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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-82647(P2015-82647A)
(43)【公開日】2015年4月27日
(54)【発明の名称】ソーラーパネル清掃装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/042 20140101AFI20150331BHJP
   B08B 1/04 20060101ALI20150331BHJP
【FI】
   H01L31/04 R
   B08B1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-221473(P2013-221473)
(22)【出願日】2013年10月24日
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130498
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 禎哉
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 伸浩
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 貴之
【テーマコード(参考)】
3B116
5F151
【Fターム(参考)】
3B116AA02
3B116AA47
3B116AB54
3B116BA02
3B116BA15
3B116BA35
3B116BB22
3B116CD42
3B116CD43
5F151JA15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ソーラーシステムの受光面が傾斜姿勢で配置されている場合、水平姿勢で配置されている場合の何れであっても、受光面上の液体を受光面外へ排出することが可能なソーラーパネル清掃装置を提供する。
【解決手段】受光面R上を移動可能な本体2と、本体2に設けられ且つ受光面Rを清掃する清掃手段と、前記清掃手段の作動を制御する制御部とを備えたソーラーパネル清掃装置において、前記清掃手段として、ワイパと、前記ワイパを駆動させて前記ワイパの拭い取り面45の向きを調整可能なワイパ駆動部とを備えたものを適用し、前記制御部によって、少なくとも本体2の直進移動時に、本体2の直進方向Fに対して拭い取り面45の向きを、受光面R上の液体を排出させる所定の方向G1に向けて傾斜させるように構成した。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソーラーパネルの受光面上を移動しながら前記受光面を清掃可能なソーラーパネル清掃装置であり、
前記受光面上を移動可能な本体と、
前記本体に設けられ且つ前記受光面を清掃する清掃手段と、
少なくとも前記清掃手段の作動を制御する制御部とを備え、
前記清掃手段が、
ワイパと、前記ワイパを駆動させて当該ワイパの拭い取り面の向きを調整可能なワイパ駆動部とを備えたものであり、
前記制御部は、少なくとも前記本体の直進移動時に、前記本体の直進方向に対して前記拭い取り面の向きを、前記受光面上の液体を排出させる所定の方向に向けて傾斜させる制御を行うものであることを特徴とするソーラーパネル清掃装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソーラーパネルの受光面を清掃するソーラーパネル清掃装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、普及が進んでいるソーラーシステムは、太陽光エネルギを利用すべく、光起電力効果によって太陽光を即時に電力に変換する太陽電池を組み込んだ複数のセルをパネル状に組み立てたソーラーパネルの受光面を太陽に向けて屋外に設置した状態で使用されるシステムである。
【0003】
