【課題】ベース部材30と、ベース部材30にスライド自在に保持されるスライド部材31との間でスライド部材31をロックしたりアンロックしたりする装置において、スライド部材31にスライド方向の強い力が負荷された場合でも、スライド部材31が無理矢理スライドされることがないようにして、機構的な破損防止や悪戯防止などができるようにする。
【解決手段】スライド部材31に保持されてロック位置とアンロック位置との間で移動自在に設けられるロック操作部材32を有し、ベース部材30には停止爪52が設けられ、スライド部材31には可動爪42が設けられ、ロック操作部材32には、アンロック位置へ向けた移動で停止爪52に係合した可動爪42を係合解除させるロック解除片55と、ロック位置で可動爪42の背後に停止して停止爪52からの係合解除を邪魔するバックアップ片56とが設けられている。
ベース部材と、このベース部材に対してスライド自在な状態で保持されるスライド部材と、このスライド部材に保持されてロック位置とアンロック位置との間で移動自在に設けられるロック操作部材とを有しており、
前記ベース部材には前記スライド部材がスライドする通路に面する配置で停止爪が設けられ、
前記スライド部材には前記停止爪に係合可能であって且つ弾性変形を伴って係合解除が自在となる状態で可動爪が設けられ、
前記ロック操作部材には、前記スライド部材に対するロック位置からアンロック位置へ向けた移動で前記停止爪に係合した前記可動爪を弾性変形させて係合解除させるロック解除片と、ロック位置での停止中に前記可動爪の背後で停止して前記停止爪からの係合解除を邪魔しアンロック位置への移動によって前記可動爪の背後から退いて前記停止爪からの係合解除を許容させるバックアップ片とが設けられている
ことを特徴とするスライドロック装置。
前記ロック操作部材には、前記スライド部材に対するロック位置からアンロック位置へ向けた移動方向に倣って片持ち状態で突出する戻り板バネが設けられ、前記スライド部材には前記ロック操作部材がロック位置からアンロック位置へ移動したときに前記戻り板バネに当接して湾曲させることでバネ力を蓄えるバネ受け部が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のスライドロック装置。
前記スライド部材に設けられた前記可動爪は、前記ロック操作部材がロック位置からアンロック位置へ向けた移動方向に倣って片持ち状態で突出する弾性支持部とこの弾性支持部の突端で前記ベース部材に設けられた前記停止爪に向けて突出する爪部とを有しており、
前記ロック操作部材には、ロック位置で停止しているときに前記可動爪の前記弾性支持部に対する背後に留まって当該弾性支持部の退避湾曲を阻止する補助バックアップ片が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のスライドロック装置。
座部とこの座部後方で立ち上がる背もたれ部とこの背もたれ部に昇降自在に設けられるヘッドレストとを有する幼児用座席装置において、前記背もたれ部に対し、前記ヘッドレストが昇降する方向に前記スライド部材のスライド方向を合わせる状態で前記ベース部材が設けられ、前記ヘッドレストに前記スライド部材が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のスライドロック装置。
座部とこの座部後方で立ち上がり下端部に前記座部に重なる前方張出床を備えた背もたれ部とを有し、前記背もたれ部が前記前方張出床を前記座部に対して前後動させながら角度可変に保持される幼児用座席装置において、前記座部に対し、前記背もたれ部の前記前方張出床が前後動する方向に前記スライド部材のスライド方向を合わせる状態で前記ベース部材が設けられ、前記背もたれ部の前方張出床に前記スライド部材が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のスライドロック装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
図1乃至
