【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の毛髪処理剤は、変性ペプチド及びロイシンが配合されるものである。当該毛髪処理剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の任意成分を含んでいてもよい。また、当該毛髪処理剤は、水が配合されたものが典型的であり、水の配合量は、例えば60質量%以上である。
【0014】
[変性ペプチド]
変性ペプチドにより、毛髪の補修効果が得られる。この変性ペプチドは、下記式(I)で表される基及びその塩のうちの少なくとも一方の側鎖基を有するものである。
−S−S−(CH
2)
n−COOH (I)
【0015】
式(I)中、nは、1又は2である。すなわち、上記側鎖基は、カルボキシメチルジスルフィド基、カルボキシエチルジスルフィド基、又はこれらの基の塩である。
【0016】
上記変性ペプチドは、分子量が40,000以上70,000以下のものであると良い。このように分子量40,000以上70,000以下の変性ペプチドを配合することで、毛髪外表面を効果的に補修できる。また、上記変性ペプチドは、分子量が20,000以下のものでも良い。分子量20,000以下の変性ペプチドであれば、分子量40,000以上70,000以下のものに比して水への分散性又は溶解性に優れる。
【0017】
当該毛髪処理剤における変性ペプチドの配合量は、毛髪を補修する観点から、0.0005質量%以上が良く、0.001質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましい。また、変性ペプチドの配合量は、当該毛髪処理剤の高価格化を抑える観点から、1質量%以下が良く、0.5質量%以下が好ましく、0.2質量%以下がより好ましい。
【0018】
[変性ペプチドの製造方法]
上記変性ペプチドの製造方法は、特開2012−224573号公報、特開2010−275297号公報などに開示されており、例えばケラチンを原料とする
図1に示す工程を有する方法が挙げられる。
図1に示す製造方法は、還元工程(STP1)、酸化剤混合工程(STP2)、固液分離工程(STP3)及び回収工程L(STP4)を有する。
図1に示す全工程を備える方法では、酸化剤混合工程(STP2)にて変性ペプチド(
図1に示す液体部Lに溶解している変性ペプチド、及び固体部Sに含まれる変性ペプチド)が生成するので、固液分離工程(STP3)及び回収工程L(STP4)を設けなくても変性ペプチドが製造されることになる。
【0019】
<還元工程(STP1)>
還元工程(STP1)は、還元剤とケラチンと水とを混合する工程である。この還元工程(STP1)において、ケラチンが有するジスルフィド基(−S−S−)をメルカプト基(−SH HS−)に還元する。
【0020】
原料であるケラチンとしては、ケラチンを構成蛋白質として含む羊毛(メリノ種羊毛、リンカーン種羊毛等)、人毛、獣毛、羽毛、爪等が挙げられる。中でも、安価かつ安定的に入手可能な羊毛が好ましい。この羊毛等の原料については、殺菌、脱脂、洗浄、切断、粉砕及び乾燥を適宜に組み合わせて、予め処理するとよい。
【0021】
還元工程(STP1)では、チオグリコール酸、チオグリコール酸塩、メルカプトプロピオン酸及びメルカプトプロピオン酸塩から選択される一種又は二種以上を還元剤として用いると良い。チオグリコール酸塩としては、例えば、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリコール酸カリウム、チオグリコール酸アンモニウムが挙げられる。メルカプトプロピオン酸塩としては、例えば、メルカプトプロピオン酸ナトリウム、メルカプトプロピオン酸カリウム、メルカプトプロピオン酸アンモニウムが挙げられる。
【0022】
上記所定の還元剤の使用量としては、羊毛等の原料1gを基準として、0.005モル以上0.02モル以下であると良い。また、被処理液(ケラチン又はケラチン由来である処理物を含み、各工程での反応系となる液。以下、同じ。)の容量を基準とした場合の還元剤の使用量は、0.1mol/L以上0.4mol/L以下であると良い。
【0023】
還元工程(STP1)での水の量は、特に限定されないが、例えば、羊毛等の原料1質量部に対して、20容量部以上200容量部以下であると良い。
【0024】
