は、前記本体の先端周縁部に前記蓋体の後端周縁部が掛止されるものであり、
前記係止解除手段は、前記本体の先端部と前記蓋体の後端部との互いに対向する領域で囲まれた空間から形成される噴流導入室と、
前記蓋体の先端部から前記噴流導入室まで予め定められた方向に貫通する貫通流路とを備え、
前記貫通流路を介して噴流導入室内に流入する前記洗浄液の圧力によって前記掛止を解除して前記蓋体を本体から離脱させるものであることを特徴とする請求項2に記載洗浄ターゲット。
【請求項4】
前記本体の装着手段として、被洗浄物のネジ穴と螺合する雄ネジ部が前記本体の後端部に形成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の洗浄ターゲット。
【請求項5】
前記本体の装着手段として、被洗浄物の交差穴に嵌合する嵌合形状部が前記本体の後端部に形成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の洗浄ターゲット。
【請求項6】
前記対象物の前記重点洗浄箇所と対応する箇所に解除可能に係止される装着手段と、前記予め定められた方向からの前記洗浄液の噴流が到達した際に前記装着手段による係止を解除して全体を前記対象物から離脱させる係止解除手段とを備えた一部材から構成されることを特徴とする請求項1に記載の洗浄ターゲット。
【請求項7】
前記装着手段は、前記一部材の後周縁部が前記重点洗浄箇所の対応する箇所の凹み部内に掛止されるものであり、
前記係止解除手段は、前記掛止された状態にて前記凹み部の底内面領域と対向して該底内面領域と共に囲んで噴流導入室となる空間を形成する前記一部材後端部に設けられた凹形状部と、前記一部材の先端部から前記凹形状部まで予め定められた方向に貫通する貫通流路とを備え、前記貫通流路を介して噴流導入室内に流入する前記洗浄液の圧力によって前記掛止を解除して前記一部材を前記対象物から離脱させるものであることを特徴とする請求項6に記載洗浄ターゲット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧洗浄機を使用する際に、被洗浄物の重点洗浄部位に高圧洗浄機からの噴流が入射したことを確認するための洗浄ターゲットに関する。
【背景技術】
【0002】
機械部品等の被洗浄物を、ノズルから出た噴流により洗浄する高圧洗浄機が広く使用されている(例えば、特許文献1,2参照)。高圧洗浄機では、洗浄液タンクに溜められた洗浄液を高圧ポンプで揚圧し、洗浄室内に設けられたノズルから噴出する。ノズルは、被洗浄物の凹み、雌ねじ、交差穴、機械加工面、その他の重点洗浄箇所に対向するように配される。これらの重点洗浄箇所は、被洗浄物において、機械への組み立ての際に切りくずの存在が組立作業に支障をきたす部位、洗浄後の表面処理の際に切りくずの存在がその表面処理作業の支障となる部位、また、組立後の機械運転時にその位置から移動した切りくずが機械損傷の起因となる部位である。ノズルから噴出した洗浄液は洗浄液タンクに戻り、ろ過される。洗浄液は循環利用されるため、その汚れの程度に応じて適宜交換される。
【0003】
ノズルは、複数の噴射ノズルあるいはノズルブロックが洗浄室内に予め複数個配設されるか、数値制御機器や産業用ロボット等の移動手段に配設される。後者の場合には、ノズルが、移動手段によって各重点洗浄箇所に対向する位置に移動しながら洗浄液を噴射する。このため、被洗浄物に対して、前者では各ノズルをどのような噴射角度に設定するか、また後者ではノズル移動による洗浄液の噴射経路をどのように選択するかが重要な観点となる。
【0004】
例えば、ノズルから噴出された噴流が、重点洗浄箇所に入射することにより、重点洗浄箇所内に溜まる切りくず、離型剤、油、その他の汚れ、又はバリがその動圧を受けて被洗浄物から除去される。他方、噴流が重点洗浄箇所に入射しない場合、その重点洗浄箇所に溜まる切りくず等は残留する。このため、高圧洗浄機においては、噴流が重点洗浄箇所に正確に入射したかどうかが非常に重要な観点となる。
【0005】
そこで、噴流が被洗浄物の重点洗浄箇所に入射することを確認するため、従来は被洗浄物に塗装を行い、噴流により塗装を剥がすか、被洗浄物に油粘土を詰め、これらを除去する方法がとられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−76215号公報
【特許文献2】特開2002−86080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ネジ穴、油穴等の、重点洗浄箇所が狭い領域に、塗装や油粘土を施した場合には、噴流がその重点洗浄箇所に精度良く命中しなくても塗装や油粘度が剥がれてしまうことがあった。このため、従来方法では噴流が重点洗浄箇所の定められた方向から正確に入射したか否かを判断することができなかった。
【0008】
また、塗装には、油剤に微粉を混入させたもの、アクリル塗料又は着色ニス等が用いられており、これらの塗料又は粘土が剥がれると洗浄液に混入し、ろ過できないため、洗浄液が汚れるという課題があった。洗浄液が汚れると高圧洗浄機の洗浄能力が低下する。このため、重点洗浄箇所に噴流が入射したか否かを確認した後に、洗浄液を再度交換する必要があった。尚、洗浄液は主に水溶性洗浄液を用いる。水溶性洗浄液は苛性アルカリ、界面活性剤、防腐剤などを含むため、その交換は環境負荷の高い廃液を生じていた。
【0009】
本発明は、高圧洗浄機の洗浄液を汚すことなく、噴流が被洗浄物の重点洗浄箇所に精度良く入射することを確認できる手段の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明に係る洗浄ターゲットは、洗浄液が被洗浄物の重点洗浄箇所に到達することを検証するために被洗浄物に対応する対象物に装着される洗浄ターゲットであって、