図9は、本発明に係るスライドロック装置1を、幼児用座席装置2(
図3参照)が備えるヘッドレスト昇降機構3に対して適用した第1実施形態を示している。
まず、本第1実施形態で例示した幼児用座席装置2について概説する。
図3に示すように、この幼児用座席装置2は座席本体5を主体とするもので、この座席本体5は、幼児の尻部を受ける座部6と、この座部6の後部で立ち上がって幼児の背中を支える背もたれ部7と、座部6の左右両側で立ち上がって幼児の左右両側をガードする側壁部8とを有している。
【0016】
このうち背もたれ部7に対し、幼児の頭部を後方及び左右両側からサポートし及び/又はガードするためのヘッドレスト10が上下動自在な状態に設けられている。このようにヘッドレスト10を上下動自在にする機構がヘッドレスト昇降機構3であり、ここにおいてヘッドレスト10の高さを固定するためのロック装置を含めた機構全体として、本発明のスライドロック装置1が適用されている。
【0017】
なお、本第1実施形態の幼児用座席装置2では、座席リクライニング機構15が備えられたものとしてある。すなわち、座席本体5は、前後方向の略中間で前半体5Aと後半体5Bとに二分割されており、前半体5Aに座部6が設けられ、後半体5Bに背もたれ部7が設けられている。
これら前半体5Aと後半体5Bとは、側壁部8の上部で、軸心を左右方向へ向けて設けられた上部ヒンジ部16を支点として連結されており、前半体5Aを基礎(不動)として後半体5B(背もたれ部7)がゆりかご状に揺動可能となっている。後半体5Bには、背もたれ部7の下端部から前方へ張り出す前方張出床17が設けられており、後半体5Bの揺動時にはこの前方張出床17が座部6の下面に沿って前後方向にスライドするようになって、背もたれ部7の安定が図られている。このようにして、背もたれ部7の角度を可変にする機構が座席リクライニング機構15である。
【0018】
また、本第1実施形態の幼児用座席装置2は、幼児を載せないときには荷カゴに利用できるタイプとしてある。そのためこの幼児用座席装置2は、座席本体5の前方に設けられた脚載せ部23を有している。この脚載せ部23は、座部6の前部で、軸心を左右方向へ向けて設けられた下部ヒンジ部24を支点として前方を上下動させるように揺動自在となっている。脚載せ部23を上昇させることで(図示略)座席本体5の前方下部が塞がれる
ようになり、もってこの座席本体5の内部に、上方が開口した荷カゴ空間を形成させることができる。
【0019】
次に、本発明に係るスライドロック装置1を説明する。
図4に示すように、このスライドロック装置1は、ベース部材30と、このベース部材30に対してスライド自在な状態で保持されるスライド部材31と、このスライド部材31に保持されるロック操作部材32とを有している。
前記したように、本第1実施形態においてスライドロック装置1はヘッドレスト昇降機構3として適用している。そのためスライド部材31は、ヘッドレスト10の裏面中央部から下方へ向けて一定幅を保持しつつ突出する「支持杆」として形成されている(
図5及び
図6を併せて参照)。
【0020】
これに対してベース部材30は、座席本体5の後半体5Bに対し、背もたれ部7の左右方向中央部分でスライド部材31(ヘッドレスト10の支持杆)を上下動自在にガイドする角溝状の「支持杆受け部」として設けられている(
図9を併せて参照)。
一方、ロック操作部材32は、スライド部材31がベース部材30に装着されたときにベース部材30側を向く面(スライド部材31の裏面)に保持されるようになっており、この保持状態を維持したままで、スライド部材31に対して移動自在となっている。スライド部材31がベース部材30に対して上下方向にスライドするものであることから、ロック操作部材32の移動方向も上下方向となっている。
【0021】
まずスライド部材31について更に詳しく説明する。このスライド部材31には、長手方向を上下方向に向けた状態で左方及び右方の両方へ向けて一定幅で張り出す一対の板シュー35が設けられている。これら板シュー35は、当該スライド部材31をベース部材30に保持させたまま(分離不能とさせたまま)、スライドさせるための作用を奏する部分である。