還元工程(STP1)においては、一種又は二種以上のアルカリ性化合物を被処理液に混合するとよい。アルカリ性化合物とは、水に添加することで、その水をアルカリ性にすることができる化合物である。このアルカリ性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、アンモニア等が挙げられる。
【0025】
上記アルカリ性化合物の混合量は、特に限定されないが、還元工程(STP1)における被処理液のpHを下記範囲に調整する量である。還元工程(STP1)でのpHの下限としては9が好ましく、10がより好ましい。還元工程(STP1)でのpHの上限としては13が好ましく、12がより好ましい。還元工程(STP1)でのpHを9以上にすることで、ケラチンの還元を効率良く行うことができる。一方、pHを13以下にすることで、ケラチン主鎖の切断を抑制できる(ケラチン主鎖の切断を促進することを目的とする場合は、被処理液のpHが13を超えるように調整すればよい。)。
【0026】
還元工程(STP1)の温度条件は、特に限定されないが、35℃以上60℃以下が良く、40℃以上50℃以下が好ましい。温度条件が35℃未満であると、ジスルフィド基をメルカプト基に変換するための還元反応速度が低下し、ケラチンを十分に還元できないことがある。一方、60℃を超えると、ケラチン主鎖が切断されやすくなる。また、還元工程(STP1)の時間は、設定温度が低いほど長時間となり、設定温度が高いほど短時間となる。
【0027】
<酸化剤混合工程(STP2)>
酸化剤混合工程(STP2)は、還元工程(STP1)を経た処理物(ケラチン由来物)と酸化剤とを混合し、変性ペプチドを生成させる工程である。かかる酸化剤の混合は、処理物のメルカプト基を変性する酸化反応を促進するために行われる。通常、還元工程(STP1)を経た処理物を含む被処理液に、酸化剤を混合する。
【0028】
酸化剤としては、例えば、過酸化水素、臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウム等が挙げられる。用いる酸化剤は、一種又は二種以上である。
【0029】
酸化剤混合工程(STP2)での酸化剤の使用量は、特に限定されないが、羊毛等の原料1gを基準として、0.001モル以上0.02モル以下であると良く、酸化剤混合工程(STP2)の被処理液の容量を基準として、0.02mol/L以上1mol/L以下であると良い。
【0030】
酸化剤を被処理液に混合する際には、この酸化剤が被処理液中で局所的に高濃度化することを避けるため、1mol/L以上5mol/L以下程度の酸化剤溶液を例えば10分から6時間かけて連続的と断続的とを問わず徐々に混合するとよい。
【0031】
pH9以上の被処理液に混合する酸化剤量(A)を、pH7以上9未満の被処理液に混合する酸化剤量(B)より多くするのが好適である。これにより、変性ペプチド生成時間が短縮化する。上記酸化剤量(A)及び(B)の合計に対する酸化剤量(B)の割合は、20mol%以下が好ましく、10mol%以下がより好ましく、5mol%以下がさらに好ましく、0mol%が特に好ましい。
【0032】
酸化剤混合工程(STP2)での被処理液のpHは、本工程の進行に応じて調整される。酸化剤の混合を開始する際のpHは、9以上が好ましく、10以上がより好ましい。また、そのpHは、13以下が良く、12以下が好ましく、11以下がより好ましい。pH9以上であれば、変性ペプチドの生成効率が良く、pH13以下であれば、ケラチン由来の処理物の主鎖の切断を抑制できる。酸化剤混合工程(STP2)終了時のpHは、特に限定されないが、7程度で良い。
【0033】
酸化剤混合工程(STP2)において、pH9以上の時間がpH7以上9未満の時間よりも長いことが好ましく、pH9以上12以下の時間がpH7以上9未満の時間より長いことがより好ましく、pH10以上11以下の時間がpH7以上9未満の時間より長いことがさらに好ましい。このような手順を採用した場合、変性ペプチドの生成効率を高めることができる。
【0034】
被処理液のpHを調整するための酸としては、有機酸及び無機酸から選択された一種又は二種以上を使用するとよい。有機酸としては、例えば、クエン酸、乳酸、コハク酸、酢酸が挙げられ、無機酸としては、例えば、塩酸、リン酸が挙げられる。酸の混合量は、被処理液のpHを監視しつつ、適宜設定すると良い。酸を被処理液に混合する際には、被処理液において局所的にpHが低下すると、処理物のメルカプト基同士がジスルフィド基になるおそれがあるため、被処理液に酸を徐々に混合することが好ましい。
