【解決手段】X線検査装置1は、搬送される被検査物W1,W2にX線を照射する2台のX線管5と、被検査物W1,W2を挟んでX線管5とは反対側に配置されて搬送方向と交差する配列方向に配列されたラインセンサ2を備え、2台のX線管5から放射されるX線の各中心軸Cは互いに離れるよう相対的に傾斜している。両X線発生器の中心軸が互いに平行である場合(
所定の搬送方向に搬送される被検査物(W1,W2)にX線を照射する複数台のX線管(5)と、前記被検査物を挟んで前記X線管とは反対側に配置されて前記搬送方向と交差する所定の配列方向に沿って一列に配列された複数個の検出素子を有するラインセンサ(2)を備え、
前記配列方向に沿って隣接する少なくとも2台の前記X線管からそれぞれ放射されるX線の各中心軸(C)が、互いに離れるよう相対的に傾斜して前記ラインセンサに到達するように設定されていることを特徴とするX線検査装置(1,1a,1b,1c,1d)。
2台の前記X線管(5)からそれぞれ放射されるX線が、前記ラインセンサ(2)の上で重なって照射されないように、前記各中心軸(C)が相対的に傾斜して設定されていることを特徴とする請求項1記載のX線検査装置(1,1a,1b,1c,1d)。
2台の前記X線管(5)からそれぞれ放射されるX線の各中心軸(C)が、2台の前記X線管の中間位置から前記ラインセンサ(2)に引いた垂線を対称軸とする線対称となるように相対的に傾斜して設定されていることを特徴とする請求項2記載のX線検査装置(1,1a,1b,1c,1d)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
被検査物を搬送するベルトコンベア等の搬送手段と、搬送手段の上方に設けられて搬送手段で搬送される被検査物にX線を照射するX線管と、搬送手段の搬送面の下方に配置されて被検査物を透過したX線を検出するラインセンサを備えたX線検査装置が知られている。この種のX線検査装置に使用されているラインセンサは、一般に被検査物の搬送方向と直交する水平方向に沿って一列に並べられた複数個の検出素子を備えた構造となっている。このようなX線検査装置によれば、搬送される被検査物に照射されて透過したX線をラインセンサで検出し、その信号を解析することにより、異物の検出その他の目的で被検査物の検査を行なうことができる。
【0005】
本発明者等は、この種のX線検査装置に対する需要者の要望の一つとして、被検査物の搬送方向と直交する検査領域の幅をなるべく大きくしたい、という要望があることを認識している。例えば被検査物が個別の製品であるような場合、複数個の当該製品を前記幅方向に適宜間隔で複数並べるとともに、前記搬送方向にも適宜間隔で複数並べ、これを搬送手段で連続的に搬送しながら検査することがあるが、そのような場合には、検査領域の幅をなるべく大きくすればX線の検査領域を単位時間に通過する製品の数を増やすことができるので、検査処理の効率を上げることができる。前述した検査領域の幅を大きくしたいとの要望は、一例としてこのような事情にも関連しているものとも考えられる。
【0006】
このような要望に答え、被検査物の搬送方向に直交する方向についての検査領域の長さ、すなわちX線管から放射状に照射されたX線の照射範囲の幅をなるべく大きくするためには、被検査物を搬送する搬送手段の上方に設置するX線管をなるべく高い位置に設定し、被検査物に到達するまでにX線が放射状により大きく広がるようにすることが考えられる。しかし、そのようにX線管を高い位置に配置すれば、被検査物に到達するX線の量は減衰するので、そのX線量を確保するために、X線管には出力のより大きいものを採用する必要が生じる。すなわち、1台のX線管を用いて前記要望を満たすためには、X線管をより高い位置に設ける必要からX線検査装置としての機高が大きくなり、また出力の大きいX線管を使用する必要から製造コストも高価になるという解決困難な問題が生じる。
【0007】
