【解決手段】鉄道車両1は、ディーゼルエンジン10と、変速機12と、ブレーキ装置14と、エンジン制御装置11と、変速機制御装置13と、ブレーキ制御装置15と、これら制御装置11,13,15に制御指令を出力可能な車体回路21とを備える。また、鉄道車両1は、変速機12と台車30の減速機33とに両端部40a,40bが連結された推進軸40と、車体20の台枠20aに取付けられて推進軸40が地面に接することを防止する落下防止枠50とを備える。そして、鉄道車両1には、推進軸40が地面に向けて落下したことを検知する落下検知装置60と、落下検知装置60の検知に基づいて運転士に推進軸40の落下を報知する報知装置70とを設ける。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の鉄道車両において、以下の問題点がある。即ち、高速走行中に万一推進軸140の他端部140bが落下すると、推進軸140の一端部140aはエンジン側に連結されているため、推進軸140は落下した状態でエンジンから駆動力が伝達される。このとき、仮にエンジンから駆動力の伝達を遮断しなければ、推進軸140は回転し続けることになる。一方、高速走行中に万一推進軸140の一端部140aが落下したときには、問題が更に大きくなる。
【0008】
つまり、推進軸140の一端部140aが落下すると、推進軸140の他端部140bは台車側に連結されているため、エンジンから駆動力の伝達を遮断したとしても、車両の大きな慣性により推進軸140がしばらくの間回転し続けることになる。これにより、落下した推進軸140は、車両の走行中に大きな回転力を持って落下防止枠150の下辺部150aに衝突し、落下防止枠150の左辺部150b又は右辺部150cにも衝突して、跳ね回ることになる。その結果、落下防止枠150が跳ね回る推進軸140によって大きく変形し又は破損する可能性を完全には否定できるものではなかった。
【0009】
こうして、推進軸140の一方の端部140a,140b、特に推進軸140の一端部140aが落下したときには、一刻も早く車両の走行を停止する必要がある。しかし、従来では、万一推進軸140が落下しても、運転士が推進軸140の落下に気付き難く、推進軸140の落下を認識しないまま車両の走行を続けたり、エンジンからの駆動力の伝達が維持されるおそれがあった。これにより、車両の走行の停止が速やかに行われずに、落下防止枠150が破損して、推進軸が地面に接するような危険な事態に至るおそれがあった。
【0010】
そこで、本発明は上記した課題を解決するためになされたものであり、万一推進軸の一方の端部が外れて推進軸が地面に向けて落下しても、車両の走行を速やかに停止させることができる鉄道車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る鉄道車両は、車体を支持していて走行可能な台車と、前記台車を走行させるための駆動力を発生するエンジンと、前記エンジンから前記台車への駆動力を変速可能且つ遮断可能な変速機と、前記台車に制動力を付与可能なブレーキ装置と、前記エンジンと前記変速機と前記ブレーキ装置とをそれぞれ制御可能なエンジン制御装置と変速機制御装置とブレーキ制御装置と、前記エンジン制御装置と前記変速機制御装置と前記ブレーキ制御装置にそれぞれ制御指令を出力可能な車体回路と、前記台車側の部材と前記変速機側の部材とに両端部が連結されて駆動力を伝達する推進軸と、前記車体の下側に設けられていて前記推進軸が地面に接することを防止する落下防止枠とを備えたものであって、前記推進軸が地面に向けて落下したことを検知する落下検知装置と、前記落下検知装置の検知に基づいて運転士に前記推進軸の落下を報知する報知装置とを設けたことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る鉄道車両によれば、万一推進軸の一方の端部が外れて推進軸が地面に向けて落下しても、落下検知装置が推進軸の落下を検知し、報知装置が運転士に推進軸の落下を報知する。これにより、運転士は、推進軸の落下を認識できるため、マスコンハンドルを操作してエンジンからの駆動力を遮断したり、ブレーキ装置を作動させることができる。従って、運転士が推進軸の落下を認識しないまま走行し続けることを防止でき、車両の走行を速やかに停止させることができる。
【0013】
また、本発明に係る鉄道車両において、前記落下検知装置は、前記推進軸の落下の検知に基づいて、前記変速機が前記エンジンから前記台車への駆動力を遮断するための制御指令を、前記車体回路を介して前記変速機制御装置に出力することが好ましい。
この場合には、推進軸が落下したときに、いち早くエンジンから推進軸へ駆動力が伝達されなくなり、推進軸の回転力の増加を抑えて、推進軸による落下防止枠の破損を抑えることができる。
【0014】
また、本発明に係る鉄道車両において、前記落下検知装置は、前記推進軸の落下の検知に基づいて、前記ブレーキ装置が前記台車に制動力を付与するための制御指令を、前記車体回路を介して前記ブレーキ制御装置に出力しても良い。
この場合には、推進軸が落下したときに、自動的にブレーキ装置が台車に制動力を付与する。これにより、いち早く車両が停止しようとして、走行停止するまでの距離を最も短くすることができる。この結果、車両の慣性で推進軸が回り続けることを防止でき、推進軸による落下防止枠の破損を最小限に抑えることができる。
【0015】
