【実施例1】
【0037】
本件第1発明に係る太陽電池調整システムは、一例において、
図7a〜
図7cに示すSEPIC,Zeta,Cukコンバータのいずれかの昇降圧コンバータを、後述のとおりストリングに対して多段接続することにより得られる。なお、Cukコンバータは入出力の極性が入れ替わる「反転型コンバータ」であるため、本件第1発明の太陽電池調整システムに応用する場合には
図7cに示すようにトランスを用いた構成を基礎とする必要がある。
【0038】
太陽電池調整システムの構成
4直列の太陽電池モジュールPV1〜PV4に対して
図7a〜
図7cに示すSEPIC,Zeta,Cukコンバータのいずれかを多段接続することにより得られる、本発明の太陽電池調整システムの第1〜第3の実施形態を
図8〜
図10に示す。
図5,
図6中のPV疑似均等化器が、
図8〜
図10中、太陽電池モジュールPV1〜PV4以外の回路要素により構成されている。C1〜C4はキャパシタ、D1〜D4はダイオード、L1〜L4はインダクタであり、Cinは入力キャパシタ、Qはスイッチ、Linはインダクタを表す。
図10中のCaはエネルギー伝送キャパシタを表す。ここで、
図8中、i
LinはインダクタLinに流れる電流を表し、i
L1〜i
L4はインダクタL1〜L4にそれぞれ流れる電流を表し、i
D1〜i
D4はダイオードD1〜D4にそれぞれ流れる電流を表し、i
C1〜i
C4はキャパシタC1〜C4にそれぞれ流れる電流を表す。
図9,
図10の回路中で各素子を流れる電流も同様の記号で表わす。
【0039】
図8〜
図10の太陽電池調整システムは、それぞれ
図7aに示したSEPICコンバータ、
図7bに示したZetaコンバータ、及び
図7cに示したCukコンバータの回路において、入力電源Vinをストリングとし、キャパシタC−ダイオードD−インダクタLoutにより構成される回路部分を各太陽電池モジュールPV1〜PV4に多段接続した構成に対応する。
【0040】
入力キャパシタCinは太陽電池モジュールPV1〜PV4に接続されており、太陽電池調整システムはPV1〜PV4の各太陽電池モジュールのうち、電圧の低いモジュールに対して優先的に補償電流を供給する。一般的に、太陽電池モジュールを直列に接続してストリングを構成して使用する場合、影モジュールの電圧はその他の日照モジュールよりも低くなるため、本発明の太陽電池調整システムを用いることで全モジュール(影モジュールも含む)から影モジュールへと電力を再分配し、影モジュールにおける電力不足分を補償することができる。
【0041】
具体的には、スイッチQのオン、オフを繰り返し切り替えることにより、太陽電池モジュールPV1〜PV4から入力キャパシタCinへと入力された電圧が変換され、後述のとおり太陽電池モジュールPV1〜PV4のうち最も電圧の低いモジュールに対して出力される。以下、
図8,
図9の構成においては入力キャパシタCin、スイッチQ、及びインダクタLinから構成される回路を入力回路と呼び、
図10の構成においては、入力キャパシタCin、スイッチQ、インダクタLin、エネルギー伝送キャパシタCa、及びこれに直列接続された一次巻線から構成される回路を入力回路と呼ぶ。また
図8,
図9の構成においては、キャパシタC1〜C4、ダイオードD1〜D4、及びインダクタL1〜L4から構成される回路を出力回路と呼び、
図10の構成においては、キャパシタC1〜C4、ダイオードD1〜D4、インダクタL1〜L4、及び二次巻線から構成される回路を出力回路と呼ぶ。以下、
図8〜
図10に示す太陽電池調整システムの詳細な動作原理について説明を行う。
【0042】
太陽電池調整システムの動作
まず、
図8に示す太陽電池調整システムについて説明する。
図6に示すとおり、DC−DCコンバータを介して負荷を接続する等して、ストリング全体に電圧が印加されており、太陽電池モジュールPV2にのみ影がかかっているとする。スイッチQのオン、オフを繰り返し切り替えることにより、太陽電池調整システムを動作させる。このとき各素子を流れる電流、及び各素子に印加される電圧の波形を
図11に示し、スイッチQのオン期間中、オフ期間中にシステム内を流れる電流の経路を
図12a,
図12bに示す。なお、
図11のグラフ中、v
DSはスイッチQに印加される電圧を表す。
【0043】
まず、スイッチQがオンである期間中の電流について、
図12aを用いて説明する。
図12aは、各素子を経由して回路内を流れる電流の経路、及び極性(向き)を、矢印付きの実線及び破線で表したものである。なお、
図12a中の破線はインダクタL1,L3,L4及びコンデンサC1,C3,C4を流れるリプル電流を表しているが、その向きはスイッチQのオン期間内、及びオフ期間内のそれぞれにおいて切り替わるものであるため(
図11中、i
Li及びi
Ciのグラフ参照。これらはi=2以外のインダクタLi,キャパシタCiに流れる電流を表す。)、これに対応して当該破線の両端に矢印が付されている。
【0044】
図12aに示されるとおり、太陽電池モジュールPV1〜PV4から流れ出した電流は入力キャパシタCinへと入力される。同時に入力キャパシタCinはインダクタLinに対して放電を行い、Linにエネルギーが蓄えられ、その電流i
Linは直線的に増加する(
図11中、i
Linのグラフ参照)。さらに、キャパシタC2はインダクタL2に対して放電を行い、インダクタL2にエネルギーが蓄えられ、その電流i
L2は直線的に増加する(
図11中、i
L2及びi
C2のグラフ参照)。
【0045】
次に、スイッチQがオフである期間中の電流について、
図12bを用いて説明する。
