【解決手段】カメラの半球視野の空間を全周画像V1として撮影する全方位カメラ2を備え、全周画像V1の内の円内側の実質撮影領域をモニタ6の中央に表示する移動体表示システム1において、全方位カメラ2の撮影画像から移動体を検出および追跡する移動体抽出部3と、移動体抽出部3により追跡される移動体周りを拡大して注視画像V2として生成する注視画像生成部4と、注視画像生成部4により生成された注視画像V2が全周画像V1の一部に重なる構成の合成画像V3を生成し、合成画像V3をモニタ6に表示させる合成画像生成部5と、を備える。
カメラの半球視野の空間を全周画像として撮影する全方位カメラを備え、前記全周画像の内の円内側の実質撮影領域をモニタの中央に表示する移動体表示システムにおいて、
前記全方位カメラの撮影画像から移動体を検出および追跡する移動体抽出部と、
前記移動体抽出部により追跡される移動体周りを拡大して注視画像として生成する注視画像生成部と、
前記注視画像生成部により生成された注視画像が全周画像の一部に重なる構成の合成画像を生成し、当該合成画像をモニタに表示させる合成画像生成部と、
を備えることを特徴とする移動体表示システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、全方位カメラを用いたシステムで監視対象を監視モニタに表示する場合、前記した全周画像および注視画像の内のどちらか一方のみが表示されるようになっている。ここでいう「注視画像」とは、全周画像に任意角度の視点パラメータを与えて補正した画像であり、注視対象、例えば移動体が位置する領域の拡大画像である。前記視点パラメータの付与は、監視モニタに表示されている全周画像の内で注視対象が存在する領域を監視者がパソコンのマウス操作で指定することにより行われる。
図11(a)は監視モニタに表示される全周画像V1のイメージ図である。円Cの内側の領域が全方位カメラで魚眼状に歪曲して表示される部分であり、円Cの外側の領域はCCD素子から得られる外枠として黒く映る(図では便宜上網掛けにて示す)。従来、全周画像V1に映っている移動体(人物)Jを注視したい場合、監視者は移動体J周りの領域Aをマウス操作で指定する。このマウス操作により視点パラメータが付与され、監視モニタには、全周画像V1に替えて、領域Aの補正された拡大画像である注視画像V2(
図11(b))が表示される。
【0006】
しかしながら、マウス操作により注視画像V2を表示させる技術では、移動体Jが移動すると
図11(c),(d)に示すように、移動体Jが注視画像V2の縁部に表示されたり注視画像V2から外れることがある。その場合、監視者は再び全周画像V1に戻し、移動体J周りの領域Aをマウス操作で再指定することとなり、注視画像V2の取扱いに手間がかかる。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するために創作されたものであり、安価で済み、手間のかかる操作を要さずに注視画像を表示できる移動体表示システムおよび移動体表示プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するため、カメラの半球視野の空間を全周画像として撮影する全方位カメラを備え、前記全周画像の内の円内側の実質撮影領域をモニタの中央に表示する移動体表示システムにおいて、前記全方位カメラの撮影画像から移動体を検出および追跡する移動体抽出部と、前記移動体抽出部により追跡される移動体周りを拡大して注視画像として生成する注視画像生成部と、前記注視画像生成部により生成された注視画像が全周画像の一部に重なる構成の合成画像を生成し、当該合成画像をモニタに表示させる合成画像生成部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
この移動体表示システムによれば、以下の効果が奏される。
(1)全周画像と注視画像とが同時に表示されるため、広範囲をカバーする全周画像を監視することでおおまかな人数確認や人物の動線を容易に把握しつつ、注視画像によりある人物の動きを詳細に把握できる。
(2)カメラとして単体の全方位カメラのみで済むため、広い撮像範囲をカバーする移動物体検出用カメラおよび移動物体を拡大して捕捉する監視用カメラの2台を要する従来技術に比して安価な表示システムとなる。
