【解決手段】 回収した調理済み食品及び/又は半調理済み食品について破袋機によってパッケージを破砕し(ステップS2)、破砕したパッケージを取り除く(ステップS3)。得られた原料を炭化装置内に投入し(ステップS4)、得られる有機廃棄物燃料の発熱量が予め定めた値になるように、原料を加熱する温度を150℃以上300℃以下の適宜温度に設定し(ステップS5)た後、原料の温度が設定した温度になるように保持する炭化処理を実施する(ステップS6)。
前記炭化処理における処理温度を定めるに当たって、冬季に回収した原料を用いる場合、処理温度が150℃以上175℃以下の範囲にあっては、次の(1)式に基づいて定め、処理温度が175℃を超え250℃以下の範囲にあっては、次の(2)式に基づいて定める請求項1から3のいずれかに記載の有機廃棄物燃料の製造方法。
C=(2.8T+4660)×4.184/103 …(1)
C=(23.8T+1010)×4.184/103 …(2)
ただし、C:発熱量(MJ/kg),T:処理温度(℃)
前記炭化処理における処理温度を定めるに当たって、夏季に回収した原料を用いる場合、処理温度が150℃以上200℃以下の範囲にあっては、次の(3)式に基づいて定め、処理温度が200℃を超え250℃以下の範囲にあっては、次の(4)式に基づいて定める請求項1から4のいずれかに記載の有機廃棄物燃料の製造方法。
C=(2.7T+4860)×4.184/103 …(3)
C=(23.8T+650)×4.184/103 …(4)
ただし、C:発熱量(MJ/kg),T:処理温度(℃)
前記各調理済み食品及び/又は半調理済み食品として、コンビニエンスストア又は/及びスーパーマーケットから廃棄されたものを用いる請求項6記載の有機廃棄物燃料の製造方法。
前記食品廃棄物を加熱して水分含量を低下させた一次加熱処理物を得、該一次加熱処理物に適宜量の油分を混合して混合物を得、得られた混合物について前記炭化処理を実施する請求項1から7のいずれかに記載の有機廃棄物燃料の製造方法。
【背景技術】
【0002】
コンビニエンスストア及びスーパーマーケットにあっては、賞味期限が経過したお弁当、おにぎり、調理パン、惣菜、及びお菓子等の調理済み食品、冷凍食品といった半調理済み食品、及び/又は、野菜、果物、鮮魚、及び精肉等の生鮮食品が食品廃棄物として廃棄されている。
【0003】
このような食品廃棄物は多くの場合、焼却処理されているが、焼却処理により発生するエネルギの殆どが回収されていないため、エネルギの損失が甚だしい。
【0004】
そのため、後記する特許文献1には、有機廃棄物の原料が投入されたホッパから当該原料をスクリューフィーダによって炭化炉の回転キルンの一端側へ供給し、周囲に熱風が導入されている回転キルンを回転させることによって、内部に供給された原料を400℃〜800℃に加熱しつつ当該回転キルンの他端側へ移動させることによって、前記原料を炭化させる方法が開示されている。
【0005】
しかし、このようにして製造された炭化物にあっては、単位質量当たりの発熱量が少ないため、燃料として使用することが困難であり、炭化物の用途開発がなされていないという問題があった。
【0006】
そのため、後記する特許文献2には、有機廃棄物の原料に廃油を混合することによって、単位質量当たりの発熱量を増大させた燃料が開示されている。
【0007】
すなわち、有機廃棄物と廃油とを混合して得られた混合物を減圧状態において70℃以上100℃以下の温度で加温し、含水量が40%程度〜20%程度になるまで乾燥させることによって有機廃棄物燃料を得るのである。ここで、前記混合物中に含有される有機廃棄物は、その含水量が70質量%以上である場合、45質量%以上55質量%以下になしてあり、混合物中に含有される廃油は55質量%〜45質量%になしてある。なお、廃油としては鉱物油又は動植物油のいずれも用いることができる。
【0008】
このように廃油以外の有機廃棄物に廃油を添加することによって、4000kcal/kg(16.7MJ/kg)程度〜5000kcal/kg(20.9MJ/kg)程度の発熱量を有する有機廃棄物燃料を得ることができる。廃油を添加せずに製造した有機廃棄物燃料の発熱量は2786kcal/kg(11.7MJ/kg)であったので、廃油を添加することによって、有機廃棄物燃料の発熱量を増大させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、このような従来の有機廃棄物燃料にあっては、発熱量を増大させるために混合物に廃油を55質量%〜45質量%になるように添加するので、得られた有機廃棄物燃料は廃油で非常にベタベタしており、軽く押さえただけでも廃油が容易に分離漏出してしまうため容易に取り扱うことができず、実用の燃料として流通させ、また使用することができないという問題があった。そのため、添加する廃油量を低減させると、所要の発熱量を有する有機廃棄物燃料を得ることができない。
【0011】
ところで、このような有機廃棄物燃料にあっては、当該有機廃棄物燃料を使用する装置毎に、その装置に応じた発熱量が要求されるため、製造コストを可及的に上昇させることなく、かかる要求に答える必要もある。
【0012】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであって、容易に取り扱うことができるのに加え、目的とする発熱量を有する有機廃棄物燃料を製造コストの上昇を可及的に抑制して製造する方法、及び該方法によって製造された有機廃棄物燃料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らが鋭意検討した結果、食品廃棄物を原料とする場合、150℃以上300℃以下の温度範囲において原料が炭化する領域が存在するが、該領域にあっては、炭化処理する温度別に、相互に異なる固有の発熱量を有する有機廃棄物燃料が得られるという知見を得て本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、(1)本発明に係る有機廃棄物燃料の製造方法は、有機廃棄物の原料を炭化処理して有機廃棄物燃料を製造する場合、前記原料として食品廃棄物を用い、前記炭化処理を、150℃以上300℃以下の温度範囲であって、当該炭化処理によって得られる有機廃棄物燃料の発熱量が予め定めた値になる温度で実施することを特徴とする。
