【実施例】
【0022】
(第1実施例)
図1を参照し、蓄電装置100の構造を説明する。蓄電装置100は、ケース18と、電極組立体52と、正極端子2と、負極端子30と、電流遮断装置50を備えている。ケース18は、金属製であり、略直方体形状である。ケース18は、蓋部18aと本体部18bを備えている。ケース18の内部には、電極組立体52と電流遮断装置50が収容されている。電極組立体52は、正極と負極を備えている(図示省略)。正極タブ16が正極に固定されており、負極タブ20が負極に固定されている。ケース18の内部は、電解液で満たされており、大気が除去されている。
【0023】
正極端子2と負極端子30が、ケース18の内外を通じている。正極端子2と負極端子30は、ケース18の一方向(
図1の紙面上方)に配置されている。すなわち、正極端子2と負極端子30の双方が、電極組立体52に対して同じ方向(蓋部18aが設けられている方向)に配置されている。正極端子2は、ボルト部8を備えている。正極端子2は、ボルト部8にナット10を係合することにより、ケース18に固定されている。正極端子2の一端はケース18の外部に位置しており、他端はケース18の内部に位置している。同様に、負極端子30は、ボルト部36を備えている。負極端子30は、ボルト部36にナット38を係合することにより、ケース18に固定されている。負極端子30の一端はケース18の外部に位置しており、他端はケース18の内部に位置している。
【0024】
正極端子2に、正極リード14が接続されている。正極リード14は、正極タブ16に接続されている。正極端子2は、正極リード14を介して、正極タブ16に電気的に接続されている。すなわち、正極端子2は、電極組立体52の正極に電気的に接続されている。正極リード14は、絶縁シート12によってケース18から絶縁されている。正極端子2及びナット10は、絶縁部材58によってケース18から絶縁されている。正極端子2とケース18の間に絶縁性のシール部材56が配置されている。正極端子2とケース18の隙間は、シール部材56によってシールされている。なお、バスバー4が、バスバーボルト6によって、正極端子2に固定されている。
【0025】
負極端子30は、電流遮断装置50に接続されている。電流遮断装置50の詳細は後述する。電流遮断装置50は、金属製の接続部材26を介して、負極リード24に接続されている。負極端子30は、負極リード24を介して、負極タブ20に電気的に接続されている。すなわち、負極端子30は、電極組立体52の負極に電気的に接続されている。負極リード24は、絶縁シート22によってケース18から絶縁されている。負極端子30及びナット38は、絶縁部材28によってケース18から絶縁されている。負極端子30とケース18の間に絶縁性のシール部材42が配置されている。負極端子30とケース18の隙間は、シール部材42によってシールされている。なお、バスバー32が、バスバーボルト34によって、負極端子30に固定されている。
【0026】
蓄電装置100では、ケース18内の圧力が所定値以下のときは、負極端子30と負極タブ20が、電流遮断装置50を介して電気的に接続している。すなわち、負極端子30と負極の間が導通している。ケース18内の圧力が所定値を超えると、電流遮断装置50が、負極端子30と負極タブ20の導通を遮断し、蓄電装置100に電流が流れることを防止する。
【0027】
図2を参照し、電流遮断装置50について説明する。電流遮断装置50は、負極端子30の拡径部37と、金属製の破断板88と、絶縁部材94と、金属製の変形部材80と、絶縁性のシール部材84を備えている。上記したように、拡径部37(負極端子30)は、ケース18に固定されている。負極端子30は、第1通電部材の一例である。破断板88は、拡径部37と間隔を有して拡径部37に対向する位置に配置されている。破断板88は、第2通電部材の一例である。電極組立体52(
図1も参照)とケース18の間において、電極組立体52の上方に、破断板88,変形部材80,拡径部37の順に配置されている。拡径部37の破断板88側に、溝92と窪み86が設けられている。窪み86は、当接面の一例である。窪み86は、溝92の内側に設けられている。窪み86は、溝92を画定している一方の側壁によって形成されている。換言すると、窪み86は、拡径部37の径方向において、溝92に囲まれた範囲に形成されている。
【0028】
拡径部37の破断板88に対向する対向面35は、中央に向かって窪んでいる。換言すると、対向面35は、端部から中央に向かうに従って、破断板88から離れるように傾斜している。対向面35とは、拡径部37の破断板88に対向する面のうち、変形部材80が固定されていない面のことを意味する。なお、「溝」は、2つの側壁に囲まれた底面を有する形態のことを意味する。また「窪み」は、単に周囲よりも高さが低い形態であり、段差を有する形態のことを意味する。