1つ以上の部材からなり、前記対象物の前記重点洗浄箇所と対応する箇所に装着され、予め定められた方向からの洗浄液噴流の衝突によって前記対象物から一部又は全体が外れることを特徴とするものである。
【0011】
ここで、「被洗浄物に対応する対象物」とは、被洗浄物と同一形状であって、洗浄ターゲットを装着できるように洗浄又は仕上げが行われた対象物、又は被洗浄物と非同一形状であるが、被洗浄物と同一の重点洗浄箇所の少なくとも一部が形成された対象物をいう。
【0012】
請求項2に記載の発明に係る洗浄ターゲットは、請求項1に記載の洗浄ターゲットにおいて、前記対象物の前記重点洗浄箇所と対応する箇所に装着可能な装着手段を有する本体と、本体の先端部に取り付けられる蓋体との二部材を有し、
前記本体と蓋体とを互いに係止する係止手段と、
前記蓋体に予め定められた方向からの洗浄液の噴流が到達した際に前記係止手段による係止を解除すると共に蓋体を本体から離脱させる係止解除手段と、を備えたものである。
【0013】
請求項3に記載の発明に係る洗浄ターゲットは、請求項2に記載の洗浄ターゲットにおいて、前記係止手段は、前記本体の先端周縁部に前記蓋体の後端周縁部が掛止されるものであり、
前記係止解除手段は、前記本体の先端部と前記蓋体の後端部との互いに対向する領域で囲まれた空間から形成される噴流導入室と、
前記蓋体の先端部から前記噴流導入室まで予め定められた方向に貫通する貫通流路とを備え、
前記貫通流路を介して噴流導入室内に流入する前記洗浄液の動圧によって前記掛止を解除して前記蓋体を本体から離脱させるものである。
【0014】
請求項4に記載の発明に係る洗浄ターゲットは、請求項2又は3に記載の洗浄ターゲットにおいて、前記本体の装着手段として、被洗浄物のネジ穴と螺合する雄ネジ部が前記本体の後端部に形成されていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項5に記載の発明に係る洗浄ターゲットは、請求項2又は3に記載の洗浄ターゲットにおいて、前記本体の装着手段として、被洗浄物の交差穴に嵌合する嵌合形状部が前記本体の後端部に形成されていることを特徴とするものである。
【0016】
請求項6に記載の発明に係る洗浄ターゲットは、請求項1に記載の洗浄ターゲットにおいて、前記対象物の前記重点洗浄箇所と対応する箇所に解除可能に係止される装着手段と、前記予め定められた方向からの前記洗浄液の噴流が到達した際に前記装着手段による係止を解除して全体を前記対象物から離脱させる係止解除手段とを備えた一部材から構成されるものである。
【0017】
請求項7に記載の発明に係る洗浄ターゲットは、請求項6に記載の洗浄ターゲットにおいて、前記装着手段は、前記一部材の後周縁部が前記重点洗浄箇所の対応する箇所の凹み部内に掛止されるものであり、
前記係止解除手段は、前記掛止された状態にて前記凹み部の底内面領域と対向して該底内面領域と共に囲んで噴流導入室となる空間を形成する前記一部材後端部に設けられた凹部と、前記一部材の先端部から前記凹部まで予め定められた方向に貫通する貫通流路とを備え、前記貫通流路を介して噴流導入室内に流入する前記洗浄液の圧力によって前記掛止を解除して前記一部材を前記対象物から離脱させるものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、洗浄液に溶出することのない洗浄ターゲット構成部材の全体または蓋体等の一部が外れたことを確認することにより、洗浄液の噴流が重点洗浄箇所へ予め定められた方向から精度良く入射することを確認でき、洗浄液を汚すこともなくなるという効果がある。
【0019】
また、特に洗浄ターゲットの構成部材は再利用することが可能である。従って、本発明によれば、環境負荷の低い確実な噴流の入射を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施例1による洗浄ターゲットの使用状態における部材構成を示す模式図であり、(a)は重点洗浄箇所T1への装着前状態の側断面図、(b)は本体2が重点洗浄箇所T1のねじ穴内に装着された状態における側断面図、(c)は本体2に対する蓋体3の掛止が完了した係止状態における側断面図であり、(d)は係止状態の洗浄ターゲット1の概略平面図である。
図2図1の洗浄ターゲットに所定方向から噴流が衝突した際の状態を示す側断面図であり、(a)は噴流衝突直後の状態、(b)は蓋体離脱時の状態をそれぞれ示す。
図3】本発明の実施例2による洗浄ターゲットの使用状態における部材構成を示す側断面図であり、(a)は本体4が重点洗浄箇所T2のピン穴内に装着された状態、(b)は本体4に対する蓋体3の掛止が完了した係止状態、をそれぞれ示す。
図4図3の洗浄ターゲットの本体の変形例を示す概略斜視図である。
図5】実施例2の他の変形例による洗浄ターゲットの本体5の概略斜視図である。
図6】本発明の実施例3による洗浄ターゲットの使用状態における部材構成を示す側断面図である。
図7】本発明の実施例4による洗浄ターゲットの使用状態における部材構成を示す模式図であり(a)は蓋体の平面図、(b)は洗浄ターゲット14が重点洗浄箇所T5の穴部に装着される前の状態を示す側断面図、(c)は洗浄ターゲット14が重点洗浄箇所T5の穴部への装着完了状態を示す側断面図、(d)は洗浄ターゲット14に所定方向から噴流が衝突した際の状態を示す側断面図である。
図8】本発明の別の係止手段として糊剤Nを用いた場合の二部材構成の洗浄ターゲットの概略側断面図である。
図9】本発明の別の装着手段として糊剤Nを用いた場合の一部材構成の洗浄ターゲットの概略側断面図である。