【0035】
酸化剤混合工程(STP2)での温度条件は、10℃以上60℃以下が良く、40℃以下が好ましい。温度を上記範囲に制御することで、副生成物であるシスチンモノオキシド等の生成を抑制できる。
【0036】
酸化剤混合工程(STP2)における反応式を、還元工程(STP1)での還元剤としてチオグリコール酸若しくはその塩、又はメルカプトプロピオン酸若しくはその塩を用いた場合、その還元剤の順の通り挙げれば次の通りである。
【0038】
<固液分離工程(STP3)>
固液分離工程(STP3)は、酸化剤混合工程(STP2)後の被処理液を液体部Lと固体部Sとに分離する工程である。固液分離工程(STP3)では、濾過、遠心分離、圧搾分離、沈降分離、浮上分離等の公知の固液分離手段を採用することができ、必要に応じてイオン交換や電気透析等による脱塩等を行うとよい。
【0039】
<回収工程L(STP4)>
回収工程L(STP4)は、固液分離工程(STP3)で得た液体部Lに溶解する変性ペプチドLを固形状のものとして回収する工程である。この回収工程L(STP4)における固形状変性ペプチドLの回収方法としては、(1)液体部Lを凍結乾燥することによる回収、(2)液体部Lを噴霧乾燥することによる回収、(3)塩酸等の酸を液体部Lに添加して、液体部LのpHを2.5から4.0程度に低下させることにより生じた変性ペプチドL沈殿物の回収などが挙げられる。回収した固形状の変性ペプチドLについては、必要に応じて、水や酸性水溶液による洗浄、乾燥等を行う。
【0040】
上記の通り、酸化剤混合工程(STP2)での処理を終えることで、被処理液に溶解している変性ペプチドと、同液に溶解していない変性ペプチドが得られる。これら変性ペプチドを低分子化すれば、水への溶解性が高まる。低分子化する態様としては、(1)固液分離工程(STP3)で得られた固体部Sを加水分解する態様、(2)固液分離工程(STP3)で得られた液体部Lに溶解している変性ペプチドLを加水分解する態様、(3)回収工程Lにより回収した変性ペプチドLを加水分解する態様、(4)変性ペプチドLと固体部Sを一括して加水分解する態様、が挙げられる。また、その他に加水分解による低分子化を図る方法としては、還元工程(STP1)の前、還元工程(STP1)と同時、還元工程(STP1)と酸化剤混合工程(STP2)との間に、低分子化のための加水分解を行うことが挙げられる。
【0041】
変性ペプチドを加水分解する方法としては、ペプチドの加水分解として公知の酵素による加水分解、酸による加水分解及びアルカリによる加水分解が挙げられる。
【0042】
(酵素による加水分解)
加水分解のための酵素としては、例えば、ペプシン、プロテアーゼA、プロテアーゼBなどの酸性蛋白質分解酵素;パパイン、プロメライン、サーモライシン、プロナーゼ、トリプシン、キモトリプシン等の中性乃至アルカリ性蛋白質分解酵素などが挙げられる。
【0043】
上記酵素による加水分解時のpHは、酸性蛋白質分解酵素の場合には1以上3以下に調整するとよく、中性乃至アルカリ性蛋白質分解酵素の場合には5以上11以下に調整するとよい。このpHを上記範囲とすることにより、酵素活性が向上する。
【0044】
上記酵素による加水分解時の反応温度は30℃以上60℃以下、反応時間は10分以上24時間以内で適宜設定される。この酵素による加水分解を停止させるには、温度を70℃以上にして酵素を失活させるとよい。
【0045】
(酸による加水分解)
加水分解のために用いられる酸としては、例えば塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、臭化水素酸等の無機酸、又は蟻酸、シュウ酸等の有機酸が挙げられ、これらの中から適宜選択される。この加水分解の条件は、例えばpH4以下、反応温度40℃以上100℃以下、反応時間2時間以上24時間以内である。
【0046】
(アルカリによる加水分解)
加水分解のために用いられるアルカリとしては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム等が挙げられる。この加水分解の条件は、例えばpH8.0以上、反応温度50℃以上100℃以下、反応時間20分以上24時間以内である。
【0047】
