(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-78423(P2015-78423A)
(43)【公開日】2015年4月23日
(54)【発明の名称】ニッケルナノ粉末及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B22F 1/00 20060101AFI20150327BHJP
B22F 1/02 20060101ALI20150327BHJP
B22F 9/04 20060101ALI20150327BHJP
B22F 9/24 20060101ALI20150327BHJP
H01B 5/00 20060101ALI20150327BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20150327BHJP
H01B 1/00 20060101ALI20150327BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20150327BHJP
【FI】
B22F1/00 M
B22F1/02 A
B22F9/04 C
B22F9/24 C
H01B5/00 K
H01B5/00 G
H01B5/00 H
H01B1/22 A
H01B1/00 K
H01B1/00 H
H01B1/00 G
H01B13/00 501Z
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-265115(P2013-265115)
(22)【出願日】2013年12月24日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0123434
(32)【優先日】2013年10月16日
(33)【優先権主張国】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100166420
【弁理士】
【氏名又は名称】福川 晋矢
(72)【発明者】
【氏名】チェ・スン・ナム
(72)【発明者】
【氏名】ソ・チョン・ウク
(72)【発明者】
【氏名】チュン・ジョン・ホ
(72)【発明者】
【氏名】リュ・ヨン・ク
(72)【発明者】
【氏名】ムン・デ・ヒ
【テーマコード(参考)】
4K017
4K018
5G301
5G307
【Fターム(参考)】
4K017AA03
4K017AA06
4K017BA03
4K017CA01
4K017CA07
4K017CA08
4K017DA01
4K017DA07
4K017EA03
4K017EJ01
4K017EJ02
4K017FB02
4K017FB03
4K017FB07
4K018BA04
4K018BB03
4K018BB04
4K018BB05
4K018BC22
4K018BD04
4K018KA33
5G301DA10
5G301DA42
5G301DD01
5G301DE01
5G307AA08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】均一な粒子分布を示しながらも類似の大きさの粒子に比べて低温の焼成開始温度を有し、且つ優れた電極の連結性及び均一度を実現できるニッケルナノ粉末及びその製造方法を提供する。
【解決手段】平均粒径50〜200nmのニッケルナノ粒子本体と、上記ニッケルナノ粒子本体の表面に形成される超微粒ニッケル粒子と、を含み、上記超微粒ニッケル粒子の直径は、上記ニッケルナノ粒子本体の直径の3〜30%であるニッケルナノ粉末。前記ニッケルナノ粉末はニッケル前駆物質及び有機アミンを混合して一次加熱後、還元剤を添加し、二次加熱して表面に突起部が形成されたニッケルナノ粒子本体を得、該粒子本体を気体により粉砕して、前記ニッケルナノ粒子本体の表面に超微粒ニッケル粒子を形成する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケルナノ粒子本体と、
前記ニッケルナノ粒子本体の表面に形成される超微粒ニッケル粒子と、を含み、
前記超微粒ニッケル粒子の直径は、前記ニッケルナノ粒子本体の直径の3〜30%である、ニッケルナノ粉末。
【請求項2】
前記ニッケルナノ粒子本体の平均粒径は50〜200nmであることを特徴とする、請求項1に記載のニッケルナノ粉末。
【請求項3】