図10】本発明の異なる蓋体構成として4本の貫通流路を設けた場合を例示する概略説明図であり、(a)は蓋体の斜視図、(b)は(a)のA−A矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る洗浄ターゲットは、1つ以上の部材から成り、対象物の前記重点洗浄箇所と対応する箇所に装着され、予め定められた方向からの洗浄液噴流の衝突によって対象物から一部又は全体が外れるものである。
【0022】
従って、ノズルの噴射角度あるいは、数値制御における噴射経路の設定の際に、被洗浄物と同一の重点洗浄箇所を相当位置に備えた対応する対象物に対してその重点洗浄箇所に本発明の洗浄ターゲットを装着しておけば、被洗浄物の設計に応じてある程度の設定された噴射角度あるいは噴射経路で洗浄液の噴射洗浄工程を行い、各重点洗浄箇所の洗浄ターゲットの一部または全体が外れているか否かを確認するだけで、洗浄液の噴流が重点洗浄箇所にそれぞれ洗浄に良好な入射状態で到達するか否かを判断することができる。確認後、洗浄ターゲットの所定部材が外れていない重点洗浄箇所に対してのみ、対応するノズルの噴射角度あるいは噴射経路を調整し、必要に応じて再度、該重点洗浄箇所に洗浄ターゲットを装着して洗浄液噴流の入射状況を確認し、最終的な設定を決定することができる。
【0023】
このとき、本発明の洗浄ターゲットは、洗浄液に溶け出すことなく回収可能であるため、交換が必要となるような洗浄液汚染の問題もなく、作業工程の簡略化と共にコストの面からも作業効率が向上する。また、このような回収可能な部材から成る洗浄ターゲットは、再利用できる構造とすることも可能であり、更なる高効率化を図ることができる。以上のように決定されたノズル噴射角度あるいは噴射経路によれば、実際の被洗浄物に対する洗浄工程において、その各重点洗浄箇所は確実に洗浄される。
【0024】
本発明における洗浄ターゲットが装着される対象物は、実際の被洗浄物を想定したものであるため、被洗浄物が加工の完了した部品であれば、対象物もその加工完了部品と同一形状のものとすればよい。なお、被洗浄物は、加工途中のものであることもあり、この場合、対象物が同一形状とならなくても、少なくとも一部の重点洗浄箇所の位置と形状が互いに同一であれば良い。
【0025】
洗浄ターゲットの構成としては、できるだけ製造が容易で量産可能であることが望まれる。一部材構成あるいは二部材構成の洗浄ターゲットが構造が簡便であり好適である。
【0026】
洗浄ターゲットを二部材構成とした場合、洗浄噴流の前記予め定められた方向からの衝突で外れるのは洗浄ターゲットの一部となる。即ち、二つの構成部材のうち一方が本体として対象物に装着されると共に、他方の部材が蓋体として本体の先端に離脱可能に係止され、該蓋体に噴流が前記予め定められた方向から衝突することにより本体から外れるものである。
【0027】
被洗浄物の重点洗浄箇所は、主に凹み、雌ねじ、ピン穴等の凹部であるが、それぞれ寸法や形状が異なる様々な形態のものがあるため、これらの重点洗浄箇所に相当する対象物重点洗浄箇所への洗浄ターゲットの装着部分は、各形態に対応させる必要がある。そこで、二部材構成の洗浄ターゲットの場合、本体側を各重点洗浄箇所の形態に応じたものを用意する。本体の先端部と蓋体との互いの係止部分を共通の構造とすれば、同一の蓋体を異なる重点洗浄箇所で使用できる。このような二部材構成にすれば、洗浄ターゲットは、取付作業の利便性が向上するだけでなく、量産して安価に提供でき、また回収後の再利用もし易い。
【0028】
蓋体が本体との係止状態を解除されて離脱するための原動力としては、蓋体に予め定められた方向で衝突する洗浄液噴流の動圧が利用される。即ち、本体に係止された蓋体と該本体との間の空間に前記噴流が導入され、直ちに該空間が満たされて蓋体が本体に対して離反方向に押し出される圧力が発生する構成とすれば良い。この場合、蓋体と本体との係止手段は、これら両者の間に発生する圧力で解除される程度に互いを掛止する力を発揮するものである。
【0029】
これを実現する構成として、係止手段は本体の先端周縁部に蓋体の後端周縁部が掛止されるものとし、係止解除手段は、本体の先端部と蓋体の後端部との互いに対向するよう域で囲まれた空間から形成される噴流導入室を備え、蓋体の先端部から噴流導入室まで予め定められた方向に貫通する貫通流路を備えたものとすれば良い。この場合、蓋体に衝突した噴流の一部が貫通流路を通って噴流導入室へ導入される。
【0030】
貫通流路の貫通方向は、対応する重点洗浄箇所に対して確実な洗浄が成される入射角度に相当する前記予め定められた方向に沿ったものである。重点洗浄箇所の形状がねじ穴やピン穴である場合、その穴の中心軸方向が最も洗浄に有効な噴流入射方向となるため、貫通流路は、本体との掛止状態において該穴の中心軸に対して同軸上となるように形成するのが最適である。即ち、洗浄液噴流が前記貫通流路を通って噴流導入室へ導入され、蓋体を本体から外すことができた場合、その入射角度は、洗浄液噴流が対応する重点洗浄箇所に良好に到達できることを示す。
【0031】
なお、貫通流路は一本に限定されるものではなく、二本以上の場合もある。このような貫通流路が複数本である場合、互いに等角度間隔で配置され、全流路の中心軸が前記方向に沿っていれば良い。また、貫通流路は断面形状が一定で全幅に亘って同一内径とする形態に限るものではない。様々な断面形状も採用可能であるだけでなく、内径が連続的にテーパ状に変化する円錐形状にすることが効果的な場合もある。貫通流路が円錐形状であれば、貫通流路の軸中心から傾斜した方向からの噴流の入射に対してもその入射を確認することができる。これは、対象となる重点洗浄箇所の穴形状が、穴入口への噴流入射が穴中心軸に対して所定角度まで傾斜した状態でも充分な洗浄効果が得られるようなものである場合に有効である。