図12bに示すとおり、スイッチQのオフ期間中、最低電圧の影モジュールPV2に対応するダイオードD2のみが導通されている。すなわち、スイッチQのオン期間中にインダクタLinが蓄えたエネルギーはスイッチQのオフ期間中に放出されるが、このエネルギーを担う出力電流は、キャパシタC2及びダイオードD2を経由して最も電圧の低い影モジュールPV2へと優先的に流れ込む。この電流は、インダクタLinがエネルギーを失うにつれて直線的に減少する(
図11中、i
Lin,i
C2及びi
D2のグラフ参照)。また、インダクタL2からはダイオードD2を経由して影モジュールPV2へと電流が流れ込み、これにより、スイッチQのオン期間中にインダクタL2が蓄えたエネルギーは影モジュールPV2へと放出される。この電流も、インダクタL2がエネルギーを失うにつれて直線的に減少する(
図11中、i
L2のグラフ参照)。なお、スイッチQのオフ期間中においても、太陽電池モジュールPV1〜PV4から流れ出した電流は入力キャパシタCinへと入力されており、同時にインダクタL1,L3,L4及びキャパシタC1,C3,C4にはリプル電流が流れている(
図11中、i
Li及びi
Ciのグラフ参照)。
【0046】
スイッチQにおけるオン、オフのスイッチングを繰り返すことにより、上述した電流によって太陽電池モジュールPV1〜PV4から影モジュールPV2へと補償電流が供給され、ストリング全体として高出力が達成される。
【0047】
上述のとおり、スイッチングの1周期の間に各キャパシタには充放電電流が流れる。キャパシタC1,C3,C4に流れる電流はリプル電流成分のみであるため十分小さいが、キャパシタC2には比較的大きな充放電電流が流れる。スイッチQのオン期間中、キャパシタC2の電流は太陽電池モジュールPV1を経由して流れる一方、スイッチQのオフ期間中、キャパシタC2の電流は太陽電池モジュールPV1,PV2に流れる。このように、動作に伴い各モジュール(
図12a,
図12bの例の場合、太陽電池モジュールPV1とPV2)の電流は大きく変動するのであり、すなわち大きなリプル電流が流れることになる。一般的に、太陽電池の動作電圧は電流に大きく依存するため(
図1)、モジュールに比較的大きなリプル電流が流れる場合その動作電圧が不安定になってしまう。この問題に関しては、後述の実施例2に示すシステムによって解決可能である。
【0048】
ここで、時比率Dを、スイッチQのスイッチング周期に対するスイッチのオン期間の割合として定義する(この定義より明らかなとおり、0≦D≦1である。)。太陽電池調整システムの定常状態において影モジュールPV2に出力される電圧は、入力キャパシタCinに印加される電圧V
Stringと上記時比率Dとに応じて決定される。以下、具体的に影モジュールPV2への出力電圧を導出する。
【0049】
太陽電池モジュールPV1〜PV4の電圧V
PV1〜V
PV4は、スイッチングの一周期に亘って一定であるとみなす。
このとき、上記V
Stringは、
【数3】
(3)
と表される。
【0050】
また、キャパシタC1〜C4の電圧の、スイッチング周期に関する時間平均をV
C1〜V
C4とする。定常状態においてインダクタLin,及びL1〜L4の電圧の時間平均は全てゼロとなるため、V
String,V
PV1〜V
PV4,及びV
C1〜V
C4の間には以下の関係式が成立する。
【数4】
(4)
【0051】
さらに、上記各インダクタにおいて印加される電圧と時間の積の、上記スイッチング周期に亘る合計は定常状態においてゼロとなるため、以下の関係式が成立する(ダイオードの順方向電圧降下をV
Dとする。)。
【数5】
(5)
【0052】
上記(4),(5)式を用いれば、最低電圧の影モジュールPV2への出力電圧V
PV2を以下のとおり表すことができる。
【数6】
(6)
【0053】
太陽電池調整システムの定常状態においては、上記(6)式に示されるとおり、太陽電池モジュールPV1〜PV4の電圧の合計電圧V
Stringを時比率Dに応じて変換してなる出力電圧が影モジュールPV2へと出力されるとともに、影モジュールPV2に対して優先的に電流が出力される。上記(6)式中にはストリング全体の電圧V
Stringと影モジュールPV2の電圧V
PV2が含まれており、その他の個別の日照モジュールの電圧は含まれていない。これはすなわち、本発明の太陽電池調整システムの動作は主にストリング全体と影モジュールにより決定されることを示唆している。
【0054】
図9に示すZetaコンバータに基づくシステム、及び
図10に示すCukコンバータに基づくシステムも同様の原理で動作し、太陽電池モジュールPV1〜PV4の合計電圧V
Stringを、時比率Dに応じて変換した上で影モジュールに対して出力しつつ、当該影モジュールに優先的に電流を出力する。
【0055】
図9のシステムを動作させたときにスイッチQのオン期間とオフ期間とでそれぞれ実現される電流経路を、
図13a,
図13bに示す。
【0056】
まず、スイッチQのオン期間中(
図13a)、太陽電池モジュールPV1〜PV4から流れ出した電流は入力キャパシタCinへと入力される。同時に入力キャパシタCinはインダクタLinに対して放電を行い、Linにエネルギーが蓄えられ、その電流i
Linは直線的に増加する。さらに、キャパシタC2はインダクタL2に対して放電を行い、インダクタL2にエネルギーが蓄えられ、その電流i
L2は直線的に増加する。
【0057】
次に、スイッチQのオフ期間中(
図13b)、最低電圧の影モジュールPV2に対応するダイオードD2が導通されている。スイッチQのオン期間中にインダクタLinが蓄えたエネルギーはスイッチQのオフ期間中に放出されるが、このエネルギーを担う出力電流はキャパシタC2を充電する。この電流は、インダクタLinがエネルギーを失うにつれて直線的に減少する。また、インダクタL2からはダイオードD2を経由して影モジュールPV2へと電流が流れ込み、これにより、スイッチQのオン期間中にインダクタL2が蓄えたエネルギーは影モジュールPV2へと放出される。この電流も、インダクタL2がエネルギーを失うにつれて直線的に減少する。なお、スイッチQのオフ期間中においても、太陽電池モジュールPV1〜PV4から流れ出した電流は入力キャパシタCinへと入力されており、同時にインダクタL1,L3,L4及びキャパシタC1,C3,C4にはリプル電流が流れている。