【0022】
またスライド部材31の後面側には、板シュー35と板シュー35との相互間を凹ますようにして形成された凹部36が設けられている。この凹部36は、ロック操作部材32を収容してその上下移動を許容させる部分である。そのため、長手方向を上下方向へ向けた形状とされ、その上端部はロック操作部材32の上端部(後述のボタン部32b)を上方へ突出させるためのボタン孔37として貫通形成されている。また、この凹部36の下端部には、ロック操作部材32の下方移動を制限する傾斜ストッパー38が設けられている。
【0023】
そして、この凹部36内の左右側壁からスライド部材31の左方及び右方へ向けて爪先を露出させるようにして左右一対の可動爪42が設けられている。これら左右の可動爪42は、弾性支持部43と爪部44とを有して形成されている。
弾性支持部43は、ロック操作部材32が凹部36内を下方へ向けて移動するときの移動方向(後述のように、この下方移動はロック位置からアンロック位置へ向けた「解除移動」である)に倣うようにして、片持ち状態で突出している。ここにおいて「倣う」とは「同じ方向に沿う」という意味であり、本第1実施形態では上から下方へ向けた方向を言う。
【0024】
この弾性支持部43は、下方ほど左右方向の外方へ広がるように傾斜した傾斜部分43aを有している。また、弾性支持部43の上端部は、凹部36内における左右の内側面で肩状に張り出している。この肩状の張り出し部分は、後述の「バネ受け部62」として作用する部分である。
また爪部44は、このような弾性支持部43の下方端(傾斜部分43aよりも下)で、爪先を左右方向の外方(後述するベース部材30の停止爪52と係合する方向)へ向けて突出させている。爪部44は、頂角を左右方向の外方へ向けた二等辺三角形に形成されている。
【0025】
なお、このスライド部材31の前面側には、板シュー35と平行しつつ、板シュー35よりも左右方向の外方及び下方へ張り出した表面板46が設けられている。この表面板46は、スライド部材31(ヘッドレスト10)がベース部材30(座席本体5の後半体5B)に取り付けられた際には、後述するスライド通路51を塞いで背もたれ部7の前面と
フラットな面を形成させるようになる。
【0026】
次に、ベース部材30について詳しく説明する。このベース部材30には、スライド部材31における両側の板シュー35を差し込んで上下方向へスライド自在とさせる左右一対のガイド溝50が形成されている。従って、これらガイド溝50とガイド溝50との相互間に、スライド部材31がスライドする通路(以下、「スライド通路」と言う)51が形成されることになる。
【0027】
スライド通路51の内部には、通路内に面するようにその左右両側から対向する配置で停止爪52が設けられている。これら停止爪52は、スライド通路51の長手方向(上下方向)に沿って複数並んでいる。各停止爪52は、可動爪42と密接な係合ができるように、左右方向の内方(スライド通路51に面する側)へ頂角を向けた二等辺三角形状に形成されており、複数の停止爪52が一列に並ぶことで、全体としてラック歯状を呈するようになっている。
【0028】
このようなことから、このベース部材30のスライド通路51内へ前記したスライド部材31を嵌め入れると、スライド部材31の左右の可動爪42が、左列及び右列の各停止爪52と各別に係合可能となる。
なお、停止爪52が上下方向に複数並んで設けられているので、可動爪42は互いに隣り合う停止爪52の相互間(谷部)に係合するようになる。しかし、後述するように、スライド部材31(ヘッドレスト10)はベース部材30(座席本体5の後半体5B)に対して常に上方へ向けて押し上げ付勢される構造としてあるので、可動爪42は、その上側に配置される停止爪52との係合関係が重要とされる。
【0029】