前記特許文献1に開示されたX線異物検出装置の発明は、前述した通り、複数台のX線発生器と、各X線発生器に対応して設けられた複数台のX線検出器を、被検査物の搬送方向について位置をずらすとともに、搬送方向と直交する幅方向については一部重なるように配置することにより、幅の広い被検査物に対して高精度な異物検出を可能することを目的としている。しかしながら、このような構造は、一台のX線検査装置の中に、X線発生器とX線検出器の組が2組あることを意味し、機構的には単一のX線検査装置が2台あるのと変わらず、製造コストが高額になるという問題がある。さらに、これも前述したように、一方のX線発生器から照射されるX線が、他方のX線発生器と対応するX線検出器に照射されないようにするため、両者の間に絞り装置または遮蔽板を配置する必要があり、これも製造コストを高額にする要因となる。さらにまた、被検査物の検査においては、位置が異なる2台のX線検出器からの出力を、被検査物の搬送タイミングを考慮して合成し、綜合的な解析を行なう必要があるが、このようなデータの解析処理は必ずしも容易ではなく、これもまた製造コストを高額にする要因となる。
【0008】
本発明は、以上の種々の課題に鑑みてなされたものであり、被検査物に照射して透過したX線をラインセンサで検出して被検査物の検査を行なうX線検査装置において、X線の検査領域の幅を可及的に大きく設定しながら、装置高さが小さく単一のラインセンサで検査可能なコンパクトな構成が実現でき、さらに実用上問題ない程度に検査領域中の非照射領域を小さくすることができるX線検査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載されたX線検査装置1,1a,1b,1c,1dは、
所定の搬送方向に搬送される被検査物W1,W2にX線を照射する複数台のX線管5と、前記被検査物W1,W2を挟んで前記X線管5とは反対側に配置されて前記搬送方向と交差する所定の配列方向に沿って一列に配列された複数個の検出素子を有するラインセンサ2を備え、
前記配列方向に沿って隣接する少なくとも2台の前記X線管5からそれぞれ放射されるX線の各中心軸Cが、互いに離れるよう相対的に傾斜して前記ラインセンサ2に到達するように設定されていることを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載されたX線検査装置1,1a,1b,1c,1dは、請求項1記載のX線検査装置1,1a,1b,1c,1dにおいて、
2台の前記X線管5からそれぞれ放射されるX線が、前記ラインセンサ2の上で重なって照射されないように、前記各中心軸Cが相対的に傾斜して設定されていることを特徴としている。
【0011】
請求項3に記載されたX線検査装置1,1a,1bは、請求項2記載のX線検査装置1,1a,1b,1c,1dにおいて、
2台の前記X線管5からそれぞれ放射されるX線の各中心軸Cが、2台の前記X線管5の中間位置から前記ラインセンサ2に引いた垂線を対称軸とする線対称となるように相対的に傾斜して設定されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明のX線検査装置は複数台のX線発生器を有しており、これら複数台のX線発生器は、ラインセンサの検出素子の配列方向と平行に配列されている。そして各X線発生器が放射するX線については、その放射形状の中心線としてラインセンサに至る中心軸を観念することができる。
【0013】
そして、請求項1に記載のX線検査装置によれば、複数のX線発生器の中の隣接する少なくとも2台のX線発生器が、各々の中心軸が互いに離れるような方向に傾斜した状態とされている。このため、これら2台のX線発生器については、各中心軸が互いに平行である場合に比べ、一方のX線発生器の照射範囲と他方のX線発生器の照射範囲の間の角度が小さくなり、被検査物にX線が照射されない領域(非照射領域)が縮小し、さらにX線が照射される幅が全体として大きくなる。従って、被検査物に対するX線の照射領域の最大幅を可及的に大きく設定しながら、装置高さは従来と同程度に小さく、かつ単一のラインセンサで検査可能なコンパクトな構成であり、さらに従来よりも照射領域中に生じる非照射領域が小さいX線検査装置を提供できる。
【0014】
また、請求項2に記載されたX線検査装置によれば、上述した隣接する2台のX線発生器からそれぞれ放射されたX線はラインセンサの上で互いに重ならないため、これらX線がラインセンサの上で重なる従来例の場合とは異なり、透過画像のコントラストが低下する領域は生じない。
【0015】