【0058】
ここで、定常状態において各インダクタの電圧の時間平均は全てゼロとなること、及び各インダクタにおいて印加される電圧と時間の積の、上記スイッチング周期に亘る合計は定常状態においてゼロとなることを利用して、上記(4),(5)と同様に以下の(7),(8)式が得られる。
【数7】
(7)
【数8】
(8)
【0059】
上記(7),(8)式を用いれば、最低電圧の影モジュールPV2への出力電圧V
PV2を以下のとおり表すことができる。
【数9】
(9)
【0060】
図10のシステムを動作させたときにスイッチQのオン期間とオフ期間とでそれぞれ実現される電流経路を、
図14a,
図14bに示す。
【0061】
まず、スイッチQのオン期間中(
図14a)、太陽電池モジュールPV1〜PV4から流れ出した電流は入力キャパシタCinへと入力される。同時に入力キャパシタCinはインダクタLinに対して放電を行い、Linにエネルギーが蓄えられ、その電流i
Linは直線的に増加する。さらに、キャパシタCaは、一次巻線に対して電圧を出力し、これがトランスで変圧されて出力回路に印加される。出力回路において、キャパシタC2はインダクタL2に対して放電を行い、インダクタL2にエネルギーが蓄えられ、その電流i
L2は直線的に増加する。
【0062】
次に、スイッチQのオフ期間中(
図14b)、最低電圧の影モジュールPV2に対応するダイオードD2が導通されている。スイッチQのオン期間中にインダクタLinが蓄えたエネルギーはスイッチQのオフ期間中に放出されるが、このエネルギーを担う出力電流はキャパシタCaを充電する。この電流は、インダクタLinがエネルギーを失うにつれて直線的に減少する。また、インダクタL2からはダイオードD2を経由して影モジュールPV2へと電流が流れ込み、これにより、スイッチQのオン期間中にインダクタL2が蓄えたエネルギーは影モジュールPV2へと放出される。またトランス二次巻線からの電流によりキャパシタC2が充電される。なお、スイッチQのオフ期間中においても、太陽電池モジュールPV1〜PV4から流れ出した電流は入力キャパシタCinへと入力されており、同時にインダクタL1,L3,L4及びキャパシタC1,C3,C4にはリプル電流が流れている。
【0063】
ここで、定常状態において各インダクタの電圧の時間平均は全てゼロとなること、及び各インダクタにおいて印加される電圧と時間の積の、上記スイッチング周期に亘る合計は定常状態においてゼロとなることを利用して、上記(4),(5)と同様に以下の(10),(11)式が得られる。
【数10】
(10)
ここで、Nはトランスの一次巻線と二次巻線の比である。
【数11】
(11)
【0064】
上記(10),(11)式を用いれば、最低電圧の影モジュールPV2への出力電圧V
PV2を以下のとおり表すことができる。
【数12】
(12)
【0065】
以上、SEPIC,Zeta,Cukコンバータを基礎とする太陽電池調整システムにおいて、太陽電池モジュールPV1〜PV4のうち、特にPV2に影がかかっている場合の動作を説明した。影がかかっているモジュールがPV1,PV3,PV4のいずれかである場合にも、同様の原理により影モジュールに補償電流を供給することができるし、また影モジュールが複数個ある場合にも、同様の原理により補償電流を供給することができる。
【0066】
一例として、太陽電池モジュールPV1,PV2に影がかかり、その電圧が同じ大きさになっており、且つ日照モジュールPV3,PV4の電圧は影モジュール電圧より高いときの、
図8に示す太陽電池調整システムの動作を説明する。
【0067】
まず、スイッチQがオンである期間中(
図15a)、太陽電池モジュールPV1〜PV4から流れ出した電流は入力キャパシタCinへと入力される。同時に入力キャパシタCinはインダクタLinに対して放電を行い、Linにエネルギーが蓄えられ、その電流i
Linは直線的に増加する。さらに、キャパシタC1,C2はインダクタL1,L2に対してそれぞれ放電を行い、インダクタL1,L2にエネルギーが蓄えられ、その電流i
L1,i
L2は直線的に増加する。
【0068】
次に、スイッチQがオフである期間中(
図15b)、最低電圧の影モジュールPV1,PV2に対応するダイオードD1,D2が導通されている。すなわち、スイッチQのオン期間中にインダクタLinが蓄えたエネルギーはスイッチQのオフ期間中に放出されるが、このエネルギーを担う出力電流は、キャパシタC1及びダイオードD1を経由して最も電圧の低い影モジュールPV1へと、及び、キャパシタC2及びダイオードD2を経由して最も電圧の低い影モジュールPV2へと、優先的に流れ込む。この電流は、インダクタLinがエネルギーを失うにつれて直線的に減少する。また、インダクタL1,L2からは、それぞれダイオードD1,D2を経由して影モジュールPV1,PV2へと電流が流れ込み、これにより、スイッチQのオン期間中にインダクタL1,L2が蓄えたエネルギーは影モジュールPV1,PV2へと放出される。この電流も、インダクタL1,L2がエネルギーを失うにつれて直線的に減少する。
【0069】
この場合、定常状態における各素子電圧間の関係は、上記(3),(4)式、及び以下の(13)式で表される。
【数13】
(13)
これらを解くことにより、以下の(14)式が得られる。
【数14】
(14)
