【解決手段】支持体32の両端部に平行に配置された2本のロール21間に無端状の布帛2a等の成形部材を巻回させる。次に、2本のロール21の軸に平行する2本のロール21間の中央を軸として駆動軸31により支持体32を回転させる。そこで、給糸装置40を支持体32が1回転する間に一定ピッチで移動させつつ、支持体32の2本のロール21に巻回された成形部材に対して、給糸装置40により所定の一定張力を付与した巻糸2bを給糸して、成形部材の外周面に巻糸2bをベルト幅方向に一定ピッチでベルト周長方向に巻き付ける。
【背景技術】
【0002】
伝動ベルトや搬送ベルト等のベルトは、環状の成形部材(帆布などの繊維シート、未加硫ゴムシート、ゴム付き帆布)と、螺旋状に巻糸が巻き付けられた芯体(心線)とから構成されて、芯体を挟むように、内周側または外周側にそれぞれ少なくとも1層以上積層されて構成される。
【0003】
そして、従来から、このようなベルトを成形するためのベルト成形方法として、一方が駆動回転される互いに平行な真円形状の一対の円筒ロールを軸間距離が調節可能に配備し、これら一対の円筒ロールに未加硫のゴムシートと心線とを巻回してベルトを成形する二軸成形法が知られている。即ち、主軸と従動軸とからなる一対の円筒ロールの主軸が駆動回転することにより従動軸が回転して、一対の円筒ロールが構成する主軸と従動軸の二軸でベルトを成形することから、二軸成形法と称される。二軸成形法によるベルト成形機としては、例えば、特許文献1及び特許文献2に示された伝動ベルトの成形機が開示されている。
【0004】
特許文献1及び2に示す二軸成形法によるベルト成形機によれば、一対の円筒ロールを構成する主軸が固定されると共に、従動軸がベルト長手方向に移動可能に配置されている。また、主軸にモータが設置され、従動軸が回転可能に構成されることにより、回転駆動する主軸と従動軸とが同調して回転するように構成される。そして、特許文献1では、主軸側に設置されたスピニングアームから供給される巻糸がタッチプーリ(ガイドローラ)により案内されてスピニング(給糸)されるようになっている。また、特許文献2では、所定の一定張力を付与した巻糸を給糸するスピニングアームが主軸側に固定設置されると共に、一対のロール間に所定ピッチ間隔の溝を有するガイドプーリ(ガイドローラ)が所定ピッチで整列配置されて、ガイドプーリの溝に沿って巻糸がスピニングされるようになっている。尚、ガイドプーリは、巻糸を巻き付ける所定の間隔(巻ピッチ)に合わせて交換されるように構成される。
【0005】
特許文献1及び2に示すような二軸成形法によるベルト成形機では、一対の円筒ロールの軸間距離を調節することにより、径の異なるベルトの成形することに対して容易に対応できる利点がある。しかしながら、二軸成形法によるベルト成形機では、所定の一定張力を付加した巻糸を成形部材に巻き付けてベルトを成形する際に、ガイドローラに案内される巻糸に転がりが生じてしまい、巻糸を均等の巻ピッチで巻きつけることができなくなり、巻ピッチむらをおこし、また、ベルトの長手方向に向かって左右に張力差が生じ、張力むらをおこしてしまい、安定したスピニング動作を行うことができなくなっていた。その結果、ベルト走行時の片寄り(走行方向に向かって左右いずれかへの片寄り)、蛇行(走行方向に向かって左右への揺れ動き)などの問題が生じている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するものであり、巻糸を均等の張力及び均等の間隔で巻き付けて、ベルト走行時の片寄りや蛇行を防止することができるベルト成形機及びベルト成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るベルト成形機は、平行に配置され、回転可能に構成された2本のロールと、前記2本のロールを両端部に保持しつつ、前記2本のロール間の長さを伸長可能に構成された支持体と、前記2本のロールの軸と平行する前記2本のロール間の中央を軸として、前記支持体を回転可能に設置された駆動軸と、前記2本のロールに隣接して前記2本のロールの軸と平行に移動可能に設置され、前記支持体が1回転する間に一定ピッチで移動しつつ、前記2本のロールに前記巻糸に所定の一定張力を付与しつつ給糸する給糸装置と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明のベルト成形機によれば、2本のロール間に巻回された成形部材に1軸回転により給糸装置から直接巻糸を巻き付けて心線を形成する一軸成形法によりベルトを成形しているため、2本のロールを同方向に回転させて2軸回転により2本のロール間に巻回された成形部材にガイドローラに案内させて巻糸を巻き付ける二軸成形法と比較して、給糸装置から給糸される巻糸の転がりを防止して、安定したスピニング動作を行い、巻きピッチのむらや、張力のむらを低減して、巻糸を一定ピッチで均等に所定の一定張力で巻き付けることができる。