また、本発明に係る鉄道車両において、前記落下検知装置は、通常時に前記推進軸に接触しない位置で前記落下防止枠の内側に配置されていて前記推進軸の落下により切断される断線検知センサと、前記車体回路に組み込まれていて前記断線検知センサの切断によって前記推進軸が落下したことを判断する落下検出器とを有していると良い。
この場合には、推進軸の落下を検知する構成がシンプルであり、落下検知装置を安価に構成することができる。
【0016】
また、本発明に係る鉄道車両において、前記断線検知センサは、前記推進軸より下側に配置される第1断線検知センサと、前記推進軸より上側又は左側或いは右側に配置される第2断線検知センサとを有し、前記落下検出器は、前記第1断線検知センサと前記第2断線検知センサの両方が切断したときに前記推進軸が落下したと判断しても良い。
この場合には、推進軸が落下した後に推進軸が落下防止枠の中で跳ね回る。これにより、第1断線検知センサが切断されると共に第2断線検知センサが切断されて、落下検出器は推進軸が落下したことを判断できる。一方、走行中に例えば飛石等によって第1断線検知センサと第2断線検知センサの一方が切断されると、落下検出器は推進軸が落下していないと判断する。こうして、推進軸が落下していないにも拘わらず、運転士に推進軸の落下を報知する事態(誤検知)を確実に防止できる。
【0017】
また、本発明に係る鉄道車両において、前記報知装置は、前記第1断線検知センサと前記第2断線検知センサの一方が切断したときに運転士に注意状態として報知し、前記第1断線検知センサと前記第2断線検知センサの両方が切断したときに運転士に緊急状態として報知しても良い。
この場合には、運転士は、例えば飛石等によって第1検知用電線と第2検知用電線の一方が切断された注意状態と、実際に推進軸が落下した緊急状態とを区別して認識できる。これにより、運転士はそれらの状態に応じて対応でき、例えば、注意状態のときには修理が必要な事態を認識しつつ走行を維持することができる。
【0018】
また、本発明に係る鉄道車両において、前記エンジンには、前記推進軸と反対側に補機駆動軸を介して補機が接続されていて、前記車体の下側に取付けられていて前記補機駆動軸が地面に接することを防止する第2落下防止枠と、前記補機駆動軸が地面に向けて落下したことを検知する第2落下検知装置が設けられ、前記報知装置は、前記第2落下検知装置の検知に基づいて運転士に前記補機駆動軸の落下を報知すると良い。
この場合には、補機駆動軸が落下したときでも、第2落下検知装置が補機駆動軸の落下を検知し、報知装置が運転士に補機駆動軸の落下を報知する。これにより、運転士は、補機駆動軸の落下を認識できるため、マスコンハンドルを操作してエンジンの駆動を停止させたり、ブレーキ装置を作動させることができる。従って、運転士が補機駆動軸の落下を認識しないまま走行し続けることを防止でき、車両の走行を速やかに停止させることができる。
【0019】
また、本発明に係る鉄道車両において、前記第2落下検知装置は、前記補機駆動軸の落下の検知に基づいて、前記エンジンの駆動を停止させるための制御指令を、前記車体回路を介して前記エンジン制御装置に出力すると良い。
この場合には、補機駆動軸が落下したときに、自動的にエンジンの駆動が停止する。これにより、いち早くエンジンから補機駆動軸への駆動力の伝達がなくなり、補機駆動軸の回転力の増加を抑えて、補機駆動軸による第2落下防止枠の破損を抑えることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の鉄道車両によれば、万一推進軸の一方の端部が外れて推進軸が地面に向けて落下しても、運転士が推進軸の落下をすぐに認識することができ、車両の走行を速やかに停止させることができる。従って、落下防止枠の破損によって推進軸が地面に接するような危険な事態を確実に防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第1実施形態>
本発明に係る鉄道車両の各実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。
図1は、第1実施形態の鉄道車両1を模式的に示した図である。また、
図2は、
図1に示したA部分を拡大した図である。
【0023】
鉄道車両1は、ディーゼルエンジン10の回転出力を駆動力として走行する気動車である。この鉄道車両1は、
図1に示すように、主に、ディーゼルエンジン10と、変速機12と、ブレーキ装置14と、車体20と、2台の台車30,30と、推進軸40と、落下防止枠50とを備えている。この第1実施形態の鉄道車両1は、1両編成で1つのディーゼルエンジン10を備えた鉄道車両である。
【0024】
ディーゼルエンジン10は、台車30を走行させるための駆動力を発生するものである。このディーゼルエンジン10は、
図1及び
図2に示すように、車体20の台枠20aに吊り下げられていて、回転出力を変速機12で変速できるようになっている。このディーゼルエンジン10の駆動は、車体20に搭載されているエンジン制御装置11(
図3参照)によって制御されている。なお、エンジンの種類はディーゼルエンジンに限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【0025】
変速機12は、内部にクラッチ機構(図示省略)を有していて、ディーゼルエンジン10から推進軸40及び台車30への駆動力を遮断可能になっている。この変速機12の作動は、車体20に搭載されている変速機制御装置13(
図3参照)によって制御されている。そして、変速機12には、