【0070】
すなわち、太陽電池モジュールPV2のみに影がかかっていたときと同様に、影モジュールPV1,PV2には、V
Stringが変換されてなる出力電圧{D/(1−D)}V
String−V
Dが出力されるのであり、このような状態において影モジュールPV1,PV2へと優先的に補償電流が供給される。
【0071】
複数の影モジュールに対しても補償電流を供給できる点は、
図9,
図10の太陽電池調整システムにおいても同様である。また、ここではSEPIC,Zeta,Cukコンバータを基礎とする構成について説明したが、本発明の太陽電池調整システムはこれらを基礎とする構成に限られるわけではなく、任意のコンバータの出力回路部分を多段接続することにより構成可能である。
【0072】
最小電流の検出及び制御システム
以上、本件第1発明の太陽電池調整システムの動作を理論的に説明した。上記説明においては最低電圧の影モジュールに対して優先的に供給される補償電流のみを考えたが、実際にはこれ以外のモジュールに供給される補償電流もゼロとはならない場合がある。太陽電池モジュールPV1〜PV4に供給される補償電流の大きさは、スイッチの時比率を制御することにより全体的に調整することができる。以下、補償電流を検出してその大きさを調整するためのシステムを説明する。
【0073】
図16a〜
図16cに、本発明の太陽電池調整システム(後述の実施例2において説明するシステムを含む。)を用いた際における補償電流の供給イメージを示す。ここでは例として、4直列の太陽電池モジュールのPV1〜PV4のうちPV1とPV2に影が掛かっており、PV1の方がより広範囲に渡って影が掛かっているものとする。また、ここでは太陽電池調整システムは各太陽電池モジュールに対して等しい電圧V
eを出力するものとして等価的に描かれている。
【0074】
図16aは過剰補償時における補償電流の供給イメージである。PV
1とPV
2には影の程度に応じて補償電流I
eq1とI
eq2が供給される一方で、日照モジュールであるPV
3とPV
4に対しても比較的大きな補償電流I
eq3とI
eq4が供給されている状態である。PV
3とPV
4は補償される必要性が無いにも関わらず補償電流が供給されているため、これらの補償電流分に起因した不要な電力変換損失が部分影補償装置の内部で発生することになる。
【0075】
これに対して、
図16bは補償不足時における補償電流の供給イメージである。日照モジュールであるPV
3とPV
4に対しては補償電流が供給されないため、
図16aの過剰補償時のような不要な電力損失は発生しない。しかし、本来補償を必要としているPV
2に補償電流が供給されておらず、更にはPV
1に対する補償電流も不十分であるため、部分影による影響を完全に補償することが出来ない。
【0076】
図16cは最適補償時における補償電流の供給イメージである。PV
1とPV
2には影の程度に応じた補償電流I
eq1とI
eq2を供給する一方、日照モジュールであるPV
3とPV
4に対しては微小な補償電流I
eq3とI
eq4のみが供給されている状態である。最適補償時においては電圧の高い日照モジュールに対しても補償電流が若干供給されている状態であるため、電圧の低い影モジュールに対しては十分な補償電流が常に供給されていることになる。また、日照モジュールに供給される補償電流は微小なため、これらの補償電流に起因する不要な電力変換損失を最小限に抑えることが可能である。
【0077】
図16cの最適補償を実現するために用いることができる、最小電流制御システムの一例を
図17に示す。最小電流制御システムは、電源Vccに接続されたプルアップ抵抗器と、太陽電池モジュールPV1〜PV4に流れる補償電流をそれぞれ検出する、第1から第4の電流センサと、プルアップ抵抗器と第1から第4の電流センサのそれぞれの間に、プルアップ抵抗器から電流センサへと流れる電流を遮断しないようそれぞれ接続された、第1から第4のダイオードと、プルアップ抵抗器に接続されたエラーアンプ(比較器)と、太陽電池調整システムのスイッチQの時比率を制御して太陽電池モジュールPV1〜PV4に流れる補償電流を制御する、時比率制御回路(電流制御手段)と、を備える。
【0078】
以下、最小電流制御システムの動作を説明する。
図8の太陽電池調整システムを例にとれば、第1から第4の電流センサは、ダイオードD1〜D4に接続される等して、それぞれ太陽電池モジュールPV1〜PV4に流れる補償電流I
eq1〜I
eq4を検出する。各電流センサは、検出された電流値を電圧に変換(例えば1Aを1Vに変換する。)して出力する。太陽電池モジュールPV1〜PV4に流れる補償電流が、それぞれ1.3A,0.6A,0.1A,0.1Aであったならば、第1から第4の電流センサは、それぞれ1.3V,0.6V,0.1V,0.1Vの電圧を出力する。このとき、最低電圧を出力する第3,第4の電流センサと接続された第3,第4のダイオードが導通する。電源Vccからプルアップ抵抗器を経て導通したダイオードに流れ込んだ電流は、電流センサと当該ダイオードとの間に接続された抵抗器へと流れ込む。なお、第1〜第4の電流センサがシンクとして動作する場合には、これら抵抗器は不要である。
【0079】
0.1Aの最低補償電流を検出して0.1Vの電圧を出力した第3,第4の電流センサにより、電源Vccからプルアップ抵抗器を介してエラーアンプへと至る経路には0.1Vのバイアスがかかる。したがって、電源Vccの電圧が5.0Vであったとすれば、プルアップ抵抗器の電圧降下は4.9Vとなる。この電圧降下に対応する信号(すなわち、補償電流I
eq1〜I
eq4のうち最小補償電流値I
eq-min=0.1Aを示す信号)がエラーアンプに入力される。
【0080】
エラーアンプは最小補償電流I