加水分解された変性ペプチドを回収するためには、上記回収工程L(STP4)と同様の方法を採用できる。ただし、pHが2.5から4.0程度になるように酸を添加する回収方法では、変性ペプチドが加水分解により低分子化しているので、回収困難であるか回収不能な場合がある。
【0048】
[ロイシン]
ロイシンは、毛髪の補修作用の向上に必要な変性ペプチドの毛髪への定着性を高めるものである。このロイシンは、他のアミノ酸と併用してもよい。他のアミノ酸としては、例えばグリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、メチオニン、セリン、トレオニン、プロリン、ヒスチジン、フェニルアラニン、トリプトファン、アスパラギン酸ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、オルニチン、リシン、アルギニン等が挙げられる。
【0049】
当該毛髪処理剤におけるロイシンの配合量としては、例えば変性ペプチド100質量部に対して0.1質量部以上1,000質量部以下であり、0.5質量部以上200質量部以下であると良い。ロイシンが0.1質量部未満であると、変性ペプチドによる毛髪の補修効果を十分に向上させることができないおそれがある。一方、ロイシンが1,000質量部を超えると、ロイシンの配合量の増加に対して十分な補修効果の上積みを見込めない場合がある。
【0050】
[任意原料]
当該毛髪処理剤に任意配合される変性ペプチド及びロイシン以外の原料は、当該毛髪処理剤の使用目的に応じて公知の毛髪処理剤原料から適宜選定される。その公知の毛髪処理剤原料としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤、高級アルコール、低級アルコール、多価アルコール、糖類、油脂、エステル油、脂肪酸、炭化水素、ロウ、高分子化合物がある。また、他の公知の毛髪処理剤原料としては、シリコーン、蛋白、アミノ酸、動植物抽出物、微生物由来物、無機化合物、香料、防腐剤、金属イオン封鎖剤等である。
【0051】
アニオン界面活性剤としては、例えばN−アシルアミノ酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、脂肪酸アミドエーテルカルボン酸塩、脂肪酸アミドエーテルカルボン酸塩、アシル乳酸塩、アルカンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルスルホ酢酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、脂肪酸モノグリセリド硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩が挙げられる。一種又は二種以上のアニオン界面活性剤を毛髪処理剤に配合すると良く、アニオン界面活性剤の配合濃度は、例えば0.1質量%以上20質量%以下である。
【0052】
カチオン界面活性剤としては、例えばアルキルアミン塩、脂肪酸アミドアミン塩、エステル含有3級アミン塩、アーコベル型3級アミン塩、長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジ長鎖アルキルジメチルアンモニウム塩、トリ長鎖アルキルモノメチルアンモニウム塩、ベンザルコニウム型4級アンモニウム塩、モノアルキルエーテル型4級アンモニウム塩が挙げられる。一種又は二種以上のカチオン界面活性剤を毛髪処理剤に配合すると良く、カチオン界面活性剤の配合濃度は、例えば0.1質量%以上20質量%以下である。
【0053】
両性界面活性剤としては、例えばアルキルグリシン塩、カルボキシメチルグリシン塩、N−アシルアミノエチル−N−2−ヒドロキシエチルグリシン塩、アルキルポリアミノポリカルボキシグリシン塩、アルキルアミノプロピオン酸塩、アルキルイミノジプロピオン酸塩、N−アシルアミノエチル−N−2−ヒドロキシエチルプロピオン酸塩、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルジヒドロキシエチルアミノ酢酸ベタイン、N−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウム−N−プロピルスルホン酸塩、N−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウム−N−(2−ヒドロキシプロピル)スルホン酸塩、N−脂肪酸アミドプロピル−N,N−ジメチルアンモニウム−N−(2−ヒドロキシプロピル)スルホン酸塩が挙げられる。一種又は二種以上の両性界面活性剤を毛髪処理剤に配合すると良く、両性界面活性剤の配合濃度は、例えば0.1質量%以上10質量%以下である。
