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特開2015-76528昇降圧コンバータを多段接続した太陽電池部分影補償装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-76528(P2015-76528A)
(43)【公開日】2015年4月20日
(54)【発明の名称】昇降圧コンバータを多段接続した太陽電池部分影補償装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/042 20140101AFI20150324BHJP
【FI】
   H01L31/04 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【全頁数】41
(21)【出願番号】特願2013-212217(P2013-212217)
(22)【出願日】2013年10月9日
(71)【出願人】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】独立行政法人 宇宙航空研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100158469
【弁理士】
【氏名又は名称】大浦 博司
(72)【発明者】
【氏名】鵜野 将年
(72)【発明者】
【氏名】久木田 明夫
【テーマコード(参考)】
5F151
【Fターム(参考)】
5F151BA11
5F151JA08
5F151KA02
5F151KA03
5F151KA04
(57)【要約】
【課題】複数の太陽電池モジュールの直列接続により構成されるストリングにおいて、部分影が発生した場合に影モジュールに補償電流を供給してストリング全体としての出力電流を維持する、少数個のスイッチで構成可能な太陽電池調整システムを提供する。さらに、回路内に流れる補償電流の大きさを検出、制御するシステムを提供する。
【解決手段】SEPIC,Zeta,Cuk等のコンバータの出力側回路部分を太陽電池モジュールに多段接続してなり、コンバータ部分から影モジュールに優先的に補償電流を供給するシステムや、多段接続カレントダブラをストリングに接続し、ストリング電圧を交流電圧に変換するインバータからの交流出力で当該多段接続カレントダブラを動作させるシステムを提供する。また補償電流の大きさを検出、制御する、プルアップ抵抗器とダイオードとを用いるアナログ制御システムを提供する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列接続された第1から第n(nは2以上の整数)の太陽電池モジュールと、
前記第1から第nの太陽電池モジュールそれぞれに印加された電圧の合計電圧が入力される、入力回路と、
定常状態において、スイッチのオン、オフの時比率に応じて前記合計電圧を変換することにより生成される出力電圧を、前記第1から第nの太陽電池モジュールのうち最も電圧の低い1以上の太陽電池モジュールに対して出力するとともに、
前記最も電圧の低い1以上の太陽電池モジュールに対して優先的に電流を出力する
よう構成された、出力回路と
を備えた、太陽電池調整システム。
【請求項2】
前記入力回路は、
前記合計電圧が入力される入力キャパシタと、
前記入力キャパシタに対して直列接続されたインダクタと、
前記入力キャパシタと前記インダクタとの間に接続された前記スイッチと
を備え、
前記出力回路は、
ダイオードと該ダイオードのアノードに接続されたインダクタとからなり、前記第1から第nの太陽電池モジュールのそれぞれに対して並列に接続される、第1から第nのダイオード−インダクタ回路であって、それぞれのインダクタからダイオードへと向かう極性の電流を遮断しないよう直列接続された、該第1から第nのダイオード−インダクタ回路と、
該第1から第nのダイオード−インダクタ回路のそれぞれにおけるダイオードとインダクタの中間点と、前記入力回路における前記インダクタと前記スイッチとの中間点と、の間にそれぞれが接続された、第1から第nのキャパシタと、
を備える、請求項1に記載の太陽電池調整システム。
【請求項3】
前記入力回路は、
前記合計電圧が入力される入力キャパシタと、
前記入力キャパシタに対して直列接続された前記スイッチと、
前記入力キャパシタと前記スイッチとの間に接続されたインダクタと
を備え、
前記出力回路は、
ダイオードと該ダイオードのカソードに接続されたインダクタとからなり、前記第1から第nの太陽電池モジュールのそれぞれに対して並列に接続される、第1から第nのダイオード−インダクタ回路であって、それぞれのダイオードからインダクタへと向かう極性の電流を遮断しないよう直列接続された、該第1から第nのダイオード−インダクタ回路と、
該第1から第nのダイオード−インダクタ回路のそれぞれにおけるダイオードとインダクタの中間点と、前記入力回路における前記スイッチと前記インダクタとの中間点と、の間にそれぞれが接続された、第1から第nのキャパシタと、
を備える、請求項1に記載の太陽電池調整システム。
【請求項4】
前記入力回路は、入力キャパシタとインダクタとを備えた第1の閉回路と、エネルギー伝送キャパシタと一次巻線とを備えた第2の閉回路とを、前記スイッチを介して接続してなり、
前記出力回路は、
ダイオードと該ダイオードのカソードに接続されたインダクタとからなり、前記第1から第nの太陽電池モジュールのそれぞれに対して並列に接続される、第1から第nのダイオード−インダクタ回路であって、それぞれのダイオードからインダクタへと向かう極性の電流を遮断しないよう直列接続された、該第1から第nのダイオード−インダクタ回路と、
前記第1のダイオード−インダクタ回路のダイオードのアノードに一端が接続された二次巻線と、
該第1から第nのダイオード−インダクタ回路のそれぞれにおけるダイオードとインダクタの中間点と前記二次巻線の他端との間にそれぞれが接続された、第1から第nのキャパシタと、
を備え、前記一次巻線に印加される電圧の極性を反転させて前記二次巻線に印加するよう構成された、請求項1に記載の太陽電池調整システム。
【請求項5】
前記出力回路を介して前記第1から第nの太陽電池モジュールの各々に流れ込む補償電流のうち、最小の補償電流を検出する最小補償電流検出器と、
前記最小の補償電流と基準電流を比較する比較器と、
前記比較の結果に基づき、前記スイッチの時比率を制御する、時比率制御手段と
を備えた請求項1乃至4のいずれか一項に記載の太陽電池調整システム。
【請求項6】
前記最小補償電流検出器は、
電源と前記比較器との間に接続されたプルアップ抵抗器と、
前記第1から第nの太陽電池モジュールに流れ込む補償電流をそれぞれ検出する、第1から第nの補償電流センサと、
前記プルアップ抵抗器と前記第1から第nの補償電流センサのそれぞれの間に、該プルアップ抵抗器から該補償電流センサへと流れる電流を遮断しないようそれぞれ接続された、第1から第nの検出器内ダイオードと
を備え、
前記第1から第nの補償電流センサのうち最小の補償電流を検出した補償電流センサ、に接続された前記検出器内ダイオードが導通することにより、該最小の補償電流に対応する電圧が前記比較器に対して入力されるよう構成されている、請求項5に記載の太陽電池調整システム。
【請求項7】
直列接続された第1から第n(nは2以上の整数)の太陽電池モジュールと、
ダイオードと該ダイオードのアノードに接続されたインダクタとからなり、前記第1から第nの太陽電池モジュールのそれぞれに対して並列に接続される、第1から第nのダイオード−インダクタ回路であって、それぞれのインダクタからダイオードへと向かう極性の電流を遮断しないよう直列接続された、該第1から第nのダイオード−インダクタ回路と、
該第1から第nのダイオード−インダクタ回路のそれぞれにおけるダイオードとインダクタの中間点にそれぞれが接続された、第1から第nのキャパシタと、
を備えた第1の出力回路と、
ダイオードと該ダイオードのアノードに接続されたインダクタとからなり、前記第1から第nの太陽電池モジュールのそれぞれに対して並列に接続される、第n+1から第2nのダイオード−インダクタ回路であって、それぞれのインダクタからダイオードへと向かう極性の電流を遮断しないよう直列接続された、該第n+1から第2nのダイオード−インダクタ回路と、
該第n+1から第2nのダイオード−インダクタ回路のそれぞれにおけるダイオードとインダクタの中間点にそれぞれが接続された、第n+1から第2nのキャパシタと、
を備えた第2の出力回路と、
前記第1から第nの太陽電池モジュールそれぞれに印加された電圧の合計電圧の入力を受けて、該入力された合計電圧を交流電圧に変換し、該交流電圧をトランスにより変圧した上で出力する、容量性素子と誘導性素子とを備えたインバータと
を備え、
前記トランスの二次巻線の一端が前記第1の出力回路に接続され、該二次巻線の他端が前記第2の出力回路に接続された、太陽電池調整システム。
【請求項8】
直列接続された第1から第n(nは2以上の整数)の太陽電池モジュールと、
ダイオードと該ダイオードのカソードに接続されたインダクタとからなり、前記第1から第nの太陽電池モジュールのそれぞれに対して並列に接続される、第1から第nのダイオード−インダクタ回路であって、それぞれのダイオードからインダクタへと向かう極性の電流を遮断しないよう直列接続された、該第1から第nのダイオード−インダクタ回路と、
該第1から第nのダイオード−インダクタ回路のそれぞれにおけるダイオードとインダクタの中間点にそれぞれが接続された、第1から第nのキャパシタと、
を備えた第1の出力回路と、
ダイオードと該ダイオードのカソードに接続されたインダクタとからなり、前記第1から第nの太陽電池モジュールのそれぞれに対して並列に接続される、第n+1から第2nのダイオード−インダクタ回路であって、それぞれのダイオードからインダクタへと向かう極性の電流を遮断しないよう直列接続された、該第n+1から第2nのダイオード−インダクタ回路と、
該第n+1から第2nのダイオード−インダクタ回路のそれぞれにおけるダイオードとインダクタの中間点にそれぞれが接続された、第n+1から第2nのキャパシタと、
を備えた第2の出力回路と、
前記第1から第nの太陽電池モジュールそれぞれに印加された電圧の合計電圧の入力を受けて、該入力された合計電圧を交流電圧に変換し、該交流電圧をトランスにより変圧した上で出力する、容量性素子と誘導性素子とを備えたインバータと
を備え、
前記トランスの二次巻線の一端が前記第1の出力回路に接続され、該二次巻線の他端が前記第2の出力回路に接続された、太陽電池調整システム。
【請求項9】
前記インバータは、
第1のスイッチと第2のスイッチとを直列接続してなるスイッチ鎖と、
2つのインバータ内キャパシタを直列接続してなり、該スイッチ鎖に並列接続されたキャパシタ鎖と
を備え、
前記スイッチ鎖における2つのスイッチの中間点と、前記キャパシタ鎖における2つのインバータ内キャパシタの中間点と、の間に前記トランスの一次巻線が接続されることによりハーフブリッジ型インバータとして構成され、該一次巻線に印加される電圧を変圧して前記二次巻線に印加するよう構成されている、請求項7又は8に記載の太陽電池調整システム。
【請求項10】
前記インバータは、
第1のスイッチと第2のスイッチとを直列接続してなる第1のスイッチ鎖と、
第3のスイッチと第4のスイッチとを直列接続してなり、該第1のスイッチ鎖に並列接続された第2のスイッチ鎖と
を備え、
前記第1,第2のスイッチの中間点と、前記第3,第4のスイッチの中間点と、の間に前記トランスの一次巻線が接続されることによりフルブリッジ型インバータとして構成され、該一次巻線に印加される電圧を変圧して前記二次巻線に印加するよう構成されている、請求項7又は8に記載の太陽電池調整システム。
【請求項11】
前記第1,第2の出力回路を介して前記第1から第nの太陽電池モジュールの各々に流れ込む補償電流のうち、最小の補償電流を検出する最小補償電流検出器と、
前記最小の補償電流と基準電流を比較する比較器と、
前記比較の結果に基づき、前記インバータの出力電流を制御する、電流制御手段と
を備えた請求項7乃至10のいずれか一項に記載の太陽電池調整システム。