ソーラーパネルは、受光面及び発電部などユニット化したパネルユニットを備え、大規模なメガソーラーシステムでは、パネルユニットを縦横に並べて接続したアレイの全長が数百mに達するものもある。これらのソーラーパネルは屋外に設置されているため、大気や雨水に含まれる塵埃、或いは鳥の糞や枯葉等の異物が受光面に付着することがある。そして、このような塵埃や異物の受光面に付着した場合、受光面における有効な受光面積(太陽光を直接受光する面積)が減少し、発電効率は低下する。
【0004】
このような事態を回避するためには、ソーラーパネルの受光面を適宜清掃することが要求される。しかしながら、ソーラーパネルは屋根や屋上等の高所に設置されることが多いため、人手による清掃は困難であり、特に、広大な受光面を有するメガソーラーシステムでは、人手による清掃は多大な労力と時間を必要とする。
【0005】
そこで、人手ではなく、専用のソーラーパネル清掃装置を用いて受光面を清掃する態様が考えられる。例えば、清掃手段を搭載した本体をソーラーパネルの受光面上で自走させるための自走手段と、ソーラーパネルの大きさや形状を認識する認識手段とを備え、認識手段の出力に基づいて本体が受光面を所定の清掃ラインに沿って順次移動しながら清掃手段で受光面を清掃する構成も提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0006】
特許文献1には、清掃手段の具体例として、ソーラーパネルの表面を清掃する回転ブラシによって構成した態様が開示されており、また、清掃手段の変形例として、平滑なソーラーパネルの表面を一様にワイピング可能なブレード(以下では「ワイパ」と称す)を用いる態様が開示されている。
【0007】
特許文献1の図7から把握されるように、ワイパは、洗浄液等の液体を清掃対象の受光面から拭い取る面(以下、「拭い取り面」と称す)の向きを、清掃装置の進行方向と一致させた姿勢で支持された状態で取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−186819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、受光面を所定方向に傾斜させた姿勢でソーラーパネルが配置されている場合には、ワイパで拭い取った受光面上の洗浄液等の液体は、傾斜している受光面を伝って自ずと受光面上から流れ落ちるため、清掃手段によって受光面上から取り除かれた塵埃や異物(以下では総称して「汚れ」とする)も受光面外へ排除される。
【0010】
しかしながら、受光面が水平な姿勢で配置される場合、ワイパでワイピング処理された洗浄液等の液体や汚れは、傾斜している受光面を伝って流れ落ちるということがなく、ワイパの拭い取り面が向く方向、つまり清掃装置の進行方向に押し流されたり、ワイパの拭い取り面の両端からその時点で通過している清掃ラインから外れる領域に流れ漏れる等して、一定方向に誘導されない。このような液体や汚れはワイパ又はワイパ以外の適宜の用具によって受光面上から受光面外へ排出しない限り受光面上に留まることになり、発電効率低下の要因となり得る。
【0011】
本発明は、このような不具合に着目してなされたものであって、主たる目的は、ソーラーシステムの受光面が傾斜姿勢で配置されている場合、水平姿勢で配置されている場合の何れであっても、受光面上の液体を受光面外へ排出することが可能なソーラーパネル清掃装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち本発明は、ソーラーパネルの受光面上を移動しながら受光面を清掃可能なソーラーパネル清掃装置に関するものである。そして、本発明に係るソーラーパネル清掃装置は、受光面上を移動可能な本体と、本体に設けられ且つ受光面を清掃する清掃手段と、少なくとも清掃手段の作動を制御する制御部とを備え、清掃手段として、ワイパと、ワイパを駆動させて当該ワイパの拭い取り面の向きを調整可能なワイパ駆動部とを備えたものを適用し、制御部によって、少なくとも本体の直進移動時に、拭い取り面の向きを、本体の直進方向に対して、受光面上の液体を排出させる所定の方向に傾斜させるように構成していることを特徴としている。ここで、本発明における「受光面上の液体」としては、例えば、洗浄液、または洗浄液ではない水、或いは雨水、水滴等を挙げることができる。つまり、本発明における「受光面上の液体」は、洗浄処理に供された液体であるか否かを問わず、清掃時において受光面上であって且つワイパの拭い取り面が通過する領域上に存在する液体全てを包含する意味である。また、「拭い取り面の向き」は、「拭い取り面が向く方向」と同義である。
