【課題】X線散乱測定において目標物体からの散乱強度を増幅する装置を提供し、その速度と信号品質はX線散乱の増幅により向上される。HVMを行った場合、ピッチの限界寸法の測量、形状と変動の分析が容易に実行できる。
【解決手段】本開示はtSAXS測定における散乱強度を増幅するための装置を提供する。前記装置は強化格子物体と配置機構を含む。前記強化格子物体は目標物体からの入射X線の縦コヒーレンス長内に位置づけられる。前記配置機構は前記目標物体に対して横方向と縦方向の両方向にナノメートル精度で前記強化格子物体を配置可能である。
前記強化格子物体のパターン部分のピッチは、前記目標物体のパターン部分のピッチに比べてα倍高く、または前記目標物体のパターン部分の高さの1/αであり、ここで、αが1以上の整数である請求項1に記載の装置。
前記強化格子物体は、単一または多層化構造を有する前記目標物体の限界寸法(CD)の特徴化を容易に実行するために、参考物体として使用される請求項1に記載の装置。
前記強化格子物体は、一次元(1−D)格子物体、二次元の(2−D)格子物体、穴のアレイ、柱、また他の周期的(periodical)な構造である請求項1に記載の装置。
【発明を実施するための形態】
【0007】
当業者が本開示を製造及び使用できるように、以下、実施例を詳しく記載する。本開示に基づき、他の実施例も明白であることが理解でき、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内において、そのシステム又はメカニズムは変更することが可能である。
【0008】
本開示内容を完全に理解することができるように、以下、複数の具体的な説明を提供する。ただし、本開示は、それらの具体的な説明がなくとも実施できる。本発明を明示するために、一部公知のメカニズム及びシステム配置は詳細に示さない。
【0009】
構造の実施例を示す図面は、半図表的で縮尺されず、特に一部の寸法は明確に説明するため誇大に図面に示される。同様に、説明の便宜上、図面の表示においては、同様な方向で示すが、この図面の表現の多数の部分は任意方向である。一般的には、本開示の内容はいずれの方向においても操作できる。
【0010】
本開示を、特定の実施形態及び実施例により説明する。当業者は、本明細書の開示を閲覧することにより、本開示の他の利点を容易に理解することができる。本開示は、異なる実施形態及び実施例を用いても実施できる。本明細書に記載された複数の詳細説明は、本開示の趣旨から逸脱しない限り、異なる観点と応用に基づいて修正することができる。
【0011】
図1は透過型小角X線散乱(tSAXS)技術を示す概略図である。
ビームフラックスまたは高輝度のため、tSAXSは主にシンクロトロンX線源を用いて実行される。ナノスケール特徴の散乱横断面は、その小さい散乱体積のため、本質的に小さい。特徴寸法が20nmである場合、例えば、その高さは、典型的に30〜50nm、または特徴寸法の約2倍であり、その散乱体積はビーム横断面に30〜50nmを乗算しただけで、極めて小さい値である。シンクロトロンX線源は、前記問題を解決できる十分の輝度を有するが、日常の工業設備にとっては巨大かつ高価である。米国国立標準技術研究所(National Institute of Standards and techknowledgy、NIST)は、既にこの類型の応用におけるモリブデン回転陽極X線源を有する実験室システムを成功裏に証明したが、測定速度は大量生産(high volume manufacturing、HVM)にとっては遅すぎる。最近のX線源の発展により、輝度の大幅な増加を提供することが可能な液体金属ジェット源が得られ、測定速度の増加が期待されている。しかし、その測定速度の増加は、tSAXSをHVM応用に使用できるレベルに対してまだ足りない。本開示は目標物体からのX線散乱強度(目標の構造)を強化する装置を提供する。X線散乱強度の強化は、測定速度の増加と信号品質の向上につながっている。
【0012】
X線ビームをSiウエハー(または基板)の格子(構造)に放射させ、入射ビームの特定の部分は基板を透過し、散乱または回折されたビームは探知器に向かう。入射X線の波長は格子(または構造)に比べて遥かに小さいので、X線は現在と未来の様々なIC製造における格子(構造)の特徴を分析できる。tSAXSでの測定のアライメントにおいて、X線は、まず格子に入射し、そして散乱したX線がSiウエハー(または基板)を透過し、あるいは、まずSiウエハー(または基板)を透過し、そして格子(または構造)により散乱する。いずれにせよ、散乱したX線(または回折したX線)は空間解析探知器で探知される。格子のピッチとピッチ変動は主回折ピークと強度の減衰から増加する順番で得られる。他の幾何学形態因子、例えばSWA、LERとLWRは、回折強度の包絡関数に関連される。しかし、実験室X線源によるX線強度またはフラックスの制限により、CDの測定は数時間もかかる。この時間枠により、この技術は研究と発展のツールとして有用であるが、tSAXS応用をイン-ラインIC計測応用に適用させるのに、著しいスループットが要求される。