【請求項12】
前記最小補償電流検出器は、
電源と前記比較器との間に接続されたプルアップ抵抗器と、
前記第1から第nの太陽電池モジュールに流れ込む補償電流をそれぞれ検出する、第1から第nの補償電流センサと、
前記プルアップ抵抗器と前記第1から第nの補償電流センサのそれぞれの間に、該プルアップ抵抗器から該補償電流センサへと流れる電流を遮断しないようそれぞれ接続された、第1から第nの検出器内ダイオードと
を備え、
前記第1から第nの補償電流センサのうち最小の補償電流を検出した補償電流センサ、に接続された前記検出器内ダイオードが導通することにより、該最小の補償電流に対応する電圧が前記比較器に対して入力されるよう構成されている、請求項11に記載の太陽電池調整システム。
【請求項13】
電源に接続されたプルアップ抵抗器と、
第1から第n(nは2以上の整数)の回路要素に流れる電流をそれぞれ検出する、第1から第nの電流センサと、
前記プルアップ抵抗器と前記第1から第nの電流センサのそれぞれの間に、該プルアップ抵抗器から該電流センサへと流れる電流を遮断しないようそれぞれ接続された、第1から第nのダイオードと、
前記プルアップ抵抗器に接続された比較器と
を備え、
前記第1から第nの電流センサのうち最小の電流を検出した電流センサ、に接続された前記ダイオードが導通することにより、該最小の電流に対応する電圧が前記比較器に対して入力され、該比較器が該最小の電流と基準電流とを比較するよう構成されている、最小電流検出システム。
【請求項14】
電源に接続されたプルアップ抵抗器と、
第1から第n(nは2以上の整数)の回路要素に流れる電流をそれぞれ検出する、第1から第nの電流センサと、
前記プルアップ抵抗器と前記第1から第nの電流センサのそれぞれの間に、該プルアップ抵抗器から該電流センサへと流れる電流を遮断しないようそれぞれ接続された、第1から第nのダイオードと、
前記プルアップ抵抗器に接続された比較器と、
前記第1から第nの回路要素に流れる電流を制御する、電流制御手段と
を備え、
前記第1から第nの電流センサのうち最小の電流を検出した電流センサ、に接続された前記ダイオードが導通することにより、該最小の電流に対応する電圧が前記比較器に対して入力され、該比較器が該最小の電流と基準電流とを比較し、該比較の結果に基づき前記電流制御手段が前記第1から第nの回路要素に流れる電流を制御するよう構成されている、最小電流制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の太陽電池モジュールの直列接続により構成されるストリング(太陽電池モジュール鎖)において、部分影が発生した場合に各太陽電池モジュールの電気特性を疑似的に均等化する部分影補償装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、光起電力効果を利用して光エネルギーを電力に変換する電池であり、典型的には、p型半導体とn型半導体とを接合して電極等を取り付けてなる構造を有している。太陽電池は日照条件や温度に応じてその動作特性が変化するのであり、太陽電池に印加される電圧と太陽電池を流れる電流、及び太陽電池から発生する電力の関係は、一般的には図1に示すような動作特性曲線により表すことができる。図1の動作特性曲線が示すとおり、太陽電池は或る動作電圧にて最大電力を発生することができるのであり、太陽電池を用いた太陽光発電システムにおいて太陽光エネルギーを最大限に活用するためには、パワーコンディショナ等を用いて太陽電池モジュールを最大電力点(MPP:Maximum Power Point)で動作させる必要がある。
【0003】
複数枚の太陽電池モジュールを直列に接続し、ストリングを構成して使用する場合、一部の太陽電池モジュールに影がかかる(このような影を、以下「部分影」と呼ぶ。)ために各太陽電池モジュール特性にばらつきが生じ、影のかかった太陽電池モジュール(以下、「影モジュール」と呼ぶ。)が逆バイアスされてしまう可能性がある。逆バイアスを防止するべく、一般的には、ストリングを構成する各太陽電池モジュールと並列にバイパスダイオードを接続した上でストリングを使用することが多いが、部分影発生時においては影モジュールに接続されたバイパスダイオードが導通することにより影モジュールが電力を発生できない状態となってしまうため、利用可能な電力が大幅に低下してしまうことが知られている。また、部分影の発生状況に応じて、ストリング全体の動作特性曲線上に複数のMPPが発生するため(図2中のB点とC点)、パワーコンディショナがストリングを真のMPP(図2中のB点)とは異なる非最適点(図2中のC点)で動作させてしまう可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−028435号公報
【特許文献2】特開2004−047585号公報
【特許文献3】特開2013−105318号公報
【特許文献4】特開2011−228598号公報
【特許文献5】特開2012−186881号公報
【0005】
【非特許文献1】T. Shimizu, O, Hashimoto, and G. Kimura, “A novel high-performance utility-interactive photovoltaic inverter system,” IEEE Trans. Power Electron., Vol. 18, No. 2, pp.704-711, Mar. 2003.
【非特許文献2】T. Shimizu, M. Hirakata, T. Kamezawa, and H. Watanabe, “Generation control circuit for photovoltaic modules,” IEEE Trans. Power Electron., Vol. 16, No. 3, pp.293-300, May 2001.
【非特許文献3】S. Qin and R. C. N. Pilawa-Podgurski, “Sub-module differential power processing for photovoltaic applications,” IEEE Applied Power Electron. Conf. Expo., pp.101-108, 2013.
【非特許文献4】J. T. Stauth, M. D. Seeman, and K. Kesarwani, “Resonant switched-capacitor converters for sub-module distributed photovoltaic power management,” IEEE Trans. Power Electron., Vol. 28, No. 3, pp.1189-1198, Mar. 2013.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
部分影によるこれらの悪影響を低減する手段として、マイクロコンバータ/インバータによる太陽電池モジュール毎の個別制御、動作点走査を用いた真のMPP探索アルゴリズムを付加した制御の開発等が行われている。しかし、マイクロコンバータ/インバータ方式では太陽電池モジュール毎に電力変換器が必要となるため高コスト化する傾向にあり、一方、動作点走査を用いたMPP探索アルゴリズムは制御の複雑化や応答性低下、電力抽出率の低下など、依然として大きな課題を有している。その他多数の解決手法も提案されているが、膨大なデータ量に基づく演算や情報検出システムが必要となるためコストの増加が予想される。
【0007】
部分影による特性劣化を防止する各種の部分影補償装置が提案されている。部分影補償装置は影のかかっていない太陽電池モジュール(以下、「日照モジュール」と呼ぶ。)から影モジュールへと電力伝送を行うことで疑似的に全ての太陽電池モジュールの電気的特性を均等化できるため、部分影発生時においてもマイクロインバータやMPP探索アルゴリズム等を用いることなく、通常のパワーコンディショナによって各太陽電池モジュールをMPPで動作させることができる。部分影補償装置としては図3a,図3bに示す双方向昇降圧コンバータを用いた方式や図4に示すスイッチトキャパシタコンバータを用いた方式等が提案されている。これらの部分影補償装置の回路構成は基本的には直列接続された蓄電セル用の電圧均等化回路と同様である。これらの部分影補償装置の方式では、複数個のスイッチが必要なため太陽電池モジュールの直列接続数の増加に伴い回路構成が飛躍的に複雑化する傾向にあり、且つ、電力伝送が隣接する太陽電池モジュール間に限られているため、太陽電池モジュールの直列数が多い場合には複数の太陽電池モジュールを経由して電力伝送が行われる過程で損失が大きくなるという問題も生じる。
【0008】
太陽光発電システムには長期運転が求められるため、信頼性確保が重要である。また、太陽電池モジュールに電流リプルが重畳している場合、一般的には太陽電池モジュールの動作点が周期的にMPPから逸脱してしまう。信頼性向上のためには回路の簡素化が有効であり、リプル電流の低減はMPP動作の安定化のために必要不可欠である。以上の背景に鑑みれば、部分影補償装置としては、簡素な回路構成を備え、且つリプル電流出力が低い方式が望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題に鑑み、本発明は、直列接続された第1から第n(nは2以上の整数)の太陽電池モジュールと、第1から第nの太陽電池モジュールそれぞれに印加された電圧の合計電圧が入力される、入力回路と、定常状態において、スイッチのオン、オフの時比率に応じて合計電圧を変換することにより生成される出力電圧を、第1から第nの太陽電池モジュールのうち最も電圧の低い1以上の太陽電池モジュールに対して出力するとともに、最も電圧の低い1以上の太陽電池モジュールに対して優先的に電流を出力するよう構成された、出力回路とを備えた、太陽電池調整システムを提供する(本件第1発明)。
【0010】
本発明者はこれまでに、直列接続された蓄電セル用に昇降圧コンバータを多段接続した一石式均等化回路を発明してきた(特許文献5)。この方式は一石式、すなわち1つのスイッチで動作可能であり、その他は全て受動素子で回路を構成することができるため、各種従来のセル電圧均等化回路と比較して回路構成を大幅に簡素化することが可能であった。本発明者は、この方式の回路を太陽電池ストリングに用いることにより、日照モジュールから影モジュールへと補償電流を供給してストリングを高出力で動作させられること、すなわち上記方式の回路が部分影補償装置として機能することを発見した。
【0011】
本件第1発明においては、入力回路を、(i)上記合計電圧が入力される入力キャパシタと、(ii)入力キャパシタに対して直列接続されたインダクタと、(iii)入力キャパシタとインダクタとの間に接続されたスイッチとを備えるよう構成し、また出力回路を、(iv)ダイオードとダイオードのアノードに接続されたインダクタとからなり、第1から第nの太陽電池モジュールのそれぞれに対して並列に接続される、第1から第nのダイオード−インダクタ回路であって、それぞれのインダクタからダイオードへと向かう極性の電流を遮断しないよう直列接続された、第1から第nのダイオード−インダクタ回路と、(v)第1から第nのダイオード−インダクタ回路のそれぞれにおけるダイオードとインダクタの中間点と、入力回路におけるインダクタとスイッチとの中間点と、の間にそれぞれが接続された、第1から第nのキャパシタと、を備えるよう構成することができる。図8に示されるとおり、SEPICコンバータの出力側回路部分を第1から第nの太陽電池モジュールに対して多段接続することにより構成される、本発明の太陽電池調整システムの一例である。
【0012】