(3)移動体抽出部の移動体追跡機能により注視画像に常に移動体を自動表示させることができ、注視画像の表示にマウス操作等の人的操作を要さない。
【0010】
また、本発明は、前記合成画像生成部は、新規の移動体の注視画像を全周画像のコーナー部に優先して配置することを特徴とする。
【0011】
全周画像の内で円内側の実質撮影領域以外の外枠部分は非撮影領域であり、この非撮影領域はコーナー部で広く占める。したがって、注視画像の矩形の大きさが全周画像の実質撮影領域に重なるほどのサイズであった場合、注視画像をコーナー部に優先的に配置することで、全周画像に対する注視画像の重なり代を抑え、全周画像の監視の妨げを抑制できる。
【0012】
また、本発明は、前記合成画像生成部は、新規の移動体の注視画像を、空いている全周画像のコーナー部の内で前記移動体の重心座標から最も遠いコーナー部に配置することを特徴とする。
【0013】
この移動体表示システムによれば、全周画像における移動体の位置と注視画像との間の距離を大きくとれるため、全周画像において移動体が移動して注視画像に隠れる頻度を確率的に減らすことができる。
【0014】
また、本発明は、前記全周画像は横長画像であって、前記合成画像生成部は、全てのコーナー部に注視画像が既に配置されているときには、新規の移動体の注視画像を、左右の縁中央部の内で前記移動体の重心座標から遠い縁中央部に配置することを特徴とする。
【0015】
この移動体表示システムによれば、コーナー部に次いで非撮影領域を広く占める左右の縁中央部に注視画像を配置することで、全周画像に対する注視画像の重なり代を極力抑え、全周画像の監視の妨げを抑制できる。また、移動体の重心座標から遠い縁中央部に配置することで、全周画像における移動体の位置と注視画像との間の距離を大きくとれるため、全周画像において移動体が移動して注視画像に隠れる頻度を減らすことができる。
【0016】
また、本発明は、前記合成画像生成部は、左右の縁中央部に注視画像が既に配置されているときには、新規の移動体の注視画像を、上下の縁中央部の内で前記移動体の重心座標から遠い縁中央部に配置することを特徴とする。
【0017】
この移動体表示システムによれば、左右の縁中央部に次いで非撮影領域を広く占める上下の縁中央部に注視画像を配置することで、全周画像に対する注視画像の重なり代を極力抑え、全周画像の監視の妨げを抑制できる。また、移動体の重心座標から遠い縁中央部に配置することで、全周画像における移動体の位置と注視画像との間の距離を大きくとれるため、全周画像において移動体が移動して注視画像に隠れる頻度を減らすことができる。
【0018】
また、本発明は、前記移動体抽出部は、Pピクチャフレームに含まれるイントラ符号化のマクロブロックと順方向予測符号化であって動きベクトルがしきい値T
1以上のマクロブロックとを同じ画素値とする2値化の移動物体マップを作成し、前記画素値の集合体を囲む動き領域を作成し、前記動き領域中のイントラ符号化のマクロブロック数がしきい値T
2以上であるとき、前記集合体を移動体として検出することを特徴とする。
【0019】
この移動体表示システムによれば、低フレームレート(例えば8fps)の圧縮ビデオデータにおいても移動体を精度良く検出できる。
【0020】
また、本発明は、前記移動体抽出部は、直前Pピクチャフレームと現Pピクチャフレームとの間で同一のIDを持つ動き領域の重心を結ぶ擬似慣性ベクトルを求め、当該擬似慣性ベクトルから現Pピクチャフレームの動き領域の位置を予測することを特徴とする。
【0021】
この移動体表示システムによれば、低フレームレート(例えば8fps)の圧縮ビデオデータにおいても移動体の追跡精度が向上する。
【0022】
また、本発明は、コンピュータに、カメラの半球視野の空間を全周画像として撮影する全方位カメラの撮影画像から移動体を検出および追跡する移動体抽出ステップと、前記移動体抽出ステップにより追跡される移動体周りを拡大して注視画像として生成する注視画像生成ステップと、前記注視画像生成ステップにより生成された注視画像が全周画像の一部に重なる構成の合成画像を生成し、当該合成画像をモニタに表示させる合成画像生成ステップと、を実行させることを特徴とする。
