【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のポッティング剤は、エポキシ基を4個以上有するエポキシ化合物と、チオール基を4個以上有するチオール化合物と、フェノール性水酸基及び/又はアミノ基を少なくとも有する硬化触媒とを含み、上記エポキシ化合物のエポキシ基の合計モル量と、上記チオール化合物のチオール基の合計モル量との比(チオール基の合計モル量/エポキシ基の合計モル量)が0.05〜0.5であることを特徴とする。
【0014】
本発明のポッティング剤を構成しているエポキシ基を4個以上有するエポキシ化合物としては、特に限定されず、例えば、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−1,3−ベンゼンビス(メタンアミン)、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−(4−アミノフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、1,1,2,2−(テトラグリシジルオキシフェニル)エタン及びこれらの二量体又は三量体などのオリゴマーなどが挙げられ、ポッティング剤の耐薬品性が優れているので、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−1,3−ベンゼンビス(メタンアミン)が好ましい。なお、エポキシ化合物は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0015】
エポキシ化合物のエポキシ基の数は、少ないと、低温におけるポッティング剤の硬化反応が進行しないので、4個以上に限定されるが、多すぎると、低温におけるポッティング剤の硬化反応が進行しすぎて、低温にて硬化したポッティング剤の半硬化物の硬さが硬くなりすぎ、半硬化物の切断が困難となることがあるので、4〜6個が好ましい。
【0016】
エポキシ基を4個以上有するエポキシ化合物の分子量は、小さすぎても大きすぎても、ポッティング剤の耐薬品性が低下することがあるので、180〜1000が好ましく、300〜800がより好ましい。
【0017】
本発明のポッティング剤を構成しているチオール基を4個以上有するチオール化合物としては、特に限定されず、例えば、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコラート、ペンタエリスルトールテトラキスチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチラート)などが挙げられ、ポッティング剤の硬化反応の制御が容易であるので、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチラート)が好ましい。なお、チオール化合物は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0018】
チオール化合物のチオール基の数は、少ないと、低温におけるポッティング剤の硬化反応が進行しないので、4個以上に限定されるが、多すぎると、低温におけるポッティング剤の硬化反応が進行しすぎて、低温にて硬化したポッティング剤の半硬化物の硬さが硬くなりすぎ、半硬化物の切断が困難となることがあるので、4〜6個が好ましい。
【0019】
チオール基を4個以上有するチオール化合物の分子量は、小さすぎても大きすぎても、ポッティング剤の耐薬品性が低下することがあるので、74〜1000が好ましく、200〜800がより好ましい。
【0020】
エポキシ化合物のエポキシ基の合計モル量とチオール化合物のチオール基の合計モル量との比(チオール基の合計モル量/エポキシ基の合計モル量)は、小さいと、低温におけるポッティング剤の硬化反応が進行せず、大きいと、低温におけるポッティング剤の硬化反応が進行しすぎて、低温にて硬化したポッティング剤の半硬化物の硬さが硬くなりすぎ、半硬化物の切断が困難となるので、0.05〜0.5に限定され、0.1〜0.3が好ましく、0.1〜0.25がより好ましい。
【0021】
ここで、「エポキシ当量」とは、エポキシ化合物の分子量を1分子中のエポキシ基の数で除した値である。「チオール当量」とは、チオール化合物の分子量を1分子中のチオール基の数で除した値である。エポキシ基の合計モル量は、エポキシ化合物の含有量をエポキシ当量で除した値である。チオール基の合計モル量は、チオール化合物の含有量をチオール当量で除した値である。「エポキシ化合物のエポキシ基の合計モル量とチオール化合物のチオール基の合計モル量との比(チオール基の合計モル量/エポキシ基の合計モル量)が0.05〜0.5」とは、エポキシ基の数が1に対してチオール基の数が0.05〜0.5であるという意味である。
【0022】
本発明において、エポキシ樹脂のエポキシ当量は、JIS K7236に準拠して測定された値をいう。
【0023】
本発明において、チオール化合物のチオール当量は、下記式にて定義された値をいう。
チオール化合物のチオール当量(g/eq)
=(チオール化合物の水酸基価×1000)/水酸化カリウムの分子量
なお、チオール化合物の水酸基価はJIS K0070に準拠して測定された値をいう。水酸化カリウムの分子量は56.11とする。
【0024】
本発明において、チオール化合物は硬化剤として含有されているが、本発明の目的を阻害しない範囲内において、他の硬化剤が含有されていてもよい。このような硬化剤としては、例えば、酸無水物、ジシアンジアミド、イミダゾールなどが挙げられる。