eq-minと、外部から入力された基準電流I
refとの比較に基づいて誤差信号を出力し、その誤差信号が時比率制御回路に入力される。時比率制御回路は、I
ref−I
eq-minで表わされる誤差が負であれば、補償電流を全体的に小さくするべく、
図8〜
図10のスイッチQの時比率を下げたり(オン期間の割合がより小さいパルス幅変調波を発生)、誤差が正であれば補償電流を全体的に大きくするべくスイッチQの時比率を上げたり(オン期間の割合がより大きいパルス幅変調波を発生)して、誤差をゼロに近づける。以上の動作を繰り返し行うことにより、太陽電池調整システムの動作状態を
図16cの最適補償状態に近づけることができる。
【0081】
この最小電流制御システムを用いて本発明の太陽電池調整システムを動作させるとI
eq-min=I
refとなるよう動作するため、上述のように太陽電池調整システム内の不要な電力変換損失を最小限に抑えるためにはI
ref≒0と設定することが望ましい。なお、ここでは、アナログ回路を用いて最小補償電流I
eq-minを検出して制御を行う回路について説明を行ったが、デジタル制御を用いた場合でも容易に同様の制御を実現可能である。例えば、第1から第4の電流センサからの電圧信号を、A/Dコンバータ(不図示)を介してデジタル信号に変換してから第2の比較器(不図示)に入力し、第2の比較器で電流値の比較を行って最低補償電流I
eq-minを特定し、最低補償電流I
eq-minを示す信号をエラーアンプに入力してもよい。
【0082】
なお、上記最小電流制御システムは、本発明の太陽電池調整システムに限らず、複数の回路要素を備えた任意の回路に対して適用可能である。太陽電池モジュールに限らず、任意の複数の回路要素のそれぞれに、
図17と同様の、あるいは上記デジタル制御を用いたシステムを接続すれば(
図17において、各電流センサを、太陽電池モジュールPV1〜PV4に限らず任意の回路要素に接続する。なお、回路要素の数は4以外の任意の数であってよいし、各回路要素が同種の要素である必要はない。)、回路要素にそれぞれ流れる電流のうち最小の電流を特定して基準電流と比較し、比較結果に基づいて、回路要素に流れる電流を制御することができる。ここにおける「回路要素に流れる電流の制御」とは、上述の例と同様に回路内に含まれるスイッチの時比率制御であってもよいし、例えば各回路要素に可変抵抗が接続されている場合には、任意の制御回路(不図示。「電流制御手段」の一例。)を介してその抵抗値を変更することであってもよい。また、本発明の最小電流制御システムから、時比率制御回路等の電流制御手段を除いたシステムも、本発明の最小電流検出システムとして単独で動作可能である。
【0083】
本発明の太陽電池調整システムを用いた実験
図8に示した本発明の太陽電池調整システムを用いた実験結果の例を、
図18及び
図19a〜
図19dに示す。なお、実験に用いた入力キャパシタCinの容量は20μF,インダクタLinのインダクタンスは100μH,インダクタL1〜L4のインダクタンスは33μH,キャパシタC1〜C4の容量は20μF,スイッチQのオン抵抗は39mΩ,ダイオードD1〜D4の順方向電圧降下は0.65Vであり、スイッチQのスイッチング周波数は100kHzとした。また
図17の最小電流制御システムも動作させ、基準電流I
ref=100mAとした。
【0084】
実験時は
図16a〜
図16cと同様、太陽電池モジュールPV1とPV2に影が発生した状況を想定して、各モジュール特性を
図18のように設定して実験を行った。なお、太陽電池モジュールPV1〜PV4としては太陽電池アレイ・シミュレータ(Agilent Technologies社製、E4350B)を用いた。
図19a〜
図19dに、補償時における各モジュールの個別の特性を示す。日照モジュールPV3,PV4には100mA程度の微小な補償電流(I
eq3とI
eq4)が流れている一方(
図19c,
図19d)、影モジュールPV1,PV2には特性に応じて相当量の補償電流(I
eq1は1.2A程度、I
eq2は0.5A程度)が流れており(
図19a,
図19b)、
図16cで説明した最適補償の状態が実現されていることが分かる。モジュール単体の特性(
図18の特性および
図19a〜
図19d中の破線)は各モジュールで大きく異なるのに対して、補償時における各モジュールの、V
PViに対するI
Loadの特性は等価的にほぼ同一となっていることがわかる。
【0085】
図20は、本発明の太陽電池調整システムの有無によるストリング特性を比較したものである。太陽電池調整システムを用いない場合(破線グラフ。太陽電池モジュールPV1〜PV4に対してバイパスダイオードを並列接続した場合)、3つのMPPが存在しており抽出可能な最大電力は約40W(V
String≒30Vの時)である。これに対して、太陽電池調整システムを用いた場合(実線グラフ)、MPPは1つのみであり、最大電力も約50W(V
String≒38Vの時)と大幅に向上している。このように、本発明の太陽電池調整システムを用いることで複数のMPPの発生を防止しつつ、抽出可能な最大電力も大幅に向上させることが可能である。
【実施例2】
【0086】
太陽電池調整システムの構成
実施例1で説明した通り、
図8〜
図10に示す太陽電池調整システムでは、その動作時において太陽電池モジュールに比較的大きなリプル電流が発生するため、それに伴い太陽電池の動作電圧が不安的になる恐れがある。これに対し、
図21に示す回路構成の太陽電池調整システムを用いれば、部分影を補償しつつ、動作時において各太陽電池モジュールに流れるリプル電流を大幅に低減することができる。
【0087】