【0023】
この移動体表示プログラムによれば、以下の効果が奏される。
(1)全周画像と注視画像とが同時に表示されるため、広範囲をカバーする全周画像を監視することでおおまかな人数確認や人物の動線を容易に把握しつつ、注視画像によりある人物の動きを詳細に把握できる。
(2)単体の全方位カメラの撮影画像に関する表示プログラムとなるため、広い撮像範囲をカバーする移動物体検出用カメラおよび移動物体を拡大して捕捉する監視用カメラの2台を要する従来技術に比して簡単な表示プログラムとなる。
(3)移動体抽出部の移動体追跡機能により注視画像に常に移動体を自動表示させることができ、注視画像の表示にマウス操作等の人的操作を要さない。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、安価で、手間のかかる操作を要さずに注視画像を表示できる移動体表示システムとなる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1において、本実施形態の移動体表示システム1は、カメラの周囲(全方位360°)であって例えばほぼ180°の半球レンズの視野の空間を全周画像V1(
図2)として撮影する全方位カメラ2を備える。全方位カメラ2は、例えば撮影した画像データを、H.264規格の圧縮ビデオデータとJPEGデータの2種のデータとして同時配信可能なカメラである。一般にモニタ6の表示部は横長矩形状であるため、これに表示される全周画像V1は
図2に示すように横長矩形の画像である。全周画像V1は、その円Cの内側が魚眼状に歪曲して表示される実質撮影領域であり、円Cの外側領域はCCD素子から得られる外枠として黒く映る領域(図では便宜上網掛けにて示す)である。
【0027】
図1において、移動体表示システム1は、全方位カメラ2の撮影画像から移動体を検出および追跡する移動体抽出部3と、移動体抽出部3により追跡される移動体周りを拡大して注視画像V2(
図2)として生成する注視画像生成部4と、注視画像生成部4により生成された注視画像V2が全周画像V1の一部に重なる構成の合成画像V3を生成し、この合成画像V3をモニタ6に表示させる合成画像生成部5と、を備える。
【0028】
「移動体抽出部3」
本実施形態の移動体抽出部3は、
図4に示す動き検出部11と動き追跡部21とを備えて構成される。
【0029】
「動き検出部11」
図4(a)において、動き検出部11は、符号化判定部12と、動きベクトル算出部13と、2値化処理部14と、動き領域作成部15と、移動体特定部16と、を備える。
【0030】
「符号化判定部12」
符号化判定部12は、全方位カメラ2で撮影されH.264規格で処理された圧縮ビデオデータをH.264キャプチャ部7(
図1)を経由して入力する。圧縮ビデオデータは、3つのフレーム符号化モード(フレーム内符号化フレーム(Iピクチャフレーム),順方向予測フレーム(Pピクチャフレーム),双方向予測フレーム(Bピクチャフレーム))を含む。また、圧縮ビデオデータは、マクロブロックを構成するブロックの圧縮に用いられるブロック符号化モードとして、フレーム内のみの情報を用いるイントラ符号化と、過去のフレームを参照する順方向予測符号化とを含む。符号化判定部12は、各Pピクチャフレームに含まれる個々のマクロブロックの符号化が、イントラ符号化であるか或いは順方向予測符号化であるかの判定を行う。
【0031】
「動きベクトル算出部13」
符号化判定部12により順方向予測符号化と判定されたマクロブロックについて、動きベクトル算出部13は、H.264規格で実装された動きベクトル検出部(図示せず)から動きベクトルを取得し、マクロブロック全体の動きベクトルを算出する。例として、縦16×横16画素からなるマクロブロックに対し、複数のパーティション(例えば縦8×横8画素のブロックサイズ)に分け、各パーティションの動きベクトルからマクロブロック全体の動きベクトルを算出する。
【0032】
「2値化処理部14」
符号化判定部12によりイントラ符号化と判定されたマクロブロックについて、2値化処理部14は、そのマクロブロックに対応した画素値を1とする。また、符号化判定部12により順方向予測符号化と判定されたマクロブロックについて、2値化処理部14は、動きベクトル算出部13で算出された動きベクトルの大きさがしきい値T
