(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-8077(P2015-8077A)
(43)【公開日】2015年1月15日
(54)【発明の名称】被覆電線用導通器具
(51)【国際特許分類】
H01R 4/24 20060101AFI20141212BHJP
G01R 31/02 20060101ALI20141212BHJP
【FI】
H01R4/24
G01R31/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-132760(P2013-132760)
(22)【出願日】2013年6月25日
(71)【出願人】
【識別番号】395021310
【氏名又は名称】株式会社北関スクリーン
(71)【出願人】
【識別番号】513160121
【氏名又は名称】田村 孝志
(74)【代理人】
【識別番号】100122552
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 浩二郎
(72)【発明者】
【氏名】田村 孝志
(72)【発明者】
【氏名】野村 城弘
【テーマコード(参考)】
2G014
5E012
【Fターム(参考)】
2G014AA02
2G014AB20
2G014AB33
2G014AC06
5E012AA26
5E012AA27
(57)【要約】
【課題】被覆電線用導通器具について、低コストで様々な種類の被覆電線に対し適切な導通状態を確保できるようにする。
【解決手段】溝20aに挿入した被覆電線に金属針30aを穿刺して被覆を貫通させ内部の金属線に対し導通状態を確保する被覆電線用導通器具1Aであって、手に握って閉又は開方向に操作する対のグリップ体2,3及び前記操作により開閉軸32を介して閉じ方向又は開方向に動作する対の挟み体20,30を有してなるペンチ状又はクランプ状のものとされ、溝20aは挟み体20,30が対向する一方の面で開閉軸32の遠心方向に直角方向に形成され、金属針30aは前記対向する他方の面で閉鎖時に溝20aの幅方向中央位置を所定深さまで進入するよう設けられており、溝20aに被覆電線を挿入して挟み体20,30を閉じることで金属針30aが被覆電線の被覆を貫通して所定深さまで穿刺されるものとした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆電線を所定の溝に挿入して位置決めしながら導電体に接続された金属針で穿刺して被覆を貫通させることで内部の金属線に対し導通状態を確保する導通器具において、手に握りながら閉方向又は開方向に操作する対のグリップ体、及び前記操作により開閉軸を介し閉方向又は開方向に動作する対の挟み体を有してなるペンチ状又はピンチ状のものとされ、前記溝は前記挟み体が対向している一方の面で前記開閉軸の遠心方向に対し直角方向に形成され、前記金属針は前記対向している他方の面で閉じ動作時に前記溝の幅方向中間位置を所定の深さまで進入するように設けられており、前記溝に前記被覆電線を挿入して前記対の挟み体を閉じることにより、前記金属針が前記被覆電線の被覆を貫通して所定深さまで穿刺される、ことを特徴とする被覆電線用導通器具。
【請求項2】
前記溝は、その幅方向に沿う断面形状が、該溝を形成する面から深さ方向に二等辺三角形状に切り込まれて2つの傾斜面の下端側で角部を形成してなるV字状とされており、挿入した前記被覆電線が前記2つの傾斜面で案内されて前記溝の幅方向中央に位置決めされる、ことを特徴とする請求項1に記載した被覆電線用導通器具。
【請求項3】
前記金属針は、ネジ状の支持軸の先端面中心部分から該支持軸の中心軸線に沿って延設されてなるものであり、前記支持軸が前記対向している他方の面に開口したネジ孔に螺入されて前記挟み体に固定されており、前記支持軸を所定の工具を用いて外部から回動させることにより、前記支持軸の螺入深さの変更及び前記ネジ孔からの着脱が可能とされている、ことを特徴とする請求項1または2に記載した被覆電線用導通器具。
【請求項4】
前記金属針は、少なくとも先端側が楔状に形成されており、前記被覆電線への穿刺痕が線状になることを特徴とする請求項1,2または3に記載した被覆電線用導通器具。
【請求項5】
前記対の挟み体は、付設された所定の付勢手段又は固定手段により、前記被覆電線を挟み込んで前記金属針を穿刺した状態を維持可能とされている、ことを特徴とする請求項1,2,3または4に記載した被覆電線用導通器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆電線用導通器具に関し、殊に、被覆電線の被覆を金属針で貫通させて内部の金属線との間で電気的導通を確保するのに用いられる導通器具に関する。