その結果、ベルト走行時にベルトが片寄ったり、蛇行したりするのを防止することができる。また、2本のロール間の長さ(即ち、2本のロールを両端部に支持する支持体の長さ)が伸長可能になるように、支持体を構成することにより、成形するベルトの周長の変更が可能になる。ここで、成形部材とは、帆布等の繊維シート、未加硫ゴムシート、ゴム付き帆布等である。
【0010】
上記ベルト成形機において、前記支持体は、前記駆動軸に回転可能に保持される本体部と、前記本体部の両端に接続されて伸長可能に構成される2つの伸長部と、前記2つの伸長部のそれぞれの両端に接続され、前記2本のロールを回転可能に保持する2つのロール保持部と、を備えて良い。
駆動軸により回転可能に保持されると共に、2本のロールを保持しつつ、2本のロール間の長さ(即ち、2本のロールを両端部に支持する支持体の長さ)が伸長可能にする支持体を構成することができる。
【0011】
上記ベルト成形機において、前記2本のロールは、いずれか一方が駆動軸となり、他方が従動軸となって、同調して回転可能に構成されて良い。
成形部材や巻糸が巻きかけられた成形部材が巻回された2本のロールが同調して回転することにより、成形部材や巻糸が巻きかけられた成形部材に対して、糊引き処理や熱融着処理を行うことができる。
【0012】
また、本発明のベルト成形方法は、本発明のベルト成形機を用いてベルトを成形するベルト成形方法であって、前記2本のロール間に無端状の成形部材を巻回させる工程と、前記駆動軸により前記支持体を回転させながら、前記給糸装置により給糸される所定の一定張力を付与した前記巻糸を、前記2本のロール間にベルト幅方向に一定ピッチでベルト周長方向に巻き付けて心線を形成する工程と、を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明のベルト成形方法によれば、2本のロール間に巻回された成形部材に1軸回転により給糸装置から直接巻糸を巻き付けて心線を形成する一軸成形法によりベルトを成形しているため、2本のロールを同方向に回転させて2軸回転により2本のロール間に巻回された成形部材にガイドローラに案内させて巻糸を巻き付ける二軸成形法と比較して、給糸装置から給糸される巻糸の転がりを防止して、安定したスピニング動作を行い、巻きピッチのむらや、張力のむらを低減して、巻糸を一定ピッチで均等に所定の一定張力で巻き付けることができる。その結果、ベルト走行時にベルトが片寄ったり、蛇行したりするのを防止することができる。ここで、無端状の成形部材は、環状の成形部材の他、環状に巻いた有端状の成形部材の両端部を接合して無端状にしたものであっても良い。
【0014】
上記ベルト成形方法において、前記成形部材は、前記心線を挟んだ内周側及び外周側のそれぞれに、少なくとも1層積層されて良い。
心線を挟んだ内周側及び外周側のそれぞれに、1層以上の成形部材を積層して、搬送ベルトや伝動ベルトなど、様々な種類のベルトを成形することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上の説明に述べたように、本発明によれば、巻糸を均等の張力及び均等の間隔で巻き付けて、ベルト走行時の片寄りや蛇行を防止することができるベルト成形機及びベルト成形方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
本実施形態に係るベルト成形方法及びベルト成形機に適用されるベルトは、食品や電気部品や機械部品等を搬送するベルトコンベアに用いられる搬送ベルトの他、一般産業機械や自動車などの動力伝達用途で用いられる慣用の伝動ベルト(ラップドVベルト、ローエッジVベルト、Vリブドベルト、歯付ベルト、平ベルトなど)が含まれる。
【0018】
[ベルト成形機]
まず、
図2〜4に基づいて、本実施形態に係るベルト成形機について説明する。
【0019】
図2及び