【0054】
ノニオン界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトールテトラ脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルが挙げられる。一種又は二種以上のノニオン界面活性剤を毛髪処理剤に配合すると良く、ノニオン界面活性剤の配合濃度は、例えば0.1質量%以上20質量%以下である。
【0055】
高級アルコールとしては、例えばセタノール、イソセチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコールが挙げられる。一種又は二種以上の高級アルコールを毛髪処理剤に配合すると良く、高級アルコールの配合濃度は、例えば3質量%以上15質量%以下である。
【0056】
低級アルコールとしては、例えばエタノール、イソプロピルアルコールが挙げられる。一種又は二種以上の低級アルコールを毛髪処理剤に配合すると良く、低級アルコールの配合濃度は、例えば0.5質量%以上3質量%以下である。
【0057】
多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ブチレングリコールが挙げられる。一種又は二種以上の多価アルコールを毛髪処理剤に配合すると良く、多価アルコールの配合濃度は、例えば1質量%以上50質量%以下である。
【0058】
糖類としては、例えばソルビトール、マンニトール、グルコース、フルクトース、キシリトール、ラクトース、マルトース、マルチトール、トレハロースが挙げられる。一種又は二種以上の糖類を毛髪処理剤に配合すると良く、糖類の配合濃度は、例えば0.1質量%以上10質量%以下である。
【0059】
油脂としては、例えばアーモンド油、アボガド油、オリーブ油、シア脂油、月見草油、ツバキ油、ピーナッツ油、ローズヒップ油が挙げられる。一種又は二種以上の油脂を毛髪処理剤に配合すると良く、油脂の配合濃度は、例えば0.1質量%以上10質量%以下である。
【0060】
エステル油としては、例えばオレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、パルミチン酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸エチル、2−エチルヘキサン酸セチル、イソステアリン酸ヘキシル、ジ2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジオレイン酸エチレングリコール、ジ(カプリル・カプリン酸)プロピレングリコール、ジオレイン酸プロピレングリコール、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、イソステアリン酸イソセチル、ジメチルオクタン酸2−オクチルドデシル、乳酸ミリスチル、クエン酸トリオクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、コハク酸ジ2−エチルヘキシル、アジピン酸ジイソブチル、ステアリン酸コレステリルが挙げられる。一種又は二種以上のエステル油を毛髪処理剤に配合すると良く、エステル油の配合濃度は、例えば0.1質量%以上10質量%以下である。
【0061】
脂肪酸としては、例えばイソステアリン酸、オレイン酸、カプリン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、ラノリン脂肪酸、リノール酸が挙げられる。一種又は二種以上の脂肪酸を毛髪処理剤に配合すると良く、脂肪酸の配合濃度は、例えば0.1質量%以上10質量%以下である。
【0062】
炭化水素としては、例えば流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックスが挙げられる。一種又は二種以上の炭化水素を毛髪処理剤に配合すると良く、炭化水素の配合濃度は、例えば0.1質量%以上20質量%以下である。
【0063】
