−1(nは自然数)の周期関数からなる測定信号をスピーカ9へ出力する外部出力手段6と、スピーカ9より出力された測定信号を収音するマイクロフォン7と、収音された測定音を2
+1番目以外(k=0,1,2,・・・)の線スペクトルを間引き処理する間引き手段13と、間引き処理された周波数特性に基づいて、信号レベルが平均化された音場の周波数特性を求める平均化処理手段14とを有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、符号長が2
n−1の周期関数からなる測定信号を用いて音場の周波数特性を求める場合には、マイクロフォンで収音した測定音をフーリエ変換処理する必要がある。フーリエ変換処理を行う場合には、フーリエ変換のサンプル長を測定信号の符号長に対して2倍以上に設定することが多く、2倍以上に設定することにより、フーリエ変換毎の振幅スペクトルの変動が抑えられ、ほぼ一定の周波数特性を得ることが可能になる。
【0008】
しかしながら、フーリエ変換のサンプル長は、一般的に2
m(mは自然数、但し、m>n)となる一方で、測定信号の符号長は、2
n−1となる。このため、測定信号を用いて周波数特性を求める場合には、測定信号の符号長に対して、フーリエ変換のサンプル長が整数倍の関係にならず、非同期の関係になってしまう傾向がある。このようにフーリエ変換のサンプル長と、測定信号の符号長とが非同期の関係になると、求められた一様な線スペクトルの間に変動するレベルの小さなスペクトルが発生してしまい、ノイズとして検出されてしまうという問題があった。
【0009】
しかしながら、符号長が2
n−1の周期関数からなる測定信号を用いる場合であっても、長い符号長の測定信号を用いることにより、振幅スペクトルの変動を低減させることができる。例えば、
図12(a)は、32,767の符号長を持つM系列符号を用いた場合の周波数特性を示しており、
図12(b)は、1/3オクターブバンド幅で対数的な平均化処理を行った場合の周波数特性を示している。長い符号長のM系列符号を用いた場合、振幅スペクトル毎にレベルの差異が発生してしまうが、対数的な平均化処理を行うことによって、周波数特性をほぼ一様な状態にすることができる。
【0010】
このように、測定信号の符号長が長い場合には、フーリエ変換によって振幅スペクトル数が多くなり、周波数間隔が密になるため、平均化処理によりノイズを低減させることが可能となる。しかしながら、測定信号の符号長が長い場合には、フーリエ変換等に必要とされるメモリ量等が増加し、必要とされる処理時間や処理負担も増大してしまうという問題がある。
【0011】
一方で、短い符号長の測定信号を用いることにより、フーリエ変換処理に必要とされるメモリ量を減少させ、また処理時間および処理負担を低減させることができる。
図13は、短い符号長の測定信号を用いて求められた周波数特性を示している。
図13(a)は、4,096の符号長を持つM系列符号を用いた場合の周波数特性を示しており、
図13(b)は、1/3オクターブバンド幅で対数的な平均化処理を行った場合の周波数特性を示している。符号長を短くすると、測定時間や測定負担等を低減させ、使用するメモリ量を少なくすることができるが、
図13(a)に示すように、振幅スペクトルの周波数が粗くなってしまうという問題があった。
【0012】
また、対数的な平均化処理を行った場合であっても、周波数特性に対して信号レベルの変動が生じてしまうという問題があった。
図13(b)は、人間の聴覚特性に合わせて、1/3オクターブバンド幅で対数的な平均化処理を行った場合を示しているが、低中域において信号レベルが大きく変動する様子が示されている。
【0013】
このように、符号長が2
n−1の周期関数からなる測定信号を用いて周波数特性を測定する場合には、フーリエ変換処理によって変動する小さな変動(ノイズ)が発生してしまい、精度良く音場の周波数特性を測定することが容易ではないという問題があった。
【0014】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、符号長が2
n−1の周期関数からなる測定信号を用いて、精度良く音場環境の周波数特性を測定することが可能な音場測定装置、音場測定方法および音場測定プログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明に係る音場測定装置は、符号長が2
n−1の周期関数からなる測定信号をスピーカより出力させるために、当該スピーカに対して前記測定信号を出力する外部出力手段と、該スピーカより出力された前記測定信号を収音するマイクロフォンと、該マイクロフォンで収音された測定音を2
mのサンプル長でフーリエ変換することにより、周波数特性を求めるフーリエ変換手段と、該フーリエ変換手段によって求められた周波数特性より、k×2
m−n+1番目以外の線スペクトルを間引き処理することにより、前記周波数特性におけるノイズを除去する間引き手段と、該間引き手段により間引き処理された周波数特性に基づいて、所定の周波数間隔における信号レベルの平均値を、当該周波数間隔よりも短い周波数ずつシフトさせながら算出することにより、平均化処理された音場の周波数特性を求める平均化処理手段とを有し、前記nと前記mは、m>nを満たす自然数であって、前記kは、k=0,1,2,・・・であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る音場測定装置の音場測定方法は、符号長が2