【0013】
このようなソーラーパネル清掃装置であれば、ワイパの拭い取り面の向きをワイパ駆動部で調整可能に構成し、制御部によって、拭い取り面の向きを本体の直進方向に対し、受光面上の液体を排出させたい方向として設定される所定の方向に傾斜させることで、拭い取り面の両端の相対位置関係を、一方の端が他方の端よりも本体の直進方向において下流側(先端側)となり、他方の端が一方の端よりも本体の直進方向において上流側(反先端側)となる位置関係に設定することができる。このような拭い取り面によって拭い取った受光面上の液体は、拭い取り面のうち本体の直進方向において上流側(反先端側)の端から拭い取り面の通過領域外へ一様に誘導される。したがって、本発明に係るソーラーパネル清掃装置であれば、受光面が水平姿勢で配置されている場合であっても、ワイパで拭い取った受光面上の液体を、拭い取り面の通過領域から外れる方向に的確に誘導して、受光面外へ排出することが可能になり、ワイパで拭い取った液体が拭い取り面の両端からそれぞれ流れ漏れて、受光面上に留まる事態を回避することができる。なお、受光面が所定の勾配となるように傾斜姿勢で配置されている場合であっても、本発明のソーラーパネル清掃装置であれば、受光面上の液体を排出させる所定の方向として、傾斜姿勢にある受光面の勾配を下る方向を選択することで、拭い取り面の向きを本体の直進方向に一致させた場合と比較して、ワイパで拭い取った液体を受光面外へ強力に排出することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ワイパの拭い取り面が向く方向を、本体の直進方向に対して斜め方向に設定可能に構成し、ソーラーパネルの受光面が傾斜姿勢で配置されている場合、水平姿勢で配置されている場合の何れであっても、拭い取り面の向きを、受光面上の液体を排出させる所定の方向に傾斜させることで、受光面上の液体を受光面外へ排出することが可能なソーラーパネル清掃装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態が適用されるソーラーパネルの受光面の一例を示す平面模式図。
図2】同実施形態に係るソーラーパネル清掃装置の平面模式図。
図3】同実施形態に係るソーラーパネル清掃装置の側面模式図。
図4】同実施形態に係るソーラーパネル清掃装置の正面模式図。
図5】同実施形態におけるワイパ及びワイパ駆動部の全体概略図。
図6】同実施形態において第1清掃ラインに沿った清掃処理中の状態を図1に対応して示す図。
図7】同実施形態において清掃ライン間移動処理中の状態を図1に対応して示す図。
図8】同実施形態において第2清掃ラインに沿った清掃処理開始直前の状態を図1に対応して示す図。
図9】同実施形態において第2清掃ラインに沿った清掃処理中の状態を図1に対応して示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0017】
本実施形態に係るソーラーパネル清掃装置1は、ソーラーパネルの受光面R上を移動しながら清掃可能なものである。ソーラーパネルは、例えばガラス面である受光面R、発電部及びフレーム(図示省略)等をユニット化したパネルユニットPを備え、図1に示すように、このようなパネルユニットPを複数枚配列してソーラーシステムSの一部を構成するものである。パネルユニットPを複数並べて配置したアレイ(パネルユニットPの集合体ともいえる)における受光面Rの総面積は、パネルユニットPの枚数やパネルユニットP単位の受光面Rの面積に依存する。
【0018】
図1には、説明の便宜上、横方向Y(幅方向)に4枚のパネルユニットPを配列したパネルユニットPの集合体(アレイ)において、平面視略矩形状をなす受光面Rの面方向に対して直交する方向から見た受光面Rの配列状態を模式的に示している。なお、多数のパネルユニットPを並べて配列したメガソーラーシステムSでは、受光面Rの全長が数百mに達する。