図2に示すように、自在継手41を介して推進軸40の一端部40aが連結されている。この変速機12自体が、本発明の「変速機側の部材」に相当する。なお、「変速機側の部材」は、変速機12と推進軸40の一端部40aとの間の部材であれば良く、適宜変更可能である。
【0026】
ブレーキ装置14は、台車30の各車輪31,31に制動力を付与するものである。このブレーキ装置14は、各車輪31,31に取付けられていて、空気圧によって各車輪31,31のディスクを挟み込んで制動力を付与するようになっている。このブレーキ装置14の作動は、車体20に搭載されているブレーキ制御装置15(
図3参照)によって制御されている。なお、ブレーキ装置14は、ディスクブレーキ式に限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【0027】
車体20は、
図1に示すように、レール方向に長く延びていて、2台の台車30によって空気バネ25を介して支持されている。このため、車体20と台車30とは、空気バネ25の伸縮によって上下方向に変位する。また、車体20と台車30とは、鉄道車両1がカーブするときに、枕木方向に大きく変位する。この車体20には、エンジン制御装置11と変速機制御装置13とブレーキ制御装置15にそれぞれ制御指令を出力可能な車体回路21(
図3参照)が搭載されている。ここで、
図3は、鉄道車両1の制御システムを模式的に示した図である。
【0028】
車体回路21は、
図3に示すように、変速機制御装置13とブレーキ制御装置15に接続されていて、マスコン制御回路22から変速機制御装置13とブレーキ制御装置15に制御指令を出力することができる。また、車体回路21は、自動で変速を行う都合でエンジン制御装置11に対して、変速機制御装置13を介して制御指令を出力するようになっている。マスコン制御回路22は、車体回路21に組み込まれていて、運転士が操作するマスコンハンドル23から制御信号を入力して、各制御装置11,13,15に向けて制御指令を出力する。なお、マスコンハンドル23は、ワンハンドル式マスコンであるが、力行ハンドルとブレーキハンドルとが分離していても良く、適宜変更可能である。
【0029】
例えば車両の発進又は加速を行う場合、運転士がマスコンハンドル23を力行の位置に操作すると、マスコン制御回路22がマスコンハンドル23からの制御信号に基づいて、変速機制御装置13に変速用の制御指令を出力すると共に、変速機制御装置13を介してエンジン制御装置11に加速用の制御指令を出力する。これにより、変速機制御装置13が変速機12を制御して最適なギヤに切り換えると共に、エンジン制御装置11がディーゼルエンジン10を制御して最適な駆動力を発生させる。
【0030】
また、車両の惰性走行を行う場合、運転士がマスコンハンドル23をニュートラルの位置に操作すると、マスコン制御回路22がマスコンハンドル23からの制御信号に基づいて、変速機制御装置13にクラッチ断続の制御指令を出力する。これにより、変速機制御装置13が変速機12を制御して、クラッチ機構の接続を遮断させる。こうして、ディーゼルエンジン10の駆動力が台車30に伝達されなくなり、車両の惰性走行を行うことできる。
【0031】
また、車両の緊急停止を行う場合、運転士がマスコンハンドル23を非常ブレーキの位置に操作すると、マスコン制御回路22がマスコンハンドル23からの制御信号に基づいて、変速機制御装置13にクラッチ断続の制御指令を出力すると共に、変速機制御装置13を介してエンジン制御装置11にアイドリングの制御指令を出力し、且つブレーキ制御装置15に非常ブレーキの制御指令を出力する。これにより、変速機制御装置13が変速機12を制御してクラッチ機構の接続を遮断させると共に、エンジン制御装置11がディーゼルエンジン10を制御してアイドリング状態にし、且つブレーキ制御装置15がブレーキ装置14を制御して非常に大きな制動力を発生させる。こうして、車両の緊急停止を行うことができる。
【0032】
台車30は、鉄道車両1を走行させるためのものであり、
図1に示すように、前後左右に合計4つの車輪31と、各車輪31を組付けている台車枠32とを有している。そして、一方側(
図1の右側)の台車30には、減速した出力を各車輪31に伝達する減速機33が設けられている。減速機33には、
図2に示すように、自在継手42を介して推進軸40の他端部40bが連結されている。この減速機33が、本発明の「台車側の部材」に相当する。なお、「台車側の部材」は、台車30と推進軸40の他端部40bとの間の部材であれば良く、適宜変更可能である。
【0033】
推進軸40は、回転することでディーゼルエンジン10が発生した駆動力を伝達するものである。この推進軸40は、
図2に示すように、レール方向に延びていて伸縮可能であり、車体20の台枠20aより下側に配置されている。
【0034】
推進軸40の一端部40a及び他端部40bは、ボルト締結や溶接によって自在継手41,42に連結されていて、揺動可能になっている。こうして、ディーゼルエンジン10が発生した駆動力は、変速機11と推進軸と40と減速機33を介して、台車30の各車輪31に伝達されて、鉄道車両1が走行する。ここで、
図4は、
図2のB−B線に沿った断面図である。
【0035】
落下防止枠50は、
図4に示すように、推進軸40が地面に接することを防止するものであり、
図2及び
図3に示すように、車体20の台枠20aより下側に設けられていて、推進軸40の中間部40cに対応して配置されている。この落下防止枠50は、U字状に形成された鋼製の枠体であり、下辺部50aと左辺部50bと右辺部50cとで推進軸40の中間部40cを囲んでいて、左辺部50bと右辺部50cの上端が台枠20aに取付けられている。
