【解決手段】給紙装置は、吸着搬送機構と、用紙搬送経路における間隙を規制して用紙の捌きを行う捌き部材と、用紙搬送経路における間隙が規制される捌き位置と、間隙を拡大させる退避位置と、の間で捌き部材が移動するように捌き部材を駆動する捌き部材駆動部と、用紙前端検出センサと、重送検出センサと、吸着搬送機構による用紙の搬送が可能になったとき、捌き部材が捌き位置に位置し、用紙の前端が検出されたとき、捌き位置に位置する捌き部材が退避位置に位置するような通常制御を行う制御部と、を備え、制御部は、用紙の重送が検出された場合、通常制御のときよりも長い時間にわたって捌き部材が捌き位置に位置する特別制御を行うように制御する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の給紙装置では、捌きパッドと、用紙搬送方向とは逆方向に回転駆動される分離ローラと、いう2種類の用紙捌き手段を備えており、用紙の種類(すなわち、厚紙、普通紙、薄紙、密着しやすい用紙)に応じて、当該2種類の用紙捌き手段の中から少なくとも一方を選択して用いている。上記電磁ソレノイド等によって、捌きパッドを必要とする場合には捌きパッドを分離作動位置に移動させ、捌きパッドを必要としない場合には捌きパッドを退避位置に移動させている。
【0006】
特許文献1においては、密着しやすい用紙を搬送する場合、同時に2種類の用紙捌き手段を使用すると記載されている。しかしながら、密着しやすい用紙を搬送する場合、用紙捌き手段として捌きパッドを単独で使用する際に捌きパッドの位置制御をいつのタイミングでどのように行うかについて、特許文献1は何らの開示や示唆もなすものではない。そして、給紙装置が2種類の用紙捌き手段を備えることは、そもそも、装置の高コスト化、構造の複雑化及び大型化を招くという問題がある。
【0007】
したがって、この発明の解決すべき技術的課題は、エア吸着ベルト及び捌き部材を用いる給紙装置において、例えば静電気が発生するような環境下でも用紙の重送の発生を抑制する給紙装置及び給紙方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記技術的課題を解決するために、この発明によれば、以下の給紙装置及び給紙方法が提供される。
【0009】
すなわち、この発明の請求項1に係る給紙装置は、
給紙台上に載置された用紙束の上方に設置されて前記用紙束における最上位用紙の上面をエア吸着して搬送する吸着搬送機構と、
前記吸着搬送機構によって形成される用紙搬送経路における間隙を規制して前記用紙の捌きを行う捌き部材と、
前記用紙搬送経路への前記捌き部材の接近によって前記用紙搬送経路における間隙が規制される捌き位置と、前記用紙搬送経路からの前記捌き部材の退避によって前記用紙搬送経路における間隙を拡大させる退避位置と、の間で前記捌き部材が移動するように前記捌き部材を駆動する捌き部材駆動部と、
前記捌き部材よりも前記用紙搬送経路の下流側に配置されて、搬送される前記用紙の前端を検出する用紙前端検出センサと、
前記用紙の重送を検出する重送検出センサと、
前記吸着搬送機構による前記用紙の搬送が可能になったとき、前記捌き部材が前記捌き位置に位置し、前記用紙前端検出センサによって前記用紙の前端が検出されたとき、前記捌き位置に位置する前記捌き部材が前記退避位置に位置するような通常制御を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、前記重送検出センサによって前記用紙の重送が検出された場合、前記通常制御のときよりも長い時間にわたって前記捌き部材が前記捌き位置に位置する特別制御を行うように制御することを特徴とする。
【0010】
この発明の請求項2に係る給紙装置では、前記特別制御は、前記用紙の後端が前記捌き部材を通過するまで、前記捌き部材が前記捌き位置に位置するように制御することを特徴とする。
【0011】
この発明の請求項3に係る給紙装置では、前記特別制御は、前記用紙が搬送されている間、前記捌き部材が常に前記捌き位置に位置するように制御することを特徴とする。
【0012】
この発明の請求項4に係る給紙装置では、前記重送検出センサによって前記用紙の重送が複数回連続して検出された場合に、前記特別制御を行うことを特徴とする。
【0013】
この発明の請求項5に係る給紙装置では、前記特別制御を行っている間においても前記重送検出センサによって前記用紙の重送が複数回連続して検出された場合に、前記捌き部材の調整を行うことを促す警告を発することを特徴とする。
【0014】