【0015】
本発明の有機廃棄物燃料の製造方法にあっては、有機廃棄物の原料を炭化処理して有機廃棄物燃料を製造する場合、原料として食品廃棄物を用いる。かかる食品廃棄物にあっては、その一部を熱分解する炭化処理を木質系廃棄物に比べて比較的低い温度で実施することができ、炭化処理に要するコストを可及的に低減することができる。
【0016】
更に、そのような炭化処理は、150℃以上300℃以下の温度範囲であって、当該炭化処理によって得られる有機廃棄物燃料の発熱量が予め定めた値になる温度で実施する。前述したように150℃以上300℃以下の温度範囲にあっては、炭化処理する温度別に、相互に異なる固有の発熱量を有する有機廃棄物燃料が得られる。従って、炭化処理の温度と得られる有機廃棄物燃料の発熱量との関係を求めておき、予め定めた所要の発熱量の有機廃棄物燃料が得られる温度で炭化処理を実施することによって、当該発熱量の有機廃棄物燃料を製造することができる。
【0017】
また、150℃以上300℃以下の温度範囲では、炭化処理の温度が高くなるに従って、得られる有機廃棄物燃料の発熱量が上昇するが、炭化処理の温度が300℃を超えると、得られる有機廃棄物燃料の発熱量が漸次低下する。ここで、温度が高い程、炭化処理に要するランニングコストが嵩む。そこで、150℃以上300℃以下の温度範囲で炭化処理を行うことによって、可及的に廉価なランニングコストで、所要の発熱量を有する有機廃棄物燃料を製造することができる。
【0018】
しかしながら、炭化処理の温度が300℃を超えるとダイオキシンが発生する虞がある。従って、炭化処理の温度範囲は150℃以上300℃以下とする。
【0019】
ところで、150℃以上300℃以下の温度で炭化処理する場合、例えば木質燃料に代替し得る発熱量を有しているのに加え、得られる有機廃棄物燃料のエネルギ収率が比較的高く、有機廃棄物燃料の製造コストを可及的に廉価にすることができる。
【0020】
これに対して、150℃未満の温度で炭化処理する場合、代替燃料として使用し得る程の発熱量を有する有機廃棄物燃料を得ることができない。
【0021】
一方、炭化処理を150℃以上300℃以下の温度範囲で実施した場合、炭化処理設備を簡素化・小型化することができるのに加え、比較的短時間で炭化処理を行うことができ、ランニングコストを可及的に低減することができる。
【0022】
(2)本発明に係る有機廃棄物燃料の製造方法は、前記炭化処理を250℃以下の温度で実施することを特徴とする。
【0023】
本発明の有機廃棄物燃料の製造方法にあっては、前述した炭化処理を250℃以下の温度で実施する。炭化処理の温度が300℃の場合、得られる有機廃棄物燃料のエネルギ収率が50%未満である。これに対して、炭化処理の温度が250℃の場合、得られる有機廃棄物燃料のエネルギ収率が75%を超え、更に炭化処理の温度が低下するに従って得られる有機廃棄物燃料のエネルギ収率が漸次高くなる。従って、有機廃棄物燃料の製造コストを可及的に廉価にすることができる。
【0024】
(3)本発明に係る有機廃棄物燃料の製造方法は、前記炭化処理を実施する場合、原料を回収した季節、及び次の(1)式乃至(4)式に基づいて処理温度を定めることを特徴とする。
C=(2.8T+4660)×4.184/10
3 …(1)
C=(23.8T+1010)×4.184/10
3 …(2)
C=(2.7T+4860)×4.184/10
3 …(3)
C=(23.8T+650)×4.184/10
3 …(4)
ただし、C:発熱量(MJ/kg),T:処理温度(℃)
【0025】
炭化処理の処理温度と当該炭化処理によって得られる有機廃棄物燃料の発熱量との関係には、有機廃棄物燃料を製造するための原料を回収した季節に応じて幅があることが判明した。そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、原料を回収した季節に応じて前記(1)式乃至(4)式から適当な式を選択し、選択した式に基づいて処理温度を定めることによって、前述した幅を解消することができた。具体的には、後述するように冬期に回収した原料を用いる場合、前記(1)式又は(2)式に基づいて処理温度を定め、夏季に回収した原料を用いる場合、前記(3)式又は(4)式に基づいて処理温度を定める。
【0026】
また、これら以外の季節に回収した原料を用いる場合、前記(1)式と(3)式とで定まる関係領域、又は前記(2)式と(4)式とで定まる関係領域から、目的とする有機廃棄物燃料の発熱量に応じた処理温度を定める。この場合、冬季に近づく程、前記(1)式又は(2)式に近い関係領域から当該処理温度を定め、夏季に近づく程、前記(3)式又は(4)式に近い関係領域から当該処理温度を定めるようにする。
【0027】
このように、原料を回収した季節に応じて、前記(1)式乃至(4)式から適当な式を選択し、選択した式に基づいて処理温度を定める、又は、(1)式乃至(4)式によって定まる関係領域から、目的とする有機廃棄物燃料の発熱量に応じた処理温度を定めるため、原料を回収した季節に拘わらず、目的とする発熱量の有機廃棄物燃料を精度良く製造することができる。
【0028】
(4)本発明に係る有機廃棄物燃料の製造方法は、前記炭化処理における処理温度を定めるに当たって、冬季に回収した原料を用いる場合、処理温度が150℃以上175℃以下の範囲にあっては、次の(1)式に基づいて定め、処理温度が175℃を超え250℃以下の範囲にあっては、次の(2)式に基づいて定めることを特徴とする。
C=(2.8T+4660)×4.184/10
3 …(1)
C=(23.8T+1010)×4.184/10
3 …(2)
ただし、C:発熱量(MJ/kg),T:処理温度(℃)
【0029】
本発明の有機廃棄物燃料の製造方法にあっては、炭化処理における処理温度を定めるに当たって、冬季に回収した原料を用いる場合、処理温度が175℃付近で有機廃棄物燃料の発熱量が変曲しているため、処理温度が150℃以上175℃以下の範囲にあっては、前記(1)式に基づいて定め、処理温度が175℃を超え250℃以下の範囲にあっては、前記(2)式に基づいて定める。これによって、冬季に回収した原料を用いて、目的とする発熱量の有機廃棄物燃料を高精度に製造することができる。