1以上であるとき、そのマクロブロックに対応した画素値を1とし、しきい値T
1未満であるとき、そのマクロブロックに対応した画素値を0とする。
【0033】
「動き領域作成部15」
2値化処理部14によって作成された2値化の分布図(移動物体マップ17(
図5))において、動き領域作成部15は、例えば、上下左右の4方向において画素値1で連結した、いわゆる「4連結」の成分、あるいは、さらに斜め4方向を加えた「8連結」の成分(以降、集合体Sという)を囲む矩形領域を作成する。以下、この矩形領域を動き領域BBoxと呼ぶ。
図5の移動物体マップ17では、画素値「1」を白、画素値「0」を黒(便宜上、灰色にて示す)として示してあり、動き領域BBoxが3箇所作成された場合を示している。
【0034】
「移動体特定部16」
移動体特定部16は、動き領域作成部15で作成された動き領域BBoxについて、動き領域BBox中に含まれているイントラ符号化のマクロブロック数が或るしきい値T
2以上であれば、その動き領域BBox内の集合体Sが移動体であるとみなし、該移動体を特定する。例えば
図5では、2つの動き領域BBox
1,動き領域BBox
2がそれぞれのイントラ符号化のマクロブロック数がしきい値T
2以上であったとして移動体であるとみなされ、動き領域BBox
3はイントラ符号化のマクロブロック数がしきい値T
2未満であったとしてノイズとみなされる。
【0035】
図6は動き検出部11の処理フロー図である。符号化判定部12は、各Pピクチャフレームに含まれる個々のマクロブロックの符号化がイントラ符号化であるか順方向予測符号化であるかの判定を行い(ステップS101)、イントラ符号化であれば2値化処理部14はそのマクロブロックに対応した画素値を1とする(ステップS102)。ステップS101で順方向予測符号化であれば、動きベクトル算出部13はそのマクロブロック全体の動きベクトルを算出する(ステップS103)。動きベクトルがしきい値T
1以上であるかの判定を行い(ステップS104)、2値化処理部14は、しきい値T
1以上であればそのマクロブロックに対応した画素値を1とし(ステップS105)、しきい値T
1未満であればそのマクロブロックに対応した画素値を0とする(ステップS106)。
【0036】
2値化処理部14は、ステップS102,S105,S106で得られた画素値から移動物体マップ17を作成し(ステップS107)、動き領域作成部15は画素値1の集合体Sを囲う動き領域BBoxを作成する(ステップS108)。移動体特定部16は、動き領域BBox内のイントラマクロブロック数が或るしきい値T
2以上であるかの判定を行い(ステップS109)、しきい値T
2以上であればその動き領域BBox内に移動体があると特定し(ステップS110)、しきい値T
2未満であればノイズと特定する(ステップS111)。
【0037】
「動き追跡部21」
図4(b)において、動き追跡部21は、動き領域予測部22と、動き領域比較判定部23と、ID割り振り部24と、を備える。
【0038】
「動き領域予測部22」
動き領域予測部22は、直前フレームにおいて移動体特定部16により移動体があるとみなされた動き領域BBoxの移動ベクトル(これを擬似慣性ベクトルという)から、現フレームにおける動き領域BBoxの位置を予測する。擬似慣性ベクトルとは、隣接したPピクチャフレーム間で後記するように同一のIDを持つ動き領域BBoxの重心を結ぶベクトル(始点が直前フレームの重心、終点が現フレームの重心)である。
【0039】
「動き領域比較判定部23」
動き領域比較判定部23は、動き領域予測部22で予測された動き領域BBoxの位置に基づいて、現フレームで動き領域作成部15により作成された動き領域BBoxに対し、直前フレームの動き領域BBoxとの類似度(例えば矩形の重なり率および擬似慣性ベクトル方向の近似率)を算出し、両フレーム間での動き領域BBoxの比較判定を行う。
【0040】
「ID割り振り部24」
動き領域比較判定部23で比較された現フレームの動き領域BBoxの中で、直前フレームの動き領域BBoxと所定のしきい値T