停止爪52に対する可動爪42の係合状態は、当該可動爪42が備える弾性支持部43のバネ作用によって付勢保持される。但し、可動爪42が停止爪52と係合状態にあっても、スライド部材31に対して上下方向へ向けた強い移動力を加えると、可動爪42(爪部44)と停止爪52とが二等辺三角形の傾斜面同士で滑りを起こし、可動爪42に対して停止爪52を乗り越えようとするカム作用を生起させる。その結果、可動爪42の弾性支持部43が曲げられるように弾性変形し、可動爪42(爪部44)と停止爪52との係合状態が解除されるようになる。
【0030】
このように、ベース部材30のスライド通路51内にスライド部材31を嵌め入れただけであれば(スライド部材31に対してロック操作部材32を未装着の場合)、スライド部材31を無理矢理にスライドさせることは可能である。
次に、ロック操作部材32について詳しく説明する。このロック操作部材32は、スライド部材31の凹部36内に嵌るように上下方向に長細く形成された本体部32aに対し、上端部から上方突出するボタン部32bが設けられたものである。このボタン部32bが、スライド部材31(凹部36)の上端部に設けられたボタン孔37へ、下から上へと差し込まれ、上方へ突き出す状態とされる。
【0031】
そして、このロック操作部材32(本体部32a)の下端側が、ベース部材30に対してスライド部材31をスライド自在な状態としたり固定したりするための作用部となっている。すなわち、本体部32aの下端部には、裏面側から突出する状態でロック解除片55、バックアップ片56、補助バックアップ片57、下限ストッパー58がそれぞれ設けられていると共に、これらより少し上となる位置(本体部32aの下端寄りの側壁部)には、戻り板バネ59が設けられている。
【0032】
前記したように、ベース部材30には停止爪52が左右方向で対を成して対向配置されており、これに対応させて、前記スライド部材31では可動爪42が左右一対設けられたものとしてある。従ってロック操作部材32においても、ロック解除片55、バックアップ片56、補助バックアップ片57、下限ストッパー58が、それぞれ左右で対を成すようにして設けられている。
【0033】
ロック解除片55は、ロック操作部材32のボタン部32bを下向きに押し操作したときに、このロック操作部材32が下方移動するのに伴い(
図1(a)に示した状態から
図1(b)に示した状態にする)、スライド部材31の可動爪42(弾性支持部43の傾斜部分43a)と当接し、もって弾性支持部43に、左右方向の内方へ湾曲するような弾性
変形を与える部分である。
【0034】
弾性支持部43がこのような弾性変形を生じると、
図1(a)に示すようにそれまでベース部材30の停止爪52に係合していた可動爪42が、
図1(b)に示すように停止爪52との係合を解除するようになる。
すなわち、このロック操作部材32における下方移動は、ベース部材30に対してスライド部材31を固定する状態(スライド不能にする状態であり、以下ではこの状態となる位置を「ロック位置」と言う)から、スライド自在な状態(以下ではこの状態となる位置を「アンロック位置」と言う)へ向けた移動になる。言い換えれば、ロック操作部材32による下方への移動は「解除移動」になる。従って、この解除移動をさせた後、ロック操作部材32が上方へ向けて移動するのは「復帰移動」になる。
【0035】
本第1実施形態においてロック解除片55は、裏側から見た形状(
図7(a)参照)がI形を呈するように縦方向のリブだけで形成してある。
バックアップ片56は、ロック操作部材32がロック位置で停止しているとき(すなわち、停止爪52に可動爪42が係合しているとき)に、可動爪42(爪部44)の背後で停止するようになる部分である。
【0036】
このようにバックアップ片56が可動爪42の背後で停止すれば、停止爪52からの可動爪42の係合解除を邪魔することができる。すなわち、可動爪42が停止爪52と係合しているときに、スライド部材31に対して上下方向へ向けた強い移動力を加えたとしても、可動爪42が停止爪52との係合を解除することはないので、結果として、スライド部材31がベース部材30に対して固定される(スライド不能とされる)ことになる。当然に、ロック操作部材32を解除移動させることで、バックアップ片56は可動爪42の背後から下方へと退き、可動爪42(爪部44)を左右動自在な状態に開放する。すなわち、可動爪42に対して、停止爪52との係合解除を許容するものとなる。