また本件第1発明においては、入力回路を、(i)上記合計電圧が入力される入力キャパシタと、(ii)入力キャパシタに対して直列接続されたスイッチと、(iii)入力キャパシタとスイッチとの間に接続されたインダクタとを備えるよう構成し、また出力回路を、(iv)ダイオードとダイオードのカソードに接続されたインダクタとからなり、第1から第nの太陽電池モジュールのそれぞれに対して並列に接続される、第1から第nのダイオード−インダクタ回路であって、それぞれのダイオードからインダクタへと向かう極性の電流を遮断しないよう直列接続された、第1から第nのダイオード−インダクタ回路と、(v)第1から第nのダイオード−インダクタ回路のそれぞれにおけるダイオードとインダクタの中間点と、入力回路におけるスイッチとインダクタとの中間点と、の間にそれぞれが接続された、第1から第nのキャパシタと、を備えるよう構成することができる。図9に示されるとおり、Zetaコンバータの出力側回路部分を第1から第nの太陽電池モジュールに対して多段接続することにより構成される、本発明の太陽電池調整システムの一例である。
【0013】
また本件第1発明においては、入力回路を、(i)入力キャパシタとインダクタとを備えた第1の閉回路と、(ii)エネルギー伝送キャパシタと一次巻線とを備えた第2の閉回路とを、スイッチを介して接続してなるよう構成し、出力回路を、(iii)ダイオードとダイオードのカソードに接続されたインダクタとからなり、第1から第nの太陽電池モジュールのそれぞれに対して並列に接続される、第1から第nのダイオード−インダクタ回路であって、それぞれのダイオードからインダクタへと向かう極性の電流を遮断しないよう直列接続された、第1から第nのダイオード−インダクタ回路と、(iv)第1のダイオード−インダクタ回路のダイオードのアノードに一端が接続された二次巻線と、(v)第1から第nのダイオード−インダクタ回路のそれぞれにおけるダイオードとインダクタの中間点と二次巻線の他端との間にそれぞれが接続された、第1から第nのキャパシタと、を備えるよう構成し、一次巻線に印加される電圧の極性を反転させて二次巻線に印加するよう構成することができる。図10に示されるとおり、Cukコンバータに基づいて構成される本発明の太陽電池調整システムの一例である。Cukコンバータは入出力の極性が入れ替わる「反転型コンバータ」であるため、上記のとおり一次、二次巻線間で電圧の極性を反転させる構成がとられている。
【0014】
本件第1発明の太陽電池調整システムには、(i)出力回路を介して第1から第nの太陽電池モジュールの各々に流れ込む補償電流のうち、最小の補償電流を検出する最小補償電流検出器と、(ii)最小の補償電流と基準電流を比較する比較器と、(iii)比較の結果に基づき、スイッチの時比率を制御する、時比率制御手段とを備えることが望ましい。
【0015】
既に述べたとおり、本発明者により発明された、1つのスイッチで動作可能な方式の均等化回路を太陽電池ストリングに用いることにより、日照モジュールから影モジュールへと補償電流を供給してストリングを高出力で動作させることができる。しかし、このようなセル電圧均等化回路は原理的に全てのセル電圧が自動的に均一となるよう動作するため、これらのセル電圧均等化回路を部分影補償装置として応用する場合には、後述のように適切に制御を行わなければ影モジュールのみならず日照モジュールに対しても過剰な補償電流が供給されて、部分影補償装置内で不要な電力損失を招く恐れがある。よって、各太陽電池モジュールの発電電力を有効活用するためには適切な制御手法とともに部分影補償装置を用いることが望ましい。上記のとおり、最小補償電流を検出し、これを基準電流と比較し、比較結果に基づきスイッチの時比率を制御する構成を用いれば、そのような損失の発生を抑えることができる。
【0016】
最小補償電流検出器を、(i)電源と比較器との間に接続されたプルアップ抵抗器と、(ii)第1から第nの太陽電池モジュールに流れ込む補償電流をそれぞれ検出する、第1から第nの補償電流センサと、(iii)プルアップ抵抗器と第1から第nの補償電流センサのそれぞれの間に、プルアップ抵抗器から補償電流センサへと流れる電流を遮断しないようそれぞれ接続された、第1から第nの検出器内ダイオードとを備えるよう構成し、更に、第1から第nの補償電流センサのうち最小の補償電流を検出した補償電流センサ、に接続された検出器内ダイオードが導通することにより、最小の補償電流に対応する電圧が比較器に対して入力されるよう構成することができる。最小補償電流を検出するための、アナログ回路を用いる構成の一例である。
【0017】
上記アナログ回路を用いる構成以外にも、例えば上述の第1から第nの補償電流センサから出力される、電流検出値を示す信号をA/Dコンバータを介してデジタル信号へと変換した上で比較器へと入力し、比較器で各補償電流センサの電流検出値を比較して最小電流を特定し、更に比較器において基準電流と当該最小電流を比較するような構成によっても、同様の機能を得ることができる(この場合、「最小補償電流検出器」は、第1から第nの補償電流センサ、A/Dコンバータ、及び比較器から構成される。基準電流と最小補償電流との比較を行う比較器と、各補償電流センサの電流検出値を比較する比較器は、同一のものであっても別個のものであってもよい。)。
【0018】
また本発明は、直列接続された第1から第n(nは2以上の整数)の太陽電池モジュールと、ダイオードとダイオードのアノードに接続されたインダクタとからなり、第1から第nの太陽電池モジュールのそれぞれに対して並列に接続される、第1から第nのダイオード−インダクタ回路であって、それぞれのインダクタからダイオードへと向かう極性の電流を遮断しないよう直列接続された、第1から第nのダイオード−インダクタ回路と、第1から第nのダイオード−インダクタ回路のそれぞれにおけるダイオードとインダクタの中間点にそれぞれが接続された、第1から第nのキャパシタと、を備えた第1の出力回路と、ダイオードとダイオードのアノードに接続されたインダクタとからなり、第1から第nの太陽電池モジュールのそれぞれに対して並列に接続される、第n+1から第2nのダイオード−インダクタ回路であって、それぞれのインダクタからダイオードへと向かう極性の電流を遮断しないよう直列接続された、第n+1から第2nのダイオード−インダクタ回路と、第n+1から第2nのダイオード−インダクタ回路のそれぞれにおけるダイオードとインダクタの中間点にそれぞれが接続された、第n+1から第2nのキャパシタと、を備えた第2の出力回路と、第1から第nの太陽電池モジュールそれぞれに印加された電圧の合計電圧の入力を受けて、入力された合計電圧を交流電圧に変換し、交流電圧をトランスにより変圧した上で出力する、容量性素子と誘導性素子とを備えたインバータとを備え、トランスの二次巻線の一端が第1の出力回路に接続され、二次巻線の他端が第2の出力回路に接続された、太陽電池調整システムを提供する(本件第2発明。図21図26に示すコモンカソード構成に対応。)。
【0019】
上述のセル電圧均等化回路ではセルの接続位置に応じて比較的大きなリプル電流が流れる傾向にある。上述のとおり、一般的に太陽電池の動作点は電流に大きく依存し大きなリプル電流が重畳した状態では動作電圧が不安的になる傾向があるため、太陽電池用として用いられる電力変換器(パワーコンディショナ等)は低リプル電流特性が好まれる。よって、セル電圧均等化回路を部分影補償装置として応用する場合には、低リプル電流特性を有するよう回路を変形することが望ましい。後述の実施例において詳しく説明するとおり、本件第2発明に従う太陽電池調整システムを用いれば、太陽電池モジュールに流れるリプル電流を低減させることが可能となる。
【0020】
本件第2発明の別の態様として、本発明は、直列接続された第1から第n(nは2以上の整数)の太陽電池モジュールと、ダイオードとダイオードのカソードに接続されたインダクタとからなり、第1から第nの太陽電池モジュールのそれぞれに対して並列に接続される、第1から第nのダイオード−インダクタ回路であって、それぞれのダイオードからインダクタへと向かう極性の電流を遮断しないよう直列接続された、第1から第nのダイオード−インダクタ回路と、第1から第nのダイオード−インダクタ回路のそれぞれにおけるダイオードとインダクタの中間点にそれぞれが接続された、第1から第nのキャパシタと、を備えた第1の出力回路と、ダイオードとダイオードのカソードに接続されたインダクタとからなり、第1から第nの太陽電池モジュールのそれぞれに対して並列に接続される、第n+1から第2nのダイオード−インダクタ回路であって、それぞれのダイオードからインダクタへと向かう極性の電流を遮断しないよう直列接続された、第n+1から第2nのダイオード−インダクタ回路と、第n+1から第2nのダイオード−インダクタ回路のそれぞれにおけるダイオードとインダクタの中間点にそれぞれが接続された、第n+1から第2nのキャパシタと、を備えた第2の出力回路と、第1から第nの太陽電池モジュールそれぞれに印加された電圧の合計電圧の入力を受けて、入力された合計電圧を交流電圧に変換し、交流電圧をトランスにより変圧した上で出力する、容量性素子と誘導性素子とを備えたインバータとを備え、トランスの二次巻線の一端が第1の出力回路に接続され、二次巻線の他端が第2の出力回路に接続された、太陽電池調整システムを提供する(図24図27に示すコモンアノード構成に対応。)。
【0021】
後述の実施例において説明するとおり、各ダイオード−インダクタ回路におけるダイオードとインダクタの並び順を交換しても、本件第2発明のシステムは同様の原理で動作可能である。
【0022】
本件第2発明において、上記インバータを、第1のスイッチと第2のスイッチとを直列接続してなるスイッチ鎖と、2つのインバータ内キャパシタを直列接続してなり、スイッチ鎖に並列接続されたキャパシタ鎖とを備えるよう構成し、更に、スイッチ鎖における2つのスイッチの中間点と、キャパシタ鎖における2つのインバータ内キャパシタの中間点と、の間にトランスの一次巻線を接続することによりハーフブリッジ型インバータとして構成し、一次巻線に印加される電圧を変圧して二次巻線に印加するよう構成することが可能である。
【0023】
あるいは、本件第2発明において、上記インバータを、第1のスイッチと第2のスイッチとを直列接続してなる第1のスイッチ鎖と、第3のスイッチと第4のスイッチとを直列接続してなり、第1のスイッチ鎖に並列接続された第2のスイッチ鎖とを備えるよう構成し、更に、第1,第2のスイッチの中間点と、第3,第4のスイッチの中間点と、の間にトランスの一次巻線を接続することによりフルブリッジ型インバータとして構成し、一次巻線に印加される電圧を変圧して二次巻線に印加するよう構成することが可能である。
【0024】
本件第2発明の太陽電池調整システムにおいては、(i)第1,第2の出力回路を介して第1から第nの太陽電池モジュールの各々に流れ込む補償電流のうち、最小の補償電流を検出する最小補償電流検出器と、(ii)最小の補償電流と基準電流を比較する比較器と、(iii)比較の結果に基づき、インバータの出力電流を制御する、電流制御手段とを備えることが望ましい。本件第1発明と同様に、本件第2発明の太陽電池調整システムにおいても、最小補償電流を検出し、これを基準電流と比較し、比較結果に基づき、インバータに含まれるスイッチの時比率を制御する等してインバータの出力電流を制御する構成を用いれば、過剰な補償電流が供給されることによる不要な電力損失を避けることができる。
【0025】
本件第2発明の太陽電池調整システムにおいても、最小補償電流検出器を、(i)電源と比較器との間に接続されたプルアップ抵抗器と、(ii)第1から第nの太陽電池モジュールに流れ込む補償電流をそれぞれ検出する、第1から第nの補償電流センサと、(iii)プルアップ抵抗器と前記第1から第nの補償電流センサのそれぞれの間に、プルアップ抵抗器から補償電流センサへと流れる電流を遮断しないようそれぞれ接続された、第1から第nの検出器内ダイオードとを備えるよう構成し、更に、第1から第nの補償電流センサのうち最小の補償電流を検出した補償電流センサ、に接続された検出器内ダイオードが導通することにより、最小の補償電流に対応する電圧が比較器に対して入力されるよう構成することができる。既に述べたとおり、このようなアナログ回路を用いる構成以外にも、例えば上述のとおり第1から第nの補償電流センサ、A/Dコンバータ、及び比較器から最小補償電流検出器を構成することが可能である。
【0026】