前記ニッケルナノ粒子本体は、アスペクト比(aspect ratio)が1〜1.2の球形であることを特徴とする、請求項1に記載のニッケルナノ粉末。
【請求項4】
前記ニッケルナノ粒子本体は、表面から突出しており、ニッケルナノ粒子本体との連続体として形成される突起部を含むことを特徴とする、請求項1に記載のニッケルナノ粉末。
【請求項5】
前記突起部の高さは10〜60nmであることを特徴とする、請求項4に記載のニッケルナノ粉末。
【請求項6】
前記超微粒ニッケル粒子の平均粒径は5〜30nmであることを特徴とする、請求項1に記載のニッケルナノ粉末。
【請求項7】
前記ニッケルナノ粒子本体の表面の50〜90%の面積に前記超微粒ニッケル粒子が形成されることを特徴とする、請求項1に記載のニッケルナノ粉末。
【請求項8】
前記ニッケルナノ粉末の焼結開始温度は300〜550℃であることを特徴とする、請求項1に記載のニッケルナノ粉末。
【請求項9】
請求項1に記載のニッケルナノ粉末を含む、積層セラミック電子部品内部電極用ペースト。
【請求項10】
表面に突起部が形成されたニッケルナノ粒子本体を製造する段階と、
前記表面に突起部が形成されたニッケルナノ粒子本体を気体により粉砕して、前記ニッケルナノ粒子本体の表面に超微粒ニッケル粒子を形成する段階と、を含む、ニッケルナノ粉末の製造方法。
【請求項11】
前記表面に突起部が形成されたニッケルナノ粒子本体を製造する段階は、
ニッケル前駆物質及び有機アミンを混合して混合物を準備する段階と、
前記混合物を一次加熱する段階と、
前記混合物に還元剤を添加し、二次加熱する段階と、を含むことを特徴とする、請求項10に記載のニッケルナノ粉末の製造方法。
【請求項12】
前記ニッケル前駆物質は、塩化ニッケル(NiCl2)、硫酸ニッケル(NiSO4)、酢酸ニッケル(Ni(OCOCH3)2)、ニッケルアセチルアセトネート(Ni(C5H7O2)2)、ハロゲン化ニッケル(NiX2、ここで、Xは、F、Br又はI)、炭酸ニッケル(NiCO3)、ニッケルシクロヘキサンブチレート([C6H11(CH2)3CO2]2Ni)、硝酸ニッケル(Ni(NO3)2)、シュウ酸ニッケル(NiC2O4)、ステアリン酸ニッケル(Ni(H3C(CH2)16CO2)2)及びオクタン酸ニッケル([CH3(CH2)6CO2]2Ni)からなる群から選択されるいずれか一つ以上であることを特徴とする、請求項11に記載のニッケルナノ粉末の製造方法。
【請求項13】
前記有機アミンは、オレイルアミン(oleyl amine)、ドデシルアミン(dodecyl amine)、ラウリルアミン(lauryl amine)、オクチルアミン(octyl amine)、トリオクチルアミン(trioctyl amine)、ジオクチルアミン(dioctyl amine)及びヘキサデシルアミン(hexadecyl amine)からなる群から選択されるいずれか一つ以上を含むことを特徴とする、請求項11に記載のニッケルナノ粉末の製造方法。
【請求項14】
前記一次加熱する段階は、100〜180℃で加熱することを特徴とする、請求項11に記載のニッケルナノ粉末の製造方法。
【請求項15】
前記還元剤は、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、テトラブチルアンモニウムホウ化水素((CH3CH2CH2CH2)4N(BH4))、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)、水素化ナトリウム(NaH)、ボランジメチルアミン錯体((CH3)2NH・BH3)及びアルカンジオール(HO(CH2)nOH、ここで、nは5≦n≦30)からなる群から選択されるいずれか一つ以上を含むことを特徴とする、請求項11に記載のニッケルナノ粉末の製造方法。
【請求項16】
前記二次加熱する段階は、200〜280℃で加熱することを特徴とする、請求項11に記載のニッケルナノ粉末の製造方法。
【請求項17】
前記気体により粉砕する工程は、ジェットミル(jet mill)粉砕機を用いることを特徴とする、請求項10に記載のニッケルナノ粉末の製造方法。
【請求項18】