さらにまた、請求項3に記載されたX線検査装置によれば、上述した隣接する2台のX線発生器からそれぞれ放射されるX線の各中心軸が、これら2台のX線発生器の中間位置からラインセンサに引いた垂線を対称軸とする線対称となるように相対的に傾斜しているので、各X線管がカバーする被検査物の検査領域の長さ又は面積が等しいという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態と、実施形態の特徴を対比して説明するための比較例を、
図1〜
図6を参照して説明する。これらの図は、被検査物の搬送方向と直交する切断面で示した模式的断面図であり、装置が有する具体的な機構や実体的な構造の一部を省略又は簡略化して示したものである。なお、
図1に示す比較例は、あくまで実施形態の構成上の特徴及び作用効果上の特徴を説明するための比較材料として本願発明者が創作した構成例であり、公知例として示すものではない。
【0018】
本発明の第1実施形態のX線検査装置1及び比較例のX線検査装置10を
図1及び
図2を参照して説明する。
これらのX線検査装置1,10は、図示はしないが、図中紙面に垂直な方向に被検査物W1を搬送するベルトコンベア等の搬送手段を備えている。搬送手段で搬送される被検査物W1又はこれを搬送する搬送手段の下方には、ラインセンサ2が設けられている。ラインセンサ2は、搬送方向と直交する水平な配列方向、すなわち図中左右方向(幅方向とも呼ぶ)に沿って複数個の検出素子が所定間隔で一列に配列された構成を備えている。
【0019】
ラインセンサ2を構成する各検出素子は、フォトダイオードと、このフォトダイオード上に設けられたシンチレータを備えている。従って、係る検出素子を1列に並べてなるラインセンサ2によれば、被検査物W1へのX線の照射に伴って被検査物W1を透過してくるX線をシンチレータが受けて光に変換し、この変換された光を対応するフォトダイオードが受光して電気信号に変換することにより、1列毎のX線濃度データ(X線透過量)として出力することができる。
【0020】
図1及び
図2に示すX線検査装置1,10は複数台(図示例では2台)のX線発生器3を備えている。これらのX線発生器3は、搬送手段で搬送される被検査物W1に関し、ラインセンサ2とは反対側の位置、すなわち被検査物W1の上方の位置に配置されている。これらのX線発生器3は、ラインセンサ2の真上の位置にあって、ラインセンサ2における検出素子の配列方向、すなわち搬送方向に直交する図中左右方向に並んでいる。
【0021】
X線発生器3は、X線を遮蔽可能な材質で構成された筐体4と、その内部に配置されたX線管5を備えている。X線管5は、高電圧で加速した電子を陽極のターゲットに衝突させることにより、概ねターゲットを頂点とした中心軸Cを有する円錐状の形態でX線を放射する。詳細は図示しないが、このX線管5や筐体4にはX線の照射範囲を限定する絞り部材及び窓部が設けられており、筐体4の外に照射されるX線は、
図1及び
図2に示すように、被検査物W1の搬送方向に直交する鉛直面内において下方に広がる二等辺三角形の略面状となっている。
【0022】
そして、X線発生器3及びラインセンサ2と、X線発生器3とラインセンサ2の間にある搬送手段の中央部分は、X線遮蔽機能のある図示しない筐体の内部に収納されており、搬送手段の両端部はその筐体に設けられた入口及び出口から外に突出している。そして、搬送手段の両端が突出している筐体の入口及び出口には、X線を外部に漏洩させないための遮蔽構造が設けられている。従って、検査時には、前段の工程から搬入された被検査物W1は、搬送手段に送り込まれて搬送され、筐体の入口から内部に搬入されてX線発生器3とラインセンサ2によって検査され、その後、搬送手段で搬送されて出口から装置の外へ搬出される。
【0023】
以上説明した構成は、
図1に示す比較例のX線検査装置10と
図2に示す第1実施形態のX線検査装置1の両者について共通であるが、各X線発生器3の中心軸Cの傾斜角度又は傾斜方向及び2個のX線発生器3,3の間隔については、前記両者間で以下に説明するような相違点がある。
【0024】