【0036】
ところで、上述したように、推進軸40の両端部40a,40bの連結では、ボルト締結や溶接が用いられている。このため、仮に推進軸40の他端部40bや自在継手42で、ボルト締結が緩み脱落したり溶接部分が切れた場合には、推進軸40の一端部40a側を基点として、推進軸40の他端部40bが落下することになる(
図5参照)。このとき、落下防止枠50の下辺部50aが、落下する推進軸40の中間部40cを受け止めて、推進軸40が地面に接することを防止できる。
【0037】
ここで、高速走行中に万一推進軸40の他端部40bが落下すると、推進軸40の一端部40aはディーゼルエンジン10側に連結されているため、推進軸40は落下した状態でディーゼルエンジン10から駆動力が伝達される。このとき、仮にディーゼルエンジン10から駆動力の伝達を遮断しなければ、推進軸40は回転し続けることになる。一方、高速走行中に万一推進軸40の一端部40aが落下したときには、問題が更に大きくなる。
【0038】
つまり、推進軸40の一端部40aが落下すると、推進軸40の一端部40aは台車30側に連結されているため、ディーゼルエンジン10から駆動力の伝達を遮断したとしても、車両の大きな慣性により推進軸40がしばらくの間回転し続ける。これにより、落下した推進軸40は、車両の走行中に大きな回転力を持って落下防止枠50の下辺部50aに衝突し、左辺部50b又は右辺部50cにも衝突して、跳ね回ることになる。その結果、落下防止枠50が跳ね回る推進軸40によって大きく変形し又は破損する可能性を完全に否定できるものではなかった。
【0039】
こうして、推進軸40の一方の端部40a,40b、特に推進軸40の一端部40aが落下したときには、一刻も早く車両の走行を停止する必要がある。しかし、従来では、万一推進軸40が落下しても、運転士が推進軸40の落下に気付き難く、推進軸40の落下を認識しないまま車両の走行を続けたり、ディーゼルエンジン10からの駆動力の伝達が維持されるおそれがあった。
【0040】
そこで、本実施形態の鉄道車両1は、万一推進軸40が落下したときでも、車両の走行を速やかに停止させることができて、落下防止枠50の破損を防止して推進軸40が地面に接するような危険な事態を確実に防止できるように構成されている。こうして、第1実施形態の鉄道車両1には、
図3及び
図4に示すように、落下検知装置60と報知装置70が設けられている。
【0041】
落下検知装置60は、推進軸40が地面に向けて落下したことを検知するものであり、断線検知センサ61と落下検出器62とを有して構成されている。断線検知センサ61は、
図4に示すように、推進軸40より下側で左右方向に延びるように配置された電線であり、一端がコネクタ63aを用いて落下防止枠50の左辺部50bに取付けられ、他端がコネクタ63bを用いて落下防止枠50の右辺部50cに取付けられている。この断線検知センサ61では、内部に電流が流れるようになっている。
【0042】
次に、断線検知センサ61が配置されている位置について説明する。
図4に示すように、推進軸40から断線検知センサ61までの距離S1は、通常時に推進軸40が断線検知センサ61に接触しないように設定されている。即ち、鉄道車両1の空車時には落下防止枠50の下辺部50aと推進軸40とが近づくが、この空車時で走行中の振動によっても推進軸40と断線検知センサ61とが接触しないように配置されている。
【0043】
そして、断線検知センサ61が推進軸40の下側で左右方向に延びるように配置されているのは、万一推進軸40の一方の端部40a,40bが外れると、推進軸40は鉛直方向下向きに落下するため、断線検知センサ61を早く且つ確実に切断できるためである。また、鉄道車両1は、走行中にカーブで枕木方向に大きく移動するため、推進軸40は、落下防止枠50に対して上下方向に比べて左右方向(枕木方向)に大きく移動する。このため、推進軸40と接触しないように従来から存在する落下防止枠50の内側に電線を配置するには、上下方向に延びる電線より左右方向に延びる電線の方が配置し易いためである。
【0044】
この断線検知センサ61は、走行中の振動や飛石等によって容易に切断されるものではなく、比較的強度が高いものである。要するに、断線検知センサ61は、適度に補強されていて、約100kgの重量がある推進軸40が落下した際に初めて切断されるように構成されている。なお、断線検知センサ61は、電線で構成されるものに限られず、変形例として破断荷重の設計が容易な金属状の棒又は中空パイプで構成しても良く、電線とその電線を覆う中空パイプとで構成しても良い。
【0045】
落下検出器62は、断線検知センサ61が切断されたことを検知するものであり、例えば単一のリレーで構成されている。そして、断線検知センサ61が切断されて断線検知センサ61に電流が流れなくなったとき、落下検出器62は、
図3に示すように、報知装置70に検知信号を送信するようになっている。こうして、本実施形態では、推進軸40の落下を検知する構成が断線検知センサ61と落下検出器62とによってシンプルであり、落下検知装置60を安価に構成することができる。
【0046】