【0037】
本第1実施形態においてバックアップ片56は、縦方向のリブと左右方向のリブとを組み合わせて形成してあり、裏側から見た形状(
図7(a)参照)が鉤形を呈するようになっている。このような形状を採用することで、強いバックアップ力を発現できるものとなっている。
戻り板バネ59は、ロック操作部材32が解除移動されたときにバネ力を蓄え、ロック操作部材32への操作力が解除されたときにロック操作部材32を上方(元の高位置)へ復帰移動させる作用を奏する部分である。
【0038】
本第1実施形態において、この戻り板バネ59は、本体部32aの側壁部からロック操作部材32が解除移動をする際の移動方向に倣い(「同じ方向に沿う」という意味であり、本第1実施形態では上から下方へ向けた方向を言う)、片持ち状態で突出するようになっている。
この戻り板バネ59は、ロック操作部材32が解除移動したときに、スライド部材31に設けられた可動爪42の弾性支持部43に対し、その上端部と当接することで、左右方向の内方へ押し曲げられるようになっている。すなわち、このときの押し曲げ力に伴ってバネ力を蓄えるものとなる。その意味で、弾性支持部43の上端部は、戻り板バネ59に当接して湾曲させるバネ受け部62として作用することになる。
【0039】
なお、ロック操作部材32に設けられた下限ストッパー58は、本体部32aの下端部中央で下向きに張り出した舌片状とされたものである。この下限ストッパー58は、
図4、
図7(b)、
図8等で示したように、その下端ほど、スライド部材31の傾斜ストッパー38へ近接するような傾斜を有して形成されている。
そのため、この下限ストッパー58は、ロック操作部材32が解除移動されたときに、スライド部材31の傾斜ストッパー38と当接して、傾斜を戻すような弾性変形作用を受けることになる。このとき傾斜ストッパー38に生じる弾性変形作用は、ロック操作部材32の移動範囲を制限するものとして作用するのと同時に、ロック操作部材32に対し、解除移動をすればするほど(下方へ移動させればさせるほど)、上方への押し返し力を蓄えるようにも作用する。
【0040】
すなわち、この下限ストッパー58と傾斜ストッパー38との関係についても、前記し
た戻り板バネ59とバネ受け部62との関係と同等の作用(解除移動されたロック操作部材32を上方へ復帰移動させる作用)が得られるものとなる。ここにおいて、下限ストッパー58と傾斜ストッパー38は、戻り板バネ59とバネ受け部62とに置換するものとして設けることが可能である、と言える。
【0041】
補助バックアップ片57は、ロック解除片55と対応して略同じ高さ位置に配置されたもので、可動爪42における弾性支持部43の背後をバックアップし、もってこの弾性支持部43が退避方向へ湾曲するのを阻止しようとする部分である。
すなわち、可動爪42が停止爪52と係合し、ロック操作部材32がロック位置で停止しているとき(
図1(a)参照)にあって、仮に、スライド部材31に対して上下方向へ向けた強い移動力が加えられたとしても、可動爪42の弾性支持部43はロック解除片55と補助バックアップ片57との間で挟持されるようになっている。そのため、弾性支持部43が湾曲することはない。その結果、可動爪42が停止爪52との係合を解除することはなくなり、ベース部材30に対するスライド部材31の固定状態が確実化される。
【0042】
なお、ロック操作部材32を解除移動させるときには、
図1(b)に示すようにこの補助バックアップ片57が弾性支持部43の下端側へと移動し、傾斜部分43aの背後に対応するようになるので、可動爪42(爪部44)が左右方向の内方へ移動することを許容することになる。すなわち、このときにおいて補助バックアップ片57は、可動爪42が停止爪52との係合を解除する動作を邪魔する存在とはならない。
【0043】
本第1実施形態において補助バックアップ片57は、裏側から見た形状(