n−1の周期関数からなる測定信号をスピーカより出力させるために、外部出力手段が、当該スピーカに対して前記測定信号を出力する外部出力ステップと、該外部出力ステップにおいて前記スピーカより出力された前記測定信号を、マイクロフォンで収音する収音ステップと、該収音ステップにおいて前記マイクロフォンにより収音された測定音を、フーリエ変換手段が、2
mのサンプル長でフーリエ変換することにより、周波数特性を求めるフーリエ変換ステップと、該フーリエ変換ステップにおいて求められた周波数特性より、k×2
m−n+1番目以外の線スペクトルを間引き処理することにより、間引き手段が、前記周波数特性におけるノイズを除去する間引きステップと、該間引きステップにおいて間引き処理された周波数特性に基づいて、所定の周波数間隔における信号レベルの平均値を、当該周波数間隔よりも短い周波数ずつシフトさせながら算出することにより、平均化処理手段が、平均化処理された音場の周波数特性を求める平均化処理ステップとを有し、前記nと前記mは、m>nを満たす自然数であって、前記kは、k=0,1,2,・・・であることを特徴とする。
【0017】
さらに、本発明に係る音場測定装置の音場測定プログラムは、符号長が2
n−1の周期関数からなる測定信号を用いて音場の周波数特性を測定する音場測定装置の音場測定プログラムであって、該音場測定装置のコンピュータに、スピーカより前記測定信号を出力させるために当該スピーカに対して前記測定信号を出力させる外部出力機能と、該外部出力機能により前記スピーカより出力された前記測定信号を、マイクロフォンを用いて収音させる収音機能と、該収音機能によって収音された測定音を、2
mのサンプル長でフーリエ変換させることにより、周波数特性を求めさせるフーリエ変換機能と、該フーリエ変換機能によって求められた周波数特性より、k×2
m−n+1番目以外の線スペクトルを間引き処理させることにより、前記周波数特性におけるノイズを除去させる間引き機能と、該間引き機能により間引き処理された周波数特性に基づいて、所定の周波数間隔における信号レベルの平均値を、当該周波数間隔よりも短い周波数ずつシフトさせながら算出させることにより、平均化処理された前記音場の周波数特性を求めさせる平均化処理機能とを実現させるための音場測定プログラムであって、前記nと前記mは、m>nを満たす自然数であって、前記kは、k=0,1,2,・・・であることを特徴とする。
【0018】
符号長が2
n−1の周期関数からなる測定信号をスピーカ等から出力させて、収音された信号をサンプル数2
mでフーリエ変換させた場合には、フーリエ変換長(サンプル長)が測定信号の符号長の整数倍の関係にはならない。このようにフーリエ変換長と測定信号の符号長とが整数倍の関係とはならず、非同期となってしまう場合には、フーリエ変換毎に、変動するレベルの小さな線スペクトルが、一様な線スペクトルの間に発生してしまうおそれがある。この変動するレベルの小さな線スペクトルは、検出された周波数特性におけるノイズになってしまう。
【0019】
このため、本発明に係る音場測定装置、音場測定方法および音場測定プログラムでは、フーリエ変換処理により求められた周波数特性より、k×2
m−n+1番目以外の線スペクトルを間引き処理することにより、周波数特性に生ずるノイズを効果的に除去することが可能となる。このように、フーリエ変換長と測定信号の符号長とが非同期になって、変動するレベルの小さな線スペクトルが周波数特性にノイズとして発生する場合であっても、間引き処理によってノイズを除去することができ、音場の周波数特性における測定精度を向上させることが可能となる。
【0020】
さらに、測定信号の符号長が短い場合には、周波数特性の測定処理における処理負担および処理時間を低減でき、また処理に必要とされるメモリ量を減らすことができたが、低中域において線スペクトルの周波数間隔が粗くなると共に、検出される線スペクトルが変動するという問題があった。このため測定信号の符号長が短い場合には、十分な測定精度で周波数特性を測定することが容易でないという問題があった。
【0021】
本発明に係る音場測定装置、音場測定方法および音場測定プログラムでは、線スペクトルの周波数間隔が粗い場合であっても、間引き処理により変動するレベルの小さな線スペクトルを取り除くことができるため、周波数特性における低中域の測定精度を十分に確保することが可能になる。
【0022】
また、本発明に係る音場測定装置は、符号長が2
n−1の周期関数からなる測定信号をスピーカより出力させるために、当該スピーカに対して前記測定信号を出力する外部出力手段と、該スピーカより出力された前記測定信号を収音するマイクロフォンと、該マイクロフォンで収音された測定音を2
mのサンプル長でフーリエ変換することにより、周波数特性を求めるフーリエ変換手段と、該フーリエ変換手段により求められた周波数特性を帯域分割することにより、高域側成分からなる第1周波数特性と、低域側成分からなる第2周波数特性とを生成する帯域分割手段と、該帯域分割手段によって生成された第2周波数特性より、k×2
m−n+1番目以外の線スペクトルを間引き処理することにより、前記第2周波数特性におけるノイズを除去する間引き手段と、前記帯域分割手段により生成された第1周波数特性に基づいて、所定の第1周波数間隔における信号レベルの平均値を、当該第1周波数間隔よりも短い周波数ずつシフトさせながら算出することにより、平均化処理された第1周波数特性を生成する第1平均化処理手段と、前記間引き手段により間引き処理された第2周波数特性に基づいて、所定の第2周波数間隔における信号レベルの平均値を、当該第2周波数間隔よりも短い周波数ずつシフトさせながら算出することにより、平均化処理された第2周波数特性を生成する第2平均化処理手段と、前記第1平均化処理手段により平均化処理された前記第1周波数特性と、前記第2平均化処理手段により平均化処理された前記第2周波数特性とを合成することにより、全帯域の信号成分を備えた音場の周波数特性を求める合成手段とを有し、前記nと前記mは、m>nを満たす自然数であって、前記kは、k=0,1,2,・・・であることを特徴とする。