本発明は更に、電源に接続されたプルアップ抵抗器と、第1から第n(nは2以上の整数)の回路要素に流れる電流をそれぞれ検出する、第1から第nの電流センサと、プルアップ抵抗器と第1から第nの電流センサのそれぞれの間に、プルアップ抵抗器から電流センサへと流れる電流を遮断しないようそれぞれ接続された、第1から第nのダイオードと、プルアップ抵抗器に接続された比較器とを備え、第1から第nの電流センサのうち最小の電流を検出した電流センサ、に接続されたダイオードが導通することにより、最小の電流に対応する電圧が比較器に対して入力され、比較器が最小の電流と基準電流とを比較するよう構成されている、最小電流検出システムを提供する(本件第3発明)。
【0027】
このような最小電流検出システムは、上述の太陽電池モジュールに限らず、任意の回路要素に流れる電流を検出し、複数の回路要素に流れる電流のうち最小の電流を検出して基準電流と比較するために用いることができる。このような構成により、目的の回路要素以外の要素に流れる電流が基準以下であるかをチェックすること等が可能となる。
【0028】
本発明は更に本件第3発明の更なる態様として、電源に接続されたプルアップ抵抗器と、第1から第n(nは2以上の整数)の回路要素に流れる電流をそれぞれ検出する、第1から第nの電流センサと、プルアップ抵抗器と第1から第nの電流センサのそれぞれの間に、プルアップ抵抗器から電流センサへと流れる電流を遮断しないようそれぞれ接続された、第1から第nのダイオードと、プルアップ抵抗器に接続された比較器と、第1から第nの回路要素に流れる電流を制御する、電流制御手段とを備え、第1から第nの電流センサのうち最小の電流を検出した電流センサ、に接続されたダイオードが導通することにより、最小の電流に対応する電圧が比較器に対して入力され、比較器が最小の電流と基準電流とを比較し、比較の結果に基づき電流制御手段が第1から第nの回路要素に流れる電流を制御するよう構成されている、最小電流制御システムを提供する。
【0029】
複数の回路要素に流れる電流のうち最小の電流を検出して基準電流と比較するための構成に加え、比較結果に基づき回路要素に流れる電流を制御するための手段を備えた態様である。一例として、スイッチの時比率に応じて変化するコンバータの出力電圧を複数の回路要素(太陽電池モジュール、蓄電セル、抵抗器、インダクタ等、任意である。)へと印加する(すなわち時比率に応じて複数の回路要素に流れる電流が変化する)システムに対して上記最小電流制御システムを用いる場合、電流制御手段はスイッチ制御回路として構成可能であり、スイッチ制御回路を用いてスイッチの時比率を制御することにより、各回路要素に流れる電流を制御することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の太陽電池調整システムを用いれば、部分影発生時に日照モジュールから影モジュールへと補償電流を供給することにより太陽電池ストリング全体として高出力で動作することが可能となる。すなわち本発明の太陽電池調整システムは部分影補償装置として機能する。典型的な態様において、本発明による部分影補償装置の主回路は少数個のスイッチ(最低1個)で構成可能な回路構成を有しており、その他は受動部品のみで構成可能なため、各種従来の部分影補償装置と比較して回路構成を大幅に簡素化することが可能である。また、本発明の提案する最小電流検出システムや最小電流制御システムを用いることで、部分影補償装置から影モジュールに対して補償電流を供給しつつ、日照モジュールに対して供給される補償電流を最小化することにより部分影補償装置内で発生する電力損失を最小限に抑えることが可能である。この最小電流検出システム、制御システムは、太陽電池モジュールに限らず任意の回路要素に流れる電流を検出、制御するために利用可能である。また、本発明による部分影補償装置の出力部分を多段接続カレントダブラ構成とすることによって、各太陽電池モジュールに対して供給される電流のリプル成分を大幅に低減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】一般的な太陽電池の動作特性を表すグラフ。
図2】部分影が発生している場合、していない場合のそれぞれにおける、ストリング全体に印加される電圧VString、ストリング全体を流れる電流IString、及びストリング全体の出力電力Powerの関係を表すグラフ。
図3a】昇降圧コンバータを用いた従来方式の部分影補償装置の回路図。
図3b】マルチステージ昇降圧コンバータを用いた従来方式の部分影補償装置の回路図。
図4】スイッチトキャパシタコンバータを用いた従来の部分影補償装置の回路図。
図5】本発明の太陽電池調整システムの概念図。
図6】本発明の太陽電池調整システムとDC−DCコンバータとを併用した構成の回路図。
図7a】SEPICコンバータの回路図。
図7b】Zetaコンバータの回路図。
図7c】Cukコンバータの回路図。
図8】本発明の一実施形態である、SEPICコンバータを基礎とした太陽電池調整システムの回路図。
図9】本発明の一実施形態である、Zetaコンバータを基礎とした太陽電池調整システムの回路図。
図10】本発明の一実施形態である、Cukコンバータを基礎とした太陽電池調整システムの回路図。
図11図8の太陽電池調整システムを動作させたときの、各素子を流れる電流、及び各素子に印加される電圧の時間変化を表わす波形図。
図12a】太陽電池モジュールPV2に影がかかっている状態で図8の太陽電池調整システムを動作させたとき、スイッチのオン期間中において流れる電流の経路を示す図。
図12b】太陽電池モジュールPV2に影がかかっている状態で図8の太陽電池調整システムを動作させたとき、スイッチのオフ期間中において流れる電流の経路を示す図。
図13a】太陽電池モジュールPV2に影がかかっている状態で図9の太陽電池調整システムを動作させたとき、スイッチのオン期間中において流れる電流の経路を示す図。
図13b】太陽電池モジュールPV2に影がかかっている状態で図9の太陽電池調整システムを動作させたとき、スイッチのオフ期間中において流れる電流の経路を示す図。
図14a】太陽電池モジュールPV2に影がかかっている状態で図10の太陽電池調整システムを動作させたとき、スイッチのオン期間中において流れる電流の経路を示す図。
図14b】太陽電池モジュールPV2に影がかかっている状態で図10の太陽電池調整システムを動作させたとき、スイッチのオフ期間中において流れる電流の経路を示す図。
図15a】太陽電池モジュールPV1,PV2に影がかかっている状態で図8の太陽電池調整システムを動作させたとき、スイッチのオン期間中において流れる電流の経路を示す図。
図15b】太陽電池モジュールPV1,PV2に影がかかっている状態で図8の太陽電池調整システムを動作させたとき、スイッチのオフ期間中において流れる電流の経路を示す図。
図16a】部分影補償時における電流供給のイメージ図(過剰補償時)。
図16b】部分影補償時における電流供給のイメージ図(補償不足時)。
図16c】部分影補償時における電流供給のイメージ図(最適補償時)。
図17図16cに示される最適補償を実現するための、最小電流制御システムの構成図。
図18】実験に用いた各太陽電池モジュールの特性。
図19a】本発明の太陽電池調整システムを動作させたときの、太陽電池モジュールPV1の動作特性に関する実験結果。
図19b】本発明の太陽電池調整システムを動作させたときの、太陽電池モジュールPV2の動作特性に関する実験結果。
図19c】本発明の太陽電池調整システムを動作させたときの、太陽電池モジュールPV3の動作特性に関する実験結果。
図19d】本発明の太陽電池調整システムを動作させたときの、太陽電池モジュールPV4の動作特性に関する実験結果。
図20】本発明の太陽電池調整システムを用いた場合、用いなかった場合にそれぞれ測定した、ストリングの動作特性を示す実験結果。
図21】本発明の一実施形態である、ハーフブリッジインバータとコモンカソード多段接続カレントダブラを用いた太陽電池調整システムの回路図。
図22図21の太陽電池調整システムを動作させたときの、各素子を流れる電流、及び各素子に印加される電圧の時間変化を表わす波形図。
図23a】太陽電池モジュールPV2に影がかかっている状態で図21の太陽電池調整システムを動作させたとき、モード1の期間中において流れる電流の経路を示す図。
図23b】太陽電池モジュールPV2に影がかかっている状態で図21の太陽電池調整システムを動作させたとき、モード2の期間中において流れる電流の経路を示す図。
図23c】太陽電池モジュールPV2に影がかかっている状態で図21の太陽電池調整システムを動作させたとき、モード3の期間中において流れる電流の経路を示す図。
図23d】太陽電池モジュールPV2に影がかかっている状態で図21の太陽電池調整システムを動作させたとき、モード4の期間中において流れる電流の経路を示す図。
図24】本発明の一実施形態である、ハーフブリッジインバータとコモンアノード多段接続カレントダブラを用いた太陽電池調整システムの回路図。
図25a】太陽電池モジュールPV2に影がかかっている状態で図24の太陽電池調整システムを動作させたとき、モード1の期間中において流れる電流の経路を示す図。
図25b】太陽電池モジュールPV2に影がかかっている状態で図24の太陽電池調整システムを動作させたとき、モード2の期間中において流れる電流の経路を示す図。
図25c】太陽電池モジュールPV2に影がかかっている状態で図24の太陽電池調整システムを動作させたとき、モード3の期間中において流れる電流の経路を示す図。
図25d】太陽電池モジュールPV2に影がかかっている状態で図24の太陽電池調整システムを動作させたとき、モード4の期間中において流れる電流の経路を示す図。
図26】本発明の一実施形態である、フルブリッジインバータとコモンカソード多段接続カレントダブラを用いた太陽電池調整システムの回路図。
図27】本発明の一実施形態である、フルブリッジインバータとコモンアノード多段接続カレントダブラを用いた太陽電池調整システムの回路図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
これより図面を用いて、本発明に係る太陽電池調整システム、最小電流検出システム、及び最小電流制御システムを説明する。但し、本発明に係る各システムの構成は、各図面にて示される特定の具体的構成へと限定されるわけではなく、本発明の範囲内で適宜変更可能である。例えば、以下において各キャパシタは主に単独の蓄電素子であるとして説明するが、これらは充放電可能な任意の素子、複数の素子からなるモジュール、あるいはそれらモジュールを用いて構成される任意の装置であってもよい。各蓄電素子の容量や、ダイオード、インダクタ等、その他の回路素子の特性も、それぞれ異なっていてよい。また以下の実施例では4つの太陽電池モジュールによりストリング(太陽電池モジュール鎖)が構成されるが、4に限らず任意の直列数でストリングを構成できる。各スイッチについても、以下においてはMOSFETなどの半導体スイッチであるとして説明するが、任意の電子スイッチを用いることも可能である。
【0033】
太陽電池調整システムの概念
4直列の太陽電池モジュールPV1〜PV4を用いて構成される、本発明による太陽電池調整システムの概念図を図5に示す。図5中、VPV1〜VPV4,IPV1〜IPV4は、それぞれ太陽電池モジュールPV1〜PV4の電圧、及びそれらから出力される電流を表し、Ieq1〜Ieq4は、それぞれ太陽電池モジュールPV1〜PV4に対してPV疑似均等化器から供給される電流を表す。Istringは、太陽電池モジュールPV1〜PV4から構成されるストリング全体に流れる電流を表し、この電流が、ストリングに対して接続される負荷(不図示)へと出力される負荷電流ILoadと、PV疑似均等化器への入力電流Ieq-inとに寄与する。VStringはストリングの両端に印加される電圧である。
【0034】
PV疑似均等化器にはVPV1〜VPV4の合計電圧であるVStringが入力電圧として印加され、また太陽電池モジュールPV1〜PV4からの入力電流Ieq-inが供給される。各太陽電池モジュールは直列に接続されているため、全ての太陽電池モジュールPV1〜PV4が同一の大きさの電流IStringを流そうと動作する。しかし、影モジュールの供給可能な電流は日照モジュールのそれと比較して小さいため、多くの場合において影モジュールはIStringの電流を供給できなくなってしまう。