この発明の請求項6に係る給紙方法では、
給紙台上に載置された用紙束の上方に設置されて前記用紙束における最上位用紙の上面をエア吸着して搬送する吸着搬送機構と、
前記吸着搬送機構によって形成される用紙搬送経路における間隙を規制して前記用紙の捌きを行う捌き部材と、
前記用紙搬送経路への前記捌き部材の接近によって前記用紙搬送経路における間隙が規制される捌き位置と、前記用紙搬送経路からの前記捌き部材の退避によって前記用紙搬送経路における間隙を拡大させる退避位置と、の間で前記捌き部材が移動するように前記捌き部材を駆動する捌き部材駆動部と、
前記捌き部材よりも前記用紙搬送経路の下流側に配置されて、搬送される前記用紙の前端を検出する用紙前端検出センサと、
前記用紙の重送を検出する重送検出センサと、
前記吸着搬送機構による前記用紙の搬送が可能になったとき、前記捌き部材が前記捌き位置に位置し、前記用紙前端検出センサによって前記用紙の前端が検出されたとき、前記捌き位置に位置する前記捌き部材が前記退避位置に位置するような通常制御を行う制御部と、を備える給紙装置における給紙方法であって、
前記制御部は、前記重送検出センサによって前記用紙の重送が検出された場合、前記通常制御のときよりも長い時間にわたって前記捌き部材が前記捌き位置に位置する特別制御を行うように制御することを特徴とする。
【0015】
この発明の請求項7に係る給紙方法では、前記特別制御は、前記用紙の後端が前記捌き部材を通過するまで、前記捌き部材が前記捌き位置に位置するように制御することを特徴とする。
【0016】
この発明の請求項8に係る給紙方法では、前記特別制御は、前記用紙が搬送されている間、前記捌き部材が常に前記捌き位置に位置するように制御することを特徴とする。
【0017】
この発明の請求項9に係る給紙方法では、前記重送検出センサによって前記用紙の重送が複数回連続して検出された場合に、前記特別制御を行うことを特徴とする。
【0018】
この発明の請求項10に係る給紙方法では、前記特別制御を行っている間においても前記重送検出センサによって前記用紙の重送が複数回連続して検出された場合に、前記捌き部材の調整を行うことを促す警告を発することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係るこの発明では、用紙の重送が検出された場合、制御部によって、通常制御から、通常制御のときよりも長い時間にわたって捌き部材が捌き位置に位置する特別制御に切り替えられる。その結果、例えば静電気が発生するような環境下で用紙の重送が多発する場合、搬送される用紙に対する捌き部材の接触時間が長くなって、捌き作用が向上するため、用紙の重送の発生を抑制することができるという効果を奏する。
【0020】
請求項2に係るこの発明では、搬送される用紙に対する捌き部材の必要且つ十分な接触時間が確保され、捌き動作が確実に実行されるという効果を奏する。
【0021】
請求項3に係るこの発明では、特別制御において捌き位置と退避位置との間で切り替えることを不要とするため、特別制御が簡易化されるという効果を奏する。
【0022】
請求項4に係るこの発明では、用紙の重送の多発時という、特別制御を必要とする場合に限ることにより、捌き部材が搬送される用紙に不必要なダメージを与えるというリスクが低減されるという効果を奏する。
【0023】
請求項5に係るこの発明では、警告によって、使用者が適切な対応を取ることができるという効果を奏する。
【0024】
請求項6に係るこの発明では、用紙の重送が検出された場合、制御部によって、通常制御から、通常制御のときよりも長い時間にわたって捌き部材が捌き位置に位置する特別制御に切り替えられる。その結果、例えば静電気が発生するような環境下で用紙の重送が多発する場合、搬送される用紙に対する捌き部材の接触時間が長くなって、捌き作用が向上するため、用紙の重送の発生を抑制することができるという効果を奏する。
【0025】
請求項7に係るこの発明では、搬送される用紙に対する捌き部材の必要且つ十分な接触時間が確保され、捌き動作が確実に実行されるという効果を奏する。
【0026】
請求項8に係るこの発明では、特別制御において捌き位置と退避位置との間で切り替えることを不要とするため、特別制御が簡易化されるという効果を奏する。
【0027】
請求項9に係るこの発明では、用紙の重送の多発時という、特別制御を必要とする場合に限ることにより、捌き部材が搬送される用紙に不必要なダメージを与えるというリスクが低減されるという効果を奏する。
【0028】