【0023】
また、本発明に係る音場測定装置の音場測定方法は、符号長が2
n−1の周期関数からなる測定信号をスピーカより出力させるために、外部出力手段が、当該スピーカに対して前記測定信号を出力する外部出力ステップと、該外部出力ステップにおいて前記スピーカより出力された前記測定信号を、マイクロフォンで収音する収音ステップと、該収音ステップにおいて前記マイクロフォンで収音された測定音を、フーリエ変換手段が、2
mのサンプル長でフーリエ変換することにより、周波数特性を求めるフーリエ変換ステップと、
該フーリエ変換ステップにおいて求められた周波数特性を帯域分割することにより、帯域分割手段が、高域側成分からなる第1周波数特性と、低域側成分からなる第2周波数特性とを生成する帯域分割ステップと、該帯域分割ステップにおいて生成された第2周波数特性より、k×2
m−n+1番目以外の線スペクトルを間引き処理することにより、間引き手段が、前記第2周波数特性におけるノイズを除去する間引きステップと、前記帯域分割ステップにおいて生成された第1周波数特性に基づいて、所定の第1周波数間隔における信号レベルの平均値を、当該第1周波数間隔よりも短い周波数ずつシフトさせながら算出することにより、第1平均化処理手段が、平均化処理された第1周波数特性を生成する第1平均化処理ステップと、前記間引きステップにおいて間引き処理された第2周波数特性に基づいて、所定の第2周波数間隔における信号レベルの平均値を、当該第2周波数間隔よりも短い周波数ずつシフトさせながら算出することにより、第2平均化処理手段が、平均化処理された第2周波数特性を生成する第2平均化処理ステップと、前記第1平均化処理ステップにおいて平均化処理された前記第1周波数特性と、前記第2平均化処理ステップにおいて平均化処理された前記第2周波数特性とを合成することにより、合成手段が、全帯域の信号成分を備えた音場の周波数特性を求める合成ステップとを有し、前記nと前記mは、m>nを満たす自然数であって、前記kは、k=0,1,2,・・・であることを特徴とする。
【0024】
さらに、本発明に係る音場測定装置の音場測定プログラムは、符号長が2
n−1の周期関数からなる測定信号を用いて音場の周波数特性を測定する音場測定装置の音場測定プログラムであって、該音場測定装置のコンピュータに、スピーカより前記測定信号を出力させるために当該スピーカに対して前記測定信号を出力させる外部出力機能と、該外部出力機能により前記スピーカより出力された前記測定信号を、マイクロフォンを用いて収音させる収音機能と、該収音機能によって収音された測定音を、2
mのサンプル長でフーリエ変換させることにより、周波数特性を求めさせるフーリエ変換機能と、該フーリエ変換機能によって求められた周波数特性を帯域分割することにより、高域側成分からなる第1周波数特性と、低域側成分からなる第2周波数特性とを生成させる帯域分割機能と、該帯域分割機能によって生成された第2周波数特性より、k×2
m−n+1番目以外の線スペクトルを間引き処理させることにより、前記第2周波数特性におけるノイズを除去させる間引き機能と、前記帯域分割機能により生成された第1周波数特性に基づいて、所定の第1周波数間隔における信号レベルの平均値を、当該第1周波数間隔よりも短い周波数ずつシフトさせながら算出させることにより、平均化処理された第1周波数特性を生成させる第1平均化処理機能と、前記間引き機能により間引き処理された第2周波数特性に基づいて、所定の第2周波数間隔における信号レベルの平均値を、当該第2周波数間隔よりも短い周波数ずつシフトさせながら算出させることにより、平均化処理された第2周波数特性を生成させる第2平均化処理機能と、前記第1平均化処理機能により平均化処理された前記第1周波数特性と、前記第2平均化処理機能により平均化処理された前記第2周波数特性とを合成することにより、全帯域の信号成分を備えた前記音場の周波数特性を求めさせる合成機能とを実現させるための音場測定プログラムであって、前記nと前記mは、m>nを満たす自然数であって、前記kは、k=0,1,2,・・・であることを特徴とする。
【0025】
本発明に係る音場測定装置、音場測定方法および音場測定プログラムでは、フーリエ変換処理により求められた周波数特性を、高域側成分の第1周波数特性と、低域側成分の第2周波数特性とに分割する。そして、低域側の第2周波数特性に対してのみ間引き処理を施すことにより、間引き処理に伴って発生し得る高域成分の信号レベル低減を避けることが可能となる。
【0026】
また、フーリエ変換長と測定信号の符号長との非同期に伴って生ずる、変動するレベルの小さな線スペクトルは、低中域の周波数間隔が粗いこともあって、低中域でノイズとして判断される可能性が高い。このため、低域側の第2周波数特性に対して間引き処理を行うことによって、低域成分のノイズを効果的に低減することが可能となる。
【0027】
