(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-76593(P2015-76593A)
(43)【公開日】2015年4月20日
(54)【発明の名称】電磁コイル、及び位置センサ
(51)【国際特許分類】
H01F 17/00 20060101AFI20150324BHJP
H01F 5/00 20060101ALI20150324BHJP
G01B 7/00 20060101ALI20150324BHJP
【FI】
H01F17/00 C
H01F5/00 M
G01B7/00 101E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-214004(P2013-214004)
(22)【出願日】2013年10月11日
(71)【出願人】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(72)【発明者】
【氏名】下川 拓也
【テーマコード(参考)】
2F063
5E070
【Fターム(参考)】
2F063AA02
2F063CA34
2F063GA01
5E070AA01
5E070AB01
5E070BA07
5E070CB02
5E070CB15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】大きな労力をかけず小型化でき、かつ、用途に応じた形状に容易に成形できる電磁コイルを提供する。
【解決手段】絶縁体からなり、可撓性を有する支持体21と、支持体に支持され、導通路24が螺旋状に形成されるコイル要素と、備え、支持体21は、互いに対向する第1端縁の側と第2端縁の側が付き合わされることで、周方向に連なり、コイル要素は、支持体21の表裏のいずれか一方の面に設けられ、互いに平行に形成される複数の導通路24が、導通路24の第1端縁に対向する一端部と、導通路24に隣接する導通路24の第2端縁に対向する他端部が、電気的に接続されることを特徴とする電磁コイル10。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体からなり、可撓性を有する支持体と、
前記支持体に支持され、導通路が螺旋状に形成されるコイル要素と、備え、
前記支持体は、
互いに対向する第1端縁の側と第2端縁の側が付き合わされることで、周方向に連なり、
前記コイル要素は、
前記支持体の表裏のいずれか一方の面に設けられ、互いに平行に形成される複数の導通路素材が、
前記導通路素材の前記第1端縁に対向する一端部と、前記導通路素材に隣接する前記導通路の前記第2端縁に対向する他端部が、電気的に接続される、
ことを特徴とする電磁コイル。
【請求項2】
前記支持体は、
平面視して形状が矩形をなしており、
複数の前記導通路素材は、
前記第1端縁に対して、所定の傾斜角をなすとともに、間隔が等しく、かつ、長さが等しく形成されている、
請求項1に記載の電磁コイル。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電磁コイルと、
前記コイル要素に誘導起電力を発生させ、かつ、前記コイル要素近傍を移動する磁界発生手段と、を備える、
ことを特徴とする位置センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁コイルに関し、特に位置センサに使用される電磁コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
直線状の変位を測定するセンサとして、PLCD(Permanent magnetic Linear Contactless Displacement)センサが知られている(例えば、特許文献1)。
PLCDセンサは、電磁コイルと、その両側に設けられるピックアップコイルと、電磁コイルに沿って往復移動が可能に配置される永久磁石(移動体)と、を備えている。
永久磁石が電磁コイルに沿って移動することで電磁コイルに生じる磁界により、ピックアップコイルにも磁界が形成され、誘導電圧が生じる。その誘導電圧を測定することで永久磁石の位置、つまり変位を特定できる。
【0003】
PLCDセンサは、例えば自動車において変位する部品の位置を計測する。PLCDセンサは狭隘な場所に設けられることもあり、現状のPLCDセンサの小型化が望まれている。
一般的に、PLCDセンサに使用されている電磁コイルは、樹脂製のボビンの周囲に電線が巻き回された構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2010−507789号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ボビンに電線をきちんと整列させて巻き回す作業は容易ではなく、ボビンに電線を等間隔に配置することが困難である。さらに、ボビンの形状によっても、電線の巻き回しの作業性が異なる。
また、ボビンには、電線が抜け落ちないように軸方向の両端に鍔が形成され、その分だけ厚さが必要なため、電磁コイルを小型化するには限界がある。さらに、小型のボビンの周囲に電線を巻き回す際、電線が切断しないように配慮する必要があるため、大きな労力が必要とされる。