【0032】
係止手段は、部材の弾性変形を利用したものを採用できる。例えば、本体の先端部に突起部を設け、蓋体の後端部側を凹形状とし、該凹形状の端部側内周領域が前記突起部の外周に嵌合するものとする。蓋体の後端部側若しくは本体の突起部のいずれかが弾性変形するものであれば、蓋体の凹部内に本体突起部を圧入させれば前記内周領域での締め付け力で蓋体は本体の突起部に掛止することができる。なお、蓋体の凹部形状は、本体突起部の先端との間に前記噴流導入室となる空間を形成するために所定の奥行きを有するものとすればよい。
【0033】
蓋体が金属製など、弾性変形し難い材質であれば、蓋体凹形状の前記嵌合領域である内周形状と本体突起部の外周形状を中間ばめ、又はしまりばめの関係で掛止できる設計とすればよい。いずれの場合も、蓋体凹形状部と本体突起部との嵌合領域は、前記導入室内で発生する圧力によって容易に掛止解除できる程度の小さい幅に設定する。但し対象物をロボットで移動させたり、姿勢を変えたりする際の振動程度では蓋体が本体から外れない状態を維持できるものとする。
【0034】
また、係止手段としては、上記に例示したものに限らず、噴流の洗浄液との接触で濡れて流れる微量の糊剤によるものや、断面が半月型の突出片を蓋体に設け、これを受容する凹部を本体に設けたもの、蓋体に設けた弾性変形する鉤部がその弾性力によって本体に係止するもの、鉤部が本体にその、バネ機構を利用したもの、またこれらを組み合わせたものなど、実際の噴流圧力に応じて適宜選択することができる。
【0035】
このような蓋体の材質としては、広く採用可能であり、例えば、汎用プラスチックであるポリエチレン(PE)若しくはポリプロピレン(PP)、エンジニアリングプラスチックであるポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリエチレンテレフタレート(PET)若しくはポリカーボネート、若しくはスーパーエンジニアリングプラスチックであるポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリイミド(PI)、若しくはポリエーテルイミド(PEI)等のプラスチック、又は軽金属であるマグネシウム若しくはアルミニウム、若しくは重金属である、銅合金、ステンレス鋼、軟鋼、若しくは硬鋼を使用することができる。
【0036】
蓋体の材質の選択は、洗浄圧力、および洗浄液の性質に応じて行われる。洗浄液主成分が苛性アルカリの軽金属用水溶性洗浄液であれば、苛性アルカリに耐性を有する材質である、PA、POM、PEEK、アルミニウム合金等を選択できる。その中でも洗浄圧力が15〜50MPaであれば、比較的強固な材料であるPEEK、アルミニウム合金等を選択できる。洗浄室内が強固な構造をしている場合には、蓋体の消耗を防ぐため、アルミニウム合金やステンレス鋼などの金属を選択できる。逆に洗浄室内に構造的に弱い部材がある場合や、洗浄圧力が1〜3MPaであるために、蓋体の消耗が弱い場合にはPA、POM等の汎用プラスチックを選択できる。
【0037】
本体は、基部側に重点洗浄箇所に応じた装着手段が設けられるが、噴流衝突時に外れない比較的堅固なものである必要がある。そして、本体は再利用の観点から、対象物から取り外し可能であることが望ましい。重点洗浄箇所は、主に、凹み、雌ねじ、交差穴等からなる凹形状の加工部であることから、その凹形状に応じた装着手段が設けられる。例えば、重点洗浄箇所が雌ねじであれば、装着手段として該雌ねじに螺合する雄ねじ加工を本体の基部外周に形成すればよい。また、交差穴や凹みであれば、本体基部をその凹形状に嵌合する形状に加工しておけばよい。ある程度深さのある穴や凹みであれば、形状嵌合のみでも噴流衝突で外れる恐れは殆どない。
【0038】
本体が装着される重点洗浄箇所は、主に被洗浄物である機械要素の規格で製作されたものである。このため、本体はその規格に対応した共通形状となり、量産が可能で安価に提供でき、回収後の再利用も容易である。また、各種規格に応じた本体を用意しておくことで、装着する重点洗浄箇所の形状に応じて適合する洗浄ターゲットを選択できるため、被洗浄物側には何らの加工も必要なく洗浄ターゲットを装着できる。
【0039】
本体の材質は、ステンレス鋼、アルミニウム合金鋼、硬鋼、軟鋼等を選択できる。材質は洗浄液の噴流に対して化学的、または物理的に耐性を有するものを選択し、適切な表面処理を行う。
【0040】
なお、本体と蓋体との係止状態の程度を変更、調整することによって、蓋体が外れるための噴流の衝突力を所望の強さに設定することができる。この係止状態の調整、変更は、本体の突起部と蓋体の凹形状部との間の掛止程度、例えば締まり具合や表面粗さによる摩擦係数、あるいは両者の嵌合領域の面積を変更することによって実施できる。
【0041】
ここで、噴流の衝突力の強さは、噴流の噴射形状、噴流を噴出するノズル径、ノズルの上流側の流体圧力(以下、「噴射圧力」と記す)、ノズルと洗浄ターゲットとの距離により所望の設定値に調整できる。
【0042】
また、一部材構成とした洗浄ターゲットでは、対象物重点洗浄箇所に装着された洗浄ターゲットに予め定められた方向、即ち重点洗浄箇所に対して良好な洗浄を行うことができる入射角度で洗浄液噴流が到達した際に、洗浄ターゲット全体が対象物から外れることになる。この場合、洗浄ターゲットを構成する一部材に、対象物の重点洗浄箇所と対応する箇所に解除可能に係止される装着手段と、予め定められた方向からの洗浄液の噴流が到達した際に装着手段により係止を解除する係止解除手段とが設けられる。
【0043】