図3に示すようにベルト成形機30は、平行に配置され、支持体32に対して回転可能に保持された2本の円筒形のロール21と、2本のロール21を両端部に保持しつつ、2本のロール21間の長さを伸長可能に構成された支持体32と、2本のロール21の軸と平行する2本のロール21間の中央を軸として、支持体32を回転可能に設置された駆動軸31と、2本のロール21に隣接して2本のロール21の軸と平行に移動可能に設置され、2本のロール21に巻糸2bに所定の一定張力を付与しつつ給糸する給糸装置40と、を備える。
【0020】
図2に示すように、支持体32は、本体部32cと、本体部32cの両端に接続された2つの伸長部32bと、2つ伸長部32bのそれぞれの両端に接続された2つのロール保持部32aとから構成される。
【0021】
本体部32cは、2本のロール21の軸と平行して2本のロール21間の中央に設置された駆動軸31により、駆動軸31を中心に回転可能に構成される。本体部32cは、ベルト幅方向に複数(本実施形態では4本)の補強部材を備えた長方形の枠体で構成される。尚、本体部32cに補強部材が備えられていなくても良い。
【0022】
伸長部32bは、本体部32cとロール保持部32aとに接続されて、ベルト長手方向に伸縮自在に構成されている。伸長部32bは、製造するベルトの周長から決定された軸離に合わせて伸縮される。即ち、伸長部32bの長さは、成形するベルトの周長に合わせて変更が可能である。また、2つの伸長部32bは、それぞれ、同じ長さになるように調整される。本体部32cに備えられた駆動部31から2本のロール21へのそれぞれの長さを同じにして、巻糸2bの張力のむらや巻ピッチのむらが生じるのを防止するためである。
【0023】
2つのロール保持部32aの両端には、2本のロール21が、それぞれ、回転可能に平行に保持される。ここで、2本のロール21は、後述する駆動軸31により支持体32が回転される際には、回転不能に構成されることが好ましい。巻糸2bを支持体32に巻回された成形部材対して巻き付ける際に、成形部材が周長方向に動いてしまい、巻糸2bの張力のむらや巻ピッチのむらが生じるのを防止するためである。また、2本のロール21は、一方が駆動軸として図示しないモータに接続され、他方が従動軸として構成され、2本のロール21に成形部材等が巻きかけられた状態でモータにより駆動軸が回転することにより、従動軸が同調して回転するように構成されることが好ましい。
【0024】
駆動軸31は、筐体33の上面に固定して設置される。駆動軸31は、モータ31aに接続されて、モータ31aにより回転するように構成される。筐体33は、その高さが、駆動軸31に設置された支持体32の長さよりも長く構成される。筐体3の上面に設置された駆動軸31により、支持体32が回転できるようにするためである。但し、筐体33の設置面よりも下にピットを掘って、支持体32を回転させることができれば、筐体33の長さが支持体32よりも短くても良い。
【0025】
給糸装置40は、
図3に示すように、巻糸2bに張力を付与するテンション装置43と、テンション装置43により所定の一定張力が付与された巻糸2bを2本のロール21に給糸するスピニングアーム41と、スピニングアーム41を2本のロール21の軸と平行に移動可能に構成するスライドレール42とを備える。
【0026】
テンション装置43は、図示しない巻糸2bに所定の一定張力を付与してスピニングアーム41に巻糸2bを供給する。
【0027】
スピニングアーム41は、
図4に示すように、駆動軸31により回転する支持体32の両端に配置された2本のロール21に隣接して設置される。ここで、スピニングアーム41の先端には、テンション装置43により所定の一定張力が付与されて供給された巻糸2bを繰り出すためのプーリが備えられる。スピニングアーム41のプーリは、駆動軸31と同じ高さになるように構成されることが好ましい。スピニングアーム41のプーリから繰り出された巻糸2bの巻きピッチ及び張力を一定にすることができるからである。そして、スピニングアーム41は、駆動軸31により回転される支持体32の両端に設けられた2本のロール21に対して、スピニングアーム41のプーリから所定の一定張力が付与された巻糸2bを繰り出して、駆動軸31により回転される支持体32の両端に設けられた2本のロール21に巻糸2bを巻き付けてスピニング動作が行われるように構成される。
【0028】
スライドレール42は、