【0013】
X線源は、実験室源、高X線フラックスを提供するシンクロトロン光源または他のX線源である。
大量生産(HVM)のためのスループットを向上させるため、探知可能なX線散乱強度または回折パターンの強度包絡関数も、収集時間を短縮させる必要がある。従って、本開示は、tSAXS測定において、強化格子物体14を使用する目標物体12からの散乱強度を増幅するための装置を提供する。
【0014】
本明細書にわたって「散乱」と「回折」という用語は同義的に使用できる。さらに、「散乱強度を増幅または強化する」という表現は、必ずしも文字通り、目標物体からの散乱強度が特定の角度において増加することを示唆しない。下記開示の実施形態において証明されたように、目標物体からの散乱強度または信号の強化は通常、強化物体による背景散乱強度の上昇により、著しい散乱強度の低下または増加を示す。実質的に、これは、本明細書に記述された技術を適用させることにより、より認識可能となる目標物体からの散乱信号または貢献である。目標物体からの散乱強度の貢献は正でも負でもよい。
【0015】
図2は、tSAXSがパターンされた目標物体(一次元に示される)の測量に適用されることを示す。
図2に示されるように、X線散乱パターンは空間解析探知器16で測量できる。
本開示によれば、目標物体12(格子)からの散乱強度は下記のように記述できる。
【0016】
ここで、Δb
12は目標物体12のコントラスト因子であり、その数値はほとんどのナノスケールパターンにおいてやや小さい。F
1(q)は目標物体のフーリエ変換であり、qは典型的に
と定義され、ここで、λはX線波長を意味し、θは散乱角である。この開示の全部にわたって目標と強化物体の両者は、それらの原点に対して対称であるので、全てのF(q)値は実数であり、即ち、虚数成分は存在しない。
【0017】
図3aに示されるように、強散乱横断面を有する付加のパターン(即ち、強化格子物体14)は、
図3bに示されるように、目標物体12と探知器16との間に、透過型SAXSの経路に追加される。
図3bに示されるように、中空でない点は目標物体12により屈折されたピーク強度の位置を表し、また、格子状の影は強化格子物体14により屈折されたピーク強度の位置を表する。スクリーントーン、即ち、中空でない点と格子状の影が重なっている部分は、目標物体12と強化格子物体14により屈折されたピーク強度の位置を表す。半導体工業イン-ライン測定の実務または応用において、強化格子物体14は、
図3cに示されるようにX線源と目標物体12との間に位置する。両方の配置ともX線探知器16が受け取ったX線強度のための同様の強化を提供する。
【0018】
tSAXS測定における散乱強度を増幅するための装置は、目標物体12からの入射X線の縦コヒーレンス長内に位置づけられる強化格子物体14と、目標物体12に対して横方向と縦方向の両方向にナノメートル精度で強化格子物体14を配置可能な配置機構とを含む。
【0019】
強化格子物体は、
図3bと3cに示されるように、目標物体の後或いは目標物体の前に位置づけられる。
強化格子物体14は、tSAXS測定において前記目標物体に対してナノメートル精度で横方向または縦方向にシフトされるように構成される。
強化格子物体14は、単一または多層化構造を有する前記目標物体の限界寸法(CD)の特徴化を容易に実行するために、参考物体として使用される。
強化格子物体14は一次元(1−D)格子物体、二次元の(2−D)格子物体、穴のアレイ、柱、また他の周期的(periodical)な構造である。
【0020】
図3b〜cに示されるように、弱散乱物体(即ち、目標物体12)に対して、強散乱物体(即ち、強化格子物体)は弱散乱物体のX線縦コヒーレンス長ε内に位置づけられる。観察された散乱強度は
となる。ここで、第二の格子物体は強度が強化された強散乱を有する強化格子物体14を意味する。
【0021】
式(2)は下記のように展開されることができる。
ここで、
は、強化格子物体14と目標物体12との相互作用項である。相互作用項
は、目標物体12の情報を持ち、又、
の数値は目標物体12のに比べて遥かに高いので、その振幅は、単独の
に比べて著しく大きくなっている。
【0022】
目標物体12から縦コヒーレンス長ε内に位置づけられた強化格子物体14において、異なる範囲でのX線散乱強度の強化は、強化格子物体14の物理的な寸法と材料の変更により達成できる。半導体製造の応用のため、好ましいX線の波長は約0.1nmまたはそれ以下である。