前記気体により粉砕する工程は、空気(air)又はヘリウム(He)ガスを1.5〜2.5kg/hrの速度で供給することを特徴とする、請求項10に記載のニッケルナノ粉末の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケルナノ粉末及びその製造方法に関し、より詳細には、電子部品の電極材料などとして適用できるニッケルナノ粉末及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ニッケルは、電極材料として、若しくは、燃料電池の触媒、水素化反応における触媒又は各種化学反応における触媒として、様々な分野において応用することができる。例えば、ニッケルは、積層セラミックコンデンサ(MLCC)の内部電極材料又は充填率向上のための物質として用いられている。また、ニッケルは、燃料電池及び有機合成の触媒として用いられており、近年、白金のような貴金属物質の代替材料としてニッケル粒子に関する研究が活発に行われている。積層セラミックコンデンサの場合、近年の薄型化・小型化・高容量化の傾向に伴い内部に用いられるニッケル粒子の大きさも減少しており、ニッケル粒子をナノサイズに製造しようとする試みがある。
【0003】
ニッケルナノ粒子は、液相法、気相法、プラズマ法などで製造されることができる。気相法は、商業的な大量生産に有利であるが、広い粒子分布が生じるため分級工程を介して大きさを選別する必要があり、焼成温度が500℃以上になったときに粒子間のネッキング(necking)により電極連結性を有する。そのため、近年、粒子分布が均一で、比較的安価に生産可能な液相においてナノ粒子を製造する方法が多く開発されている。
【0004】
水溶液中でニッケルナノ粒子を製造する方法のうち、塩化ニッケル水和物と還元剤であるヒドラジンが含まれた混合液に水酸化ナトリウムを添加してニッケル粒子を製造する方法がある(Choi.J.‐Y.et al,J.Am.Ceram.Soc.2005,vol.88,p.3020)。この方法は、塩化ニッケルとヒドラジンが反応して錯化合物を形成した後、水酸化ナトリウムによりニッケル粒子が形成される過程からなっている。特に、塩化ニッケル/ヒドラジン/水酸化ナトリウムの割合によってニッケル粒子の大きさを87nm〜203nmまで制御することができる。しかし、このような方法により得られたニッケル粒子は、粒子同士が連結(necking)された状態であるため、分散が困難であり、粒子の表面も滑らかでなく粗いという欠点がある。
【0005】
一方、水溶液中でヒドラジンを還元剤として用いてニッケル粒子を製造する様々な方法のうち、コバルトを微量添加してニッケル粒子の大きさを制御する方法がある(Kim,K.‐M.et al,J.Electroceram.2006,vol.17,p.339.)。
【0006】
この方法では、塩化ニッケルや酢酸ニッケル水和物をニッケル前駆物質として使用した。ニッケル前駆物質とヒドラジンを混合した後、水酸化ナトリウムを混合液に添加してニッケル粒子を製造した。ニッケル前駆物質とヒドラジン混合液に塩化コバルトを微量添加してニッケル粒子の大きさを制御することができる。この方法により合成されたニッケル粒子の大きさは150nm〜450nmであり、添加されたコバルトの量が多いほどニッケル粒子の大きさは減少する。コバルトの添加により核生成数を増加させて粒子の大きさを制御することができるが、得られた粒子の表面と連結(necking)現象は、依然として上述した方式とあまり変わらない。
【0007】
核生成を制御して粒子の大きさを制御するさらに他の従来技術として、ニッケル前駆物質と界面活性剤が含まれた溶液に核生成を促進するパラジウム又は銀イオンを添加した後、還元剤であるヒドラジンとアンモニアを注入してニッケル粒子を製造する方法がある(Chou,K.‐S.et al,J.Nanoparticle Res.2001,vol.3、p.127.)。このような方法により製造されたニッケル粒子は、大きさが10nm〜25nmであり、既存の方法に比べて製造されたニッケル粒子の大きさが著しく減少した。しかし、合成されたニッケル粒子は、純粋なニッケルだけでなく水酸化ニッケルを一部含んでおり、反応濃度も非常に低くて、ニッケル粒子を大量に製造できないという欠点がある。
【0008】