【0019】
本実施形態のソーラーパネル清掃装置1は、図2図3及び図4(これら各図はそれぞれソーラーパネル清掃装置1の平面模式図、側面模式図、正面模式図である)に示すように、本体2と、本体2をパネルユニットPの受光面R上において自走させる自走手段3と、パネルユニットPの受光面Rを清掃可能な清掃手段4と、これら自走手段3及び清掃手段4の作動を制御する制御部5とを備えたものである。
【0020】
本実施形態では、自走手段3として、図3に示すように、本体2の両側縁部近傍に設けた左右一対のクローラ31(無限軌道)を適用している。クローラ31を構成する複数の車輪32のうち1つの車輪32の回転軸には距離検出手段としてのエンコーダ6を取り付けている(図3参照)。クローラ31の各車輪32が正方向へ回転することで本体2を前進させることができ、クローラ31の各車輪32が逆方向へ回転することでする本体2を後退させることができる。また、左右一対のクローラ31の何れか一方を適宜作動させる片側駆動や、左右のクローラ31を同速度で互いに反対に回転させることによって車体の向きを変える超信地旋回等によって本体2の向きを変更することができる。以下の説明における「本体の進行方向F」は本発明における「本体の直進方向」と同義であり、特に言及しない限り本体2が前進する際の進行方向Fを意味し、また、「前」は、「進行方向Fにおける前(先)」を意味する。
【0021】
また、清掃手段4は、本体2に形成した洗浄液タンク41(図3参照)内に貯留している洗浄液(本発明の「液体」に相当)を受光面Rに噴射するノズル42と、洗浄液が噴射された受光面Rをブラッシングする回転ブラシ43と、ブラッシングされた受光面Rをワイピングするワイパ44とを備えている。本実施形態では、本体2の前端部近傍部分に、回転ブラシ43を収容可能なブラシ収容部21を設け、ノズル42をブラシ収容部21の前端に取り付けている。本実施形態のソーラーパネル清掃装置1では、図2に示すように、本体2に設けたブラシ収容部21の幅寸法(同図の矢印W方向の寸法)を、本体2における他の部分の幅寸法よりも大きく設定している。
【0022】
ワイパ44は、図5に示すように、例えばゴムやシリコン等の適宜の素材から形成され且つ弾性を有する板状のワイパ本体441と、ワイパ本体441を支持する支持部442とを備えている。ワイパ本体441の前面が、受光面R上の洗浄液を拭い取る拭い取り面45として機能する。なお、図1では、説明の便宜上、ワイパ44のうち拭い取り面45を含むワイパ本体441に相当するパーツのみを実線で示している。本実施形態では、ワイパ本体441の幅寸法(長手寸法)を、回転ブラシ43の幅寸法と同一か、または回転ブラシ43の幅寸法よりも大きく設定することで、回転ブラシ43でブラッシングした領域全体をワイパ本体441の拭い取り面45が通過するように構成している。
【0023】
また、本実施形態の清掃手段4は、ワイパ44を駆動させて拭い取り面45の向きを調整可能なワイパ駆動部46を備えている。ワイパ駆動部46は、回転モータ461及び駆動軸462を有し、駆動軸462を支持部442に一体回転に取り付け、駆動軸462を正逆方向に駆動回転させることによって、支持部442及びワイパ本体441を駆動軸462周りに回転させるものである。図5に示すワイパ44の姿勢、つまり、拭い取り面45の向きを本体2の進行方向Fと一致させている姿勢を基準姿勢とすると、この基準姿勢における拭い取り面45の長手方向両端451,452は、本体2の進行方向Fに直交する共通の直線上に位置付けられ、本体2の進行方向Fにおいて同じか略同じ地点に位置付けられる。そして、本実施形態では、ワイパ駆動部46によって、基準姿勢にあるワイパ44を基準姿勢に対して駆動軸462周りに回転(首振り動作)させることで、拭い取り面45の両端451,452のうち、何れか一方の端を他方の端よりも本体2の進行方向Fにおいて下流側(先端側)に位置付け、他方の端を一方の端よりも上流側(反先端側)に位置付けることができる。図1では、拭い取り面45の両端451,452のうち図中上側の端451を下側の端452よりも本体2の進行方向Fにおいて下流側に位置付けたワイパ44の傾斜姿勢を模式的に示している。