【0030】
(5)本発明に係る有機廃棄物燃料の製造方法は、前記炭化処理における処理温度を定めるに当たって、夏季に回収した原料を用いる場合、処理温度が150℃以上200℃以下の範囲にあっては、次の(3)式に基づいて定め、処理温度が200℃を超え250℃以下の範囲にあっては、次の(4)式に基づいて定めることを特徴とする。
C=(2.7T+4860)×4.184/10
3 …(3)
C=(23.8T+650)×4.184/10
3 …(4)
ただし、C:発熱量(MJ/kg),T:処理温度(℃)
【0031】
本発明の有機廃棄物燃料の製造方法にあっては、炭化処理における処理温度を定めるに当たって、夏季に回収した原料を用いる場合、処理温度が200℃付近で有機廃棄物燃料の発熱量が変曲しているため、処理温度が150℃以上200℃以下の範囲にあっては、前記(3)式に基づいて定め、処理温度が200℃を超え250℃以下の範囲にあっては、前記(4)式に基づいて定める。これによって、夏季に回収した原料を用いて、目的とする発熱量の有機廃棄物燃料を高精度に製造することができる。
【0032】
(6)また、本発明に係る有機廃棄物燃料の製造方法は、前記食品廃棄物として、複数種類の調理済み食品及び/又は半調理済み食品が混在した廃棄物を用いることを特徴とする。
【0033】
本発明の有機廃棄物燃料の製造方法にあっては、食品廃棄物として、複数種類の調理済み食品及び/又は半調理済み食品が混在した廃棄物を用いる。ここで、調理済み食品とは、弁当、おにぎり、惣菜、サンドイッチ、惣菜パン、菓子パン、ケーキ、菓子等、原材料となる食品を調理加工した食品のことをいい、レトルト食品も含むものとする。また、半調理済み食品とは、冷凍食品というように、焼く、揚げる、煮るといった後調理が必要な食品のことをいう。
【0034】
調理済み食品及び/又は半調理済み食品は比較的多くの油分を予め含んでおり、このような食品廃棄物を原料とした場合、外部から油分を添加することなく、所要の発熱量を有する有機廃棄物燃料を製造することができる。また、複数種類の調理済み食品及び/又は半調理済み食品が混合した状態で原料とすることによって、当該原料中の油分の含有率を略一定にすることができる。従って、原料素材の仕分けが不要であり、原料に要するコストの上昇を可及的に抑制することができる。
【0035】
(7)本発明に係る有機廃棄物燃料の製造方法は、前記各調理済み食品及び/又は半調理済み食品として、コンビニエンスストア又は/及びスーパーマーケットから廃棄されたものを用いることを特徴とする。
【0036】
本発明の有機廃棄物燃料の製造方法にあっては、前述した各調理済み食品及び/又は半調理済み食品として、コンビニエンスストア又は/及びスーパーマーケットから廃棄されたものを用いる。コンビニエンスストア及び/又はスーパーマーケットから廃棄される調理済み食品は、多くの種類が廃棄されており、そのためそれらを集めた原料中に含まれる油分の割合は、毎日、略一定である。
【0037】
従って、コンビニエンスストア又は/及びスーパーマーケットから廃棄された各調理済み食品及び/又は半調理済み食品を原料とする場合、原料に含まれる油分をその都度、測定することなく、目的とする発熱量の有機廃棄物燃料を製造することができる。このように、原料素材の仕分けが不要であり、原料の調製に要するコストの上昇を可及的に抑制することができる。また、製造効率が高い。
【0038】
(8)一方、本発明に係る有機廃棄物燃料の製造方法は、前記食品廃棄物を加熱して水分含量を低下させた一次加熱処理物を得、該一次加熱処理物に適宜量の油分を混合して混合物を得、得られた混合物について前記炭化処理を実施することを特徴とする。
【0039】
本発明の有機廃棄物燃料の製造方法にあっては、食品廃棄物を加熱して水分含量を低下させた一次加熱処理物を得る。
【0040】
かかる一次加熱処理では、原料の水分含量を略5質量%〜略30質量%、好ましくは略10質量%〜略15質量%になるまで減少させるとよい。ここで、一次加熱処理物の水分含量が略5質量%未満の場合、一次加熱処理に長時間を要するため、処理効率が低く、ランニングコストも嵩む。また、一次加熱処理物の水分含量が略30質量%を超える場合、後述する炭化処理工程において解砕が十分になされない一次加熱処理物が多く残存するため、炭化処理工程の効率が悪い。そのため、炭化処理に長時間を要し、ランニングコストが嵩む。一方、一次加熱処理の水分含量が略10質量%〜略15質量%である場合、当該処理を比較的短い時間で終了することができる。更に、保存性も高い。なお、液体が滴り落ちるような原料にあっては、前述した一次加熱処理を実施する前に、脱水機にて原料を脱水しておくとよい。
【0041】
次に、この一次加熱処理物に適宜量の油分を混合して混合物を得る。ここで、添加する油分の種類は特に限定されず、動植物油及び/又は鉱物油を用いることができる。
【0042】
油分の添加量は、一次加熱処理物に対して当該一次加熱処理物の4質量%以上30質量%以下、好ましくは10質量%以上20質量%以下の適宜値である。一次加熱処理物の油分含有量が4質量%以上になるように油分を添加混合させた場合、炭化処理を行って得られる有機廃棄物燃料の発熱量が、燃料として使用できる範囲に入るが、一次加熱処理物の油分含有量が4質量%未満では、燃料として使用できる発熱量を有する有機廃棄物燃料を得ることができない。
【0043】
また、一次加熱処理物の油分含有量が30質量%を超えるように油分を添加混合させた場合、炭化処理を行って得られる有機廃棄物燃料が添加された油分によってべたつき、取扱性が著しく低下する。
【0044】
一方、一次加熱処理物の油分含有量が10質量%以上20質量%以下になるように油分を添加混合させた場合、取り扱い上の問題もなく要求量が多い発熱量の有機廃棄物燃料を製造することができる。
【0045】