一部材構成の洗浄ターゲットの装着手段は、洗浄ターゲット全体が重点洗浄箇所の凹み部内に直接挿入されて嵌合状態で掛止されるものである。例えば、一部材洗浄ターゲットの外径を重点洗浄箇所の凹み部内径より若干大きくしてその弾性により該凹み部内に圧入することができる。
【0044】
そして係止解除手段は、前記凹み部から離脱するためにの原動力として上記二部材構成の場合と同様に洗浄液噴流の動圧を利用する。即ち、掛止状態にて重点洗浄箇所の凹み部の底内面領域に対向して該底内面領域と共に囲んで噴流導入室となる空間を形成する凹部形状を後端部に有すると共に、先端部から該凹部形状まで予め定められた方向に貫通する貫通流路を備えたものである。
【0045】
但し、この一部材構成は、噴流衝突時に良好に洗浄ターゲットが重点洗浄箇所の凹み部から押し出されるように、この重点洗浄箇所の凹み部が比較的浅く、貫通流路を経て導入される噴流で直ちに満たされ良好な圧力を発生させ得るようなある程度小さい容積の噴流導入室が形成できる場合に有効である。
【0046】
なお、上記の一部材構成の洗浄ターゲットは、前述の二部材構成における蓋体と同様の形態と言える。前記蓋体は、本体との間に噴流導入室が形成されるが、一部材洗浄ターゲットは対象物との間に噴流導入室が形成される。従って、重点洗浄箇所の凹み部内への掛止装着が可能な寸法の後端周縁部を備えていれば、二部材構成における蓋体を、一部材構成の洗浄ターゲットとして使用することができる。
【実施例1】
【0047】
本発明の第1の実施例として、ねじ穴である重点洗浄箇所T1に適用するための洗浄ターゲット1を図1を参照して以下に示す。このねじ穴は、メートル並目ねじのうち、呼び径M6の雌ねじ加工が施されたものである。図1(a)〜(c)は、洗浄ターゲット1の各使用状態を示す側断面図であり、(d)は係止状態における洗浄ターゲット1の平面図である。
【0048】
図1(a)に示すように、本実施例による洗浄ターゲット1は、本体2と蓋体3とからなる二部材構成であり、本体2が被洗浄物に対応する対象物WのM6ねじ穴の雌ねじ部Tsに螺合装着され、蓋体3が本体2に掛止されるものである。
【0049】
本体2の対象物Wへの装着部である基部21は、円柱形状でその外周全面にM6雄ねじ24が形成されている。本体2の先端側には、直径φ3mmの略円柱形の突起部22が形成されている。この突起部22の先端にはドライバーが嵌合してねじ締めできるようにスリ割溝23が設けられている。本実施例においては、図1(b)に示すように、洗浄ターゲット1の本体2の全長が重点洗浄箇所T1のねじ穴深さより短く、本体2の先端側突起部内部に完全に入り込むことができる。
【0050】
一方、蓋体3は、PEEK製であり、外径がφ4mmの略円筒状とした。外形状は円柱状である。この蓋体3の後端側に、凹部30が形成されており、この凹部30は、円柱状外形と同軸の直径φ2.9mmの円筒状部31とその先端側に続く略半球状の天井部32とを備えている。さらに、蓋体3には、頂部から凹部30の天井部32に達する直径φ1mmの貫通流路33が穿設されている。
【0051】
図1(c)に示すように、蓋体3は、その凹部30内にこの内径より若干外形が大きい突起部22が圧入される。そして、凹部30が突起部22を締め付けることで蓋体3が本体2に掛止され、蓋体3の本体に対する係止状態が得られる。また、凹部30の円筒状部31は、軸方向長さが突起部22の突出高さと同程度であり、前記係止状態において、突起部22の先端面と蓋体3の略半球状の天井部32とで囲まれた空間が形成され、該空間が後述する噴流導入室X1となる。
【0052】
蓋体3は、ねじ穴の内径より小さい外径であるため、突起部22に圧入されて若干外形が膨らんだ状態であっても充分にねじ穴に挿入することができる。また、重点洗浄箇所T1内に挿入された本体2の深さ位置を適宜調整することによって、本体2と係止状態にある蓋体3をねじ穴内の開口部付近に位置付けることができる。
【0053】
従って、洗浄ターゲット1は、対象物Wの表面から突出せずに重点洗浄箇所Tへ装着できる。被洗浄物が大きくなる場合、被洗浄物に対応する対象物の突出部分とノズルとが干渉する恐れがあった。しかし、本実施例では、洗浄ターゲット1の装着によっても突出部を形成しないため、ノズルと対象物は干渉しない。
【0054】
次に、重点洗浄箇所T1のねじ穴に装着された洗浄ターゲット1に対して所望の方向から洗浄液の噴流が衝突した際の、蓋体3の本体2に対する係止解除機構を図2を参照して以下に示す。
【0055】
本実施例における洗浄ターゲット1(図1参照)では、蓋体3に形成された貫通流路33の貫通方向が、本体2との係止状態において重点洗浄箇所T1であるねじ穴の中心軸方向と一致する設計となっている。即ち、貫通流路33の貫通方向は、噴流衝突方向がねじ穴内を確実に洗浄できる方向に一致する。
【0056】
図1(c)に示す洗浄ターゲット1の装着状態において、対象物Wに対する高圧洗浄を行う。図2(a)に示すように、蓋体3に洗浄液の噴流Jが衝突した際に、その方向が貫通流路33の貫通方向にほぼ一致すると、噴流Jの一部が貫通流路33内を進み、噴流導入室X1内に導入される。この噴流は直ちに噴流導入室X1内を満たし、動圧を与えることによって該噴流導入室X1を形成する内壁面を押圧する圧力Pが発生し、その圧力の合力Fが天井部32側に作用し、円筒状部31による突起部22への締め付け力を越えた力で蓋体3を本体2に対して離反方向へ押し出し、図2(b)に示すように、蓋体3が本体2から外れ、対象物Wから離脱する。
【0057】
従って、高圧洗浄後、この蓋体3の離脱が確認されれば、目的の重点洗浄箇所T1に対する良好な洗浄液噴流の衝突が成され、ノズル噴射経路の設定に問題がないことがわかる。また、蓋体3が本体2に係止状態のままであれば、設定を調整すればよい。
【0058】