【0035】
太陽電池調整システムの利用態様の例としては、図6に示すとおり、DC−DCコンバータを介してストリングに負荷を接続する構成が挙げられる。図6に示すDC−DCコンバータは昇圧形コンバータであり、スイッチQDC-DCの時比率(スイッチング周期全体に対するオン期間の割合)をDとすれば、ストリングの出力電圧VStringと負荷電圧VLoadの間には、
【数1】
(1)
の関係が成り立つ。例えば定電圧負荷を用いる場合VLoadは一定となるため、検出回路によってストリング、あるいは各太陽電池モジュールの発生する電力を検出しつつ、DC−DCコンバータ制御回路によって時比率Dを制御することにより、最大電力が得られるよう各太陽電池モジュールの電圧を制御することができる。日照モジュールの動作特性曲線が図1のグラフで表される場合、日照モジュールから最大電力を得るためには図1中Vmpで示される電圧を印加するべきであるが、このとき日照モジュールに流れる電流は、多くの場合影モジュールが流しうる最大電流を超えている。したがって、日照モジュールの最大電力に対応する電流は影モジュールを流れることができず、一切の電流補償手段がないならば影モジュールから最大電力を得ることは不可能となる。
【0036】
本発明の太陽電池調整システムは、PV疑似均等化器を用いることにより、影モジュールも疑似的にIStringの電流を供給可能となるよう影モジュールに対して補償電流Ieqを供給する。例えば太陽電池モジュールPV2に影がかかっている場合、日照モジュールPV1,PV3,PV4はIStringの電流を供給可能なため、IPV1=IPV3=IPV4=IStringとなる一方、影モジュールPV2にはPV疑似均等化器から補償電流Ieq2が供給される。したがって、影モジュールPV2からは自己が供給する電流IPV2と補償電流Ieq2とが流れるため、
【数2】
(2)
で表される電流IStringを、ストリングが流しうることとなる。
【実施例1】
【0037】
本件第1発明に係る太陽電池調整システムは、一例において、図7a〜図7cに示すSEPIC,Zeta,Cukコンバータのいずれかの昇降圧コンバータを、後述のとおりストリングに対して多段接続することにより得られる。なお、Cukコンバータは入出力の極性が入れ替わる「反転型コンバータ」であるため、本件第1発明の太陽電池調整システムに応用する場合には図7cに示すようにトランスを用いた構成を基礎とする必要がある。
【0038】
太陽電池調整システムの構成
4直列の太陽電池モジュールPV1〜PV4に対して図7a〜図7cに示すSEPIC,Zeta,Cukコンバータのいずれかを多段接続することにより得られる、本発明の太陽電池調整システムの第1〜第3の実施形態を図8図10に示す。図5図6中のPV疑似均等化器が、図8図10中、太陽電池モジュールPV1〜PV4以外の回路要素により構成されている。C1〜C4はキャパシタ、D1〜D4はダイオード、L1〜L4はインダクタであり、Cinは入力キャパシタ、Qはスイッチ、Linはインダクタを表す。図10中のCaはエネルギー伝送キャパシタを表す。ここで、図8中、iLinはインダクタLinに流れる電流を表し、iL1〜iL4はインダクタL1〜L4にそれぞれ流れる電流を表し、iD1〜iD4はダイオードD1〜D4にそれぞれ流れる電流を表し、iC1〜iC4はキャパシタC1〜C4にそれぞれ流れる電流を表す。図9図10の回路中で各素子を流れる電流も同様の記号で表わす。
【0039】
図8図10の太陽電池調整システムは、それぞれ図7aに示したSEPICコンバータ、図7bに示したZetaコンバータ、及び図7cに示したCukコンバータの回路において、入力電源Vinをストリングとし、キャパシタC−ダイオードD−インダクタLoutにより構成される回路部分を各太陽電池モジュールPV1〜PV4に多段接続した構成に対応する。
【0040】
入力キャパシタCinは太陽電池モジュールPV1〜PV4に接続されており、太陽電池調整システムはPV1〜PV4の各太陽電池モジュールのうち、電圧の低いモジュールに対して優先的に補償電流を供給する。一般的に、太陽電池モジュールを直列に接続してストリングを構成して使用する場合、影モジュールの電圧はその他の日照モジュールよりも低くなるため、本発明の太陽電池調整システムを用いることで全モジュール(影モジュールも含む)から影モジュールへと電力を再分配し、影モジュールにおける電力不足分を補償することができる。
【0041】
具体的には、スイッチQのオン、オフを繰り返し切り替えることにより、太陽電池モジュールPV1〜PV4から入力キャパシタCinへと入力された電圧が変換され、後述のとおり太陽電池モジュールPV1〜PV4のうち最も電圧の低いモジュールに対して出力される。以下、図8図9の構成においては入力キャパシタCin、スイッチQ、及びインダクタLinから構成される回路を入力回路と呼び、図10の構成においては、入力キャパシタCin、スイッチQ、インダクタLin、エネルギー伝送キャパシタCa、及びこれに直列接続された一次巻線から構成される回路を入力回路と呼ぶ。また図8図9の構成においては、キャパシタC1〜C4、ダイオードD1〜D4、及びインダクタL1〜L4から構成される回路を出力回路と呼び、図10の構成においては、キャパシタC1〜C4、ダイオードD1〜D4、インダクタL1〜L4、及び二次巻線から構成される回路を出力回路と呼ぶ。以下、図8図10に示す太陽電池調整システムの詳細な動作原理について説明を行う。
【0042】
太陽電池調整システムの動作
まず、図8に示す太陽電池調整システムについて説明する。図6に示すとおり、DC−DCコンバータを介して負荷を接続する等して、ストリング全体に電圧が印加されており、太陽電池モジュールPV2にのみ影がかかっているとする。スイッチQのオン、オフを繰り返し切り替えることにより、太陽電池調整システムを動作させる。このとき各素子を流れる電流、及び各素子に印加される電圧の波形を図11に示し、スイッチQのオン期間中、オフ期間中にシステム内を流れる電流の経路を図12a,図12bに示す。なお、図11のグラフ中、vDSはスイッチQに印加される電圧を表す。
【0043】
まず、スイッチQがオンである期間中の電流について、図12aを用いて説明する。図12aは、各素子を経由して回路内を流れる電流の経路、及び極性(向き)を、矢印付きの実線及び破線で表したものである。なお、図12a中の破線はインダクタL1,L3,L4及びコンデンサC1,C3,C4を流れるリプル電流を表しているが、その向きはスイッチQのオン期間内、及びオフ期間内のそれぞれにおいて切り替わるものであるため(図11中、iLi及びiCiのグラフ参照。これらはi=2以外のインダクタLi,キャパシタCiに流れる電流を表す。)、これに対応して当該破線の両端に矢印が付されている。
【0044】
図12aに示されるとおり、太陽電池モジュールPV1〜PV4から流れ出した電流は入力キャパシタCinへと入力される。同時に入力キャパシタCinはインダクタLinに対して放電を行い、Linにエネルギーが蓄えられ、その電流iLinは直線的に増加する(図11中、iLinのグラフ参照)。さらに、キャパシタC2はインダクタL2に対して放電を行い、インダクタL2にエネルギーが蓄えられ、その電流iL2は直線的に増加する(図11中、iL2及びiC2のグラフ参照)。
【0045】
次に、スイッチQがオフである期間中の電流について、図12bを用いて説明する。図12bに示すとおり、スイッチQのオフ期間中、最低電圧の影モジュールPV2に対応するダイオードD2のみが導通されている。すなわち、スイッチQのオン期間中にインダクタLinが蓄えたエネルギーはスイッチQのオフ期間中に放出されるが、このエネルギーを担う出力電流は、キャパシタC2及びダイオードD2を経由して最も電圧の低い影モジュールPV2へと優先的に流れ込む。この電流は、インダクタLinがエネルギーを失うにつれて直線的に減少する(図11中、iLin,iC2及びiD2のグラフ参照)。また、インダクタL2からはダイオードD2を経由して影モジュールPV2へと電流が流れ込み、これにより、スイッチQのオン期間中にインダクタL2が蓄えたエネルギーは影モジュールPV2へと放出される。この電流も、インダクタL2がエネルギーを失うにつれて直線的に減少する(図11中、iL2のグラフ参照)。なお、スイッチQのオフ期間中においても、太陽電池モジュールPV1〜PV4から流れ出した電流は入力キャパシタCinへと入力されており、同時にインダクタL1,L3,L4及びキャパシタC1,C3,C4にはリプル電流が流れている(図11中、iLi及びiCiのグラフ参照)。
【0046】
スイッチQにおけるオン、オフのスイッチングを繰り返すことにより、上述した電流によって太陽電池モジュールPV1〜PV4から影モジュールPV2へと補償電流が供給され、ストリング全体として高出力が達成される。
【0047】
上述のとおり、スイッチングの1周期の間に各キャパシタには充放電電流が流れる。キャパシタC1,C3,C4に流れる電流はリプル電流成分のみであるため十分小さいが、キャパシタC2には比較的大きな充放電電流が流れる。スイッチQのオン期間中、キャパシタC2の電流は太陽電池モジュールPV1を経由して流れる一方、スイッチQのオフ期間中、キャパシタC2の電流は太陽電池モジュールPV1,PV2に流れる。このように、動作に伴い各モジュール(図12a,図12bの例の場合、太陽電池モジュールPV1とPV2)の電流は大きく変動するのであり、すなわち大きなリプル電流が流れることになる。一般的に、太陽電池の動作電圧は電流に大きく依存するため(図1)、モジュールに比較的大きなリプル電流が流れる場合その動作電圧が不安定になってしまう。この問題に関しては、後述の実施例2に示すシステムによって解決可能である。
【0048】
ここで、時比率Dを、スイッチQのスイッチング周期に対するスイッチのオン期間の割合として定義する(この定義より明らかなとおり、0≦D≦1である。)。太陽電池調整システムの定常状態において影モジュールPV2に出力される電圧は、入力キャパシタCinに印加される電圧VStringと上記時比率Dとに応じて決定される。以下、具体的に影モジュールPV2への出力電圧を導出する。
【0049】
太陽電池モジュールPV1〜PV4の電圧VPV1〜VPV4は、スイッチングの一周期に亘って一定であるとみなす。
このとき、上記VStringは、
【数3】
(3)
と表される。
【0050】
また、キャパシタC1〜C4の電圧の、スイッチング周期に関する時間平均をVC1〜VC4とする。定常状態においてインダクタLin,及びL1〜L4の電圧の時間平均は全てゼロとなるため、VString,VPV1〜VPV4,及びVC1〜VC4の間には以下の関係式が成立する。
【数4】
(4)
【0051】
さらに、上記各インダクタにおいて印加される電圧と時間の積の、上記スイッチング周期に亘る合計は定常状態においてゼロとなるため、以下の関係式が成立する(ダイオードの順方向電圧降下をVDとする。)。
【数5】
(5)
【0052】
上記(4),(5)式を用いれば、最低電圧の影モジュールPV2への出力電圧VPV2を以下のとおり表すことができる。
【数6】
(6)
【0053】
太陽電池調整システムの定常状態においては、上記(6)式に示されるとおり、太陽電池モジュールPV1〜PV4の電圧の合計電圧VStringを時比率Dに応じて変換してなる出力電圧が影モジュールPV2へと出力されるとともに、影モジュールPV2に対して優先的に電流が出力される。上記(6)式中にはストリング全体の電圧VStringと影モジュールPV2の電圧VPV2が含まれており、その他の個別の日照モジュールの電圧は含まれていない。これはすなわち、本発明の太陽電池調整システムの動作は主にストリング全体と影モジュールにより決定されることを示唆している。
【0054】
図9に示すZetaコンバータに基づくシステム、及び図10に示すCukコンバータに基づくシステムも同様の原理で動作し、太陽電池モジュールPV1〜PV4の合計電圧VStringを、時比率Dに応じて変換した上で影モジュールに対して出力しつつ、当該影モジュールに優先的に電流を出力する。