ニッケル前駆物質と還元剤であるヒドラジンを用いてニッケル粒子を製造する方法の他に、ニッケルアルコキシド前駆物質を熱分解してニッケル粒子を製造する技術も公知されている。この方法は、ニッケル‐アミノアルコキシ金属錯化合物を合成した後、トルエンのような有機溶媒にこの錯化合物を溶解し、加熱して錯化合物を熱分解することでニッケル粒子を製造する方法である。ここで、合成されたニッケル粒子の大きさは3nm〜5nmと非常に小さいが、粒子の形状が球形の他にも棒形のような様々な形状が混在しており、粒子が絡み合って凝集している。このような製造方法は、金属錯化合物を別途製造する追加の工程が必要となり、金属錯化合物を大量に合成することが困難であり、積層セラミックコンデンサの内部電極物質として使用するには粒径が小さすぎるという欠点がある。
【0009】
下記の特許文献1には、ニッケル前駆物質、有機アミン及び還元剤を用いてニッケル粒子を製造する方法が開示されているが、このように合成される球形のニッケル粒子は、非常に高温で焼成が開始され、内部電極の形成の際に電極連結性及び均一度の向上において限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】韓国特開2010−0016821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明に係る一形態の目的は、均一な粒子分布を示しながらも類似の大きさの粒子に比べて低温の焼成開始温度を有し、且つ優れた電極の連結性及び均一度を実現できるニッケルナノ粉末及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するために、本発明の一形態は、ニッケルナノ粒子本体と、上記ニッケルナノ粒子本体の表面に形成される超微粒ニッケル粒子と、を含み、上記超微粒ニッケル粒子の直径は、上記ニッケルナノ粒子本体の直径の3〜30%であるニッケルナノ粉末を提供する。
【0013】
上記ニッケルナノ粒子本体の平均粒径は50〜200nmであることができる。
【0014】
上記ニッケルナノ粒子本体は、アスペクト比(aspect ratio)が1〜1.2の球形であることができる。
【0015】
上記ニッケルナノ粒子本体は、表面から突出しており、ニッケルナノ粒子本体との連続体として形成される突起部を含むことができる。
【0016】
上記突起部の高さは10〜60nmであることができる。
【0017】
上記超微粒ニッケル粒子の平均粒径は5〜30nmであることができる。
【0018】
上記ニッケルナノ粒子本体の表面の50〜90%の面積に上記超微粒ニッケル粒子が形成されることができる。
【0019】
上記ニッケルナノ粉末の焼結開始温度が300〜550℃であることができる。
【0020】
また、本発明の他の形態は、上記ニッケルナノ粉末を含む積層セラミック電子部品内部電極用ペーストを提供する。
【0021】
また、本発明の他の形態は、表面に突起部が形成されたニッケルナノ粒子本体を製造する段階と、上記表面に突起部が形成されたニッケルナノ粒子本体を気体により粉砕して、上記ニッケルナノ粒子本体の表面に超微粒ニッケル粒子を形成する段階と、を含むニッケルナノ粉末の製造方法を提供する。
【0022】
上記表面に突起部が形成されたニッケルナノ粒子本体を製造する段階は、ニッケル前駆物質及び有機アミンを混合して混合物を準備する段階と、上記混合物を一次加熱する段階と、上記混合物に還元剤を添加し、二次加熱する段階と、を含むことができる。
【0023】
上記ニッケル前駆物質は、塩化ニッケル(NiCl
2)、硫酸ニッケル(NiSO
4)、酢酸ニッケル(Ni(OCOCH
3)
2)、ニッケルアセチルアセトネート(Ni(C
5H
7O
2)
2)、ハロゲン化ニッケル(NiX
2、ここで、Xは、F、Br又はI)、炭酸ニッケル(NiCO
3)、ニッケルシクロヘキサンブチレート([C
6H
11(CH
2)
3CO
2]
2Ni)、硝酸ニッケル(Ni(NO
3)
2)、シュウ酸ニッケル(NiC
2O
4)、ステアリン酸ニッケル(Ni(H
3C(CH
2)
16CO
2)
2)及びオクタン酸ニッケル([CH
3(CH
2)
6CO
2]
2Ni)からなる群から選択されるいずれか一つ以上であることができる。
【0024】
上記有機アミンは、オレイルアミン(oleyl amine)、ドデシルアミン(dodecyl amine)、ラウリルアミン(lauryl amine)、オクチルアミン(octyl amine)、トリオクチルアミン(trioctyl amine)、ジオクチルアミン(dioctyl amine)及びヘキサデシルアミン(hexadecyl amine)からなる群から選択されるいずれか一つ以上を含むことができる。