報知装置70は、運転席に座る運転士から見える位置に設けられていて、落下検出器62からの検知信号を受信したときに、緊急状態として例えば赤色の警告ランプ70aを点灯するようになっている。これにより、警告ランプ70aの点灯を見た運転士は、推進軸40が落下したことを認識し、その後の対応として例えばマスコンハンドル23を非常ブレーキの位置に操作して、車両の緊急停止を行うことができる。なお、報知装置70は、警告ランプ70aを点灯させる構成以外にも適宜変更可能であり、例えば警告音を発生する構成であっても良い。
【0047】
第1実施形態の作用効果について説明する。
第1実施形態の鉄道車両1によれば、高速走行中に、
図5に示すように、万一推進軸40の一端部40aが外れて推進軸40が地面に向けて落下すると、
図6に示すように、断線検知センサ61が落下する推進軸40によって切断される。これにより、落下検出器62は検知信号を報知装置70に送信し、報知装置70が警告ランプ70aを点灯させる。こうして、運転士は、推進軸40の落下を認識できるため、マスコンハンドル23を操作してディーゼルエンジン10からの駆動力を遮断したり、ブレーキ装置14を作動させることができる。
【0048】
ここで、運転士がマスコンハンドル23を非常ブレーキの位置に操作すると、ディーゼルエンジン10がアイドリング状態になると共に、変速機12がクラッチ機構の接続を遮断してディーゼルエンジン10から推進軸40へ駆動力の伝達が遮断される。同時に、ブレーキ装置14が非常に大きな制動力を発生させて、車両の緊急停止が行われる。こうして、運転士が推進軸40の落下を認識して、車両の走行を速やかに停止させることができる。従って、万一推進軸40の一端部40aが外れて推進軸40が落下したときであっても、台車30の大きな慣性で推進軸40がしばらくの間回転し続ける事態が防止され、落下防止枠50の破損によって推進軸40が地面に接するような危険な事態を確実に防止できる。
【0049】
なお、第1実施形態の鉄道車両1において、万一トンネル内で火災が発生し、且つ推進軸40が地面に向けて落下する状況が生じた場合には、推進軸40の落下を認識した運転士が、マスコンハンドル23をニュートラルの位置に操作して車両を惰性走行させる、又は上り勾配等で加速が必要なときには誤検知の可能性も考慮し、マスコンハンドル23が力行の位置のまま加速走行を試みる。これにより、先ず車両をトンネル外まで確実に避難させる。その後、運転士がマスコンハンドル23を非常ブレーキの位置に操作し、車両の走行を速やかに停止させることになる。運転士がこのような操作を行うのは、第1実施形態の鉄道車両1が1両編成で1つのディーゼルエンジン10のみを備えていて、慣性力又は1つのディーゼルエンジン10の駆動でトンネル外への退避を優先させるためである。こうした理由に基づき、第1実施形態の鉄道車両1は、後述する第2実施形態の鉄道車両1Dと異なり、推進軸40が落下したときにディーゼルエンジン10の駆動力の遮断を自動的に行わないようになっている。
【0050】
<第1実施形態の変形例>
次に、第1実施形態の変形例について説明する。変形例の鉄道車両と上述した第1実施形態の鉄道車両1とは、落下検知装置及び報知装置の構成が異なること以外同様であるため、変形例の落下検知装置60A及び報知装置70Aの構成についてのみ説明する。
図7は、落下検知装置60Aを説明するための図である。落下検知装置60Aは、
図7に示すように、第1断線検知センサ61Dと第2断線検知センサ61Uを有すると共に、落下検出器62A(
図8参照)を有して構成されている。
【0051】
第1断線検知センサ61Dは、上述した断線検知センサ61と同様に、推進軸40より下側で左右方向に延びるように配置された電線であり、一端がコネクタ63cを用いて落下防止枠50の左辺部50bに取付けられ、他端がコネクタ63dを用いて落下防止枠50の右辺部50cに取付けられている。また、第2断線検知センサ61Uは、推進軸40より上側で左右方向に延びるように配置された電線であり、一端がコネクタ63eを用いて落下防止枠50の左辺部50bに取付けられ、他端がコネクタ63fを用いて落下防止枠50の右辺部50cに取付けられている。これら断線検知センサ61D,61Uでは内部に電流が流れるようになっている。
【0052】
推進軸40から第1断線検知センサ61Dまでの距離S1は、通常時に推進軸40が第1断線検知センサ61Dに接触しないように設定されている。そして、推進軸40から第2断線検知センサ61Uまでの距離S2も、通常時に推進軸40が第2断線検知センサ61Uに接触しないように設定されている。即ち、鉄道車両の満車時には台枠20aと推進軸40とが近づくが、この満車時で走行中の振動によっても推進軸40と第2断線検知センサ61Uとが接触しないように配置されている。
【0053】
落下検出器62Aは、第1,第2断線検知センサ61D,61Uが切断されたことを検知するものであり、第1,第2断線検知センサ61D,61Uの両方が切断されて両方に電流が流れなくなったとき、
図8に示すように、検知信号を送信するようになっている。一方、第1,第2断線検知センサ61D,61Uの一方が切断されてその一方に電流が流れなくなったとき、センサ異常信号を送信するようになっている。
【0054】
報知装置70Aは、落下検出器62Aからの検知信号を受信したときに、緊急状態として例えば赤色の警告ランプ70bを点灯するようになっている。これにより、警告ランプ70bの点灯を見た運転士は、推進軸40が落下したことを認識し、その後の対応として例えばマスコンハンドル23を非常ブレーキの位置に操作して、車両の緊急停止を行うことができる。
【0055】