【0055】
図9のシステムを動作させたときにスイッチQのオン期間とオフ期間とでそれぞれ実現される電流経路を、図13a,図13bに示す。
【0056】
まず、スイッチQのオン期間中(図13a)、太陽電池モジュールPV1〜PV4から流れ出した電流は入力キャパシタCinへと入力される。同時に入力キャパシタCinはインダクタLinに対して放電を行い、Linにエネルギーが蓄えられ、その電流iLinは直線的に増加する。さらに、キャパシタC2はインダクタL2に対して放電を行い、インダクタL2にエネルギーが蓄えられ、その電流iL2は直線的に増加する。
【0057】
次に、スイッチQのオフ期間中(図13b)、最低電圧の影モジュールPV2に対応するダイオードD2が導通されている。スイッチQのオン期間中にインダクタLinが蓄えたエネルギーはスイッチQのオフ期間中に放出されるが、このエネルギーを担う出力電流はキャパシタC2を充電する。この電流は、インダクタLinがエネルギーを失うにつれて直線的に減少する。また、インダクタL2からはダイオードD2を経由して影モジュールPV2へと電流が流れ込み、これにより、スイッチQのオン期間中にインダクタL2が蓄えたエネルギーは影モジュールPV2へと放出される。この電流も、インダクタL2がエネルギーを失うにつれて直線的に減少する。なお、スイッチQのオフ期間中においても、太陽電池モジュールPV1〜PV4から流れ出した電流は入力キャパシタCinへと入力されており、同時にインダクタL1,L3,L4及びキャパシタC1,C3,C4にはリプル電流が流れている。
【0058】
ここで、定常状態において各インダクタの電圧の時間平均は全てゼロとなること、及び各インダクタにおいて印加される電圧と時間の積の、上記スイッチング周期に亘る合計は定常状態においてゼロとなることを利用して、上記(4),(5)と同様に以下の(7),(8)式が得られる。
【数7】
(7)
【数8】
(8)
【0059】
上記(7),(8)式を用いれば、最低電圧の影モジュールPV2への出力電圧VPV2を以下のとおり表すことができる。
【数9】
(9)
【0060】
図10のシステムを動作させたときにスイッチQのオン期間とオフ期間とでそれぞれ実現される電流経路を、図14a,図14bに示す。
【0061】
まず、スイッチQのオン期間中(図14a)、太陽電池モジュールPV1〜PV4から流れ出した電流は入力キャパシタCinへと入力される。同時に入力キャパシタCinはインダクタLinに対して放電を行い、Linにエネルギーが蓄えられ、その電流iLinは直線的に増加する。さらに、キャパシタCaは、一次巻線に対して電圧を出力し、これがトランスで変圧されて出力回路に印加される。出力回路において、キャパシタC2はインダクタL2に対して放電を行い、インダクタL2にエネルギーが蓄えられ、その電流iL2は直線的に増加する。
【0062】
次に、スイッチQのオフ期間中(図14b)、最低電圧の影モジュールPV2に対応するダイオードD2が導通されている。スイッチQのオン期間中にインダクタLinが蓄えたエネルギーはスイッチQのオフ期間中に放出されるが、このエネルギーを担う出力電流はキャパシタCaを充電する。この電流は、インダクタLinがエネルギーを失うにつれて直線的に減少する。また、インダクタL2からはダイオードD2を経由して影モジュールPV2へと電流が流れ込み、これにより、スイッチQのオン期間中にインダクタL2が蓄えたエネルギーは影モジュールPV2へと放出される。またトランス二次巻線からの電流によりキャパシタC2が充電される。なお、スイッチQのオフ期間中においても、太陽電池モジュールPV1〜PV4から流れ出した電流は入力キャパシタCinへと入力されており、同時にインダクタL1,L3,L4及びキャパシタC1,C3,C4にはリプル電流が流れている。
【0063】
ここで、定常状態において各インダクタの電圧の時間平均は全てゼロとなること、及び各インダクタにおいて印加される電圧と時間の積の、上記スイッチング周期に亘る合計は定常状態においてゼロとなることを利用して、上記(4),(5)と同様に以下の(10),(11)式が得られる。
【数10】
(10)
ここで、Nはトランスの一次巻線と二次巻線の比である。
【数11】
(11)
【0064】
上記(10),(11)式を用いれば、最低電圧の影モジュールPV2への出力電圧VPV2を以下のとおり表すことができる。
【数12】
(12)
【0065】
以上、SEPIC,Zeta,Cukコンバータを基礎とする太陽電池調整システムにおいて、太陽電池モジュールPV1〜PV4のうち、特にPV2に影がかかっている場合の動作を説明した。影がかかっているモジュールがPV1,PV3,PV4のいずれかである場合にも、同様の原理により影モジュールに補償電流を供給することができるし、また影モジュールが複数個ある場合にも、同様の原理により補償電流を供給することができる。
【0066】
一例として、太陽電池モジュールPV1,PV2に影がかかり、その電圧が同じ大きさになっており、且つ日照モジュールPV3,PV4の電圧は影モジュール電圧より高いときの、図8に示す太陽電池調整システムの動作を説明する。
【0067】
まず、スイッチQがオンである期間中(図15a)、太陽電池モジュールPV1〜PV4から流れ出した電流は入力キャパシタCinへと入力される。同時に入力キャパシタCinはインダクタLinに対して放電を行い、Linにエネルギーが蓄えられ、その電流iLinは直線的に増加する。さらに、キャパシタC1,C2はインダクタL1,L2に対してそれぞれ放電を行い、インダクタL1,L2にエネルギーが蓄えられ、その電流iL1,iL2は直線的に増加する。
【0068】
次に、スイッチQがオフである期間中(図15b)、最低電圧の影モジュールPV1,PV2に対応するダイオードD1,D2が導通されている。すなわち、スイッチQのオン期間中にインダクタLinが蓄えたエネルギーはスイッチQのオフ期間中に放出されるが、このエネルギーを担う出力電流は、キャパシタC1及びダイオードD1を経由して最も電圧の低い影モジュールPV1へと、及び、キャパシタC2及びダイオードD2を経由して最も電圧の低い影モジュールPV2へと、優先的に流れ込む。この電流は、インダクタLinがエネルギーを失うにつれて直線的に減少する。また、インダクタL1,L2からは、それぞれダイオードD1,D2を経由して影モジュールPV1,PV2へと電流が流れ込み、これにより、スイッチQのオン期間中にインダクタL1,L2が蓄えたエネルギーは影モジュールPV1,PV2へと放出される。この電流も、インダクタL1,L2がエネルギーを失うにつれて直線的に減少する。
【0069】
この場合、定常状態における各素子電圧間の関係は、上記(3),(4)式、及び以下の(13)式で表される。
【数13】
(13)
これらを解くことにより、以下の(14)式が得られる。
【数14】
(14)
【0070】
すなわち、太陽電池モジュールPV2のみに影がかかっていたときと同様に、影モジュールPV1,PV2には、VStringが変換されてなる出力電圧{D/(1−D)}VString−VDが出力されるのであり、このような状態において影モジュールPV1,PV2へと優先的に補償電流が供給される。
【0071】
複数の影モジュールに対しても補償電流を供給できる点は、図9図10の太陽電池調整システムにおいても同様である。また、ここではSEPIC,Zeta,Cukコンバータを基礎とする構成について説明したが、本発明の太陽電池調整システムはこれらを基礎とする構成に限られるわけではなく、任意のコンバータの出力回路部分を多段接続することにより構成可能である。
【0072】
最小電流の検出及び制御システム
以上、本件第1発明の太陽電池調整システムの動作を理論的に説明した。上記説明においては最低電圧の影モジュールに対して優先的に供給される補償電流のみを考えたが、実際にはこれ以外のモジュールに供給される補償電流もゼロとはならない場合がある。太陽電池モジュールPV1〜PV4に供給される補償電流の大きさは、スイッチの時比率を制御することにより全体的に調整することができる。以下、補償電流を検出してその大きさを調整するためのシステムを説明する。
【0073】
図16a〜図16cに、本発明の太陽電池調整システム(後述の実施例2において説明するシステムを含む。)を用いた際における補償電流の供給イメージを示す。ここでは例として、4直列の太陽電池モジュールのPV1〜PV4のうちPV1とPV2に影が掛かっており、PV1の方がより広範囲に渡って影が掛かっているものとする。また、ここでは太陽電池調整システムは各太陽電池モジュールに対して等しい電圧Veを出力するものとして等価的に描かれている。
【0074】
図16aは過剰補償時における補償電流の供給イメージである。PV1とPV2には影の程度に応じて補償電流Ieq1とIeq2が供給される一方で、日照モジュールであるPV3とPV4に対しても比較的大きな補償電流Ieq3とIeq4が供給されている状態である。PV3とPV4は補償される必要性が無いにも関わらず補償電流が供給されているため、これらの補償電流分に起因した不要な電力変換損失が部分影補償装置の内部で発生することになる。
【0075】
これに対して、図16bは補償不足時における補償電流の供給イメージである。日照モジュールであるPV3とPV4に対しては補償電流が供給されないため、図16aの過剰補償時のような不要な電力損失は発生しない。しかし、本来補償を必要としているPV2に補償電流が供給されておらず、更にはPV1に対する補償電流も不十分であるため、部分影による影響を完全に補償することが出来ない。
【0076】
図16cは最適補償時における補償電流の供給イメージである。PV1とPV2には影の程度に応じた補償電流Ieq1とIeq2を供給する一方、日照モジュールであるPV3とPV4に対しては微小な補償電流Ieq3とIeq4のみが供給されている状態である。最適補償時においては電圧の高い日照モジュールに対しても補償電流が若干供給されている状態であるため、電圧の低い影モジュールに対しては十分な補償電流が常に供給されていることになる。また、日照モジュールに供給される補償電流は微小なため、これらの補償電流に起因する不要な電力変換損失を最小限に抑えることが可能である。
【0077】
図16cの最適補償を実現するために用いることができる、最小電流制御システムの一例を図17に示す。最小電流制御システムは、電源Vccに接続されたプルアップ抵抗器と、太陽電池モジュールPV1〜PV4に流れる補償電流をそれぞれ検出する、第1から第4の電流センサと、プルアップ抵抗器と第1から第4の電流センサのそれぞれの間に、プルアップ抵抗器から電流センサへと流れる電流を遮断しないようそれぞれ接続された、第1から第4のダイオードと、プルアップ抵抗器に接続されたエラーアンプ(比較器)と、太陽電池調整システムのスイッチQの時比率を制御して太陽電池モジュールPV1〜PV4に流れる補償電流を制御する、時比率制御回路(電流制御手段)と、を備える。
【0078】
以下、最小電流制御システムの動作を説明する。図8の太陽電池調整システムを例にとれば、第1から第4の電流センサは、ダイオードD1〜D4に接続される等して、それぞれ太陽電池モジュールPV1〜PV4に流れる補償電流Ieq1〜Ieq4を検出する。各電流センサは、検出された電流値を電圧に変換(例えば1Aを1Vに変換する。)して出力する。太陽電池モジュールPV1〜PV4に流れる補償電流が、それぞれ1.3A,0.6A,0.1A,0.1Aであったならば、第1から第4の電流センサは、それぞれ1.3V,0.6V,0.1V,0.1Vの電圧を出力する。このとき、最低電圧を出力する第3,第4の電流センサと接続された第3,第4のダイオードが導通する。電源Vccからプルアップ抵抗器を経て導通したダイオードに流れ込んだ電流は、電流センサと当該ダイオードとの間に接続された抵抗器へと流れ込む。なお、第1〜第4の電流センサがシンクとして動作する場合には、これら抵抗器は不要である。
【0079】