図3に示すように、スピニングアーム41が、2本のロール21の軸と平行に移動するように、2本のロール21と平行に設置される。そして、支持体32が1回転する間に、スライドレール42上をスピニングアーム41が設定した一定のスピニングピッチ(巻ピッチ)で移動するように、サーボモータにより制御する。
【0029】
以上のように、本実施形態に係るベルト成形機30によれば、1つの駆動軸31で2本のロール21を保持する支持体32を回転させて、支持体32に対して、給糸装置40から直接、巻糸2bを巻き付ける一軸成形法により、給糸装置40から給糸される巻糸2bの転がりを防止して、所定の一定張力で均等に巻糸2bを巻き付けることができ、巻きピッチのむらや、張力のむらを低減して、安定したスピニング動作を実現することができる。そして、ベルト走行時にベルトが片寄ったり、蛇行したりするのを防止することができる。
【0030】
[ベルト成形方法]
まず、
図1に基づいて、本実施形態に係るベルト成形機を用いてベルトを成形するベルト成形方法について説明する。
【0031】
図1の本実施形態に係るベルト成形方法では、ベルトの一例として、搬送ベルトに用いられるシームレスベルト1を成形する方法について説明する。
【0032】
図1(a)に示すように、図示しない支持体の両端部に平行に配置した2本のロール21間に無端帯状の布帛(成形部材)2aを巻回する。ここで、成形するシームレスベルト1の周長から決定された軸離に合わせて2本のロール21間の長さが決定されて、支持体32の伸長部32bが伸縮される。
【0033】
次に、
図1(b)に示すように、2本のロール21の駆動軸を回転させ、従動軸を同調させて回転させることにより、2本のロール21を同じ方向に回転させながら、ブレード22に載せた接着剤Gを、布帛2aの外周面側から糊引き処理で塗布する。布帛2aの外周面側から糊引き処理で塗布される接着剤Gは、布帛2aの外周面を覆うとともに、布帛2aの空隙から裏側にはみ出して内周面も覆う接着層3を形成する。
【0034】
次に、
図1(c)に示すように、2本のロール21の軸に平行する2本のロール21間の中央に回転可能に配置された駆動軸31により、2本のロール21を両端部に支持する支持体を、駆動軸31を中心に回転させながら、布帛2aの外周面に、給糸装置40から給糸される所定の一定張力を付与した巻糸2bを、周長方向へベルト幅方向に一定ピッチで、螺旋状に巻き付ける。この際、給糸装置40では、支持体32が1回転する間に、スライドレール42上をスピニングアーム41が設定した一定のスピニングピッチ(一定ピッチ)で移動するように、サーボモータにより制御される。また、2本のロール21は、後述する駆動軸31により支持体32が回転される際には、回転不能に構成される。このように、
図1(c)の工程において、1軸回転により巻糸を巻き付けることにより、巻きピッチのむらや、張力のむらが生じず、巻糸を一定ピッチで均等に巻き付けて、ベルト走行時にベルトが片寄ったり、蛇行したりするのを防止することができる。
【0035】
そして、
図1(d)に示すように、巻糸2bが巻き付けられた布帛2aの外周面に布帛2aを巻回させる。この際、布帛2a上に糊引きされて布帛2aの外周面を覆う接着剤Gが、巻糸2bの間からはみ出して、巻回した布帛2aの内周面を覆う接着層3を形成する。尚、接着剤Gの量が巻回した布帛2aの内周面を覆う接着層3を形成するのに十分でない場合は、
図1(d)の工程の前に、
図1(b)の工程と同様に、各ロール21を同じ方向に回転させながら、ブレード22に載せた接着剤Gを、巻糸2bが巻き付けられた布帛2aの外周面側から糊引き処理で塗布する工程を行っても良い。
【0036】
以上の
図1(a)〜(d)の工程により、シームレスベルト1の芯体2が製造される。
【0037】
こののち、
図1(e)に示すように、2本のロール21の駆動軸を回転させ、従動軸を同調させて回転させることにより、2本のロール21を同じ方向に回転させながら、熱プレス盤23によって、芯体2の布帛2a上に糊引きされていた接着剤Gが周長方向に順次熱融着され、ベルト成形体5が形成される。尚、ベルト成形体5は、各ロール21から取り外されて所定の製品幅に幅切りされ、再度、各ロール21に巻回される。
【0038】
最後に、
図1(f)に示すように、幅切りされたベルト成形体5は、2本のロール21の駆動軸を回転させ、従動軸を同調させて回転させることにより、2本のロール21を同じ方向に回転させながら、熱プレス盤23によって、その外周面にカバー層4となる熱可塑性エラストマシート6が周長方向に順次熱融着され、外周面をカバー層4で被覆されたシームレスベルト1が製造される。