請求項10に係るこの発明では、警告によって、使用者が適切な対応を取ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1乃至
図6は、この発明の給紙装置7を用紙加工装置1に適用した一実施形態を説明する図である。説明の都合上、
図1等に記載しているように、用紙搬送方向Tを前方、用紙搬送方向Tと反対方向を「後方」と呼び、また、用紙幅方向(用紙搬送方向Tと直交する水平方向)を「左右方向」と呼び、後方から見た状態で「右方」と「左方」を規定して、以下に説明する。なお、この発明の給紙装置7は、孔版印刷機や複写機やプリンタ等の画像形成装置にも適用可能である。
【0031】
(用紙加工装置の全体構成)
図1は、この発明の給紙装置7が適用される用紙加工装置1の全体を示す模式的側面図である。この用紙加工装置1は、積載された多数枚の用紙P(用紙束Q)から用紙Pを1枚ずつ矢印Tで示す用紙搬送方向に搬送して送り出す給紙装置7と、給紙装置7から送り出された用紙Pを搬送しながら加工する加工装置本体2と、排紙トレイ18と、を備えている。給紙装置7から排紙トレイ18に至る経路においては、複数個の対のローラ4からなる搬送手段によって用紙搬送経路10が形成されている。
【0032】
用紙搬送経路10上には、給紙装置7の側から順に、少なくとも、第1加工ユニット5A、第2加工ユニット5B、及び第3加工ユニット(例えば、余白裁断ユニット)5Cが設けられている。これらの加工ユニット5A,5B,5Cは、加工装置本体2に対して着脱自在なユニットとして設けられているが、加工装置本体2に対して固設されていてもよい。加工ユニット5A,5B,5Cは、いずれの設置場所にも着脱できるように、外観上同じ寸法や形状を有するように構成されている。また、これらの加工ユニット5A,5B,5C及びローラ4には、駆動手段(図示せず)が連結されている。なお、第1加工ユニット5A、第2加工ユニット5Bは、2つの加工ユニットだけを意味するのでなく、2つ以上の加工ユニットを含むことができる。加工ユニットとして、縦裁断用ユニット、横裁断用ユニット、縦折り型用ユニット、横折り型用ユニット、丸め加工用ユニット又はミシン目加工用ユニット等を例示することができる。加工用途に応じて、これらの各種加工ユニットの中から必要とされる加工ユニットが選択され、選択された加工ユニットが加工装置本体2内の適宜の位置に組み込まれる。更に、用紙加工装置1は、用紙Pの裁断によって発生する裁断屑を回収するためのゴミ箱5を加工装置本体2内の底部に有している。
【0033】
(用紙加工装置の電気的構成)
図3は、用紙加工装置1の電気的構成を示すブロック図である。用紙加工装置1は、装置の各種動作を制御する制御部(CPU:中央演算処理装置)6を加工装置本体2に備えている。ROM(リードオンリーメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、EEPROM(電気的に消去書き込み可能なメモリ)、操作パネル上のスイッチ類、モータやファンやソレノイド及び各種センサが、I/Oポートを介して、制御部(CPU)6に接続されている。
【0034】
ROMは、基本プログラムを記憶する。RAMは、各種データを一時的に記憶する記憶部として用いられることに加えて、後述する通常制御時において重送の回数を計数するカウンタDとしても用いられる。EEPROMは、制御プログラムやパラメータ等を記憶する記憶部として用いられることに加えて、後述する特別制御時において重送の回数を計数するカウンタEとしても用いられる。用紙加工装置1に設けられているモータは、例えば、吸着ベルト駆動モータ、給紙台昇降モータ、斜行補正駆動モータである。用紙加工装置1に設けられているファンは、例えば、吸引ファンである。用紙加工装置1に設けられているソレノイドは、例えば、シャッターソレノイドや捌き部材駆動ソレノイドである。用紙加工装置1に設けられているセンサは、例えば、給紙台30での上限リミッタスイッチや下限リミッタスイッチ、用紙レベル検出センサ35、用紙前端レベル検出センサ37、用紙前端検出センサ25、重送検出センサ26及び用紙後端検出センサ27である。操作パネルを用いて、用紙加工条件や設定情報が入力されたり、情報が表示されたりする。操作パネルには、一連の用紙加工動作を開始するためのスタートボタンが設けられている。
【0035】
(給紙装置の全体構成)