【0025】
上記一次加熱する段階は、100〜180℃で加熱することができる。
【0026】
上記還元剤は、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH
4)、テトラブチルアンモニウムホウ化水素((CH
3CH
2CH
2CH
2)
4N(BH
4))、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH
4)、水素化ナトリウム(NaH)、ボランジメチルアミン錯体((CH
3)
2NH・BH
3)及びアルカンジオール(HO(CH
2)
nOH、ここで、nは5≦n≦30)からなる群から選択されるいずれか一つ以上を含むことができる。
【0027】
上記二次加熱する段階は、200〜280℃で加熱することができる。
【0028】
上記気体により粉砕する工程は、ジェットミル(jet mill)粉砕機を用いることができる。
【0029】
上記気体により粉砕する工程は、空気(air)又はヘリウム(He)ガスを1.5〜2.5kg/hrの速度で供給することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の一形態のニッケルナノ粉末によると、均一な粒子分布を示しながらも類似の大きさの粒子に比べて低温の焼成開始温度を有し、且つ優れた電極の連結性及び均一度を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の一実施形態によるニッケルナノ粉末を示す図である。
【
図2】本発明の他の一実施形態による突起部が形成されたニッケルナノ粉末を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態によるニッケルナノ粉末の製造方法を示す工程図である。
【
図4】本発明の一実施形態によるニッケルナノ粉末を走査型電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)で観察した写真である。
【
図5】本発明の一実施形態によるニッケルナノ粉末を200℃で焼成した際に走査型電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)で観察した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下では、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために誇張されることがある。
【0033】
図1は本発明の一実施形態によるニッケルナノ粉末を示す図である。
【0034】
図1を参照すると、本発明の一実施形態によるニッケルナノ粉末10は、ニッケルナノ粒子本体11と、上記ニッケルナノ粒子本体11の表面に形成される超微粒ニッケル粒子15と、を含む。
【0035】
ニッケルナノ粒子本体11に超微粒ニッケル粒子15が付着されて形成されることで、焼成の際に超微粒ニッケル粒子の金属化が先に行われて焼結開始温度が低くなり、超微粒ニッケル粒子のネッキング(necking)によって粒子の位置移動が制限されるため、優れた電極の連結性及び均一度を確保することができる。
【0036】
上記ニッケルナノ粒子本体11は、アスペクト比(aspect ratio)が1〜1.2の球形の粒子であることができ、より好ましくは、1〜1.1であることができる。ニッケルナノ粒子本体11のアスペクト比が1.2を超える場合には、数百ナノ厚さの内部電極の印刷の際にニッケルナノ粒子の表面突出の確率が高くなって表面粗さの値が大きくなるという問題が生じ得る。
【0037】
球形のニッケルナノ粒子本体11は、平均粒径が50〜200nmであることができる。平均粒径が50nm未満の場合には、粒子の表面積の増加によって表面安定化物質の含量も増加するようになり、これは、残炭、すなわち炭素含量の分析の際に高含量の残炭として検出され、電極及びチップの形成後、焼成の際に電極連結性の劣化及び電極容量の減少をもたらす恐れがあり、200nmを超える場合には、電極形成後、緻密なパッキング(packing)が困難になり、表面粗さの増加及び空隙(void)発生による電極連結性の減少などの問題が生じ得る
【0038】
図2は本発明の他の一実施形態による突起部が形成されたニッケルナノ粉末を示す図である。
【0039】