【0029】
破断板88の拡径部37側に、溝96が設けられている。溝96は、溝92に対向する位置に形成されている。破断板88には、接続部材26が固定されている。破断板88は、接続部材26,負極リード24を介して、負極タブ20と導通している(
図1も参照)。破断板88の中央部88aの厚みは、端部88bの厚みより薄い。また、中央部88aには、破断溝90が設けられている。破断溝90は、中央部88aで連続的に一巡している。
【0030】
支持部材78が、負極端子30の拡径部37と破断板88を支持している。支持部材78は、金属製の外側部72と、絶縁性の第1内側部74と、絶縁性の第2内側部75を備えている。第1内側部74は、外側部72の内側に配置されており、第2内側部75の上方(ケース18側)に配置されている。第2内側部75は、外側部72の内側に配置されており、第2内側部75の下方(電極組立体52側)に配置されている。外側部72によって、拡径部37と破断板88が位置決めされている。具体的には、第1内側部74と第2内側部75を所定の位置に配置した後、外側部72をかしめることによって、破断板88を拡径部37に固定している。なお、内側部74,75は、拡径部37と破断板88を絶縁している。
【0031】
絶縁部材94は、拡径部37(負極端子30)と破断板88の間に配置されている。絶縁部材94は、拡径部37と破断板88の間隔を維持している。すなわち、絶縁部材94は、拡径部37と破断板88が直接接することを防止している。絶縁部材94は、拡径部37と破断板88が直接導通することを防止している。絶縁部材94の一部が、溝92,96内に位置している。絶縁部材94は、変形部材80及びシール部材84に向けて移動することが規制されている。
【0032】
変形部材80は、金属性のダイアフラムである。変形部材80は、拡径部37と破断板88の間に配置されている。変形部材80の端部80bは、拡径部37に固定されている。より具体的には、変形部材80の外周縁は、拡径部37の窪み86の側壁に当接している。窪み86の側壁は、変形部材80の外周縁が当接する当接面である。変形部材80の端部80bは、窪み86の側壁に当接した状態で、拡径部37に溶接されている。変形部材80の中央部80aが、拡径部37から離れるように突出している。換言すると、変形部材80は、端部80bから中央部80aに向かうに従って、破断板88に近づいている。
【0033】
変形部材80の中央部80aは、破断溝90の内側で、破断板88に固定されている。より具体的には、電流遮断装置50を平面視すると(
図2の上から見ると)、中央部80aが、破断溝90に囲まれた範囲で、破断板88に溶接されている。
【0034】
シール部材84は、絶縁性のOリングである。シール部材84は、拡径部37と破断板88の間に配置されている。シール部材84は、絶縁部材94の外側に配置されている。シール部材84は、拡径部37と破断板88を絶縁するとともに、電流遮断装置50の内部を気密に保っている。すなわち、シール部材84は、拡径部37と破断板88をシールして、電流遮断装置50の内部の空間を、電流遮断装置50の外部の空間(ケース18内の空間)と遮断している。
【0035】
ケース18の内圧が所定値以下のときは、負極端子30は、変形部材80,破断板88,接続部材26,負極リード24,負極タブ20を介して、負極と導通している。例えば、蓄電装置100が過充電状態になったり、過昇温状態になると、ケース18の内圧が上昇し、所定値を超える。ケース18の内圧が所定値を超えると、破断溝90を起点として破断板88が破断する。その結果、変形部材80と破断板88が分離し、変形部材80と破断板88が非導通となる。負極端子30と負極が非導通になるので、正極端子2と負極端子30(
図1も参照)の間に電流が流れることを防止することができる。なお、破断板88が破断すると、変形部材80の中央部80aが、破断板88側から拡径部37側に向けて移動する。換言すると、変形部材80が反転する。なお、上記したように、拡径部37の対向面35が窪んでいるので、変形部材80の反転が拡径部37(負極端子30)に妨げられることはない。破断板88が破断した後に、変形部材80と破断板88が再導通することを防止することができる。すなわち、ケース18内の圧力が上昇して電流遮断装置50が作動した後に、正極端子2と負極端子30の間に再度電流が流れることを防止することができる。
【0036】