図2に示すように、給紙装置7は、給紙ユニット3と、吸着搬送機構8と、斜行搬送機構9と、前面ストッパー11と、を備えている。給紙装置7は、さらに、用紙前端検出センサ25と、重送検出センサ26と、用紙後端検出センサ27と、用紙レベル検出センサ35と、用紙前端レベルセンサ37等の各種センサを備えている。給紙装置7は、捌きパッド59を用いて用紙Pを分離・捌きを行うための用紙捌き機構55を備えている。
【0036】
図2において、給紙ユニット3は、給紙台30と、一対の側面ガイド(図示しない)と、後端押さえ部材14と、を備えている。給紙台30は、多数枚の用紙Pが積載されるとともに昇降可能に構成されている。給紙台30は、給紙台昇降モータを駆動源とする昇降装置を用いて電動で昇降する。紙受台30の上限位置及び下限位置は、それぞれ上限リミッタスイッチ及び下限リミッタスイッチによって検知されていて、当該リミッタスイッチは万が一のための安全装置として機能する。一対の側面ガイドは、用紙幅方向に対向して離間配置されている。後端押さえ部材14は、積載された用紙P(すなわち用紙束Q)の後面を揃えるとともに、積載された最上位の用紙Pの後端Pbを自重で押さえることができるように構成されている。
【0037】
(給紙装置の後端押さえ部材)
後端押さえ部材14は、例えば、給紙台30の上に載置されるブックスタンド形状をしており、固定側面ガイドの近傍に配置されている。後端押さえ部材14は、最上位の用紙Pの後端Pbの一部分、具体的には、最上位の用紙Pのうち、固定側面ガイドの側の後端Pbを押圧する。後端押さえ部材14は、後端押さえ板31と後面ガイド板32とから構成されている。後面ガイド板32は、底面部及びガイド部を有して、略L字状に折れ曲がった形状をしている。給紙台30の上面に配置される底面部の上に用紙束Qが載置され、底面部が給紙台30の上面と最下位の用紙Pの下面との間で挟まれている。同時に、ガイド部が給紙台30の上に積載された用紙束Qの後面に接している。したがって、後面ガイド板32は、積載された用紙束Qの後面を揃える後面規制部材として機能している。なお、給紙台30が磁性を持った鉄、ニッケル、コバルトを含む金属材料からできている場合、底面部の下面において、給紙台30の上面に対して着脱自在に付着する磁性シート等の付着部材を貼着することもできる。
【0038】
後端押さえ板31は、押さえ部と引っ掛かり部と支持部とを有して、押さえ部が支持部に対して略L字状に折れ曲がっているとともに、引っ掛かり部が支持部に対して略L字状に折れ曲がっている。
【0039】
ガイドピンが後端押さえ板31の支持部に立設されている。ガイド部の幅方向略中央部分には、上下方向に延びてガイドピンが挿通されるガイド孔が形成されている。ガイド孔の長さが、積載される用紙Pの高さよりも大きく、且つ、ガイド孔の幅が、ガイドピンがガイド孔に沿って上下にスライド移動できるように、それぞれ寸法構成されている。後端押さえ板31が後面ガイド板32に対して上下に移動することができるので、積載される用紙Pの枚数(用紙束Qの高さ)に応じて後端押さえ板31の押さえ部の位置が適宜に変化する。そして、後端押さえ板31の自重によって、押さえ部が、積載された最上位の用紙Pにおいて、固定側面ガイドの側の後端の上面を押圧することができる。したがって、後端押さえ板31は、最上位の用紙Pの後端Pbの上面を押さえる後端押さえ部材として機能している。積載される用紙Pのサイズに応じて、後端押さえ部材14の設置場所を変えることにより、用紙Pの後端Pbでの押さえる位置を調整できる。
【0040】
(給紙装置の用紙レベル検出)
図2において、固定側面ガイドの左側(内側)であり且つ用紙Pの前端Pfから後方寄りの場所であって給紙台30の上方には、用紙レベル検出センサ35が配置されている。用紙レベル検出センサ35の検出レバー36が斜め下前方に延在して、検出レバー36の下端が、上昇してくる用紙Pの上面に当接するように、検出レバー36が配置されている。用紙レベル検出センサ35によって、給紙台30の上の最上位の用紙Pのレベルが検出される。なお、用紙レベル検出センサ35は、吸着搬送機構8の搬送ベルト43における下側部分と最上位の用紙Pとの間隔を調節することで用紙Pに対する吸着特性を調節できる調節ダイアルを備えている。すなわち、調節ダイアルを用いて、用紙Pが厚紙である場合には当該間隔を狭くしたり、用紙Pが薄紙である場合には当該間隔を広くしたりすることができる。
【0041】
