特開2015-77690(P2015-77690A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-77690(P2015-77690A)
(43)【公開日】2015年4月23日
(54)【発明の名称】新聞印刷用湿し水組成物
(51)【国際特許分類】
   B41N 3/08 20060101AFI20150327BHJP
【FI】
   B41N3/08 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2013-214615(P2013-214615)
(22)【出願日】2013年10月15日
(71)【出願人】
【識別番号】310000244
【氏名又は名称】DICグラフィックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】清野 嘉
(72)【発明者】
【氏名】笠井 正紀
(72)【発明者】
【氏名】松田 信弘
【テーマコード(参考)】
2H114
【Fターム(参考)】
2H114DA08
2H114DA25
2H114DA64
2H114GA23
(57)【要約】
【課題】新聞印刷において、使用する用紙が薄くて不透明度が低いか、又は用紙の白色度が低いなど、用紙の品質が低い場合であっても、鮮明で視認性の高い印刷物を得ることができる湿し水組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】印刷時に用いる湿し水組成物として、白色の色材及び又は蛍光増白剤を含有するものを用いることにより、前記の課題を解決することができる。
即ち、(1)本発明は白色の色材及び又は蛍光増白剤を含有する新聞印刷用湿し水組成物に関する。
(2)また本発明は、前記の白色の色材が白色顔料を含有する組成物である、前記(1)に記載の新聞印刷用湿し水組成物に関する。
(3)また本発明は、前記の白色顔料が酸化チタンである、前記(2)に記載の新聞印刷用湿し水組成物に関する。
(4)また本発明は、前記の組成物が湿し水組成物中に3〜11重量%含まれる、前記(2)に記載の新聞印刷用湿し水組成物に関する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色の色材及び又は蛍光増白剤を含有する新聞印刷用湿し水組成物。
【請求項2】
前記の白色の色材が白色顔料を含有する組成物である請求項1に記載の新聞印刷用湿し水組成物。
【請求項3】
前記の白色顔料が酸化チタンである請求項2に記載の新聞印刷用湿し水組成物。
【請求項4】
前記の白色顔料を含有する組成物が湿し水組成物中に3〜11重量%含まれる請求項2に記載の新聞印刷用湿し水組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は白色の色材を含有し、特に新聞印刷において印刷物の紙面品質の向上に寄与する新聞印刷用湿し水組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷版面が親水性の部分と親油性の部分とを有し、水と油が反発する性質を利用して、油性インキ及び湿し水を用いて行う平版印刷は、新聞印刷においても主たる印刷方法となっている。
【0003】
湿し水組成物は、印刷の現場では一般に湿し水と呼ばれる。本明細書では湿し水の用語を、湿し水組成物を意味する用語としても用いる。
【0004】
印刷版には湿し水と呼ばれる水性液体が版面全体に供給されて、版の親水性の部分が湿し水で被覆される。そして油性インキが供給されると、該インキは版面の親油性の部分にのみ付着する。この親油性の部分は画線部と呼ばれ、文字や絵柄を形成する部分である。
この画線部のインキが紙面に転写されて印刷物が出来上がる。
【0005】
印刷物の紙面の文字や絵柄が鮮明であると読みやすさが向上し、即ち紙面品質が向上する。文字や絵柄の鮮明さを高めるためには、用紙の白色度が高いことが好ましい。
【0006】
しかしながら、新聞用紙の軽量化や紙資源の再利用に伴い、用紙が薄くなり、古紙の使用割合が増加している。そのため用紙の不透明度や用紙の白色度は低下する傾向にある。
【0007】
用紙の不透明度や白色度の低下に対応して紙面品質を維持するため、特許文献1には、新聞用紙の原料パルプである古紙パルプと機械パルプを適切なものとすることにより、紙質強度と不透明度を高めた新聞用紙の発明が記載されている。この発明は用紙の原料の選択と用紙の製造工程の見直しが必要であり、現状市販されている用紙には適用できない。
【0008】
特許文献2には、新聞用紙に塗工してその不透明度を高め、優れたカラー印刷適性を付与し、しかも塗工作業において発泡の問題が無い塗工液の発明が記載されている。この発明は用紙の製造段階で実施する必要があり、現状市販されている用紙には適用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−236152号公報
【特許文献2】特開2009−155787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、新聞印刷において、使用する用紙が薄くて不透明度が低いか、又は用紙の白色度が低いなど、用紙の品質が低い場合であっても、鮮明で視認性の高い印刷物を得ることができる湿し水組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、印刷時に用いる湿し水組成物として、白色の色材及び又は蛍光増白剤を含有する新聞印刷用湿し水組成物を用いることにより、前記の課題を解決する手段を提供する。