ところで、一次加熱処理の際にも予め油分を混合させておくことが考えられるが、一次加熱処理の際には被加熱物から多くの水分が気散するため、気散する水分に付随して油分も気散してしまい、油分の損失が生じる。本発明にあっては、一次加熱処理の際に油分を添加していないため、このような油分の損失を防止することができるのである。また、このように油分の気散・排出が防止されるため、加熱機のメンテナンスが容易になるばかりでなく、環境中に油分が排出されることを回避して、クリーンな操業を実現することができる。
【0046】
そして、このようにして得られた混合物について、前述したように炭化処理を実施する。スーパーマーケット等で廃棄される野菜若しくは果物、酒造所で発生する焼酎粕若しくは酒粕、ジュース工場等で発生する果実の搾り粕、豆腐工場で発生するおから等々、油分を殆ど含まない低油性の植物性食品廃棄物にあっては、そのまま炭化処理しただけでは、燃料として使用し得る発熱量を有さない。そこで、かかる含低油性の植物性食品廃棄物を主原料とする場合、一次加熱処理を行って減容するとともに保存性を高めた上で、得られた一次加熱処理物に適宜量の油分を添加し、それらの混合物を前述した如く炭化処理するため、燃料として使用し得る予め定めた値の発熱量を有する有機廃棄物燃料を製造することができる。
【0047】
(9)本発明に係る有機廃棄物燃料は、有機廃棄物の原料を炭化処理して製造された有機廃棄物燃料であって、(1)から(8)のいずれかに記載された有機廃棄物燃料の製造方法にて製造してなることを特徴とする。
【0048】
本発明の有機廃棄物燃料にあっては、有機廃棄物の原料を炭化処理して製造された有機廃棄物燃料であって、(1)から(8)のいずれかに記載された有機廃棄物燃料の製造方法にて製造して構成されているため、前同様の作用効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、本発明を図面に基づいて詳述する。なお、本実施の形態で説明する事柄は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲での変形又は改造を含むことはいうまでもない。
【0051】
(第1の実施形態)
図1は、本発明に係る有機廃棄物燃料を製造する手順を示すフローチャートであり、主に廃棄された調理済み食品及び/又は半調理済み食品を原料として有機廃棄物燃料を製造する場合を示している。
【0052】
本発明者らが鋭意検討したところ、コンビニエンスストア及び/又はスーパーマーケットから廃棄された調理済み食品及び/又は半調理済み食品は比較的多くの油分を予め含んでおり、このような食品廃棄物を原料とした場合、外部から油分を添加することなく、所要の発熱量を有する有機廃棄物燃料を製造することができたのである。
【0053】
従って、本発明に係る有機廃棄物燃料を製造するには、
図1に示したように、原料として、コンビニエンスストア及び/又はスーパーマーケットから廃棄された調理済み食品及び/又は半調理済み食品を回収する(ステップS1)。ここで、調理済み食品とは、弁当、おにぎり、惣菜、サンドイッチ、惣菜パン、菓子パン、ケーキ、菓子等、原材料となる食品を調理加工した食品のことをいい、レトルト食品も含むものとする。また、半調理済み食品とは、冷凍食品というように、焼く、揚げる、煮るといった後調理が必要な食品のことをいう。なお、スーパーマーケット及び一部のコンビニエンスストアにあっては、野菜、鮮魚、精肉等の生鮮食品も廃棄されるため、これらとは分別して回収するのが好ましい。
【0054】
回収した調理済み食品及び/又は半調理済み食品は殆どの場合パッケージされているため、破袋機によって当該パッケージを破砕し(ステップS2)、破砕したパッケージを調理済み食品及び/又は半調理済み食品から取り除く(ステップS3)。なお、弁当及び冷凍食品内に同梱されているマヨネーズ及びドレッシング等の調味料はそのまま破袋機に投入してよい。
【0055】
なお、コンビニエンスストア及び/又はスーパーマーケットからは毎日、生鮮食品を除くと、主に多種類の調理済み食品が廃棄されるが、1店舗又は複数店舗から廃棄された各種調理済み食品を混合すると、当該混合物に含まれる油分の比率は略一定の値である。
【0056】
このようにして原料が調製できると、当該原料を炭化装置内に投入する(ステップS4)。ここで、炭化装置としては、150℃以上300℃以下の温度範囲内で所定の温度に原料を保持することができるものであればよく、投入された原料を加熱する加熱槽内へ熱風を導入する直接型炭化装置であっても、加熱槽の外面を加熱する間接型炭化装置であっても用いることができる。
【0057】
なお、減圧器を併設して加熱槽内を減圧するようになした構造の炭化装置を用いるのが好ましい。投入された原料を短時間で十分に炭化処理することができるからである。
【0058】
そして、得られる有機廃棄物燃料の発熱量が予め定めた値になるように、原料を加熱する温度を150℃以上300℃以下の適宜温度に設定(ステップS5)した後、原料の温度が設定した温度になるように保持する炭化処理を実施する(ステップS6)。すなわち、例えば目的とする有機廃棄物燃料の発熱量が20.9MJ/kg(5000kcal/kg)程度である場合は原料が150℃に保持されるように設定し、目的とする有機廃棄物燃料の発熱量が21.4MJ/kg(5100kcal/kg)程度である場合は原料が170℃に保持されるように設定し、目的とする有機廃棄物燃料の発熱量が23.9MJ/kg(5700kcal/kg)程度である場合は原料が200℃に保持されるように設定し、目的とする有機廃棄物燃料の発熱量が27.2MJ/kg(6500kcal/kg)程度である場合は原料が225℃に保持されるように設定し、目的とする有機廃棄物燃料の発熱量が28.9MJ/kg(6900kcal/kg)程度である場合は原料が250℃に保持されるように設定し、目的とする有機廃棄物燃料の発熱量が29.3MJ/kg(7000kcal/kg)程度である場合は原料が300℃より少し低い温度に保持されるように設定する。
【0059】
なお、かかる炭化処理は、好ましくは250℃以下の温度で実施する。炭化処理の温度が高くなるに従って得られる有機廃棄物燃料のエネルギ収率が低下するが、炭化処理の温度が300℃以上になると、得られる有機廃棄物燃料のエネルギ収率が50%未満に低下してしまうからである。これに対して、炭化処理の温度が250℃以下の場合、得られる有機廃棄物燃料のエネルギ収率は75%を超える値に維持できるので好適である。