ところで、給紙装置の使用される環境(高い湿度)やおもて面と裏面とにおける印刷物の収縮率差によっては用紙Pに反りが発生するため、用紙Pの前端Pfがカールする場合がある。用紙Pの前端Pfが上向き又は下向きにカールしている場合、カールした前端Pfを正確に位置決めすることが困難である。とりわけ、給紙動作開始直後の最上位の用紙Pは、エアを吹き付ける前には静電気等で用紙P同士が密着した状態にある可能性があるため、最上位の用紙Pの前端Pfの位置を正確に特定することが困難である。そのため、用紙Pの前端Pfのレベルを検出するための用紙前端レベルセンサ37が、用紙Pの前端Pfの上方に配置されている。用紙前端レベル検出センサ37の検出レバー38が、斜め下後方に延在して、検出レバー38の下端が、上昇してくる用紙Pの前端Pfに当接するように、検出レバー38が配置されている。
【0042】
まず、操作パネルのスタートボタンを通じて給紙開始の信号が入力されると、下記のような吸着・搬送の動作制御が、用紙束Qのうち給紙動作スタート時に最上位にある用紙Pに対して行われる。まず、用紙束Qが載置された給紙台30が上昇する。用紙束Qにおける最上位の用紙Pの前端Pfが、用紙前端レベル検出センサ37の検出レバー38に当接すると、給紙台30の上昇が停止する。給紙台30の停止位置から、最上位の用紙Pの前端Pfのレベルが検出される。給紙台30の停止位置は、最上位の用紙Pの前端Pfの初期位置情報としてRAMに一時的に記憶される。給紙台30は、所定の待機位置まで下降する。そのあと、給紙台昇降モータによる給紙台30の上昇速度が通常の上昇速度の半分程度の低速で、給紙台30が上昇する。そして、最上位の用紙Pの前端Pfの初期位置情報を参照しながら、最上位の用紙Pの前端Pfが、用紙前端レベル検出センサ37の検出レバー38に当接するまで給紙台30が上昇するように、制御部6が制御する。したがって、最上位の用紙Pの前端Pfが検出レバー38の下端位置に対してオーバーランすることなく、最上位にある用紙Pの位置が正確に決められる。
【0043】
その後、後で詳細に説明されるように、最上位の用紙Pに対して、捌き動作が行われる。捌かれた最上位の用紙Pの上面が、搬送ベルト43の下面に吸着する。吸着された最上位の用紙Pが搬送ベルト43によって前方に搬送される。
【0044】
用紙レベル検出センサ35の検出レバー36の下端が、用紙前端レベル検出センサ37の検出レバー38の下端と大略同じレベルに配置されている。そのため、用紙前端レベル検出センサ37を用いて最上位の用紙Pに関する上記吸着・搬送の動作制御を行っているとき、用紙レベル検出センサ35からも最上位の用紙Pの上面に対して当接しているという信号又は非当接であるという信号が発せられる。しかしながら、用紙レベル検出センサ35からの当該信号は、給紙動作開始時に最上位にある用紙Pに関する上記吸着・搬送の制御の利用されることはない。そして、給紙動作開始時に最上位から二番目以降の用紙Pに関する上記吸着・搬送の制御は、用紙レベル検出センサ35を利用して行われて、用紙前端レベル検出センサ37を利用して行われることは無い。
【0045】
(給紙装置の吸着搬送機構)
図2において、給紙台30の前部上方に配置された吸着搬送機構8は、前後一対の回転ローラ41,42と、回転ローラ41,42の間に巻き掛けられた吸着式搬送ベルト43と、搬送ベルト43内に配置された吸引ボックス44と、吸引ファン(図示せず)と、を備えている。一対の回転ローラ41,42は、吸着ベルト駆動モータによって回転駆動される。複数の搬送ベルト43が用紙幅方向に離間し且つ用紙搬送方向Tと平行に並んで配置されるとともに、各搬送ベルト43には多数の吸引孔が形成されている。吸引ボックス44の下面には、複数の吸引スリットが形成され、該吸引スリットからエアを吸い込むことができる。
【0046】
吸引ファンの駆動により、吸引ボックス44は、吸引ボックス44の下方にあるエアを上方に吸引し、搬送ベルト43の下面(搬送面)は、分離・捌きの行われた用紙Pの上面を吸着する。その結果、用紙束Qの中から1枚の用紙Pだけが分離される。そして、搬送ベルト43の下面に吸着された用紙Pは、斜行搬送機構9に向けて用紙搬送方向Tに搬送される。
【0047】
吸着搬送機構8においては、用紙幅方向のおおよそ中央に位置する2つの搬送ベルト43の間に、用紙前端レベル検出センサ37が配置されている。用紙前端レベル検出センサ37は、斜め下後方に延びる検出レバー38を有する。検出レバー38の前部が回動自在に支持され、検出レバー38の下端が最上位の用紙Pの前端Pfに当接するように構成されている。また、用紙幅方向のおおよそ中央に位置する2つの搬送ベルト43の間であって搬送ベルト43の下面の近傍には、用紙後端検出センサ27が配置されている。用紙後端検出センサ27は、発光素子及び受光素子を備える反射型フォトセンサであり、用紙Pの遮光によって用紙Pの後端Pbの通過を検出することができる。