【0039】
以上の
図1(a)〜(f)の工程により、シームレスベルト1が製造される。
【0040】
ここで、本実施形態に係るベルト成形方法で成形されるシームレスベルトは、成形部材である布帛2aが2層積層され、巻糸2bが内周側の布帛2a及び外周側の布帛2aの間に配置されているが、それに限らない。成形部材は、巻糸2bの内周側及び外周側に少なくとも1層積層されていればよく、巻糸2bの内周側及び外周側に2層以上積層されていても良い。
【0041】
また、本実施形態に係るベルト成形方法は、シームレスベルトに限らず、伝動ベルトなど、様々な種類のベルトに適用することができる。例えば、伝動ベルトでは、成形部材として、帆布等の繊維シート、未加硫ゴムシート、ゴム付き帆布等が該当し、成形部材の外周面に巻糸を巻き付けて、伝動ベルトを成形する。
【実施例】
【0042】
(ベルト)
実施例として、上記本実施形態に係るベルト成形機30(以下に示す表において「一軸成形機」と称する)を用いて、本実施形態に係るベルト成形方法(一軸成形法)により、20番手のポリエステル紡績糸を織糸とした寒冷紗を布帛2aとして、布帛2a上にスピニングピッチ(巻きピッチ)が1.0mm、スピニングテンション(一定張力)が0.1kgf/本となるように巻糸2bを巻き付けて、シームレスベルト1の芯体2(以下、「ベルト」と略する。)を成形した。実施例では、20番手のスパン糸を巻糸2bとした実施例1と、560デシテックスのポリエステルマルチフィラメントを巻糸2bとした実施例2と、の2つの実施例のベルトを用意した。
【0043】
また、比較例として、実施例1〜2に対応して、従来のベルト成形機(以下に示す表において「二軸成形機」と称する。)を用いて、従来の二軸成形法により、20番手のポリエステル紡績糸を織糸とした寒冷紗を布帛2aとして、布帛2a上にスピニングピッチ(巻きピッチ)が1.0mm、スピニングテンション(張力)が0.1kgf/本となるように巻糸2bを巻き付けて、シームレスベルト1の芯体2(ベルト)を成形した。比較例では、20番手のスパン糸を巻糸2bとした比較例1と、560デシテックスのポリエステルマルチフィラメントを巻糸2bとした比較例2と、の2つの比較例のベルトを用意した。
【0044】
尚、実施例、比較例、参考例の各ベルトの寸法は、いずれも幅170mm、周長1500mmとした。
【0045】
そして、実施例、比較例の各ベルトについて、下記の張力むら試験、巻ピッチむら試験を行った。
【0046】
(張力むら試験)
張力むら試験では、実施例、比較例の各ベルトについて、それぞれのベルト成形機に巻きかけた状態で、ベルトの表面の測定箇所に重さ200gのおもりを乗せて、その沈み深さを測定した。測定箇所(おもりを乗せる箇所)は、
図5に示すように、ベルト幅方向に3箇所(巻き終わり端から50、100、150mm)、ベルト長手方向に3箇所(中央B及び両端部A、C)の合計9箇所である。実施例、比較例の各ベルトについて測定した、張力むら試験の結果を、表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
表1に示すように、一軸成形機である本実施形態に係るベルト成形機で巻糸を巻き付けた実施例1〜2のベルトにおもりを乗せた結果、測定箇所(おもりを乗せた箇所)に関係なく、おもりを乗せたときの沈み深さはほぼ均一であった。一方、二軸成形機である従来技術のベルト成形機で巻糸を巻きつけた比較例1〜2のベルトは、測定箇所による違いが大きく見られた。
【0049】
(巻ピッチむら試験)
巻ピッチむら試験では、実施例、比較例の各ベルトについて、ベルト成形機に巻きかけた状態で、ベルトの表面の測定箇所の巻糸の間隔を測定した。測定箇所(巻糸の間隔を測定する箇所)は、
図5に示すように、ベルト幅方向に3箇所(巻き終わり端から巻終わり端方向に50、100、150mm)、ベルト長手方向に3箇所(中央B及び両端部A、C)の合計9箇所である。巻糸の間隔は、測定箇所を中心とした幅10mmの間に存在する巻糸の本数から平均値を算出した。実施例、比較例の各ベルトについて測定した、巻ピッチむら試験の結果を、表2に示す。
【0050】
【表2】
【0051】
表2に示すように、一軸成形機である本実施形態に係る成形機で巻糸を巻き付けた実施例1〜2のベルトにおもりを乗せた結果、全ての測定箇所において、設定したスピニングピッチ通り、1.0mmと一定であった(