一方、報知装置70Aは、落下検出器62Aからセンサ異常信号を受信したときに、注意状態として例えば黄色の警告ランプ70cを点灯するようになっている。これにより、警告ランプ70cの点灯を見た運転士は、第1,第2断線検知センサ61D,61Uの一方が切断されて修理が必要な事態を認識しつつ走行を維持することができる。こうして、報知装置70Aの警告ランプ70b及び警告ランプ70cによって、運転士は推進軸40が落下した緊急状態と、第1,第2断線検知センサ61D,61Uが切断されて故障している注意状態とを区別して認識でき、それらの状態に応じて対応することができる。
【0056】
この変形例によれば、高速走行中に、万一推進軸40が落下すると、
図9(A)に示すように、第1断線検知センサ61Dが落下する推進軸40によって切断される。そして、推進軸40が落下防止枠50の下辺部50aに当接した後、落下防止枠50の内側で跳ね回る。これにより、
図9(B)に示すように、第2断線検知センサ61Uが跳ね回る推進軸40によって切断される。こうして、第1,第2断線検知センサ61D,61Uの両方が切断されると、報知装置70Aは緊急状態として赤色の警告ランプ70bを点灯する。この結果、運転士は、推進軸40の落下を認識でき、車両の走行を速やかに停止させることができる。
【0057】
一方、走行中の飛石等によって第1,第2断線検知センサ61D,61Uの一方が切断されたときには、注意状態として黄色の警告ランプ70cを点灯する。これにより、警告ランプ70cを見た運転士は、推進軸40の落下を認識しない。こうして、第1,第2断線検知センサ61D,61Uの両方で推進軸40の落下を検知することで、推進軸40が実際に落下していないにも拘わらず、運転士が推進軸40の落下を認識する事態(誤検知)を確実に防止することができる。変形例のその他の作用効果は、上述した第1実施形態の作用効果と同様であるため、その説明を省略する。
【0058】
なお、変形例において、第2断線検知センサ61Uを推進軸40より上側で左右方向に延びるように配置したが、推進軸40より左側又は右側で上下方向に延びるように配置しても良い。これは、推進軸40が落下した後、跳ね回りが小さいときでも比較的早く且つ確実に切断し易いというメリットがある。
【0059】
一方、上述したように、推進軸40は、落下防止枠50に対して上下方向に比べて左右方向(枕木方向)に大きく移動するため、電線を推進軸40に接触しないように落下防止枠50の内側に配置するには、上下方向に延びる電線が左右方向に延びる電線より配置し難いというデメリットがある。従って、第2断線検知センサは、上記したメリット及びデメリットを総合的に判断して配置が決定される。
【0060】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明するが、第1実施形態と異なる部分を中心に説明し、第1実施形態と同様である部分については説明を省略する。
図10は、第2実施形態の鉄道車両1Dを模式的に示した図である。
図10に示すように、鉄道車両1Dは、2両編成で合計2つのディーゼルエンジン10を備えた鉄道車両である。つまり、鉄道車両1Dは、1車両につきディーゼルエンジン10、変速機12、推進軸40、落下防止枠50を備え、2両編成であることによってそれぞれ2つずつ備えている。なお、鉄道車両1Dは、2両編成に限られるものではなく、2両編成以上の多数編成車両であっても良い。
【0061】
図11は、第2実施形態の鉄道車両1Dの制御システムを模式的に示した図である。この
図11では、1車両における制御システムのみが示されていて、別の車両における制御システムは同様であるため省略している。第2実施形態の落下検知装置60Dは、第1実施形態と同様に、断線検知センサ61と落下検出器62Dを有して構成されているが、落下検出器62Dが車体回路21Dに組み込まれている点に特徴がある。この落下検出器62Dは、推進軸40の落下の検知に基づいて、その推進軸40が落下した車両において、車体回路21Dを介して変速機制御装置13にクラッチ断続の制御指令を出力するようになっている。
【0062】
即ち、落下検出器62Dは、推進軸40が落下して断線検知センサ61が切断されたとき、報知装置70に検知信号を送信すると共に、車体回路21Dを介して変速機制御装置13にクラッチ断続の制御指令を出力する。これにより、変速機制御装置13が変速機12を制御してクラッチ機構の接続を遮断する。こうして、推進軸40が落下した車両において、変速機12がディーゼルエンジン10から台車30(推進軸40)への駆動力を自動的に遮断するようになっている。
【0063】
第2実施形態の作用効果について説明する。
第2実施形態の鉄道車両1Dによれば、例えば進行方向後側の車両において推進軸40が落下すると、進行方向前側の車両に位置する運転士は、推進軸40の落下を衝撃音等で気付き難い。しかし、報知装置70の警告ランプ70aが点灯するため、運転士は推進軸40の落下を確実に認識することができる。そして、進行方向後側の車両では、推進軸40の落下によって断線検知センサ61が切断されて、落下検出器62Dが、車体回路21Dを介して変速機制御装置13にクラッチ断続の制御指令を出力する。これにより、進行方向後側の車両において、変速機12がディーゼルエンジン10から台車30への駆動力を自動的に遮断する。
【0064】
こうして、進行方向後側の車両において、いち早くディーゼルエンジン10から落下した推進軸40へ駆動力が伝達されなくなると共に、推進軸40の落下を認識した運転士は、マスコンハンドル23を非常ブレーキの位置に操作して、車両の緊急停止を行う。この結果、車両の走行を速やかに停止させることができ、落下した推進軸40による落下防止枠50の破損を抑えることができる。