さらに、高域側の第1周波数特性には間引き処理が行われないため、間引き処理に伴って発生し得る高域側成分の信号レベル低減を回避することが可能となり、高域側成分の増幅を行う必要がなくなる。そして平均化処理された第1周波数特性および第2周波数特性を合成して全帯域の信号成分を備えた周波数特性を生成することにより、より精度良く音場の周波数特性を求めることが可能になる。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る音場測定装置、音場測定方法および音場測定プログラムでは、線スペクトルの周波数間隔が粗い場合であっても、間引き処理により変動するレベルの小さな線スペクトルを取り除くことができるため、線スペクトルの周波数間隔が粗い場合であっても、周波数特性における低中域の測定精度を十分に確保することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る音場測定装置について、図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る音場測定装置のハードウエア的な概略構成の一例を示したブロック図である。音場測定装置1は、
図1に示すように、CPU2と、ROM(Read Only Memory)3と、RAM(Random Access Memory)4と、記憶部5と,外部出力部(外部出力手段)6と、マイクロフォン7と、表示部8とを有している。また外部出力部6は、スピーカ9に接続されている(
図2参照)。
【0031】
ROM3には、音場測定装置1において実行される処理プログラム等が記憶されている。例えば、音場測定装置1の起動時、あるいは、ユーザによる操作に応じてCPU2がROM3の処理プログラム等を読み出すことによって、周波数特性の測定等の各種処理を行うことが可能になっている。RAM4は、CPU2において行われる処理のワークエリア等として用いられる。
【0032】
記憶部5は、いわゆる補助記憶装置であって、主としてハードディスク、SSD(Solid State Drive)、あるいは不揮発性メモリ(フラッシュROM・フラッシュメモリ等)等により構成されている。また、SDカードのように取り外し可能なメモリーカードを記憶部5として利用することも可能である。記憶部5には、CPU2における各種処理に用いられる様々なデータ等が記録される。
【0033】
なお、音場測定装置1としてスマートフォンなどの情報携帯端末を利用する場合には、記憶部5にダウンロード等されたアプリケーションプログラムを記録させ、このアプリケーションプログラムに基づいて、周波数特性の測定処理を行うことも可能である。
【0034】
外部出力部6は、後述する測定信号を、スピーカ9より出力させる役割を有している。外部出力部6は、測定信号をスピーカ9より出力するために必要な機器等で構成されている。例えば、外部出力部6として、測定信号をアナログ信号に変換するD/A変換機器や、測定信号の信号出力を増大させるためのアンプ部が該当する。さらに、外部出力部6は、スピーカ9の入力端子にオーディオケーブルを介して接続するための外部出力端子等にも該当することになる。
【0035】
また、外部出力部6とスピーカ9との接続はオーディオケーブル等を用いた物理的な接続には限定されない。例えば、Bluetooth(登録商標)や無線LANなどの無線技術を用いることにより測定信号をスピーカ9より出力させる構成であってもよい。
【0036】
マイクロフォン7は、スピーカ9より出力される測定音を収音する役割を有している。マイクロフォン7により収音された測定音は、RAM4あるいは記憶部5に記録され、後述する周波数特性の測定処理に利用される。表示部8は、一般的な液晶ディスプレイやCRTディスプレイ(ブラウン管ディスプレイ)が該当し、周波数特性の測定処理により求められた音場の周波数特性(例えば、後述する
図8〜
図10に示す周波数特性)を、ユーザに視認可能に表示させる役割を有している。
【0037】
CPU2は、ROM3に記録される処理プログラム、あるいは、記憶部5に記録される周波数特性の測定用アプリケーションプログラムに従って、スピーカ9とマイクロフォン7との間の周波数特性の測定処理を実行する役割を有している。
図2は、CPU2が処理プログラムあるいはアプリケーションプログラムに基づいて、周波数特性の測定処理を行う場合における音場測定装置1の機能部の概略構成を示したブロック図である。また、
図3は、処理プログラム等に基づくCPU2の処理内容を示したフローチャートである。
【0038】
音場測定装置1は、
図2に示すように、測定信号生成部11と、フーリエ変換部(フーリエ変換手段)12と、間引き処理部(間引き手段)13と、平均化処理部(平均化処理手段)14と、高域増幅部15と、外部出力部6と、マイクロフォン7と表示部8とを有している。また、
図2には、外部出力部6に接続されたスピーカ9が示されている。なお、外部出力部6とマイクロフォン7と表示部8とについては、既に
図1において説明したので、ここでの説明は省略する。
【0039】
測定信号生成部11は、測定信号として、任意の生成多項式にてM系列符号を生成する。既に説明したように、M系列符号は、符号長が2
n−1の周期関数に該当する。符号長2
n−1におけるnは、自然数である。
【0040】
CPU2は、処理プログラム等に従って、測定信号生成部11として機能し、M系列符号からなる測定信号を生成する処理を行う(
図3のS1)。そして、CPU2は、生成されたM系列符号を、外部出力部6を用いて、スピーカ9に出力させる(
図3のS2、外部出力ステップ、外部出力機能)。その後、CPU2は、スピーカ9より出力された測定音を、マイクロフォン7を用いて収音させる(