蓄電装置100の利点を説明する。上記したように、絶縁部材94は、変形部材80及びシール部材84に向けて移動することが規制されている。そのため、絶縁部材94が変形部材80に接触し、変形部材80の可動範囲を狭くすること防止することができる。また、絶縁部材94が変形部材80に接触し、ケース18内の圧力が上昇する前に変形部材80の形状が変形することを防止することができる。なお、変形部材80の外周縁は拡径部37の窪み86の側壁に当接しているので、変形部材80が絶縁部材94に向けて移動することも規制されている。さらに、絶縁部材94がシール部材84に接触し、シール部材84の存在空間を狭くすることを防止することができる。シール部材84の存在空間を狭くなると、シール部材84の充填率が増大し、シール部材84が破損する等の不具合が起こり得る。
【0037】
(第2実施例)
図3及び
図4を参照し、蓄電装置200について説明する。蓄電装置200は、蓄電装置100の変形例であり、電流遮断装置250の構造が蓄電装置100の電流遮断装置50と異なる。蓄電装置200について、蓄電装置100と同じ部品は、蓄電装置100と同じ参照番号を付すことにより、説明を省略することがある。
【0038】
蓄電装置200の電流遮断装置250は、変形部材80に加え、第2の変形部材201を備えている。以下の説明では、第1変形部材80,第2変形部材201と称する。第2変形部材201は、破断板88に対して、第1変形部材80とは反対側に配置されている。すなわち、破断板88は、第1変形部材80と第2変形部材201の間に配置されている。第2変形部材201の端部201bが、破断板88に固定されている。具体的には、第2変形部材201の端部201bが、破断板88の端部88bに溶接されている。
【0039】
電流遮断装置250では、拡径部37,破断板88及び第2変形部材201が、支持部材78によって支持されている。すなわち、破断板88及び第2変形部材201が、支持部材78によって、拡径部37に固定されている。第2変形部材201の破断板88側には、絶縁性の突起203が設けられている。突起203は、第2変形部材201の中央部201aに配置されており、破断板88に向けて突出している。突起203は、破断板88の中央部88aに対向している。より具体的には、電流遮断装置250を平面視(
図4の上下方向から観察)したときに、突起203が、破断溝90で囲まれた範囲内に位置している。
【0040】
第2変形部材201は、端部201bから中央部201aに向かうに従って、破断板88から離れるように突出している。ケース18の内圧が所定値以下のときは、突起203と破断板88の間には隙間が設けられている。ケース18の内圧が所定値を超えると、第2変形部材201が、破断板88に向かって変形する。すなわち、中央部201aが、破断板88の中央部88aに向けて移動する。換言すると、第2変形部材201が、端部201bを支点として反転する。より具体的には、ケース18の内圧が所定値以下のときは第2変形部材201の中央部201aは破断板88から離れる方向に突出している第1位置に存在しており、ケース18の内圧が所定値を超えたときは第2変形部材201の中央部201aは破断板88に向けて突出している第2位置に存在している。突起203が破断板88に接触し、破断板88が破断溝90を起点として破断する。破断板88と第1変形部材80が非導通となり、負極端子30と負極が非導通になる。
【0041】
第2変形部材201が反転すると、突起203の一部が、破断板88の上方に位置する。換言すると、突起203が、破断板88の中央部分を通過する。突起203は、第1変形部材80が下方(破断板88側)に移動することを規制する。そのため、第1変形部材80と破断板88が再導通することをより確実に防止することができる。
【0042】
電流遮断装置250では、第2変形部材201が、電流遮断装置250の内部と外部を隔てている。そのため、第2変形部材201には、ケース18の内圧変化が直接作用する。ケース18の内圧に応じて反転する第2変形部材201を用いることによって、ケース18の内圧が所定値を超えたときに、破断板88をより確実に破断することができる。また、第2変形部材201を用いることによって、破断板88を電流遮断装置250の外部(ケース18の内部)から遮断することができる。破断板88が破断したときにアークが発生しても、アークがケース18内のガス(例えば水素)と接することを防止することができる。
【0043】