【0048】
(給紙装置の斜行搬送機構)
吸着搬送機構8の前方に位置する斜行搬送機構9は、吸着搬送機構8によって前方に搬送されてきた用紙Pを、一対の回転ローラ51,52に掛け渡された吸着式搬送ベルト53に載せながら、搬送するようになっている。一対の回転ローラ51,52は、斜行補正駆動モータによって回転駆動される。吸着式搬送ベルト53内には吸引ボックス54が配置されている。搬送ベルト43の上面(搬送面)は、用紙Pの下面を吸着することができる。吸着式搬送ベルト53は、用紙搬送方向Tと平行に延びるガイド壁(図示せず)に対して、少しだけ傾斜するように配設されている。斜行搬送機構9では、用紙Pが、ガイド壁の側に押しやられながら搬送されるので、用紙Pの一側縁がガイド壁に沿った状態で用紙搬送方向Tに搬送される。したがって、吸着搬送機構8によって搬送された用紙Pが用紙搬送方向Tに対して傾斜して搬送されていたとしても、斜行搬送機構9によって用紙Pが用紙搬送方向Tに搬送されるように修正することができる。なお、用紙Pが厚紙である場合には、吸引ボックス54による吸着を可能にして吸着式搬送ベルト53で用紙Pを吸着搬送する。また、用紙Pが薄紙である場合には、吸引ボックス54による吸着を不可にして搬送ベルト53のグリップ力だけで用紙Pを搬送する。
【0049】
用紙幅方向のおおよそ中央に位置する2つの搬送ベルト53の間に、用紙前端検出センサ25及び重送検出センサ26が配置されている。用紙前端検出センサ25は、発光素子及び受光素子を用紙搬送経路10を挟んで配置された透過型フォトセンサであり、用紙Pの遮光によって用紙Pの通過を検出することができる。重送検出センサ26は、超音波の発振器および受振器を用紙搬送経路10を挟んで配置された超音波センサであり、搬送される用紙Pに超音波を当てて、用紙Pを透過した超音波の強度を測定することにより、搬送される用紙Pの重送を検出することができる。
【0050】
(給紙装置の捌き機構)
給紙台30の前端に隣接するように、前面ストッパー11が立設されている。給紙ユニット3と前面ストッパー11との間には、吸着搬送機構8により吸着された用紙Pを捌く用紙捌き機構55が設けられている。用紙捌き機構55は、搬送された用紙Pの下面に当接する捌きパッド(捌き部材)59と、プランジャ57と、捌きパッド59とプランジャ57とを連結するリンク部材58と、捌きパッド59が上下に移動するようにプランジャ57を駆動する電磁ソレノイド(捌き部材駆動部)56と、を備える。リンク部材58の一端が捌きパッド59に接続され、リンク部材58の他端がプランジャ57に接続されている。用紙捌き機構55では、前面ストッパー11の傾斜面に設けられた連通口61を通じて、捌きパッド59が用紙搬送経路10に向けて突出するように構成されている。
【0051】
電磁ソレノイド56は、用紙搬送経路10への捌きパッド59の接近によって用紙搬送経路10における間隙を規制する捌き位置と、用紙搬送経路10からの捌きパッド59の退避によって用紙搬送経路10における間隙を拡大させる退避位置と、の間で捌きパッド59が移動するようにプランジャ57を駆動する。電磁ソレノイド56は、通電時にプランジャ57が引き込まれるプルタイプのもの、又は、通電時にプランジャ57が飛び出すプッシュタイプのもの、のいずれであってもよい。そして、用紙捌き機構55は、電磁ソレノイド56の非通電時において、通電によって変位した捌きパッド59が元の位置に戻るように付勢する戻りバネ(図示しない)を備えている。
【0052】
捌きパッド59は、その長手方向が用紙搬送経路10に対して略直交方向に延びるように配置されている。捌きパッド59は、シリコーンゴムやウレタンゴムのような合成ゴム材料や天然ゴム材料等の、可撓性を持った弾性変形可能な材料からなり、吸着搬送機構8による吸着力よりも勝る摩擦力が用紙Pに作用するような摩擦抵抗を有している。したがって、捌きパッド59は、吸着搬送機構8が用紙Pを一枚だけ搬送する場合には、吸着搬送機構8の吸着力が摩擦力に打ち勝ってそのまま用紙Pを用紙搬送経路10の下流側に搬送することができるが、吸着搬送機構8が密着した用紙Pを重送しようとした場合には捌きパッド59と用紙Pとの摩擦力が用紙P間の密着力に打ち勝って最上位の用紙Pを一枚だけを用紙搬送経路10の下流側に搬送して、それ以外の用紙Pを下流側に搬送することを阻止するように構成されている。
【0053】
なお、リンク部材58及び/又はプランジャ57は、捌きパッド59の出没による用紙搬送経路10における間隙量を微調整するための間隙調整機構を有する。