図3のS3、収音ステップ、収音機能)。収音された測定音の信号(測定信号)は、フーリエ変換部12へ出力される。
【0041】
フーリエ変換部12は、収音された測定信号に対してフーリエ変換処理(高速FFT処理)を行う役割を有している。CPU2は、フーリエ変換部12において、収音した測定信号に対して窓関数で重みづけを行った後、フーリエ変換処理を行うことにより、時間領域の測定信号を周波数領域に変換し、フーリエ変換毎に線スペクトルを出力する(
図3のS4、フーリエ変換ステップ、フーリエ変換機能)。ここで、線スペクトルはパワースペクトルであり、線スペクトル数はフーリエ変換のサンプル長の半分となる。フーリエ変換処理された測定信号は、間引き処理部13へ出力される。
【0042】
間引き処理部13は、求められた周波数特性の線スペクトルから、ノイズとなる線スペクトルを取り除く(間引きする)役割を有している。上述したように、M系列符号の符号長は2
n−1となる。一方で、フーリエ変換処理に求められる線スペクトル数は、1/2・2
m(mは自然数)となり、フーリエ変換長(フーリエ変換のサンプル長)は、2
mとなる。一般に、M系列符号からなる測定信号を収音してフーリエ変換処理する場合には、フーリエ変換長をM系列符号の符号長の2倍以上(つまり、m>n)に設定するが、M系列符号の符号長は2
n−1であるため、フーリエ変換長がM系列符号の符号長の整数倍(例えば2倍、4倍、8倍等)の関係にはならない。このようにフーリエ変換長とM系列符号の符号長とが整数倍の関係とはならず、非同期となってしまう場合には、フーリエ変換毎に、変動するレベルの小さな線スペクトルが、一様な線スペクトルの間に発生してしまう。この変動するレベルの小さな線スペクトルは、周波数特性の検出においてノイズとなってしまう。このため、間引き処理部13は、ノイズとなってしまう線スペクトルを取り除く(間引く)ことによって、周波数特性におけるノイズを除去し、測定精度の向上を図る役割を担っている。
【0043】
次に、間引き処理部13が間引き処理を行う場合における処理内容について説明する。
図4は、符号長が4,095(2
n−1においてn=12)のM系列符号を測定信号として用い、フーリエ変換長を8,192(2
mにおいてm=13)に設定して、ループバック方式により、フーリエ変換部12で求められる線スペクトル(周波数特性)を示している。なお、
図4(a)は、間引き処理部13により間引き処理を行う前の周波数特性を示し、
図4(b)は、間引き処理部13により間引き処理を行った後の周波数特性を示している。
【0044】
ここで、ループバック方式とは、外部出力部6より出力された測定信号をそのままマイクロフォン7で収音された信号としてフーリエ変換部12へ出力することによって、周波数特性を測定する方法を意味している。このようなループバック方式を用いることにより、測定信号の周波数特性を、音場の影響を受けずにそのままフーリエ変換した状態で示すことができる。このため、測定信号としてM系列符号を用いることにより、理想的にはフラットな周波数特性を得ることができ、測定処理におけるノイズ等を容易に判断することが可能になる。
【0045】
間引き処理部13は、フーリエ変換部12により生成された線スペクトルに基づいて、低域側の線スペクトルから順番に、0×2
m−n+1,1×2
m−n+1,2×2
m−n+1,3×2
m−n+1,・・・,k×2
m−n+1番目以外の線スペクトルを間引く処理を行う。但し、変数kはk=0,1,2,3,・・・と1つずつ増加する整数であり、k×2
m−n+1は、フーリエ変換により生成された最後の線スペクトル(高域側の最後の線スペクトル)が含まれる値(最後の線スペクトルの順番≦k×2
m−n+1)である。
【0046】
図4(a)(b)を用いて説明すると、M系列符号長のnが12(n=12)であり、フーリエ変換長のmが13(m=13)であるため、2
m−n=2
13−12=2
1=2となる。従って、間引き処理部13が間引き処理を行う線スペクトルは、
図4(a)において低域側から0×2+1,1×2+1,2×2+1,3×2+1,・・・番目以外の線スペクトル、つまり、1,3,5,7,9,・・・番目以外の線スペクトルである。より詳細には、間引き処理部13により、2,4,6,8,10,・・・番目の線スペクトルの間引き処理が行われる。
【0047】
図4(a)において、低域側から1,3,5,7,9,・・・番目の線スペクトルは、ノイズとはならないため、信号レベルが0[dB]となっている。一方で、低域側から2,4,6,8,10,・・・番目の線スペクトルは、0[dB]以外の信号レベルを示し、ノイズとして検出されてしまう。このため、
図4(a)に示す線スペクトル(周波数特性)から、2,4,6,8,10,・・・番目(k×2
1+1番目以外)の線スペクトルを間引くことにより、
図4(b)に示すように、求められた周波数特性から、0[dB]以外の値を示す線スペクトル、つまり「変動するレベルの小さな線スペクトル」を除去することが可能になる。
【0048】
図5は、符号長が4,095(2
n−1においてn=12)のM系列符号を測定信号として用い、フーリエ変換長を16,384(2
mにおいてm=14)に設定して、ループバック方式により、フーリエ変換部12で求められる線スペクトル(周波数特性)を示している。なお、
図5(a)は、間引き処理部13により間引き処理を行う前の周波数特性を示し、
図5(b)は、間引き処理部13により間引き処理を行った後の周波数特性を示している。