なお、ノズルの噴射経路設定完了後、蓋体3は洗浄液から回収することができ、洗浄液を交換しなければならないような汚染は発生しない。一方、ねじ穴内に残った本体2も、突起部22先端のスリ割溝23にマイナスドライバーを差し込み、回すことにより、対象物Wから取り外して回収できる。
【0059】
本実施例による洗浄ターゲット1に対して蓋体3が外れ本体2が対象物Wに残留した際の噴流条件は、直径φ1.1mmのオリフィスを有するノズルから噴射圧力5〜50MPaで噴射した噴流Jであった。
【0060】
さらに、噴流の噴射中心軸方向が貫通流路33半径方向にオフセットしたときに、蓋体3が外れるかを確認した。噴射圧力10MPaにおいて、オフセット量が1mm以下の範囲であれば、蓋体3が外れた。しかし、オフセット量が1mm超の場合には蓋体が外れなかった。本発明によれば、重点洗浄箇所に正確に噴流が当たったか否かを確認することができる。
【0061】
なお、本実施例によるPEEK製の蓋体3を回収して再利用の可能性を確認した。オリフィス径1.1mmのノズルで噴射圧力10MPaの噴射条件にて、ノズルと蓋体3との距離50mmとした場合、同一の蓋体3で全3回の利用が可能であった。
【0062】
なお、蓋体3の天井部32の形状は半球状に限定されるものではなく、該天井部32と本体2の先端部とで囲まれて形成される空間が、噴流導入室として貫通流路から入射した噴流Jにより満たされ、噴流の動圧を受けることにより、蓋体3に本体2に対して離反方向へ作用する力に転換できるものであれば良く、円柱、円錐台、角柱、角錐台状等、様々な形状に代替可能である。
【0063】
また、スリ割溝23は、六角穴、十字穴、六角柱、四角柱、若しくは2方取り等の工具を用いて回転させることができる、任意の形状に変更可能である。但し、スリ割溝23は必ずしも必要ではない。
【0064】
なお、本実施例では、本体2の突起部22および蓋体3の凹部30の断面形状を円形としたが、これに限らず、該断面形状を四角、六角等の多角形としても良い。また、貫通流路33も円筒形状としたが、所謂テーパ状に縮径する円錐形状、あるいはスリット形状としても良い。例えば、対象となる重点洗浄箇所の穴形状が、穴入口への噴流入射が穴中心軸に対して所定角度まで傾斜した状態でも充分な洗浄効果が得られるようなものである場合、貫通流路を適切なテーパ角度の円錐形状にすれば、洗浄ターゲットに対する噴流の入射角度の許容範囲を前記所定角度に応じたものにできる。
【0065】
さらに、本体2の突起部22および蓋体の凹部30を方向性のある形状、例えば断面二等辺三角形、とすれば、本体2及び蓋体3の相互位置関係を1つに定めることができる。このときに、蓋体3の貫通流路33の貫通方向を本体2の中心軸方向から偏心させると、本体中心軸に対してある方向、ある距離に傾斜した位置に貫通流路33が定まる。このような洗浄ターゲットでは、重点洗浄箇所である穴内への本体の挿入角度を調整することにより、洗浄液噴流を衝突させる所定の方向を、重点洗浄箇所の穴の中心軸方向からずらすことが可能になる。このときに、更に貫通流路33を傾斜させることも可能である。これは、重点洗浄箇所の穴の入口部が平坦でない特殊な形状であるなど、洗浄液噴流の到達方向が穴の中心軸に沿ったものでは良好に穴内に噴流が入射できず、前記方向を穴中心軸に対して傾斜させた際に良好に穴内に洗浄液噴流が入射して充分な洗浄がなされるような場合に有効である。
【0066】
また、本実施例では、M6ねじ穴に適用するための洗浄ターゲット1を例に説明したが、適用穴のねじ規格が異なれば、本体2の基部21にその適用穴に螺合する雄ねじを有することは当然である。また、蓋体3の寸法設計も上記実施例に限定されるものでないことは言うまでもない。また、規格の異なるねじ穴に本体2の基部21で対応できれば、蓋体3の寸法設計は共通化できる。
【実施例2】
【0067】
本発明の第2の実施例として、交差穴である重点洗浄箇所T2に適用される洗浄ターゲット11を図3の側断面図に示す。本洗浄ターゲット11は、実施例1と共通の蓋体3と交差穴に適応する本体4との二部材構成である。本実施例においては、本体4が被洗浄物に対応する対象物Wの交差穴に嵌合装着され、蓋体3が本体4に掛止される。
【0068】
本体4の対象物Wに対する装着部である基部41は、交差穴の円筒内部形状と嵌合する円柱状外形を有するものであり、その外径を交差穴に対して中間ばめ、又はしまりばめの公差幅とする。この基部41の先端側に突起部42を突設し、該突起部42には雌ねじ43を穿設した。この基部41を交差に圧入することによって本体4が対象物Wの重点洗浄箇所T2に嵌合装着される。
【0069】
本体4の突起部42は、直径φ3mmの略円柱形であり、凹部30の直径φ2.9mmの円筒状部31内に圧入されることで該円筒状部31に締め付けられて掛止され、蓋体3の本体4との係止状態が得られる。本実施例の洗浄ターゲット11も、この係止状態において、蓋体3の天井部32と突起部42との間に噴流導入室X2となる空間が形成される。そして、蓋体3の頂部から天井部32まで貫通する貫通流路33はこの噴流導入室X2に連通するものである。この貫通流路33の貫通方向は、係止状態において、交差穴の中心軸に合致する本体4及び突起部42の中心軸に対して同軸上にある。
【0070】
従って、洗浄液の噴流が、蓋体3に対して、交差穴中心軸方向に沿って入射すると、実施例1の場合と同様に、洗浄液噴流が噴流導入室X2内に導入されることによって蓋体3が本体4から離脱する。蓋体3が外れて重点洗浄箇所T2の交差穴内に残っている本体4は、突起部42に設けた雌ねじ43にピン抜き工具を取り付け、取り外す方向に衝撃力を加えることで該交差穴から引き抜くことができる。
【0071】