図6(a)参照)。一方、二軸成形機である従来技術のベルト成形機で巻糸を巻きつけた比較例1〜2のベルトは、測定箇所による違いが大きく見られ、巻き始めが広く、巻き終わり側へ徐々に狭くなっていることが明らかになった(
図6(b)参照)。
【0052】
(走行試験)
巻ピッチむら試験では、実施例、比較例の各ベルト(シームレスベルトの芯体)を用いてシームレスベルトを成形し、
図7に示すように、実施例、比較例の各シームレスベルトについて、1つの駆動プーリ51と4つの従動プーリ52a、52b、52c、52dを備える試験用ベルトコンベア50を用い、巻回されたシームレスベルトに従動プーリ52dでベルト張力を付与した。ここで、駆動プーリ31の直径は30mm、従動プーリ32a、32dの直径は20mm、従動プーリ32b、32cの直径は25mmとした。試験される各シームレスベルトのベルト張力は4.0kN/m、走行速度は100m/minとした。そして、実施例、比較例の各シームレスベルトについて、走行させて片寄りや蛇行が発生するかどうかを観察した。実施例、比較例の各ベルトについて行った、巻ピッチむら試験の結果を、表3に示す。片寄りや蛇行が発生しなければ「なし」、片寄りや蛇行が発生すれば「あり」として評価した。
【0053】
【表3】
【0054】
表3の結果、一軸成形機である本実施形態に係るベルト成形機で巻糸を巻き付けた実施例1〜2のベルトを用いて成形したシームレスベルトは、いずれも、ベルトが真っすぐ走行して、特に問題はなかった。一方、二軸成形機である従来技術のベルト成形機で巻糸を巻きつけた比較例1〜2を用いて成形したシームレスベルトは、いずれも、片寄りや蛇行の問題が発生した。
【0055】
[考察]
上述の試験より、以下のことが明らかになった。
【0056】
張力むら試験では、二軸成形機である従来のベルト成形機で巻糸を巻きつけた比較例のベルトには巻糸の張力にむらがあるが、一軸成形機である本実施形態に係るベルト成形機で巻糸を巻き付けた実施例のベルトには、巻糸の張力にむらが見られず、巻糸が均等な張力で巻きつけられていることが確認できた。これは、二軸成形機である従来のベルト成形機で巻糸を巻きつけた場合、巻糸を布帛に巻き付けてベルトを成形する際に、給糸装置から給糸される巻糸の転がりが生じたため、巻糸を均等の張力で巻き付けることができなくなったためだと考えられる。
【0057】
また、巻ピッチむら試験では、二軸成形機である従来のベルト成形機で巻糸を巻きつけた比較例のベルトには巻糸の巻ピッチにむらがあるが、一軸成形機である本実施形態に係るベルト成形機で巻糸を巻き付けた実施例のベルトには、巻糸の巻ピッチにむらが見られず、巻糸が設定された巻ピッチで巻きつけられていることが確認できた。これは、二軸成形機である従来のベルト成形機で巻糸を巻きつけた場合、巻糸を布帛に巻き付けてベルトを成形する際に、給糸装置から給糸される巻糸の転がりが生じ、巻糸を均等の張力で均等の巻ピッチで巻きつけることができなくなったためだと考えられる。
【0058】
更に、走行試験では、一軸成形機である本実施形態に係るベルト成形機で巻糸を巻き付けた実施例のベルトを用いて成形したシームレスベルトは、ベルトが片寄るや蛇行するなどの問題はなかったが、一方軸成形機である従来技術のベルト成形機で巻糸を巻きつけた比較例を用いて成形したシームレスベルトは、いずれも、ベルトが片寄るや蛇行するなどの問題が発生したことが確認できた。これは、二軸成形機である従来のベルト成形機で巻糸を巻きつけた場合、巻糸を布帛に巻き付けてベルトを成形する際に、給糸装置から給糸される巻糸の転がりが生じ、また、巻糸を均等の張力で均等の巻ピッチで巻きつけることができず、ベルトに重さのばらつきが生じたため、ベルト走行時の片寄りや蛇行が生じたためだと考えられる。
【0059】
以上より、一軸成形法である本実施形態に係るベルト成形機及びベルト成形方法により巻糸を巻き付けた実施例のベルトが、巻糸を均等の張力及び均等の間隔で巻き付けて、ベルト走行時の片寄りや蛇行を防止することができることが明らかとなった。
【0060】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態及び実施例に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態及び実施例の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。