【0049】
図5の場合には、M系列符号長のnが12(n=12)であり、フーリエ変換長のmが14(m=14)であるため、2
m−n=2
14−12=2
2=4となる。従って、間引き処理部13が間引き処理を行う線スペクトルは、
図5(a)において低域側から1,5,9,13,17,・・・番目以外の線スペクトルとなる。つまり、低域側から、2,3,4,6,7,8,10,11,12,14,15,16・・・番目の線スペクトルの間引き処理が行われる。
【0050】
図5(a)において、低域側から1,5,9,13,17,・・・番目の線スペクトルは、ノイズとはならないため、信号レベルが0[dB]となっている。一方で、2,3,4,6,7,8,10,11,12,14,15,16・・・番目の線スペクトルは、0[dB]以外の信号レベルを示し、ノイズとして検出されてしまう。このため、
図5(a)に示す線スペクトルから、1,5,9,13,17,・・・番目(k×2
2+1番目)以外の線スペクトルを間引くことにより、
図5(b)に示すように、求められた周波数特性から0[dB]以外の値を示す線スペクトル(変動するレベルの小さな線スペクトル)を除去することができる。
【0051】
CPU2は、上述したように、フーリエ変換処理により求められた線スペクトルから、k×2
m−n+1番目以外の線スペクトルを間引きする処理を行う(
図3のS5、間引きステップ、間引き機能)。間引き処理された信号(周波数特性、線スペクトル)は、平均化処理部14へと出力される。
【0052】
平均化処理部14は、間引き処理された信号の所定サンプル数毎の平均値を算出する役割を有している。平均化処理部14は、
図6に示すように、間引き処理された信号の線スペクトルを、低域側から高域側にわたって、1サンプルずつシフトさせながら、所定サンプル数内の平均値を算出する。
【0053】
図7は、1サンプルずつシフトさせる時の周波数サンプルに応じて設定される、平均値算出のサンプル数幅(平均化幅、所定の周波数間隔)を示した図である。
図7において、フーリエ変換のサンプル長が4,096、線スペクトル数が2,048となっており、
図7の横軸の周波数サンプルは、線スペクトル数に対応する数字となっている。
図7に示すように、周波数サンプルに応じて平均値算出時の所定サンプル数(所定の周波数間隔)が変化しており、低域側から高域側にわたって平均化幅が増加するようにして設定される。CPU2では、
図7のような平均化幅の設定により、1/9オクターブ幅の平均値算出処理を行う。聴覚の分解能は1/3オクターブ程度であることが知られている。このため、
図7に示すような平均化幅の設定を平均化処理部14で行うことにより、十分に大きな分解能で平均化処理を行うことが可能となる。
【0054】
CPU2は、平均化処理部14において、間引き処理部13で間引き処理された信号の平均化処理を行い(
図3のS6、平均化処理ステップ、平均化処理機能)、平均化処理された信号を、高域増幅部15へと出力する。
【0055】
高域増幅部15は、平均化処理された信号の高域成分の信号レベルを増幅する役割を有している。平均化処理が行われた信号は、間引き処理に伴って高域成分の信号レベルが減衰する傾向がある。このため、高域増幅部15では、減衰する高域成分を考慮した逆フィルタを用いて、高域成分の信号レベルを補完して、求められる周波数特性(線スペクトル)の信号レベルがフラットになる(一様な状態となる)ように増幅処理を行う。このような高域成分の増幅処理により、高域成分における周波数特性の測定精度の向上を図ることが可能となる。
【0056】
CPU2では、平均化処理された信号の高域成分を増幅し(
図3のS7)、高域成分の増幅処理が行われた信号を、表示部8に出力する。なお、CPU2では、間引き処理部13による間引き処理を行うことなく、フーリエ変換部12により求められた周波数特性をそのまま高域増幅部15へ出力し、表示部8で表示させることも可能になっている。表示部8において受信された周波数特性(線スペクトル)は、CPU2の指示に基づいて、ユーザに視認可能な状態で表示部8のディスプレイ画面等に表示される(
図3のS8)。
【0057】
次に、
図8〜
図10に示すように、具体的に測定された周波数特性等を示して、音場測定装置1における処理を説明する。まず、
図8(a)は、ループバック方式により測定されたM系列符号をフーリエ変換部12でフーリエ変換処理した場合(フーリエ変換処理後)における周波数特性を示している。また、
図8(b)は、
図8(a)に示す周波数特性を用いて間引き処理部13で間引き処理を行った場合(間引き処理後)の周波数特性を示している。
【0058】
さらに、
図9は、ループバック方式により、平均化処理部14で平均化処理された信号の周波数特性を示しており、
図9(a)は、間引き処理部13で間引き処理を行った後に平均化処理を行った場合を示し、
図9(b)は、間引き処理を行わずに平均化処理を行った場合を示している。一方で、
図10は、測定信号をスピーカ9より出力し、マイクロフォン7で収音することにより音場の周波数特性を測定する方法(以下、音場測定方式とする)により、平均化処理部14で平均化処理された信号の周波数特性を示しており、
図10(a)は、間引き処理部13で間引き処理を行った場合を示し、
図10(b)は、間引き処理を行わなかった場合を示している。
【0059】
図8〜