3以上の類似度がある内で最大の類似度を持つ動き領域BBoxに対して、直前フレームの動き領域BBoxのIDと同一のIDを割り振る。しきい値T
3未満の類似度の動き領域BBoxはノイズとみなす。異なる移動体同士が交差するとき等にはそれぞれの移動体の動き領域BBoxが重なり、一つの大きな動き領域BBoxが形成されることになるが、前記擬似慣性ベクトルと各IDの割り振り保持により各移動体の追跡精度が向上する。
【0041】
図7は動き追跡部21の処理フロー図である。動き領域予測部22は、動き領域BBoxの擬似慣性ベクトルを取得し(ステップS201)、この擬似慣性ベクトルから、現フレーム(フレーム(t+1))の動き領域BBoxの位置を予測する(ステップS202)。動き領域比較判定部23は直前フレーム(フレーム(t))と現フレーム(フレーム(t+1))との間で動き領域BBoxの比較を行う(ステップS203,S204)。類似度がしきい値T
3以上である動き領域BBoxが複数存在した場合、その中で類似度が最大であれば(ステップS205のYES)、同一の移動体と特定し、現フレームの動き領域BBoxに直前の動き領域BBoxと同じIDを割り振る(ステップS206)。ステップS205のNOの場合には別の移動体と特定される(ステップS207)。また、ステップS204でしきい値T
3未満である場合にはノイズと特定される(ステップS208)。
【0042】
「注視画像生成部4」
図1において、全方位カメラ2からH.264規格の圧縮ビデオデータと同時配信されるJPEGデータは、JPEGキャプチャ部8,RGBデコード部9を経由して注視画像生成部4に全周画像V1として入力される。全周画像V1から注視画像V2を作成するにあたっては、視点パラメータおよび拡大率が必要となる。本実施形態では、
図8に示すように抽出した矩形情報(動き領域作成部15で作成した動き領域BBox)において、矩形の重心Gから視点パラメータを算出し、矩形の大きさから拡大率を算出することによって注視画像V2を作成する。全周画像V1は理論的に半球画像で表すことができるので、
図9に示すように重心Gに対応する視点パラメータを極座標変換によって算出し、拡大率と合わせて注視画像V2を出力する。
【0043】
図8より、重心Gの座標(x
G,y
G)は、式(1)と表せる。x
R,y
Rは矩形の基準コーナー部Rの座標、w
Rは矩形幅、h
Rは矩形高さである。
【0045】
図9より、視点Pは、重心Gを通るxy平面に垂直な直線と半球の交点であるので、視点パラメータφ,θは、式(2)を満たす。
但し「0≦φ≦π/2」,「0≦θ<2π」。
【0047】
拡大率mpは抽出した矩形の大きさ(w
R,h
R)と、全周画像V1の大きさ(w
i,h
i)とから式(3)で表せる。但しkは正の定数。
【0049】
以上のように視点パラメータφ,θおよび拡大率mpを用いることで、矩形の中心部を視点とした注視画像V2を作成することができる。
【0050】
「合成画像生成部5」
図1において、全方位カメラ2からのJPEGデータは、JPEGキャプチャ部8,RGBデコード部9を経由し合成画像生成部5にも全周画像V1として入力される。合成画像生成部5は、当該全周画像V1と注視画像生成部4から入力される注視画像V2とから合成画像V3を生成する。合成画像V3は、注視画像V2が前面側に表示され、その分、全周画像V1の一部が隠れた画面構成となる。注視画像V2の中心部には前記動き追跡部21で追跡される移動体が常に表示される。
【0051】
本実施形態では、合成画像生成部5は、新規の移動体の注視画像V2を全周画像V1のコーナー部P1〜P4に優先して配置する。合成画像V3における注視画像V2の表示位置数は、例えば
図2に示すように4つのコーナー部P1〜P4、左右の縁中央部P5,P6、上下の縁中央部P7,P8の計8箇所である。この場合の新規移動体の注視画像V2の表示位置決定のフロー例は次の通りである。
図10を参照して、コーナー部P1〜P4に空きがあるか否かの判定がなされ(ステップS01)、空きがある場合、全周画像V1における移動体の重心座標から最も遠いコーナー部に注視画像V2を配置する(ステップS02)。勿論、ここでは、空きが1つである場合はそのコーナー部が移動体の重心座標から最も遠いコーナー部であると解釈する。