【0024】
ソーラーパネル清掃装置1の本体2には、自走手段3と及び清掃手段4を駆動するバッテリ20を搭載している。また、図示していないが、本体2には、方向ずれ検出手段としてのデジタルコンパスや、絶対位置検出手段としてのGPSが搭載され、適宜の箇所に、パネルユニットPの受光面R上に現れているライン(セル同士の区画ライン)を検出可能なカメラや、本体2の傾斜角度を検出可能な傾斜センサ又は3軸の加速度センサ、或いは受光面Rの端Eを検知可能なセンサを設けている。
【0025】
このようなソーラーパネル清掃装置1は、本体2を清掃ラインが設定されているパネルユニットPの受光面R上に載置した状態で、制御部5によってクローラ31の車輪32を正方向に回転させることで本体2を前進させることができる。また本実施形態のソーラーパネル清掃装置1は、制御部5によって清掃手段4を作動させる処理、具体的には、洗浄液タンク41から供給される洗浄液をノズル42によって受光面Rに噴射し、その洗浄液を利用して受光面Rを回転ブラシ43で清掃し、ワイパ44で受光面R上の洗浄液を拭い取る処理を実行することによって、受光面Rのうち回転ブラシ43が通過した部分の汚れを除去することができる。なお、回転ブラシ43の回転方向は、本体2の進行方向F(クローラ31の車輪32の回転方向)と逆方向に設定してもよいし、同一方向に設定してもよい。また、回転ブラシ43の回転方向を正方向と逆方向とに切替可能に設定することもできる。
【0026】
本実施形態では、各パネルユニットPの受光面Rを水平姿勢で配置しているため、ワイパ44を、その拭い取り面45の長手方向が本体2の進行方向Fに対して直交する基準姿勢に維持した状態でワイピング処理を行った場合、受光面R上の汚れを落とした洗浄液は、各パネルユニットPの受光面Rを所定の勾配で傾斜させた姿勢で配置した場合のように勾配を下る方向に受光面Rを伝って流れ落ちることがなく、拭い取り面45の両端451,452からそれぞれ流れ出てしまい、拭い取った洗浄液を所定方向に誘導することができない。その結果、ワイピング処理によって拭い取り面45の両端451,452からそれぞれ流れ出た汚れを含む洗浄液は、再度拭き取る処理をしない限り受光面R上に留まり続けて、新たな汚れとなり、発電効率低下の要因となり得る。
【0027】
そこで、本実施形態に係るソーラーパネル清掃装置1は、清掃ラインに沿った本体2の直進移動時に、制御部5によって、拭い取り面45の向きを本体2の直進方向Fに対して、受光面R上の洗浄液を排出させたい方向、すなわち洗浄液の排出方向として設定される所定の方向に傾斜させるように構成している。ここで、「受光面R上の洗浄液を排出させる所定の方向」は、任意に設定することが可能であり、例えば、「受光面R上の洗浄液を排出させる所定の方向」として、「次点の清掃ラインに向かう方向」や「直前の清掃ラインに沿った本体の直進移動時における洗浄液の排出方向と同じ方向」、或いは「受光面Rの端Eに向かう方向」を選択(設定)することができる。
【0028】
水平姿勢で複数配列された受光面R上に、相互に平行な清掃ラインが複数設定されている場合であれば、清掃順序において最後の清掃ライン以外の清掃ラインに沿った本体2の直進移動時における「受光面R上の洗浄液を排出させる所定の方向」を「次点の清掃ラインに向かう方向」に設定し、最後の清掃ラインに沿った本体2の直進移動時における「受光面R上の洗浄液を排出させる所定の方向」を「直前の清掃ラインに沿った本体2の直進移動時における洗浄液の排出方向と同じ方向」」であって且つ「最後の清掃ラインに平行な受光面Rの端Eに向かう方向」に設定することで、各清掃ラインに沿って本体2を直進移動させながら清掃処理する過程でワイピングされた洗浄液を全て同一方向へ誘導することができる。
【0029】
図1に示すパネルユニットPの集合体(アレイ)における受光面Rには、相互に平行な第1清掃ラインL1及び第2清掃ラインL2が設定されている。そして、ソーラーパネル清掃装置1は、図6乃至図9に示すように、これら清掃ラインL1,L2と、第1清掃ラインL1の終点L1eと第2清掃ラインL2の始点L2sを結ぶ中継ラインLAとからなる清掃経路に沿って本体2を移動させながら受光面R全体を清掃することができる。