【0060】
ところで、有機廃棄物燃料の発熱量は、炭化処理の温度が300℃で頭打ちとなり、炭化処理の温度が300℃を超えると、得られる有機廃棄物燃料の発熱量が漸次低下する。また、炭化処理の温度が300℃を超えるとダイオキシンが発生する虞もある。
【0061】
一方、炭化処理の温度が150℃未満では、燃料として使用し得る発熱量を有するのに加え、容易に取り扱うことができる有機廃棄物燃料を得ることができない。
【0062】
ここで、炭化処理を実施する時間は、炭化装置の許容量と当該炭化装置へ投入する原料の量によって、投入した原料が当該温度で十分に炭化されるように適宜設定すればよい。
【0063】
このような方法によって製造した有機廃棄物燃料にあっては、それに含有される油分が12質量%程度〜14質量%程度であるため、有機廃棄物燃料が全体的にしっとりする程度であり、何らの支障もなく容易に取り扱うことができるのみならず、有機廃棄物燃料の一部又は全部が粉状になった場合であっても、それが舞い上がることが防止される。また、予め定めた発熱量の有機廃棄物燃料が得られるため、その発熱量に対応する燃焼装置へ供給することによって、当該燃焼装置を安全に、また安定して運転することができる。ところで、炭化装置における温度設定を前述した如く調整することによって、種々の発熱量の有機廃棄物燃料を製造することができるので、目的とする発熱量を有する有機廃棄物燃料を製造コストの上昇を可及的に抑制して製造することができる。
【0064】
なお、本実施形態では、主に廃棄された調理済み食品及び/又は半調理済み食品を原料として有機廃棄物燃料を製造する場合を示したが、本発明はこれに限らず、野菜、鮮魚、精肉といった生鮮食品の廃棄物にも適用できる。この場合、例えば、廃棄野菜、廃棄魚及び廃棄肉の別に、炭化処理した後に含まれる油分の割合を予め求めておき、それらを混合して得られる有機廃棄物燃料に含まれる油分の割合が12質量%程度〜14質量%程度になるように廃棄野菜、廃棄魚及び廃棄肉の混合率を定め、定めた混合率で廃棄野菜、廃棄魚及び廃棄肉を混合して原料とする。そして、前同様の条件で炭化処理を実施することによって有機廃棄物燃料を製造する。
【0065】
ところで、有機廃棄物燃料に含まれる油分の割合は12質量%程度〜14質量%程度に限定されることはなく、4質量%以上30質量%以下、好ましくは10質量%以上20質量%以下の適宜の値に調製すればよい。有機廃棄物燃料に含まれる油分の割合が4質量%未満の場合、燃料として使用できる発熱量に達することができず、有機廃棄物燃料に含まれる油分の割合が30質量%を超える場合、有機廃棄物燃料が添加された油分によってべたつき、取扱性が著しく低下するからである。
【0066】
なお、有機廃棄物燃料に含まれる油分の割合が12質量%程度〜14質量%程度以外である場合は、その油分割合において、炭化処理を実施する際の各温度別に、当該温度で炭化処理して得られる有機廃棄物燃料の発熱量を予めそれぞれ求めておく。そして、得られた結果に基づいて、有機廃棄物燃料の発熱量が予め定めた値になるように、原料を炭化処理する温度を設定するようにする。
【0067】
(第2の実施形態)
図2は、第2の実施形態に係る有機廃棄物燃料の製造手順を示すフローチャートであり、主に含低油性の植物性食品廃棄物を原料に使用する場合を示している。ここで、含低油性の植物性食品廃棄物とは、スーパーマーケット等で廃棄される野菜若しくは果物、酒造所で発生する焼酎粕若しくは酒粕、ジュース工場等で発生する果実の搾り粕、豆腐工場で発生するおから等々、油分を殆ど含まない植物性の食品廃棄物をいう。なお、原料の水分状態に応じて予め脱水処理を行ってもよい。
【0068】
図2に示したように原料を回収し、必要に応じて脱水機にて脱水処理を施す(ステップS11、S12)。脱水機としては、遠心分離機又は加圧脱水機等、適宜のものを用いればよい。
【0069】
次に、原料を一次加熱処理する(ステップS13)。原料の一次加熱処理は、原料の水分含量を略5質量%〜略30質量%、好ましくは略10質量%〜略15質量%になるまで減少させることを目的としている。ここで、一次加熱処理物の水分含量が略5質量%未満の場合、一次加熱処理に長時間を要するため、処理効率が低く、ランニングコストも嵩む。また、一次加熱処理物の水分含量が略30質量%を超える場合、後述する炭化処理工程において解砕が十分になされない一次加熱処理物が多く残存するため、炭化処理工程の効率が悪い。そのため、炭化処理に長時間を要し、ランニングコストが嵩む。
【0070】
一方、一次加熱処理の水分含量が略10質量%〜略15質量%である場合、当該処理を比較的短い時間で終了することができるとともに、炭化処理工程にあっても添加された油分の損失は殆どみられない。更に、保存性も高い。
【0071】
対象原料の加熱乾燥方法としては特に限定されず、例えば、対象原料を撹拌しつつ、熱を直接的又は間接的に対象原料へ導入することによって対象原料を加熱処理することができる。
【0072】
この場合、一次加熱処理を減圧環境下で実施すると、処理時間を短くすることができるため好ましい。例えば、真空加熱機GV−35(株式会社ガイア製)を用いた場合、−0.08mpa〜−0.09mpaの圧力、170℃〜180℃という条件下、8時間でキャベツ残渣の水分含量を略10質量%に低減させた一次加熱処理物を得ることができる。また、本真空加熱機を用いた場合、排気温度が48℃程度になったタイミングを一次加熱処理の終点とすることができる。
【0073】
なお、一次加熱処理における加熱温度は、例えば50℃〜250℃と適宜に設定することができる。
【0074】
次に、このようにして得られた一次加熱処理物に油分を添加し(ステップS14)、添加した油分と一次加熱処理物とを両者が略均一になるように混合する(ステップS15)。なお、油分と一次加熱処理物との混合作業は、一次加熱処理を行った加熱機内で実施してもよく、また当該加熱機から一次加熱処理物を取り出して専用混合機で実施してもよい。
【0075】