【0023】
下記の実施例において、目標物体12と強化格子物体14の両方は直角横断面ラインを有するライン格子である。
図2と
図3aに示されるように、回折点が全て
である場合にq
xに現れる。関数F
i(q)はF
i(q
x)に置き換えられ、下記のように明確に表示されることができる。
【0024】
ここで、δはディラックデルタを意味し、wは個別のラインの幅を意味し、dは格子のピッチであり、n
iは散乱ピークの順番である。式(4)において、ラインの高さhは、その数値が
のコントラスト因子Δbに含められるので明確に示されない。ここで、ρは格子材料の電子密度であり、単位体積における電子の総数と定義される。ケイ素、銅とポリスチレンにとっては、それらのρ値は各々6.80×10
23/cm
3、24.44×10
23/cm
3と3.44×10
23/cm
3である。ポリスチレンが含まれて典型的なフォートレジストを表す。散乱強度はF
i(q
x)の2乗に比率するので、その値は式(4)に示されるようにn
-2で低減する。比率w/dを1/mとして標記し、式(4)は、
であるピーク強度は全て消失することを示している。例えば、
または線幅がピッチの半分である場合、全ての偶数順番の散乱ピークが消失する。
である場合、3番目、6番目及び9番目の強度が消失する。
【0025】
また、式(3)は、
図4aに表されるように、強化格子物体14と目標物体12とが完全にアライメントすることを表している。非アライメントまたはηで横方向にシフトする場合、式(3)は下記のように変わる。
定義によれば、ηの数値はd
1/2に比べて小さいまたは同等でなければならない。ここで、d
1は目標物体12のピッチを意味する。
【0026】
可能であれば、好ましくは、Δb
2の数値は、高電子密度材料と高いライン高さを選択することで、Δb
1より高く、即ち、ρ
1>ρ
2とh
1>h
2である。さらに、Δb
iはρ
iとh
iの積に比例する。
さらに
の比率を限定し、式(3’)は下記のように記載されることが可能である。
式(3’’)の第一項は、目標物体12と強化格子物体14間の相互作用による、観察された散乱強度の増幅を示す。η値を適切に制御することが重要であり、これにより
の振幅は単独のF
12(q
x)より遥かに大きく、これに対して前項の記号は通常、重要ではない。
【0027】
特定の増幅を実現させるため、強化格子物体のピッチ、d
2は
の条件を守らなければならず、ここで、αは
などでよい。既定のq
xで特定の増幅を実現する条件は、明確に(a)両物体の特定のピーク位置の重畳、または
であること、及び(b)目標物体12における式(4)の括弧内にある
量が整数ではないことである。さもなければ、
ピークの強度はゼロになる。
【0028】
d
2は
と表示できるので、条件(a)は
になる。
である場合、両格子物体の間に全てのピーク位置が重なる。
である場合、強化格子物体14の2番目のピークは目標物体12の1番目のピークと一致し、強化格子物体14の4番目のピークは目標物体12の2番目のピークと一致し、他は同様である。目標物体12のピーク強度の増幅が実現される前に、条件(b)は、
である場合、比率
になってはならないことを示す。さもなければ、全ての偶数順番のピークは消失する。全ての比率が1/4に同等する場合、4番目、8番目、12番目、…は消滅する。
【0029】
である場合、目標物体12の1番目のピークはもう増幅されず、2番目、3番目と4番目は、条件(b)が満たされれば、各々強化物体14の1番目のピークにより増幅される。
ピーク対は既定のq
xにて共存し、式(3’’)の相互作用または増幅項は下記のように示されることが可能である。
式(5)の分母
は、低順番のピークが引き出された場合、増幅の範囲はより顕著であることを示す。
【0030】
本開示は下記の実施例によりさらに詳細に説明される。しかし、本開示の範囲は、意図的にこれらの実施例に限定されるわけではない。
【0031】
実施例
実施例1
本開示の実施例1において、目標物体12と強化格子物体14の両者は同一の材料であり、
である。さらに、
である。線幅は強化格子物体14と目標物体12両者のピッチの半分であり、即ち、
である。
図4bと
図5に示されるように、目標物体12と強化格子物体14の両者はx−方向にシフトηでアライメントされてもよい。式(3’’)の三項の振幅は下記の通りである。
である場合、全てのピーク位置は同一である。
【0032】
本開示の実施例1によれば、式(3’’)は
となる。注意すべきは、
の数値は式(7)において重要な役割を果たしている。
を考えれば、下記のように5つの特別なケースが考えられる。
(I)
【0033】