図2を参照すると、上記ニッケルナノ粒子本体11は、表面から突出した突起部12を含むことができる。
【0040】
上記突起部12は、ニッケルナノ粒子本体11との連続体として形成され、突起部12は、ニッケルナノ粒子本体11と同様に、ニッケルからなっている。連続体とは、ニッケルナノ粒子本体11と突起部12の両方が同じ材料からなっており、突起部12が単一工程により形成され、ニッケルナノ粒子本体11と突起部12との間に継ぎ目などの一体感を損傷する箇所が存在しないものを意味する。
【0041】
ニッケルナノ粒子本体11の表面に突出した突起部12の高さは10〜60nmであることができ、より好ましくは、30〜40nmであることができる。
【0042】
ニッケルナノ粒子本体11の表面に形成された超微粒ニッケル粒子15の直径は、ニッケルナノ粒子本体11の直径の3〜30%であることができる。
【0043】
超微粒ニッケル粒子15の直径がニッケルナノ粒子本体11の直径の3%未満の場合には、粒子の表面エネルギーが高すぎて粒子間の凝集現象により均一なコーティングが困難になる恐れがあり、30%を超える場合には、超微粒ニッケル粒子の金属化の速度が遅くて焼結開始温度低下の効果が不十分であり、電極連結性及び均一度の向上効果が現れない恐れがある。
【0044】
上記超微粒ニッケル粒子15の平均粒径は5〜30nmであることができ、より好ましくは、5〜10nmであることができる。超微粒ニッケル粒子15の平均粒径が5nm未満の場合には、粒子間の凝集が強くて、凝集現象によりコーティングが均一に行われない問題があり、30nmを超える場合には、超微粒ニッケル粒子の金属化の速度が遅くて焼結開始温度低下の効果が不十分であり、電極連結性及び均一度の向上効果が現れない恐れがある。
【0045】
超微粒ニッケル粒子15は、上記ニッケルナノ粒子本体11の表面の50〜90%の面積を占めるように付着されて形成されることができる。
【0046】
超微粒ニッケル粒子15が占める面積がニッケルナノ粒子本体11の表面の50%未満の場合には、電極連結性及び均一度向上の効果が不十分になる問題があり、90%を超える場合には、粒子の表面に均一にコーティングされず、弱い結合により後工程の際にコーティング粒子の脱落現象が生じ得る。
【0047】
本発明の一実施形態による超微粒ニッケル粒子15が形成されたニッケルナノ粉末10の焼結開始温度は300〜550℃であることができる。
【0048】
ニッケルナノ粒子本体11の表面に超微粒ニッケル粒子15が形成されることで、焼成の際に超微粒ニッケル粒子の金属化が先に行われ、粒子の大きさによる融点降下効果によって焼成開始温度が低くなる。これにより、本発明の一実施形態のニッケルナノ粉末10は、焼結開始温度が300〜550℃を満たすことができる。
【0049】
このように、本発明の一実施形態によるニッケルナノ粒子本体11の表面に超微粒ニッケル粒子15が形成されたニッケルナノ粉末10は、類似の大きさの粒子に比べて低温の焼成開始温度を有し、且つ優れた電極の連結性及び均一度を実現することができ、積層セラミック電子部品内部電極用ペーストの製造に使用することができる。
【0050】
また、本発明の一実施形態のニッケルナノ粉末を含んで積層セラミック電子部品内部電極用ペーストを製造すると、共材粉末の含量を減らしても優れた電極容量などの効果を奏することができる。
【0051】
図3は本発明の一実施形態によるニッケルナノ粉末の製造方法を示す工程図である。
【0052】
図3を参照すると、本発明の一実施形態によるニッケルナノ粉末の製造方法において、まず、ニッケル前駆物質及び有機アミンを混合して混合物を準備することができる。
【0053】
ニッケル前駆物質は、ニッケルの原料物質(source)として用いられることができる化合物であれば特に制限されず、より好ましくは、塩化ニッケル(NiCl
2)、硫酸ニッケル(NiSO
4)、酢酸ニッケル(Ni(OCOCH
3)
2)、ニッケルアセチルアセトネート(Ni(C
5H
7O
2)
2)、ハロゲン化ニッケル(NiX
2、ここで、Xは、F、Br又はI)、炭酸ニッケル(NiCO
3)、ニッケルシクロヘキサンブチレート([C
6H
11(CH
2)
3CO
2]
2Ni)、硝酸ニッケル(Ni(NO
3)
2)、シュウ酸ニッケル(NiC
2O
4)、ステアリン酸ニッケル(Ni(H
3C(CH
2)
16CO
2)
2)及びオクタン酸ニッケル([CH