図1に示した比較例のX線検査装置10では、2台のX線発生器3,3は、いずれもX線管5の中心軸Cが筐体4の下面4aの中心に向けられており、その各中心軸Cは、ラインセンサ2の長手方向、すなわちラインセンサ2における検出素子の配列方向に対して垂直な状態でラインセンサ2に到達している。従って2台のX線発生器3,3の各中心軸C,Cは互いに平行である。ここで、各X線発生器3が放射するX線の放射角度、すなわち中心軸Cの左右に放射されるX線の広がりを示す角度(放射角度)をA°とすると、隣接する2台のX線発生器3がそれぞれ放射するX線の間の角度もA°となる。また、隣接する2台のX線発生器3,3がそれぞれ放射するX線は、2台のX線発生器3の間の位置ではラインセンサ2の上の同一点で交わっているが、ラインセンサ2と被検査物W1の間には所定の間隔があるので、隣接する2台のX線発生器3,3の間の位置の下方では、被検査物W1にはX線が照射されない部分が生じる。この部分はX線の死角となっている領域であり、被検査物W1の幅方向に関するX線の非照射領域(第1非照射領域Z1)である。この第1非照射領域Z1の幅方向の寸法を
図1では長さL2で示している。また、この比較例では、2台のX線発生器3から照射されるX線は、被検査物W1の全体を覆っておらず、被検査物W1の幅方向の両端にもX線が当たっていない非照射領域(第2非照射領域Z2)がある。被検査物W1のうち、両端の第2非照射領域Z2を除いた有効照射範囲の幅方向の寸法をL1とする。但し、この有効照射範囲(L1) の中には、上述したようにX線の死角である第1非照射領域Z1(長さL2) が含まれている。
【0025】
図2に示した実施形態のX線検査装置1では、比較例と同様、X線発生器3の放射角度はA°であり、隣接する2台のX線発生器3,3がそれぞれ放射するX線は、2台のX線発生器3,3の間の位置ではラインセンサ2の上の同一点で交わっている。またX線発生器3の高さ(鉛直方向に測定したX線発生器3と被検査物W1の間隔)も比較例と同一である。しかし、2台のX線発生器3,3の間隔は
図1に示した比較例に比べて小さく設定されている。さらに、2台のX線発生器3,3は、筐体4の内部においてX線管5の放射方向を互いに反対方向に傾斜させている。これにより、筐体4の姿勢は比較例と同様に下面4aを下にした状態であるが、2台のX線発生器3,3の各中心軸C,Cは、互いに離れるようにラインセンサ2の長手方向に対して相対的に傾斜した状態となってラインセンサ2に到達している。従って、比較例とは異なり、隣接する2台のX線発生器3,3がそれぞれ放射するX線の間の角度B°は角度A°より小さく(A°>B)、2台のX線発生器3,3の間の下方あって被検査物W1にX線が照射されない第1非照射領域Z1の幅L3は、比較例の第1非照射領域Z1の幅L2よりも小さくなっている(L2>L3)。さらに、2台のX線発生器3,3から照射されるX線は被検査物W1の全体を覆っている。すなわち、有効照射範囲の幅方向の寸法L5は被検査物W1の幅方向の全長に等しく、被検査物W1の幅方向の両端に第2非照射領域Z2がある比較例の有効照射範囲の寸法L1よりも大きくなっている(L5>L1)。
【0026】
従って、実施形態のX線検査装置1によれば、被検査物W1の幅方向の両端に非照射領域がなく、幅方向の全長について検査することができ、また被検査物W1の略中央部分にある第1非照射領域Z1(長さL3)も比較例より十分に小さくなっているため、1台のラインセンサ2で被検査物W1の検査をより確実に行うことができる。特に、以下に説明するように、第1非照射領域Z1の幅方向の寸法(L3)を適当に設定すれば、被検査物W1の種類によっては非照射領域を事実上なくすことができる。すなわち、
図2中に示した被検査物W1は幅方向(紙面左右方向)について連続しており、また搬送方向(紙面垂直方向)についても連続した薄板状の物品であるように表示しているが、これに替えて図中に前記被検査物W1と重ねて示すように、被検査物が独立した個別の物品W2である場合を想定する。図中、この物品W2は丸で示しているが、格別その形状を限定するものではない。また、図中には搬送手段は示していないので、これら複数個の物品W2はベルトコンベア等の搬送手段に載置されて搬送されるものとする。このような個別の物品W2が、幅方向に所定の間隔Pで複数個配置され、搬送方向にも所定の間隔で複数個配置されているものとすると、その幅方向の間隔Pよりも前述した第1非照射領域Z1の幅方向の寸法(L3)を小さく設定し(P>L3)、物品W2が第1非照射領域Z1内に入らないように配慮すれば、すべての物品W2にX線を照射して漏れなく検査を行うことができ、第1非照射領域Z1が事実上存在しないのと同様の結果となる。これは、別の言い方をすれば、第1非照射領域Z1の幅方向の寸法(L3)が小さいため、物品W2の幅方向の間隔Pを可及的に小さく設定することが可能となり、幅方向に配置できる物品W2の数をより多くすることができるため、検査作業をより効率化できることにもなる。