添加する油分の種類は特に限定されず、動植物油及び/又は鉱物油を用いることができる。常温で固体状・液体状のいずれであってもよいが、常温で液体状の場合は後述する混合作業を円滑に行うことができるため好適である。また、外食店、食品工場で発生する廃油及び/又は廃油汚泥を用いると廃棄物リサイクルの観点から好適である。
【0076】
一方、油分の添加量は、一次加熱処理物に対して当該一次加熱処理物の4質量%以上30質量%以下、好ましくは10質量%以上20質量%以下の適宜値である。
【0077】
一次加熱処理物の油分含有量が4質量%以上になるように油分を添加混合させた場合、炭化処理を行って得られる有機廃棄物燃料の発熱量が、燃料として使用できる範囲に入るが、一次加熱処理物の油分含有量が4質量%未満では、燃料として使用できる発熱量を有する有機廃棄物燃料を得ることができない。
【0078】
また、一次加熱処理物の油分含有量が30質量%を超えるように油分を添加混合させた場合、炭化処理を行って得られる有機廃棄物燃料が添加された油分によってべたつき、取扱性が著しく低下する。
【0079】
一方、一次加熱処理物の油分含有量が10質量%以上20質量%以下になるように油分を添加混合させた場合、要求量が多い発熱量の有機廃棄物燃料を製造することができる。
【0080】
ステップ15にて、添加した油分と一次加熱処理物とを混合して混合物が得られると、当該混合物を
図1で説明したステップS5と同様に炭化処理の温度を設定した(ステップS16)後、原料の温度が設定した温度になるように保持する炭化処理を実施して(ステップS17)、有機廃棄物燃料を得る。
【0081】
なお、前同様、有機廃棄物燃料に含まれる油分の割合が12質量%程度〜14質量%程度以外である場合は、その油分割合において、炭化処理を実施する際の各温度別に、当該温度で炭化処理して得られる有機廃棄物燃料の発熱量を予めそれぞれ求めておく。そして、得られた結果に基づいて、有機廃棄物燃料の発熱量が予め定めた値になるように、原料を炭化処理する温度を設定するようにする。
【0082】
かかる炭化処理は、減圧というように酸素を制限した環境下で混合物を加熱することによって、当該混合物を構成する有機化合物の少なくとも一部を熱分解するとよい。
【0083】
減圧下、150℃以上300℃以下の温度範囲で炭化処理を実施することができる装置としては、例えば真空加熱機GV−35(株式会社ガイア製)を用いることができる。なお、本装置には撹拌機が内蔵されているので、前述した一次加熱処理、一次加熱処理物と油分との混合及び炭化処理を1台で実施することができる。
【0084】
このような方法によって製造した有機廃棄物燃料にあっては、それに含有される油分が4質量%程度以上30質量%以下であるため、前同様、有機廃棄物燃料が全体的にしっとりする程度であり、何らの支障もなく容易に取り扱うことができるのみならず、有機廃棄物燃料の一部又は全部が粉状になった場合であっても、それが舞い上がることが防止される。また、予め定めた発熱量の有機廃棄物燃料が得られるため、その発熱量に対応する燃焼装置へ供給することによって、当該燃焼装置を安全に、また安定して運転することができる。ところで、炭化装置における温度設定を前述した如く調整することによって、種々の発熱量の有機廃棄物燃料を製造することができるので、目的とする発熱量を有する有機廃棄物燃料を製造コストの上昇を可及的に抑制して製造することができる。
【0085】
なお、本実施形態では、含低油性の植物性食品廃棄物を原料に使用する場合を示したが、本発明はこれに限らず、鮮魚及び/又は精肉の廃棄物といった油分を比較的多く含む原料を用いてもよい。そのような原料を用いる場合にあっては、一次加熱処理物が4質量%以上30質量%以下の油分含有量となるように、好ましくは10質量%以上20質量%以下の油分含有量となるように油分の添加を実施する。ここで、一次加熱処理物に添加すべき油分の量は、前述したステップ13で得られた一次加熱処理物に含有される油分量に基づいて定めればよい。なお、一次加熱処理物に含有される油分量を測定するには、例えば、溶剤としてノルマルヘキサンを用いるノルマルヘキサン抽出物質分析法を適用することができる。
【0086】
ここで、鮮魚廃棄物及び精肉廃棄物について各別に、一次加熱処理及び炭化処理して得られる炭化物の油分含有率を予め得ておき、鮮魚廃棄物と、精肉廃棄物と前述した含低油性の植物性食品廃棄物との混合率を調整することによって、得られる有機廃棄物燃料の油分含有率を調整するようにしてもよい。
【0087】
ところで、比較的コンパクトな真空加熱機を用いる場合、例えば当該真空加熱機をコンビニエンスストアに設置して、前記ステップS13で説明した一次加熱処理を実施し、得られた一次加熱処理物を回収して、減圧下で炭化処理を行う大型の装置が設置してある炭化処理場へ搬送し、そこで前記ステップS14〜S17で説明したように油分を添加混合して炭化処理を行うようにすることができる。
【0088】
この場合、各コンビニエンスストアにて生じる有機廃棄物はその店舗で一次加熱処理されるので有機廃棄物の嵩及び重量が大幅に減少される。そのため、一次加熱処理をせずに有機廃棄物を回収する場合に比べて、回収作業及び回収効率を大幅に改善することができ、回収コストが低減する。また、有機廃棄物の腐敗も回避することができるため、衛生管理も改善することができる。一方、大型の装置にて炭化処理を行うことによって、炭化処理の効率を向上させて製造コストを低減することもできる。
【実施例】
【0089】
次に、実施例について説明する。
(実施例1)
コンビニエンスストアから廃棄された調理済み食品、及び有機廃棄物燃料の製造条件について検討した結果について説明する。
【0090】
次の表1は、異なる系列のコンビニエンスストアから各別に回収した調理済み食品廃棄物を原料とし、同一又は異なる製造条件で製造して得られた有機廃棄物燃料の高位発熱量及び油分を測定した結果を示している。ここで、高位発熱量はJIS−M−8814に準じて測定し、油分はソックスレー抽出法を用いて測定した。なお、後者にあってはn−ヘキサンを用いてソックスレー抽出を実施した。
【0091】
【表1】
【0092】