図7(a)参照)が横一文字形を呈するように横方向のリブだけで形成してある。
次に、本発明に係るスライドロック装置1の動作状況を説明する。
スライドロック装置1は、
図4に示すように、スライド部材31の凹部36内にロック操作部材32を収容してその上端部のボタン部32bがベース部材30のボタン孔37から突出した状態にする。そのうえで、このスライド部材31をベース部材30のスライド通路51に対して上下方向へスライド自在な状態に嵌め入れるようにする。
【0044】
なお、ベース部材30のスライド通路51内には、上部寄りに巻取バネ装置67の動作端67aを取り付け、この巻取バネ装置67自体をスライド部材31の下部寄りに装着させるようにする。この巻取バネ装置67は動作端を巻き取る作用を有しており、この作用により、スライド部材41を常にベース部材30から上方へ浮き上げる作用を付与するものである。
【0045】
図1(a)では、スライド部材31の可動爪42が、ベース部材30の最も高位の停止爪52に係合しており、ロック操作部材32を非操作のロック位置(ボタン部32bを押していない状態)で停止させたものとしてある。
この状態からロック操作部材32のボタン部32bを押し下げ、ロック操作部材32を下方のアンロック位置へ向けて解除移動させると、ロック操作部材32のロック解除片55がスライド部材31の可動爪42に対して係合を解除させるように作用する(弾性支持部43を弾性変形させる)。
【0046】
これと同時に、ロック操作部材32のバックアップ片56が可動爪42の背後を開放させるように下方へ退く。従って、
図1(b)に示すように、可動爪42は停止爪52からの係合状態を解除される。そのため、ベース部材30に対してスライド部材31は上下方向にスライド自在な状態として解放される。そこで、巻取バネ装置67による浮上作用に抗しつつスライド部材31を下方へ押し込むようにすれば、スライド部材31を所望に応じた高さ位置へと押し下げることができる。
【0047】
もし、スライド部材31を必要以上に低くしてしまった場合は、スライド部材31を押し下げる力を緩めれば、巻取バネ装置67の浮上作用でスライド部材31が上昇するので、これによってスライド部材31の高さを調節すればよい。すなわち、このようにしてヘッドレスト10の高さ調節を行うことができる(最も低位の停止爪52に対して可動爪42を係合させた状況を
図2に例示する)。
【0048】
スライド部材31の高さ調節ができた段階でロック操作部材32の押し操作を止めれば、ロック操作部材32は戻り板バネ59によって上方のロック位置へ向けた復帰移動をす
る。このとき、ロック操作部材32のバックアップ片56は、再び、可動爪42の背後に戻り、可動爪42が停止爪52から係合解除されるのを邪魔するようになる(
図2参照)。従って、高さ調整された後のスライド部材31は、それ以降、ベース部材30に対してスライドすることがなくなり固定される。
【0049】
以上、詳説したところから明らかなように、本発明に係るスライドロック装置1では、ロック操作部材32においてアンロック操作を行わないまま、スライド部材31に想定外の操作等でスライド方向に強い力を負荷したとしても、スライド部材31が無理矢理スライドされることはない。そのため、機構的な破損の防止が可能となる。また、悪戯の防止などにも役立つものとなる。
【0050】
図10乃至
図17は、本発明に係るスライドロック装置1の第2実施形態を示している。本第2実施形態のスライドロック装置1は、
図3に示した幼児用座席装置2の座席リクライニング機構15として適用してある。
まず座席リクライニング機構15について簡単に再記する。すなわち、この座席リクライニング機構15は、座席本体5の前半体5Aを基礎(不動)にして、後半体5Bが上部ヒンジ部16を支点としつつ、ゆりかご状に揺動可能な構成としたものである。後半体5Bには、その下端部から前方へ張り出すようにして前方張出床17が設けられており、この前方張出床17が前半体5Aに設けられた座部6の下面に沿って前後方向にスライドすることで、揺動時における背もたれ部7の安定(ガタツキ防止やこじれ防止等)が図られるようになっている(