この突起部42に設けた雌ねじ43に替えて、例えば突起部42の外周面の一部分に設けた雄ねじを取り外しに利用する構成としても良い。また、基部41の外形状は、必ずしも交差穴の内周形状に全周に亘って嵌合する同一形状とする必要はなく、部分的に少なくとも一対の対向領域で交差穴の内周面に嵌合することで装着は可能である。この場合、対象物Wと基部41との接触面積が小さくなるため、圧入及び引き抜きに要する力が低減され、作業が容易になる。
【0072】
基部41の外周側面のうち一対の対向領域で交差穴の円筒内部形状に嵌合する外形状を得るには、まず全周に亘って交差穴の円筒内部形状に合致する円柱状外形とした基部41に対して、図4の斜視図に示すように、互いに対向する平行な切欠き面対が2組(44aと44b,45aと45b)、隣合って形成されるように、加工または成形されたものであり、互いに対向する位置に残った外周領域に、円柱外周面の部分領域からなる一対の嵌合領域(46aと46b)が得られる。
【0073】
ここで、本実施例の変形例として、穴径公差が一般公差のような、比較的広い穴に適用される洗浄ターゲットの本体を、図5に示す。本体5の基部51は、円柱形状に、互いに対向する平行な切欠き面を2組(54aと54b,55aと55b)を隣合って形成したものである。これら切欠き面以外の、穴内装着の際にその内周面と接して嵌合する一対の嵌合領域(56aと56b)は、0.5°乃至3°のテーパを有する部分円錐面で構成することができる。この構成によれば、重点洗浄箇所のうち、その直径の公差幅が非常に広い穴に対しても、適切な強度で圧入することができる。
【0074】
この変形例においては、被洗浄物に対応する対象物Wの材質がアルミ合金、マグネシウム合金、等の比較的強度の低い軽金属である場合には、本体5の材質は軟鋼、硬鋼、ステンレス鋼、等の比較的強度の高い重金属を選択することが望ましい。反対に、対象物Wの材質が軟鋼、硬鋼、ステンレス鋼、等の比較的強度の高い重金属である場合には、本体5の材質はアルミ合金、マグネシウム合金、等の比較的強度の低い軽金属を選択することが望ましい。
【0075】
なお、本実施例においては、基部51には、後端面側から雌ねじ53が穿設されている。これは、装着穴が貫通孔である場合に、蓋体3が外れて貫通孔内に残っている本体5を取り外すために利用される。雌ねじ53にピン抜き工具を取り付け、取り外す方向に衝撃力を加えることで貫通孔から本体5を引き抜くことができる。また、このような雄ねじ53が基部51に形成されていなくても、本体5を挿入方向と反対方向からの押圧により貫通孔から取り外すことができる。
【実施例3】
【0076】
本発明の第3の実施例として、重点洗浄箇所T4が以上の実施例で示したようなねじ穴や交差穴等に比べて非常に小径の細穴であり、この小径細穴に適用できる洗浄ターゲット13を図6に示す。
【0077】
本実施例による洗浄ターゲット13も、実施例1と共通の蓋体3と本体6との二部材構成であり、本体6の基部61の先端側に実施例1及び2の突起部と同一外形状の突起部62が形成されるものであるが、重点洗浄箇所T4の細穴に装着されるのは基部61の一部である。即ち、基部61の突起部62と反対側の後端部から延在する軸部60が前記細穴に挿入されるものである。
【0078】
重点洗浄箇所T4の細穴の内壁面が何ら加工のない平坦な場合は、軸部60の軸径を細穴の内径に嵌合する寸法とし、この軸部60が細穴に圧入されることによってしまりばめによるはめ合い装着が成される。軸部60が細穴に嵌合装着されると、その上方の基部61は、細穴の開口周辺面に鍔状に当接した状態となる。
【0079】
軸部60で重点洗浄箇所T4に装着された本体6の突起部62が、これより若干内径の小さい蓋体3凹部30の円筒状部31内に圧入されることで、前述の実施例と同様に、蓋体3の本体6との係止状態が得られる。
【0080】
本洗浄ターゲット13においても、洗浄液の噴流が蓋体3に対して細穴の中心軸方向に沿って入射方向で衝突すると、係止状態で蓋体3の天井部32と突起部62との間に形成されている噴流導入室X4に洗浄液噴流が導入されることによって、蓋体3が本体6から外れる。
【0081】
本体6の突起部62には、雌ねじ63が穿設されている。従って蓋体3が外れた後に、この本体6を対象物Wから取り外す際には、該雌ねじ63にピン抜き工具を取り付け、取り外す向きに衝撃力を与えて細穴から軸部60を抜き取ることができる。
【0082】
なお、対象の重点洗浄箇所T4である細穴が雌ねじ穴の場合には、軸部60の外周に該雌ねじに螺合する雄ねじを加工しておけば螺合装着を行うことができる。この場合は、突起部62に設けられる雌ねじ63に替えて、スリ割溝又はその代替手段を設けることによって、ドライバーや他の回転用工具を用いて軸部60の螺合を解除し、本体6を対象物Wから取り外すことができる。スリ割溝の代替手段としては、十字穴、六角穴等の回転用工具に用いられる手段の他、基部61の周囲に加工を施したローレット目を用いることができる。
【0083】
また、基部61の外周にローレット加工を施した変形例によれば、工具を用いることなく、そのローレット目の滑り止め作用を利用して、基部61を摘んで本体6を対象物Wに対して装着、又は取り外すことが可能である。本実施例における本体6の形態では、本体6の軸部60を除く基部61と突起部62が細穴の外に露出し、このような本体6に掛止される蓋体3も対象物Wの表面から突出することになるが、これらの出代が洗浄の障害にならない場合には、M6以上のねじ穴に対しても該形態を適用できることは言うまでもない。
【0084】