0.1Aの最低補償電流を検出して0.1Vの電圧を出力した第3,第4の電流センサにより、電源Vccからプルアップ抵抗器を介してエラーアンプへと至る経路には0.1Vのバイアスがかかる。したがって、電源Vccの電圧が5.0Vであったとすれば、プルアップ抵抗器の電圧降下は4.9Vとなる。この電圧降下に対応する信号(すなわち、補償電流Ieq1〜Ieq4のうち最小補償電流値Ieq-min=0.1Aを示す信号)がエラーアンプに入力される。
【0080】
エラーアンプは最小補償電流Ieq-minと、外部から入力された基準電流Irefとの比較に基づいて誤差信号を出力し、その誤差信号が時比率制御回路に入力される。時比率制御回路は、Iref−Ieq-minで表わされる誤差が負であれば、補償電流を全体的に小さくするべく、図8図10のスイッチQの時比率を下げたり(オン期間の割合がより小さいパルス幅変調波を発生)、誤差が正であれば補償電流を全体的に大きくするべくスイッチQの時比率を上げたり(オン期間の割合がより大きいパルス幅変調波を発生)して、誤差をゼロに近づける。以上の動作を繰り返し行うことにより、太陽電池調整システムの動作状態を図16cの最適補償状態に近づけることができる。
【0081】
この最小電流制御システムを用いて本発明の太陽電池調整システムを動作させるとIeq-min=Irefとなるよう動作するため、上述のように太陽電池調整システム内の不要な電力変換損失を最小限に抑えるためにはIref≒0と設定することが望ましい。なお、ここでは、アナログ回路を用いて最小補償電流Ieq-minを検出して制御を行う回路について説明を行ったが、デジタル制御を用いた場合でも容易に同様の制御を実現可能である。例えば、第1から第4の電流センサからの電圧信号を、A/Dコンバータ(不図示)を介してデジタル信号に変換してから第2の比較器(不図示)に入力し、第2の比較器で電流値の比較を行って最低補償電流Ieq-minを特定し、最低補償電流Ieq-minを示す信号をエラーアンプに入力してもよい。
【0082】
なお、上記最小電流制御システムは、本発明の太陽電池調整システムに限らず、複数の回路要素を備えた任意の回路に対して適用可能である。太陽電池モジュールに限らず、任意の複数の回路要素のそれぞれに、図17と同様の、あるいは上記デジタル制御を用いたシステムを接続すれば(図17において、各電流センサを、太陽電池モジュールPV1〜PV4に限らず任意の回路要素に接続する。なお、回路要素の数は4以外の任意の数であってよいし、各回路要素が同種の要素である必要はない。)、回路要素にそれぞれ流れる電流のうち最小の電流を特定して基準電流と比較し、比較結果に基づいて、回路要素に流れる電流を制御することができる。ここにおける「回路要素に流れる電流の制御」とは、上述の例と同様に回路内に含まれるスイッチの時比率制御であってもよいし、例えば各回路要素に可変抵抗が接続されている場合には、任意の制御回路(不図示。「電流制御手段」の一例。)を介してその抵抗値を変更することであってもよい。また、本発明の最小電流制御システムから、時比率制御回路等の電流制御手段を除いたシステムも、本発明の最小電流検出システムとして単独で動作可能である。
【0083】
本発明の太陽電池調整システムを用いた実験
図8に示した本発明の太陽電池調整システムを用いた実験結果の例を、図18及び図19a〜図19dに示す。なお、実験に用いた入力キャパシタCinの容量は20μF,インダクタLinのインダクタンスは100μH,インダクタL1〜L4のインダクタンスは33μH,キャパシタC1〜C4の容量は20μF,スイッチQのオン抵抗は39mΩ,ダイオードD1〜D4の順方向電圧降下は0.65Vであり、スイッチQのスイッチング周波数は100kHzとした。また図17の最小電流制御システムも動作させ、基準電流Iref=100mAとした。
【0084】
実験時は図16a〜図16cと同様、太陽電池モジュールPV1とPV2に影が発生した状況を想定して、各モジュール特性を図18のように設定して実験を行った。なお、太陽電池モジュールPV1〜PV4としては太陽電池アレイ・シミュレータ(Agilent Technologies社製、E4350B)を用いた。図19a〜図19dに、補償時における各モジュールの個別の特性を示す。日照モジュールPV3,PV4には100mA程度の微小な補償電流(Ieq3とIeq4)が流れている一方(図19c,図19d)、影モジュールPV1,PV2には特性に応じて相当量の補償電流(Ieq1は1.2A程度、Ieq2は0.5A程度)が流れており(図19a,図19b)、図16cで説明した最適補償の状態が実現されていることが分かる。モジュール単体の特性(図18の特性および図19a〜図19d中の破線)は各モジュールで大きく異なるのに対して、補償時における各モジュールの、VPViに対するILoadの特性は等価的にほぼ同一となっていることがわかる。
【0085】
図20は、本発明の太陽電池調整システムの有無によるストリング特性を比較したものである。太陽電池調整システムを用いない場合(破線グラフ。太陽電池モジュールPV1〜PV4に対してバイパスダイオードを並列接続した場合)、3つのMPPが存在しており抽出可能な最大電力は約40W(VString≒30Vの時)である。これに対して、太陽電池調整システムを用いた場合(実線グラフ)、MPPは1つのみであり、最大電力も約50W(VString≒38Vの時)と大幅に向上している。このように、本発明の太陽電池調整システムを用いることで複数のMPPの発生を防止しつつ、抽出可能な最大電力も大幅に向上させることが可能である。
【実施例2】
【0086】
太陽電池調整システムの構成
実施例1で説明した通り、図8図10に示す太陽電池調整システムでは、その動作時において太陽電池モジュールに比較的大きなリプル電流が発生するため、それに伴い太陽電池の動作電圧が不安的になる恐れがある。これに対し、図21に示す回路構成の太陽電池調整システムを用いれば、部分影を補償しつつ、動作時において各太陽電池モジュールに流れるリプル電流を大幅に低減することができる。
【0087】
図21の太陽電池調整システムにおいて、C1a〜C4a,C1b〜C4bはキャパシタ、L1a〜L4a,L1b〜L4bはインダクタ、D1a〜D4a,D1b〜D4bはダイオードを表し、これらからなり、且つトランスの二次巻線に接続された多段接続カレントダブラが太陽電池モジュールPV1〜PV4に接続されている。多段接続カレントダブラは図8に示したC−D−Lの多段接続回路を各モジュールに対して対称に配置したものと等価である。なお、R−Biasは、各キャパシタの電圧値が不定値になるのを防止するためのバイアス抵抗である。また図21の太陽電池調整システムは、スイッチQa,Qb,ダイオードDa,Db,キャパシタCa,Cb,Cbk,インダクタLkg(トランスの漏洩インダクタンスを表している。)を備え、トランスの一次巻線に接続されたハーフブリッジインバータを備えている。ハーフブリッジインバータは、太陽電池モジュールPV1〜PV4の合計電圧の入力を受け、スイッチQa,Qbのオンオフを交互に切り替えることにより矩形状の交流電圧を発生させ、トランスを介して変圧された交流電圧を多段接続カレントダブラに出力する。ここで、図21中、iL1a〜iL4a,iL1b〜iL4bはインダクタL1a〜L4a,L1b〜L4bにそれぞれ流れる電流を表し、iD1a〜iD4a,iD1b〜iD4bはダイオードD1a〜D4a,D1b〜D4bにそれぞれ流れる電流を表し、iC1a〜iC4a,iC1b〜iC4bはキャパシタC1a〜C4a,C1b〜C4bにそれぞれ流れる電流を表し、Ieq-inはストリングからハーフブリッジインバータに入力される電流を表し、iQa,iQbはスイッチQa,Qbにそれぞれ流れる電流を表し、vDSa,vDSbはスイッチQa,Qbにそれぞれ印加される電圧を表し、iLkgはインダクタLkgに流れる電流を表し、vPは一次巻線に印加される電圧を表す。なお、図21は、対称に配置されたC−D−L回路におけるダイオードDがカソードを共通に接続された(すなわち、ダイオードD1a,D1bのカソード同士、ダイオードD2a,D2bのカソード同士、ダイオードD3a,D3bのカソード同士、ダイオードD4a,D4bのカソード同士がそれぞれ共通接続された)コモンカソードの形態を示しているが、後述のコモンアノードの形態(図24)も同様に動作可能である。
【0088】
太陽電池調整システムの動作
太陽電池モジュールPV2に影がかかっているときに、スイッチQa,Qbのオン、オフを交互に繰り返し切り替えることにより図21の太陽電池調整システムを動作させた場合における、各素子を流れる電流、及び各素子に印加される電圧の波形を図22に示し、動作中に実現されるモード1〜4の期間中にそれぞれシステム内を流れる電流の経路を図23a〜図23dに示す。なお、図22のグラフ中、vGSa,vGSbは、それぞれスイッチQa,Qbのゲート電圧を表す。
【0089】
ハーフブリッジインバータにおいて、図22中、vGSのグラフが示すとおりスイッチQa,Qbが交互に導通することで、vPのグラフが示すとおりトランス一次巻線に矩形波交流電圧が印加される。vGSのグラフに示される4つの動作モードに応じてトランス二次巻線の電圧は変動し、その電圧により多段接続カレントダブラ回路が駆動され、図23a(モード1)〜図23d(モード4)に示すとおり回路内に電流が流れる。図23a〜図23d中では、リプル電流成分のみが流れる電流経路は破線で示している。また、同一モード期間中に向きが切り替わる電流の経路には、両端に矢印を付した。
【0090】
便宜上、まずモード2の動作を説明する(図23b)。モード2の期間中においては、スイッチQaがオンとされ、スイッチQbがオフとされており、キャパシタCbk,インダクタLkg,一次巻線に対して、一定の正電圧(図21中、vPを示す矢印の向きに上昇する電圧。図22中、vPのグラフ参照。)が出力される。これにより、インダクタLkgを流れる電流は直線的に増加する(図22中、iLkgのグラフ参照。)。一次巻線に印加される電圧はトランスにより変圧されて多段接続カレントダブラ回路を駆動させる。トランスを介して印加される電圧によりキャパシタC2a,ダイオードD2aを介して影モジュールPV2に補償電流が流れ込み、この電流はインダクタL2b,キャパシタC2bへと流れる。これらの電流も、上記正電圧により直線的に増加する(図22中、対応するグラフ参照。)。また影モジュールPV2には、インダクタL2aがエネルギーを放出することによる補償電流も供給される。この電流は、インダクタL2aがエネルギーを失うにつれて減少する(図22中、iL2aのグラフ参照。)。太陽電池調整システムの動作によりモード2の期間中に影モジュールPV2に流れる電流はiL2aとiL2bの和に相当する。多段接続カレントダブラ内で影モジュールPV2に対応するインダクタL2a,L2b以外のインダクタに流れる電流はリプル電流成分のみである。
【0091】
スイッチQaをターンオフすると同時にQaを流れていた電流はスイッチQbの逆並列ダイオードであるダイオードDbへと転流し、動作はモード3へと移行する(図23c)。モード3の開始時において、ダイオードDbには順方向に電流が流れ、キャパシタCbk,インダクタLkg,一次巻線に流れる電流もモード2の期間中と同じ向きであるが、キャパシタCbからの電圧により、それらの電流は直線的に低下していく。iLkgの極性が反転する前にQbに対してゲート電圧vGSbを印加しておくことで(図22中、vGSbのグラフ参照。)、iLkgの極性が反転すると同時にスイッチQbはゼロ電圧でターンオンされる。モード3におけるトランスの巻線電圧は0であり、多段接続カレントダブラ内ではインダクタL2a,L2bが影モジュールPV2へと補償電流を供給することに伴ってダイオードD2a,D2bが導通する。インダクタL2a,L2bがエネルギーを放出するに従い、iL2a,iL2bは低下する(図22中、iL2a,iL2bのグラフ参照。)。モード3の期間中においてもモード2の期間中と同様、太陽電池調整システムから影モジュールPV2に供給される補償電流はiL2aとiL2bの和に相当する。ダイオードD2aの電流iD2aが0になると同時に動作は次のモード4へと移行する。
【0092】