3(CH
2)
6CO
2]
2Ni)などの単独又は混合形態であってもよい。さらに、ニケル塩が水和されている場合には、ニッケル塩が容易に溶解されず、未反応物が生成されて収率が低下する恐れがあり、未反応物が残存して粗大粉として作用する恐れがあるため、上記ニッケル前駆物質は、上記挙げられたニッケル塩の無水物を使用することができる。
【0054】
本発明の一実施形態によるニッケルナノ粉末の製造方法では、有機アミンを添加する。有機アミンは、有機溶媒として作用するか還元剤として作用することができる。有機アミンが添加されるため、上記混合物に溶媒がさらに使用される場合、水溶性溶媒ではなく有機溶媒が使用されることができる。
【0055】
本発明において使用できる有機アミンとしては、例えば、オレイルアミン(oleyl amine)、ドデシルアミン(dodecyl amine)、ラウリルアミン(lauryl amine)、オクチルアミン(octyl amine)、トリオクチルアミン(trioctyl amine)、ジオクチルアミン(dioctyl amine)及びヘキサデシルアミン(hexadecyl amine)が挙げられ、必ずしもこれに限定されない。
【0056】
上記ニッケル前駆物質混合物において、有機アミンの他に溶媒をさらに使用する場合、有機溶媒をさらに使用することができる。
【0057】
有機溶媒としては、エーテル系有機溶媒、飽和炭化水素系有機溶媒(C
nH
2n+2、ここで、nは、7≦n≦30)、不飽和炭化水素系有機溶媒(C
nH
2n、ここで、nは、7≦n≦30)又は有機酸系有機溶媒の単独又は混合形態を使用してもよい。
【0058】
本発明において使用できるエーテル系有機溶媒としては、例えば、トリオクチルホスフィンオキシド(Trioctylphosphine oxide、TOPO)、アルキルホスフィン(alkylphosphine)、オクチルエーテル(octyl ether)、ベンジルエーテル(benzyl ether)及びフェニルエーテル(phenyl ether)のうちいずれか一つであってもよく、必ずしもこれに限定されない。
【0059】
本発明において使用できる飽和炭化水素系有機溶媒は、ヘキサデカン、ヘプタデカン及びオクタデカンのうちいずれか一つであってもよく、必ずしもこれに限定されない。また、不飽和炭化水素系有機溶媒は、オクタン、ヘプタデカン及びオクタデカンのうちいずれか一つであってもよく、必ずしもこれに限定されない。
【0060】
本発明において使用できる有機酸系有機溶媒は、オレイン酸(oleic acid)、ラウリン酸(lauric acid)、ステアリン酸(stearic acid)、ミステリン酸(mysteric acid)及びヘキサデカン酸(hexadecanoic acid)のうちいずれか一つであってもよく、必ずしもこれに限定されない。
【0061】
次に、上記混合物を一次加熱することができる。
【0062】
上記混合物を一次加熱する段階では、100〜180℃、より好ましくは、130〜150℃で加熱することができる。一次加熱は、1時間〜3時間行われることができる。
【0063】
次に、一次加熱された上記混合物に還元剤を添加し、二次加熱することができる。
【0064】
還元剤として機能できる有機アミンを混合して一次加熱した後、時間を置いて還元剤を添加して二次加熱することで、表面に突起部が形成されたニッケルナノ粉末を製造することができる。
【0065】
上記還元剤は、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH
4)、テトラブチルアンモニウムホウ化水素((CH
3CH
2CH
2CH
2)
4N(BH
4))、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH
4)、水素化ナトリウム(NaH)、ボランジメチルアミン錯体((CH
3)
2NH・BH
3)及びアルカンジオール(HO(CH
2)
nOH、ここで、nは5≦n≦30)の単独又は混合形態であってもよく、必ずしもこれに限定されない。
【0066】
上記混合物を二次加熱する段階では、200〜280℃、より好ましくは、230〜250℃で加熱することができる。二次加熱は、40〜90分間行われることができる。
【0067】
次に、表面に突起部が形成されたニッケルナノ粉末を気体により粉砕して、上記ニッケルナノ粒子本体の表面に超微粒ニッケル粒子を形成することができる。