ロウとしては、例えばミツロウ、モクロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウが挙げられる。一種又は二種以上のロウを毛髪処理剤に配合すると良く、ロウの配合濃度は、例えば0.1質量%以上20質量%以下である。
【0064】
高分子化合物としては、例えばカルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、メタクリロイルエチルベタイン・メタクリル酸エステル共重合体等の合成高分子化合物;メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、可溶性デンプン等の半合成高分子化合物;アルギン酸ナトリウム、グアーガム、グルカン、セルロース、ヒアルロン酸ナトリウム等の天然高分子;が挙げられる。一種又は二種以上の高分子化合物を毛髪処理剤に配合すると良く、高分子化合物の配合濃度は、例えば0.1質量%以上15質量%以下である。
【0065】
[用途]
当該毛髪処理剤の使用目的に応じて任意原料が選定されるのは、上記の通りである。当該毛髪処理剤は、ヘアケア剤、カラーリング剤、ブリーチ剤、スタイリング剤等として使用可能なものである。ヘアケア剤の任意原料の組合せとしては、例えば、界面活性剤、シリコーン、高分子化合物(合成高分子化合物、半合成高分子化合物又は天然高分子化合物)、アルコール、金属イオン封鎖剤、及び水である。カラーリング剤の任意原料の組合せとしては、例えば、染料、アルコール、高分子化合物(合成高分子化合物、半合成高分子化合物又は天然高分子化合物)、及び水である。ブリーチ剤の任意原料の組合せとしては、例えば、過酸化水素、界面活性剤、アルカリ剤、及び水である。スタイリング剤の任意原料の組合せとしては、例えば、スタイリング原料(油脂、エステル油、炭化水素、ロウ、合成高分子化合物、半合成高分子化合物、天然高分子化合物等)、界面活性剤、及びアルコールである。
【0066】
なお、「ヘアケア剤」とは、毛髪の手入れ、手当て等を行うために用いられる毛髪処理剤である。ヘアケア剤としては、例えば、シャンプー、リンス、コンディショナー、トリートメント(例えば、洗い流さないトリートメント、洗い流すトリートメント、整髪兼用トリートメント、多剤式トリートメントの一構成剤、パーマの前処理のためのトリートメント、パーマの後処理のためのトリートメント、カラーリングの前処理のためのトリートメント、カラーリングの後処理のためのトリートメント、ブリーチの前処理のためのトリートメント、ブリーチの後処理のためのトリートメント)が挙げられる。「カラーリング剤」とは、毛髪を着色するために用いられる毛髪処理剤である。カラーリング剤としては、例えば直接染料が配合された染毛料、毛髪の染毛時に反応が必要になる反応型染料が配合された染毛剤、毛髪への着色を一時的に施す毛髪着色料が挙げられる。「ブリーチ剤」とは、毛髪の色素を脱色させるために用いられる毛髪処理剤である。「スタイリング剤」とは、髪型を一時的に保持するために用いられる毛髪処理剤である。
【0067】
[pH]
当該毛髪処理剤に水が配合されている場合、当該毛髪処理剤のpHは、特に限定されないが、5以上11以下が良く、6以上10以下が好ましく、7以上9以下がより好ましく、7以上8以下がさらに好ましい。pHが5未満であると変性ペプチドの沈殿が生じやすく、pHが11以上であると変性ペプチドの加水分解進行のおそれがある。なお、pHの調整のためには、有機酸、無機酸、アルカリ金属の水酸化物等を用いると良い。
【0068】
[剤型]
当該毛髪処理剤の使用時の剤型は、特に限定されず、例えば、液状、乳液状、ローション状、クリーム状、ワックス状、ゲル状、固形状、フォーム状(泡状)、霧状が挙げられる。
【0069】
[対象毛髪]
当該毛髪処理剤で処理される対象毛髪は、パーマ処理、カラーリング処理、又はブリーチ処理の履歴がある毛髪、及びその履歴がない毛髪のいずれであっても良い。
【実施例】
【0070】
以下、当該毛髪処理剤を実施例により説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0071】
[調製例1](変性ペプチドの調製)
以下の通り、還元工程及び酸化剤混合工程に従って変性ペプチドを製造し、固液分離工程及び回収工程に従って変性ペプチドを回収した。そして、さらに所定条件で変性ペプチドの加熱を5時間行った。
【0072】
還元工程