モード4の期間中(図23d)においては、スイッチQaがオフとされ、スイッチQbがオンとされており、キャパシタCbk,インダクタLkg,一次巻線に対して、一定の負電圧(図21中、vPを示す矢印の向きに上昇する電圧を正としている。図22中、vPのグラフ参照。)が出力される。これにより、インダクタLkgを流れる電流は直線的に低下(絶対値は増加)する(図22中、iLkgのグラフ参照。)。一次巻線に印加される電圧はトランスにより変圧されて多段接続カレントダブラ回路を駆動させる。トランスを介して印加される電圧によりキャパシタC2b,ダイオードD2bを介して影モジュールPV2に補償電流が流れ込み、この電流はインダクタL2a,キャパシタC2aへと流れる。これらの電流の絶対値も、上記負電圧により直線的に増加する(図22中、対応するグラフ参照。)。また影モジュールPV2には、インダクタL2bがエネルギーを放出することによる補償電流も供給される。この電流は、インダクタL2bがエネルギーを失うにつれて減少する(図22中、iL2bのグラフ参照。)。太陽電池調整システムの動作によりモード4の期間中に影モジュールPV2に流れる電流はiL2aとiL2bの和に相当する。多段接続カレントダブラ内で影モジュールPV2に対応するインダクタL2a,L2b以外のインダクタに流れる電流はリプル電流成分のみである。
【0093】
スイッチQbをターンオフすると同時にQbを流れていた電流はスイッチQaの逆並列ダイオードであるダイオードDaへと転流し、動作はモード1へと移行する(図23a)。モード1の開始時において、ダイオードDaには順方向に電流が流れ、キャパシタCbk,インダクタLkg,一次巻線に流れる電流もモード4の期間中と同じ向きであるが、キャパシタCaからの電圧により、それらの電流は直線的に上昇していく(絶対値は低下)。iLkgの極性が反転する前にQaに対してゲート電圧vGSaを印加しておくことで(図22中、vGSaのグラフ参照。)、iLkgの極性が反転すると同時にスイッチQaはゼロ電圧でターンオンされる。モード1におけるトランスの巻線電圧は0であり、多段接続カレントダブラ内ではインダクタL2a,L2bが影モジュールPV2へと補償電流を供給することに伴ってダイオードD2a,D2bが導通する。インダクタL2a,L2bがエネルギーを放出するに従い、iL2a,iL2bは低下する(図22中、iL2a,iL2bのグラフ参照。)。モード1の期間中においてもモード4の期間中と同様、太陽電池調整システムから影モジュールPV2に供給される補償電流はiL2aとiL2bの和に相当する。ダイオードD2bの電流iD2bが0になると同時に動作は次のモード2へと移行する。以降、同様に各モードが経時的に実現される。
【0094】
既に述べたとおり、図8図10の回路構成では動作モードに応じてキャパシタの充放電電流が異なる電流経路で太陽電池モジュールに流れるため、各モジュールは比較的大きなリプル電流に晒されてしまい動作電圧が不安定になる恐れがある。それに対して、図21の回路構成を用いた際には影モジュールPV2に対して流れる電流は常にインダクタL2a,L2bの電流の和と等しく、図23a〜図23dの電流経路からも分かるとおりキャパシタC2a,C2bに対する充放電電流はPV2以外のモジュールに対しては流れない。よって、図8図10の実施形態と比較して動作時に各モジュールに流れるリプル電流を大幅に低減することが可能となる。
【0095】
図21ではハーフブリッジインバータを用いてコモンカソード形態の多段接続カレントダブラ回路を駆動させる回路構成について説明したが、図24に示すとおり、ダイオードD1a,D1bのアノード同士、ダイオードD2a,D2bのアノード同士、ダイオードD3a,D3bのアノード同士、ダイオードD4a,D4bのアノード同士がそれぞれ共通接続されたコモンアノード形態の多段接続ダブラ回路を用いても、リプル電流を低減しつつ影モジュールに対して補償電流を供給することができる。図22のvGSのグラフが示すとおり、図21のシステムと同様にスイッチQa,Qbを交互に切り替えて図24のシステムを動作させたとき、各モード期間中に流れる電流経路を図25a(モード1)〜図25d(モード4)に示す。
【0096】
便宜上、まずモード2の動作を説明する(図25b)。モード2の期間中においては、スイッチQaがオンとされ、スイッチQbがオフとされており、キャパシタCbk,インダクタLkg,一次巻線に対して、一定の正電圧(図24中、vPを示す矢印の向きに上昇する電圧。)が出力される。これにより、インダクタLkgを流れる電流は直線的に増加する。一次巻線に印加される電圧はトランスにより変圧されて多段接続カレントダブラ回路を駆動させる。トランスを介して印加される電圧によりキャパシタC2a,インダクタL2aを介して影モジュールPV2に補償電流が流れ込み、この電流はダイオードD2b,キャパシタC2bへと流れる。これらの電流の絶対値も、上記正電圧により直線的に増加する。また影モジュールPV2には、インダクタL2bがエネルギーを放出することによる補償電流も供給される。この電流は、インダクタL2bがエネルギーを失うにつれて減少する。太陽電池調整システムの動作によりモード2の期間中に影モジュールPV2に流れる電流はiL2aとiL2bの和に相当する。多段接続カレントダブラ内で影モジュールPV2に対応するインダクタL2a,L2b以外のインダクタに流れる電流はリプル電流成分のみである。
【0097】
スイッチQaをターンオフすると同時にQaを流れていた電流はスイッチQbの逆並列ダイオードであるダイオードDbへと転流し、動作はモード3へと移行する(図25c)。モード3の開始時において、ダイオードDbには順方向に電流が流れ、キャパシタCbk,インダクタLkg,一次巻線に流れる電流もモード2の期間中と同じ向きであるが、キャパシタCbからの電圧により、それらの電流は直線的に低下していく。iLkgの極性が反転する前にQbに対してゲート電圧vGSbを印加しておくことで、iLkgの極性が反転すると同時にスイッチQbはゼロ電圧でターンオンされる。モード3におけるトランスの巻線電圧は0であり、多段接続カレントダブラ内ではインダクタL2a,L2bが影モジュールPV2へと補償電流を供給することに伴ってダイオードD2a,D2bが導通する。インダクタL2a,L2bがエネルギーを放出するに従い、iL2a,iL2bは低下する。モード3の期間中においてもモード2の期間中と同様、太陽電池調整システムから影モジュールPV2に供給される補償電流はiL2aとiL2bの和に相当する。ダイオードD2bの電流iD2bが0になると同時に動作は次のモード4へと移行する。
【0098】
モード4の期間中(図25d)においては、スイッチQaがオフとされ、スイッチQbがオンとされており、キャパシタCbk,インダクタLkg,一次巻線に対して、一定の負電圧(図24中、vPを示す矢印の向きに上昇する電圧を正としている。)が出力される。これにより、インダクタLkgを流れる電流は直線的に低下(絶対値は増加)する。一次巻線に印加される電圧はトランスにより変圧されて多段接続カレントダブラ回路を駆動させる。トランスを介して印加される電圧によりキャパシタC2b,インダクタL2bを介して影モジュールPV2に補償電流が流れ込み、この電流はダイオードD2a,キャパシタC2aへと流れる。これらの電流の絶対値も、上記負電圧により直線的に増加する。また影モジュールPV2には、インダクタL2aがエネルギーを放出することによる補償電流も供給される。この電流は、インダクタL2aがエネルギーを失うにつれて減少する。太陽電池調整システムの動作によりモード4の期間中に影モジュールPV2に流れる電流はiL2aとiL2bの和に相当する。多段接続カレントダブラ内で影モジュールPV2に対応するインダクタL2a,L2b以外のインダクタに流れる電流はリプル電流成分のみである。
【0099】
スイッチQbをターンオフすると同時にQbを流れていた電流はスイッチQaの逆並列ダイオードであるダイオードDaへと転流し、動作はモード1へと移行する(図25a)。モード1の開始時において、ダイオードDaには順方向に電流が流れ、キャパシタCbk,インダクタLkg,一次巻線に流れる電流もモード4の期間中と同じ向きであるが、キャパシタCaからの電圧により、それらの電流は直線的に上昇していく(絶対値は低下)。iLkgの極性が反転する前にQaに対してゲート電圧vGSaを印加しておくことで、iLkgの極性が反転すると同時にスイッチQaはゼロ電圧でターンオンされる。モード1におけるトランスの巻線電圧は0であり、多段接続カレントダブラ内ではインダクタL2a,L2bが影モジュールPV2へと補償電流を供給することに伴ってダイオードD2a,D2bが導通する。インダクタL2a,L2bがエネルギーを放出するに従い、iL2a,iL2bは低下する。モード1の期間中においてもモード4の期間中と同様、太陽電池調整システムから影モジュールPV2に供給される補償電流はiL2aとiL2bの和に相当する。ダイオードD2aの電流iD2aが0になると同時に動作は次のモード2へと移行する。以降、同様に各モードが経時的に実現される。
【0100】
図21図24の回路構成では、インバータとしてハーフブリッジ型インバータを用いたが、これに限らず、太陽電池モジュールPV1〜PV4の合計電圧を交流電圧に変換することができるインバータであれば、フルブリッジインバータや非対称ハーブブリッジインバータ等の他のインバータを用いてもよい。図26図27に、フルブリッジインバータを用いて構成された本発明の太陽電池調整システムの回路構成を示す。フルブリッジインバータを用いても、スイッチQ1,Q4がオンの状態とスイッチQ2,Q3がオンの状態とを交互に切り替えることにより図22中vpと同様の交流電圧を出力できるため、図21図24の回路と同様の原理で多段接続カレントダブラを動作させてリプル電流を低減しつつ影モジュールに補償電流を供給することができる。
【0101】
なお、図21図24図26図27の太陽電池調整システムに対しても、図16cの最適補償を実現するべく図17の最小電流制御システムを用いることが可能である。図17を用いて既に説明したとおり太陽電池モジュールPV1〜PV4の補償電流を検出した上で、図21図24のシステムにおいては、スイッチQa,Qbをオンとする期間の長さを、図26図27のシステムにおいては、スイッチQ1,Q4をオンとする期間の長さと、スイッチQ2,Q3をオンとする期間の長さを、図17中の時比率制御回路で制御することにより、インバータの出力電流を制御し、各太陽電池モジュールに流れる補償電流を調整することができる。例えば図21,24の回路では、スイッチQa,Qbの時比率を大きくすると(デッドタイムを短くすると)インバータの出力電流が上がり(補償電流も上昇)、図26,27の回路ではQ1,Q4のオン期間とQ2,Q3のオン期間の時比率を大きくすると(デッドタイムを短くすると)インバータの出力電流が上がる(補償電流も上昇)。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は、太陽電池モジュールを直列に接続して太陽電池ストリングを構成する電源に広く適用できる。
【符号の説明】
【0103】
PV1〜PV4 太陽電池モジュール
Q,Q1〜Q8,QDC-DC,Qa,Qb スイッチ
L1〜L4,L1a〜L4a,L1b〜L4b,LDC-DC,Lin,Lout,Lkg
インダクタ
D,D1〜D4,D1a〜D4a,D1b〜D4b,DDC-DC,Da,Db
ダイオード
C,C1〜C4,C1a〜C4a,C1b〜C4b,CDC-DC,Cin,Cout,Ca,Cb,Cbk キャパシタ
Vin,VCC 電源
Load 負荷
R−bias バイアス抵抗
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5
図6
図7a
図7b
図7c
図8
図9
図10
図11
図12a
図12b
図13a
図13b
図14a
図14b
図15a
図15b
図16a
図16b
図16c
図17
図18
図19a
図19b
図19c
図19d
図20
図21
図22
図23a
図23b
図23c
図23d
図24
図25a
図25b
図25c
図25d
図26
図27