【0027】
以上説明したように、X線の照射範囲が広範囲でありながら死角が少ない照射エリアを得るためには、2台のX線発生器3,3の間隔と、2台のX線発生器3,3の各中心軸C,Cのラインセンサ2に対する傾斜角度及び傾斜方向を適宜に設定する必要がある。そのためには、X線発生器3におけるX線の放射角度と、X線発生器3の高さと、想定している被検査物W1の状態(例えば前記物品W2の場合であれば幅方向の設置間隔P等)に対して許容できる第1非照射領域Z1の幅寸法(L3)と、被検査物W1の幅寸法(L5)又は被検査物W1に関する所望の最大照射幅等を決定し、これが達成されるように、2台のX線発生器3,3における筐体4内のX線管5の傾斜角度を適宜に調整するとともに、これら2台のX線発生器3,3の間隔を適宜に設定すればよい。なお、設定した2台のX線発生器3,3の間隔が変化しないよう、各X線発生器3は、X線検査装置1の基体である剛性の高いフレームに固定することが好ましい。
【0028】
以上説明したように、
図2に示した第1実施形態によれば、
図1に示した比較例に比べ、隣接する2台のX線発生器3,3の間隔を小さくし、各々の中心軸C,Cを互いに離れるような方向に傾斜させている。このため、被検査物W1の略中央部分に生じるX線の第1
非照射領域Z1が縮小し、さらにX線が照射される全体の幅が大きくなった。従って、装置高さは従来と同程度に小さく、かつ単一のラインセンサ2で検査可能なコンパクトな構成でありながら、X線の照射範囲である検査領域の幅が可及的に大きく死角が少ない照射エリアを備えたX線検査装置を提供できる。
【0029】
本発明の第2実施形態のX線検査装置1aについて、必要に応じて
図1の比較例や他の実施形態と比較しつつ、
図3を参照して説明する。
図3に示すように、本実施形態のX線検査装置1aは、共通の筐体4bの内部に2個のX線管5,5を収納した構造のX線発生器3aを備えており、このX線発生器3aにおける2台のX線管5,5の間隔は、第1実施形態における2台のX線発生器3,3の2台のX線管5,5の間隔と同一であり、かつ筐体4bの内部における2台のX線管5,5の各放射方向も第1実施形態と同一になっている。その結果、隣接する2台のX線管5,5がそれぞれ放射するX線の間の角度は比較例の角度A°よりも小さいB°であり(A°>B)、被検査物W1の幅方向の略中央に生じる第1非照射領域Z1の幅は比較例の非照射領域の幅L2よりも小さいL3であり(L2>L3)、さらに2台のX線管5,5から照射されるX線は被検査物W1の全体を覆っており、有効照射範囲の幅方向の寸法は比較例の有効照射範囲の寸法L1よりも大きいL5となっている(L5>L1)。このように広範囲かつ死角のないX線の照射範囲の設定及びその効果は、第1実施形態におけるものと同一である。
【0030】
本発明の第3実施形態のX線検査装置1について、必要に応じて
図1の比較例や他の実施形態と比較しつつ、
図4を参照して説明する。
図4に示すように、本実施形態のX線検査装置1bは、2台のX線発生器3,3を備えているが、各X線発生器3の構造は比較例のものと同一であり、X線管5からのX線の中心軸Cが筐体4の下面4aに垂直に向けられている。そして、本実施形態では、2台のX線発生器3,3の各X線管5,5の間隔は、第1実施形態における2台のX線発生器3,3の2台のX線管5,5の間隔と同一であり、また2台のX線発生器3,3を筐体4ごと互いに反対方向に傾けることにより、2台のX線発生器3,3の各中心軸C,Cの傾斜方向及び傾斜角度が第1実施形態と同一になっている。その結果、隣接する2台のX線発生器3,3がそれぞれ放射するX線の間の角度は比較例の角度A°よりも小さいB°であり(A°>B°)、被検査物W1の幅方向の略中央に生じる第1非照射領域Z1の幅は比較例の非照射領域の幅L2よりも小さいL3であり(L2>L3)、さらに2台のX線発生器3,3から照射されるX線は被検査物W1の全体を覆っており、有効照射範囲の幅方向の寸法は比較例の有効照射範囲の寸法L1よりも大きいL5となっている(L5>L1)。このように広範囲かつ死角のないX線の照射範囲の設定及びその効果は、第1実施形態におけるものと同一である。