本発明は、このような課題に基づいてなされたもので、大きな労力をかけず小型化でき、かつ、用途に応じた形状に容易に成形できる電磁コイルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的のもと、本発明の電磁コイルは、絶縁体からなり、可撓性を有する支持体と、支持体に支持され、導通路が螺旋状に形成されるコイル要素と、備え、支持体は、互いに対向する第1端縁の側と第2端縁の側が付き合わされることで、周方向に連なり、コイル要素は、支持体の表裏のいずれか一方の面に設けられ、互いに平行に形成される複数の導通路素材が、導通路素材の第1端縁に対向する一端部と、導通路素材に隣接する導通路の第2端縁に対向する他端部が、電気的に接続されることを特徴とする。
このように構成された電磁コイルは、大きな労力をかけずに小型化できる。
【0007】
さらに、本発明の電磁コイルは、支持体は、平面視して形状が矩形をなしており、複数の導通路素材は、第1端縁に対して、所定の傾斜角をなすとともに、間隔が等しく、かつ、長さが等しく形成されていることが好ましい。
支持体の形状を矩形にすることで、第1端縁と第2端縁を重ね合わせやすくすることができるため、コイル作製の作業性を向上させることができる。
【0008】
さらに、本発明は、上記の電磁コイルと、コイル要素に誘導起電力を発生させ、かつ、コイル要素近傍を移動する磁界発生手段と、を備えることを特徴とする位置センサをも提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、導通路素材の第1端縁に対向する一端部と、導通路素材に隣接する導通路の第2端縁に対向する他端部を電気的に接続できる。そのため、電磁コイルを大きな労力をかけず小型化でき、かつ、用途に応じた形状に容易に成形できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施の形態の電磁コイルを示す図であり、(a)は電磁コイルを形成するコイル前駆体の正面図、(b)は電磁コイルの斜視図である。
【
図2】電磁コイルの作製手順を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
本実施形態の電磁コイル10(以下、単にコイル10とよぶ場合がある)は、位置センサとして知られるPLCD(Permanent magnetic Linear Contact-less Displacement:永久磁石式リニア非接触変位)センサ1に使用される。
PLCDセンサ1は、
図3に示すように、電磁コイル(以下、単にコイル)10と、コイル10の長手方向Xの両側に配置されるピックアップコイル3,4と、永久磁石5と、制御部7とを備えている。永久磁石5は、位置が固定されているコイル10に対して平行な経路に沿って往復移動が可能に配置されている。PLCDセンサ1は、位置を計測したい部材に永久磁石5を追従して移動させることにより、当該部材の位置を計測する。
【0012】
PLCDセンサ1は、以下のようにして位置を計測する。
永久磁石5が矢印方向Aに移動すると、移動した位置に対応してコイル10に誘導起電力が生じ、コイル10の周囲に形成される磁界が変化する。そして、その磁界の変化によってピックアップコイル3,4に磁束変化が生じ、誘導電圧が生じる。
ピックアップコイル3,4は、それぞれの両端が電圧計3a,4aに接続されている。そして、永久磁石5の移動によって生じたピックアップコイル3,4の誘導電圧V3,V4は、電圧計3a及び4aによって検出され、制御部7で電圧差ΔV(|V3−V4|)が求められる。そして、その電圧差ΔVから永久磁石5の位置を判断することができる。
永久磁石5は、位置を計測したい部材、例えば、自動車のステアリングギアに取り付けられ、ステアリングギアに追従して移動する。この場合、運転手のステアリング操作によってステアリングギアの位置が移動されると、永久磁石5の位置も追従して移動する。
【0013】
次に、
図1を参照してコイル10について説明する。
コイル10は、
図1(a)に記載される可撓性を備えるコイル前駆体20を、
図1(b)に示すように円筒状に成形することで作製される。
はじめに、
図1(a)を参照してコイル前駆体20について説明する。
コイル前駆体20は、平面視の形状が矩形の支持シート21と、支持シート21のおもて面22に形成された複数の導通路24(24a,24b,24c,・・・)と、おもて面22を被覆する絶縁性フィルム25と、を備えている。絶縁性フィルム25は、後述するタブ29a,タブ29bを除いて設けられる。
【0014】
支持シート21は、例えばポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、及びフッ素樹脂より構成され、容易に変形させることができるように、例えば、300〜1600μm程度の厚さを有している。
支持シート21は、互いに対向する一対の長縁27a,長縁27bを備え、各導通路24の両端(始端s,終端f)と長縁27a,長縁27bの間に、一対のタブ29a,タブ29bを備えている。タブ29a,タブ29bは、コイル前駆体20を円筒状に成形してコイル10を作製する際に、長縁27aの側と長縁27bの側を接合するのに用いられる。
【0015】
各導通路24は、同じ長さLで形成され、等間隔Pに配置されている。そして、支持シート21の長縁27bに対して同じ角度θだけ傾斜させて配置されている。つまり、各導通路24は、互いに平行に形成されている。また、導通路24aの始端sは、長手方向Xにおいて、隣接する導通路24bの終端fと同じ位置となるように形成されている。なお、24b、24cも同様に形成されている。つまり、導通路24は1ピッチずつずらした位置に配置されている。