図21の太陽電池調整システムにおいて、C1a〜C4a,C1b〜C4bはキャパシタ、L1a〜L4a,L1b〜L4bはインダクタ、D1a〜D4a,D1b〜D4bはダイオードを表し、これらからなり、且つトランスの二次巻線に接続された多段接続カレントダブラが太陽電池モジュールPV1〜PV4に接続されている。多段接続カレントダブラは
図8に示したC−D−Lの多段接続回路を各モジュールに対して対称に配置したものと等価である。なお、R−Biasは、各キャパシタの電圧値が不定値になるのを防止するためのバイアス抵抗である。また
図21の太陽電池調整システムは、スイッチQa,Qb,ダイオードDa,Db,キャパシタCa,Cb,Cbk,インダクタLkg(トランスの漏洩インダクタンスを表している。)を備え、トランスの一次巻線に接続されたハーフブリッジインバータを備えている。ハーフブリッジインバータは、太陽電池モジュールPV1〜PV4の合計電圧の入力を受け、スイッチQa,Qbのオンオフを交互に切り替えることにより矩形状の交流電圧を発生させ、トランスを介して変圧された交流電圧を多段接続カレントダブラに出力する。ここで、
図21中、i
L1a〜i
L4a,i
L1b〜i
L4bはインダクタL1a〜L4a,L1b〜L4bにそれぞれ流れる電流を表し、i
D1a〜i
D4a,i
D1b〜i
D4bはダイオードD1a〜D4a,D1b〜D4bにそれぞれ流れる電流を表し、i
C1a〜i
C4a,i
C1b〜i
C4bはキャパシタC1a〜C4a,C1b〜C4bにそれぞれ流れる電流を表し、I
eq-inはストリングからハーフブリッジインバータに入力される電流を表し、i
Qa,i
QbはスイッチQa,Qbにそれぞれ流れる電流を表し、v
DSa,v
DSbはスイッチQa,Qbにそれぞれ印加される電圧を表し、i
LkgはインダクタLkgに流れる電流を表し、v
Pは一次巻線に印加される電圧を表す。なお、
図21は、対称に配置されたC−D−L回路におけるダイオードDがカソードを共通に接続された(すなわち、ダイオードD1a,D1bのカソード同士、ダイオードD2a,D2bのカソード同士、ダイオードD3a,D3bのカソード同士、ダイオードD4a,D4bのカソード同士がそれぞれ共通接続された)コモンカソードの形態を示しているが、後述のコモンアノードの形態(
図24)も同様に動作可能である。
【0088】
太陽電池調整システムの動作
太陽電池モジュールPV2に影がかかっているときに、スイッチQa,Qbのオン、オフを交互に繰り返し切り替えることにより
図21の太陽電池調整システムを動作させた場合における、各素子を流れる電流、及び各素子に印加される電圧の波形を
図22に示し、動作中に実現されるモード1〜4の期間中にそれぞれシステム内を流れる電流の経路を
図23a〜
図23dに示す。なお、
図22のグラフ中、v
GSa,v
GSbは、それぞれスイッチQa,Qbのゲート電圧を表す。
【0089】
ハーフブリッジインバータにおいて、
図22中、v
GSのグラフが示すとおりスイッチQa,Qbが交互に導通することで、v
Pのグラフが示すとおりトランス一次巻線に矩形波交流電圧が印加される。v
GSのグラフに示される4つの動作モードに応じてトランス二次巻線の電圧は変動し、その電圧により多段接続カレントダブラ回路が駆動され、
図23a(モード1)〜
図23d(モード4)に示すとおり回路内に電流が流れる。
図23a〜
図23d中では、リプル電流成分のみが流れる電流経路は破線で示している。また、同一モード期間中に向きが切り替わる電流の経路には、両端に矢印を付した。
【0090】
便宜上、まずモード2の動作を説明する(
図23b)。モード2の期間中においては、スイッチQaがオンとされ、スイッチQbがオフとされており、キャパシタCbk,インダクタLkg,一次巻線に対して、一定の正電圧(
図21中、v
Pを示す矢印の向きに上昇する電圧。
図22中、v
Pのグラフ参照。)が出力される。これにより、インダクタLkgを流れる電流は直線的に増加する(
図22中、i
Lkgのグラフ参照。)。一次巻線に印加される電圧はトランスにより変圧されて多段接続カレントダブラ回路を駆動させる。トランスを介して印加される電圧によりキャパシタC2a,ダイオードD2aを介して影モジュールPV2に補償電流が流れ込み、この電流はインダクタL2b,キャパシタC2bへと流れる。これらの電流も、上記正電圧により直線的に増加する(
図22中、対応するグラフ参照。)。また影モジュールPV2には、インダクタL2aがエネルギーを放出することによる補償電流も供給される。この電流は、インダクタL2aがエネルギーを失うにつれて減少する(
図22中、i
L2aのグラフ参照。)。太陽電池調整システムの動作によりモード2の期間中に影モジュールPV2に流れる電流はi
L2aとi
L2bの和に相当する。多段接続カレントダブラ内で影モジュールPV2に対応するインダクタL2a,L2b以外のインダクタに流れる電流はリプル電流成分のみである。
【0091】
スイッチQaをターンオフすると同時にQaを流れていた電流はスイッチQbの逆並列ダイオードであるダイオードDbへと転流し、動作はモード3へと移行する(
図23c)。モード3の開始時において、ダイオードDbには順方向に電流が流れ、キャパシタCbk,インダクタLkg,一次巻線に流れる電流もモード2の期間中と同じ向きであるが、キャパシタCbからの電圧により、それらの電流は直線的に低下していく。i
Lkgの極性が反転する前にQ
bに対してゲート電圧v
GSbを印加しておくことで(
図22中、v
GSbのグラフ参照。)、i
Lkgの極性が反転すると同時にスイッチQbはゼロ電圧でターンオンされる。モード3におけるトランスの巻線電圧は0であり、多段接続カレントダブラ内ではインダクタL2a,L2bが影モジュールPV2へと補償電流を供給することに伴ってダイオードD2a,D2bが導通する。インダクタL2a,L2bがエネルギーを放出するに従い、i