表1中、a1及びa2はA系列のコンビニエンスストアから回収した調理済み食品廃棄物を原料として調製した有機廃棄物燃料の発熱量を、bはA系列のコンビニエンスストアからの回収と同日に、A系列とは異なるB系列のコンビニエンスストアから回収した調理済み食品廃棄物を原料として調製した有機廃棄物燃料の発熱量をそれぞれ示しており、cは、これらとは異なる月に、A系列のコンビニエンスストア及びB系列のコンビニエンスストアから各別に回収した調理済み食品廃棄物をそれぞれ質量比が50:50になるように混合したものを原料として調製した有機廃棄物燃料の発熱量を示している。なお、A系列のコンビニエンスストア及びB系列のコンビニエンスストアは共に福岡県に立地する一の店舗を対象とした。
【0093】
また、a1、a2、b及びcの有機廃棄物燃料の製造条件は次のようである。すなわち、a1及びcにあっては、原料を常圧にて170℃で420分間、一次炭化処理した後、−0.08mpa〜−0.09mpaの減圧下、170℃で90分間、二次炭化処理した。一方、a2及びbにあっては、原料を−0.08mpa〜−0.09mpaの減圧下にて170℃で420分間、一次炭化処理した後、更に前同様の減圧下にて、170℃で90分間、二次炭化処理した。なお、常圧での炭化処理には加熱機G−100(株式会社ガイア製)を用い、減圧での炭化処理には真空加熱機GV−100(株式会社ガイア製)を用いた。また、a1、a2、b及びcの有機廃棄物燃料にあっては、外部から油分は添加していない。
【0094】
表1から明らかなように、コンビニエンスストアから回収した調理済み食品廃棄物を原料とした有機廃棄物燃料にあっては、コンビニエンスストアの系列及び調理済み食品廃棄物の回収時期、並びに一次炭化処理時の圧力条件に拘わらず、各高位発熱量及び油分はいずれも略同程度の値であった。
【0095】
また、各有機廃棄物燃料の平均高位発熱量は、21.44MJ/kg(5123kcal/kg)であり、木質系燃料の代替として十分に使用することができる。
【0096】
なお、表1に示したいずれの有機廃棄物燃料にあっても、粉体であっても風によって舞い上がらない程度にしっとりした状態であった。従って、当該有機廃棄物燃料を把持しても油分が漏出せず、非常に容易に取り扱うことができた。
【0097】
ところで、前述したように一次炭化処理時の圧力条件に拘わらず、得られた各有機廃棄物燃料の高位発熱量が略同じ値であったことから、二次炭化処理においても常圧又は減圧の圧力条件に拘わらず、得られる両有機廃棄物燃料の高位発熱量は略同じ値であると考えられる。従って、炭化処理にあっては、一次炭化処理及び二次炭化処理と分けずに、連続して減圧下で実施してもよいし、連続して常圧で実施してもよい。
【0098】
なお、炭化処理を減圧下で実施すると、炭化処理に要する時間を常圧で実施した場合に比べて相対的に短くすることができるのに加え、得られる有機物燃料を黒色化して所要の有機廃棄物燃料になすことができるため好適である。そのため、一次炭化処理を常圧で実施し、二次炭化処理を減圧下で実施するように設定することもできる。この場合、装置コストが相対的に廉価な常圧専用の加熱機を用いて、可及的に多くの量の原料を一次炭化処理し、これによって減容された中間物について、減圧器が併設された加熱機を用いて黒色化された所要の有機廃棄物燃料を、より廉価にまた高効率に製造することができる。
【0099】
(実施例2)
次に、炭化処理を実施する時間について検討した結果について説明する。
【0100】
次の表2は、炭化処理を実施する時間を異ならせて製造した複数の有機廃棄物燃料の高位発熱量をそれぞれ測定した結果を示している。なお、高位発熱量は前同様、JIS−M−8814に準じて測定した。
【0101】
【表2】
【0102】
表2中、bは前記実施例1で説明したbと同じ有機廃棄物燃料であり、b1はbの有機廃棄物燃料を更に、−0.08mpa〜−0.09mpaの減圧下、170℃で90分間、炭化処理したものであり、b2はbの有機廃棄物燃料を更に、−0.08mpa〜−0.09mpaの減圧下、170℃で180分間、炭化処理したものである。
【0103】
表2から明らかなように、b、b1及びb2のいずれの有機廃棄物燃料にあっても、高位発熱量は略同じ値であった。
【0104】
この結果より、有機廃棄物燃料の発熱量は、炭化処理の温度が一定である場合、当該温度で原料を十分に炭化処理できる時間を超える時間だけ炭化処理すれば、炭化処理の時間の長短に拘わらず略一定の値を示すことが分かる。
【0105】
(実施例3)
次に、炭化処理を異なる温度で実施して得られる各有機廃棄物燃料の高位発熱量及びエネルギ収率を検討した結果について説明する。
【0106】
炭化処理は、試料を投入した坩堝を電気炉内で加熱する乾留によって行った。すなわち、実施例1で説明したcの有機廃棄物燃料に用いた原料を常温下、120℃にて420分間乾燥させて試料を得た。この試料を2.5g程度ずつ秤量して、質量が既知の複数の坩堝内へそれぞれ投入した。電気炉(揮発分測定用電気炉:吉田製作所株式会社製)内を150℃〜500℃の所定温度に予め昇温させるとともに当該温度で安定化させておき、前記坩堝を電気炉内に設置して1時間、当該温度中に保持した。その後、電気炉内から坩堝を取り出して室温まで冷却し、坩堝の全質量を測定するとともに、坩堝内の試料を回収して高位発熱量を測定した。なお、高位発熱量は前同様、JIS−M−8814に準じて測定した。
【0107】
図3は、試料を150℃〜500℃の各温度でそれぞれ炭化処理して得られた各有機廃棄物燃料の高位発熱量を測定した結果を示すグラフであり、縦軸は高位発熱量を、横軸は処理温度を示している。
【0108】
図3から明らかなように、処理温度が150℃〜250℃の範囲では、処理温度が上昇するに従って有機廃棄物燃料の高位発熱量が直線的に上昇していた。そして、有機廃棄物燃料の高位発熱量は、処理温度が300℃で最高値である29.1MJ/kg(6950kcal/kg)になり、処理温度が300℃を超えると、温度が上昇するに従って有機廃棄物燃料の高位発熱量が漸次低下し,処理温度が500℃のとき27.1MJ/kg(6470kcal/kg)であった。
【0109】
従って、目的とする有機廃棄物燃料の発熱量に応じた温度に設定し、当該温度で原料を炭化処理することによって、需要者の要求に応じた発熱量を有する有機廃棄物燃料を製造し得ることが分かる。
【0110】