図10(a)及び(b)を併せて参照)。
【0051】
更に言えば、後半体5Bの前方張出床17には、
図11及び
図12に示すように左右方向の中央部で収容凹部70が形成されている。この収容凹部70は、前方張出床17の下面で前方及び下方に開口するものであるが、前方張出床17には、この収容凹部70の形成に伴って上方へ隆起する(前方張出床17の上面で凸となる)ことによる台状部分が形成されている。
【0052】
これに対し、前半体5Aの座部6には、
図11及び
図13に示すように左右方向の中央部で、後半体5Bに生起した台状部分(収容凹部70による台状部分)を上方から覆う凹部が形成されている。この凹部は後方及び下方に開口しており、後半体5Bの台状部分が前後方向にスライドするのをガイドする。
すなわち、これらの説明から明らかなように、本第2実施形態のスライドロック装置1において、スライド部材31は後半体5Bに設けられる前方張出床17(収容凹部70による上方への台状部分)により構成されている。これに対し、ベース部材30は、前半体5Aに設けられる座部6の下面(後半体5Bの台状部分を覆って摺動をガイドする凹部)によって構成されている。ここにおいて、前半体5Aに形成されたこの凹部は、長手方向を前後方向へ向けたスライド通路51を形成していることになる。
【0053】
そして、スライド部材31の収容凹部70に、別部材として形成したロック操作部材32を装着する構成となっている。このスライド部材31とロック操作部材32との装着関係については、原則として第1実施形態と同じである。
なお、本第2実施形態において、後半体5Bの収容凹部70には底カバー72を嵌め付け、この底カバー72によって収容凹部70による下向きの開口を塞ぐようにしている。この底カバー72には後方へ突出する係合片73が設けられ、対する後半体5Bの収容凹部70にはこの係合片73を差し込み可能な係合孔74が形成されている。そこで、係合片73を係合孔74へ差し込むと共に、底カバー72を取付ネジ75によって収容凹部70内のネジ孔76へ螺合することで、収容凹部70に対する底カバー72の取り付けを行うようになっている。このように収容凹部70に底カバー72を取り付けることで、これら両者間(上下間)には、ロック操作部材32を移動自在に保持するための空間が形成される。
【0054】
このように、この底カバー72は、スライド部材31を構成するために必要とされる補助的な部材であると言える。言い換えれば、本第2実施形態において、スライド部材31は収容凹部70と底カバー72とを有して構成されていると言うことができる。
本第2実施形態では、ベース部材30に対してスライド部材31が前後方向にスライド
する構成としてあるので、スライド部材31の収容凹部70内(スライド部材31の一部構成として存在する底カバー72の内部)でロック操作部材32が移動する方向も、前後方向としてある。
【0055】
本第2実施形態で採用したスライド部材31、ベース部材30、及びロック操作部材32においては、前記したように、ベース部材30に対するスライド部材31のスライド方向が前後方向とされている点、及びスライド部材31に対するロック操作部材32の移動方向(操作方向)が前後方向となっている点で、差異がある。
ただ、その他、各部の細部形状や構造、相対的な配置関係及び作用等に関しては第1実施形態でと略同様である。
【0056】
すなわち、ベース部材30には、スライド通路51の内方に面する配置で停止爪52が設けられている。この停止爪52は、左右方向で対向して対を成しており、また左方及び右方の各停止爪52は、それぞれ前後方向に複数並んで設けられており、ラック歯状に列を成している。
これに対し、スライド部材31には、ベース部材30に設けられた左右の停止爪52に対してそれぞれ係合可能となる左右一対の可動爪42が設けられている。この可動爪42が、弾性支持部43と爪部44とを有し、また弾性支持部43に傾斜部分43aが設けられている点についても、第1実施形態と同じである。
【0057】