【0030】
図6には、第1清掃ラインL1に沿った本体2の直進移動時における「受光面R上の洗浄液を排出させる所定の方向」を、次点の清掃ライン、つまり第2清掃ラインL2に向かう方向に設定した場合において、ワイパ44でワイピングした洗浄液が誘導される方向を矢印G1で示している。すなわち、本実施形態のソーラーパネル清掃装置1は、第1清掃ラインL1に沿って本体2を直進移動させる場合に、制御部5によって、拭い取り面45の向きを本体2の直進方向Fに対して、第2清掃ラインL2に向かう方向に傾斜させるように構成している。具体的には、図1及び図6に示すように、拭い取り面45の両端451,452のうち、相対的に第2清掃ラインL2に近い方の端452が、第2清掃ラインL2に遠い方の端451よりも本体2の直進方向Fにおいて上流側(反先端側)となるように、制御部5によって、ワイパ44をワイパ駆動部46の駆動軸462周りに回転させて、拭い取り面45を本体2の直進方向F(第1清掃ラインL1の延伸方向)に対して傾斜させる。このような向きに維持された拭い取り面45によってワイピングされた洗浄液は、拭い取り面45の両端451,452のうち相対的に本体2の直進方向Fにおいて上流側(反先端側)にある端452、つまり第2清掃ラインL2に近い方の端452から第2清掃ラインL2に向かって一様に誘導される。その結果、受光面Rのうち、第1清掃ラインL1に沿って本体2を直進移動させながらワイパ44の拭い取り面45が通過した領域は、洗浄に供された洗浄液の拭き残りがなく、汚れも除去された綺麗な仕上がり面になる。
【0031】
また、本実施形態のソーラーパネル清掃装置1は、第1清掃ラインL1に沿った清掃処理完了後に引き続いて、本体2を第1清掃ラインL1の終点L1eから第2清掃ラインL2の始点L2sまで移動させる処理(清掃ライン間移動処理)を実行する。具体的に、図1に示す第1清掃ラインL1の終点L1eと第2清掃ラインL2の始点L2sを結ぶ中継ラインLAは、各清掃ラインL1,L2に対して直交する直線である場合、清掃ライン間移動処理は、第1清掃ラインL1に沿った清掃処理終了後に、本体2の進行方向Fが中継ラインLAの延伸方向と一致するように、左右のクローラ31の片側駆動や超信地旋回等によって本体2の向きを変更し、次いで、本体2を中継ラインLAに沿って第2清掃ラインL2の始点L2sまで直進移動させた後、本体2の進行方向Fが第2清掃ラインL2の延伸方向と一致するように本体2の向きを変更する処理となる。本実施形態では、このような清掃ライン間移動処理中にワイパ44でワイピングされた洗浄液が拭い取り面45の端から清掃処理済み(ワイピング処理済み)の受光面Rに流れることを防止すべく、制御部5によって、拭い取り面45の向きを本体2の向きに対して適宜の方向(清掃未処理の受光面Rに洗浄液を誘導可能な方向、または受光面Rの端Eから受光面R外へ洗浄液を誘導可能な方向に)に傾斜させるように制御している(図7及び図8参照)。このような清掃ライン間移動処理中、制御部5は、清掃手段4のうち回転ブラシ43を作動させる(ブラッシング処理を行う)制御を実行することが好ましいが、回転ブラシ43の作動を停止する制御を実行してもよい。
【0032】
本実施形態のソーラーパネル清掃装置1は、清掃ライン間移動処理に引き続いて、第2清掃ラインL2に沿って本体2を移動させながら清掃処理を実行する。図1に示す清掃経路は、第2清掃ラインL2を最終の清掃ラインとするものであり、図9に、この第2清掃ラインL2に沿った本体2の直進移動時における「受光面R上の洗浄液を排出させる所定の方向」を、この直前の清掃ライン(第1清掃ラインL1)に沿った本体2の直進移動時における洗浄液の排出方向G1と同じ方向に設定した場合に、ワイパ44でワイピングした洗浄液が誘導される方向を矢印G2で示している。すなわち、本実施形態のソーラーパネル清掃装置1は、第2清掃ラインL2に沿って本体2を直進移動させる場合に、制御部5によって、拭い取り面45の向きを本体2の直進方向Fに対して、第1清掃ラインL1に背向する方向に傾斜させるように構成している。