【0065】
また、第2実施形態の鉄道車両1Dにおいて、万一トンネル内で火災が発生し、或る車両で推進軸40が地面に向けて落下する状況が生じた場合には、運転士はマスコンハンドル23が力行の位置のまま加速走行を維持して、車両をトンネル外まで退避させることになる。これは以下の理由に基づく。即ち、或る車両で推進軸40が落下してその車両でディーゼルエンジン10の駆動力が自動的に遮断されても、別の車両ではディーゼルエンジン10の駆動力が遮断されていない。従って、運転士はトンネル外への退避を優先して加速走行を維持したとしても、落下した推進軸40には自動的に駆動力が伝達されずに落下防止枠50の破損を抑えることができる。こうして、万一上記した最悪の状況が生じたとき、トンネル外への退避と落下防止枠50の破損の防止の両立を図ることができるようになっている。第2実施形態のその他の作用効果は、上述した第1実施形態の作用効果と同様であるため、その説明を省略する。
【0066】
<第2実施形態の変形例>
次に、第2実施形態の変形例について説明する。この変形例と上述した第2実施形態の鉄道車両1Dとは、制御システムの構成が異なること以外同様であるため、この変形例の制御システムの構成についてのみ説明する。
図12は、この変形例の鉄道車両の制御システムを模式的に示した図である。
図12に示すように、変形例の落下検知装置60Eの落下検出器62Eも、第2実施形態の落下検出器62Dと同様に、車体回路21Eに組み込まれている。そして、この落下検出器62Eは、推進軸40の落下の検知に基づいて、車体回路21Eを介してブレーキ制御装置15にブレーキ入力の制御指令を出力することに特徴がある。
【0067】
即ち、変形例の落下検出器62Eは、推進軸40が落下して断線検知センサ61が切断されたとき、報知装置70に検知信号を送信し且つ車体回路21を介して変速機制御装置13にクラッチ断続の制御指令を出力すると共に、車体回路21を介してブレーキ制御装置15にブレーキ入力の制御指令を出力する。これにより、変速機制御装置13が変速機12を制御してクラッチ機構の接続を遮断すると共に、ブレーキ制御装置15がブレーキ装置14を制御して車輪31に制動力を付与するようになっている。なお、この制御システムは、推進軸40の落下が検知されたときには、エンジンブレーキが自動で作動しないように設定されている。
【0068】
ここで、落下検出器62Eは、車両位置特定部24から車両の現在位置を常に取得していて、推進軸40の落下を検知したときであっても、車両の現在位置に応じて常にブレーキ制御装置15にブレーキ入力の制御指令を出力しないようになっている。具体的に、車両の現在位置がトンネル内又はトンネル付近において、落下検出器62Eは、ブレーキ制御装置15にブレーキ入力の制御指令を出力しない。こうして、万一トンネル内で火災が発生し、推進軸40が地面に向けて落下する状況が発生した場合、鉄道車両がブレーキ装置14の作動によって自動で停止することを防止している。従って、トンネル内又はトンネル付近で万一推進軸40が落下したときには、運転士が火災の発生状況に応じてマスコンハンドル23を操作して車両の走行の維持又は緊急停止を選択することになる。なお、車両位置特定部24は、既存のデータベースとGPS受信機や地点検知装置等を利用して構成される。
【0069】
この変形例によれば、高速走行中に、万一推進軸40が落下すると、報知装置70の警告ランプ70aが点灯し且つ変速機12がディーゼルエンジン10から台車30への駆動力を自動的に遮断すると共に、ブレーキ装置14が台車30の車輪31に自動的に制動力を付与する。これにより、いち早くディーゼルエンジン10から落下した推進軸40へ駆動力が伝達されなくなると共に、いち早く車両が停止しようとする。この結果、走行停止するまでの距離を最も短くすることができ、落下した推進軸40による落下防止枠50の破損を最小限に抑えることができる。第2実施形態の変形例のその他の作用効果は、上述した第1実施形態の作用効果と同様であるため、その説明を省略する。
【0070】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態について説明するが、第2実施形態と異なる部分を中心に説明し、第2実施形態と同様である部分については説明を省略する。
図13は、第3実施形態の鉄道車両1Fを模式的に示した図である。
図13に示すように、各車両のディーゼルエンジン10には、推進軸40と反対側(
図13の左側)に補機駆動軸80が延びている。この補機駆動軸80では、一端部がディーゼルエンジン10に連結していて、他端部が車体20の台枠20aに吊り下げられている補機90に連結している。こうして、補機90は、ディーゼルエンジン10から補機駆動軸80を介して駆動力が伝達されて、ラジエーター、発電機、空気圧縮機等を作動させるようになっている。ここで、
図14は、
図13のE−E線に沿った断面図である。
【0071】
図14に示すように、補機駆動軸80が地面に接することを防止する第2落下防止枠100が設けられている。この第2落下防止枠100は、車体20の台枠20aより下側に設けられていて、補機駆動軸80の中間部80cに対応して配置されている。この第2落下防止枠100は、U字状に形成された鋼製の枠体であり、下辺部100aと左辺部100bと右辺部100cとで補機駆動軸80の中間部80cを囲んでいて、左辺部100bと右辺部100cの上端が台枠20aに取付けられている。