図3に示したように、150℃の処理温度で得られた有機廃棄物燃料の高位発熱量は21.1MJ/kg(5050kcal/kg)であり、木質系燃料の代替として十分に使用することができる。また、処理温度が225℃以上の場合、高位発熱量が27.1MJ/kg(6470kcal/kg)以上の有機廃棄物燃料が得られた。ここで、国内一般炭の発熱量は22.5MJ/kgであり、輸入一般炭の発熱量は26.6MJ/kgであり、輸入原料炭の発熱量は28.9MJ/kgであるので、処理温度が225℃以上で得られた有機廃棄物燃料はこれらと代替し得る。
【0111】
ところで、次の表3は前述した乾留試験を行った際のエネルギ収率を求めた結果を示している。
【表3】
【0112】
表3から明らかなように、処理温度が250℃以下の場合、75%以上のエネルギ収率で有機廃棄物燃料を得ることができたが、処理温度が300℃以上の場合、エネルギ収率は50%未満であり、炭化処理においてエネルギを大きく損失していた。
【0113】
この結果より、炭化処理の温度は300℃未満に設定するのが好ましいことが分かる。
【0114】
ところで、炭化処理の温度が300℃を超えるとダイオキシンが発生する虞があるため、かかる観点からも炭化処理の温度は300℃以下に設定する必要がある。
【0115】
(実施例4)
次に、有機廃棄物燃料の発熱量に与える原料の季節変動の影響を検討した結果について説明する。
【0116】
本実施例では、実施例3で用いた原料とは異なる季節の原料を用いた以外は、実施例3と同様に行って各有機廃棄物燃料の高位発熱量及びエネルギ収率を測定した。
すなわち、実施例3では実施例1で説明したcの有機廃棄物燃料に用いた原料を使用している。ここで、cの有機廃棄物燃料に用いた原料は11月(冬期)にコンビニエンスストアから回収した調理済み食品廃棄物である。本実施例では更に、6月(夏季)に回収した以外は前同様にして回収した調理済み食品廃棄物を原料として用いた。そして、前同様、原料を常温下、120℃にて420分間乾燥させて試料を得た。この試料を2.5g程度ずつ秤量して、質量が既知の複数の坩堝内へそれぞれ投入した。電気炉(揮発分測定用電気炉:吉田製作所株式会社製)内を150℃〜500℃の所定温度に予め昇温させるとともに当該温度で安定化させておき、前記坩堝を電気炉内に設置して1時間、当該温度中に保持した。その後、電気炉内から坩堝を取り出して室温まで冷却し、坩堝の全質量を測定するとともに、坩堝内の試料を回収して高位発熱量を測定した。そして、炭化処理を行った各温度における有機廃棄物燃料の高位発熱量をそれぞれプロットした。また、冬季に回収した原料を用いた
図3の結果もプロットすることによって、有機廃棄物燃料の発熱量に与える原料の季節変動の影響を検討することとした(
図4)。なお、高位発熱量は前同様、JIS−M−8814に準じて測定した。
【0117】
ここで、乾燥させて得られた試料の高位発熱量、水分量及び油分を分析した結果を次の表4に示す。なお、油分は前述したソックスレー抽出法によって測定した。
【0118】
【表4】
【0119】
図4は、異なる季節で回収した原料から調整した試料を150℃〜250℃の各温度でそれぞれ炭化処理して得られた各有機廃棄物燃料の高位発熱量を測定した結果を示すグラフであり、白抜き三角印は6月(夏季)に回収した原料を用いた場合を、白抜き丸印は11月(冬期)に回収した原料を用いた場合を示している。なお、白抜き丸印は前述した
図3に示した結果と同じである。
図4において、縦軸(C)は高位発熱量を、横軸(T)は処理温度を示している。
【0120】
図4から明らかなように、いずれの原料を用いた場合であっても、処理温度が上昇するに従って有機廃棄物燃料の高位発熱量が直線的に上昇していたが、処理温度が150℃以上175℃以下の範囲では、冬季に回収した原料を用いた場合に比べて、夏季に回収した原料を用いた場合の方が有機廃棄物燃料の高位発熱量は相対的に高い値であった。一方、175℃を超え250℃以下の範囲においては、夏季に回収した原料を用いた場合に比べて、冬季に回収した原料を用いた場合の方が有機廃棄物燃料の高位発熱量は相対的に高い値であった。
【0121】
これは、夏季に回収した原料の組成と、冬季に回収した原料の組成が互いに異なるためであると考えられる。
【0122】
これらの結果より、冬季に回収した原料を用いた場合、処理温度が150℃以上175℃以下の範囲にあっては、目的とする有機廃棄物燃料の発熱量に応じた処理温度を、次の(1)式で表される第1の線(a)に基づいて定め、処理温度が175℃を超え250℃以下の範囲にあっては、目的とする有機廃棄物燃料の発熱量に応じた処理温度を、次の(2)式で表される第2の線(b)に基づいて定める。なお、以下の式中、Cは発熱量(MJ/kg)を、またTは処理温度(℃)をそれぞれ表している。
C=(2.8T+4660)×4.184/10
3 …(1)
C=(23.8T+1010)×4.184/10
3 …(2)
【0123】
一方、夏季に回収した原料を用いた場合、処理温度が150℃以上200℃以下の範囲にあっては、目的とする有機廃棄物燃料の発熱量に応じた処理温度を、次の(3)式で表される第3の線(c)に基づいて定め、処理温度が200℃を超え250℃以下の範囲にあっては、目的とする有機廃棄物燃料の発熱量に応じた処理温度を、次の(4)式で表される第4の線(d)に基づいて定める。
C=(2.7T+4860)×4.184/10
3 …(3)
C=(23.8T+650)×4.184/10
3 …(4)
【0124】
また、他の季節に回収した原料を用いた場合、前記(1)式の第1の線(a)と(3)式の第3の線(c)との間、又は前記(2)式の第2の線(b)と(4)式の第4の線(d)との間の領域から、目的とする有機廃棄物燃料の発熱量に応じた処理温度を定める。この場合、夏季に近づく程、前記(3)式又は(4)式に近い領域から当該処理温度を定め、冬季に近づく程、前記(1)式又は(2)式に近い領域から当該処理温度を定めるようにする。
【0125】
これによって、原料の季節変動を考慮した上で、目的とする有機廃棄物燃料の発熱量に応じた炭化処理の処理温度を高精度に定めることができるため、目的とする発熱量を有する有機廃棄物燃料を原料の季節変動に拘わらず、精度良く製造することができる。