【0052】
ステップS01でコーナー部P1〜P4に空きがない場合、左右の縁中央部P5,P6に空きがあるか否かの判定がなされ(ステップS03)、空きがある場合、移動体の重心座標から最も遠い縁中央部に注視画像V2を配置する(ステップS04)。勿論、空きが1つである場合はその縁中央部が移動体の重心座標から最も遠い縁中央部であると解釈する。
【0053】
ステップS03で左右の縁中央部P5,P6に空きがない場合、上下の縁中央部P7,P8に空きがあるか否かの判定がなされ(ステップS05)、空きがある場合、移動体の重心座標から最も遠い縁中央部に注視画像V2を配置する(ステップS06)。勿論、空きが1つである場合はその縁中央部が移動体の重心座標から最も遠い縁中央部であると解釈する。ステップS05で上下の縁中央部P7,P8に空きがない場合には異常終了とする。
【0054】
図3では、移動体J1の注視画像V2が、全周画像V1における移動体J1の重心座標から最も遠いコーナー部であるコーナー部P1に表示され、移動体J2の注視画像V2が、全周画像V1における移動体J2の重心座標から最も遠いコーナー部であるコーナー部P3に表示された状態の合成画像V3を示している。
【0055】
また、或る移動体が追跡され続けている間は注視画像V2の表示位置は固定される。例えば、
図3において移動体J1が左上に移動することにより、コーナー部P1が移動体J2の重心座標から最も遠いコーナー部ではなくなった場合であっても、移動体J1の注視画像V2はそのままコーナー部P1に表示され続ける。
【0056】
「効果」
以上のように、カメラの半球視野の空間を全周画像V1として撮影する全方位カメラ2を備え、全周画像V1の内の円内側の実質撮影領域をモニタ6の中央に表示する移動体表示システム1において、全方位カメラ2の撮影画像から移動体を検出および追跡する移動体抽出部3と、移動体抽出部3により追跡される移動体周りを拡大して注視画像V2として生成する注視画像生成部4と、注視画像生成部4により生成された注視画像V2が全周画像V1の一部に重なる構成の合成画像V3を生成し、この合成画像V3をモニタ6に表示させる合成画像生成部5と、を備える構成にすれば、次のような効果が奏される。
【0057】
(1)全周画像V1と注視画像V2とが同時に表示されるため、広範囲をカバーする全周画像V1を監視することでおおまかな人数確認や人物の動線を容易に把握しつつ、注視画像V2によりある人物の動きを詳細に把握できる。
(2)カメラとして単体の全方位カメラ2のみで済むため、広い撮像範囲をカバーする移動物体検出用カメラおよび移動物体を拡大して捕捉する監視用カメラの2台を要する従来技術に比して安価な表示システムとなる。
(3)移動体抽出部3の移動体追跡機能により注視画像V2に常に移動体を自動表示させることができ、注視画像V2の表示にマウス操作等の人的操作を要さない。
【0058】
また、CPUやメモリ等から構成されたコンピュータ(図示せず)に、カメラの周囲のほぼ180°の半球視野の空間を全周画像V1として撮影する全方位カメラ2の撮影画像から移動体を検出および追跡する移動体抽出ステップと、移動体抽出ステップにより追跡される移動体周りを拡大して注視画像V2として生成する注視画像生成ステップと、注視画像生成ステップにより生成された注視画像V2が全周画像V1の一部に重なる構成の合成画像V3を生成し、この合成画像V3をモニタ6に表示させる合成画像生成ステップと、を実行させる移動体表示プログラムによれば、次のような効果が奏される。
【0059】
この移動体表示プログラムによれば、以下の効果が奏される。
(1)全周画像と注視画像とが同時に表示されるため、広範囲をカバーする全周画像を監視することでおおまかな人数確認や人物の動線を容易に把握しつつ、注視画像によりある人物の動きを詳細に把握できる。
(2)単体の全方位カメラの撮影画像に関する表示プログラムとなるため、広い撮像範囲をカバーする移動物体検出用カメラおよび移動物体を拡大して捕捉する監視用カメラの2台を要する従来技術に比して簡単な表示プログラムとなる。
(3)移動体抽出部の移動体追跡機能により注視画像に常に移動体を自動表示させることができ、注視画像の表示にマウス操作等の人的操作を要さない。