L2a,i
L2bは低下する(
図22中、i
L2a,i
L2bのグラフ参照。)。モード3の期間中においてもモード2の期間中と同様、太陽電池調整システムから影モジュールPV2に供給される補償電流はi
L2aとi
L2bの和に相当する。ダイオードD2aの電流i
D2aが0になると同時に動作は次のモード4へと移行する。
【0092】
モード4の期間中(
図23d)においては、スイッチQaがオフとされ、スイッチQbがオンとされており、キャパシタCbk,インダクタLkg,一次巻線に対して、一定の負電圧(
図21中、v
Pを示す矢印の向きに上昇する電圧を正としている。
図22中、v
Pのグラフ参照。)が出力される。これにより、インダクタLkgを流れる電流は直線的に低下(絶対値は増加)する(
図22中、i
Lkgのグラフ参照。)。一次巻線に印加される電圧はトランスにより変圧されて多段接続カレントダブラ回路を駆動させる。トランスを介して印加される電圧によりキャパシタC2b,ダイオードD2bを介して影モジュールPV2に補償電流が流れ込み、この電流はインダクタL2a,キャパシタC2aへと流れる。これらの電流の絶対値も、上記負電圧により直線的に増加する(
図22中、対応するグラフ参照。)。また影モジュールPV2には、インダクタL2bがエネルギーを放出することによる補償電流も供給される。この電流は、インダクタL2bがエネルギーを失うにつれて減少する(
図22中、i
L2bのグラフ参照。)。太陽電池調整システムの動作によりモード4の期間中に影モジュールPV2に流れる電流はi
L2aとi
L2bの和に相当する。多段接続カレントダブラ内で影モジュールPV2に対応するインダクタL2a,L2b以外のインダクタに流れる電流はリプル電流成分のみである。
【0093】
スイッチQbをターンオフすると同時にQbを流れていた電流はスイッチQaの逆並列ダイオードであるダイオードDaへと転流し、動作はモード1へと移行する(
図23a)。モード1の開始時において、ダイオードDaには順方向に電流が流れ、キャパシタCbk,インダクタLkg,一次巻線に流れる電流もモード4の期間中と同じ向きであるが、キャパシタCaからの電圧により、それらの電流は直線的に上昇していく(絶対値は低下)。i
Lkgの極性が反転する前にQaに対してゲート電圧v
GSaを印加しておくことで(
図22中、v
GSaのグラフ参照。)、i
Lkgの極性が反転すると同時にスイッチQaはゼロ電圧でターンオンされる。モード1におけるトランスの巻線電圧は0であり、多段接続カレントダブラ内ではインダクタL2a,L2bが影モジュールPV2へと補償電流を供給することに伴ってダイオードD2a,D2bが導通する。インダクタL2a,L2bがエネルギーを放出するに従い、i
L2a,i
L2bは低下する(
図22中、i
L2a,i
L2bのグラフ参照。)。モード1の期間中においてもモード4の期間中と同様、太陽電池調整システムから影モジュールPV2に供給される補償電流はi
L2aとi
L2bの和に相当する。ダイオードD2bの電流i
D2bが0になると同時に動作は次のモード2へと移行する。以降、同様に各モードが経時的に実現される。
【0094】
既に述べたとおり、
図8〜
図10の回路構成では動作モードに応じてキャパシタの充放電電流が異なる電流経路で太陽電池モジュールに流れるため、各モジュールは比較的大きなリプル電流に晒されてしまい動作電圧が不安定になる恐れがある。それに対して、
図21の回路構成を用いた際には影モジュールPV2に対して流れる電流は常にインダクタL2a,L2bの電流の和と等しく、
図23a〜
図23dの電流経路からも分かるとおりキャパシタC2a,C2bに対する充放電電流はPV2以外のモジュールに対しては流れない。よって、
図8〜
図10の実施形態と比較して動作時に各モジュールに流れるリプル電流を大幅に低減することが可能となる。
【0095】
図21ではハーフブリッジインバータを用いてコモンカソード形態の多段接続カレントダブラ回路を駆動させる回路構成について説明したが、
図24に示すとおり、ダイオードD1a,D1bのアノード同士、ダイオードD2a,D2bのアノード同士、ダイオードD3a,D3bのアノード同士、ダイオードD4a,D4bのアノード同士がそれぞれ共通接続されたコモンアノード形態の多段接続ダブラ回路を用いても、リプル電流を低減しつつ影モジュールに対して補償電流を供給することができる。
図22のv
GSのグラフが示すとおり、
図21のシステムと同様にスイッチQa,Qbを交互に切り替えて
図24のシステムを動作させたとき、各モード期間中に流れる電流経路を
図25a(モード1)〜
図25d(モード4)に示す。
【0096】
便宜上、まずモード2の動作を説明する(
図25b)。モード2の期間中においては、スイッチQaがオンとされ、スイッチQbがオフとされており、キャパシタCbk,インダクタLkg,一次巻線に対して、一定の正電圧(
図24中、v
Pを示す矢印の向きに上昇する電圧。)が出力される。これにより、インダクタLkgを流れる電流は直線的に増加する。一次巻線に印加される電圧はトランスにより変圧されて多段接続カレントダブラ回路を駆動させる。トランスを介して印加される電圧によりキャパシタC2a,インダクタL2aを介して影モジュールPV2に補償電流が流れ込み、この電流はダイオードD2b,キャパシタC2bへと流れる。これらの電流の絶対値も、上記正電圧により直線的に増加する。また影モジュールPV2には、インダクタL2bがエネルギーを放出することによる補償電流も供給される。この電流は、インダクタL2bがエネルギーを失うにつれて減少する。太陽電池調整システムの動作によりモード2の期間中に影モジュールPV2に流れる電流はi
L2aとi