【0054】
(給紙装置における通常制御)
図4を参照しながら、給紙工程における通常制御について説明する。
【0055】
操作パネルの操作キーを通じて運転開始指示が入力されると、制御部6は、操作パネルの操作キーから、用紙処理枚数Nの設定値の入力を受け付ける(#10)。制御部6は、特別制御のフラグが立っているか否かを判断する(#12)。特別制御のフラグが立っている場合(#12におけるYES)には、後述する特別制御に移行する(#16)。特別制御のフラグが立っていない場合(#12におけるNO)には、制御部6は、給紙動作が開始されているか否かを判断する(#14)。給紙動作が開始されていなければ(#14におけるNO)、給紙動作が開始されるまで待つ。給紙動作が開始されている場合(#14におけるYES)、制御部6は、カウンタDが動作するようにセットする(#18)。制御部6は、捌きパッド59を捌き位置に移動させる(#20)。
【0056】
用紙Pは、吸着搬送機構8の搬送ベルト43で吸着されながら、用紙搬送経路10の下流側に搬送され、制御部6は、重送検出センサ26の検出結果に基づいて、用紙Pの重送が発生しているか否かを判断する(#22)。用紙Pの重送が発生していない場合(#22におけるNO)、制御部6は、カウンタDをリセットする(#24)。制御部6は、用紙前端検出センサ25の検出結果に基づいて、用紙Pの前端Pfが検出されて、吸着搬送機構8から斜行搬送機構9への用紙Pの受け渡しが行われているか否かを判断する(#26)。用紙Pの前端Pfが検出されていない場合(#26におけるNO)、用紙Pの重送が発生しているか否かを判断するステップ#22に戻る。用紙Pの前端Pfが検出されている場合(#26におけるYES)、制御部6は、捌きパッド59を退避位置に移動させる(#28)。制御部6は、設定された用紙処理枚数Nの処理が完了しているか否かを判断する(#30)。設定された用紙処理枚数Nの処理が完了していない場合(#30におけるNO)、特別制御のフラグが立っているか否かを判断するステップ#12に戻る。設定された用紙処理枚数Nの処理が完了している場合(#30におけるYES)、通常制御が終了する。
【0057】
用紙Pの重送が発生している場合(#22におけるYES)、制御部6は、カウンタDにおいて1を加算する(#32)。制御部6は、カウンタDの数が所定数(例えば10)以上であるか否かを判断する(#34)。カウンタDの数が所定数に達していない場合(#34におけるNO)、使用者によって、重送された用紙Pが取り除かれる等の重送処理を行うステップ#40に移る。カウンタDの数が所定数に達して、用紙Pの重送が所定数連続して発生している場合(#34におけるYES)、制御部6は、カウンタDをリセットする(#36)。そして、制御部6は、特別制御のフラグを立てる(#38)。その後、重送された用紙Pを取り除く等の重送処理を行うステップ#40に移る。そして、通常制御が終了する。
【0058】
(給紙装置における特別制御)
図5を参照しながら、給紙工程における或る特別制御について説明する。
【0059】
特別制御のフラグが立っている場合(#12におけるYES)には、
図5に示す特別制御に移行する。特別制御においては、まず、制御部6は、給紙動作が開始されているか否かを判断する(#50)。給紙動作が開始されていなければ(#50におけるNO)、給紙動作が開始されるまで待つ。給紙動作が開始されている場合(#50におけるYES)、制御部6は、カウンタEが動作するようにセットする(#52)。制御部6は、捌きパッド59を捌き位置に移動させる(#54)。
【0060】
用紙Pは、吸着搬送機構8の搬送ベルト43で吸着されながら、用紙搬送経路10の下流側に搬送され、制御部6は、重送検出センサ26の検出結果に基づいて、用紙Pの重送が発生しているか否かを判断する(#56)。用紙Pの重送が発生していない場合(#56におけるNO)、制御部6は、カウンタEをリセットする(#58)。制御部6は、用紙後端検出センサ27の検出結果に基づいて、用紙Pの後端Pbが検出されて、用紙Pが捌きパッド59を完全に通り過ぎているか否かを判断する(#60)。用紙Pの後端Pbが検出されていない場合(#60におけるNO)、用紙Pの重送が発生しているか否かを判断するステップ#56に戻る。用紙Pの後端Pbが検出されている場合(#60におけるYES)、制御部6は、捌きパッド59を退避位置に移動させる(#62)。そして、特別制御が終了する。
【0061】