【0060】
また、矩形の全周画像V1の内で円内側の実質撮影領域以外の外枠部分は被撮影領域であり、この被撮影領域はコーナー部P1〜P4で広く占める。したがって、注視画像の矩形サイズが大きい場合、新規の移動体の注視画像V2を全周画像V1のコーナー部P1〜P4に優先して配置することで、全周画像V1に対する注視画像V2の重なり代を抑え、全周画像V1の監視の妨げを抑制できる。
【0061】
また、合成画像生成部5は、新規の移動体の注視画像V2を、空いている全周画像V1のコーナー部P1〜P4の内で移動体の重心座標から最も遠いコーナー部に配置する構成とすれば、全周画像V1における移動体の位置と注視画像V2との間の距離を大きくとれるため、全周画像V1において移動体が移動して注視画像V2に隠れる頻度を減らすことができる。これにより、全周画像V1の監視の妨げを抑制できる。
【0062】
全周画像V1が横長画像である場合、合成画像生成部5は、全てのコーナー部P1〜P4に注視画像V2が既に配置されているときには、新規の移動体の注視画像V2を、左右の縁中央部P5,P6の内で移動体の重心座標から遠い縁中央部に配置する構成とすれば、コーナー部P1〜P4に次いで非撮影領域を広く占める左右の縁中央部P5,P6に注視画像V2を配置することで、全周画像V1に対する注視画像V2の重なり代を極力抑え、全周画像V1の監視の妨げを抑制できる。また、移動体の重心座標から遠い縁中央部に配置することで、全周画像V1における移動体の位置と注視画像V2との間の距離を大きくとれるため、全周画像V1において移動体が移動して注視画像V2に隠れる頻度を減らすことができる。
【0063】
さらに、合成画像生成部5は、左右の縁中央部P5,P6に注視画像V2が既に配置されているときには、新規の移動体の注視画像V2を、上下の縁中央部P7,P8の内で移動体の重心座標から遠い縁中央部に配置する構成とすれば、左右の縁中央部P5,P6に次いで非撮影領域を広く占める上下の縁中央部P7,P8に注視画像V2を配置することで、全周画像V1に対する注視画像V2の重なり代を極力抑え、全周画像V1の監視の妨げを抑制できる。また、移動体の重心座標から遠い縁中央部に配置することで、全周画像V1における移動体の位置と注視画像V2との間の距離を大きくとれるため、全周画像V1において移動体が移動して注視画像V2に隠れる頻度を減らすことができる。
【0064】
また、移動体抽出部3は、Pピクチャフレームに含まれるイントラ符号化のマクロブロックと順方向予測符号化であって動きベクトルがしきい値T
1以上のマクロブロックとを同じ画素値「1」とする2値化の移動物体マップ17を作成し、前記画素値「1」の集合体Sを囲む動き領域BBoxを作成し、動き領域BBox中のイントラ符号化のマクロブロック数がしきい値T
2以上であるとき、集合体Sを移動体として検出する構成とすれば、低フレームレート(例えば8fps)の圧縮ビデオデータにおいても移動体を精度良く検出できる。
【0065】
さらに、移動体抽出部3は、直前Pピクチャフレームと現Pピクチャフレームとの間で同一のIDを持つ動き領域BBoxの重心を結ぶ擬似慣性ベクトルを求め、当該擬似慣性ベクトルから現Pピクチャフレームの動き領域BBoxの位置を予測する構成とすれば、次のような効果が奏される。従来、移動体の追跡手段として動きベクトルの加算平均を用いることが知られている。これは例えば30fpsなどの高フレームレートにより動きベクトルの変化が滑らかとなる場合には有効であるが、監視カメラ等で多く用いられる低フレームレートの圧縮ビデオデータでは、隣接フレーム間の動きベクトルの変化が滑らかにならず、必ずしも物体の移動と合致しないおそれがある。これに対し、本実施形態では動き領域BBoxの重心間の差分を動き領域BBoxの移動ベクトルとして利用するため、低フレームレート(例えば8fps)の圧縮ビデオデータであっても移動体の追跡精度が向上する。
【0066】
以上、本発明の好適な実施形態を説明した。合成画像V3については様々な機能を付加することが可能であり、例えば合成画像生成部5により自動的に配置された注視画像V2に対し、監視者がマウスのドラッグ操作により任意の位置にずらしたり、任意の大きさに変える機能を持たせることもできる。