図5aに示されるように、ケース(I)において、
とする必要がある。即ち、
である。強化格子物体14と目標物体12のアライメントは完璧である。全てのピーク位置について、下記の方程式が得られる。
(II)
【0034】
図5bに示されるように、ケース(II)において、
とする必要がある。即ち、
であり、ここで、nは奇数の整数であり、上記条件は
を導く。故に、全てのピーク位置について、下記の方程式が得られる。
全ての偶数順番のピークについて、強度は
に維持する。
(III)
【0035】
図5cに示されるように、ケース(III)においては、
とする必要がある。即ち、
であり、ここで、nは奇数の整数であり、上記条件は
を導く。全てのピーク位置について、下記の方程式が得られる。
【0036】
全ての偶数順番のピークについて、強度は
に回復する。
(IV)
【0037】
ケース(IV)において、
とする必要がある。即ち、
との条件は
を導き、
との条件は
を導く。番号が
の全てのピークについて、散乱強度は下記の通りである。
【0038】
番号が
の全てのピークについて、散乱強度は下記の通りである。
番号が
の全てのピークについて、散乱強度は下記の通りである。
番号が
の全てのピークについて、散乱強度は下記の通りである。
(V)
【0039】
ケース(V)において、
とする必要がある。即ち、
であり、これは
を導き、また、
であり、これは
を導く。番号が
の全てのピークについて、散乱強度は下記の通りである。
番号が
の全てのピークについて、散乱強度は下記の通りである。
本開示により、表1にケース(I)〜(V)とその他のケースにおけるピーク強度をまとめる。
【0040】
前記5つのケースは、増幅の詳細は目標物体12に対して強化格子物体14のアライメントに依存することを証明した。
η値が比率d
1より小さいステップに移動した場合、この感度の形態は、増幅範囲を量化することが可能な実験手段を提供する。目標物体12の強度強化はx−方向のアライメントに依存する。一旦完全なアライメントになると、全てのピークはピーク強度が4倍までになる。アライメントは
(線幅の半分)までシフトし始めると、全ての奇数ピークは強度が2倍に落ちる。アライメントは
(線幅の三分の二)までシフトすると、1番目、2番目、4番目、5番目、…のピークには強化が見られない。アライメントは
(線幅)までシフトすると、全ての奇数ピークには散乱が観察されることはできない。
【0041】
実施例2
実施例2の条件は実施例1のそれと同じである。しかし、
図6に示されるように、目標物体12はSiからなり、また、強化格子物体はCuからなる。
【表1】
【0042】
表1はケース(I)〜(V)とその他のケースにおける各ピークの強度を表す。
強化格子物体はCuからなり、目標物体12はSiからなるので、強化格子物体の電子強度は目標物体12の
倍である。
本開示の実施例2によれば、式(3’’)の三項の振幅は下記の通りである。
従って、式(3’’)は下記の通りになる。
値の範囲は−1から+1までである。故に、強度範囲は
までである。強度強化因子は、強化物体と目標物体の相互作用により、完全なアライメントの条件において6.84に至る。
【0043】
実施例3
実施例3の条件は実施例1のそれと同じであるが、強化格子物体の特徴高さは
であり、また、両物体に同一の電子密度を持たせ、
図7に示されるように、式(3’’)の三項の振幅は下記の通りである。
【0044】
全ての位置qは
または
に位置する。従って、式(3’’)は下記の通りになる。
【0045】
値の範囲は−1から+1までである。故に、強度範囲は
までであり、強度強化因子の最大値は20である。異なるη値でtSAXSデータを収集することで、観察された強度の変化は
ほど大きくなても良い。
【0046】
実施例4
実施例4の条件は実施例1のそれと同じである。両物体の線幅対ピッチの比率は同一であり、即ち
である。
図8に示されるように、強化格子物体のピッチは
である。目標物体12と強化格子物体14の両者は、材料と格子高さが同一であり、即ち、
である。散乱強度は
に重なり、即ち、強化格子物体の3番目のピークは目標物体12の1番目のピークと作用する。他は同様である。
【0047】
本開示の実施例4によれば、式(3’’)の三項の振幅は下記の通りである。
【0048】
方程式(12a)〜(12c)において、
である。注意すべきは、m値は重要な役割を果たしている。例えば、
のケースにおいて、
である条件は、式(12b)と式(12c)の各々に定義された2番目の項と3番目の項の両者の消失を導く。目標物体12のいずれのピーク位置にも増幅効果は観察されない。
【0049】