用紙Pの重送が発生している場合(#56におけるYES)、制御部6は、カウンタEにおいて1を加算する(#64)。制御部6は、カウンタEの数が所定数(例えば5)以上であるか否かを判断する(#66)。カウンタEの数が所定数に達していない場合(#66におけるNO)、重送された用紙Pを取り除く等の重送処理を行うステップ#72に移る。カウンタEの数が所定数に達して、用紙Pの重送が所定数連続して発生している場合(#66におけるYES)、制御部6は、カウンタEをリセットする(#68)。そして、制御部6は、「用紙搬送経路における間隙量を調整してください」等の警告を操作パネルに表示させる(#70)。使用者によって、重送された用紙Pを取り除かれるとともに用紙搬送経路10における間隙量が調整される等の重送処理を行うステップ#72に移る。そして、特別制御が終了する。
【0062】
図5に示した或る特別制御では、用紙Pの後端Pbが捌きパッド59を通過するまで捌きパッド59が捌き位置に位置するように、すなわち、通常制御のときよりも長い時間にわたって捌きパッド59が捌き位置に位置するように、制御されている。したがって、搬送される用紙Pに対する捌きパッド59の必要且つ十分な接触時間が確保され、捌き動作が確実に実行される。
【0063】
(給紙装置における特別制御)
図6を参照しながら、給紙工程における他の特別制御について説明する。
【0064】
特別制御のフラグが立っている場合(#12におけるYES)には、
図6に示す他の特別制御に移行することができる。他の特別制御においては、まず、制御部6は、給紙動作が開始されているか否かを判断する(#80)。給紙動作が開始されていなければ(#80におけるNO)、給紙動作が開始されるまで待つ。給紙動作が開始されている場合(#80におけるYES)、制御部6は、カウンタEが動作するようにセットする(#82)。制御部6は、捌きパッド59を捌き位置に移動させる(#84)。
【0065】
用紙Pは、吸着搬送機構8の搬送ベルト43で吸着されながら、用紙搬送経路10の下流側に搬送され、制御部6は、重送検出センサ26の検出結果に基づいて、用紙Pの重送が発生しているか否かを判断する(#86)。用紙Pの重送が発生していない場合(#86におけるNO)、制御部6は、捌きパッド59を捌き位置にしたままで、特別制御を終了させる。
【0066】
用紙Pの重送が発生している場合(#86におけるYES)、制御部6は、カウンタEにおいて1を加算する(#90)。制御部6は、カウンタEの数が所定数(例えば5)以上であるか否かを判断する(#92)。カウンタEの数が所定数に達していない場合(#92におけるNO)、重送された用紙Pを取り除く等の重送処理を行うステップ#98に移る。カウンタEの数が所定数に達して、用紙Pの重送が所定数連続して発生している場合(#92におけるYES)、制御部6は、カウンタEをリセットする(#94)。そして、制御部6は、「用紙搬送経路における間隙量を調整してください」等の警告を操作パネルに表示させる(#96)。使用者によって、重送された用紙Pを取り除かれるとともに用紙搬送経路10における間隙量が調整される等の重送処理を行うステップ#98に移る。そして、特別制御が終了する。
【0067】
図6に示した他の特別制御では、用紙Pが搬送されている間、捌きパッド59が常に捌き位置に位置するように、すなわち、通常制御のときよりも長い時間にわたって捌きパッド59が捌き位置に位置するように、制御されている。したがって、搬送される用紙Pに対する捌きパッド59の十分な接触時間が確保されるとともに、捌き位置と退避位置との間で切り替えることを不要とするため、特別制御が簡易化される。
【0068】
なお、前面ストッパー11の傾斜面にエアの吹き出し口を設けて、当該吹き出し口からエアを吹き出して、積載された用紙束Qのうち上位にある用紙P間にエアを吹き込んで、当該用紙P同士の密着性を予め低減させる補助的な捌き構成を備えるようにしてもよい。
【0069】
また、用紙後端検出センサ27を設ける代わりに、用紙前端検出センサ25を用いて用紙Pの後端Pbを知ることができる。斜行搬送機構9における斜行補正駆動モータとして、例えば、駆動パルス数に比例して回転量が規定されるステッピングモータや、エンコーダによって回転量が検出されるサーボモータを用いて、駆動パルス数から用紙搬送方向Tでの用紙Pの移動量を知ることができる。用紙Pの前端Pfが検出されてからの駆動パルス数を変数にして、入力又は検出された用紙Pの用紙搬送方向Tのサイズの情報と、用紙前端検出センサ25及び捌きパッド59との間での距離とに基づいて、用紙Pの後端Pbがいつのタイミングで捌きパッド59を通過したのかを知ることができる。