【0031】
本発明の第4実施形態のX線検査装置1cについて、必要に応じて
図1の比較例や他の実施形態と比較しつつ、
図5を参照して説明する。
図5に示すように、本実施形態のX線検査装置1は、2台のX線発生器3,3を備えている。そのうち一方のX線発生器3(図中右側)は、比較例のX線発生器3と同一であり、X線管5からのX線の中心軸Cが筐体4の下面4aに垂直に向けられており、筐体4の下面4aを水平とすることによってX線の中心軸Cがラインセンサ2に垂直に到達している。また、他方のX線発生器3(図中左側)は、第1実施形態(
図2)のX線発生器3と略同様であり、下面4aが水平となるように配置された筐体4の内部でX線管5を傾けることにより、X線の中心軸Cが一方のX線発生器3の中心軸Cから離れる方向に傾斜してラインセンサ2に到達している。但し、他方のX線発生器3における中心軸Cの傾斜角度は第1実施形態(
図2)よりも大きい。また、2台のX線発生器3,3の各X線管5,5の間隔は、第1実施形態における2台のX線発生器3,3の2台のX線管5,5の間隔と同一である。これによって隣接する2台のX線発生器3,3がそれぞれ放射するX線の間の角度は比較例の角度A°よりも小さいB°であり(A°>B°)、被検査物W1の幅方向の略中央に生じる第1非照射領域Z1の幅は比較例の非照射領域の幅L2よりも小さいL3であり(L2>L3)、さらに2台のX線発生器3,3から照射されるX線は被検査物W1の全体を覆っており、有効照射範囲の幅方向の寸法は比較例の有効照射範囲の寸法L1よりも大きいL5となっている(L5>L1)。このように広範囲かつ死角のないX線の照射範囲の設定及びその効果は、第1実施形態におけるものと同一である。
【0032】
本発明の第5実施形態のX線検査装置1dについて、必要に応じて
図1の比較例や他の実施形態と比較しつつ、
図6を参照して説明する。
図6に示すように、本実施形態のX線検査装置1dは、3台のX線発生器3,3,3を備えている。そのうち中央のX線発生器3は、比較例のX線発生器3と同一であり、X線管5からのX線の中心軸Cが筐体4の下面4aに垂直に向けられており、筐体4の下面4aを水平とすることによってX線の中心軸Cがラインセンサ2に垂直に到達している。また、左側のX線発生器3は、第1実施形態(
図2)の左側のX線発生器3と略同様であり、筐体4の内部においてX線管5の放射方向を傾斜させることにより、X線の中心軸Cが中央のX線発生器3の中心軸Cから離れる方向に傾斜してラインセンサ2に到達するようになっている。また、右側のX線発生器3は、傾斜方向が反対向きである他は左側のX線発生器3と略同様である。なお、これら3台のX線発生器3,3,3の幅方向の配置間隔は前述した各実施形態における2台のX線発生器3,3の配置間隔よりも若干大きくなっている。本実施形態によれば、隣接する2台のX線発生器3,3がそれぞれ放射するX線の間の角度は比較例の角度A°よりも小さいD°であり(A°>D°)、被検査物W1の2カ所に生じる第1非照射領域Z1の幅は比較例の非照射領域の幅L2よりも小さいL4であり(L2>L4)、さらに3台のX線発生器3から照射されるX線は被検査物W1の全体を覆っており、有効照射範囲の幅方向の寸法は比較例の有効照射範囲の寸法L1よりも大きいL6となっている(L6>L1)。このように広範囲かつ死角のないX線の照射範囲の設定及びその効果は、第1実施形態におけるものと同一である。
【0033】
以上説明した各実施形態では、2台又は3台のX線発生器3,3aを備えたX線検査装置1,1a,1b,1c,1dについて説明したが、4台以上のX線発生器3を備えたX線検査装置において、その中の少なくとも2台の隣接するX線発生器3,3について第2乃至第5実施形態と同等の構成を採用すれば、そのような構成をとらない場合に比べて死角がより小さく、より広範囲なX線の照射範囲を得ることができる。また、説明した各実施形態ではX線発生器3,3aを被検査物W1,W1の上方に配置して下方にX線を照射したが、側面から又は下方からX線を照射する構成の場合にも本発明を利用することは可能である。さらにまた、本発明は、X線を利用した異物検出、質量測定、形状測定等、あらゆる産業上の用途に用いられるX線検査装置に利用することができる。