なお、本第2実施形態において、これら左右の可動爪42は、
図15に示すように底カバー72に対して設けられたものとしてある。すなわち、この底カバー72を後半体5Bの収容凹部70に取り付けることにより、スライド部材31として可動爪42を装備する構成となっている。
また、このスライド部材31において、ロック操作部材32に設けられた戻り板バネ59にバネ力を蓄えさせるためのバネ受け部62は、可動爪42の根本近傍で、前端を低くし後端を高くするように傾斜させた台座状のものとして形成させてある。
【0058】
一方、ロック操作部材32には、
図14に示すように、スライド部材31の可動爪42を、ベース部材30の停止爪52から係合解除させるためのロック解除片55と、可動爪42が停止爪52に係合しているときにその背後に留まって係合解除を邪魔するバックアップ片56とが設けられている。また、このロック操作部材32には、ボタン部32bや補助バックアップ片57、戻り板バネ59が設けられている。
【0059】
戻り板バネ59は、スライド部材31が前端を低くし後端を高くするように傾斜させた台座状のものとして形成されているのに対応して、後端ほど下方となるように傾斜した板片として形成させてある。
ロック操作部材32は、
図16及び
図17に示すように、底カバー72に対して嵌め込んだ状態にしたうで、この底カバー72ごと、スライド部材31の収容凹部70へ嵌め込むようにする。
図17(a)に示すように、ロック操作部材32の戻り板バネ59と底カバー72のバネ受け部62とは互いの傾斜角度が逆傾斜となって当接するようになっている。そのため、ロック操作部材32のボタン部32bを前方(
図16、
図17の各右方)へ押し操作することで、ロック操作部材32の戻り板バネ5が湾曲する状態として、バネ力が蓄えられるものとなる。
【0060】
従って、ロック操作部材32のボタン部32bを押すのを止めて解放することで、ロック操作部材32は後方(
図16、
図17の各左方)へと押し戻されるようになる。本第2実施形態においては、このようなロック操作部材32の前後方向の移動のうち、後方で停止している位置をロック位置とし、操作後の前方位置をアンロック位置とするものである。当然に、後方から前方への移動がロック位置からアンロック位置へ向けた「解除移動」となり、これとは反対に、前方から後方への移動が「復帰移動」となる。
【0061】
前記したように、その他、本第2実施形態における各部の細部形状や構造、相対的な配置関係及び作用(動作状況を含む)等に関しては第1実施形態でと略同様であるので、同じ作用を奏するものに同一符号を付することでここでの詳説は省略する。
なお、スライド部材31において、別部材より成る底カバー72を採用し、この底カバー72に対して可動爪42やバネ受け部62などを設けているので、座席本体5の後半体
5Bに対して、収容凹部70を簡潔な構造に形成できるといった利点がある。
【0062】
ところで、本発明は、前記各実施形態に限定されるものではなく、実施の形態に応じて適宜変更可能である。
例えば、本発明に係るスライドロック装置1は、ヘッドレスト昇降機構3や座席リクライニング機構15に対して適用することが限定されるものではない。幼児用座席装置2では、座席本体5に対して脚載せ部23を上下揺動可能なものとするのに関連付けて、下降時に脚載せ部23を前後方向へスライド可能にする構造を採用可能であるが、このようなスライド部分で本発明に係るスライドロック装置1を実施してもよい。
【0063】
また、そもそも本発明に係るスライドロック装置1は、幼児用座席装置2に対して適用することが限定されるものではない。
当然に、ベース部材30、スライド部材31、ロック操作部材32において、それらの細部構造や形状などは、適宜変更可能なものである。
第1及び第2実施形態では、可動爪42や停止爪52が左右一対のものとして説明したが、左方又は右方のいずれか一方だけを備える構成としてもよい。また、これら可動爪42や停止爪52は、左右方向を向けて設けることが限定されるものではなく、適用箇所に応じて、上下方向や前後方向を向く状態で設けることも可能である。