【背景技術】
【0002】
イルミネーション装置など、配線中に多数の発光素子を直列配置した回路においては、発光素子や配線中に1カ所でも断線があると使用不能になってしまうものであるが、その断線箇所を探索するために、回路を構成する被覆電線のうち断線が想定される部分を挟む2箇所で被覆を剥がして金属線を露出させ、これに外部から通電して導通状態をチェックすることが行われている。
【0003】
しかし、このように被覆を剥がして行うチェック作業には手間を要することに加え、チェック後に被覆を剥がした部分を絶縁テープ等で充分に補修する必要があることから、斯かる作業を断線箇所が見つかるまで何度も連続的に実施することは、作業者にとって過大な負担となっていた。
【0004】
これに対し、特開平6−104038号公報や特開平7−203042号公報にも提案されているように、先端側で鉤状に形成した溝に被覆配線を引っ掛けながら、その溝に先端側を向けた金属針をバネの反発力で押し進めて被覆を貫通させる方式の導通器具が周知である。これにより、被覆を剥がすことなく導電線に対し外部から電気的に導通した状態としてチェックを行えることに加え、その部分の補修も不要又は最小限で済むため、作業者の負担を大きく軽減することが可能となる。
【0005】
しかし、前述した器具は、いずれも構造が複雑で高コストであることに加え、溝に引っ掛けた被覆電線にバネ圧で金属針を穿刺する方式であるため、想定した被覆電線よりも細いものに使用した場合は、溝の中心からずれた位置で金属針を穿刺して金属線への導通が不十分になる畏れがあり、或いは、想定した被覆電線と被覆状態の異なるものに使用した場合は、金属針が被覆を充分に貫通しなかったり反対側の被覆まで貫通したりする畏れもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−104038号公報
【特許文献2】特開平7−203042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような問題を解決しようとするものであり、被覆電線用の導通器具について、低コストで様々な被覆電線に対し適切な導通状態を確保できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明は、被覆電線を所定の溝に挿入して位置決めしながら導電体に接続された金属針で穿刺して被覆を貫通させることで内部の金属線に対し導通状態を確保する導通器具において、手に握りながら閉方向又は開方向に操作する対のグリップ体、及び前記操作により開閉軸を介し閉方向又は開方向に動作する対の挟み体を有してなるペンチ状又はピンチ状のものとされ、前記溝は挟み体が対向している一方の面で前記開閉軸の遠心方向に対し直角方向に形成され、前記金属針は前記対向している他方の面で閉じ動作時に前記溝の幅方向中間位置を所定の深さまで進入するように設けられており、前記溝に被覆電線を挿入して対の挟み体を閉じることにより、前記金属針が被覆電線の被覆を貫通して所定深さまで穿刺されることを特徴とするものとした。
【0009】
このように、ペンチ状またはピンチ状のものとしながら一方の挟み体の溝で被覆電線を位置決めして他方の挟み体の金属針を穿刺する方式としたことで、既存の器具を使用できる簡易な構成の器具として低コストで済むことに加え、作業者が使い慣れた器具と同様の使用方法で細かく調整しながら適度な深さで穿刺できるため、適切な導通状態を容易に確保可能なものとなる。
【0010】
また、この被覆電線用導通器具において、その挟み体に設けた溝は、その幅方向に沿う断面形状が、これを形成する面から深さ方向に二等辺三角形状に切り込まれて2つの傾斜面の下端側で角部を形成してなるV字状とされており、挿入した被覆電線が前記2つの傾斜面で案内されて溝の幅方向中央に位置決めされる、ことを特徴としたものとすれば、径が多少異なる被覆電線を対象とした場合であっても、挿入するだけで自動的に溝の中央に位置決めされるため、熟練を要することなく被覆電線の中心位置に正確に穿刺できるものとなる。
【0011】
さらに、上述した被覆電線用導通器具において、その金属針は、ネジ状の支持軸の先端面中心部分からその中心軸線に沿って延設されてなるものであり、その支持軸が前記対向している他方の面に開口したネジ孔に螺入されて挟み体に固定されており、その支持軸を所定の工具を用いて外部から回動させることにより、その支持軸の螺入深さの変更及び着脱が可能とされている、ことを特徴としたものとすれば、支持軸を外部から回動操作するだけで被覆電線の個々の状況に応じて金属針の刺入深さを容易に調整できるようになり、且つ金属針の交換作業も容易に行えるものとなる。