【0025】
本発明のポッティング剤を構成している硬化触媒は、フェノール性水酸基及び/又はアミノ基を少なくとも有する。本発明において、アミノ基とは、−NH
2(1級アミノ基)、2級アミノ基及び3級アミノ基を含む。なお、2級アミノ基とは、−NH
2の1個の水素がアルキル基(好ましくは炭素数が1〜8のアルキル基)などの原子団で置換された置換基をいう。3級アミノ基とは、−NH
2の2個の水素がアルキル基(好ましくは炭素数が1〜8のアルキル基)などの原子団で置換された置換基をいう。
【0026】
フェノール性水酸基及び/又はアミノ基を少なくとも有する硬化触媒としては、特に限定されず、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、テトラエチルメチレンジアミン、テトラメチルプロパン−1,3−ジアミン、テトラメチアレヘキサン−1,6−ジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ペンタメチルジプロピレントリアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、エチレングリコール(3−ジメチル)アミノプロピルエーテル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルアミノメチルフェノール、N,N−ジメチルプロピアレアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N−メチルピペリジン、N,N’−ジメチルピペラジン、N,N−ジメチルベンジルアミン、ジメチルアミノメチルフェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−ノネン−5、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−ウンデセン−7、1,2−ジメチルイミダゾール、ジメチルピペラジン、N−メチル−N’−(2−ジメチルアミノ)−エチルピペラジン、N−メチルモルホリン、N−(N’,N’−ジメチルアミノ)エチル)モルホリン、N−メチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)モルホリン、トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミンなどが挙げられる。なお、フェノール性水酸基及び/又はアミノ基を少なくとも有する硬化触媒は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0027】
フェノール性水酸基及び/又はアミノ基を少なくとも有する硬化触媒としては、反応速度を容易に制御可能であるから、フェノール性水酸基及びアミノ基を有する硬化触媒が好ましく、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールが好ましい。
【0028】
ポッティング剤中における硬化触媒の含有量は、少ないと、ポッティング剤の硬化反応が進行しなくなることがあり、多いと、ポッティング剤の硬化反応が速くなりすぎて制御することができなくなり、又は、ポッティング剤の刺激臭が強くなることがあるので、チオール化合物100重量部に対して0.01〜15重量部が好ましく、0.05〜10重量部がより好ましく、0.05〜5重量部が特に好ましい。
【0029】
ポッティング剤には、本発明の作用効果を阻害しない範囲内において、添加剤が含有されていてもよい。添加剤としては、例えば、熱可塑性樹脂、脱臭剤、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などの密着性向上/接着性改良剤、ヒンダードアミン類、ハイドロキノン類、ヒンダードフェノール類などの酸化防止剤、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、サリチル酸エステル類、金属錯塩類などの紫外線吸収剤、金属石けん類、重金属(例えば亜鉛、錫、鉛、カドミウム等)の無機及び有機塩類、有機錫化合物などの安定剤、フタル酸エステル、リン酸エステル、脂肪酸エステル、エポキシ化大豆油、ひまし油、流動パラフィンアルキル多環芳香族炭化水素などの可塑剤、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワンクス、重合ワックス、密ロウ、鯨ロウ低分子量ポリオレフィンなどのワックス類、ベンジルアルコール、タール、ピチューメン等の非反応性希釈剤、低分子脂肪族グリシジルエーテル、芳香族モノグリシジルエーテルなどや(メタ)アクリレートエステル類などの反応性希釈剤、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、マイカ、ベントナイト、クレー、セリサイト、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ガラス粉、ガラスバルーン、シラスバルーン、石炭粉、アクリル樹脂粉、フェノール樹脂粉、金属粉末、セラミック粉末、ゼオライト、スレート粉などの充填剤、カーボンブランク、酸化チタン、赤色酸化鉄、パラレッド、紺青等の顔料又は染料、酢酸エチル、トルエン、アルコール類、エーテル類、ケトン類などの溶剤、発泡剤、モノイソシアネート化合物、カルボジイミド化合物などの脱水剤、帯電防止剤、抗菌剤、防かび剤、粘度調製剤、香料、難燃剤、レベリング剤、分散剤、ラジカル重合開始剤、揺変性付与剤、導電性付与剤などが挙げられる。