各導通路24は、両端に始端sおよび終端fを備える。この始端sと終端f及びその周囲は、絶縁性フィルム25を被覆していないために導通路24が剥き出しにされており、電気的な接点26を構成する。
導通路24は、例えば、導電性に優れる金属材料、例えば銅又は銅合金を膜状に形成したものを用いることができる。
【0016】
以上説明したコイル前駆体20は、その構成がフレキシブルプリント基板(Flexible Printed Circuits:FPC)を踏襲するものであるから、FPCの製造プロセスに従って作製することができる。ただし、FPCはあくまで好ましい形態の一例である。
【0017】
次に、
図1(b)及び
図2を参照して、コイル前駆体20を用いて作製されるコイル10を説明する。
コイル前駆体20を、タブ29aとタブ29bが付き合わされるように円筒状に成形する。このとき、導通路24が形成された面(おもて面22)が内側になるようにする。また、各導通路24の終端fの接点26と、隣接する導通路24の始端sの接点26とが重なるように、位置決めされる。なお、支持シート21が矩形であるので、タブ29aとタブ29bを位置ずれしないようにすれば、対応する接点26と接点26を位置ずれすることなく接触させることができる。そうすると、コイル前駆体20の状態では独立していた複数の導通路24が一本に繋がり、螺旋状の導通路が形成される。
次に、タブ29aとタブ29bを固定する。固定の方法は任意であり、例えば、タブ29aとタブ29bをつき合わせてから、突き合わされた部分をうら面23の側から接着剤で包むことで、タブ29aとタブ29bを接合することができる。また、接着剤の代わりに、機械的に拘束する部材を、タブ29aとタブ29bの外側から嵌合することで固定することができる。
【0018】
以上により作製されたコイル10の空洞部分にコア28を配置する。コア28の配置方法は任意であるが、例えば、コア28を絶縁性の部材で保持し、その部材の周囲にコイル10を固定することができる。
【0019】
本実施形態によるコイル10は、導通路24が形成されたコイル前駆体20を成形するだけで作製することができるので、電線をボビンに巻き回す従来のコイルに比べて製造が極めて容易である。しかも、導通路24がパターンにより形成されるため、形成される螺旋状の導通路は正確に等間隔に配置される。したがって、コイル10を用いたPLCDセンサは、低コストでありながら、高い検知精度を得ることができる。
また、コイル前駆体20は可撓性を備えているため、任意の形状のコイル10を作製することができる。つまり、以上の説明では、円形に成形する例を示したが、例えば、矩形、多角形、楕円形など、用途に応じた形状を得ることができる。
中でも、矩形に成形することで、長縁27aと長縁27bを重ね合わせやすくできるため、コイル作製の作業性が向上させることができる。
また、コイル10は、ボビンに電線を巻き回した従来のコイルと比べ、厚さを薄くすることができる。つまり、従来のコイルは、電線が抜け落ちないように軸方向の両端に鍔が形成されているため、その分だけボビンの厚さが大きくなる。一方、本実施形態におけるコイル10は、その表面に銅箔からなる導通路24を形成するものであるから、鍔を設ける必要がない。そのため、コイル10の厚さを薄くできる。
【0020】
さらにまた、従来のコイルは、電線を巻き回す際に電線に過大な張力が生ずることがあり、電線が切断されるおそれがある。しかし、本実施形態のコイル10は、導通路24を形成する際に張力は生じないので、導通路24に切断は生じない。
さらに、従来のコイルでは、巻線のからげ部をはんだ付けや溶接により固定しているために、熱損傷により巻線が断線するおそれがある。本実施形態におけるコイル10は、はんだ付けや溶接を行わないため、熱損傷を受けることはない。
【0021】
以上、実施形態に基づき、本発明を説明したが、これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
コイル10は、螺旋状の導通路を円筒状に成形された支持シート21の内周面に形成する例を示したが、外周面に形成することもできる。
また、導通路は、支持シート21のおもて面22とうら面23の両方に設けることもできる。そうすると、円筒状に成形された支持シート21の内周面と外周面の両方に螺旋状の導通路を設けることができ、内・外の螺旋状の導通路を一本の導通路になるように繋げば、2層巻されたコイルとすることができる。
【0022】
また、コイル10は、コア28を設けなければ、ピックアップコイル3,4に適用することもできる。
なお、本実施形態ではコイル10をPLCDセンサ1に適用した例を説明したが、他のセンサ、例えば、誘導形検出センサに適用できる。
【符号の説明】
【0023】
1 PLCDセンサ(センサ)
3,4 ピックアップコイル
3a,4a 電圧計
5 永久磁石
7 制御部
10 電磁コイル(コイル)
20 コイル前駆体
21 支持シート
22 おもて面
23 うら面
24 導通路
24a〜24c 導通路
25 絶縁性フィルム
26 接点
27a,27b 長縁
28 コア
29a,29b タブ
P 間隔
s 始端
f 終端