【0012】
さらにまた、上述した被覆電線用導通器具において、その金属針は、少なくとも先端側が楔状に形成されており、被覆電線への穿刺痕が線状になることを特徴としたものとすれば、金属針を抜いた後で開口部分が密着して内部の金属線が露出しにくくなるため、補修作業が不要または最小限で済むものとなる。
【0013】
加えて、上述した被覆電線用導通器具において、その対の挟み体は、所定位置に付設された所定の付勢手段又は固定手段により、被覆電線を挟み込んで金属針を穿刺した状態を維持可能とされている、ことを特徴としたものとすれば、金属針で被覆電線を穿刺して導通状態を維持したまま、グリップ体から手を離してチェック作業を進めることが可能なものとなる。
【発明の効果】
【0014】
ペンチ状またはピンチ状とされて一方の挟み体の溝で被覆電線を位置決めしながら他方の挟み体の金属針を穿刺する方式とした本発明によると、低コストで様々な被覆電線に対し適切な導通状態を確保できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明における第1の実施の形態の側面図である。
【
図2】
図1の被覆電線用導通器具の対の挟み体の詳細を示す部分拡大図であって、(A)は被覆電線を位置決めした状態、(B)は挟み体を閉じた状態である。
【
図3】
図1の被覆電線用導通器具の使用状態を示す模式図である。
【
図4】
図2の挟み体の変形例を示す部分拡大図であって、(A)は挟み体を開いた状態、(B)は挟み体を閉じて被覆電線に金属針を穿刺した状態、(C)は(B)よりも細い被覆電線に金属針を穿刺した状態である。
【
図5】(A)は
図2の挟み体の他の変形例を示す部分拡大図であって、(A)は金属針の保護板を設けた場合、(B)は(A)の底面図、(C)は金属針を着脱式にした場合の断面図、(D)は金属針の先端を楔状にした場合の斜視図である。
【
図6】
図1の被覆電線用導通器具の応用例を示す側面図である。
【
図7】
図1の被覆電線用導通器具の異なる応用例を示す側面図である。
【
図8】
図1の被覆電線用導通器具のさらに異なる応用例を示す側面図である。
【
図9】本発明における第2の実施の形態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
【0017】
図1は、本発明における第1の実施の形態である被覆電線用導通器具1Aを示している。本実施の形態は既存のペンチを改造したものであるが、導電性金属で杵状に形成された対の本体構成部材を開閉軸320で軸着してなり、手に握って閉方向又は開方向に操作する対のグリップ体2,3、及びその操作により開閉軸320を介し閉方向又は開方向に動作する対の挟み体20,30を有したものとなっている。
【0018】
この被覆電線用導通器具1Aでは、一方の挟み体20において他方の挟み体30に対向している面に、検被覆電線を挿入して位置決めするための溝20aが、開閉軸320の遠心方向に対し直角方向に左右両端側まで形成されており、他方の挟み体30において挟み体20に対向している面には、導電性の金属針30aが挟み体20,30の閉じ動作時に前記溝20aの幅方向中間位置を所定の深さまで進入するように設けられている。
【0019】
そして、前述した溝20aに検査対象の被覆電線を挿入し、グリップ体2,3を握って対の挟み体20,30を閉じることにより、前述した金属針30aが被覆電線の被覆を貫通して所定深さまで穿刺され、内部の金属線に対し導電性の金属針30aを接しながら導電性の本体構成部材を介して外部から電気的な導通状態を確保するようになっている。尚、両グリップ体2,3は、非導電性のカバーで被覆されており、金属針30aに挟み体30を介して接続されているグリップ体3の基端側から配線8が延設されており、その先端がワニ口クリップ7になっている。
【0020】
図2は、本実施の形態の機能を詳細に説明するために挟み体20,30を部分的に拡大して示したものであるが、図(A)は被覆電線80(断面図で示す)を挟み体20の溝20aに挿入して位置決めした状態であり、図(B)は対の挟み体20,30を閉じて、挟み体30の金属針30aを被覆電線80に穿刺した状態を示している。
【0021】
このように、溝20aに被覆電線80を挿入するだけで、これが穿刺位置に正確に位置決めされ、対の挟み体20,30を閉じる操作だけで被覆電線80の中心軸線に向かうように金属針30aが正確に穿刺され、且つ、これが適度な深さまで内部に進入して金属線に対する良好な導通状態が確保されるようになっており、この点が本発明における特徴部分となっている。