【0030】
本発明のポッティング剤は、例えば、エポキシ化合物、チオール化合物及び硬化触媒を含む組成物を汎用の混合機を用いて混合することにより製造することができる。混合機としては、例えば、ミキサー、ビーズミル、3本ロール、押出機などが挙げられる。
【0031】
本発明のポッティング剤の使用要領について説明する。
図1に示したように、糸状に形成された複数本の中空糸1を引き揃えた状態で束ね、この中空糸束2の端部を硬化前のポッティング剤3中に浸漬する。なお、中空糸は、その表面から薬液を浸透させることによって薬液を濾過し、濾過された薬液を中空糸の中心に形成された中空部から取り出すことができ、中空糸膜ともいう。
【0032】
中空糸束の端部を硬化前のポッティング剤に浸漬させた状態において、ポッティング剤を低温に加熱する。ポッティング剤の低温での加熱温度は、30〜70℃が好ましく、35〜60℃がより好ましく、40〜50℃が特に好ましい。
【0033】
ポッティング剤の低温での加熱温度が低いと、ポッティング剤の硬化反応が十分に進まず、ポッティング剤を低温で加熱して半硬化させて得られる半硬化物の硬さが不十分となる。後述するが、中空糸束の端部を一体化させている半硬化物は、一部が切断されて所望形状に整えられ、更に、中空糸の中心に形成された中空部の端面を開口させるために中空糸の端縁部と共に切断される。この工程において、ポッティング剤の半硬化物と共に中空糸を切断する時、切断刃によって中空糸に切断応力が加えられるが、ポッティング剤の半硬化物が軟らかいと、半硬化物が中空糸を切断応力に抗して支持することができず、中空糸を切断刃によって円滑に切断することができないという問題を生じる虞れがある。
【0034】
ポッティング剤の低温での加熱温度が高いと、ポッティング剤の硬化反応が進行しすぎて、ポッティング剤を低温で加熱して半硬化させて得られる半硬化物が硬くなりすぎて、半硬化物の切断を容易に行うことができないという問題を生じる虞れがある。
【0035】
ポッティング剤は、低温での加熱に応じた分の反応しか進行せず、低温での加熱によってポッティング剤の硬化反応が完全に進行することはなく、ポッティング剤の硬化反応は途中で停止し、ポッティング剤の低温での加熱によって、ポッティング剤の半硬化物が得られる。ポッティング剤の低温での硬化反応が完了した後は、ポッティング剤の硬化反応は進行しないことから、半硬化物の硬さが経時的に変化することはない。従って、ポッティング剤の半硬化物を切断するにあたって、ポッティング剤の時間管理を厳密に行う必要がないと共に、ポッティング剤の半硬化物の硬さが常に略一定である条件下でポッティング剤の半硬化物の切断を行うことができ、ポッティング剤の半硬化物の切断を容易に且つ一定の品質下にて行うことができる。
【0036】
図2に示したように、ポッティング剤を低温で加熱して半硬化物4とした後、
図3に示したように、ポッティング剤の半硬化物4の一部を切断することによって形を整える。更に、ポッティング剤の半硬化物4を中空糸1と共に切断することによって中空糸1の中空部の両端を開口させた状態とする。この際、ポッティング剤の半硬化物4は、適度な硬さを有していることから、中空糸1に切断刃による切断応力が加わった時もポッティング剤の半硬化物4が中空糸1を確実に受止し、中空糸1を切断刃によって確実に且つ容易に切断することができる。
【0037】
なお、
図1においては、中空糸束2の一方の端部のみを示したが、中空糸束2の他方の端部も同様の要領でポッティング剤の半硬化物4で一体化する。
【0038】
しかる後、両端部がポッティング剤の半硬化物4で固着一体化された中空糸束2を収納ケース6内に収納した後、ポッティング剤の半硬化物4を高温に加熱して硬化反応を進行させてポッティング剤を完全に硬化させて完全硬化物5とし、中空糸束2の中空糸1の両端部をポッティング剤の完全硬化物5で一体化すると共に、中空糸束2と収納ケース6とをポッティング剤の完全硬化物5によって一体化して中空糸モジュール7を製造することができる。
【0039】
ポッティング剤の半硬化物4の高温での加熱温度は、75〜150℃が好ましく、75〜120℃がより好ましく、80〜100℃が特に好ましい。ポッティング剤の半硬化物の高温での加熱温度が低いと、ポッティング剤の硬化が不十分となり、ポッティング剤の完全硬化物の耐薬品性及び機械的強度が低下する虞れがある。ポッティング剤の半硬化物の高温での加熱温度が高いと、硬化反応が暴走して完全硬化物が焦げたり、又は、硬化物に発煙を生じる虞れがある。
【0040】
ポッティング剤の完全硬化物5は、優れた耐薬品性及び機械的強度を有していることから、中空糸モジュール7内に供給された薬液によって膨潤するようなことはない。又、薬液は中空糸モジュール7内に圧力を加えた状態で供給されるが、ポッティング剤の完全硬化物5は優れた機械的強度を有していることから、薬液の供給圧力に十分に耐えることができる。よって、本発明のポッティング剤を用いて製造された中空糸モジュールは、長期間に亘って安定的に使用することができる。
【0041】
上記では、ポッティング剤を中空糸束の両端部を一体化し且つ中空糸束を収納ケースに固着するために用いられた場合を説明したが、本発明のポッティング剤は、半導体などのエレクトロニクス材料を封止するために用いられてもよい。