上記した電流遮断装置50,250では、変形部材(第1変形部材)80の端部80bを固定する第1通電部材が、負極端子30の一部(拡径部37)である。第1通電部材は、それ自体が外部配線等を接続する外部端子の一部であってもよいし、第1通電部材とは別に外部配線等を接続する外部端子を設け、第1通電部材とその外部端子を導電性のリード等で接続してもよい。また、第1通電部材に変形部材(第1変形部材)を直接固定しないで、第1通電部材に導電性のリードを接続し、そのリードに変形部材(第1変形部材)を接続してもよい。また、第1通電部材が電極端子とは別部品の場合、第1通電部材と電極(正極又は負極)を接続し、破断板(第2通電部材)と電極端子を接続してもよい。
【0044】
上記した蓄電装置は、第1通電部材と第1通電部材の間に配置する絶縁部材の移動を規制するために、第1通電部材と第1通電部材の少なくとも一方に溝が形成されていればよい。そのため、電流遮断装置の構造、及び、蓄電装置を構成する部品の材料は様々なものを使用することができる。以下に、蓄電装置の一例であるリチウムイオン二次電池について、蓄電装置を構成する部品の材料を例示する。
【0045】
電極組立体について説明する。電極組立体は、正極と、負極と、正極と負極の間の位置に介在しているセパレータを備えている。正極は、正極用金属箔と、正極用金属箔上に形成されている正極活物質層を有する。正極タブは、正極活物質層が塗布されていない正極用金属箔に相当する。負極は、負極用金属箔と、負極用金属箔上に形成されている負極活物質層を有する。負極タブは、負極活物質層が塗布されていない負極用金属箔に相当する。なお、活物質層に含まれる材料(活物質、バインダ、導電助剤等)には特に制限がなく、公知の蓄電装置等の電極に用いられる材料を用いることができる。
【0046】
正極用金属箔として、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、ステンレス鋼又はそれらの複合材料を用いることができる。特に、アルミニウム又はアルミニウムを含む複合材料であることが好ましい。また、正極リードの材料として、正極用金属箔と同様の材料を用いることができる。
【0047】
正極活物質は、リチウムイオンが侵入及び脱離可能な材料であればよく、Li
2MnO
3、Li(NiCoMn)
0.33O
2、Li(NiMn)
0.5O
2、LiMn
2O
4、LiMnO
2、LiNiO
2、LiCoO
2、LiNi
0.8Co
0.15Al
0.05O
2、Li
2MnO
2、LiMn
2O
4等を使用することができる。また、正極活物質としてリチウム、ナトリウム等のアルカリ金属、あるいは、硫黄などを用いることもできる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。正極活物質は、必要に応じて導電材,結着剤等とともに正極用金属箔に塗布される。
【0048】
負極用金属箔として、アルミニウム、ニッケル、銅(Cu)等、又はそれらの複合材料等を使用することができる。特に、銅又は銅を含む複合材料であることが好ましい。また、負極リードの材料として、負極用金属箔と同様の材料を用いることができる。
【0049】
負極活物質として、リチウムイオンが侵入及び脱離可能な材料を用いる。リチウム(Li)、ナトリウム(Na)等のアルカリ金属、アルカリ金属を含む遷移金属酸化物、天然黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ、高配向性グラファイト、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素材料、シリコン単体又はシリコン含有合金又はシリコン含有酸化物を使用することができる。なお、負極活物質は、電池容量を向上させるため、リチウム(Li)を含まない材料であることが特に好ましい。負極活物質は、必要に応じて導電材,結着剤等とともに負極用金属箔に塗布される。
【0050】
セパレータは、絶縁性を有する多孔質を用いる。セパレータとして、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、あるいは、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、メチルセルロース等からなる織布または不織布を使用することができる。
【0051】
電解液は、非水系の溶媒に支持塩(電解質)を溶解させた非水電解液であることが好ましい。非水系の溶媒として、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等の鎖状エステルを含んでいる溶媒、酢酸エチル、プロピロン酸メチルなどの溶媒、又はこれらの混合液を使用することができる。また、支持塩(電解質)として、例えば、LiPF
6、LiBF
4、LiAsF
6等を使用することができる。
【0052】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。