【0022】
図3は、上述した被覆電線用導通器具1A,1Aを2個使用しながら、被覆電線80の断線箇所を探索している状態を示している。この場合、被覆電線80において断線箇所として推定される部分を挟む2箇所の検査位置80a,80bで、
図2(B)のように各々金属針30aを穿刺して内部の金属線に対する導通状態を確保し、これらから延設されたワニ口クリップ7,7をテスター100のプラスとマイナスの端子に接続するだけで、導通チェックを実施することができる。
【0023】
図4は、
図2の挟み体20の変形例を示すものであり、図(A)は下側の挟み体21において、その溝21aをその幅方向に沿う断面形状が、これを形成する面から深さ方向に向かって二等辺三角形状に切り込まれて2つの傾斜面の下端側が約90度の角部を形成してV字状とされている点を特徴としている。
【0024】
このようにV字状の溝21aを形成したことで、
図4(B)に示すように導入した被覆電線80が溝21aを構成している2つの傾斜面で案内されて溝の幅方向中央位置に正確に位置決めされるため、挟み体21,31を閉じるだけで金属針31aが被覆電線80の中心軸線に向かって正確に穿刺されることになる。
【0025】
また、被覆電線80よりも細い被覆電線を対象とする場合には、
図2における半円形の溝20aではその中央位置に位置決めされにくくなるのに対し、
図4(C)に示すように細い被覆電線81の場合でも、2つの傾斜面で溝の幅方向中央位置に正確に位置決めされる。したがって、この応用例を用いれば、径が多少異なる被覆電線を検査対象とした場合であっても、手間を要することなく正確な位置で穿刺できるようになる。
【0026】
図5は、各々が
図2に記載した挟み体30の変形例であって、上述した実施の形態及び他の変形例に適用可能なものを示したものである。図(A)の挟み体32は、これに設けた金属針32aを保護するためのバネ弾性に富んだ金属製の保護板33aを有している点を特徴としている。即ち、この保護板33aは、挟み体32の下面に固定した部分から屈曲しており、図(B)の底面図に示すように、先端側で金属針32aをカバーするように、その下方左右側まで並列して延設されており、微細な金属針32が何かに衝突して損傷しないように保護するようになっている。また、溝20aに被覆電線を挿入して穿刺する際に、金属針32aが刺さる前に保護板33aが被覆電線を上から押さえ付けるように作用して被覆電線が正確に位置決めされた状態となり、その後の挟み動作で屈曲した部分が伸びて穿刺可能な状態になる。
【0027】
図5(C)の挟み体33においては、その金属針33aをネジ状の支持軸33bの先端面中心部分からその中心軸線に沿って延設してなるものとし、その支持軸33bが挟み体33の上面から下面に貫通したネジ孔33cに螺入され、挟み体33側に固定されている点を特徴としており、その支持軸33bを所定の工具で回動させることで、支持軸33bの螺入深さの変更及びその着脱が可能となっている。
【0028】
したがって、金属針33aが破損したり先端の鋭利さが失われたりした場合には、外部からドライバーを用いて支持軸33bごと交換することができ、また、支持軸33を回しながら金属針33aの突出量を変更することで、検査対象である被覆電線の太さや被覆の厚さに応じて適切な穿刺深さに調整することもできる。
【0029】
一方、
図5(D)の金属針34aはその先端側が楔状に形成されており、これを設けた挟み体を使用して穿刺を行うことで、被覆電線への穿刺痕が線状になることを特徴としている。即ち、この金属針34aで穿刺すると被覆が線状にカットされ、これを抜くことでカットされた開口部分が密着して内部の金属線が露出しにくくなるため、補修作業が不要又は最小限で済むものとなる。
【0030】
尚、この金属針34aは、そのカット線が溝で保持された被覆電線の長手方向に沿う向きになるように配置することが好ましく、これにより開口部分が密着しやすくなることに加え、内部の金属線を切断・変形させにくいものとなる。また、この金属針34aを
図5(C)の変形例に適用する場合は、その支持軸33b基端面においてマイナスドライバーを挿入する溝の向きがカット線の向きと一致するように金属針34aを支持軸33bに設けることにより、その調整の際にカット線が形成される向きを作業者が認識可能なものとなる。
【0031】
次に、
図6乃至
図8を用いながら、上述した実施の形態の応用例について説明する。尚、その応用例の構成は、上述した総ての実施の形態・変形例、及び後述する他の応用例に適用することが可能であり、さらにこれらを適宜組み合わせて実施することも可能である。
【0032】
図6は、