図10に示す周波数特性の測定条件は、測定信号としてM系列符号を用い、測定信号のサンプリング速度を44.1kHz、M系列符号長を4,095、フーリエ変換部12によるフーリエ変換のサンプル長は8,192、フーリエ変換部12において使用する窓関数はハミング窓、平均化処理部14における平均化幅は1/9オクターブに設定されている。
【0060】
M系列符号の符号長を4,095とし、フーリエ変換のサンプル長を8,192に設定した場合には、上述したように、M系列符号の符号長に対してフーリエ変換のサンプル長が整数倍の関係でなく、非同期となってしまう。このため、
図8(a)に示すように、フーリエ変換毎に、一様な線スペクトルの間に変動するレベルの小さな線スペクトルが発生してしまい、周波数特性の信号レベルに0[dB]以外のノイズが検出されてしまっている。さらに、符号長が4,095のM系列符号は、符号長が短い測定信号に該当する。このため、線スペクトルの周波数間隔が荒くなる傾向があり、特に低域成分において検出された線スペクトルに顕著なばらつきが生じ、線スペクトルの包絡線が必ずしも一様な状態にはなっていない。
【0061】
しかしながら、
図8(b)に示すように、間引き処理部13で、変動するレベルの小さな線スペクトルを間引くことにより、符号長の短いM系列符号を測定信号に用いた場合であっても、線スペクトルの信号レベルのばらつきを抑制し、線スペクトルの低域側の包絡線を一様な状態にすることができる。
図8(b)では、3,000Hz以下の帯域において、信号レベルの変動が抑制されており、周波数特性が一様な状態となっている。しかしながら、3,000Hz以上の帯域では、線スペクトルが変動した状態が示されている。
【0062】
一方で、
図9(a)に示すように、
図8(b)に示した間引き処理された信号に対して、対数的な平均化処理を行うことにより、低中域はもちろんのこと、3,000Hz以上の高域成分においても線スペクトルの変動が抑えられている。
【0063】
図9(b)は、間引き処理を行わずに対数的な平均化処理を行った場合の周波数特性が示されている。
図9(b)に示すように、単に平均化処理を行っても、間引き処理を十分に行わなかった場合には、低中域のレベル変動を抑制することができず、周波数特性の測定精度が大きく劣化してしまう。このため、間引き処理部13による間引き処理により、低中域において変動する信号レベルの小さな線スペクトルを除くことができ、周波数特性の測定精度向上を図ることができると共に、その後に平均化処理を行うことによって、高域成分の線スペクトルの変動も効果的に抑制することが可能となる。
【0064】
なお、
図9(a)に示すように、間引き処理を行うことによって、高域成分の信号レベルが低減した状態となるが、高域増幅部15において高域成分の増幅処理を行うことによって、高域の減衰量を補完することが可能であり、測定信号の周波数測定を一様にフラットな状態とすることができる。
【0065】
図10(a)および(b)は、音場測定方式を用いた場合の周波数特性を示している。
図10(a)(b)では、スピーカ9から出力された測定音をマイクロフォン7で収音して周波数特性を測定しているため、音場(マイクロフォン7の設置位置における音場)の周波数特性が測定されることになる。
図10(a)では、間引き処理を行った後に平均化処理を行っているので、低中域におけるレベル変動が効果的に抑制されているが、
図10(b)では、間引き処理を行わずに平均化処理を行っているので、低中域におけるレベル変動を抑えることができず、音場における周波数特性の測定精度が大きく劣化した状態となっている。
【0066】
以上説明したように、本実施の形態に係る音場測定装置1では、間引き処理部13において、フーリエ変換処理により求められた線スペクトルの間引き処理を行う。この間引き処理により、M系列符号の符号長に対してフーリエ変換のサンプル長が非同期となることにより生ずる「変動するレベルの小さな線スペクトル」を取り除くことができ、周波数特性の測定精度を高めることが可能になる。
【0067】
特に、間引き処理部13において間引き処理を行う場合には、測定信号の符号長が2
n−1、フーリエ変換処理のサンプル長が2
mであるときに、k×2
m−n+1番目の以外の線スペクトルを間引くことにより、効果的に変動するレベルの小さな線スペクトルを取り除くことが可能となる。
【0068】
さらに、間引き処理を行うことにより、測定信号の符号長が短い場合であって、求められた周波数特性における線スペクトル(周波数スペクトル)の周波数間隔が粗い場合であっても、効果的に変動するレベルの小さな線スペクトルを取り除くことができる。このため、符号長の短い測定信号を用いた場合であっても、周波数特性の測定精度を十分に確保することができるとともに、周波数特性の測定に必要とされる測定時間や測定負担を低減し、処理に必要なメモリ量を効果的に減らすことが可能となる。
【0069】
また、対数的な平均化処理を行うことにより、全帯域において線スペクトルの変動を抑制することができ、音場の周波数特性の測定精度をさらに向上させることが可能となる。
【0070】
以上、本発明に係る音場測定装置、音場測定方法および音場測定プログラムについて、図面を用いて詳細に説明を行ったが、本発明に係る音場測定装置、音場測定方法および音場測定プログラムは、実施の形態で説明した例には限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0071】
例えば、上述した実施の形態では、フーリエ変換処理により求められた周波数特性の全ての帯域に対して間引き処理を行う場合を一例として示して説明した。しかしながら、全ての帯域に対して間引き処理を行うと、高域成分における信号レベルが低減する傾向があり、この低減した高域成分の信号レベルを増幅するために、高域増幅部15を設ける構成を採用した。