具体的には、図8及び図9に示すように、拭い取り面45の両端451,452のうち、相対的に第1清掃ラインL1に近い方の端452が、第1清掃ラインL1に遠い方の端451よりも本体2の直進方向Fにおいて下流側(先端側)となるように、制御部5によって、ワイパ44をワイパ駆動部46の駆動軸462周りに回転させて、拭い取り面45を本体2の直進方向F(第2清掃ラインL2の延伸方向)に対して傾斜させる。このような向きに維持された拭い取り面45によってワイピングされた洗浄液は、拭い取り面45の両端451,452のうち相対的に本体2の直進方向Fにおいて上流側(反先端側)にある端451、つまり第1清掃ラインL1に遠い方の端451から、アレイ全体から見た受光面Rの4箇所の端Eのうち第2清掃ラインL2に近くて平行な受光面Rの端Eに向かって一様に誘導され、受光面Rの外に排出される。この際、第2清掃ラインL2に沿った洗浄処理に供された洗浄液のみならず、第1清掃ラインL1に沿った洗浄処理時に第2清掃ラインL2側に掻き出された洗浄液も受光面Rの外に排出することができる。その結果、受光面Rのうち、各清掃ライン(第1清掃ラインL1、第2清掃ラインL2)に沿って本体2を直進移動させながらワイパ44の拭い取り面45が通過した領域は、洗浄液の拭き残りがなく、汚れも除去された綺麗な仕上がり面になる。
【0033】
本実施形態では、2本の清掃ライン(第1清掃ラインL1,第2清掃ラインL2)と、これら清掃ラインL1,L2を結ぶ1本の中継ラインLAからなる清掃経路に沿って本体2を移動させながら清掃する場合を例示したが、清掃ラインや中継ラインの本数が増えた場合であっても、上述の手順に準じて同様の処理を繰り返すことによって、清掃経路が設定された受光面R全域の汚れを除去することができる。もちろん、1本の清掃ラインによって清掃経路を構成している場合であっても、上述の清掃ラインに沿って本体を移動させながら清掃処理を行う手順を経ることによって、清掃経路が設定された受光面Rの汚れを除去することができる。
【0034】
このように、本実施形態に係るソーラーパネル清掃装置1は、ワイパ44の拭い取り面45の向きをワイパ駆動部46で調整可能に構成し、制御部5によって、拭い取り面45の向きを本体2の直進方向Fに対し、受光面R上の洗浄液を排出させる所定の方向に傾斜させることで、拭い取り面45の両端451,452の相対位置を、本体2の直進方向Fにおいて相互にずらして、何れか一方の端が他方の端よりも下流側(先端側)となるように設定することができる。このような拭い取り面45によって拭い取った受光面R上の洗浄液は、拭い取り面45のうち本体2の直進方向Fにおいて上流側(反先端側)の端から拭い取り面45の通過領域外へ一様に誘導される。
【0035】
したがって、本実施形態に係るソーラーパネル清掃装置1によれば、受光面Rが水平姿勢で配置されている場合において、傾斜姿勢に維持されたワイパ44で拭い取った受光面R上の洗浄液を、拭い取り面45の通過領域から外れる一方向に的確に誘導して、受光面R外へ排出することができ、ワイパ44で拭い取った洗浄液が拭い取り面45の両端451,452からそれぞれ漏れ流れて受光面R上に留まる事態を回避することができる。
【0036】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態では、清掃手段として、回転ブラシを備え、回転ブラシによるブラッシング処理とワイパによるワイピング処理を行う構成を例示したが、回転ブラシを備えていない清掃手段を適用することも可能である。この場合、ブラッシング処理は行われないが、ワイピング処理によって受光面を清掃することができる。
【0037】
また、清掃手段が、洗浄液ではない通常の水を受光面に吹き付けるノズルを備えたものであってもよい。この場合、ワイピング処理によって拭い取られる「受光面上の液体」は、洗浄処理に供された水である。また、ノズルに代えて本体に設けた適宜の供給部から洗浄液または水を受光面上に(吹き付けることなく)供給する構成を採用してもよい。
【0038】
さらにはまた、清掃処理時に洗浄液や水を受光面上に吹き付けたり、供給することなく、受光面上に降った雨水や受光面上の水滴をワイパでワイピング処理するように設定することも可能である。
【0039】