本開示によれば、実施例1〜4には、格子高さと電子密度(即ち、因子f)の積、目標物体12と強化格子物体14の間のアライメント、ピッチとその線幅に対する比率は、目標物体12の強度増幅の範囲に影響を及ぼすことを十分に証明している。
【0050】
実施例5
本開示の実施例5においては、目標物体12はSiからなるが、強化格子物体14はCuからなる。
を設定し、線幅は強化格子物体14と目標物体12との両者のピッチ半分であり、即ち
である。強化格子物体14のパターン部分は高電子密度を有する材料、例えば銅、銀、金およびその他、からなる。
【0051】
この実施例において、既定の
において、位置q
xは
または
に位置し、即ち、強化格子物体からの3番目のピークは、目標物体の1番目のそれと重なる。他は同様である。
前記の通り、本開示の実施例5によれば、式(3’’)の三項の振幅は下記の通りである。
全ての奇数n
1に適用し、他はゼロである。
【0052】
前記のケースのとおり、方程式(13a)〜(13c)において
値は重要な役割を果たしている。3番目の項を考えると、その範囲は
の間である。
(即ち、両物体間は非アライメントがない)である場合、番号が奇数の全てのピークにおいて散乱強度は
に低下する。
である場合、番号が奇数の全てのピークの全ての強度における
値は−1に近接し、
である場合、3番目のと9番目のピーク位置における
値は−1に近接するが、n
1=1、3における
は0.5に近接し、他は同様である。ηの精密な制御で、振幅が
の間にあって目標物体12からの番号が奇数のピークの強度において予測可能な変化が観察できる。従って、その結果は、
の探知を、
の間にηを走査することで容易に実行される。本開示によれば、2つのパターンされた部分を探測X線(又は光)ビームのコヒーレンス長内に確保させるため、強化格子物体14のパターン部分は目標物体12のパターン部分に「面」する。この構成は目標物体12と強化格子物体14の間の距離を最小化させる。
【0053】
実施例6
この実施例において、目標物体12はSiからなり、また、強化格子物体14はCuからなる。両物体の高さは同一であり、即ち、
であり、従って
である。強化格子物体のピッチは
である。
図10に示されるように、線幅は強化格子物体14と目標物体12の両者のピッチの三分の一であり、即ち、
である。
目標物体12の2番目、4番目、6番目…のピークは強化格子物体14の1番目、2番目、3番目、…のピークと重なる。言い換えれば、条件
は、n
1は偶数でなければならないことを示す。条件
は番号が偶数の全てのピークが消失することを導く。従ってこの実施例では前記条件が避けられる。式(3’’)の三項の振幅は下記の通りである。
式(14b)における
項は全ての偶数n
1において1と同等である。
【0054】
ここで、n
1=2、4、6、…である場合、
であり、また、n
1=2、4、6…である場合、
を表すs(n
1)項は1、−1と−0.5…である。従って、上記条件に基づいて、式(3”)は
になる。
【0055】
さらに、注意すべきは、目標物体12の強度強化はその2番目、4番目、6番目のピークで発生する。強化因子14を有しても、2番目のピークに観察された強度は、増幅なしの1番目のピークのそれより高くない。一般的に、1番目のピークの強度は他より遥かに高く、目標物体からの1番目のピークの強度を増幅できる強化物体を設計することが望ましい。
【0056】
実施例7
強化格子物体14のピッチ高さが目標物体12より高ければ、強度強化はさらに向上する。例えば、
図11に示されるように
と
であり、ここで、目標物体12はSiからなり、かつ、強化格子物体はCuからなる。全ての他の特徴寸法が実施例6のそれと同一である場合、式(3’’)の三項の振幅は下記の通りである。
〜
【0057】
故に、式(4)は、
になる。強化は
までの範囲である。
【0058】
本開示により、実施例1〜7は単に、tSAXS技術を用いる散乱強度増幅のための装置を例示することに用いられており、本開示を制限するものと解釈されてはならない。このように、特許請求の範囲に示されるように、当業者は、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で上記本開示の実施例に修正や変更を加えてもよい。
【0059】
前記本開示の例示的な実施例の内容は、説明を目的として例示しているだけであり、本開示の網羅的な内容ではなく、本開示を特定の開示内容に制限する意図はない。前記教示により、多様な修正とバリエーションが可能となる。前記実施例は、本開示の原理(即ち、物体を目標物体の縦コヒーレンス長内に位置させることで目標物体からの散乱信号を強化すること)とその実行応用を説明するために選ばれ、説明されており、これにより、他の当業者は、本発明とその多様な実施例を利用して、その多様な修正を特定の用途に適用させることができる。