【0068】
突起部の一部を粉砕して超微粒ニッケル粒子を形成するためには、気体により粉砕する気流式粉砕機を用いることが好ましい。気流式粉砕機により平均粒径が5〜30nmの超微粒ニッケル粒子を形成し、これがニッケルナノ粒子本体の表面に付着されることで、表面に超微粒ニッケル粒子が形成されたニッケルナノ粉末を製造することができる。
【0069】
上記気体により粉砕する工程は、特に制限されず、例えば、ジェットミル(jet mill)粉砕機を用いてもよい。
【0070】
粉砕に用いられる上記気体は、ニッケル粒子と化学的反応を起こさないものであれば特に制限されず、例えば、空気(air)又はヘリウム(He)ガスであってもよい。
【0071】
上記気体は、1.5〜2.5kg/hrの速度で供給することができる。1.5〜2.5kg/hrの速度で供給することにより、突起部の一部を粉砕して超微粒ニッケル粒子を形成し、表面に超微粒ニッケル粒子が形成されたニッケルナノ粉末を製造することができる。
【0072】
1.5kg/hr未満の速度で供給する場合には、表面の突起状の部分が過度に大きいエネルギーをもって衝突し、部分的に溶解するか変形が起こる問題があり、2.5kg/hr超過の速度で供給する場合には、突起部だけでなくニッケルナノ粒子本体が粉砕される恐れがあり、超微粒粒子が生成されない恐れがある。
【0073】
製造された表面に超微粒ニッケル粒子が形成されたニッケルナノ粉末は、例えば、加熱された混合物にエタノール、アセトン又はトルエンなどを添加してニッケルナノ粉末を沈殿させた後、遠心分離機又は磁石を用いて分離してもよい。
【0074】
以下、実施例を参照して本発明についてより具体的に説明するが、下記実施例は本発明の範囲を制限するものではなく、本発明の理解を容易にするためのものと解釈すべきである。
【0075】
<実施例1>
500mlの反応器内で、有機アミンとしてオレイルアミンと塩化ニッケルを0.7Mの濃度で混合した後、160℃で150分間加熱した。次に、テトラブチルアンモニウムホウ化水素(TBAB)0.4mmolを投入した後、230℃に加温してから1時間維持した。
【0076】
このように製造された平均高さが50nmの突起を有する平均粒径137nmのニッケルナノ粉末をヘリウム(He)ジェットミル(jet mill)を用いて供給速度(feeding rate)2.5kg/hrで粉砕する工程を行った。
【0077】
図4はこのように製造されたニッケルナノ粉末を走査型電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)で観察した写真である。
【0078】
このように製造されたニッケルナノ粉末の表面に、平均粒径15nmの超微粒ニッケル粒子が均一に形成されていることを確認した。
【0079】
<実施例2>
Airジェットミル(jet mill)を用いて供給速度(feeding rate)1.5kg/hrで粉砕工程を行ったことを除き、実施例1と同様に実施して製造した。
【0080】
このように製造されたニッケルナノ粉末の表面に、平均粒径10nmの超微粒ニッケル粒子が均一に形成されていることを確認した。
【0081】
図5は実施例2によるニッケルナノ粉末を200℃で焼成した際に走査型電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)で観察した写真である。
【0082】
図5を参照すると、表面に超微粒ニッケル粒子が形成されたニッケルナノ粉末は、200℃で低温焼成が可能であり、超微粒ニッケル粒子からネッキング(necking)が開始されて焼結が促進されることが分かる。
【0083】
下記の表1は、表面に超微粒ニッケル粒子が形成されたニッケルナノ粉末を含んで内部電極を形成する際に必要な共材含量及び電極容量の結果を示すものである。
【0085】
上記表1を参照すると、表面に超微粒ニッケル粒子がコーティングされたニッケルナノ粉末の場合、内部電極ペーストの製造の際に添加される共材含量がより少ないにもかかわらず、電極容量はより向上したことが分かる。
【0086】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されず、請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。