即ち、(1)本発明は白色の色材及び又は蛍光増白剤を含有する新聞印刷用湿し水組成物に関する。
(2)また本発明は、前記の白色の色材が白色顔料を含有する組成物である、前記(1)に記載の新聞印刷用湿し水組成物に関する。
(3)また本発明は、前記の白色顔料が酸化チタンである、前記(2)に記載の新聞印刷用湿し水組成物に関する。
(4)また本発明は、前記の白色の顔料を含有する組成物が湿し水組成物中に3〜11重量%含まれる、前記(2)に記載の新聞印刷用湿し水組成物に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の湿し水組成物を新聞印刷に用いることにより、用紙の白色度が低いなど品質が低い場合でも、文字や絵柄が鮮明で視認性の高い印刷物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の新聞印刷用湿し水組成物は、白色の色材及び又は蛍光増白剤を含有する。
白色の色材として好ましく用いられるものの例として白色顔料が挙げられる。
白色顔料の例として、酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン(白陶土)などが挙げられる。
【0014】
新聞印刷用紙の白色度は一般にそれほど高いものでは無いため、本発明で用いる白色顔料は高い白色度を有するものには限定されず、青味、黄味等白色度がそれほど高く無いものであっても用いることができる。
また蛍光増白剤を、白色顔料等の白色の色材と併用して、又は単独で湿し水に添加することができる。
【0015】
湿し水に白色の色材を添加する方法として、白色顔料等を用いる場合は、その顔料等を水その他の溶媒に微細に分散した組成物を先ず調製し、その組成物を湿し水に添加して撹拌混合する方法がある。
<白色顔料を含有する組成物の配合例> 数字は質量部を表す。
酸化チタン・・・70.0
イソプロピルアルコール・・・2.5 (IPAとも略記する。)
湿潤分散剤・・・12.5
水・・・15.0
(合計)100.0
【0016】
酸化チタンとしては、市販されている印刷インキ用のものを用いることができる。
例として、ルチル型で平均粒子径が0.3μm、アルミニウム化合物で表面処理した酸化チタンを挙げることができる。
【0017】
湿潤分散剤としては、市販されている顔料に親和性のある官能基を含む高分子化合物を用いることができる。酸価はおよそ10mgKOH/g程度が好ましい。
【0018】
白色顔料を含有する組成物の、湿し水全量中の含有量は3〜11質量%が好ましく、より好ましくは7〜11質量%である。
【0019】
白色顔料を含有する組成物の製造に際しては、前記配合に例示したような白色顔料及び溶剤等その他の原料を十分に混合した後、ビーズミル等の練肉分散機を用いて練肉を行ない、顔料を微細に分散する。
【0020】
練肉が完了した前記の組成物を湿し水組成物に添加して十分に混合撹拌することにより、本発明の湿し水組成物が出来上がる。
【実施例】
【0021】
本発明の新聞印刷用湿し水組成物を以下の実施例に基づいてさらに詳細に説明する。
表1に湿し水組成物の実施例及び比較例の配合を示し、表2にその配合組成の詳細を示す。
表中の「組成物」は、前記の「白色顔料を含有する組成物」を意味する。
印刷で用いられる湿し水は蒸留水では無いが、水以外の成分は微量であるため、本実施例における印刷では蒸留水を用いた。
【0022】
【表1】
【0023】
例えば実施例1においては、白色顔料を含有する組成物が、本発明の湿し水組成物の全量中に3.57質量%含まれている。
【0024】
【表2】
【0025】
表1に示す湿し水組成物を用いて以下の条件で印刷試験を行った。
印刷機:リョービ社製 3200CD
印刷版:コダック社製 SWORD XD サーマルプレート
インキ:DICグラフィックス社製 新聞用墨インキ
用 紙:日本製紙製 中質紙 品名 アンデス
表3に印刷試験の結果を示す。
【0026】
【表3】
【0027】
印刷した紙面の白色部分(絵柄や文字の無い部分)を測定した。
測定は下地の影響を小さくするために白紙の印刷用紙を6枚重ねた上に印刷した用紙を重ねて置き、5か所測定した平均値を求めた。
【0028】
<測定条件>
使用濃度計: Spectro Eye(X−Rite社製)。
白紙濃度:濃度基準ISO T、絶対濃度、フィルター無しで全濃度測定した。B、C、M、Yはそれぞれ墨、シアン、マゼンタ、イエローの濃度を表す。
L* a* b*:光源D50、観察視野2°、絶対濃度、フィルター無し。
白色度:光源D65、観察視野2°、絶対濃度、フィルター無し、国際照明委員会のPublication CIE No.15.2(1986)の5.3に規定する白色度の評価方法による。
【0029】
<測定結果について>
白紙濃度およびL*a*b*測定では、比較例に対して実施例の優位は確認されなかった。
白色度は実施例1〜3において、比較例に対して向上している事が確認された。
【0030】
目視判定は、文字や絵柄の鮮明さ、読みやすさを新聞インキ開発に関わる技術者が印刷物を目視して評価を行った。
◎が最も良く、○は従来よりも優れており、△は従来と同等かそれ以下である。
目視による判定では、実施例1〜3において、白色度及び文字や絵柄の鮮明さが向上している事が確認された。
特に実施例2および実施例3の効果が高い事が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の湿し水組成物は、新聞印刷において、用紙の白色度が低いなど用紙の品質が低い場合でも、文字や絵柄が鮮明で視認性の高い印刷物を得ることができる。