なお、本実施例では、突起部62と軸部60とを同軸上に形成したが、突起部62が軸部60に対して傾斜しても良い。これは、予め定められた方向が重点洗浄箇所である穴の中心軸方向に対して傾斜している場合に、蓋体3の貫通流路33の貫通方向をその定められた方向に沿わせるためである。この場合には、軸部60の挿入深さが規制され、本体6の装着状態にて、突起部の中心軸線の延長線上に軸部60の中心軸と対象物W表面とが交差する点が位置するように、本体6を製作すれば良い。軸部60の挿入深さを規制する手段として、軸部60に段付き軸を採用することができる。
【実施例4】
【0085】
本発明の第4の実施例として、一部材構成からなる洗浄ターゲット14を図7に示す。図7の(a)は洗浄ターゲット14の平面図であり、(b)〜(d)は洗浄ターゲット14の各使用状態を示す側断面図である。本実施例の洗浄ターゲット14は、実施例1〜3で示した洗浄ターゲットの蓋体3を基本とした変形形態を有するものであり、主に非貫通孔の穴部(凹み部)からなる重点洗浄箇所T5に適用される。
【0086】
即ち、本洗浄ターゲット14は、前述の略円筒状の蓋体3の円柱状外形に対して互いに対向する平行面対(75aと75b)が形成される一対の切欠き面が形成されている。また後端部側には凹部70が形成され、凹部70は、円筒状部71と略半球の天井部72とを備え、頂部から該天井部72まで貫通する貫通流路73が設けられている。
【0087】
また本洗浄ターゲット14は、その円柱外径が重点洗浄箇所T5の穴部内径より若干大きいものである。洗浄ターゲット14の材質が金属であれば、その外径は、重点洗浄箇所T5の内周形状に対して中間ばめ又はしまりばめの関係にあるものとする。また、洗浄ターゲット14がプラスチックであれば、その弾性変形を使用した圧入で重点洗浄箇所T5にはまり込む外径とする。
【0088】
本洗浄ターゲット14を重点洗浄箇所T5の穴部内へ圧入装着すると、凹部70と重点洗浄箇所T5底面との対向領域に囲まれた空間が形成され、該空間が噴流導入室X5となる。また、該装着状態において、貫通流路73の貫通方向は、重点洗浄箇所T5の穴部中心軸方向に沿ったものとなる。
【0089】
この洗浄ターゲット14の重点洗浄箇所T5への装着状態において、対象物Wに対して高圧洗浄を行う。ノズルから噴出した洗浄液の噴流Jが前記穴部中心軸方向に沿って洗浄ターゲット14に衝突すると、噴流は貫通流路73内を進み、噴流導入室X5に達し、直ちに該噴流導入室X5を満たす。そして該噴流導入室X5を形成する内壁面を押圧する圧力Pが発生し、圧力の合力Fが天井部72側に作用し、洗浄ターゲット14を外側へ押し出し、対象物Wから離脱させる。
【0090】
なお、洗浄ターゲット14の一対の切欠き面からなる平行面対(75aと75b)は、洗浄ターゲット14を圧入された重点洗浄箇所T5から取り外す必要が生じた場合、この平行面と重点洗浄箇所T5の穴部内壁面との間に形成される隙間にラジオペンチの先端を挿入して洗浄ターゲット14を挟持して引き抜くことができる。また、この切欠き面を設けることによって、重点洗浄箇所T5における対象物Wとの接触面積を減らすため、洗浄ターゲット14の重点洗浄箇所T5穴部内への圧入を容易にするという効果もある。
【0091】
本実施例の洗浄ターゲットによれば、二部材構成における本体が不要であるため、非常に簡易な構成となる。また、組立ピンに代表される、穴深さが穴径とほぼ等倍の重点洗浄箇所T5への適用においても、該重点洗浄箇所T5の穴部からはみ出ることのないコンパクトな洗浄ターゲットを提供できる。
【0092】
なお、本実施例の洗浄ターゲット14においては、必ずしも天井部72を設ける必要はなく、また、切欠き面を備える形態に限定するものではなく、円柱状外形としても良い。
【0093】
なお、以上の実施例においては、二部材構成の洗浄ターゲットにおける蓋体と本体の突起部との係止手段として、両部材の外径と内径との差と部材の弾性変形とを利用した圧入又は締め付けによる掛止を利用した場合を示したが、これに限定するものではなく、例えば、図8に示すように、蓋体3の後端部と本体4側の当接領域との間を洗浄液の噴流に接して濡れた際に溶け出す微量の糊剤N、接着剤で接着するなど、適度な両部材間の解除可能な係止状態が得られる手段であれば、広く採用可能である。
【0094】
また同様に、一部材構成の洗浄ターゲットと重点洗浄箇所との装着手段においても、図9に示すような糊剤Nや接着剤、その他様々な手段を利用することが可能である。
【0095】
さらに、以上の実施例においては、二部材構成の洗浄ターゲットにおける蓋体および一部材構成の洗浄ターゲットに設けられる貫通流路が一本の場合を示したが、2本以上の貫通流路を設ける構成も可能である。このような複数の貫通流路を設ける構成は、特に噴流Jの断面積が、その被衝突領域となる蓋体或いは一部材構成の洗浄ターゲットの頭頂面面積に相当するような比較的大きい場合に有効である。この場合、図10に4本の貫通流路(83a,83b,83c,83d)を設けた蓋体8の場合で示すように、全貫通流路が互いに等角度間隔で、各貫通流路から導入される噴流が1つの凹部80内で合流するように配設する。
【符号の説明】
【0096】
1,11,12,13,14:洗浄ターゲット
2,4,5,6:本体
21,41,51,61:基部
22,42,52,62,72:突起部
23:スリ割溝
24:雄ねじ
3,8:蓋体
30,70,80:凹部
31,71:円筒状部
32,72:天井部
33,73,83a,83b,83c,83d:貫通流路
43,53,63:雌ねじ
44aと44b,45aと45b,54aと54b,55aと55b,75aと75b:平行面対(切欠き面対)
46a,46b,56a,56b:嵌合領域
X1,X2,X3,X4,X5:噴流導入室
60:軸部
N:糊剤
J:噴流
T1,T2,T3,T4,T5:重点洗浄箇所
Ts: 雌ねじ部
W:対象物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10