図1の被覆電線用導通器具1Aにおいて対の挟み体20,30の大部分を、弾性樹脂からなる筒体200で覆ってなる被覆電線用導通器具1Bを示している。この筒体200は、非導電性のシリコン樹脂やゴム等をチューブ状に形成したものであり、これに閉じた状態の挟み体20,30挿入して装着することで、挟み体20,30の外周面に内周面を密着しながら閉じ方向に付勢するように作用し、閉じた状態においてはこれを維持するようになっている。
【0033】
そのため、
図3のように被覆電線に穿刺した状態で導通チェックを行う場合等において、この被覆電線用導通器具1B,1Bから手を離して作業を行うことが可能になる。また、導電性素材からなる対の挟み体20,30の大部分を覆ったことで、他の通電部に触れることによるショート等の事故の発生を防止することもできる。
【0034】
図7は、
図1の被覆電線用導通器具1Aの対のグリップ体2,3において、弾性樹脂製を環状にした掛止ベルト250が一方のグリップ体3に設けてあり、これを他方のグリップ体2に引っ掛けることで、その対のグリップ体2,3を閉じた状態で維持することを特徴とした被覆電線用導通器具1Cを示している。
【0035】
このように閉じた状態を維持する機能を付加したことで、前述した被覆電線用導通器具1Bと同様の機能を発揮するものであるが、その開閉軸の付近には、グリップ体2,3を開方向に付勢するバネ300が介装されており、掛止ベルト250を掛けない状態にあっては、対の挟み体20,30が開いた状態を維持することから、金属針20aを穿刺する作業は比較的容易である。
【0036】
図8は、延設された配線8を着脱可能にするために、グリップ体3D基端側に接続孔31dを設けるとともに、これに挿脱可能なジャック部85を配線8の先端に設けてなるワニ口クリップ7Bとしたものである。これにより、作業の手順において、先に被覆電線に対し導通状態を確保してからテスターに接続することが容易になる。また、プラス側に接続するものとマイナス側に接続するものについて、ジャック部85・配線8も含めてワニ口クリップ7Bを異なる色にすれば、その色分けにより接続ミスを回避しやすいものとなる。さらに、図のように対の挟み体20,30を閉じた状態で維持する鉤状のロック金具311を設ければ、グリップ体2,3Dを握っている手の親指でそのまま容易にロックを行えるものとなる。
【0037】
図9は、本発明における第2の実施の形態である被覆電線用導通器具1Eを示している。この実施の形態おいては、被覆電線用導通器具1Eをペンチ状にする代わりにピンチ状(洗濯ばさみ状)にした点を特徴としている。即ち、この被覆電線用導通器具1Eは、開閉軸321部分の近傍にバネ340が内装され、挟み体25,35が常に閉方向に付勢されており、グリップ体2E,3Eを握ることで挟み体25,35が開くようになっている。
【0038】
これを使用する場合は、グリップ部2E,3Eを握って挟み体25,35を開きながら先端側の溝35aに被覆電線を挿入し、握りを緩めてバネ340の付勢力で挟み体25,35を閉じ動作をさせる。このとき、金属針35aは先端部を被覆電線の被覆表面に刺しているだけであるため、その後、指で挟み体25,35を上下から摘んで穿刺を完了する。
【0039】
穿刺が完了すれば、バネ340の付勢力でその状態が維持されるため、後は手を離してチェック作業を実施することができる。また、この実施の形態では、非導電性の樹脂素材をピンチ状に成形して用いることを想定しており、この場合、導電性の金属針35aは、短冊状に形成した導電性の金属薄板350先端側下面に突設する等して設けることができる。また、本実施の形態においても、
図4、
図5の変形例を適用することができ、また、図示したように
図8の着脱式のワニ口クリップ7Bを使用することもできる。
【0040】
尚、上述した実施の形態・応用例においては、回路中の断線箇所を探索する場合を説明したが、本発明の用途はこれに限定されるものではなく、被覆電線内部の金属線に対し外部から導通状態を確保しながら行う作業であれば、例えば抵抗検査等、他の作業に使用できることは言うまでもない。
【0041】
以上、述べたように、被覆電線用導通器具について、本発明により、低コストで様々な被覆電線に対し適切な導通状態を確保できるようになった。
【符号の説明】
【0042】
1A,1B,1C,1D,1E 被覆電線用導通器具、2,2E,3,3E グリップ体、20,21,25,30,31,32,33,35 挟み体、20a21a 25a 溝、30a,31a,32a,33a,34a,35a 金属針、33b 支持軸、80,81 被覆電線、100 テスター、320,321 開閉軸,340 バネ