【0072】
しかしながら、間引き処理を行う帯域を、変動するレベルの小さな線スペクトルの影響が顕著な低中域だけに限定することにより、高域成分における信号レベルの増幅処理を行う必要性が低くなる。
【0073】
図11は、フーリエ変換処理により求められる周波数特性の低域成分にだけ間引き処理を行い、高域成分に対しては間引き処理を行わないことを特徴とする音場測定装置1aの概略構成を示した図である。
図11において、
図2に示した構成と同様の処理を行う箇所については同一の符号を附してある。
図2に示す音場測定装置1と、
図11に示す音場測定装置1aとを比較すると、
図11には、帯域分割処理部(帯域分割手段)20と、ゲイン部21と、合成処理部(合成手段)22とが設けられる一方で、
図2に示した高域増幅部15が設けられていない点で相違する。また、
図11における第1平均化処理部(第1平均化処理手段)14aおよび第2平均化処理部(第2平均化処理手段)14bは、周波数特性に対して平均化処理を行う点で、平均化処理部14と同様の処理を行う。
【0074】
図11に示す音場測定装置1aにおいて、帯域分割処理部20は、フーリエ変換部12のフーリエ変換処理により求められた周波数特性を、高域側成分からなる周波数特性と、低域側成分からなる周波数特性とに分割する役割を有している。帯域分割処理部20による分割処理では、フーリエ変換部12より入力される信号を、予め決定された所定の周波数を境にして、高域側成分の第1周波数特性の信号と、低域側成分の第2周波数特性の信号とに分割する(帯域分割ステップ、帯域分割機能)。この分割処理は、ハイパスフィルタおよびローパスフィルタ等のフィルタを用いる帯域分割ではなく、信号のデジタル処理等を用いることにより、境となる所定の周波数値で2つに分割処理される。従って、帯域分割処理部20で分割された第1周波数特性の信号は、所定の周波数値以上の周波数における信号レベルしか有しておらず、第2周波数特性の信号は、所定の周波数値以下の周波数における信号レベルしか有していない。
【0075】
このようにして分割された低域の第2周波数特性に対してのみ、間引き処理部13で間引き処理を施し、第2平均化処理部14bで平均化処理を行う(第2平均化処理ステップ、第2平均化処理機能)。このように低域の第2周波数特性に対してのみ間引き処理を行うことによって、間引き処理に伴って発生し得る高域成分の信号レベル低減を避けることが可能となる。なお、第2平均化処理部14bは、間引き処理された第2周波数特性に基づいて、所定の第2周波数間隔における信号レベルの平均値を、第2周波数間隔よりも短い周波数ずつ、例えば1サンプルずつ、シフトさせながら算出することにより、平均化処理された第2周波数特性を生成する。
【0076】
一方で、分割された高域の第1周波数特性に対しては、間引き処理を行うことなく第1平均化処理部14aで平均化処理を行う(第1平均化処理ステップ、第1平均化処理機能)。さらに、ゲイン部21において、第2周波数特性との信号レベル差を考慮したゲイン調整を行う。高域の周波数特性に対しては、間引き処理が行われないので、間引き処理による高域成分の信号レベル低減が発生せず、
図2に示すような高域増幅部15を設ける必要がなくなる。
【0077】
また、第1平均化処理部14aは、間引き処理されていない第1周波数特性の信号に基づいて、所定の第1周波数間隔における信号レベルの平均値を、第1周波数間隔よりも短い周波数ずつ、例えば1サンプルずつ、シフトさせながら算出することにより、平均化処理された第1周波数特性を生成する。
【0078】
そして、ゲイン部21によりゲイン調整された高域の第1周波数特性と、第2平均化処理部14bにより平均化処理された低域の第2周波数特性とは、合成処理部22において合成処理されて、全帯域の信号成分を備えた周波数特性が生成される(合成ステップ、合成機能)。合成処理部22では、低域側を第2周波数特性により構成され、高域側を第1周波数特性により構成される全帯域の周波数特性を、合成処理によって生成する。
【0079】
このようにして合成・生成された周波数特性は、低域成分に対してのみ間引き処理が行われて、変動するレベルの小さな線スペクトルが効果的に低減されているので、低域のノイズが抑制された周波数特性を実現することが可能となる。さらに、高域成分については間引き処理が行われていないので、平均化処理後に高域成分の増幅処理を行う必要がなくなり、十分な測定精度を確保した周波数特性を求めることが可能となる。
【0080】
また、本実施の形態に係る音場測定装置1では、
図1に示すようにROM3や記憶部5に記録される処理プログラムあるいはアプリケーションプログラムに基づいて、CPU2が
図2に示すような機能部の機能を実現する旨の説明を行ったが、各機能部の機能を実現するCPUは、1つには限定されない。各機能部の一部の機能を実現するための専用の処理手段(例えば、特定の処理専用のCPU,チップ等)を設置し、各専用の処理手段が少なくとも1以上の機能を実現する構成であってもよい。このように、複数の専用の処理手段を設定した場合であっても、1つのCPUが処理プログラム等に基づいて音場測定処理を行う場合であっても、間引き処理により変動するレベルの小さな線スペクトルを取り除くことによって、ノイズを効果的に低減することができ、符号長の短い測定信号を用いた場合であっても、精度良く音場環境の周波数特性を測定することが可能である。