中性洗剤で洗浄、乾燥させたメリノ種羊毛を、約5mmに切断した。この羊毛5質量部、30質量%チオグリコール酸ナトリウム水溶液15.4質量部及び6mol/L水酸化ナトリウム水溶液8.5質量部を混合し、さらに水を混合して全量150質量部、pH11の被処理液を調製した。この被処理液を、45℃、1時間の条件で攪拌した。次いで、さらに水を混合して全量を200質量部とし、45℃、2時間の条件で放置し、その後、液温が常温になるまで自然冷却した。
【0073】
酸化剤混合工程
還元工程後の被処理液を攪拌しながら、当該液に、35質量%過酸化水素水を15.26質量部配合した水溶液178質量部を、約30分かけて攪拌しながら混合した(過酸化水素水の混合に伴って被処理液のpHは上昇することになるが、その上昇は約20質量%酢酸水溶液を混合することでpH10以上11以下の範囲に調整した。)。その後、約20質量%酢酸水溶液を徐々に混合し、被処理液のpHが漸次11から7になるように調整した。以上により変性ペプチド溶液を得た。
【0074】
固液分離工程及び回収工程
変性ペプチド溶液をろ過することによりその溶液の不溶物を除去した。その後、回収した液体部(ろ液)に36質量%塩酸水溶液97.2質量部を配合した水溶液160質量部を添加して変性ペプチド溶液のpHを7から3.8にすることにより、変性ペプチドの沈殿を生じさせた。この沈殿を回収、水洗し、固形状の変性ペプチドを得た。
【0075】
回収工程で得た固形状変性ペプチドが1質量%、かつ、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールでpH8とした水溶液を、85℃で5時間加熱した。この加熱後の液をろ過し、下記調製例2で用いた変性ペプチドの水溶液を得た。
【0076】
[調製例2](変性ペプチド溶液の調製)
変性ペプチド溶液は、調製例1において調製した変性ペプチド1質量%、1,3−ブチレングリコール3質量%、フェノキシエタノール1質量%、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン3質量%及び水(残部)を配合することで調製した。
【0077】
[実施例1]
調製例2の変性ペプチド溶液100質量部にロイシン1質量部(変性ペプチド1質量部に対してロイシン1質量部)を配合し実施例1の毛髪処理剤を調製した。
【0078】
[比較例1]
調製例2の変性ペプチド溶液を比較例1の毛髪処理剤とした。
【0079】
<変性ペプチドの定着度合いの評価>
実施例1及び比較例1の毛髪処理剤について、毛髪への変性ペプチドの定着度合を評価した。その定着度合いは、実施例1又は比較例1の毛髪処理剤で下記方法で処理した毛束のジスルフィド量を下記方法で測定することで評価した。ジスルフィド量の測定結果については
図2に示す。なお、ジスルフィド量が多いほど、変性ペプチドの定着度合が高いから、毛髪の補修度合いが高いといえる。
【0080】
(毛髪の処理)
毛束(酸化染毛剤による処理履歴がある毛束)に対する毛髪処理剤による処理は、毛束を実施例1又は比較例1の毛髪処理剤に10秒程度浸漬した後に精製水で10秒程度洗浄し、タオルドライ後にドライヤーで乾燥させることで行った。このような処理を7回行った毛束、14回行った毛束及び28回行った毛束をそれぞれ準備した。
【0081】
(ジスルフィド量の測定)
毛髪処理剤で所定回数処理した毛束のジスルフィド量について、「Australian Journal of Chemistry、13(4)、p.547−566」に記載の方法に従って測定した。ただし、MeHgI過剰でのNa
2SO
3との反応時間は、24時間と、48時間に変更した。また、ジスルフィド量の算出で使用したポーラログラフは、窒素放出機として「DEOXYGEN STAND DS−100(Yanaco社)」、解析装置として「POLAROGRAPHIC ANALYZER P−3000(Yanaco社)」、滴下水銀電極台として「P−1000ST(Yanaco社)」を備えるものを使用した。
【0082】
図2から明らかなように、ロイシンを配合した実施例1の毛髪処理剤は、ロイシンを配合していない比較例1の毛髪処理剤に比べて、7回、14回及び28回のいずれの回数の処理を行った毛束であってもジスルフィド量が多かった。この結果から、変性ペプチドと共にロイシンを配合することで、毛髪への変性ペプチドの定着性が向上することが確認された。