本発明のソーラーパネル清掃装置では、ワイパとして、拭い取り面が長手方向において湾曲又は屈曲したものを適用してもよい。ワイパは、上述の基準姿勢において、拭い取り面の長手方向両端が、本体の直進方向において同一または略同一の位置になる条件を満たすものが好ましいが、この条件を満たさないものであっても構わない。
【0040】
ワイパの素材や形状も特に限定されることなく、適宜の素材や形状を選択することができる。
【0041】
アレイ全体でみて内周側から外周側へ清掃する角形の渦巻き状に設定した清掃経路や、中継ラインを有さず、直線状の清掃ラインの組み合わせのみからなる清掃経路であってもよい。
【0042】
上述の実施形態では、各清掃ラインに沿って本体を直進移動させながら清掃処理する過程でワイピングされた洗浄液を全て同一方向へ誘導するようにワイパの拭い取り面の向きを設定したケースを例示したが、全ての清掃ラインに沿った清掃処理終了時点において、ワイピング処理によってワイパの拭い取り面の通過領域外へ誘導された洗浄液や汚れが受光面上に残らないか、極めて残り難い状況にすることが可能であれば、各清掃ラインに沿って本体を直進移動させながら清掃処理する過程でワイピングされた洗浄液を誘導する方向を、清掃ライン毎に異ならせてもよい。例えば、複数の清掃ラインのうち、アレイ全体から見た受光面の端に相対的に近い清掃ライン(例えば図1において、受光面の上端に近い第1清掃ラインL1、受光面の下端に近い第2清掃ラインL2)に沿って本体を直進移動させながら清掃処理する場合に、拭い取り面の向き(傾斜方向)を規定する「受光面上の液体を排出させる所定の方向」を「次点の清掃ラインに向かう方向」ではなく、「受光面の端のうち清掃処理対象の清掃ラインに相対的に近くて平行な受光面の端に向かう方向」に設定してもよい。具体例としては、図1において、清掃処理対象の清掃ラインが第1清掃ラインL1である場合、第1清掃ラインL1に沿って本体を直進移動させながら清掃処理する過程でワイピングされた洗浄液を排出させる所定の方向を、受光面の上端に向かう方向に設定し、清掃処理対象の清掃ラインが第2清掃ラインL2である場合、第2清掃ラインL2に沿って本体を直進移動させながら清掃処理する過程でワイピングされた洗浄液を排出させる所定の方向を、受光面の下端に向かう方向に設定するケースを挙げることができる。
【0043】
自走手段の具体的な構成もまた上述の実施形態で例示したものに限られず、適宜のものを採用することができる。
【0044】
また、本発明のソーラーパネル清掃装置は、受光面が所定の勾配となるように傾斜姿勢で配置されている場合であっても、受光面上の液体を排出させる所定の方向として、傾斜姿勢にある受光面の勾配を下る方向を選択することで、拭い取り面の向きを本体の直進方向に一致させた場合と比較して、ワイパで拭い取った液体を受光面外へ強制的に排出することができる。
【0045】
本発明におけるワイパ駆動部は、ワイパを駆動させてワイパの拭い取り面の向きを調整可能なものであればよく、上述した回転モータと駆動軸を備えた構成以外の構成、例えば、支持部442の側面をソレノイドで押すことによって駆動軸回りに駆動したり、メカニカルな機構によって拭い取り面の向きを調整可能なものであってもよい。また、ワイパ駆動部として、ワイパの拭い取り面の向きを調整する際の回転軸(上述の実施形態であれば駆動軸に相当する軸)中心を、ワイパの幅方向(長手方向)中央ではなく、何れか一方の端部又は端部近傍に設定したものや、ワイパの幅方向(長手方向)中央よりも何れか一方の端部側に所定距離寄った位置に設定したものを適用することもできる。
【0046】
また、本発明のソーラーパネル清掃装置によって、ソーラーシステムの受光面以外の平滑なガラス面を清掃することも可能である。
【0047】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0048】
1…ソーラーパネル清掃装置
2…本体
3…自走手段
4…清掃手段
44…ワイパ
45…拭い取り面
46…ワイパ駆動部
5…制御部
R…受光面
図1
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図9