L2bの和に相当する。多段接続カレントダブラ内で影モジュールPV2に対応するインダクタL2a,L2b以外のインダクタに流れる電流はリプル電流成分のみである。
【0097】
スイッチQaをターンオフすると同時にQaを流れていた電流はスイッチQbの逆並列ダイオードであるダイオードDbへと転流し、動作はモード3へと移行する(
図25c)。モード3の開始時において、ダイオードDbには順方向に電流が流れ、キャパシタCbk,インダクタLkg,一次巻線に流れる電流もモード2の期間中と同じ向きであるが、キャパシタCbからの電圧により、それらの電流は直線的に低下していく。i
Lkgの極性が反転する前にQ
bに対してゲート電圧v
GSbを印加しておくことで、i
Lkgの極性が反転すると同時にスイッチQbはゼロ電圧でターンオンされる。モード3におけるトランスの巻線電圧は0であり、多段接続カレントダブラ内ではインダクタL2a,L2bが影モジュールPV2へと補償電流を供給することに伴ってダイオードD2a,D2bが導通する。インダクタL2a,L2bがエネルギーを放出するに従い、i
L2a,i
L2bは低下する。モード3の期間中においてもモード2の期間中と同様、太陽電池調整システムから影モジュールPV2に供給される補償電流はi
L2aとi
L2bの和に相当する。ダイオードD2bの電流i
D2bが0になると同時に動作は次のモード4へと移行する。
【0098】
モード4の期間中(
図25d)においては、スイッチQaがオフとされ、スイッチQbがオンとされており、キャパシタCbk,インダクタLkg,一次巻線に対して、一定の負電圧(
図24中、v
Pを示す矢印の向きに上昇する電圧を正としている。)が出力される。これにより、インダクタLkgを流れる電流は直線的に低下(絶対値は増加)する。一次巻線に印加される電圧はトランスにより変圧されて多段接続カレントダブラ回路を駆動させる。トランスを介して印加される電圧によりキャパシタC2b,インダクタL2bを介して影モジュールPV2に補償電流が流れ込み、この電流はダイオードD2a,キャパシタC2aへと流れる。これらの電流の絶対値も、上記負電圧により直線的に増加する。また影モジュールPV2には、インダクタL2aがエネルギーを放出することによる補償電流も供給される。この電流は、インダクタL2aがエネルギーを失うにつれて減少する。太陽電池調整システムの動作によりモード4の期間中に影モジュールPV2に流れる電流はi
L2aとi
L2bの和に相当する。多段接続カレントダブラ内で影モジュールPV2に対応するインダクタL2a,L2b以外のインダクタに流れる電流はリプル電流成分のみである。
【0099】
スイッチQbをターンオフすると同時にQbを流れていた電流はスイッチQaの逆並列ダイオードであるダイオードDaへと転流し、動作はモード1へと移行する(
図25a)。モード1の開始時において、ダイオードDaには順方向に電流が流れ、キャパシタCbk,インダクタLkg,一次巻線に流れる電流もモード4の期間中と同じ向きであるが、キャパシタCaからの電圧により、それらの電流は直線的に上昇していく(絶対値は低下)。i
Lkgの極性が反転する前にQaに対してゲート電圧v
GSaを印加しておくことで、i
Lkgの極性が反転すると同時にスイッチQaはゼロ電圧でターンオンされる。モード1におけるトランスの巻線電圧は0であり、多段接続カレントダブラ内ではインダクタL2a,L2bが影モジュールPV2へと補償電流を供給することに伴ってダイオードD2a,D2bが導通する。インダクタL2a,L2bがエネルギーを放出するに従い、i
L2a,i
L2bは低下する。モード1の期間中においてもモード4の期間中と同様、太陽電池調整システムから影モジュールPV2に供給される補償電流はi
L2aとi
L2bの和に相当する。ダイオードD2aの電流i
D2aが0になると同時に動作は次のモード2へと移行する。以降、同様に各モードが経時的に実現される。
【0100】
図21,
図24の回路構成では、インバータとしてハーフブリッジ型インバータを用いたが、これに限らず、太陽電池モジュールPV1〜PV4の合計電圧を交流電圧に変換することができるインバータであれば、フルブリッジインバータや非対称ハーブブリッジインバータ等の他のインバータを用いてもよい。
図26,
図27に、フルブリッジインバータを用いて構成された本発明の太陽電池調整システムの回路構成を示す。フルブリッジインバータを用いても、スイッチQ1,Q4がオンの状態とスイッチQ2,Q3がオンの状態とを交互に切り替えることにより
図22中v
pと同様の交流電圧を出力できるため、
図21,
図24の回路と同様の原理で多段接続カレントダブラを動作させてリプル電流を低減しつつ影モジュールに補償電流を供給することができる。
【0101】
なお、
図21,
図24,
図26,
図27の太陽電池調整システムに対しても、
図16cの最適補償を実現するべく
図17の最小電流制御システムを用いることが可能である。
図17を用いて既に説明したとおり太陽電池モジュールPV1〜PV4の補償電流を検出した上で、
図21,
図24のシステムにおいては、スイッチQa,Qbをオンとする期間の長さを、
図26,
図27のシステムにおいては、スイッチQ1,Q4をオンとする期間の長さと、スイッチQ2,Q3をオンとする期間の長さを、
図17中の時比率制御回路で制御することにより、インバータの出力電流を制御し、各太陽電池モジュールに流れる補償電流を調整することができる。例えば
図21,24の回路では、スイッチQa,Qbの時比率を大きくすると(デッドタイムを短くすると)インバータの出力電流が上がり(補償電流も上昇)、
図26,27の回路ではQ1,Q4のオン期間とQ2,Q3のオン期間の時比率を大きくすると(デッドタイムを短くすると)インバータの出力電流が上がる(補償電流も上昇)。