【0072】
この第3実施形態の鉄道車両1Fは、万一補機駆動軸80が落下したときでも、車両の走行を速やかに停止させることができ、第2落下防止枠100の破損を防止して補機駆動軸80が地面に接するような危険な事態を確実に防止できるように構成されている。ここで、
図15は、第3実施形態の鉄道車両1Fの制御システムを模式的に示した図である。
図15に示すように、落下検知装置60の他に、第2落下検知装置60Fが設けられている。
【0073】
第2落下検知装置60Fは、補機駆動軸80が地面に向けて落下したことを検知するものであり、断線検知センサ61Fと第2落下検出器62Fとを有して構成されている。断線検知センサ61Fは、
図18に示すように、補機駆動軸80より下側で左右方向に延びるように配置された電線であり、一端がコネクタ63gを用いて第2落下防止枠100の左辺部100bに取付けられ、他端がコネクタ63hを用いて第2落下防止枠100の右辺部100cに取付けられている。断線検知センサ61Fでは、内部に電流が流れるようになっている。
【0074】
第2落下検出器62Fは、断線検知センサ61Fが切断されたことを検知するものであり、断線検知センサ61Fが切断されて電流が流れなくなったとき、報知装置70Fに検知信号を送信するようになっている。こうして、報知装置70Fは、第2落下検出器62Fからの検知信号を受信したときに、緊急状態として例えば赤色の警告ランプ70dを点灯するようになっている。これにより、警告ランプ70dの点灯を見た運転士は、補機駆動軸80が落下したことを認識し、その後の対応として例えばマスコンハンドル23を非常ブレーキの位置に操作して、車両の緊急停止を行うことができる。なお、報知装置70Fは、推進軸40が落下して落下検出器62からの検知信号を受信したときにも、緊急状態として警告ランプ70dを点灯するようになっている。
【0075】
この第3実施形態の鉄道車両1Fでは、第2落下検出器62Fが、補機駆動軸80の落下の検知に基づいて、その補機駆動軸80が落下した車両において、車体回路21F及び変速機制御装置13を介してエンジン制御装置11にエンジン停止の制御指令を出力するようになっている。これにより、エンジン制御装置11がディーゼルエンジン10を制御してディーゼルエンジン10の駆動を停止する。こうして、補機駆動軸80が落下した車両において、ディーゼルエンジン10から補機駆動軸80へ駆動力が自動的に伝達しないようになっている。
【0076】
第3実施形態の作用効果について説明する。
第3実施形態の鉄道車両1Fによれば、例えば進行方向後側の車両において補機駆動軸80が落下すると、進行方向前側の車両に位置する運転士は、補機駆動軸80の落下を衝撃音等で気付き難い。しかし、報知装置70Fの警告ランプ70dが点灯するため、補機駆動軸80の落下を確実に認識することができる。そして、進行方向後側の車両では、補機駆動軸80の落下によって断線検知センサ61Fが切断されて、第2落下検出器62Fが、車体回路21Fを介してエンジン制御装置11にエンジン停止の制御指令を出力する。これにより、進行方向後側の車両において、ディーゼルエンジン10の駆動が停止し、ディーゼルエンジン10から補機駆動軸80へ駆動力が伝達しなくなる。
【0077】
こうして、進行方向後側の車両において、いち早くディーゼルエンジン10から落下した補機駆動軸80へ駆動力が伝達されなくなると共に、補機駆動軸80の落下を認識した運転士は、マスコンハンドル23を非常ブレーキの位置に操作して、車両の緊急停止を行う。この結果、車両の走行を速やかに停止させることができ、落下した補機駆動軸80による第2落下防止枠100の破損を抑えることができる。第3実施形態のその他の作用効果は、上述した第2実施形態の作用効果と同様であるため、その説明を省略する。
【0078】
以上、本発明に係る鉄道車両の各実施形態及び各変形例を説明したが、本発明はこれらの実施形態及び変形例に限定されることはなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、第1実施形態及びその変形例の落下検知装置において、断線検知センサを用いて推進軸40の落下を検知したが、その他の方法として、光センサ、タッチセンサ、歪みゲージを用いて推進軸40の落下を検知しても良い。
【0079】
また、第1実施形態においては、
図16に示すように、両端部が自在継手41,42を介して変速機12と減速機33とに連結されている推進軸40に対して、落下検知を行ったが、別の変形例として、両端部が自在継手43,44を介して減速機33と第2減速機34とに連結されている第2推進軸40xに対して、落下検知を行っても良い。別の変形例の場合、落下防止枠50xは、第2推進軸40xが地面に接することを防止していて、台車の牽引梁(図示省略)に取付けられている。第2推進軸40xが本発明の「推進軸」に相当し、落下防止枠50xが本発明の「落下防止枠」に相当し、減速機33が本発明の「変速機側の部材」に相当し、「第2減速機34」が本発明の「台車側の部材」に相当する。
【0080】
また、第1実施形態の変形例において、2本の断線検知センサ61D,61Uを用いて推進軸40の落下の誤検知を防止したが、3本以上の断線検知センサを用いて推進軸40の落下の誤検知を防止しても良い。
また、第2実施形態及びその変形例、第3実施形態に対して、第1実施形態の変形例の落下検知装置60Aを適用しても良い。つまり、各実施形態及びその変形例の特徴を適宜組み合わせて実施しても良い。